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連鎖
2026/02/26 連鎖
私の趣味は、小説を書くことだ。自分のスマホでも書くし、学校でも書きたいから、配布されているタブレットのメモアプリを使ったりもする。ジャンルはたいてい恋愛で、主人公ととある漫画のキャラクターとの恋愛模様を描く。数千文字を書き終えると、必ず友達に見せて感想をもらう。その友達は漫画に詳しくないから、曖昧な反応しか返ってこなくて、私はむしろそれが良かった。口調が違うとか、このキャラはそんなこと言わないとか、うざったいことを言われなくて済むから。
私の友達は、学校配布のタブレットで夢小説を書いている。その夢小説に出てくる、イケメン設定の男の子の名前を、私は知らない。顔も知らない。本当にイケメンなのかわからないけれど、別のキャラにイケメンだと騒がれている描写があるから、イケメンなんだろう。そう思う。友達は授業中もタブレットを触っている。私はその背中を、授業に飽きた時にぼうっと眺める。一度、友達の小説を見せてもらったが、ほとんどがセリフで、小説というより台本だった。
私はタブレットから顔を上げた。黒板を見やってノートに書き写して、先生の話を数秒だけ聞いてまた視線を落とす。キャラクターの名前を打ち込み、カギカッコに、重要なセリフ。このキャラの口調はこれでいいんだっけ。まあ、多分あってるだろう。考えながら架空の主人公のセリフを続ける。今書いてるのは、主人公が好きな男の子と学校をサボっているシーンだ。
主人公「ねえ、本当にサボっていいのかな」
主人公が上目遣いで男の子を見る。男の子は、いいんだよと笑う。どこに行く、と訊く。
男の子「どこに行きたい?」
主人公は、少し考えて言う。「海」
男の子がわずかに目を細める。太陽が眩しい。
…打ち込み終えてまた顔を上げる。板書する。視線を感じて後ろを振り返ると、友達が私の手元を見つめていた。
前の席の友達が、タブレットで何かを書いている。一体何を書いているんだろう。小説だろうか。内心でちょっと面白い発見だなと思いながらシャーペンをクルクル回す。授業をちゃんと受けないから成績が悪いんじゃないの。笑い半分でそう言ってやりたくてたまらない。「じゃあ、動画流すぞ。」先生が動画を流してきて、私はつまんないの、とノートの隅に落書きを量産し始めた。こんな動画の何がいいんだろう。ほとんどのクラスメイトは授業よりはマシだと思うのかじっと見ているけど。
好きなキャラクターの絵が、上手い感じで描けた。満足しながら顔を上げると、ふと誰かに見られている気がして、首を動かした。斜め後ろの子が、慌てて顔を逸らしていた。見られていたのかもしれない。意識すると首がカッと赤くなって、私は上手く描けた落書きすら、完璧に消した。
斜め前の席の子が急にこちらを振り返ってきた。反射的に視線を逸らして、数秒して視線を戻すと、その子はなぜか自分のノートを消しゴムで強く擦っていた。
どうしたのだろう?
わずかに首を傾げ、でも私には関係のないことだ。私はそんなことより、と、手元のタブレットに文字を打ち込んだ。
「if小説」
下手やな