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四話「私と引き替えに、君は___」
オリバー「セレ、何するつもりだ。」
オリバーは小声で静かに怒りをはらんだような声で言う。私は唇に指を添え、静かにと言うことを示す。そのまま、どうやって敵を倒そうか考える。相手は大人なのだから奇襲で倒す以外ないと思う。そうすると、非常口を出て、迂回して玄関が見える窓を開け、相手の頭部を狙う。いや、武器を持ってある手を狙うでもいいかも知れない。無闇に殺したくはない。
セレ「オリバー、私は敵を討ちに行く。だから、待ってて。」
オリバー「だったら俺も!」
セレ「オリバー、あなたは武器を持っていない。」
オリバー「っ!」
相棒がいない子供は武器を持たせてもらえない。だから、オリバーは戦えない。突き放す言い方だけど、これでオリバーが諦めてくれるならそれでいい。落ち込んでるオリバーを置いて、私は非常口へ向かう。その手を、オリバーが掴んだ。
セレ「オリバー、離して。」
オリバー「いかせない。」
セレ「離せっていってるでしょ!状況考えろこの馬鹿が!」
オリバー「馬鹿はお前だろ!俺がどれだけ心配してるか分かってんのか!」
セレ「分かって………。」
オリバー「分かってないだろ!?父さん失って!母さん失って!好きな人も失うかもしれない気持ちになってみろよ!」
オリバーの声に、私は反論の言葉が思い付かなかった。涙で顔を歪めるオリバー。その時、銃の引き金を引く音が聞こえた。
オリバー「セレ!!」
セレ「え………。」
銃声が耳を貫く。オリバーは私を抱き抱える形で床に倒れていた。ポタポタと液体が垂れる音がする。私は音源を探す。それは、すぐ近くにあった。私は真っ青になる。オリバーは肩から血を垂らしていた。
?「一匹発見。」
声がして、私は横を向く。軍服を来た男が銃を持ってこちらに近づいてきた。
軍服の男「動くな。そうすれば苦しまずに殺してやる。」
男の声からは殺気も哀れみもなかった。ただ、着々と作業を進める。そんな感じだった。私はそのことにはらわたが煮えくり返る程の怒りをおぼえた。それは、明確で純粋な、`殺意`。私は自分でも驚くほど速いスピードで男に接近し、固めた拳を男の鳩尾に沈めた。
軍服の男「うっ!」
男がひるんだうちに私は男から銃を取り上げると、男の脳天に向けた。
セレ「死ね。」
私が引き金を引く前に、羽が私の手の甲を裂いた。私は銃を取り落とす。
セレ「誰だ……!」
ソキウス「そこまでだ、セレ。」
羽を飛ばしたのはソウだった。途端に私の中にあった赤いものが無くなり、青く変わった。
セレ「ソウ!」
私はソウに飛びつく。美しい白銀の毛はボサボサで、息も上がっている。
ソキウス「セレ、聞いてほしい。現状、リライナが殺られた。不意打ちを食らった。守れなかった………すまない。」
セレ「ママ、が?」
私は足元から崩れ落ちる。視界がぼやけ、背中を冷や汗が伝う。そんな私をソキウスが鼻で慰めてくれた。悲しがっている場合じゃないと思い、私は涙を拭いて立ち上がる。
ソキウス「谷の子はアルスと一緒に脱出する。オリバーはいるか?」
セレ「オリバー………。そうだ!オリバーが!」
ソウは壊れた玄関から家の中へ入る。私はソウをオリバーの元まで連れて行った。私はオリバーの胸に耳を押し付ける。脈も呼吸も浅い。
セレ「オリバー、死んじゃうの!?」
ソキウス「落ち着け。止血をするんだ。それからリュコス山で採れた薬草を持ってきなさい。」
ソウの指示に私は従う。奥の棚にある包帯と薬草。それから白いタオルを持ってきた。私はタオルを傷口に押しつけ、体重をかける。血がジワリと滲む。ソウは薬草を見つめた。薬草が青い光に包まれ、浮く。ソウが何かを呟くと、薬草は粉状に変わった。私は薬草をタオルに付け、再び傷口に押し当てる。それから包帯を少しきつめに巻いた。
ソキウス「これは応急処置だ。一時間後くらいにまた動けなくなる。」
ソウが言うと同時に、オリバーが起き上がった。私は目を見開く。あの薬草はとんでもない代物だったらしい。薬草収集をサボらなくてよかった。
オリバー「あれ?俺は………?何でここに?」
セレ「オリバー!」
私はオリバーに抱きつく。すると、オリバーは心底嫌そうな顔で私を引き剥がした。
オリバー「セレ頭おかしくないか?」
セレ「なんで!?おかしいのはオリバーでしょ?私のこと、す、好きなんでしょう………?」
私が顔を真っ赤にして言うと、オリバーはため息をついた。
オリバー「あのなぁ?俺みたいなイケメンに好いてほしいのは分かるが、俺はお前が好きじゃない。」
セレ「え………?」
ソキウス「セレ、言いにくいんだが。月蓬華草は使うと、記憶の混乱を引き起こす。それは、感情にまで及ぶ。」
ソウはそこで言葉を切った。私は分かった。感情に混乱が起きて、オリバーは私が好きという感情を、無くしてしまったんだ。
あとがき
オリバーが好きです。
格好いいじゃないですか?今回はそんなオリバーの話でした。
軍服の彼は何者なのか?
セレはどんな選択をするのか?
五話でも会えることを楽しみにしています。