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見えない人は山吹とノート。音楽室はない。
2025/09/23 見えない人は山吹とノート。音楽室はない。
今日は朝から、僕にしか見えない人と喧嘩してきたから、ちょっと遅刻した。どうして遅刻したんだと理由を求める先生に正直に話したら、先生は押し黙った。その後、敬語を使えと怒鳴られた。
後ろのドアから教室に入ると、クラスメイトが一斉に僕の方を見た。そして何も言わずにまた前を向いた。僕にしか見えない人が、僕の席の椅子を引いた。僕は座った。なんだか冷たかったので、誰かがさっきまで座ってたんだと思う。僕は声を張り上げた。「ここに座ってたの、だれ!。」クラスメイトは答えなかった。僕は山吹のノートを取り出した。適当なページを開いて鉛筆を握った。僕は絵が上手だ。だから僕は絵を描いた。僕にしか見えない人の絵。仲直りの証として、上手く描けたらプレゼントしようと気合いを入れていた。でも、全く違う人の絵になっちゃった。それはそれで上手だったので、僕はそのページをちぎって席をたった。黒板に貼り付けた。先生が教室に入ってきた。先生は僕の描いた絵を見て、上手だと言った。続けてだれを描いたんだと問うた。僕は知らない人だと答えた。
そういえば、この先生は音楽の先生だ。今から音楽の授業が始まるのだ。僕は何も準備をしていなかった。自分の席に戻って、前に座ってる子に声をかけた。「今日、何使うの。」前の子はリコーダーだと教えてくれた。僕はそれを持ってきていなかったので、前の子に頼んだ。「リコーダー、貸して。」前の子は自分も使うからダメだと首を横に振った。僕は僕にしか見えない人に言った。リコーダー貸して。僕にしか見えない人は、僕にしか見えないリコーダーを取り出した。その時にちょうどチャイムが鳴って、授業が始まった。授業で、僕にしか見えないリコーダーを使っていると、先生に注意された。「リコーダーはどうしたの。」このリコーダーは僕にしか見えないから、意味がないよと、僕は僕にしか見えない人に文句を言った。きっと、朝の喧嘩をまだ根に持っているんだな。
教室のドアが開いた。隣の教室の先生が入ってきて、音楽の先生に言った。
「なぜ音楽室で授業をしない?隣のクラスにまで聞こえてきて、生徒が授業に集中できない。迷惑だ。」
音楽の先生は、この学校には音楽室というものがないのだと声を立てて笑った。僕もそれを見たら口元がムズムズしてきて、同じように声を立てて笑った。隣の教室の先生はプンスカしながら帰って行った。音楽の先生は、歌を歌い始めた。オペラみたいな重い歌声が教室を漂った。僕はそれを捕まえようと思ったが、虫取り網がなかったので、諦めた。虫取り網で捕まえられたとしても、虫籠もないのでどうしようもできない。音楽の先生が歌声を喉にしまった時、チャイムが鳴った。授業が終わった。音楽の先生は教室を出て行った。
僕にしか見えない人が、僕にしか見えない虫取り網を渡してきた。もう遅いよ。やっぱり、まだ朝の喧嘩のことを根に持っているの?
僕は山吹のノートを開いた。ちぎったところがギザギザになっていた。黒板に貼り付けていたはずのノートのページは、いつの間にかなくなっていた。誰かが持って行ったんだなと思った。