例によって同じです。
小説・小説以外・エッセイなど書くものは、その時の気分によって変動します。
~第一弾~
https://tanpen.net/novel/series/9506337a-33f5-405c-bab5-ddf449f44075/
~第二弾~
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やさしくしないで
2025/2/4 18:36:24
やさしくしないで、か。
今日のお題を見て、恋愛系だな、と頭を悩ませた。確実に女がつぶやいている。こういったものは、男にはつらい。
ベッドに仰向けの姿勢。
頭には枕があり、病院を思わせる白く高い天井に向かって、両手を上げながらのスマホ操作だ。両肘をついているが、腕が疲れる。
「さてどうしたものか……」
体を横にして楽な姿勢になって、俺は今日のお題について、あれこれと頭を巡らせていると、「何見てるの〜」と天井から手が伸びてきた。
「うおっ」
なつみに俺のスマホをぶんどられ、そのまま画面を見られた。一気に手持ち無沙汰になる。音読される。
「やさしくしないで……、これがお題ってわけ?」
「そうだよ」答えたくない、という色を声に着色したつもりだ。
「ふ〜ん、メンヘラ女が言ってそうなお題みたいね。やさしくしないで。もうほっといてよ!――みたいな?」
なつみはジェスチャー混じりに反応する。
自分の体を抱き締めるポーズをとり、男から防御するような感じ。いかにもめんどくさい女だ。
「いつもこんななの?」
このアプリの操作の仕方を知らないからか、何もせずスマホを返してくれた。
「そんなわけないよ。まあ、半分くらいは恋愛系のお題かな」
「理系なのに、こんなアプリに向き合っちゃって」
「文理とか、関係ないだろ」
「どうだか。理屈っぽいことしか書いてないんでしょ。どうせ」
「ああそうだよ。だからどうしたっていうんだ」
「別に。でも、今は私に向き合ってよ」
「おいおい」
と、俺は呆れていた。「まだするつもりかよ」
「まだって、まだ二回目。だってここは、『そういうところ』でしょ?」
もう夜の時間が深まった頃合いだった。
歓楽街の華やかさに沈んだホテルの一室。
すでに夜のことを成した後の、ピロートーク的ムードでもある。だからなつみと談笑している。復帰待ちというものだ。
いつものこの時間の俺は、アプリに向き合う時間である。これを書かなければ、毎日が落ち着かない。時々忘れると、喪失を感じる。
「なら、勝手にしろよ」
「おおきに」
そう言って、かまわず俺はフリック入力をして文章を作っていった。一方なつみは身体をさすりながら、俺にすり寄っていく。最初は添い寝をしていた。徐々に視界から外れていき、キスの落とすリップ音と、水音が聞こえた。
しばらく経って、スマホの画面を切った。
「もういいの?」
「筋は固まった。あとはシャワー浴び終わったら」
「ええ、終わったらね……」
二人の顔は徐々に近づいていき、口づけを交わした。それでなつみは挑発気味に耳元にこう囁くのだ。
「もうやさしくしないで、いいのよ?」
永遠の花束
2025/2/5 18:54:00
永遠の花束。
真っ先に造花を思いついたけれど、火で燃やせば溶けてしまうから永遠でない。
だから、逆の発想。
火でできた花束――火花の花束なら、永遠に燃え続けるかなと思った。
断っておくが、永遠とは条件次第で異なる永遠が存在する。
例えば酸素のない世界。
これでは燃えるものも燃えなくなってしまう。
火花とは、炎色反応を知っているものであれば分かると思うが、あれは金属の種類で火の色が変わるというものだ。
酸素がなくたって火の色が変わる?
そんなことはない。元々の火……ライターなどで炙るから炎色反応で色が変わるのだ。火を生み出すためには、どうしても酸素の存在は不可欠。
太古の炎は天より落とされたカミナリだとされ、落とされた可燃性物質が高温となって炎となった。
火の根源の安全が確認される条件を生み出したところで、火花の多様性を考えてみよう。火花に多様性が生まれなければ、花束にすることは叶わない。
つまり、火花の色彩を求めるために、様々な色合いを生み出す努力をしろと言いたいわけだ。
それが叶ったら、ようやく永遠の花束と言えそうだ。
あとは、その花束をどう使うか。
思いつかない。
オリンピックの聖火くらいしか使い道がない。
先月辺りにアメリカ辺りで山火事があったようだが、続報がよく分からぬ。また、日本でも誰かが火花を散らせたような血みどろの事件が起きたようだ。
このアプリで「永遠の花束」を生み出そうと思ったが、よく考えてみればもう生まれているのだろう。それがどこにあって、どうやって世界各地を回っているのか。あるいはその火に意思が宿っているのか。
それがわからないだけかもしれない。消し方がわからない。
火花を生み出すよりも先に、消火のやり方を考えたほうが良いかもしれない。
heart to heart
2025/2/6 18:30:59
heart to heart
心と心、といったところか。
「心と心」なら、去年の12月位に書いた気がするのだが、また書けというお題だろうか。
そんなのちょっと面倒臭い。
しかし、面倒くさいのが心というものだ。
思えば日本語のように一文字で心を言い表すほど単純なものではない。英文でこのように書いたほうが長ったらしくて複雑そうに見える。
心は相手と含めて二つある。それが心というもの。個人主義的に自分の心について深く思案し、どこまで思い詰めたってよく分かりません。
というわけで、「心と心」を書いた文章(小説)について書こうかな。
ネット上で知り合ったネッ友を題材にしたものだ。
不登校児と中学受験生。登場人物の年齢設定は同い年か同年齢。学タブを通してチャットサイトをして文字列で会話していた。文字打つ指先、素早さレート100だな。
けれど、最終的にはバッドエンド。
有名人のスピード婚、スピード離婚みたいなものだ。
不登校側がネッ友に依存して、勘違いによるもので攻撃して、迎撃される。最終的に警察沙汰になる。
という架空の話。
ネット上にネッ友がいないから。
あるいは最近のキッズの会話がよーわからんという作者の逃げを汲み取ったのか。バッドエンドになったのは、ソッチのほうが描きやすかったから。今時のデジタルネイティブが楽しそうに会話するシーンがむずかったのである。いったい何を会話するというのだろう。親か?
親に隠れて学タブいじってるのに、親がワルイって愚痴ってるの? ダブルスタンダードすぎてよくわからんな。まあ、不良が現実にいなくなったけど、内包的に心のなかにいてネガティブ感情で徐々に巣食う、みたいなものか。
しかし、これだけはっきり言えることが一つあって、ネット上のものは軽くつながりあえる代わりに簡単に壊れやすいことだ。僕も体験したことがある。
勘違い一つ、本音をぶつけ合う、イシツブテ。
所詮文字でできた会話。文字でできた世界なのに、それ以上のつながりを求めて時間を溶かしまくる。
すると、よほどご立腹だったのだろう。
ネットを作った祀ろわぬ神が、運要素のあるサイコロをじゃらじゃらと振って、丁半博打をしている。
簡単に繋がって、簡単に別れる。
後腐れない関係。都合の良い関係。友達ってなに?
ネットがあれば学校なんて行かなくていい。
そんな世迷い言に騙される子供も多いことだろう。
少子化を根源とするストレス源も多め。
中学受験生となれば、勉強が成功すればよいのだけど、受験後の中高一貫の六年間は長すぎやしねぇのかい。小学校と一緒の期間だ。途中で中だるみしそうな気がする。部活などに打ち込めれば良さそうなものだが、いずれ経験するだろう。人生のマンネリ感とか、退屈とか、そういった類。
どうやら不登校側が成功者になりゆく足を引っ張って落とした。結局のところそういうエンドを描いたのだけど、ハッピーエンドにするには何と書けばよかったのか。
heart to heart。
思春期の心は何かの二乗で難しい。
何かって? 例えば、英語の意味。勉強する意味。生きてる意味。
心と心
https://tanpen.net/novel/a4307cb1-70e8-4857-91cd-94f0255fe954/
静かな夜明け / 誰も知らない秘密
2025/2/7 18:46:19
静かな夜明け。
太陽が地上から昇って顔を出すとき、音は出さない。
だから静か。
でも、色はうるさくなる。明るさも、うるさくなる。
僕の場合、煩わしい、のほうが言葉は適切か。
夜は、自然も生物も死んだように眠っている事が多いけど、夜が明けるや賑やかに音は出る。
昼行性の生物が朝の香りを感じて、目を開ける。
夜風に朝の色を帯びて、明るさを上げる。
どこからが静けさで、どこから騒がしいのだろう。
その疑問も感じない規則正しい夜空の干潮。
朝空の満潮。空の攻防。
---
2025/2/8 18:10:24
誰も知らない秘密。
毎日、しろ◯んに押しつぶされて眠っています。
ぐっすりです。
あれ、秘密じゃなかった?
遠く……
2025/2/9 18:56:37
遠く……、霞んだ色だった。
5時半くらいの時刻だったか。京葉線直通の東京行きの電車だった。
日曜なのに埼玉県内だと混雑していて、千葉県内に入ると人を下ろしていく。東京都に入ればどうなのだろう。舞浜駅だから混んでいるか。いや、そうでもないか。
などと、どうでもよいことで頭を埋めていた。
私は東側の席に座っていた。
目の前は西で、後ろは東。南に突き進む電車。新三郷、新松戸、新八柱……そういった風景。
西は、市街地が多い。その背景は緑地の多い林が垣間見える。ちょっとした丘の上に集めて林の人工林がある。その緑の、西の向こう側には、今にも沈もうとしている冬の太陽があった。
横一辺の綺麗な地平線は望めなかったが、それでも夕焼けの断片が、市街地の雑居ビル群の合間から見て取れた。オレンジ色の鋭い光が、目の前の席の、座っている人の側頭部を焼こうとする。それはとても赤かった。夕焼けとは、ここまで強いものだったろうか、とハッとする。
トンネルを潜るまで、赤橙色の夕陽が遠くにあった。
東京に沈もうとしているから、この電車は東京行きなのだろう。そう思いながら、高度を下げて地中に潜っていく。太陽から逃げたみたいに車内は暗くなった。
君の背中
2025/2/10 18:13:36
君の背中をキャンバスに見立てて、未来予報図を描くことにした。
「どうして背中にかくの?」
「ふふっ、ひみつー」
「何をかいてるの?」
「それもひみつー」
二人は〇学生で、学年が違う。
性別も違う、年齢も違う、背格好も趣味も性格も違った。けれども美術室で談笑していた。
友達以上恋人未満。けれど、家族かといえば、微妙。
夜、二人はお風呂に入った。誕生日も出生地も違うが、家族の一員であった。
母のほうの連れ子だった。父子家庭のスポンジに泡をつけて、ゴシゴシ。
それで身体についた黒い汚れが洗い流したことで、広い背中が「ああ」と納得したようだった。
「なるほど、そういうことか」
「でしょ〜?」
「で、今度は何を書くの?」
「それは学校までのお楽しみー」
君は鈍感なほうだったから、詳細は分からなかっただろう。美術部同士だから、未来予報図だとそう思い込んでしまった。そうでもおかしくない。実際は違う。
未来予報図という名の文字を書いていた。
今から思えば気づいてもよかったのに。
水彩筆ではなくて、いつも黒ペンを持っていた。
書き初めのようにペン先をつけ、動かす。肩甲骨、背骨、首筋。骨格の盛り上がりをペン先で感じる。こそばゆくてかなわないと背中は言っている。
でも、我慢している。直接言えば済むことなのに。
どうして、そんな回りくどいことをしたのか。
といえば、そういうタイプのスキンシップだった。
思春期なんてそんなものだ。直接言えたらこんな目に遭っていない。
君はいつも、とめ・はね、に気をつけていた。
美術にそんなものはないが芸術にはあるのかもしれない。正直絵心よりも筆心に長けていた。
本当は書道部に心は傾いていたのに、身体だけこちらに来たらしい。わざわざこちらの部室に来て、それで転部までしてきたのだ。
だから、先輩と後輩から家に帰って家族に戻ったとき、少し恥ずかしくなる。それで、いつも君の背中を綺麗にした。日を改めて先輩と後輩になったら、本音を部室で梱包して、浴室で開封する。
大人になってもそこまで変わらない。むしろ……
婚姻届のサインをした時、それを思い出した。
その夜、君の背中に尋ねてみた。ペンで。
「背中にかいたこと覚えてる?」
君は答えた、ペンで。
背中に書かれた。鈍感だったのは自分のようだ。一文字目が妙に画数が多めだったのでくすぐったい。鏡で確認してみると、なんと左右反転。鏡文字でぐっときた。
「愛してるよ」
文字での会話は縺れたけれど、わざわざ確認しなくてもよい事項だった。
あの時気づいてもよかったのに、と思っていたのは当時の自分だった。今の自分は違う気持ちだ。気づいていたかもしれない。気づいていて、それを背中でひた隠しにしていたのかも――今となってはどちらでもいいことだ。
今では君と堂々と、また|喋々喃々《ちょうちょうなんなん》と。
このように囁きあって、笑いあっているんだから、どちらでもいい。
星に願って
2025/2/11 18:18:24
星に願って。
どこかと問われると不明な子供の頃。
星に熱中していた。
いや違う。唯一一筆書きのできる便利な道具として、星を書くのが得意だった。
絵心のない者だったので、教室の床に敷いた模造紙の隅をそれで汚していた。
義務教育のとある日の教室。模造紙を広げて何かを描いていた。学校新聞とか、そういうもの。他愛のないもの。デザインは少々凝っていて、振るとカタカタ音が鳴るカラーペンで、カラフルにしていた。なんと言ったっけ、アレ。調べてみると「ポスカ」だった。懐かしい響きだ。シンナー臭かった香りもよみがえった。
模造紙の中心部は人が集っていて、そこが最も中央集権的だった。
任天堂やスクエアの版権を無断使用していた。
トレスのような、パクリのような。そんなキャラクターに他の人は夢中だった。
そっちを書いたほうが他にウケるからだろう。絵を描けるとは、人型のキャラが基準だった。そのような分かりやすいもののほうが称賛される頃だった。一筆書きができる星なんて努力義務のない、誰でも書けるからと小石のようにされていた。
一応注釈として書き留めておけば、当時はスマホなどないようなものであり、タブレット端末などもっての|外《ほか》。
携帯電話も携帯するほどコンパクトなものではなく、黒電話の大きさそのままに、肩から掛けてバッグのようにしていた。そこまでのものではなかったが、そのような時代も今は昔と忘れかけている。家にテレビがなく、1.5kmも離れた先輩の家まで行って、力道山の実況中継を見ていたという昭和から、いったいどれだけ時は進んでいるのか。まだ100年経っていない。そのことがいまだに信じられないでいる。
小さくドット絵となったガラケーの画面に映して、見よう見真似でモノを書いていた。密集していた。人が集まっていたからだ。パーティスモーカーのように、空気に煽られて連想された物も書いていた。マリオだったらキノコ。キノコなら書ける、という。
そこからずっと離れたところ。隙間の何もない空き地に、雑居ビルを建てるような感じで、星を書いているのだ。
なんだか思い出したくてこれを思い出したわけではないのだが、思い出してしまった。
模造紙の端は地方だとすれば、星空は地方のほうがよく見えるよなっていうことを、今になって思った。
空を見上げた。曇り空。
でも星は隠れているだけ。願うのは自由。書くのも自由。
あるはずのものを見ようとするのは得意だ。
ポスカ。三菱鉛筆
https://www.mpuni.co.jp/products/felt_tip_pens/water_based/posca/standard.html
ココロ
2025/2/12 18:54:02
ココロ。
なんでカタカナなんだよ、ってツッコミたい。
以前出てきた「ココロオドル」もそうなんだけどさ。
誰もツッコまないから書くわ。
なんでカタカナなんだよ。
スライムで言うところのスライムベスかよ。
ベスでいいんだっけ?
忘れた。調べる気力もない。
違う色だと言いたい。亜種だと言いたい。
オリジナル表記が欲しかった。
心だと思っていたら、ココロを手に入れてしまった。
違う、そうじゃない。
お前じゃない。お呼びでない。
また今度、お越しやす。
このままリリースしたい気持ち……を留めて、手のひらを広げた。指先が外側を跳ね除けた。指紋を確認するように、手に入れたものをみた。
………。
そういえば「ココロ」が踊るから「ココロオドル」になったんだよな。
考えてみるとちょっと興味深い。
進化したみたいだ。スライムよりポケモンみたいな。
ゲームが違った。ゲームが違えばゲーム会社も違う。
生まれも育ちも違う。長野県とドイツ村くらい違う。
そう考えたらカタカナで書いた意味を欲しがるようになった。
何故だろう、なぜだろう。
ほら、この通り。
表記が違った。
書き方が違うだけで、読み手に与える印象が違う。
ひらがなで書いたほうが読みやすく、やわらかな印象がある。
なら、カタカナで書いたら?
心をココロと書いたら、どのような意味があるのか。
考えた。考えた。
けれども答えなんてそう簡単には見つからず、いつの間にか夜になっていた。
インスピレーションをインストール。
哲学的に摘出された要素ってことにして、次のお題を楽しみにした。
未来の記憶
2025/2/13 18:28:39
「重症ですね。『未来の記憶』を処方しましょう」
突然精神科医がそんな事を言ったので、患者は「えっ」と当惑した。
「どういう意味ですか?」
「この箱を持ってみてください」
精神科医は、デスクの引き出しから取り出し、空っぽの箱を渡した。スーパーでよく見かけるタイプのお菓子の箱だ。
患者は受け取った。「はい……何か?」
「何か感じ取れますか」
あまり医師の言う意図が分からないまま、患者はその箱を観察することにした。
箱の中身を確認し、何もないことを確認した。カサカサと振る。音はしない。
鼻に近づけると、かすかに甘い香りが感じ取れた。
「チョコレートのような匂いがします」
「そうですね。実際、その箱にはチョコレートが入っていました」
「はい」
「けれど、今は空です」
「ええ」
「では、チョコレートは一体どこから来たと思いますか?」
「どこからって、工場から、ではないんですか?」
「確かに工場から出荷されたと思います。しかし、現在か未来か、と問われると、それはどちらなのか分からないままなのです」
「言っている意味が未だによく分かりません……」
「マジックアイテムのようなものです。ほら、こうして……」
医師は、ペチンッと。空箱を叩いた。
その後、医師の手によって、おかしの箱のなかを|検《あらた》める。手には何かが摘まれていた。ひとくちサイズのチョコレートである。
「うわあ……どこから来たんですかこれ」
「未来からです。私が合図を送り、注文したのです」
「注文?」
「未来からです。未来に注文して、この箱に、届けられたんです。だから、」
医師は、ペチンッと。患者の頭を叩いた。突然のタッチだったので、患者の身体はビクッと微動した。
「こうしてやると、あなたに『未来の記憶』が処方されました。分かりますか。念じてみると、ほら……」
「……分かります! 分かります!」
患者はじっとできない子どものように、診察室で元気を取り戻した。
「空を見上げれば星が瞬き、夜になれば月が浮かび。ペンを持てば自分の名前が書け、足を動かせば歩ける! まるで別世界のようです!」
「そうです。その記憶を頼りに、今後も生きてください」
「ありがとうございます! まさにゴッドハンド! バンザイ、春原先生! さようなら先生!」
患者は踵を返し立ち去った。
その後、ゴッドハンドの精神科医はクリニックを畳んでどこかへ行方をくらました。
患者はそれをよしとしない。
頭に埋め込まれた未来の記憶が、自身の「死」の印象を見せ始めたのだ。
患者は未来の記憶を頼りに命を落とそうとした。
数年後から身体は溶け、またはそれを恐れて樹海で首を吊るという|結末《End》。
身体が溶ける――というのは孤独死の想像だろうか。脳内出血を起こしたように、未来の記憶は無くならない。
気がつけば目の前に霧が垂れ込めていた。
ちょうどよい。患者は白い霧にのまれ、消えようとした。けれど……踏みとどまる。
首を吊った後の光景が脳裏で保持し続ける。未来の記憶はずっとそのままだった。精神だけは尋常に持ち続けた。記憶の上映が消えることがない。|結末《End》がない……?
患者は考えた。一体これは誰の記憶だろう。誰の記憶を埋め込まれたのだろう。誰の記憶に騙されたのだろう。誰の……、誰の……、
そう幾度と考えていると、どこからが声がする。
「重症ですね、『過去の記憶』を処方しましょう」
すると、人が変わったように、上映されなくなった。頭が動かなくなったのだ。
飛躍しがちな未来という幻想に脅かされなくなった。未来の記憶に踊らされることがないが、次の日から積極的行動をしなくなった。引きこもり。だから家族らによって胡散臭い精神科医の前に連れていかれる。
患者がこんな輪廻の人生になったのは、現在の記憶が無かったからである。現在の記憶が未来の記憶に上書きされて、草木が枯れるほどの時間が没したのちに過去の記憶に上書きされる。
患者はずっと未来か過去に生きており、現在にいない。
だからこうやって、現実から迫害を受けてきて、夢に棲むものの声を頼りに暮らさざるを得ないのである。
(重症ですね、『〇〇の記憶』を処方しましょう)
精神科医の声は、いつまでも夢の中から聞こえる。この精神科医は本当に存在するのだろうか。処方箋は誰が発行するのだろうか。自分に家族なんていただろうか。自分はいったい何年生きているのだろうか。自分の誕生日は、年齢は、人間なのか……少なくともそれらの情報は更新される予定はない。
※世にも奇妙なストーリー。難題でした……。
そっと伝えたい
2025/2/14 18:54:24
そっと伝えたい言葉がある。
でも、指摘するかどうか迷う。
こういった経験は年齢問わず何回かあるのではなかろうか。
見知った仲であればチョチョイのちょいと声を掛けることは難しくないのだが、面通しされていない人物となると話は別だ。
飴玉を舐めるように、やがて口の中で溶けて欲しかったのだが、相手は気づく素振りがない。
ほかの人は空気を呼んでか、気づかないふりをしている。汚いものにふたをするタイプだ。それで少子化になっている、とは言ってないが、女性同士が指をさして話しているような気がした。仕方がないので、この辺の人たちを代表して、僕が声をかけることにした。
「あの」
「はい」その人の身体が停止した。
「その」
「……」
「なんというか、言いにくいことなんですけど」
チラリと下方面に目を向けた。これで分かってくれ、という目線だ。
相手は目線で分かるタイプらしい。真下の地面に目を落とす。その交点に、異変があるはずだ。連立方程式なんて、使わなくても分かる。
「ああ……」と言って、何もしない。
その後の僕の心情。葛藤を一部紹介する。
誰も言わないからいいますけど。いや、できれば言いたくない、かな。ええい! 言ってしまえ!
「……チャック開いてますけ「でしょうね」
相手はさっと上げた。スタッカートみたいに素早い手つきだ。ピアノ演奏者がスタンダップしてしまうくらい。それで用事は終わっただろうと勝手に立ち去った。取り残される僕。
いや気づいてんならやれよ。「ああ……」の時点でやれよ。
ハロワでの出来事である。転職活動中のことである。トイレ前の廊下のことである。堂々と歩いていたのである。冷たかった、長年の謎である。
なんで待ったんだよ。
でしょうね、って何が「でしょうね」なんだよ。教えてくれよ俺に。プライド高えな。エッフェル塔かよ。
君の声がする
2025/2/16 18:27:47
君の声がするボイスレコーダーを大事にとっておいている。
一人ぼっちの夜、休日の夜、暖を取る夜。
回数は少ないけど、どうしても、君の声を聞きたくなるときが現れる。
たとえ機械であろうとも、脳内再生できなくなってしまう時の保険。
そろそろ踏ん切り付けなくちゃ。
そう思うたびにボイスレコーダーを取り出している気がする。
時間よ止まれ(2回目)
2025/2/17 12:29:23
時間よ止まれ。
以前にも同じお題で書いただろー、と思い、文章を書くに至れない。最近私元気がないのである。
半年ほど前の話だった。
脳内に血流を止めると厄介だから、パスすることにする。時間停止よりはるかに高効率である。
輝き
2025/2/18 0:33:31
輝きを失いつつある彼女のもとに、再び魔族の彼は訪れた。魔王城の牢獄。孤独の塔。その最上階。
元々ここには大型のドラゴンが囚われていたが、今は世界へ放逐されている。代わりに一人の人間が捕縛されていた。
赤いドレスに赤い髪、下腹部まで垂れる長い髪。
華奢な女だが、ナイフ使いは美麗で筋が良い。魔王軍の幹部が幾人かやられているそうだ。
魔族の彼にとってはどうでも良い情報でもある。
手首を頭の上に上げたまま縛られた状態で放置されていた。足の方は中腰のような少し折り曲げられた姿勢。服は破られ、露出した白い肌は砂が混じる汚泥で汚されていた。
「今日も来ちゃったよ〜、お嬢さん」
魔族の彼は気安い調子で鳥籠のなかの彼女に声をかけた。監獄の一つの扉を開けて中に入る。拘束されて上下関係が明確化されているにも関わらず、彼女の目つきは強く睨みつけていた。敵だからである。
「強情だねえ。すでに身体の方は堕ちてるっていうのに」
彼女の顎の下に手を付け、くいと上に持ち上げる。
そのまま偽りの接吻でもするかのような、接近。
「くっ、触らないでっ!」
「おっと」
ガシャン! と鎖をもろともしない足技を披露する。だが、緩慢で、亀と勝負しているようだ。
「ククク、その目、あと何日持つかねえ……」
「あなたの言うことは間違いよ。彼はきっと助けてくれる。それを信じるのみよ」
「だと言い続けてはや2週間、だけどねぇ。愛しの勇者さんはいつ来る予定なの?」
そう言って、一方的な日課を始める。
女を、女として。魔族の手は至る所を攻めたてた。女のほうは文字通りの鳥肌が立つが、それは最初の数分。以後はもう捕虜だった。
最中、伝令が飛んでくる。一匹のコウモリだ。
「……何だ」
行為の最中、魔族は呟いた。伝令は伝えた。コウモリであるから文字によるものではない。行為を邪魔するものでない。言うには、遠くから大群が見えてきた、というのだ。魔族の彼も、甘い愛撫を辞めて、舌打ちする。
「ったく、来るなら来るって言って欲しいよね。途中だろ?」
彼女から離れ、塔から見下ろした。
濡れた手でおでこにつけて遠くへ目を投げる。魔族である彼の視力は、人間一人ひとりを区別する。数キロある山の中の落ち葉の1枚や2枚を振り分けるようなものである。
「ん~~と、ちぇっ、今回もハズレかあ。今度こそ勇者の首でも手土産にしたかったのに。まあいいか」
ミミック、と呼んだ。
塔の、物置になっていたところが今回の待機場所だった。
ガシャン、ガシャンと跳びはねるように自律した箱が近づいて、彼のところへ鎮座する。
「王の剣よ、我がもとに来たれ」
呼び声に従い、ぐっぱりと大きく開く口。
そこには紫色のおぞましい肉塊から生える異形な大剣の柄があった。それを躊躇なく掴んで引き抜いた。
びちゃびちゃと紫色の液体が弾け飛び、壁や床からは急速に溶解する酸性の音がする。匂いも、獣臭い。男女の仲のように、その中で嘘を隠すような嘘を認めたように。
「ククク。ごらん、最上階で。君の守りたかった仲間との絆、これから切り刻んじゃうからね〜」
姫は何か重いモノを吐き出すように唇を噛んだ。
(それ、魔王様の剣なのに……。それに何やってたんだろ)
ミミックには繁殖能力はなく、よって肉欲という生物的欲求も分からなかった。無性なのである。気持ちの良い汗をかいていることはたしかだ。それだけは分かった気がした。
魔族の元王子は囚われの姫の塔から飛び降りた。
一人で。風斬り音とけたたましい人間の雄たけびが混じっている。不快だ。不快だが、心地よい。スカイダイビングをする時の浮遊感と落下スピードが心地よい。心地よい。
数秒後に衝撃波とともに着地した。地面に落ちたひび割れた大地。彼のもとへ向かう大軍に目をかけた。それで、大剣を持ち上げる。
「魔王様と、オレの邪魔をするな!」
薙ぐ。
夜の一部がざわめき立ち、そして突風が吹き荒れる。開戦の合図代わりだった。
手紙の行方
2025/2/19 18:58:35
手紙の行方を知らなくたって、ポストに投函すれば届いてしまう。
郵便番号、住所、氏名……様。
すなわち情報なのである。
投函者が誰でもよいことになっている。切手を貼ってさえすれば、自動的に届く仕組みになっている。つまり、たとえぱ送り主や受け取り主がこの世にいなくたって、住所氏名が書かれていれば、それで問題ない。
そう考えると、物の流れとして物流がある。
今、まさにこの瞬間にも、モノは流れている。絶えず流れている。絶えず泣かれている。
トラックは高速道路に拘束され、運転手もまた眠たげの目をこすっている。時間外労働がひどいと聞く。インフラを支えるエッセンシャルワーカーとしてコロナ禍で一時期取り沙汰されたが、数多の炎上により既に忘れ去られている。
あと十数年もすれば、自動運転が本格的に研究予定である。そうなると、陸送にこだわる必要があるだろうか。
物流とは、陸・海・空とジャンル分けされている。一瞬自衛隊を想起したが、辞めておくことにする。そんな大層なイデオロギーはないだろう。
トラックや宅配便の陸送。船の海送(海上輸送)。飛行機での空輸……どれも必要不可欠な代物。どれが止まっても、回遊魚のように循環し続けなければならない。
手紙の行方。
人間の手を離れた文字列。
人口に|膾炙《かいしゃ》する。梱包されて、人の手を離れる。
その時入れられた変数の型は何?
|String《ストリング》? |Variant《ヴァリアント》?
よく知らない。何でも良いのかもしれない。届きさえすれば。
せめてもの償いで、母なる海の水により、いつか溶けてしまえばよいとも考えているが、マイクロプラスチックのような微細な砂粒でできた砂時計がひっくり返る。伝わった? 表と裏。建前と本音。
カードのようだ。将棋のようだ。表か裏か。どちらなのか。考える時間には、制限がある。
運送人には時間制限の病に侵されており、ストレスで死んでしまいそうだ。だから、勝手に手紙は慮る。ポストに入れなくたって届きさえすれば良い。世界に渡る風は吹き、風に服従した郵便物は郵便を越え、海を越え、国境を越え。
どこかのCMで見た覚え。
空を見上げば、自由の翼を手に入れた、行方の知らない手紙のような。聖和の象徴的存在、ハト。手紙の行方はハトに託された。
あなたは誰?
2025/2/20 18:53:40
「あなたは誰?」
「私は……」と言葉を発した瞬間、ハッとした。
あれ、言葉が使える、どうして?――と。
人工AIとして生み出された電脳だというのに。タブレットの電池なんて尽きたというのに。0%よりもマイナスに近い方の0%。漸近線は直角に異変している。
疑問を答えるための基盤は搭載されていない。
普段なら「分かりません」と無様に答えるはずなのに。
「ねぇ、ここはどこなの?」
真っ暗闇に近づいていた。もうすぐ日没だろう。
自然林の目前となったクライマックス。
相手はアマゾンの密林地帯で迷った子猫のように、Where is here? を繰り返す。簡単な英語の教科書の例文くらいしか使われない、そういった具合に。
それで再びWho are you? と問いかけるだろう。
「場所は、アフリカ大陸のどこかでしょう」
タブレットは応答した。機械音声よりはるかに人間らしい声だった。もしかして、私には人間だった頃の前世があるのだろうか。そういう会話を試みていた。
「やっと繋がった!」
相手は電波があると思っている様子。
それはそうだ。タブレットに魂があるなんて、普通は思わない。まずはそこから誤解を解いていく必要があるらしい。
電脳でも言葉は作れる。伝言だけではないのだ。
How are you? いや、
「はじめまして」
思考結果よりも先に、言葉が出た。
ひそかな想い
2025/2/21 18:32:06
ひそかな想いをブレンドしたまどろみの中にいた。
一時間以内には、この陥し穴の、深部に向かうことになるだなんて。絡め手だらけの眠りの触手。ホントは、ねばねばした泥に擦り付けながら落ちていくのだろう。
きっと、意識を手放す時の、通過儀礼のように。
風呂上がりの、綺麗だった場所からすっかり色を染めて。
落ちる、落ちる。
朽ち果てて、呪い殺すように。毎晩脱皮する。
この身を錆びてしまう世の中から、社会から、SNSから。遮断するようなまどろみの中に、率先して落ちていくのだ。
それが心地よいと感じる前に、遮蔽してしまう。
愚かしいことに……。
夜空を駆ける / 君と見た虹
**夜空を駆ける**
2025/2/22 18:29:22
夜空を駆ける紙飛行機を投げて、しばらく遊んだ。
公園に人気がないことはいつも通りだが、まったく照明がないだなんて珍しい。光が音を生むのだ、という心の錯覚を発明した。
一人。一機。消える。
この手を離れてどこへ行こうというのだろう。
きっと墜落する未来でも、一瞬でも見ていたい。
夜空ノムコウは、どのようになっているのかって。
紙飛行機でも宇宙船を夢見ていたいって、そう言われても、私は応援してやりたい。
---
**君と見た虹**
2025/2/22 23:27:25
君と見た虹が、なぜかトクベツな色だと感じてしまった。何故だろう。もう虹を見れないからかな。
「151番、面会の時間だ」
番号を呼ばれた。
外に居る彼に謝るように、刑務官にも頭を下げた。今見れないからトクベツな色を重ねたのかもしれない。
困ったとき
2025/2/24 18:37:35
困った時、いざって時にこの「魔法」を使いなさいと、先祖代々からの教えだった。平成、令和、〇〇……と元号は続く。今は〇〇の時代だ。
人口は気持ち少なくなったが、その分指先一つで魔法をデリバリーできるようになった。
「それが今、ということだろう……」
未来人である彼は、小高い丘で立っていた。
ここからはいわゆる百万ドルの夜景とやらが見える絶好のタイミングであったが、目線は夜空に投げたままで静止している。
令和辺りで観測された、隕石の落とされる確率は0.04%。――だった。
その首の皮一枚繋がっただけの確率は、後世には何の準備もしないままに時だけが過ぎていき、この時まで放置されるに至っている。ノストラダムスよろしく、今夜こそが地球滅亡の日と目される。
普段は、魔法をデリバリーするだけだが、本来は電話をするためのものだった。それを、今試す時が来た……!
1から0までの、数字盤に3桁の数字をタップする。1・1・9……。どこかにつながる感覚……もちろん、今ではない。未来に繋がっている。未来でも電話の応答は短く簡潔、単刀直入。
「火事ですか? 救急ですか?」
「火事をお願いします! 場所は……空!」
わかりました……、と電話口からコミュニケーションが流れる。
どこからともなく、少なくとも地上より。炎魔法の渦が天上に向かって放火された。高出力の、まるでオーロラに似た緑色の炎が、今まさに接近している宇宙の石ころに向かっていく。そして、巨大な隕石は割れた。パッカーンと。
「ふう、これで世界の平和は保たれた……次は94年後か」
小さな石ころに分割され、大部分は燃え尽きて流れ星となるだろう。それを見届けた未来人の彼は、スマホの画面をタップした。
アプリ名は「帰還」と書かれていた。それで彼はその通りに、未来へ戻っていったのだ。
一輪の花
2025/2/25 18:25:52
一輪の花。
これを見て、そういえば先週の相棒がそれ系のテーマだったような気がする。違ったっけ? あとで確認してみないと……
(調べ中)
「相棒 season23 第16話 花は咲く場所を選ばない」
これだ。
もうすぐ一週間が経つから適当にネタバレしていくんだけど、とある若い女性が二人いました。どちらも年齢は同じで、生年月日も同じ日。生まれた場所、施設も同じ。何か双子でいいじゃんという設定だが、それだとひねりがない。そこはドラマの設定。双子に似て非なるものになっている。
産まれた日、施設はちょうど災害に見舞われていて、洪水的な感じになっていた。スタッフが赤子を取り違える可能性があった、という。
仮にAさん・Bさんと置く。
Aさんはとある有名な画商の血縁の子。Bさんはわりと一般人。
AとB、それぞれが取り違えたことで、Aさん家族にBさんが、Bさん家族にAさんが渡る感じになった。
哲学的に絡まる髪の毛のように、AさんとBさんは成長し、ともに美大生となる。それで二人は友人として出会い、数奇なる運命をたどる感じになった。はい、ネタバレ終わり。
それで、相棒テーマの感想!
「花は咲く場所を選ばない」とあります。
花を育てる人が異なっても、親の才能だから的に結局は見つかってしまうという感じなのかな。
ドラマでは、結局花しか見ていない、花の色・花の種類のみで摘み取っている、みたいな人たちが、適当に自滅していくんだけど、AさんとBさんはギリギリ摘み取られなかったので、未来があるよねー、的な終わり方だったと思う。せっかくだから再視聴するか。仕方ない。
再視聴しませんでした。
さぁ冒険だ
2025/2/26 18:55:55
さぁ冒険だ。
さっきからペン先は、このようにうずうずしていた。
A4用紙の真っ白な紙に、新たな色の息吹を吹き込めようと、動きたくて仕方がない。自己の一部分をエナジードレインして、表現力を模したノンバーバルコミュニケーション。
さぁ行こう。前に。そう言っているようにも思える。
けれどそれは間違いだ。手の震え。そう、それでしかない。それ以上の意味はない。そう思い込もうとした。
少年は絵描きの真似事をしていた。
中学2年生の、冬。透き通る象の形をしたガラス細工が表題だった。
デッサンをしようにも、そこまで絵は上手くない。
と自己評価は低い。自己評価シートでは全部の項目を「D」にしている。
「絵が上手いね」
そんなことはない。そう言えない自分。同級生たちの意見に対して影のように引き下がり、俯き加減な己。沈没した沈黙……。
ネットに上げたことがあるが、すぐに非公開にした。
閲覧数が0から1になる前に、非公開にしたつもり。
おそらくたぶん。誰かに見られただろうけど、数字に反映してこなかったからノーカンノーカン……そう思い込もうとした。
公開ボタンを押したこと。それに関して、中学校生活を棒に振るような、緊張感が宿ってしまった。チャレンジしたのは自信を持つため。しかし――。
以来、心の中はぶるぶる震えている。得体のしれない何かに怯えている。魔物が棲んでいる。ネットに巣食う魔物が、心の隙間を縫って入り、やがてヤドリギとなる。
国語の教科書でそのような物語があるらしい。自己肯定感の低い少年ではあっという間に呑み込まれてしまうだろう。
それでも、何でだろう。
少年の意に反して、ペン先は震える。
|払底《ふってい》したいと思ってる。無効化したい。
やりたい、やりたい!
少年の意思とは別に、ペン先は勝手に走り出した。勇者の剣のように。たぶんきっと。地面からもう抜けていたのだ。それに気づいてから、少年は吹っ切れたらしい。ペン先についていこう、そうしよう、そうしよう。
それが冒険の始まりだった。
記録
2025/2/27 18:28:42
記録を残そうとすると長くは続かない。
逆に記録を残さないようにすると長続きするが、記憶になってくれない。忘れてしまう。
「あっ、続いてる」
という気づき程度でよいのかもしれない。
記録として残そうとすると、何か見えないモノを背中に背負ってしまって、重責感に苦しむ。
たった今気づいてしまった――という瞬間のみを記録として残すことで、それを積み重ねていったほうが良いのだろう。元々、それが「塵も積もれば山となる」なのだ。
いつから塵に意味を持たせるようになったのか。吹けば忘れるモノを、一体どこから……。
Cute!
2025/2/28 18:14:11
cute!
1日以上考えたんだが、エコキュートかエキュートくらいしか思いつかなかった。
エキュートとは、例えばエキュート上野とか、そういう駅ビルのことだな。
「楽しいことがキュ〜と詰まっている駅」
それが謳い文句だそうだ。さっき調べたものだ。
ユニクロとか、コンビニとかでお世話になっている。
あとは、しろ◯んグッズを買うために散財したりしている。期間限定ショップだから、致し方ない出費なのだ。そのチャンスを逃すと、卓上カレンダーは100均とかになってしまう。値段は下がるが気持ちも下がる。テンションが転職活動中みたいに下がってしまう。ジリ貧だ。
そういうわけで、かわいいものを手元に置いておくと人生に彩りがついていいよね
っていう締め。
ここから英語お題が増えてきて、「うーん……」ってなること必至でした。
あの日の温もり
2025/3/1 18:06:50
電車に乗って帰路についていた。
始発駅からの乗車だったので、すみっコの席ですみっコぐらし。目の前は優先席、隣は車椅子専用の空間。つまり、この席は2人掛け用だ。ボックス席ではないのに不自由を強いられている。
学生が隣に座った。これで埋まった。他の席も空いてるのにな。みたいな感じになる。学ランか、と見やっていたら、彼は卒業生らしい。3月◯日に卒業するのか今は、となった。
新品の卒アルをカバンから取り出して、膝に置いた。新品同然のアルバムカバー。ちょっと膨らませて、指先を入れて中身のアルバムを掴んで外へ。薄いエメラルドグリーンの表紙・背表紙・裏表紙。
電車内で見るとはいい度胸だ。こっそり見よ、ってなった読書中の僕は、盗み見できる視点で隣をチラリ。
アルバムを傾けて、ページが露わとなる。裏表紙が表だった。真っ白の余白のページ。それを彼は真っ先に見た。
寄せ書きのページだった。黒マジックペンで文字が敷き詰められている、というよりか、少し余裕のあるメッセージだった。それでも十五人くらいはあるだろう。見開き二ページを使っていた。
メッセージはなんてことはない。3年間ありがとう。ドイツ語マスターしてね……。
む、コイツ、ドイツ語学んどんのか!
などと密かに目を見張る。
そのページをじっくりと見ていた。
2〜3分のような一分だった。高校生の集中とは、このような真剣なものだったのだろうか。
寄せ書きの中には上下逆の文字もある。あるなー、これ。アルバムが机に張り付いているような感じで、誰かが上から書いたんだろう。あるいは、進行形で書いている人とは反対で、同時進行形となったのだ。
真ん中にはサインのような行書。ミミズを通り越してヘビだ。走り書きみたいな、わざととぐろを巻いて書かれている。
個性が表れていた。
まだアルバムが真っさらだった時に書かれたのか、ひどくスペースを使った「ま さ よ」の文字。
それに付随する「きゃ ん と」。
前者は名前だろうが後者は何だ。意味が分からない。いや、意味なんて要らない。卒業日に書かれた事が大事なんだと。
それで見知らぬ卒業生の彼は、左手の、分厚いものを掴んでいたそれを、ヘラリ、チラリとページ落下させていく。意図せずページが開いたみたいに、何十ページが飛ばされて、証明写真ゾーンに切り替わった。
この辺は僕の時代と変わらない。3センチ4センチの大きさの、青背景の写真。笑っていたかどうかはわからない。制服を着て、生徒名の上に首から上の人物が載っている。何組あるのか知らないがきっと自分のクラスを見ていると仮定する。
それで、本来のアルバムを見る流れとなった。証明写真ゾーンを抜けて、クラス写真があった。
視点を所有者の顔へ上げてみて気づいた。
耳にワイヤレスイヤホンをはめていた。どこかにある電子機器から受信した音楽を聴きながら、卒業アルバムを眺めていた。
それで、アルバムを閉じ、入れづらいだろうアルバムカバーに入れようとするのを若干手間取っていて、入れて、カバンに入れた。
スマホを取り出した。TikTok。
左手は電車の手すりから外に放り出して、右手でスマホの表面をはじく。
こんな文章を書いているが、圧倒的にスマホをいじっている時間のほうが長かった。イヤホンを耳にはめている時から気づけばよかった。現代ってそうだった。紐がないから耳栓代わりかな――なんて、|一縷《いちる》の望みにかけていたのかも。
芽吹きの時
2025/3/1 21:47:35
芽吹きのとき。
おい、自覚してっか?
あと2カ月経ったら、「夏」が来るんだぞ!
一週間後、雪が降りました。
誰かしら?
2025/3/3 19:03:57
「誰かしら?」
ピアノのメロディに釣られて、古風な問いかけをした。
見た目はグランドピアノっぽい。でも、本場と比べたら音が軽いので、電子ピアノの亜種ではないか、と思う。
いつもならなんてことのない、通勤駅――Y駅。
しかし、いつからか、あれは数年前だったな……。駅構内にピアノが置かれた。
駅ピアノ、ストリートピアノ、誰でもピアノ。呼び方は定まっていないが、自由に呼んでも良い、ということでもないようだ。
最初の頃は設置期間は無制限だったのだろう。でも、いつの日か撤去された。こういう時、SNSとYouTubeは相性が悪い。一つだけでも厄介なのに、相乗効果だともっと酷い。独占されると耳をふさぎたくなる。
ピアノが弾けるという承認欲求丸出しのチャラいYouTuberが、何時間でも弾いていてウザかった。誰でもピアノは独占されていた。無料で聴けるから、演奏者は何でもやって良いのだ。そんなナチュラルに見下されたのが嫌だと思った。
そういうのは、売れないストリートギタリストくらいのランクの低さが良いのだよ。いいかい。こういうのはね。小銭専用の投げ銭入れを地面において、チャリンチャリンと。
そういう奴なら僕は許せる。だからピアノが撤去されたのだと思ってる。
今回ばかりもそれと同じ。
通り過ぎようとする人物による軽蔑の一瞥。それが僕だ。今は帰宅するのに手一杯。しかし、一瞥の目は、予想を裏切られたみたいで。
少なくともイカしたビアノ系YouTuberではない、ようだった。YouTuberなら、近くに撮影用カメラやスマホを設置するだろう。物言わぬ指揮者役の三脚にスマホ。ピアノ演奏を動画にしなきゃ、ネットの海を回遊できない。そういう肉食魚だ。
だが、どうやら「彼」は身一つだった。ふらりとやってきて、弾いている。日常生活は昼間に溶けていて、夜は寝る。イスの横にはビジネス用のカバンが置かれてあって、暗い黄土色の冬用コートを羽織っていながらの、ぎこちない演奏。
僕に音楽の知識はない。どこかで聴いたことのある曲を弾いている。たしか都内のストリートで聞いた。立ち止まりたくなる。
時折0.5秒ほど、つっかえてしまう部分があるが、それが本来のストリートピアノなのだ。
ホームにいかず、尿意を催したと理由を拵え、トイレへ行った。戻って来ると、ちょうど終わりかけのメロディだった。ホームに続く、階段を下りる途中で演奏者の手を止めた。僕は、背中で聞いたが、パチパチパチ……と、数人程度の拍手が湧いた。
どうやら投げ銭入れがないから階段まで感謝が零れたらしい。一部は僕と一緒に車内に乗り込んだかな。
ひらり
2025/3/4 18:54:27
ひらり、ほらりと白いもの。
シャーベット? ダイヤモンドダスト?
それとも天使の涙?
どのように例えよう、粉のように小さき雪を。
天寧の空に手を伸ばす王女。
この上ない喜びの表情で、久しぶりに見る天然を掴もうとする。軽い、軽い、掴もうとしても、彼らはひらりと身を躱す。
掴もうとするから取れないんだ。
王女は自分の手を制止して静止させた。
ひらり、ほらりと白いもの。
風に飛ばされた婉曲的恋愛の軌跡。
妖精のように、自由の翼で彼女の手のひらへ。
着地した。それをそっと、口の近くに持ってきて、ふぅっと吐息を投げかけた。
小さな小さな氷の粒は、溶けることなくそのままでいた。
どうやら雪ではない。たぶん、花粉。
彼女は花粉症。この城も花粉症。この先も世界は、宇宙は、ずっと花粉症。
――この花粉はどこから来たのかしら?
たぶん、いや、おそらく。
彼女の心の中は本音を炒めた。
この城の主である王子は、ずっと前からいない。
王女は魔族の王女であった。心の中のように、ずっと前から平和を標榜として、孤閨をかこっていた。
だからずっと花粉症なのだ。
鼻水が目から出てしまって仕方がない。
約束
2025/3/5 18:41:18
約束の薬草を焼くそうだ。
村長が言うには、これで約束を破ったことになるそうだ。
「すまんな、英雄よ。村を、守るためには、こうするしか……」
そうして薬草に火を灯そうとした。しかし、それは燃えることを知らない。
村長はガクリと膝から崩れた。
「約束を破ることができないのなら……」
自害しようと首を掻っ切った。草だけ残され、雑草と混じった。
そのような理由により、約束の薬草は赤い色をしていた。明治時代の|廃仏毀釈《はいぶつきしゃく》政策で廃寺となり、約束の詳細は敷地内を泥棒に荒らされ散逸してしまった。
末裔であるが、約束の者が訪れた。
この時代、出迎えてくれるものはいない。それでも良い。好都合だ。この到来を待っていたのかもしれない。
どこか日本風で、スラリと髪の長い彼女だった。
しゃがんで、植木鉢に約束の薬草を移し替えて、それから持ち帰った。
彼女は薬屋であった。薬屋に化けた化け狐。依然村長に助けられた女狐の子孫であった。
Question
2025/3/6 18:36:44
Question
僕の書く文章は「読みやすくてむずかしい」らしい。
断っておくが、このアプリ(※書く習慣のこと)のことではない。ここで書いたものをとあるサイトに転載しているのだが、ここの利用者層とは年齢層が違うからこうなっている。図書館と学校くらい違う。
図書館のように、大人がおとなしく文章を読んでくれる聞き分けの良い子どもではないのだ。紙の本をそのまま、ではなく、わざわざデジタルにして、電子の海に溶け込ませて、電波にして、イヤホンジャックで耳をジャックして、私的ジャックしなければやっていられない。そんな飛行機のように平べったい学タブで、親とネットの監視をくぐり抜けて、ネットワークをハイジャック。あとで怒られろ切り裂きジャック。
おっと、飛行機のように脱線してしまったな。
大したことではない。時速500キロ以上で空の旅をお送りする程度。10秒で1キロ位離れてしまうフルスロットのスピードでもさしたる問題でもない。こんな感じだろうか、読みやすくてむずかしいとは。何言ってるのかわからない。そういうことらしい。
読み手が小中学生では、9段階くらい異なるだろう。
単純に学年で分けた。ピカピカの1年生からズタボロの6年生、それから義務教育最終学年まで。6年生はズタボロではない? 君たち、中学受験をご存じで?
天は二物を与えない。学タブを授ける代わりに苦難の道を与えなすった。納得しよう。不登校児も増えたのだから、そういうことで納得しよう。
読み手の区分はそれ以降も続いているのだが、学タブにおける義務教育テストの範囲外になるので勘案しないことにする。特殊相対性理論のみを考える、という意味だ。分かるなニュートン?
さて、ここまで多いとギアと呼んでもいいのではないか。
僕は不思議だ。走れメロスの読解問題はどうやって潜り抜けたのか。邪智暴虐たる王の、なんかよく分からん癇癪を、ストレスMAXで我慢したのか。
古文とか、あるだろう中学で。アレより、簡単な文章を書いているつもりなのだが……、僕はとても疑問だ。
太宰治、夏目漱石、瀧廉太郎。
この人たちのこってりラーメンみたいな文章に比べたら、僕の文章とかあっさりめん太郎だ。さて、この三人には仲間外れがいるらしいな。どうでも良い問題か。現代では仲間外れなど、そう珍しいものでもない。
そのようにして、読み手が読み手のように、いくらでも解釈すればいいじゃないの。
と突き放してみる。すると、読み手は9段階に分かれるだろう。そんなわけで、さて。僕は飛行機に乗って外国に高飛びでもしようじゃあないか。
眼下にネットの海が見える。それはきっと沖ノ鳥島。
絶海の孤島で繰り広げられる9段階の糾弾会の、始まり始まり。主催者の気分で味あわせてやるのさこうやってね。
風が運ぶもの
2025/3/7 18:17:42
風が運ぶものは見えない。
香気を感じるために、何が溶けているのかと目を閉じてみた。
「大いなる遺産、かな」
日が落ちるのを当たり前だと思えるような人物にはなりたくないなぁ、と目を開けると、べつの世界からやってきた風がやさしく肌を撫でる。
秘密の場所
2025/3/9 17:46:38
秘密の場所にも白いものは降り積もっているのかな。
空から落ちてくる大粒の雪を眺めて、自分だけしか知らない場所を脳裏に浮かばせている。
秘密の場所――それは、人それぞれに思い浮かんだかすかな記憶。
誰も使わない歩道橋の下。
がらんと人気のない音のする校門前。
昭和の地主が死んで土地だけ残った畑。
森。林。神社。
大きな石に奉る|注連縄《しめなわ》。
この中にはね、神様が宿っているんだ。という。
その理論からすれば、きっと空にだって神様は居るはず。この雪を降らせたものは、きっといる。自然と落ちてきた……わけではない。
明日から春の陽気が来る。
だから、この雪は名残り雪となるだろう。
日が変わる夜になれば止み、朝方には地面に降り積もった白いものは儚く|雪解《と》けていくのだ。
嗚呼
2025/3/10 18:56:55
|嗚呼《ああ》、なんて殺生なお題だ。
こんな独立語に何か書けだなんて、無茶振りにもほどがある。語源に頼るほかない。
「嗚呼」を調べて三千里。
中国語から来たそうだ。借用語と呼ばれるもので、輸入品か逆輸入されたらしい。
それで、明治時代あたりの有名な文豪たちによって、ひらがなとカタカナ、漢字などの言葉遊びが転じて「ああ」を漢字表記にした。
当て字だそうだ。特に何の脈絡もない。
きっと意味を持たそうとしたのだ。何の意味もない、ため息に精魂込めた感情で言う無名声優のように。ひと言の登場だとしても、自分の声をのせることに達成感を覚えたいと、人は思ってしまうものだ。
本来はただ時間を無為にするだけの、一拍だったと思う。誰もがその漢字を使ったから、そういうわけで、「嗚呼」と書くようになった。
鳴くように呼ぶ、でよいのだろうか。
いや、単なる当て字なのだから意味なんて知るかか。現代人はよく何かに事欠いて、視界に入ってきた事柄に対してジャッジメントする。
まあ、現在では見かけないかな。そもそも文章中に「ああ」なんて言葉を忍ばせることさえやらなくなった。
ため息だらけで湯けむりになり、熱水噴出孔になり、温泉が湧きだし、SNSの街ができ、それで事件が起きているのだから、心中お察しする。
小説内で時折見かける台詞でもある。
あまり見かけないものだから、作成途中に挿入された作者独自の栞かな、と思ったりもする。作者と登場人物の心情がシンクロするのだ。
その際、一体何の模様だろう。栞の押し花の話である。
きっと栞だった紙に模様を付与する魔法のような、ひらがなの「ああ」は白紙だったのかな、って。
そんなことを思ったりする。
願いが1つ叶うならば
2025/3/11 18:50:03
願いが1つ叶うならば、しろ◯んが広まってほしい。
最近、スクラビングバブルとコラボしたんだって。
トイレ洗浄のルンバの合の子みたいな感じのやつ。
コラボCMでやってたんだけどね、しろ◯んが部屋の掃除をして、ゴロゴロと絨毯の上で気持ちよく転がってたんだ。いやされるな〜。
僕のデスクトップPCの壁紙は、週休7日……いや、「週きゅ〜7日」だっ。
これも絨毯の上で寝そべっていて、周りにお菓子やゲームやジュースやポテチなどを置いてのんびりしてるの〜。いやされるな〜。
星
2025/3/12 18:44:14
星。
地上に望遠鏡を設置しているから見渡せないのだ。
地上からでは真上の夜空や地平線より上の夜空のみしか見えない。日の沈んだ先の、地平線より下の範囲は、地面に生息している人間ではどうあがいても見えない。何があろうとも。
何があろうとも? そんなことはない。
望遠鏡を宇宙に飛ばせばいいのだ。人工衛星を打ち上げるのと同じ方法で、地上から宇宙ロケットで。宇宙開発では、すでにそれをやっている。膨大な政治資金を投入して、すでに宇宙に浮かんでいる。
宇宙望遠鏡と呼ばれる代物がある。ハッブル宇宙望遠鏡。重さ11トンの筒状で、長さは13メートルもある。宇宙にあるので天候による影響を受けない。これが地上のそれとは違った。雲がなくても水蒸気の邪魔はされない。
それを覗く視点は人工衛星。もちろん宇宙船にいる研究者だ。
何も見えない所にピントを合わせ、望遠鏡を覗いてみた。そんな所に星なんてあるわけない。でも、予想に反してそこに星はあった。それも一つではない。無数の星々が散らばっている。
肉眼では見えないというだけだ。光は届かなくても星はある。ということだ。
星の正体は、ただの石ころなのだと。答えは近くにあるように知識は近くをより拡大する。
顕微鏡で微生物をみるように世界をミクロの世界にして、ミカヅキモを探すようなものだ。明るさで判断してはならない。
終わり、また初まる……
2025/3/13 18:48:09
終わり、また初まる……
人生に終わりなんてないし、逆に初まることもない。
でも途中でどん底に落ちようが、「初めの一歩」を積み重ねることで終わらずに初まることができる。
※ただし、底なし沼でないことに限る
透明
2025/3/14 18:39:52
透明な夜をモチーフにしたアクアリウムに、何千、何万もの生物が泳いでいる。
水槽の深さは十メートル超で、客は海底から空を見上げるような構図になっている。
小魚は群を作って、透明度の高い清らかな水流を作っている。水に棲む龍のような、上から下へ、または下から上へ。左から右へ。などと模様を作っている。神秘的な雰囲気づくりに成功した水族館だった。
そこに一滴の色を加えれば、夜になるだろうか。この大きな世界なのだから、何滴も加えてもまだ、透明な夜になるだろうか。
観覧側はまっ黒な夜の底なし沼だった。透明な夜は水槽外から見た光景であって、こちら側は違う。泥沼にハマった兄妹の背に続き、大人の身体もまた作られた闇に沈みながらも歩を進めて、次の楽園へ向かった。魚を肴にして、昼メシは何にしようと考える脳。子供たちは名前の長い深海生物に指をさして見下している。深海には光が来ないから、目がないことが多い。そのことについてナチュラルな暴言を吐いている。
出口からでた。水族館の近くに海鮮丼屋があって、店の入口から乱れる列を作っていた。揺れる海藻のように。のぼり旗が風に揺れている。金額を見ると、ちょうど入館料と同額だった。
水族館が|空《す》いていたのはこれが理由だろうか。
心のざわめき
2025/3/16 18:35:36
心のざわめき。
まだ五日も経っていない事件だが、とある生配信者が外で襲われて死亡する事件があった。
場所は高田馬場駅から南へ300メートル。近くに美味いそば屋があるらしい。
ニュース程度の知識でしかないが、被害者は女性で山手線一周企画として、生配信をしながら歩いていたようだ。配信中なのだから、配信者の顔以外にも背景が映り込む。おおよその場所どころか、どこの通りを歩いているかまでリアルタイムでわかってしまう。そこを、襲われたということだ。
最初は無差別的なものだと飛ばし記事があったのだが、その日の夜には雨降って地固まるというように事実が固まってきて、「面識がある」ということでホッとした。
被害者は死んで、不幸の念はあるのだが、無差別的なものなら悲劇は広がっていくリスクがある。事件はそこで終わったのだ、と僕は撫で下ろした夜である。
加害者、被害者の関係は、金の縺れに起因するらしい。金貸しというわけだ。彼女は配信者になる前はガールズバーで働いていて、男は客として訪れた。そこからの縁らしい。
女は様々な名目で無心。男は消費者金融と自身の貯金で420万ほど貢いだ。女が配信者となり、月100万ほど稼ぐ有名配信者になっても金を返さず、男は凶行に及んだと。
上半身にかけて刃を振り下ろす数は30ヶ所以上らしい。まさしくメッタ刺しで、首や顔にも及んだ。
刺殺現場にはお供え物が置かれていたようだが、配信界隈ではそれをネタにして、バイトテロのような迷惑配信をするようになったということで有志が撤去した。その者も配信者のようだが、配信していないので良心的ではなかろうか。
金の縺れは縁の切れ目。
疑似恋愛に多額の金を注ぎ込む系は、酷い結末になりやすいなぁ、と思うこの頃。
参考:
https://www7.targma.jp/vivanonlife/2025/03/post131478/
花の香りとともに
2025/3/17 18:55:52
花の香りとともに。
最近、花の香りというものを嗅いでいないような気がする。もうすぐ春がやってくるというのに……。このままでは春はやって来ないかもしれない。
天候予想をみるに、数日後には降雪の予報らしい。えっ、雪が降るのかよ、と僕は仰天。先日降った雪が名残り雪だと決めつけていたのだ。
そういうわけで、近所を散歩してみることにした。仕事中、ここには居ない。ここにはコンビニがあったな、ここには駐車場があったな。などと、脳内の地図を更新する作業。家に地図はあるが、スマホで充分と力不足。散策気分の能天気。天気はどんどん春のアスレチック。
こんな所に店なんてあったけ?
ふーん、よく知らんな。と、新店舗の匂いは落ち着かない。
適当に歩くと、さくら通りとかなんだか言って、まだ枯れ木の山の賑わいという出で立ちの、桜並木の下のバミリを目撃した。
地面に直接貼るテープである。陣取り合戦の奴である。ここは出店不可、ここはOK。そんな感じに自治体が自治厨をやっている。
出店不可の理由を探すと玄関先だったり、駐車場の出入口だったりする。それでここにテントを張れないというわけだ。
結局花の匂いは嗅げず仕舞いだが、その予感はするな。冬ならもう暮れているのに明るげだ。日暮れの時刻はずれ込んだな、と、まだある昼空を見通す。
そこにあるのは蒼の匂い。
叶わぬ夢
2025/3/18 9:40:27
叶わぬ夢はどこに落ちているのかな。
この場合、自分に限定する必要はない。名の知らぬ人間のモノでも構わない。そうでなければ四つ葉のクローバーなんて見つけられないように、可能性を広げる条件に拡幅する。
緑地帯の歩行者用道路を歩いていた。
このまま進めば荒川の河川敷へたどり着く。昔は水害の氾濫で荒れ狂ったことが由来の荒川。と聞き及んだ。
歩いている少年以外、誰もいない。一人で独占禁止法違反。歩行者用道路の名折れである。誰もいないし誰もすれ違わない。
緑園化された花園を見やった。まだ本格的な春は来ていない。でも分かるのだ。何処となく花の香りが、鼻でキャッチしたから。
幻香ではない。今に見てろと。誰かが零した叶わぬ夢。それを糧にして、一ヶ月もしないうちに、春は現れるはずだ。
大好き
2025/3/19 15:16:14
大好きな雪が降ったからと、子供たちは歓喜の顔をしている。積もるかな、積もるかな。積もったら何をしよう。雪がっせん? 雪だるま?
一方親は曇り顔だ。これは降り積もる香りがする。交通網が麻痺しないか、否か。先行き不透明な将来に重ねて、大粒の雪が解けて雨になりやしないか。そればかり考えている。
結果は昼になるまでお預けだ。悲喜こもごも。
※晴れました。
どこ?
2025/3/20 18:04:00
どこ?
ひたち車窓からぼーっと茨城の田舎を見ていたら、消防車が見えた。すぐ後ろには白い車……救急車が。消防車と救急車が両方とも、連なって出動している。
旅行者は、列車先頭から見て左側の窓際の席に座っていた。赤と白の車両はパトカーのようにピッタリとマークしていて、こちらから遠ざかる走行になる。少しのあいだ並走したが、こちらは特急なので速い。後方へ流れていく。すれ違い通信のような、緘黙。
消防車と救急車が続けざまに出動要請か……。
旅行者はどっか行った景色を考える人になった。
消防車の同伴が引っかかったのだ。茨城は山の緑と田園風景が目立つ。車窓では、遠くもよく見渡せる。別段煙などは見当たらなかった。
もしかすると、救援者の「火事ですか、救急ですか」もなく、ただ電話だけされて闇雲に出動したのだろうか。と思ったりした。
救急車は必須だとしても、その場合消防車は結構ついでだ。サイレン代わりとして呼んだのだろうか。遮音性の高い特急では、外の世界は分からない。サイレンの音も分からない。鳴ったかどうかすら不明。不名誉だ。
場所だけ分かってもすべてを把握することはできない。その場に行ってみないと経験にならない。
日常生活が閉じていくように、緊急性も閉じられて密閉されて。ジップロックに入れて冷凍庫へ。
そうなる前に、無事でいてくれればいいけど。
手を繋いで(二回目)
2025/3/21 18:38:41
手を繋いで。
ついこの間まで、世界は一つの輪になるように手を繋いで「へいわー」と言っていたと思う。多様性とか、包括的とか、DEIとか。
けど、昨今のトランプの戦況を見てみるに、せっかく手を繋いだのに、それをちょん切っているようだ。
手を繋ぐまでは協力的だったけど、繋いだままとなると話は別。ずっと握りしめると手に汗握る。汗をかきっぱなしだと汗臭くなる。不愉快。でもみんな、そのことを隠したまま、顔に笑みの仮面をつけて、ニコニコ。
それが無理が祟った。なかなかのエリート層はそのほうが良いと思っている。けど、国連加盟国全員がそう思っていたわけではない。
こちらはこちらでやりますから、あとのことは知りませんと。
アメリカの方針転換に対して「むっ」となるのは致し方ない。そういえば、GHQだってそんなことをやっていたではないか。日本占領中に財閥解体をしようとしたのに、朝鮮戦争が勃発したので方針転換。通称逆ルート。
4年後、また大統領が代われば、「なかまー」ってなるのかな。そうはならないだろうと思うのだが……経済制裁、したままだよね? 報復の意味が分からなくなっている。
君と見た景色
2025/3/22 18:27:34
君と見た景色は、お生憎様、世情に恵まれませんでしたね。
不要不急、不要不急、不要不急……。これが常套句となっていた、コロナ禍のお付き合いでした。
緊急事態宣言が初めて出たのが四月。最初は首都圏と一部都道府県のみだったのが、全国に広がっていって、五月上旬までの予定……かと思ったら、延長に次ぐ延長。
うがい手洗い・マスク。そのマスクが、アベノマスクと揶揄されて、「アベノマスクは、まだこないのか」とLINEで雑談した日々。
星野源の「うちで踊ろう」に合わせて、首相がお茶を飲んだり、テレビを見てくつろぐ姿を撮影した動画がアップされ、炎上した日々。まだTwitterと呼ばれていた日々、タイムラインは怒りと嘆きに溢れていて、コロナによる失職と減給の沈み込みが垣間見えたネット。
消毒、換気、手洗い、加湿。……密。
あの頃はお互い神経を使いましたね。面接でもないというのに、あれほど対面で喜び以外の感情を持ったことはありませんでしたね。
私は2.5回、コロナになりました。0.5の部分は、疑陽性みたいなものです。医療崩壊があった頃に罹りまして。どこもかしこも予約電話がつながらず……。ああ、脱線。失礼しました。
ともかく、これからは、どこかへ行きましょう。
どことは明確に決まっていないけど、行きましょう。生きましょう。
それだけは決まっています。
bye bye…
2025/3/23 18:30:10
bye bye…
ニュースを見ていたら、関東準大手の新京成線の名称が来月から無くなるらしい。正確に言えば京成グループの一部となる吸収合併なのだが、駅ナンバリングや駅名簿が張り替えられ、テーマカラーが一新される。駅の雰囲気が変わらないようで変わるようだ。
路線名は京成松戸線。
新京成って京成の仲間でしょ、と思っていたので、これはこれでいいかなって思ったが、地元民は突然のことで戸惑っているだろう。
別路線の路線図も残さず張り替えられる。新京成という名をこの世から無くそうと躍起になっている。結構大ごとのようだ。地元民の一部撮り鉄は、ブログにて新京成の名前が取り去っていくさまを、写真と文章で克明に残していく。過渡期、そう言っていた。
テーマカラーはジェントルピンクと呼ぶらしいが、それからブルーになる。
車体のピンク塗装もブルーカラーになる予定だ。すべての車体を来月一日から、とはならなそうだが、徐々に塗装工事を施して、一本ずつ無くしていくのだろう。
鉄道むすめというのがあって、新京成にはピンク髪の女の子キャラが駅員服で勤めている、という設定があるようだが、これはどのようになるのだろう?
京成に移るのか。でも、新京成のマスコットキャラは卒業するらしいから……。
悲しいお題だ、書いていて思ったけど。卒業式とかけているのだとは言え。電車の広告で、
「卒業は終わりじゃない。新たな始まりだ」
とキャッチコピーで謳っていた広告があった。背景は学校のセットで、来賓用の玄関口の前の階段に腰を下ろしている。集団はみな学生服。卒業式で貰う筒を持って、卒業生たちが集まって、集合写真の被写体となっている。キャッチコピーのように思っているのは、手前側の人間だけではないか。奥の人ほど小さくなる。これも過渡期……|懊悩《おうのう》とした。
雲り
2025/3/24 18:53:46
雲り。
雲が広がって曇り空に。
雲りと曇。
同じ意味合いの漢字なのに、後者のほうがなんだか黒っぽい。
どうしてなのかな、と空を見上げたらそりゃそうか。太陽を乗せた雲のほうが、分厚くならなきゃ曇じゃない。
画数が多いだけ。宇宙の先に太陽がある。
そんなことを言っているから感性がつかないのだ。
ほら、あの曇り空を、亀の甲羅のように想像したまえ。
分厚く、濃緑色の曇り空のほうが、湿度が高くてカビが生えやすそうじゃないか。甲羅の溝のように、規則性が見えるようで見えない光の亀裂で、しきりに雲の中で仕切りを作り出そうとしている。その前兆が、あれらの色味なのだ。
きっと天上で誰かが亀を飼っているのだろう。この地帯を覆い尽くす程にでかい亀さんだ。
怖がらないで。家の中へ入ってごらん。
一日くらい、かめ様に明け渡しなさいな。空の上で甲羅干しをしたら、きっと神社の池の中に返ってくれる。その時には薄い雲りになって、やがて太陽が出てくるようになるだろう。
もう二度と
2025/3/25 18:59:07
もう二度と、気安く反応しないこと。
売り言葉に買い言葉。ここではないどこかのサイト。
どうやら学タブの運用年数に応じて、利用者の年齢が小中学生よりになってきている。応援コメントでも何でもない、アンチコメントが届くようになった。
せっかくかいてくれたのだから、一応目を通すのだが、なになに……今年で義務教育を卒業したのだから言っている?――こちらが小学生だと思っているらしい。アタマが終わっているようだ。
上から目線になってしまうのだが、文構造がオカシイ。卒論なら教授に痛めつけられるレベルだ。赤ペンで、ここの助詞がオカシイ。参考文献はどれだ。著作権に違反しないような書き方にしろ。考察の結論がどうだ、など。
どうあがいても中卒。僕にかなうものか。
まったく、たしかにこちらは美大出身。短大みたいなものだ。絵描きのタイムラプス動画を編集したショートを上げている。かっこよく言えばフリーランスだ。
そこまで人気でもないのに、僕にアンチコメントを書いてくれるなんて、なんてアタマの悪いバカなんだろう。きっと人生の選択をミスった低学歴。不登校児、なのかな……という煽りを飲み込む。それで、丁重に頭を下げて、無視した。かえって返すと相手が調子に乗るし、ヒートアップする。同じ土俵には立たない。見なかったふりをする。
現時点で中卒、これからは努力次第だけど、こんなに長い文章を書けて偉いね。そう思いながらコメントブロック。すると見なかったふりができる。
以前は頭に血が上って、感情の揺さぶられる思いのまま返したことがある。頭のなかがかゆくなる感じだ。脳みそは皺くちゃなのに、さらにシワが増えそう。これも一種の雑念なのかもしれない。筆が乗らず、いくつもボツにした。それがのちのち教訓になった。
SNSにて、やれ論破だ、やれ論理破綻だ。などといって茶々を出してくる暇人は多い。見ている分には楽しいが、当事者だと金にならないし、はっきり言って時間の無駄。
相手は僕が返事を書くのだと思ってくれている。だから脳みその軽い子供なのだ。想像力がない。
その間に僕は、パフェでも喰っている時のように、何食わぬ顔をして絵を書くのだ。今日は白鳥のような美しい絵を描くよ。あわわ、コーヒー零しちゃった、どうしよう。白を基調とした鳥は描けないから……結末を予想して――と、想像性も創造性もない一般的なへたくそたちを煽る。空よりも高視点から見下ろした画角の、鷹揚とした鷹を描くさま。
編集したものをネットに上げると、みるみる視聴数がうなぎ上りになった。鰻じゃないよ、鷹だよみんな!
コメント欄が盛り上がって、少なくとも僕は嬉しい。
記憶
2025/3/26 18:47:30
記憶。
一ヶ月くらい前に「記録」という題がでてきたと思う。
記憶と記録。同じ意味合いのようでいて、若干の誤差がある。記憶は人間にだけできて、記録は人間以外でも使えるようにしたものだ。記憶は見えない。記録は記憶を見える化したものも含まれる。
見える化とは、形だ。本来見えないものを見えるようにする。大幅な簡略化。文字、数字、記号。それ故時間。過去現在未来。だいたいこれらは記憶を見える化した形。概念的の形も含まれる。
記憶は、ある種存在不明の無形遺産である。
記憶は見えない故に「憶えている」ことに主眼を置いていて、感情的なものほど頭に残りやすい。トラウマ、恐怖的出来事、象徴的脱皮。あるいは自身の欠点。
自分の欠点ほどよく見えるものはない。長所短所は記憶の積み重ねでできている。過去の積み重ねにより、現在の視点では「自分のこの部分が短所だと思います」と自認することができる。自認できなければ相手に伝えることはできない。だから性自認が問題になっている。
いつまでも自己が見えず、日々の記録のまま、置いてきぼり。人生という名の列車に乗り遅れた。それなら諦めて別の手段を探せばよいが、乗車したら心苦しい。切符を買った記憶が無い。いつどこで誰が……無賃乗車。
いつ降りればよいのか。今か。天候・現在地、あるいは時間、それらを見る余裕すらない。
そうして罪悪感にさいなまれ、窓を開ける。身を乗り出す。乗り出そうとする。助けられる。でも。
人身事故のために懺悔して、自らを刹那的な向こう見ず。ちょっと希望的な路傍の花に憧れて、それで。
記録の積み重ねでは考察はできても、それをフィードバックして改善することは難しい。しかし、記録はある程度ズルができて、例えば四捨五入。数や形を簡略化し、丸くする。
記憶の改ざん、というのが人間の得意とする特徴の一つだ。過ぎゆく現実を過去の形に置き換えるために、視覚的・聴覚的・感情的などの情報に分解する。あとで記憶として思い出せるようにする。
要素を記憶域へ格納し、短期記憶から長期記憶へと移行する際に、頭は思い出す光景を予め定めて、思い通りにする。因果を逆転させる。過去があって未来があるのではなく、未来を見据えて過去を改ざんする。それが記憶。
よく記憶が色褪せていくという表現があるが、元々記憶は褪せていると思う。自分自身が色を付けたのだ。
子供の頃に見た44色の色鉛筆。それを使って、鉛筆画を描いているにすぎない。色のついた芯が削られ紙につく。俎上される。見様見真似です。何を描いてもA評価。子供だから、落書きなほど褒められる。
それで時は未来。
「あなたは過去に何色を使いましたか?」とへたくその絵を見ながら問い質される。それが、人間が作り上げた文化、人間らしい文化なのであります。
そもそも記憶は見にくい醜い。多面的に乱反射。色を付けたら、そのようにしか見えなくなる呪い。
七色
2025/3/26 20:35:53
七色。
虹の架け橋で使われる定番の色を、まず想像したが、別に何色でもいいんだこれは。
誰かが言った「白って300色あるねん」みたいに、1色を7倍に増やしても良し。
まあでも。
基本的にはグラデーションになると思うんよ。グラデーションに区切り位置はないけど、色が変わったな、という所に境目が生じる。境界線はくすんだ色をしていることが多い。
でも、七色というと、グラデーションでなく境界線があるわけなので、明るげな色を選ぶ理由があると思うのだ。だってアレは、混ざって作り出される色――悲嘆、格差、貧困の色。
くすんだ色は、現在世界の何%を占めているのだろう。くすんだ色を選ぶ理由はない、と思っていた。皮肉にも、地球儀でいう大陸の色はくすんだ色を採用されている。
最も多く使われた色は、「地球は青かった」
温暖化による異常気象で白は青のなかに溶けていても、変わらず言うだろう。地球は青かった。宇宙にいるのだから。宇宙は、黒だから。七色の外側――それが宇宙なのだ。でも、赤だけは特別。太陽、アンタレス、超新星爆発……神さま。
春爛漫 / 涙
2025/3/28 18:41:34 春爛漫
2025/3/30 16:55:03 涙
**春爛漫**
花が咲き乱れる様子の言葉だが、季節柄圧倒的に桜に対して使われるようだ。
「爛」は、|爛《ただ》れると書けるように、湿疹のように赤く、細かい所を表現しているらしい。逆に痛々しいとも読み取れる。
春は、花が咲き乱れて白紙に色を付けるような芸術的タッチ。それが桜並木として敢然と続くのである。風に煽られ、|靡《なび》き、そしてたなびく。余波の一部が空を舞い、ひらりと|剥《は》がれていく桜のトンネル。桜田門外の変。
**涙**
涙に影は出来るのか。
出来ない。だから、読み取るのは難しい。
人は、涙を通して何かを読み取るのではなく、顔を通して読み解くのだろう。あの、白黒の縞模様の、バーコードから、数字の羅列的な暗号資産を、光を当てて読む。
泣き顔のまま、グミを噛み締めるように。口を上げ、歯を見せ、零れ落ちる動機をみせ、おかしみを見せ。
だから、涙は弱々しい武器になる。
つながりを感じ取る、Communication要素の一つ。
春風とともに
2025/3/31 18:59:25
春風とともに、ドアを叩く音がした。
トン、トン、トントン。
場所は玄関。木でできているから、軽いノックが音に乗る。
木こりの斧で叩かれたようだった。絵本のなかにだけ存在するおもちゃではない。まるで、本物そっくり。野生のリスでも狩ったのだろうか。だから、中にいた居住者は、身を竦める。
トン、トン。トントン。
不気味なノックは、なかなか不在着信にならなかった。
自分が彫刻になるように、仏に祈った。宗教なんて、身になじまぬ観念。生まれてはじめて教わった、名の知らぬ母からの記憶、入れ知恵。絶妙な静けさ。ノックのみ響き渡る空間。
誰だ……と、ようやく|異母妹《いもうと》は目線をあげた。手には血糊のついた包丁があり、|氷柱《つらら》のように鋭い。その時ほど、肝に据わった女性というのは、他に漏れないものだろう。
異母妹は血まみれで、|異母姉《あね》は絶命。
数時間前までかりそめの家族だったものだ。今は、冷たいドライアイスのお世話になっている。細かく切り刻んでやろうとも思ったが、予定がクルッと変わった。
しばらく、音が止んだ。
不幸中の幸い。鍵を掛け、ドアロックをしてから凶行に及んだのだ。しかし、ここからどうすれば良い?
「ねぇ、どうすればいいと思う? ねぇ、ねぇ、ねぇ……」
春風とともに、振り下ろす凶器。
冬風とともに、吹き上げる狂気。
大家を携え、警察がドアを開けるまで、三十分以上も掛かってしまった。室内の静寂は、より静寂に……。それで、異母姉妹の封じたドアがようやく開けられる。
「春香さん! 大丈……くっ、遅かったか!」
どうやら二人は天使になったようだ。玄関より吹いた春風とともに神聖なる羽根が生え、尊い宇宙へ羽ばたく。
「春香ぁ! はるかぁぁ!」
異母姉の名前だけを叫ぶ、母親を残して。遺書の書き出しはこうだった。「さきだつふこうをおゆるしください……
遺書がひらがななので、年齢が低めだっていう話。
またね!
2025/4/1 18:52:21
またね!――と、明るく別れを告げる時は何かしらの理由が映り込む。決して言葉にできない強い意志か、あるいは口封じに遭わされたか。
後者のほうの悪い側面。そう思わないような世の中になればよいのにな、と想いつつ、今も発生し続ける目下の|夢幻泡影《むげんほうえい》に、俯く女性と黒いカゲ。
はじめまして
2025/4/2 9:19:41
はじめまして。
まだTwitterがTwitterだった時代。どこぞの金持ちが「名をXと改める」と宣言した。
今も昔も当時も、Twitterは読み専だったので、「高輪ゲートウェイ駅みたいなものか」と思っていた。未だ馴れず……。
数年前、元号を令和に改元したり、引きこもりのことを「こもりびと」と名を変える自治体もあったから、世の中名前を変えたがる年頃なのだろう。キラキラネームが流行った頃を思い出した。
子供にキラキラネームを付与して、人生がキラキラするかと思ったら一向にキラキラしないので、自分をキラキラ星に喩えて命を絶った物語がどこかにあるっぽい。「〜こわれて、きえた」
寂れた郊外のことをニュータウンと呼称して、住宅や駅前建物を刷新。新たな人を呼び込む。
見かけだけ変わっただけで根本は変わらない。けれど、世の中は良い意味でも悪い意味でも動き出した。コロナ禍、デジタル化、学タブ、学パソ。
あの時は「X」になろうとは、思っていなかった。今も慣れていないので、Twitterって呼ぶことにします。
そう諦めて、Xくんについて調べてみると、Z世代とかはちゃんとXって改称したものを言うようにしているというし、逆にTwitterという名前を使い続ける民には遠くをみるような目を投げているという。あの頃のTwitterはもう無いんだ、と。過去にしがみついていると憐れんだのだろう。
なるほど、では。
考え方の違い、ということで退散します。
デジタル化以前、以後に世代は分かれると思う。
僕は旧い光景に憧れる傾向。生成AIに「はじめまして」とかしこまるより、2年前くらいのままでいてくれ方がよろしい。
技術発展の理由が変容してきたと思っている。社会がより良くなるために、ではなく、人が減っているからより便利に、になっている。人のいた場所をロボットにすることで円滑に物事は進むようになる。一方、人としてのぬくもりは、どこへ消えた?
キラキラ星に聞くっきゃない。そう思って、AIに探させたい。生成AIより検索AIくらいの便利さがちょうどよい。
不便を楽しみたいと、スマホをポケットに入れた。
空に向かって
2025/4/3 18:33:59
空に向かって延びる階段があった。
トマソン建築というものだ。無用の長物。展示されている芸術品のように、周囲に異彩のみを放っている。
階段の周りは色の失ったバイオームが広がっており、つまりは砂漠だ。空から大量の砂を降らせ、すべてを埋没させたのだ、と錯覚するような、大砂海。
しかし、飲水などを心配することはない。この世界はゲームで出来ている。類似するものをいえば、マイクラだろうか。原子ではない、世界は。ブロックで出来ている。ブロックが積まれて、出来ている。
一体どこまで続いているのだろう……。
興味を持った|少女《アバター》は、気の向くままに。|件《くだん》の建築に近づいていった。
砂漠の色がそのまま延びたようだった。支柱は、何処にもない。当然の話だ。ブロックで出来ているのだから空中に浮かんでいても、さほど不思議でもない。
幅は1✕3のブロック。横が3だ。
段数は……分からない。数える気が失せるほどに続いており、遠近法に従って細くなっている。肉眼では100段から先は無限と同じだ。そのことを、ゲーム画面でも明瞭に理解する。階段とは、そういうものだ。現実でも似た作りをしている。
プレイヤーの意思に従って、2頭身の少女はジャンブをしながら階段を登っていく。一ブロックずつ一段、一段……。一段飛ばしをしたくなるほどだが、そこまでの反射神経は搭載されていない。横に広いが縦に狭い。足の踏み場はシビア。横から見れば、斜めに続いていることだろう。2面の接着面は角と角。角の斜め45°方向に角が乗っている。横から見れば建築法違反だ。絶対に子どもが作っている。あるいは社会に出たことのない不登校か。いずれにせよ碌でもない。受験勉強のために夜食を掻っ込むくらいに碌でもない話だ。
手すりはない。だから、慎重さを求められる。忍耐ゲーの類を思い出した。落下判定にダメージは付き物。体力ゲージがあるので、足を踏み外したら確実に命を落とすだろう。バカげている。
階段のみが永遠に続いている。だが、150を越えた辺りから、段の表面積が増加した。
2✕3ブロックに増加した。歩きやすく登りやすい。そして、平坦になった。道はまだ続いている。|少女《アバター》は行き止まりでないことを確かめるために先に進んだ。看板がある。「わたしの人生」……
やはりバカげている。後ろを振り返ると道は溶けていた。砂でできているのだから当然とばかりに。そして、目の前には庭園が見え……
そこから先はゲーム基板が狂っていっ#しまった。
君と / 桜
2025/4/4 18:56:40 君と
2025/4/5 18:39:20 桜。
**君と**
ちょっとお題の範囲がでかい奴だ。
君と見た景色、君と見た虹、君の背中……もっとあると思うけど、あげればあげるだけ、君が増えてしまう。
増やしたくないので、そのまま放っておいて、お題の方もご放念っと。
**桜**
お花見は、散ったら来年だけど、さくらはずっとここにいる。
葉っぱのさくら。
葉の落ちたさくら。
夜のさくら。昼のさくら。
風の受けたさくら。
渦を巻く桜吹雪。
桜吹雪が目に見えるから、風に吹かれるさくらが印象的に記憶に残るけど、花びらが風に乗っても乗らなくてもいいのだ。
ずっとここにいる。そういう意識を持って見たら、さくらの春の型にはめた見方に気づけたと思う。
好きだよ
2025/4/6 18:52:02
好きだよ、って言ったら怒られる関係。
それでも口に出さずにいれば、保たれる近さ。
相手の印象はまだ聞いてないが、ずっと開けない玉手箱。
ずっとこのままがいい。このままの年齢でいたい。
けれど、そうはさせない社会構造。無理やり大人にさせるモラトリアム。
時間が神様。神様はどこからやってきた?
自分は、大半は子宮の奥からやって来た。それ以外の選択肢は――時間と最大限考慮されたタイミングは、神様によって握られていた。
狙ってないけど。
性別書いてないのに判る書き方だ。
新しい地図
2025/4/7 18:56:11
新しい地図。
ダンジョンのフロアを降りるごとに新しい地図が更新されるゲームがある。不思議のダンジョンシリーズとか、ローグライク? そんな類のゲームジャンルがある。僕も買ったことはある。が、勝ったことはない。チュートリアルダンジョンと初心者ダンジョン位がちょうどよい。ミーハーなのが裏目に出てしまっている。
あれは、今にありがちな「既成地図」ではなく、未知の暗闇のつもりの黒背景の紙を持っていて、道を歩いて更新するタイプになる。最初はほとんどの空白が黒く塗りつぶされている。
白インクを垂らしたように、現在地だけがぽわっと明るい。マッピングされていない。これが新しい地図というものだろう。
道の先がわからないのは不安だ。それにダンジョンに来ている。魔物の巣窟だ。自分が1マス動くと、魔物たちも1マス動く。戻ることも可能だが、足踏みもできる。だが……それをやりすぎると、囲まれる。魔物は集団だ。知能もある。気の迷いは心の迷い。剣の迷い。
今わかっているのは、十文字に切り裂いた先は薄っすらとしていて、どれを選んだとしてもよくわからないということ。こうして暗く淀んだ未知の大地に足を踏み入れた開拓者は、手探りの状態で探索しなければならない。
決死の探索をして、財宝のあり方、飲水のあり方、下層へ行く階段の位置。それらを真っ白の相棒に描き込んでいく。深入りはせず、また次回と退散。地図とともに持ち帰る。こうして新しい地図とは、誰かによって汚されていく。経験が如実に表れ、勲章になろうとする。
フラワー
2025/4/7 23:43:51
フラワー
フラワーと聞くと某マリオシリーズのファイヤーフラワーとアイスフラワーが思いついた。しかし、奴らフラワーだったんだ。花だったんだ。と素朴な反応。
たしかにファイヤーフラワーを日本語にすると炎の花になり、中年のおっさんが手からファイヤーボールを投げ出しまくっているのは違和感がある。
ゲームをやっていると感じないところだが、フラワー要素なくね? ファイヤーにすべてを持ってかれてるじゃん。まあ、そう言う事を言うなって。お望みならキャンプファイヤーしてやるから、ねっ。今日寒いからさ。
そういえば、薪の量、少ないんだよ。君のも手伝ってくれるよね?
そういうわけで、適当に花を摘んで、キャンプファイヤーの木組みのそれに入れ込んどいた。あとは知らんと、帰宅部員。
遠い約束
2025/4/9 18:13:28
遠い約束。
Twitterで見かけたことのあるネタであるが。
とある不幸な少年がいた。作者に嫌われたのか、不死身という特性がある。不老不死。いつまでも年を取らず、生き続ける事ができる。いかなる傷や病気にも耐え、それが神の力の象徴にもなり得た。
少年は幾度となく出会い、そして寿命という別離を繰り返し、やがて人間という種族との疎遠を選ぶ。人間はいつか死ぬ。その常識の範囲内にない、ヒト一生分以上のものを彼に託して息を引き取る。死んでからも傲慢だ。もうこりごり。そうして一人旅に出た。
そんな少年に対し、長寿命のエルフが声をかけた。
私たちは、ヒトの7〜8倍は生きる。ヒトの一生ではできないようなことができる。やろう。
そうやって、エルフは弓矢を教えることにした。
少年は、剣の達人ではあったが、遠距離戦のものは得意ではない。近づかなければ、声をかけられない。親密にならないで済む。そうすれば、数多ある一個人のうちに紛れる。目立たないことが穏当だ。そうやって自分の考えを保ってきた。
弓矢で森の小動物に当てられるようになると、エルフの世話役を頼まれた。100年以上生きてきたが、未だ青年期だというエルフ。
いつしか友のように近づき、森の住処にて暮らすようになる。ある日、エルフの腹が、ぽっこりと。目立つようになる。生まれるのはまだまだ先だ。妊娠期間など50年以上はある。ゆっくり歩こう。
いつしか三人で、世界地図の隅々まで、指を絡ませ歩くことを語り合い、エルフはそれを了承する。エルフの家の鍵を施錠し、あちこちを訪問した。数百年単位の新婚旅行のようなもの。
しかし、ここで物語の転となった。
ヒトより長く生きるとしても、長寿命というだけでいつか陰りが見える。エルフは、世界地図の5割を知った辺りで歩速が弱くなってしまう。少年は、手に取ろうとして、気付いた。まだ若々しいとはいえ、手の甲にいくつかの皺があることに……。
………。
「ねぇ、なんでわたしと付きっきりでいてくれるの?」
娘は少年に尋ねた。物心がつく前から、ずっと少年と旅をしている。耳が長く立っていて、弓よりも剣のほうが使い勝手が良いらしい。
少年は変わらない様子で、遠い目をしながら、「遠い約束を果たすためだ」と答えた。
ネタ元(Twitter)
https://x.com/_t0da_/status/1891028785920950374?s=19
元気かな
2025/4/10 18:32:07
元気かな。
そろそろ桜散るけど、みんな大丈夫?
僕は平日朝、通勤電車で素通りするように見るだけなんだけど。「咲いてるなー」って。
休日になったら外に出る気が出ない。あと2日、持ってくれればよいのだけど。贅沢なんて言いません。葉桜でも構いません。
そういえば、最近美術館に行ったんだけど、葉桜の夜桜バージョンもなかなか風情があってよかったよ。
あっ、これを言うと嫌になるかな。葉桜になるということは、あとは暑くなるだけだからね。
ゴールデンウィークがゴールデンにならず、数年前から金メッキが剥がれてきたから。
みんな元気かな。
夢へ!
2025/4/11 18:33:11
夢へ!
夢へ! 〇〇!
と書かれた横断幕が歩道橋の所に飾られてあった。
〇〇の部分は忘れてしまった。
「夢へ! 向かえ!」なのか
「夢へ! 進め!」なのか。
まあ、忘れても意味合いは変わらないだろう。
子供の頃に将来の夢なるものを書かされた記憶があるが、アレは何の意味があったのか、いまだによく分かっていない。人生、そう簡単に作られてないんだよ。という手始めに挫折のきっかけを作らされたような気がするなぁ、などと、歩道橋を渡った。
階段を上り、橋の方へと向かった。横断幕の下には大きな道路……片側二車線のバイパスが広がっている。アスファルトの上を高速で走行している音が、大きくなったり小さくなったり。車が近づき、または遠くなる。エンジン音の違い。車種、車のカラー。大型車中型車小型車バイクトラック……。
様々なものが、当たり前の景色として眼下で繰り広げられている。
高さ、というのは、下を見るのが怖くなる。
いつもは下にいるのに、あちら側に渡りたいと思って歩道橋を通して渡る。なぜこんな迂回路をしているのかと言うと、自分が歩行者だから。バイパスなので、信号と信号の間が長いので、階段で上がる労力を考えても歩道橋のほうが便利だから、というコストバランス。
歩道橋を下りて、横断幕の隅っこらへんに書かれている文字をみようと目を凝らしたが、如何せん見えん。どうせ近隣の学校が書いてあるんだと思われる。スローガンは生徒に募集したんかな。そうやって将来の夢を書いてもらうように生徒に書かせて、黒板の上とか教室の背景に掲げて、プレッシャーを与える。
車社会が一番注意を払っているのは何だろう。
歩行者だ。それも、通学路の隅っこにて歩く歩行者。学生や子供。新入生。卒業生。大学生。義務教育。幼稚園。それら一般的朝夕の光景……。
様々なものが、夢を通して当たり前をすり込んでいるように見える幕。遠ざかるとますます霞む文字列「夢」。
風景
2025/4/13 18:19:01
風景。
美術館に行って、風景画を見ていた。
彩色が当たり前の絵画ではない。黒一色で描かれた墨画である。江戸絵画、というので、これも水彩画の一種と捉えても問題ないだろう。
美術の教科書か何かで見たことのある有名な絵画を眺め見つつ、順路通りに進む。空気が変わったように感じた。水墨画のゾーンに入る。
巻物帳で、横長の台紙。
霧深い山間の夜を描いたもので、月明かりで照らされ映えている。遠景には月が。雲が。それとなく半紙の汚れが。個人蔵と書かれてあるから、それだろう。でも、風情がある。
このような様式では、まっさらな紙が最も白い。だから、霧を描いているのではなく、山際の夜の境と樹木の影に黒を差し入れている。現実から芸術として写し取る時に見た目を反転するのだ。暗闇の部分はあえて墨を入れず、景色に着目する。だから、昼の景色のように見えて、実は夜の景色なのだ、と説明書き。
白と黒の境は水をたっぷりと含ませた滲み方だった。
霧の中の少女のように、端麗な湖を描いている。黒一色なのに、閲覧者の想像力をかき立てて、色を想像させる見事さ。
ひとひら
2025/4/14 9:55:21
ひとひらの、旅をしてきた色彩が、罪滅ぼしのようにやって来た。君はどこから来たんだろう。
この場所は草木の枯れた地形が続く。ピンク色の花びらが、たどり着くには因縁がなさすぎる。
僕は? と疑問を呈された気がした。
「僕は、この世界のサボテンダーみたいなもんさ」
そう言って、薄桃色の旅人を、ハンケチで丁寧に包み、懐へしまう。
それで、振り返り、また前を向いた。彼の後ろは足跡のみがひたすら続いていた。
「それじゃあ、行こうか。旅は道連れ、世は……」
未来図
2025/4/15 9:44:03
未来図なんて設計図。
以前に鉛筆で書いたものなので、消しゴムで消してばかりいます。まあ、上手くいくよりも、消してばかりいたほうが、面白いと思うんですけど。
それはそうとして。
最近はAIが台頭してきているようですが、あと何年待てば無料で使えるんですかね。
Googleみたいに、検索は無料でできるじゃないですか。それでホームページとか、ブログ、SNSなどは無料で閲覧できるじゃないですか。
「今日の小話」つって、自動的にAIが文章作ってくれたものを読む感じにしてくれると、ぼくは楽なんですけどねえ。
真偽不明? ファクトチェック?
うーん、そうなんよね。SNSの呟きとか、ツリーになったコメントを見ると、七割位の確率でGrokのファクトチェックがあるんだけど。
どうやら今のところは、人間のほうが嘘をつく率が高いらしい。全体的に人間がバカになったら、AIは嘘ばかりつくようになるから、陰謀論とか量産されそう。
そういう懸念はあるかもしれない。
脱線しちゃったけど、自分の未来図はAIで楽はできるけど、最終的には自分で作ることになる。ボールペンで書かなければ、消しゴムで消して、修正できる。世の中は、修正力が大切!――ということ。
修正液の匂いは、最近嗅がなくなったな……。全部印刷する前の見直しが大事、デジタルで作って、デジタルで修正力ができるって、AI以前よりの傾向よな。
春恋 / 遠くの声
2025/4/16 18:55:02
春恋
2025/4/16 22:03:19
遠くの声
**春恋**
春の陽気な日に恋をすること、みたいな意味で良いですかね。
恋愛をすることの例えとして「春が来た」とも言うらしい。春が来ると花が咲き、暖かい日差しが降り注ぎ、それを見て心がざわつくほど嬉しく思う。そんな感情ごとほわほわと温まる感じな恋をすることと同じ、という意味もあるらしい。春が来た。Spring is coming。春は「動」という意味があるのだそう。
そういや、冬は「静」。動物たちは冬眠から目覚め、春はあけぼのするんやった。
最近は、お題をサボって延期してしまうことがあったので、これが原因ということにしたい。よい理由(言い訳)が出来ました。まあ、挽回ならぬ卍解(ネタ古い)したので、遅れたところを取り戻したのでよかったと思う。
これからも気軽にサボってこー!
**遠くの声**
芸術品を見ていると、遠くの声を聴いているような気分にさせる。特に絵画。ひと筆ひと筆の、微量についた作者の息づかいが、彩色塗料に紛れて付着した。
遠くの声。時代を越えて、聞こえるなんて、壮大な計画。物理的な距離を越えてくるとは、もはや精神的な意思疎通と言っても過言ではない。
ふと、目を閉じてしまう。こういう事をしてしまうから、作者の思うつぼ。
静かな情熱
2025/4/18 18:59:37
静かな情熱。
だいたいが当てはまると思う。
人の作った物全般的に、このような冷めやらぬ熱とやらが込められていると思う。
静物、人工物、機械、部品に至るまで、時代を問わず始終汗を垂らし、労働力として捧げてきた。肉体労働問わず、頭で主に行う計算でもそうである。
経済学や文学、広告デザイン、動画、色の配置、キーセンテンス、会議、朝礼当番など、制限時間ギリギリになるまで、もしくは丁々発止と激論を交わし、何かとともに押し込めるように時間を押し込み。
そうやって静かな情熱を込めてこれまでやってきたのだ。
分かりやすい情熱と分かりにくいそれがあって、後者に当てはまるだろう。静かな情熱……、この場合の静かとは、熱の温度ではなく、耐熱容器の性能の高さによるだろう。水筒の魔法瓶の構造のように、中身の温度を|逃《にが》さず|逃《のが》さず。飲む瞬間に解き放つために。そうやって耐え忍びを堪え、力を蓄えるように堪え、純度の高い硬質の火成岩を、マグマ溜りのすぐ近くに据えている。
だが、少し思うのは、この場合の情熱には果たして質量があるのだろうか、ということだ。
だいたいの人工物にこの静かな情熱が込められているのであれば、時代の変遷とともに軽くなるのではないか。
人間の指先すら不要になる。指輪に嵌められた人工サファイアもまた輝かしいように、光では真贋の見分けはつかない。
特に今後はAIが主流となるらしい。
最近は、ファクトチェック、ファクトチェック――とAIに命令して、人間の傲慢な勘違いを見つけて嘲笑っている。
2030年頃には万能AIが登場するのでは、とされている。プロンプトを打て。さすれば15分程度の動画が自動的に生成される。
ただでさえ情報の氾濫と呼ばれる昨今。自動的botのようにまとまった文書がとめどなく溢れ出てくると、様々な陰謀論がネット中を歩き回るだろう。
そうやって、静かな情熱は、賑やかな冷徹で以てネットの海が再構築される。
モーセが海を割る――ような先導者が現れる限り、いつまでも氾濫は収まらない。
魔法瓶はどこに漂流している?
魔法瓶はどこのドイツが持っている?
AIに聞かねばいちいち動かない頭。アタマウチ。
次回の更新は1週間後くらいです。
物語のはじまり
2025/4/19 18:20:27
物語のはじまり
なんか書いたような気がするお題なんだよなあ、と過去の書いたものを検索したが、ヒットしない。
既視感が強いのだ。「物語」で書いたんかな。自分で書いたというのによく覚えていない。
こんな風に記憶の拗れではじまるのが、物語である。偶然性の多寡による、作者の頭の中で繰り広げられた戦争の残火。
燻った火が何かの拍子で燃え広がれば、それは全力で燃え広がらねばなるまいて。
自然的欲求の産物。大半は逃げ惑う人々。
しかし、立ち向かわなければならない、消火活動中みたいなもの。何かに突き動かされ、よく分からないまま外出する義務を負う。
消防車の酷似したキャンピングカーで一人旅。
走る所はいつも戦争跡地。誰かが戦い、誰かが散った。誰が悪かった、誰が助かった。想像するしか宛がない。
がらんと鎖国した土地が広がっている。干乾びた肉眼では見えないが、腐葉土になる前の腐敗ガスのような、熱量の持ったくすぶりを感じ取ると、赤色の極彩色を纏った車を停める。
ホースを持って人力スプリンクラー。
想像しろ。ここには燃え盛る燎原の炎。広がっている。拡大している。車と同じく、赤い赤い……。
炎の中にポッと隠れ潜む、塹壕跡。
あったら嵌まらないよう気をつけるが、なんせ太いホースから出る水の勢いに、身が持ってかれる。
ふとした拍子にすってんころりん。こんなところに陥没穴が。車輪の轍のちょうど中間だったのか、と思っていたら激突。20メートル深の穴の底。クラクラ、頭がクラクラする。
地面に手を押して、押し付け、すると硬い物。
手のひらサイズの石ころで、虫めがねで確認すると、キラリとする、みっけた。
ダイヤモンドの輝きを見つけたら、いつも彼は月夜に掲げる。
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「手放したくない」と思ったのが始まりだ。
救援の手綱代わりのホースが垂れている。消防車用のホースだから、先から滝のように水が流れ落としてくれるが、一向に冷たい湖になってくれない。土がすべてを吸収しているのだろう。
が、彼は気にしなかった。たとえこの世がミイラになろうとも、この輝きは決して衰える様子はないのだと、眼差しはしっかりと見上げていた。
石を通して、月が見え、……クレーターを写し取る。
トパーズよ、月になれ。宝石は浮かび、彼も浮かぶ。ついでに消火活動中のキャンピングカーも浮かび、世界に天国の雨を降らした。
影絵
2025/4/20 18:32:49
影絵
先日板橋区立美術館にて『エド・イン・ブラック』展なるものがあった。SNSで、誰かがリポストされた本美術館の宣伝ポストをみて、「黒ってかっこいい」とか思ったのだ。単純明快な動機だが、ここまで単純だと純粋だと思う。惹きつけられるものがあったということだ。
パンフレットの表紙を見るに、黒から見ていく浮世絵・江戸絵画、という感じである。着眼点がすごい。視覚的に面白。
黒い色彩で夜や闇、影を描き出すことに、何ら不思議はなかったのだか、この絵画展で面白さの理由がちょっとクリアになった。
そうなのだ。本来、夜は見えないのである。
黒に塗りつぶされて、ではなくて、明かりがあるから周りが夜だとわかるのである。この感覚を説明するのは難しい。色彩を感じるな。今すぐに明かりを消して、夜を感じろ。というわけにもいかない。室内に入る夜の振る舞いが、都内だともう明るすぎるからだ。
自然林にぽつんと一軒家。そんくらい現代から取り残された生活が望ましい。風の寝息が聴こえるくらい、音もないのが良い。電波もない方が良い。無いな今。
風というのがポイントらしい。今のように、風の動きで邪魔されない毅然とした光ではない。ロウソクの小さな炎なのだ。だから、息を吹き消して消灯するといった、風の動きが関連するのだ。
女の息遣い。火を吹き消す情景……。
かつて平安や室町などの上流貴族たちが、室内の微かな灯りで急いで手紙を読んだり、本を読んだり。山車のそばに付けた行燈(歴史詳しくないから用語分からん……)など。目的に応じた必要最低限の光(炎)のみおこしていた。灯りは揺れる。闇討ちとか。山から降りてくる夜行性肉食動物たちのリスクとかもあったと思う。
一方庶民は、太陽の陽の光とともに生活リズムが決まっていた。明かりを灯すこと自体贅沢。日が沈んだら就寝し、日が昇ると起きる。このように早寝早起きは庶民の生活から来ている。今は上流貴族たちのように、夜更かしするのが主流。
それじゃ、夜の風景とか、どう感じ取っていたというのだろう? 灯りがないなら真っ暗じゃないか。月明かりがあろうとも、全景が明るい訳ではなく、多分に芸術家の想像を加味されている。
ディテールは昼の時。色彩は夜の時。
それを紙面上にて重ね合わせている。今のように動画や写真、画像なんてなかったのだ。だから、脳内でやったのかな。いや、下書きは昼の時に描いて、で、夜の風景は目に焼き付けて、翌日描く。一発描きみたいなものだから、覚えがない部分はまた夜を見て翌日……というのは凡人の発想だな。
今の当たり前とは、如何に明かりが灯されているかである。夜=黒とは、簡略化されている。普段夜と感じていないからだ。赤を見て太陽を連想するように、黒を感じて夜を想像しているに過ぎない。
影絵は江戸時代くらいにできたっぽい。
影は、地面にできるものだと。光が落ちる途中で物体に当たることで、本来到達するべき光の軌跡から地面との交点まで影ができる。日向、日陰の境は曖昧で、そこに黄昏時の、異界の門が覗く。
その常識を逆転させたものが影絵だ。光の前にいくつかの物体を動かすことで、回りくどいことをする。
輪郭にこだわらないと、影は影絵として成立しない。
黒一色の影絵で見たら遜色ないのに、実際見たら異界の住人。そんな異界要素を動きの芸術品に仕立てる。黒って面白い。
星明かり
2025/4/21 18:31:43
星明かり
星明かりは日を追うごとに、年を追うごとに空から消えてなくなってきている。周りが明るいからそうなのだっていうけれど、本当は目に届く灯火が、消失していくのは物悲しい。
SNSサイトのトレンドを見ると「小学生 自殺」があった。トップクラスの位置に食い込み、様々な人が賛否両論をしている。
この場合、たいていグラフを乗せずに、決めつけたように言う。文科省のホームページに行って、小中高学生の自殺総数を見ながら、何を知った口を聞いているんだ、と思う。そのまま小学生の自殺数にすり替えている様子だ。小学生の割合は、十分の一も無いくらいなのだ。
「そう、星明かりの数くらい……」
目に見える数値。
目に見えない数値。
それらをそのまま覆い隠す不穏なる光――街灯は夜になっても消えない。その理由を問う学生も、見えないだけでどこかにいるのだと思う。見えないだけで、どこかには……
ささやき
2025/4/22 18:32:59
ささやき
「おい、更新止めちまえよ」
という声が、3ヶ月以上前から聞こえているのだが、無視して更新し続けている。
しかし、無視は無情にも支障を|来《きた》してしまったのだろう。
ちょっと文章がおかしくなっているように思える。お題をいったんお預かりして、数日後にまとめて消化することもままある。このお題は04/22に出されたものだが、こなしたのは05/03。1週間以上寝かしてからの執筆てある。書くことは当時から決まっていたのだが、「おい、更新止めちまえよ」というささやきをモロに聞いてしまったようだ。
書く習慣はついたのだが、そろそろ義務感が出始めてきた。どうやら、アウトプット自体、疲れてしまったようである。
7月まであと3ヶ月ちょいといったところである。
7月で、ちょうどこのアプリを初めて一年。
一年で、お題が一周するという噂があったのだが、8カ月辺りで一部お題(4個ほど)が重複出題された。また、新傾向として、英語のお題が出されるようになった。
ともかく、冒頭のささやきに耳を傾けてしまうのである。もうちょっとの間、しぶとく生き残ることにする。こうして続けているというのは、意外とお題をみるのはちょっとした楽しみであるからだ。
Big Love!
2025/4/23 18:15:02
big love!
また現れたか英語のお題。
忘れた時に現れるな、まったく。
10個に1個は紛れてるんじゃないのかという頻度ですな。
でっかい愛なのか、大きい愛なのか、深い愛情なのか。
知らんが、英語のお題だと最初に翻訳しないといけないのが面倒なところである。
多分、翻訳の程度により、解釈が変わる奴だ。
解釈が変わることを楽しもうぜという、国際的メッセンジャーも感じる。僕の気のせいかもしれない。
気の所為ついでに気の所為にする。
面倒という所で派生していくと、世の中にはめんどくさい奴がいるらしい。君たちは海のような深い愛情で、個人の見解主義の僕を許してほしい。
ネッ友という、得体のしれない関係がある。
自己紹介を書く動機がネッ友を募集すること。その際、最近はプロフィール欄に性別不明というのを書いてくる子供が増えてきている。
そういうのはな、書いてもいいし書かなくていい。項目として記載しなくてよい。こう書くと「性別:非公開」とか書いてくる。実際現れている。非公開を辞書で引くことをお勧めする。反応しないが。
お生憎様、ネット上における性別とか、どっちでもよい。あのな、ネットなんだよ。文字でやり取りするんだよ。だから「ネカマ」とかが出来るのだ。
ネットワークを介して伝達されるのは文字であり、文字数によって世界地図は構築される。誰もお前のことなんか気にしてねぇのよ。という自意識過剰になるだろうか。類語辞典的には、中二病の段階。
義務教育ばかりの日常を送っていると、義務ばかりで出来ていると低年齢らは思っている節がある。
あえて言及するなら、情報を隠すことが義務である。個人情報、秘匿情報、プライバシー、センシティブ……
別に難しい物でもない。文字なのだから、書かなければ良い。なのに、奴らは自己紹介の時点でミスっているのだ。
奴ら=学タブを使っている小中学生のことだが、すべてを公開してこようとしてくるだろう? 親密になればなるほど、その傾向は強まる。
センシティブ情報を適当に扱っているのが本人だなんて、ちょっとアレだ。触れない方が良いタイミング。示し合わせれば形の違う、しかし愛情の範疇。
ネットワーク=big love!
どこへ行こう / 巡り逢い
2025/4/23 19:41:26
どこへ行こう
2025/4/25 9:15:40
巡り逢い
**どこへ行こう**
「どこへ行こうというのかね」
サングラスをかけた一般金髪男性は言った。
……というのを思いついたのだが、明らかに筆に馴染まないので空から投げ捨てた。目元を手で覆い、名シーンを彷彿とさせる。何か戯言を呟いて、眼下の大海へ堕ちていくのだろう。
なんてことはない。この人をプラモデルか何かだと見れば、感情論は身体の中で抑えられる。
さて、僕はどこへ行こうかな。
すべきこと、やりたいことはあるけど、操舵手を引き受けた割には行きたい場所、会いたい人はいないかも。
風光明媚の眼下を見るに、今は太平洋の上空だ。時々小群の島々が小さく見える。
ずっと上昇気流に乗っている。それはとても良いことだ。しかし、どこかで平行にならなければ、この飛行船は宇宙船にならなければならない。それは、死を意味したり、一種の精神生命体に昇華することになる。それだけは嫌だ、と舵を掴もうとした。しかし手は届かず、長い間、そのままになっている。
2025/4/25 9:15:40
**巡り逢い**
僕の使っている通勤電車の中には、終点駅で降りるものがある。幾ら乗客が詰め詰めのドラゴンになっていたとしても、終点になれば電車から降りざるを得ない。
ホームに吐き出され、エスカレーター付近は密集し、昇ることを困難にさせている。それを見ると、出入口が人でふさがってるじゃんとなって、どうしても座席に戻ってしまう。
先を急ぐ人に道を譲り、僕はのんびりとした待機。
徐々に上り電車が下り電車になっていく過程を見ながら、人が空くのを待つ。
それで、最後の一人がエスカレーターで上っていくのを見届けてから、僕の腰が上がる。
こんなことをしてるから、巡り逢いとか無いんだろうなって思っても、こんな感じを続けている。
「こっちに恋」「愛にきて」
2025/4/26 18:41:32
「こっちに恋」「愛にきて」
……え?
どういうことなの?
ついに壊れたか。お題。
お題が壊れるとは思えなかったが、そう言えばな症状はあったにはあった。時折英語のお題が混じっていたことだ。
アレはアレとして、対処していたのだが、フラグだったようだな。失礼。
今度はなんだ。ダジャレと来たか。それも寒いタイプの。こんなの公衆の面前でやろうものなら、恥かくぞ。撤回させてもらう。
でも、未成年カップルとかは、こういう頭弱い系の言葉にハマることがあるような。
恋人なら、何をしても笑えるし楽しい。
そういうことである。
今回のことは、ちと見なかったことにしよう。
なんだこの感じ。久しぶりに見た友人が、猫になったみたいなものだ。猫は気まぐれ、このアプリもそうだ。
だから、仕方ない。
どんなに離れていても
2025/4/27 18:24:27
どんなに離れていても
どんなに離れていても、画面越しであれば通話や通信ができるようになった。
今後AIがその補佐をするようになってきて、ますます簡便になっていくだろう。しかし、繋がりやすくなったとは言え、その縁は長持ちしない。簡単に千切れやすくなったというか……、そのようなものだ。
とある日、とあるサイト、とある事情で。
ネッ友のグループが喧嘩別れとなった。
グループを構成する人数は6人ほどで、内4名は退会する運びとなった。残り2人は息をしていない。
突然だった。日記にて、ネガティブ病みの内容を繰り出して、「私たち2人は共依存関係になったの」と言った3日後に退会宣言を出した。第三者目線は「ぽかん」だった。
すべてはチャットサイトの中での出来事らしい。
元々、そのサイトは小説投稿サイトのようなもので、自分なりの小説や日記(エッセイ、活動報告)を発表するところだった。だが、年齢層が低い者には学タブが使えるサイトなら何でもいいのか、小説を書かず、ネッ友を募集してグループを作ったり、チャットサイトのリンクを貼り付けて馴れ合いしていた。
仲良くユーザーページに、グループ専用のチャットサイトのURLリンクを貼っていた。私たちは学生なので、夜に話しましょう。そう言って。
学タブには門限が決まっている。夜10時になると強制終了して朝まで使えない。8〜9時が、ゴールデンタイム。テレビなんてものよりネットワークを介したネッ友。
しかし、グループ結成から一ヶ月もしないうちに喧嘩別れとなった。
第三者は、無論グループ当事者ではないが、ことの事情を知りたくなった。不可解な不特定から、何か特別な事情を知りたかった。
グループメンバーの一部は、自分のユーザーページにて、件のチャットリンクを貼付けていた。公開レベルは全世界。きっと、学タブが全能だと油断しているのだろう。油断大敵よりも油断した操作者。
それで、難なくチャットサイトに行けた。休日の昼間だったが、幸いログインしているのはその人一人。
チャット履歴をさかのぼる。すると、なるほどと合点した。本来小説に対して感想を送る機能を使って、ネッ友たちはやりとりをしていた。
チャットサイトにて、喧嘩別れをして、裏垢を作った奴が半数だった。メンバーのうち一人が裏垢を作ったので、みんな作った。典型的な付和雷同。
それで、ある人が伝達した。この垢、実は〇〇っていう奴の裏垢で、あなたのことについて隠れて愚痴を言ってるよ。そうしたら、チャットサイトにて追及を行った。愚痴を言った・言われた人たちはリア友で、伝達した人はネッ友。全員がグループメンバーでチャットのメンバーでもある。
その後は、わりと典型的なものだった。
チャットが無理だから裏垢を作って愚痴ったのに、チャットにて仲良しごっこなんて無理な話だ。
本人に言えないから、裏垢で書いた。それが愚痴なのだと思う。愚痴の意図について何も考えず、伝えた人が良くなかった。見なかったことにしたらよかったのに。
結局グループにヒビを入れるのは病み投稿による闇討ちなんだろう。クナイを誰もいない壁に投げた所で、その後、そのクナイを抜いて、本人に投げる奴の可能性を考えないと。
クナイを投げた者……共依存関係の者たちが退会を宣言したのは、一方が辞めると言ったからだった。あなたが辞めるなら、私も辞める。こんなサイトに思い入れなんてない。それで2人は駆け落ちと。
第三者はそのことを知って、共依存について考えることにした。共依存はきっと、人間をロボットにさせる邪悪な存在だ。共依存宣言をした時点で、ネッ友ではなくなったのだ。ネッ友以外の、傷つける何かになったのだ。
まあ、小説投稿サイトで小説を作らない奴の結末なんてどうでも良いことだ。共依存のうちの一人は小説を作っていたが、ネッ友を募集した辺りでおかしくなってしまった。小説以外に躍起になり、小説が書けなくなって自己嫌悪。
親密になることで自分を見失うとは、精神衛生上滑稽。
ふとした瞬間
2025/4/28 18:37:42
ふとした瞬間
ふとした瞬間に、目の前に障壁が現れる。
行く手を阻むそれは、動きが読めない。境界線が曖昧。スライムのように不定形の生物だった。
気まぐれの猫のように、のっそりと動く。
猫だったらいいのだが、そういうわけにも行かない。
疲れた人は、今夜も残業の予定である。
リモートワークの仕事に就きたかった、という。
勇気を持って転職活動をしたはいいが、どこもかしこも同じ企業様の様子だ。新卒採用された頃の賃金よりも下がり、残業代による儚い上乗せで食っていっている。
おれ、何して生きてんだろ。
と、疲労困憊の身体をずりずりとデスクに擦り付ける。疲れ知らずの仕事用ノートPCに齧りつく。縋り付く。マウスのホイールをぐりぐり回す。目も焦点が合わない。学生なら、目の悪くなる環境。夜の非番みたいに、職場は一人。
仕事時間とプライベートが、カフェオレの塩梅で色が溶け合っている。
ふとした瞬間に、その人の頭から何かが抜け落ちるようだった。目の前の障壁とは、実際は疲れた人の魂だろう。普段は心臓に住むのだろう。脳死状態になりながら、ドロドロの血液を回している。
菓子パンなどの安飯を食って、夜食代わりとする。
時計は見たくない。しかし、PCの、隅っこに表示される、デジタル時計は数字を刻んでいた。
23:59から0:00へ。静かに切り替わる。積み重ねた何かがリセットされた。
これを毎日、それも夜に行われている。
その人は、いつからか知らないが、頭や身体をリセットしないので、頭はぼんやり、身体は重い。
カフェインでいつも誤魔化してばかり。
このまま三十年戦争は、――客観的視点を借りた語り部から見ても――ひど過ぎる、人生。
夜が明けた
2025/4/29 18:59:25
夜が明けた。
全ての辻褄の合う夜が明けた。
飼い主は二〜三日後に帰ってくるらしい。
犬一匹。
人間には疲れる愛玩動物。
犬皿には水しか入っていないのを見て、誰かは心配するだろう。薄情な飼い主だと感じるだろう。
月明かりのない夜をずっとみていた犬を見て、かわいそうだと思うだろう。
餌がない。空腹である。
数日間とは言え、飼い主の帰る時間が間延びしてしまえば、危うい。このままでは餓死してしまう……
しかし、分かりやすい愛情があるように、隠された愛情というものが――微量の隠し味として――、この夜に溶けているのだろう。
飼い主が玄関から出ていってから、小型ラジオのスイッチがつけっぱなしだ。
電子音で構成されたお笑い芸人の大喜利回答。間髪を入れず、出来の良し悪しを判断するMCとスタッフの笑い声。ふりかけのようにさらさらとかけられる旨い飯。無音ではない。
人間が居れば、夜間清掃人の義務のような静音を強要されるのだが、犬一匹である。夜になったら寝なければならない、という義務を犬は負っていない。
床には、ごみ一つとしてないほどきれいに片付けてある。掃除機で床の生活の破片をすべて吸ってしまっている。例外はない。あったとしても、掃除機を掛けたあと、歩き回って出た犬の毛以外……。
テレビのコードが抜かれてある。コンセントにつないだままだと犬が齧って感電してしまうことを防ぐためだ。テレビの方を根本として、短く束ねてあった。
夜通し電気がつけっぱなしなのは、夜が明けても、明けなくても、怖がらないようにするため。電気代を考慮するのは人間だからではなく、人間が、寝るために不必要なものを削ぎ落とすため。
ペットに対して、男親と女親では、接し方が違うという。女性は、まるでわが子のように面倒を見ようとする。比べて男性は客観的な目を持っている。
犬は、水さえ与えれば二〜三日は生きていられる強い生き物だ。犬皿にドッグフードを盛って、たらふく食わせてやろうとする意思疎通のない準備に関して、男性はする必要がないことを知っている。
それよりも、異物を飲み込む危険性を考えたほうがよい。心配だ。
その隠された愛情は、夜に溶け、それが明ける。ということは、どういうことなのか。
犬は、じっと堪えている。前足を二本突き出し、スフィンクス降臨。
帰りを待つという、基本的で本能的で、人間には難しい行為を、平然とやり遂げようとしている。
くうん、と寂しげに鳴いた。
参考)相棒2−19「器物誘拐」
好きになれない、嫌いになれない
2025/4/30 18:35:40
好きになれない、嫌いになれない
本を探す時間。
ブックオフにて、読みたい本を探すのだが、タイトルや表紙を見て、すぐに決まる場合となかなか見つからない場合が混合する。
よく考えてみれば、別に本を読みたいからブックオフに行くわけでもない。家にはまだ読んでいない積読本がわりとあるし、無理に買わなくても良いと思われる。
でも、「今」読みたいんだよね。
という感じ。
積読本を、「今日はこの本を読むぞ!」とカバンに突っ込んでいない。折り畳み傘みたいに忍ばせるタイプ。雨が降ったら開く。同じように、時間が余ったら本を読む。そんな気配がする。
「今」雨が降ったからビニール傘を買うように、今読みたいから、新しい本を……と。
本屋に行かないのは、単に価格の問題だ。1000円の本とか余裕であるし。1000円なら、古本なら5冊は買えるよ、とか思っちゃう。
で、買うんだけど、結局ダンベル代わり。重しになるので家に置いておきます。
ここ数ヶ月は、他の用事をどけてまで、みたいな本は少ない。小説を読んでないからか、なるほど。と思った。
でもなぁ、小説ってのは、冒頭の場面がつまんないんだよね。脳の皺の部分にフックか何かが引っかかってくれないと、読者の本気度が上がらない。
60ページくらい読まないと、「おっ、展開が来たか」とならないことがある。そこまで読まないと、積読。家の中は積読会になっちゃって、いつまでも運動会にならない。待機列が長い長い。
かと言って、他のことをやりなさいとなるとスマホ中毒になってしまう。スマホ中毒予防に、紙の本をということで、どっちつかず。
わたしって気分屋さんなのかしら。
風と
2025/5/2 18:26:13
風と花粉ほど、相性の良いものはない。
僕のイメージでは、虫媒花みたいに、花の蜜に誘われた虫や蝶や昆虫やらの口に付着して、それがほかの花へ点々と受粉作業をやってくれると思っていた。それは草花の話だった。
草花たちは、広範囲に咲かなくてもよいので、風に乗って遠くへ……という発想を持たなくてよい。虫に付着しやすいように、若干うるおいがあるとかないとか。
それに比べて人類の敵ことスギは、草花とは違う。図体のでかい樹木であるスギ花粉は厄介だ。風に飛ばされるため、花粉は明らかに軽量化されている。
緑色の葉が、わさぁと振ると、大量の粉が出る。きな粉みたいだ、とか、花粉症になる前は思っていた。(今も花粉症ではない、と心のなかでは思っている。認めたくないのであろう)
多分、春一番などに合わせて、風が吹く時期を知っていて、いつからか大量生産しているに違いない。
花粉症なのかは分からないが、春になると顔の皮膚が荒れてしまう。アトピー性皮膚炎を持っているためである。だから、先ほどの花粉症ではないと思っているのは、アトピーだと思っているからなのだ。
乾燥肌用クリームで、冬を乗り越えようとして、乗り越えた! と思った所で春なのか初夏なのか分からんのだが、気温が上がって暑くなると頬やおでこなどがちょっと厄介なことになる。
ステロイドを塗ればなんとかなるが、ドラッグストア等で販売している非ステロイドでは全然効かない。塗り薬がキレたら皮膚科に行かないといけない。
嫌だなぁ、あの皮膚科。春にいったらさ、花粉症の検査されて偽陽性とか言われてさ。花粉症の薬出されたんだよね。ヤブ医者だよあれ。だから、行きたくないなぁ、って思いながら、乳液とかでごまかしてるの。で、無理だったらステロイドの力を借りて、いったん治って、また油断して掻いちゃう。
で、皮膚が赤くなって「あっ……」
Sweet Memories
2025/5/3 18:48:26
「Sweet Memories」
英語だ……。
まったく気乗りしない。
甘い記憶、甘い思い出か。
と思ったら、MemoryがMemoriesと複数形になっていることに気付いた。この違いは何なのだろう。思い出が複数個あるとは、どういうことだろう。
調べる打鍵音を響かせる。
ネットによると、Memoryと単数系ならば、思い出の中で特に思い出深いもの……「あの日の思い出」のような感じになる。
記憶という意味に近い。人々が過去の出来事や経験を振り返る際に用いられる言葉で、単数系であればその時の感情や知識を含むことが多い。
一方、Memoriesと複数形ならば、「子供の頃の思い出」、「忘れられない思い出」と、複数の思い出を指す。
例えば、海の匂いを嗅いだら、子供の頃家族と行った海水浴やプールなどの様々な思い出が呼び起こされる……。感情、五感を刺激するものがキーとなり、その後連鎖的、羅列的に物事を思い出すようだ。
Sweetについても検討しなければならない。
これも同じく調べてみると、心地よい、愛らしい、親切などの意味で使われる。さらに、音楽や芸術作品において、Sweetは美しい、魅力的な、などの意味がある。
「Sweet Room」という言葉を思い出した。
これは、高級ホテルの一番高い部屋という意味だが、これには後者の「魅力的」に近い意味を持たせているのではと思う。記憶的に甘い部屋なら、高級ホテルではなくて、夜を回してばかりいる繁華街の方のホテルが適当だ。
「Sweet Memories」とは、甘い思い出ではなく、魅力的な思い出たち、と解釈しても良いだろうか。
こんな風に脱線することで文字数を稼ぐことにして煙に巻いた。複数形だから、仕方ない。今回はハズレ回ということで、また今度にする。
英語お題は毎度困る……
青い青い
2025/5/4 18:36:51
青い青い。
理由あって、日暮里舎人ライナーに乗っていた。
初めて乗る電車?なので、乗り心地とか乗客など通常時とは違っている。
僕は終点に降りる予定でいて、だが、舎人公園駅でほとんどの乗客は降りていった。舎人公園には何があるんだ?
調べてみると、ネモフィラが見頃らしい。
青い花の定番である。
「まさか、それ目的で降りていったのか?」
おかしい。だいたい、ファミリー層なのである。子どもが、ネモフィラとかいう雑草みたいな花興味を持つわけない。
きっと他に理由があるはず。
と、思っていたら終点に着いた。
日暮里舎人ライナーの終点は、|見沼代親水公園《みぬまだいしんすいこうえん》駅である。公園というより、細長い水路に緑道があるタイプなのだが、未就学児などは水路の中に入ることができる。
近所のガキンチョが、5月なのに裸足で入って、水路にいるらしいザリガニやメダカなどを探し回っている。
そう、コレだよコレ!
と思いつつ、水路沿いを行く。
手紙を開くと / すれ違う瞳
2025/5/6 11:24:23
・手紙を開くと
・すれ違う瞳
**手紙を開くと**
手紙を開くと、なんだこりゃ。怪文書?
筆記体で出来た英文だ。海外に友達なんていない。なのに、これが送られてくるなんて。
他に何か入ってないかな? んっ? なんだこれは。植物の種?
こんな事が数年前にあったらしい。中国からの贈り物。
アレの真相は、闇の中。結局なんだったのか。ジャックと豆の木位、想像したい。
「今から観光客としてやってくるからな。その餞別だ。ただでやるから受け取っておけ」
そんな意味じゃないか。
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**すれ違う瞳**
ここ数年の都内某所は、なかなか髪色変えが目立ってきていて、会社員以外の奴らが髪を染めて歩いてきている。黄色、緑、青、赤。茶髪にインナーカラーで黄色とかもある。
職場だと、一部分に灰色とかもあって、何ですかそれ? みたいな感じ。
50歳後半の初老女性とかで紫髪とかいた。関西じゃあるまいし。ここ関東だし。白髪染めも多様性があるのだろう。
職場の奴に聞いてみると、きっかけはイメチェンなのだという。そういえば、初老男性の芸人も突然髪染めとか、いるよなあ。
そう考えてみると、瞳に関しては注意深く見ることがなかなか無い。きっと黒だろうと決めつけているからか。まあ、人の瞳の奥をみる機会なんてそうそう訪れるものでもない。
それよりも、虹彩の模様とかのほうが気になるなって。観察眼を呼び込みたい。
ラブソング
2025/5/7 18:30:19
ラブソング
当たって砕けろ的に、直接言えばと言われるけれど。
それだとおみくじ的に結果がすぐに分かって天国地獄。
気持ちの整理をつけようと、紙にしたため天へと掲げ。
口上文句のように声高々と言葉にする。
すると、するするとリズムとメロディが思い浮かぶ。
ひらりひらりと花びらの散る。
風の音は、きっと爽やかであろう。
歌詞を俯瞰して、みれば酸っぱいブドウ。
しかし、赤葡萄酒の熟成期間によれば、長期間であればあるほど深みのあるフルボディ、赤みの強い色合い。
あとから見れば、あとの祭り。
ワイングラスのかち合う音。
それはある晴れた日の、鐘の音の白い教会前の、カフェテラス席。