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いもうと
駄
2025/12/18 いもうと
妹が生まれた。お母さんは愛おしそうな目で生まれたばかりの妹を見る。壊れ物を扱うような手つきで抱く。私はそれが嫌い。お母さんだけじゃない、お父さんも妹に目をやるの。私のことなんてどうでもいいのかなって思う。もちろんそんなことはないんだろうし、誰も悪くないけど、けど、私は私から両親の視線を奪った妹が、ほんの少し嫌い。
「ただいまー」玄関のドアを開け、私は声を張り上げた。靴を脱いでランドセルをほとんど落とすみたいにして降ろす。「外さむかったあ。雪、降ってるよ」返事はない。お母さんと妹は、もしかしたら買い物に行ってるのかも知れない。ランドセルを引きずりながらリビングの方に行った。「おかあさ…」言いかけて、お母さんが床で寝ていることに気づいた。横には妹もいて、やっぱり寝ているので、たぶん妹を寝かしつける時に一緒に寝ちゃったんだろう。ちょっとつまんない気持ちになりながら、でも無理に起こしちゃいけないことはわかっているので、私は自分で自分のおやつを用意することにした。もう背伸びしないでも届く冷蔵庫を開け、プリンを一つとる。あと、スプーン。静かなリビングで食べてもあんまり美味しくなかった。
数分で食べ終え、暇になった私は、妹の顔を覗き込んだ。寝ている妹は、小さくて暖かそうでふやふやしていて、簡単に壊れてしまいそうだと思った。ちょっと興味が湧いた。憎いとまではいかないけど、ちょっとの怒りを込めてツンツンして、ちょっと仕返しみたいなことをしてやりたくなった。頬に触れた。柔らかい。簡単に形が変わる、マシュマロみたいだ。この鼻をつまんだらこの子は息ができなくなるんだろうなとか、息ができなくなったら、この子は死んじゃうなとか、頬をふにふにしながら考える。私は簡単にこの子を殺せてしまうのに、お母さんは全然私のことを警戒していないことに、変な罪悪感を抱く。私はこの子を簡単に殺せてしまうことに、恐怖も抱くの。
あんまり美味しくなかったプリンのカラメルが、喉の奥で甘味と苦味を増して気持ち悪い。甘いのに気持ち悪いなんて、初めてだ。私は自分の手を妹から離して、キッチンに走った。蛇口を捻ると水が勢いよく出てくる。手を洗う。石鹸を使って、何度も、念入りに、洗う。
作