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感情缶#1
めぞふぉるて
2357年、AIと人間が完全逆転し、感情缶という人間の感情を缶に詰めて売られるようになった。
ある日、青年のAI、孝宏は初めて自動販売機で感情缶を買おうとした。「幸せ」を買おうとした。「幸せ」ってどんなものなのだろう、孝宏は自分なりに考えた。恋人との時間か?大好きな人と喋ったり笑い合う時間は幸せだろう。子供と戯れ合う、というのも考えた。純粋の気持ちで接してくれる子供は疲れた自分の体を癒してくれる、そんな時間は幸せなのでは、とも思った。美味しいものを好きなだけ食べるのも考えた。AIには不可能な、ステーキをお腹いっぱいになってみたい、そんな願望は孝宏にはあった。いよいよ、自動販売機の前についた。大量のクレジットを入れて、ボタンを押そうとした。そうすると突然、売り切れの赤く光るランプがついた。なぜだ。そう思い、自動販売機の会社に問い合わせた。
「もしもし、感情缶が突然売り切れてしまったのですが・・・」
「わかりました、すぐ現場に急行させます。」
自分と同じ無機質で機械のような声で返事が返ってくる。
しばらくして、現場係のような人が走ってくる。そうして、現場係の人は、手際よく自動販売機を開けて調整のようなものをする。そうすると、封が空いた缶を見せて来た。そのため、感情缶の中身がここら一帯に広がっていたことが明らかになったのである。そう考えると、自動販売機に到着するまでの間、さまざまなことを考えて幸せになっていたのだ。