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プロローグ
─最後に温かい食事をしたのは何時だろうか、思い出せない。
頼敬律は自室の椅子に腰掛け、デスクの上に腕を置き、頬杖をついて1人の女性が写った写真を眺めながら、1人静かな時間を過ごしていた。
白いマグカップに注がれた珈琲の湯気が立ち上っている。マグカップの取っ手に指を引っ掛け持ち上げると、一口啜る。味がしない、砂を噛んでいるようだった。
(私には、戻らなければいけない場所がある。あの人が待っている、だから、早くこの仕事を終わらせて、あの人の元へ…。)
目を瞑り、今後のことについて考えていると、ふと異質な気配を感じた。其方の方へと視線を向ければ、境界線が曖昧かのように、陽炎のように揺らめいている様に見える人の姿だった。
「最初の依頼人ですね。ようこそ、`未練屋`へ。どのような願いでしょうか。」
律はニコリと親しみやすい笑みを浮かべると、柔らかなトーンで丁寧に問いかける。
依頼人である`死者`は、躊躇するかの様に暫く何も言わずにその場に固まっていたが、やがて口を開いた。
『愛する人の部屋に、僕の代わりにこの指輪を置いてきて。』
─《次回予告》─
第一乃咎『歪んだ一方的な愛情』