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休み時間
2026/02/15 休み時間
「柳瀬さん、ちょっと。」2時間目の終わりの中休み、友達と校庭で遊ぶために教室を出て行こうとした時、先生に呼ばれた。先生の方に行くと、囁くように言われる。「佐伯さん、いつも1人でしょう。だから柳瀬さんが仲良くしてくれないかしら。」私は教室の隅にいる佐伯さんに視線をやった。1人で席に座り、本を読んでいる。確かに彼女が誰かと仲良くしているところは見たことがなかった。内心で面倒くさいなと思ったけれど、断るのは苦手だから頷いた。
「ねえ、佐伯さん。」佐伯さんの席に向かいながら声をかける。本から顔をあげ、分厚いメガネのレンズの奥で瞳を細める佐伯さんは、表情がないようで話しにくい。私は胸に抱えた運動帽をいじりながら続けた。「一緒に遊ぼ。」彼女は、わずかに目を見開いた。
「…うん。」
佐伯さんは本に栞を挟んで、立ち上がった。机の横にかけてある運動帽を手に取り、私の様子を伺いながら歩き出す。私は本当は走って運動場に行きたいくらいだったけれど、自分勝手だと思われるのも癪だから、彼女の歩くスピードより少し速いくらいにとどめた。教室を出て廊下を歩き、階段を下り、下駄箱で運動靴に履き替える。運動場に出ると、私を待っていた友達2人に、「ミナちゃん、早くー。」と声を張り上げられた。私は佐伯さんの方を見やって、一瞬迷って、結局走った。
「ごめん、遅くなったっ。」息を弾ませながら合流すると、友達が、こちらへやってくる佐伯さんに目を向けた。私は友達が何を言いたいのか察して、頭をかきながら少し笑って見せた。佐伯さんに聞こえないように声量を落として、言う。「先生に遊んであげてって頼まれたの。ほら、佐伯さんって、いっつも1人でしょ。」友達は意外とあっさり納得したようだった。でも少し嫌そうな、気まずそうな表情で、「じゃあ今日何して遊ぶ?」と首を傾げた。
私たちに追いついてきた佐伯さんに何をしたいか訊いたら、なんでもいいよと言われた。だから無難に、鬼ごっこ。私が鬼で他の3人が子、私から逃げる。10秒数えて子を追いかけ始める。足の遅い佐伯さんを真っ先に見つけたけど、佐伯さんをタッチして鬼にしちゃったら、つまらないかな、と思った。鬼が佐伯さんのまま中休みが終わっちゃうかもしれない。それにあまり仲良くないのに鬼にするのも、なんだか申し訳ないような、変な感じがする。だから私は、彼女をスルーして、友達をタッチすることにした。
佐伯さんは中休みが終わるまで、多分、1回も鬼にならなかった。
教室に戻ると、先生がこっそり私に訊ねてきた。「仲良くできた?」仲良くできたのかな、とよくわからなかった。でも、頷いた。先生は満足そうな顔をして、私は上手く答えられたことに安心した。
佐伯さんの席をちらりと盗み見ると、佐伯さんは、3時間目の算数の教科書をペラペラとめくっていた。