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目次
人の形をしたデータ達
毎度の如く書きたいシーンがあっただけなのでそこ以外が変になっているのと結構な間全然違う書き方で書いていた為視点がぐちゃぐちゃになっております
一回間が空いたら視点か場面が変わったと思ってください
大体は一人称や口調で差があります
「人形を燃やせ!」
そんな声が聞こえたのはいつか、私は分からない
人間達は綺麗な布を纏い、穢れを知らない髪を持ち、無垢な瞳を持った生き物をいつしか人形と呼び始めた
それがただ美しく無垢な事を罪とし
燃やし、刻み、消した
そして人形は意思を持ったものを主としそれに反抗し恨みを持ち争った
そんな中でも一部の人間が人形の事をデータとし
残した
そのデータは数年後、現在
人形はまだ批判される存在でありながら人間に馴染み、判断が難しいものへ変化した
未だ見つかれば処分されると分かりながらも自らの意思を持った人形は、今でも人間を恨みながら世間へと混じっていた
「…人形ってまじでいるのかもわからないのに、なんでこんな本があるんだ」
「いやー、一様じゃない?」
「人間を恨んでるっことは危ないんだろ?一様じゃやばいだろ」
「浅義は真面目だなぁ」
「揶揄うな、擬波」
「なはは」
青空に白が浮かぶような普通な日、その下で2人は歩いていた
「ん?」
「あ?どうした擬波」
「…なんかいる」
「……幽霊とかじゃないだろうな」
「何、怖いの浅義?」
「そ、そんなわけないだろ…まて、あれ、人じゃないか?」
「…それってやばくない?」
「擬波、携帯準備しておけよ、やばそうなら救急車だ」
「わかってる」
2人は駆け足で倒れている人へ近づいていく
そこにあったのは黒髪を散らばしてローブをきた人であった
「…大丈夫ですか」
「え、浅義、これどっちだと思う?」
「は?」
「男女!」
「アホなこと言ってる暇あるなら呼びかけろ」
「いやだって、この人寝てるだけじゃん?」
「は?」
体に触れ、確認しても脈も呼吸もあり、普通である事が判明した
「ほらね?」
「…で、なんで男女なんだよ」
「だって、髪の長さ微妙だし、ローブ着てるしなーって」
「そんな関係ないだろ」
擬波がバサっと音を立ててローブを捲る、さらっと下半身を覗いている
「女だ!」
「そーだろうな変態野郎自主してこい面会は行かないでおいてやるよ」
「せめて来てよそこはぁ!」
騒ぐ中、眠っていた少女は目を覚ました
「だれですか」
「…おきた!」
「当たり前だろこんなに騒げば!」
「誰ですか」
「あー、僕は擬波、で、こっちの眼鏡が浅義!」
「誰が眼鏡だ」
「私は、05です」
「…05?数字なの?」
「あだ名とかじゃないのか?」
「05、です」
「…どうするよ浅義〜」
「名前が数字って事は、お前人形か?」
「…どゆことだ?」
「この本に書いてあったんだよ、人形は数字で名前でつけられていたって」
擬波が覗いた浅義の手に抱えられた本には[その時代、人形達は製造順の番号で呼ばれていた]と書かれていた
「はい、私達は製造番号05、初期体の人形です」
「初期体?」
「私達には体名があり、100までが初期体、500までが順化体、それ以降が進化体と決められています」
「人形なら処理班に連絡、した方がいいのか」
「…いや、どうせならさ浅義、連れて帰らない?」
「は?」
「これは古いやつなんでしょ?ならよくない?」
「何言ってんだよ古いなら尚更っ!」
「浅義、頼むよ」
なんの気の迷いか、擬波の言葉の後気付いた時には俺らの家の中には、古い、初期体の人形が住むことになってしまった、あの時のあいつの少し濁ったような瞳はもう見たくない
「浅義〜?食べないの?」
「いや食べるよ、いただきます」
「いっぱい食べろよ?痩せてんだからさぁ」
「うるさい、お前は食べないのか」
「もう食べたから大丈夫、人形ちゃんの所行ってくるからゆっくり食べなね」
「はいはい」
数年前から、2人でこの空き家に住んでいた
俺は家出で、出た数年後には父親が死んだと聞いて、擬波は親がいなくて、ずっとこの空き家に住んでいて、
家事は殆ど擬波が、でもあいつはずっと俺の前でご飯を食べた事も寝た事もない、気になった事はない、気にしても意味はないだろうから
テレビからうるさくニュースキャスターの声が聞こえてくる、いつも変わらず処理班の殺害事件のニュースだけが流れてくる
犯人も不明、手段も不明、わかってるのはみんな刺されて死んでる事だけ、俺らが知っても意味はないだろうに
「あれ、まだ食べてるの?」
「擬波、もうよかったのか」
「あぁ、人形ちゃんの事?色々聞いてきただけだからね、大丈夫」
「それにしてもどうするんだ、あの人形」
「んー?処理班には渡すつもりないよ?」
「だろうとは思ったが、このまま保護してバレた時はどうするつもりだ」
「切り捨てるよ、そりゃね、浅義の方が大切だし」
「相変わらずの乙女ゲー台詞だな」
「乙女ゲーって何?」
「兄がやってた女を口説くゲーム」
「あはっ僕口説いてないよ?本音だし」
「はいはい、先風呂は入るぞ」
「はーい」
「ねぇ浅義、テレビ消したい」
「勝手に消していいぞ?」
「はーい」
プツッと消える画面
「やっぱりうるさいなぁ、テレビ」
僕はずっとこの家にいた、だから家事はできる、まぁ僕的にはいらないけどね
浅義はいつも、何も言わないでくれるし察してくれるし、毎日が楽しい
このままでいれたらいいのにね
「浅義〜!ちょっと散歩してくるね!」
そういったら
「夜遅いからちゃんと警戒はしておけよ」
心配で返してくれる浅義が大好きだよ
「はーい」
もう少し疑いは持ってほしいけど
鳥の声が聞こえて、外を見るとまた雲に隠された青が見えて目が覚める、部屋をでて階段を降りる
「おはよう」
「あ、おはよう浅義!」
毎日こいつは俺より早く起きて朝食を作っている
「…ほんとお前いつ起きてんだ?」
「いつだろうね〜、そういえばあの子の名前どうする?」
「は?」
「だって05って呼びずらいでしょ?」
「まぁ、でも…」
「なぁに、やっぱり面倒ごとは嫌い?」
「それはそうだが、名付けなんてした事ない」
「ま、それはそうだよね〜」
「お前は名前の案あるのか?」
「ん?」
「そんな事を言い出すんだ、あるだろ?」
「えーじゃあレイファとか?」
「レイファ?」
「0ってレイって読めるし、5をファイブにしててーいってした」
「雑だな」
「でも、よくない?」
「まぁ悪くはないが…その事言わなくていいのか?」
「あ!確かに忘れてたや」
「連れてきてやれよ」
「はーい!」
パタパタと足音を鳴らして擬波は部屋へ向かう、少し聞こえた何かにひびが入ったような音に俺は気にしないフリをした
「おーい、起きてる?05ちゃん」
「意識は浮上しています、ご用でしょうか」
「少し、着いてきて?」
「はい」
素直についてくる05ちゃんは少し子供みたいで、多分パッチ取れちゃったのかな?自我はあるけど命令遵守してるしなぁ
「浅義〜!連れてきたよ!」
「声が大きい」
「何のご用でしょうか」
「…名前変更してもいいか?」
「名称変更権は消失しておりますので、変更は不可です、その代わり、呼び名を変更する事は可能です」
「なら、呼び名をレイファにしてくれ」
「了解いたしました」
「…なんか機械みたいだな」
「あぁ、パッチないみたいだしね」
「パッチ?」
「人形にはパッチがあるんだよ、自我を表に出す為のものらしいけどね」
「なんで知ってんだ?」
「井戸端会議!」
「なんて話してんだよ」
「猫って詳しいね!」
「それは井戸端じゃねぇだろ猫集会にいくな」
「他にご用はありますか」
「…レイファは、記憶はあるのか?」
「記憶ですか、記録ならございますが記憶と名のつくデータは私にはありません」
「そうか」
少し首を傾げて微笑むその姿はあまりにも人間にしか見えなかった、話す姿も少し目を転がすような動きも、姿だけは人間としか思えなかった
「なーに、浅義、やっぱり人間に思っちゃう?」
「あぁ、見た目が人間にしか見えない」
「…まぁ、今の人形ってみんな演技が得意だからねぇ」
「なんで詳しいんだよ」
「犬って嗅覚がいいんだよ!」
「お前は人間だろ」
「そこなんだ」
「?じゃあどこだよ」
「ううん、…でも、浅義」
「なんだよ」
「もし、僕が人形なら、どうする?」
「あ?そんなの決まってる」
「どうするの?」
「レイファと一緒に隠す」
「…いいんだ」
「一般のルールより仲間だろ」
「仲間?友達じゃないのぉ?」
「それは置いといて、まず俺達は元々一般からのはぐれものだ、なら、一般から思考が外れてても不思議じゃないだろ?」
「わー浅義カッコいいねぇ〜!」
「煽るなアホ」
「あは、ごめんね」
「もうご飯買いに行くからな」
「え、浅義が行くの?僕行くよ?」
「もうそろそろ俺も自立できるようにしないとな、いつまでもお前に任せきりは嫌だ」
「…なら今日の夕飯カレーにするから、具材買ってきて?」
「わかった、行ってくる」
「…」
扉の閉じる音と鍵を回す音が聞こえた
「レイファちゃん」
目の前の人形は綺麗な姿勢で目を向ける
「はい、なんでしょうか」
「パッチ、あったらほしい?」
「所持しているので?この国では人形の自我パッチは上層部しか所持していないと聞いたのですが」
「うん、そうだよ、これはちょっと色々あってゲットした特殊なの」
キラリと反射したパッチをレイファの前に置く
「ほしいなら、あげるよ」
「…いただきます」
パッチを手のひらの器にいれ微量の電子音の後、目を開けるとハイライトが光る様な瞳へと変わった
「ありがとうございます、擬波さん」
「ううん、僕はいらないからねぇ」
「何か、できる事はありますか?」
「できる事?」
「お礼をするのは当たり前ですよね」
「…あ、なら夜、僕が散歩に出た後は浅義が外に出ない様にしてよ、寝る様に促したりしてさ」
「わかりました、ですが何故?」
「…気になるなら今日は一緒に散歩する?」
「一緒に、ですか」
「そしたら、わかるでしょ?」
「了解しました」
まぁ、レイファちゃんも馬鹿ではないだろうしね、いざとなったら迷子になった間にとでも言えば浅義はわかるだろうしね
「ん?あれ浅義?」
「どうかしましたか」
「いや、電話」
「どうしたの?」
[擬波、お茶パックってどれだけあるかわかるか?]
「えーと、たしか一袋だと思うよ」
[わかった、じゃあ一つ買ってくな]
「おっけー!よろしくね」
可愛いなぁ
「さ、レイファちゃん、ご飯炊くの手伝ってもらってもいい?」
「はい、何合ですか?」
「ごめん覚えてないや」
「勝手に入れますよ」
「おっけー3合で」
「わかりました」
「ちなみに言わなかったらどれだけやるつもりだったの?」
「ちょっと多めに10合ほど」
「やりすぎじゃない?」
「私はいっぱい食べれるので」
「ここには人間がいますが??」
「知りません」
扉の開く音が聞こえた
意外と早かったなぁ
「おーい擬波、帰ったぞ」
「おかえり浅義!」
「…レイファにハイライトがある⁈」
「はい、つきました」
「つきました⁈つけるもんなのこれ」
「あ、今ご飯用意するね!」
「はーい!」
こんにちは皆さん、今日からデータ保存の為にこんにちは、レイファです
いきなり始まって驚いているかも知れませんが
とりあえずピースですピース
「レイファ?どうしたいきなり」
「いえ何も」
すみませんついそのままやってしまいました
私は人形なのですがチップをいただいたのでこんな元気になりましたいぇーい
あ、もちろんデータですのでこんな事もできますよいぇーい🏠✌️
まぁそんな事は置いておいて、美味しいカレーを食べた後、私は擬波さんのお散歩についていきます、少し楽しそうなので楽しみです
「ごちそうさま、風呂って沸いてるか?」
「沸いてるよ、入る?」
「うん」
「じゃあその間散歩行ってるね、今日はレイファもいっしょ」
「2人で行くのか、どうせなら牛乳買ってきてくれるか?」
「いいよ!明日はクッキーでも作るの?」
時々、日頃のお礼でクッキーやチョコを作って渡す事がある、擬波は何故か毎回手作りを望むから作ってる、その割には食べてる所みた事ないけど
毎回美味しかったって言われるから気にしてはいない
「じゃあ行ってくるね」
「行ってきます」
「いってらっしゃい」
また後ろから処理班の連続殺人についてニュースキャスターが話し始めた頃2人は外に行って俺は風呂に入る準備をする
誰もニュースには触れない、レイファは気にしてないだろうし、俺は擬波があのニュースが嫌いな事はわかってるしあいつはその話が嫌いだから
「風呂入るか」
えーこんにちは、レイファです
拝啓、マスター、私は今人間って怖いと思っています、人間は愛が重いとこうなることを知りました、知りたくなかったです
「どうしたの?レイファちゃん」
「…いえ、大丈夫です」
私には過激なものは別のものに見える機能がありますが、
こんな沢山の赤い宝石が落ちているのは記録内では初めてです
「さ、帰ろっか」
「始末はいいので?」
「…あーそっか初期体だったね、大丈夫、誰かがやってくれるから」
「そうですか」
早く帰らないと、いけない気はしました
少し遠くから、特徴的なサイレンが聞こえています
青空と鳥の声の下、どんどんと音が聞こえた
「おい擬波!起きろ、人形のこと調べに行くぞ」
「…どーしたの?」
せっかくゆっくり休んでたけど、浅義なら仕方ないなぁ
「レイファの事、知りたいから」
「それなら僕が知ってるよ?」
「世間からの情報も欲しいんだ」
「浅義は見つかったら危ないんだよ」
「だからで興味は打ち消せない」
「本人に聞くのは?」
「言いたくない事があるかもしれない」
「そんなに行きたいの?」
「…あぁ」
「そっかぁ、仕方ないね、行こっか」
「さんきゅ、擬波」
「…お二人はお出かけですか」
少し不恰好なもじで図書館行ってくるねと書かれた紙を持った
「どうしましょうか…私もお出かけしますか」
何を買いましょうか、お金があるわけではないですから、少し食事でも買いましょうか
と、思って外に来たのですが…
なぜ浅義さんと誰かが言い争う場面に…?
というか擬波さんはどちらに?
「だから!もう帰らないって言ってるだろ!」
「あぁ…可哀想に、やっぱり外になんて出すべきじゃなかったのね、こんなにも痩せて」
「はぁ⁈前の方が痩せてたぞ脳だけじゃなく目もまともに使えないのか!」
すごい言い争いですね…語彙力が
これは…まぁいいでしょう迎えにでも行きますか
「浅義さん?」
「レイファ!ちょうどいいさっさと帰るから荷物持ってくれ」
「はい」
「人形…?…きゃぁぁ!」
お相手の方がいきなりヒステリックな高音を出す、うるさい…
「だれか!処理班を呼んで!ここに人形がいるわ!」
「いい加減にしろ!レイファ、早くいくぞ!」
騒ぎにつられて集まり出した人たちの中、浅義さんに引かれ歩く、後ろからはずっとヒステリックな声が聞こえる、それを無視して、家へ帰った
家の扉を思いっきり開ける
少し驚いた顔をこちらを見る擬波にたまらず抱きついた
「お、おかえり…え、どうしたの?」
「えーと、どなたかはわかりませんが、言い争いをしておりまして」
「母さん、あれ母さんだよ、俺の」
「あのヒステリックなムンクのような顔をした方がですか?似てませんね」
「整形とメイクの産物、ろくな結果になってないだけだ」
「…ここももうすぐかな?」
「あぁ、移動しないとな」
「あの…ちなみに何故擬波さんは家に?」
「借りた本を置きに先帰ったんだよ、一緒にいればよかったな」
少しの沈黙の後、私は決めました
「…擬波さん、これ持っててもらえませんか?」
私は、人形ですから、データを移すことは簡単ですから
「わかった、…無茶はするなよ」
「はい、おやすみなさい」
「…レイファ、いるか?」
おやすみと言った後、どうしても1人は無理で、擬波をいつも通り散歩に送り、今はレイファの部屋前にいた
小さくあいた音がした
「…どうしましたか?」
「少し、話していいか」
「どうぞ」
レイファの部屋へ入ると殺風景な白の部屋、家具はベッドだけで窓は開かれ風がカーテンを押している
「家族の話、していいか」
「もちろん」
「浅義正斗って、知ってるか?」
「有名な政治家一家のご子息ですね、数年前から行方不明の」
「それ俺」
「…何故ここに?」
「母さん達、俺の話一切聞かないしなんなら外にも出してくれなかった、人形に会ったら危ないからの一点張りで」
「だから家出したと」
「簡単だった、ご飯の時についてたフォークを思いっきり窓に投げて割って、2階だったからすごい痛かったけど、走れたからそのまま逃げて、擬波と会った」
こんな事を話す気はなかった、
でも話す事がなかったものあったけどすらすらと言葉がでてくる
なんで人形が嫌われてるのか、いや
なんで戦争なんかしたのかも知らない
でもこれだけはわかった
俺はずっと理解できない事が
雲に覆われた月夜の下、
ずっと話して、途中で目から流れた雫が頬を伝った、それも無視して話した
泣き疲れたのか、話疲れたのか、
そのまま目を閉じた
目を閉じる時、月光が途切れた時
レイファはハイライトのない目で微笑んでいた
「浅義、寝た?」
話し疲れて寝てしまった浅義さんを撫でながら
擬波さんは問いかけた
「えぇ、疲れなので簡単には目覚めないと思われます」
「そ」
簡単な返事、浅義さんの意思に反する行動をすると決めた私にふざけるなとでも言いたげな瞳
それすらも月を反射して光る
羨ましい、と思った事もありました
人形の初期体に、意思のなかった私達には光はなかったのですから
私達人形の初期体は、人間に近くとも近すぎないものを作るべく作られ、飲食をする機能はありましたがパッチの有無により瞳の光の有無が変わるようになりました
最初の数機以外はみなパッチをつける資格はなくただ無機質に過ごしていました、
戦争の起こった頃でも同じ
みな、何も言わず壊れていきました
生き残った人形達も、処理班の発足によりほぼ壊れました
処理班は、発足時私達の研究所を襲撃しました
ハイライトの入った数機は誘拐された人間だと判断され保護、私達はみな有害な人形だと処分
私は逃げました
できるだけ遠くへ、だからこんな事になるなんて思ってもいませんでした
もうこの時から、人間に人形を判断する事はできない事がわかってしまった
ハイライトの有無で人間を見分けてしまうのなら、パッチさえあれば分からなくなってしまうのに
「レイファ」
「はい」
「いくよ」
「…はい、擬波さん」
少しノイズが混じるチャイムの音がする
「擬波さん」
「何」
「絶対逃げ切ってくださいね」
「当たり前、浅義はあんな奴らに絶対渡さない」
「…擬波さんも、ですよ」
「…できたらな」
少しずつ、ノックも混ざってくる
罵声すらも聞こえてくる
いつから処理班は悪口の巣窟になったのかなんて
考えたくないな
レイファは玄関でただ無機質に立っている
僕は眠ってる浅義を持ってここを離れる
絶対壊されるだろうなぁ、レイファは
そんなこと分かってても僕らは浅義に笑っててほしいと思ってしまったから
「じゃあね、レイファ」
「えぇ、また、擬波さん」
もうレイファの顔は見る気にもなれなかった
ドンドンと音が聞こえてくる
擬波さんはもう行ってくれたでしょうか
浅義さん、私達の事調べていてくれたけれどどこまで本当の事のっていたのでしょうか、
大体は嘘がのっていますから
もう少し話したかったです
こんな簡単に別れが来るなら再会も簡単に来てくれたら嬉しいです
「また、会いましょう」
扉の開いた音と走る音が窓の開く音と同時に聞こえました
「浅義、行くよ〜…」
眠ったままの浅義を抱えて窓を開けた
2階だからか風が吹いてくる
とんっと窓の縁を足蹴に落ちる
ざわざわとした声達を無視して走る
路地裏や小さな屋根を通っていく
浅義の時々の呻く声だけが僕の耳はとらえていたけど、ポツポツと嫌な音が聞こえてきた
「あー…どこか屋根ないの…?」
カラッと音がした
「そこの人、よかったら入ってください」
「ん…」
目が覚めたら全然違う場所
いや何があった
「起きましたか?」
「えっと…誰ですか」
「私は明莉紗です、たまたま貴方を抱えた人がベランダにいたので、そのまま入ってもらいました」
「擬波は…」
「擬波さんなら隣の部屋にニニといますよ」
ドタドタと走る音が近づいてくる
大きい音を立ててドアが開く
「浅義〜!おはよう!」
「擬波!」
「擬波さん、声小さくしてください、近所迷惑ですよ?」
「あ、ごめん」
「擬波、なんでここにいるんだ?俺達は、レイファは?」
「レイファはここにはいない、どこにいるかは知らないけどね」
「置いてきたのか?」
「いや?レイファの意思だよ」
「…現状把握は私のいない所でお願いしても?」
少し不満そうな顔で明莉紗が呟く
確かにまだ幼い子の前で話す話ではないな
「そうだな、少し席を外してもらっても?」
「それはもちろん、ですがご飯の時までには終わってくださいね、呼びにくるので」
「ありがとう」
「それで…擬波」
「うん可愛い」
ベットの上で座ったまま、浅義がこちらを少し睨む、可愛い
「殴るぞ?」
「あはごめん」
「それで、ここは何処だ、何があった」
「ここは明莉紗ちゃんの家、昨日浅義を背負って逃げてたら入れてくれたんだ」
「だからなんで逃げてきたんだ、レイファは⁈」
「処理班が来たからだよ、レイファはレイファの意思で家に残ったけどね」
パッチは僕が持ってるし最悪話す事はできるけど
「…」
浅義、レイファの事大切にしてたもんね
やっぱりきついかな
「ほら、浅義顔あげて?」
頬を撫でて目を合わせる、まだ不安か心配で目が揺れてる
少しやりたくなってメガネをそっと取る
「擬波…?」
額を撫でて髪を退ける、
可愛らしい鼻に少しだけ、唇を当てる
ぽっと浅義の顔が赤くなる
「ぎ、ぎな擬波…⁈」
可愛いなぁ
「あの…いちゃつき過ぎないでくださいね?」
もう呼びに来てたんだ
「あ、あぁ…ごめん、もうご飯?」
「まぁ、はい…擬波さん、せめてキスまでにおさめてくださいね?」
「明莉紗ちゃん僕の事なんだと思ってるの?」
「同性愛者では?」
「違うよ⁈普通に浅義が大切なだけ!」
「そうです?」
「肉じゃがって大丈夫でした?」
リビングに入ると人数分の肉じゃがと2個のお茶碗が置いてあった
椅子は4つあってひとつには大きい狼のぬいぐるみがある
「大丈夫だけど、そのぬいぐるみは?」
「ニニです、私の宝物」
ニニと呼ばれたぬいぐるみの前にも肉じゃがが置かれている
「…肉じゃが、食べれるの?」
「これは自己満ですよ、ちゃんと後で食べます」
「あ、なら浅義僕の分食べて?僕お腹空いてないんだ」
「何がならだよ、いいのか?」
「うん、いっぱい食べて?」
肉じゃがはすごく甘かったけど美味しかった
擬波の分も食べたからすごい量にはなったけど、お腹空いてたからか食べきれたな
「…で、明莉紗さん、色々聞いてもいい?」
「大丈夫ですよ、敬語はやめます?」
「そうだな、やめるか」
「じゃあ私もやめるね、何が気になるの?」
「まず、俺の事は知ってる?」
「浅義家の子でしょ?わかるよ」
「なら、なんで保護した?危ないのに」
わかるなら尚更、危険だとわかる筈だ
「別に大丈夫だよ、ここを知ってるの先生くらいだし」
「先生?」
「孤児院の先生」
「孤児院?」
「近くにあるんだ、自由に誰でも入れるの」
「そっか」
「うん、というか…浅義くんは何歳なの?今」
「確か16、明莉紗は?」
「14、ちなみに擬波さんは?」
「僕は18だよ」
「綺麗に2歳ごとだな」
「ニニは12だから四連続だね!」
「…その、ニニってのなんなんだ?宝物って言ってたが」
ニニの話をしてる時の明莉紗は楽しそうなのに少しだけ寂しそうで何かあった事は明確だから触れたくはなかったが知らないと話が合わないだろうからな
「ん?人形の友達だよ」
「え」
「へー…今何処にいるの?」
「もういないよ、これもニニの持ってたものだし」
「処理班か」
「そうだね…このまま、話してもいい?ニニの事」
「大丈夫だ、その方が話が合うだろうしな」
「じゃあ、まず、私達は別々の孤児院にいたんだ」
「はじめまして、ニニですよろしくお願いします」
最初見た時きれーな男の子だなって思ったの
「私明莉紗、よろしくニニ君!」
仲良くなるとは思ってなかったよ?まだね
仲良くなったのは確かね
それから5ヶ月くらい経った頃
ニニが手をメンテナンスしてたんだよね
それをたまたま見ちゃって
「明莉紗ちゃん⁈なんでここに」
「ニ、ニニ君お人形だったの⁈すごい!」
「え?」
「だからそんな肌白かったんだいいなぁ」
「あ、明莉紗ちゃん?」
「どうしたの?」
「えっと、怖がらないの?」
「うん、なんで?」
「人形なんだよ?僕」
「うん、綺麗だね」
って、私人形普通に気になってたからめっちゃテンション上がっちゃって、そこから仲良くしてたな
時々会った時に話したり
ニニの日記に少しいたずらしたり
何したのかって?
日記用ペンをラメペンにしたし
消しゴムを白いスポンジに変えたの
普通に使ってて面白かったな
「そのまま使うんだ…」
「うん、ラメペンでも書けるしスポンジでも消せるんだよ」
「そーなんだ…」
スポンジで消せるのその時初めて知ったんだよね
あとはたしか…
あ、でもぬいぐるみ、ニニはおーくんって呼んでたんだけど
そのおーくんをめっちゃ撫でてボサボサにしたこともあったな
ふわふわで毛が多いから簡単にボサボサになるんだよね
あ、何があったかの話だもんね、話戻すね
まぁ、仲良くしてたんだけど
処理班の人が見回りに来たんだ
そしたらいきなり調査だとか言って入ってきたの
そしたら何を思ったのか人形がいるとか言って
何人かの子を撃ち始めた
「明莉紗ちゃん!」
私も狙われたんだけどニニが庇ってくれた
そしたら処理班の人が急に狼狽始めて
どうしたのかって思った時思い出したの
ニニは人形だって
撃ち抜かれた場所は空洞になってて
頭は少し割れてた
でも私の事を心配してくれてた
「大丈夫?明莉紗ちゃん」
「大丈夫、だけどニニが」
「僕は大丈夫だから、大丈夫だよ、明莉紗ちゃん」
立ってたけど私は腰が抜けちゃって、ニニは足も撃たれてたから立てなくて
そこからは覚えてない
次に起きたらニニがいなくて、おーくんもなかった
先生に聞いても教えてくれなかった
でもニニがいないって思ったら辛くて閉じこもった
ずっと閉じこもってお腹空いてたけどそんな事後回しで部屋にいたの
時々水は飲んでたしちっちゃなチョコとかは食べてたよ?
そのままいたらいつかは忘れたけど
処理班のお兄さんがきたの
先生に謝ってたしすごい真剣だった
そしたら先生が私の話をしたのかお兄さんが私がいる部屋にきたから扉越しで話したの
「明莉紗さん」
「来ないで、もう人形はいないでしょ」
「今回きたのはお詫びです」
「なんのお詫びなの、ならあの時の人達連れてきてよ!あの人達が撃たなかったら、来なかったらニニはまだ生きてた、いっぱいいっぱい、今でも話せてたのに!」
「あの処理班は解散させ逮捕しました、刑務所から連れてくるのは難しいから、私がきました」
「お兄さんは悪くないのに」
「あの者たちは私の担当でしたから、処理班の本当の意味をきちんと教えられなかった私の責任です」
「本当の意味?」
「私達はただ人形を壊す為にいるわけではなく、人に害を及ぼす人形を壊すのが本来の意味です」
「…それで何なの」
「今回の件、あの人形の子はだれでも手を出していない人形、だから本来なら捨てられる筈の持ち物を誰かに渡すことができました」
「…持ち物」
「あの子と1番仲がよかったのは貴女と聞いてます、だからこれを、持っていてくれないか」
そう言ってお兄さんが出したのはおーくんだった
え、口調ほんとに合ってるかって?
うろ覚えだから多分違うと思うな
でもおーくんはそれで私のものって事になった
お兄さんは他にも日記とか、ニニが誰かにプレゼントしようとしてたピンをくれた
それがこの真っ白なピン
めっちゃ安っぽいけど、可愛いでしょ?
このピン、私への誕生日プレゼントで用意してたんだって
それから少しは外に出るようになったの
そして2年後、私は孤児院を出てここにきたの
おーくんの事をニニって呼び始めたのはそこからだね
こんな感じかな
「まぁ大体こんな感じだよ」
そう話し終わった明莉紗は少しすっきりした様な顔でピンを撫でた
「そのピン、プレゼントだったんだ」
「うん、可愛いでしょ?」
「可愛いねぇ」
「擬波、手を出すなよ?」
「浅義は僕の事なんだと思ってるの??」
「変態」
「心外!」
「それで、浅義くんは話してくれるの?」
「…無理って言ったら?」
「別に大丈夫だよ、その代わり今日の買い物手伝ってくれない?」
「いや、俺追われてるんだが」
「変装しよ、いっぱいあるからさ」
「いやいやいや、服変わっても意味ないだろ」
「ううん、髪も顔も」
「あー…浅義がんばってね」
「意味わからん!」
ほんとに意味がわからない、なんか明莉紗はニコニコしてるし擬波は冷や汗かいてるし
「ほら、一回ミスって買ったワンピースあるんだ〜…浅義くん、似合いそうだね」
「…まじで?」
明らかに女物のワンピース、なんならウィッグまで
なんでこんなん持ってんだ明莉紗は!
「先生の趣味だったんだ、たまたま見ちゃってね、もらったんだ」
先生の影響多すぎねぇ⁈
というか心読むなよ
「大丈夫大丈夫!似合うよ」
「そんな問題じゃないだろ」
そんな会話をしながらもほいほいと着させられてしまった…
頭には少しだけ違和感のあるボブ
服は白とピンクのワンピース
下は黒タイツで靴だけいつもの…
メガネだけは守ろ…
「似合うね!」
「可愛いよ浅義〜」
「揶揄うな!」
「ほらほら、買い物手伝って?今日は糸買いに行くんだ」
「糸?」
「ニニの修理、少しほつれてきちゃったんだ」
「糸だけか?」
「いや?布も買うよ」
「ここにいたらダメか?」
「ダメだね!ほられっつご!」
「おい!」
引かれて外に出てしまう
スカートはスースーするし少し見られている感じもして落ち着かない
これの方が目立ってないか⁈
「大丈夫、みんなかわいいって思ってるだけだよ!」
「いやいやいやいや」
「あ、ほらここだよ」
指を刺した先は小さな路地裏にしか見えなくて
「路地裏?」
「この奥に友達の手芸屋さんがあるの」
「手芸屋」
「うん、あ!おーいみーちゃん!」
「あっこら!」
人影が見えた瞬間に明莉紗が走っていってしまう
道が一つじゃなかったら迷ってただろ!
進んでいくと誰かが明莉紗と話していた
「明莉紗」
「あ、浅義くんごめんね置いてっちゃって」
「…女の子?」
「違うよみーちゃん、変装してもらっただけだよ」
「こんな格好嫌だったがな」
「似合ってますよ」
「あ、ちなみに浅義くん、この子はみーちゃん!私の友達」
「みーちゃんこと蜜名です」
黒髪のツインテールで…ポンパドールだっけかこの前髪、ワンピースの下からなんか見えてるけどまぁいいか
「浅義です」
「で、みーちゃん、今日も糸頂戴、後布も」
「はいはい、また灰色?」
「うん、灰色と白」
「…浅義さんはいい?」
「お金は持ってない」
「私はお金はもらいませんよ、もらうのは日用品です」
「日用品?」
「私の家に沢山ある布や糸と交換でペンとか本とかをもらったりしてるんです」
「…この子も訳ありか?」
「いや、人間嫌いなだけだよ」
「えぇ、だってあんなバカな事する奴が蔓延ってる一般社会になんて行きたくないですから」
「あ、私が話した乱射事件の時に友達無くしたんだよみーちゃん」
「訳ありじゃねぇか」
その分かりません顔やめろよむかつく
「その顔煽りにしか見えない、明莉紗」
あ、言った
「え⁈煽ってないよ!」
「それでも呆けたらむかつく」
「えー…」
「浅義さん、服とか破れてたりは?」
「それは擬波がやってくれてるしいつのまにか新品買ってきてくれてるから大丈夫だ」
「なら、大丈夫ですね」
「…一緒にお守り作らない?」
「お守り?」
「うん、それぞれ好きな色選んでさ、これからも笑顔でいられますよーに!ってお願いするの」
「…じゃあ、白の布と黄色の糸」
「わかりました、お代、どうします?」
日用品…
「なら、これでもいいか?」
「…これは?万年筆ですか?」
「あぁ、俺がたまたま家から持ってきてたやつ」
「インクはあるので大丈夫ですね、どうぞ」
「ありがとう」
「じゃあ帰ろっか浅義くん!またね!」
「あぁ」
帰る道は少しだけの降り始め雨が落ちていた
「…走る?」
「そうだな、走るか」
ぽつぽつと聞こえる音の中走る
すぐに音は消えて少しだけ虹が見えた
…お守り、あいつ喜ぶかな
「…2人とも遅くない?……ねーニニ君」
ぬいぐるみは何も話さない、わかってるけどね
「守って壊れて、どんな気持ちだった?」
明莉紗ちゃんの話で出たニニ
仲良くなって、最後は大事な人を守って壊れて
多分パッチつけてないだろうから
もう戻れない話せない
「バカだね」
扉の音が大きく聞こえた
「ただいま」
「おかえり2人とも、って濡れてるじゃん、着替えなー?」
「もう家だしそれ脱いでいいよ浅義くん」
あ、見るからに喜んでる
「よっしゃ脱いでくる、擬波、風呂沸かしといてくれね?」
「いいよ、ご飯も作っとくね」
「え、なら今日オムライスがいい!」
「おっけー、半熟?」
「気まぐれレシピ!」
レストランじゃないのになぁ
「シェフの気まぐれオムライスってか」
「シェフ!」
平和だね?
「ほら、早く着替えな?」
「はーい」
「はー…ウィッグあちい」
脱いだはいいけどこれどうしたらいいんだ
「あ、それもらうよ片付けておく」
「あーさんきゅ…っては⁈なんでいんだこら!」
「ん?脱衣所だから?」
「先に服を着ろ!」
「はーい」
恥じらいを持てよ…
「そーいえば、なんだけどさ、蜜名ちゃんのあの下に履いてるのドロワーズってやつだよ」
「いきなり何の話だよ」
「わからなかったでしょ?」
「でも今いらないだろ、着たから先いくぞ」
「はーい」
「すごい声出てたね」
大方明莉紗ちゃんが着替え中に突撃したんだろうなぁ
「明莉紗が服着てねぇのに抱きついてきたんだよ」
「あー…まぁだろうなとは思ったな」
「ご飯もうできたー?」
「できてるよ」
「じゃあ先いただきます!」
美味しそうにたべるなぁ
「いただきます」
「これ美味しい!」
「ならよかった」
少し沈黙になった後
明莉紗ちゃんがこっちを見ていた
「どうしたの?」
「いや?これからどうするのかなーって」
「これから?」
「ずっとここにいる訳にもいかないからだろ」
「あー…」
考えてなかったな
「どれくらいでいくつもりなの?」
「来週くらいでいいんじゃね?」
「そーだね、でもどこいくの」
「…家、戻るか?」
「レイファはいないと思うよ」
「わかってる」
「いいよ、来週、家に戻ろうか」
少しだけ、気をつけないとね
「また散歩いくのか?」
「うん、これだけは欠かせないからね」
「いってらっしゃい、先寝てるね!」
「いってくる」
…いったな
「よし、じゃあ浅義くん!作るよお守り!」
「あぁ、初めてだから優しく教えろよ?」
「もっちろん!」
「…暗いな」
もう帰ろうかな暗すぎてバレにくいけど見つけづらい
「そこにいるのは誰ですか」
…女の子?
「そっちこそ、誰?」
「蜜名です、貴方は」
「擬波」
「擬波さん、…その赤はなんですか」
「君が知ってどうするの…ん?その万年筆」
「今日のお客さんからもらった物ですよ」
今日いったお店
たしか日用品と交換してるお店だったっけ
って事はこの子が明莉紗ちゃんのお友達か…
なら、いいかな
「ねぇ、蜜名ちゃん、少しお願いしてもいい?」
「はい?」
「君のお友達の事でお願いしたい事があるの」
「ただいま〜」
声は聞こえない
もう寝たかな
「ん?」
なんか机の上に…
「お守り…?紙もある」
多分ちゃんと漢字なのが浅義かな?
「お守り作ったから持ってろ…中に小さいおねがい書いた紙はいってるからあけないでね、そこ開けちゃダメなんだ」
可愛いなぁ
「ま、僕も寝るかぁ」
「おはよ」
「おはよう浅義くん!今日何の気分ー?」
「…飯」
「…パンおあライス!」
「パン」
「おっけー!飲み物は?」
「牛乳でいい…」
「よし、メロンパンおあクロワッサン!」
「クロワッサン」
「何してるの…?」
「おはよう擬波さん!パンおあライス!」
「あ、僕は大丈夫だよ」
「今度から無しの選択肢作る!」
「僕しか使わないよ?」
「?わかってるよ」
元気だな明莉紗…眠いだろ普通まだ
「今日何かあるの?」
「友達と会うんだ、ずっと仲良いの!」
「?人間か?人形か?」
「猫!」
……ねこ
「…ねこ」
「なんで2人ともそんな顔してるの⁈」
「紛らわしい言い方するからだろ」
「とりあえず、今日は浅義くん達は家にいてね!私、行ってくるから!」
明莉紗、猫好きなのか
「可愛いねぇ…ちなみに浅義〜?」
「なんだよ」
「今日これで2人きりなの確定したけどどうする?」
「…はぁ?どうするってなんかするのか?」
何かすんのか?ゲームかなんかあったっけか
「んー…なんか作ってみる?」
「え?ご飯食べただろ」
「お菓子、それならいつでも食べれるでしょ?」
クッキーとかなら…って擬波が本棚調べ始めてるけど俺食べ物作った事ないんだが
「スノーボールクッキー作る?」
「スノーボール…?」
雪の球?砂糖でも固めるのか?
「スノーボールわからない?」
「砂糖固めるのか?」
あ、笑い堪えてるなんで笑ってんだ
「えーと、クッキーの一つだよ?」
「おー…」
「やってみる?」
「…で、何があったの?」
「うーんとね…浅義はやっぱり料理無理だったっていうか」
よくクッキー自体は作ってたからスノーボールクッキーいけるかなーって思ったんだけどね…
まさかこんなどろどろのまっしろけになるとかおもってなかったな?
「スノーボールクッキー?」
「うん、むりかなーって思ってやったの」
「…え、このなんかシェイクみたいなのが?」
「固まってはいるから…食べれはするけど」
「…食べていい?」
結構硬いけどいけるよね…おりゃ
…やばい音したね?何今ゴキって聞こえたよ?
「え、大丈夫これ?」
「…いけるいける!」
「いただきます…」
ベキゴキって音すごいね⁇
「まぁ、美味しいね…というか浅義くんは?」
「疲れて寝てる〜」
「寝てねぇよ」
「あ、おはよー」
「キッチンの片付けしてたんだよ」
キッチン…ならもう固まってるかな?
「あ、なら冷蔵庫のチョコって固まってた?」
「おー、できてたぞ」
「持ってきて〜」
「あいよ〜」
お、綺麗にできてるな
「え、おいしそ…」
「食べる?明莉紗ちゃん」
「え、いいの……おいしー!」
あは可愛いなぁ
「……擬波」
「なぁに?食べる?」
「あ」
これは…食べさせろかな?
「はいどーぞ」
「ん、うまい」
「目の前でいちゃつかないでください〜」
「あは、いちゃついてないよー?」
「…そうだ2人とも、私の家早めに出た方がいいかも」
「?なんでだよ」
「今日出かけた時に行方不明のビラあったの、浅義くんの」
「…今更かよ」
「そこに処理班への電話番号あったから人形が攫った判定なんだと思うの、つまり力ずくで来る可能性ある」
「あー…家焼き討ちとかしそう」
「うん、だからすぐ逃げれるようにした方がいいかもね」
「わかった、擬波寝る前に荷物まとめとくぞ」
「おっけー」
少し、焦げた匂いがした
「…予想大当たりか」
「そーだね…急ごう」
擬波が荷物を持って窓から出ようとする
「いや待て明莉紗はどうする!」
「大丈夫、もう助けは呼んであるからさ」
擬波は微笑んで手招きをする
「…信じるぞ」
「うん」
少し走った頃後ろを見ると家が燃えている
人形の昔話で人形を燃やせと喚いた人の話を思い出す
今の状況はあまりにも皮肉だろう
「まるで魔女裁判だな」
処理班の人間達は人形ではなく人間の家を燃やしたのだから
パチパチって聞こえた
「ん…」
多分、当たっちゃったのかな、予想
…ニニはここにいる、2人はすぐ出るだろうから私も出ないと
ガラガラって音がした
これ、やばいんじゃ…
扉を開けようとする
開かない、固まった…!
「やばいって…これじゃ死んじゃうよ」
ここは裏口の扉だからここさえ開けばいけるのに!
少しずつ煙で苦しくなる
身体がまだ小さいから、まわるのが早いのかも
「…どーしよ」
木が割れる音と小さな声が聞こえた
「明莉紗、無事?」
扉は跡形もなく落ちて見えたのは見覚えのありすぎた子
「みー…ちゃん?」
「ほらきて、ニニも持って行くんでしょ」
「う、うん…でもなんでここに」
「情報提供者がいるの、前の万年筆と交換でね、ほら早く」
手を引かれて石を踏んでちくちくとする足を動かして離れる
「…なんで、ここに?」
「何回言うの、少し前に変な人に明莉紗ちゃんを助けてあげて、なんて言われたの」
明莉紗ちゃんなんて呼ぶの1人しかいないけど…まぁいっか
「大丈夫なの?人形だと思われない?」
「さっき、窓から出た奴らいたでしょ」
「え、うん」
「あっちを怪しんだ数人はあっちに行ったしそもそも男って事わかってるのにこっちを撃つバカは流石にいない」
「バカって…」
「合ってるでしょ、ろくに調べもせず人の家を放火するとか馬鹿のやる事でしょうに」
蜜名ちゃんが呆れたような顔をしながら家を見た
家は燃えてがらがらと崩れる音が立て続けになって、少し怖くなってニニを抱く
「…明莉紗、ニニ後で洗うよ」
「え?」
「すすで汚れてる、綺麗な方がいいでしょ」
「ありがと、みーちゃん」
2人は心配だけれど、おそらく擬波さんが浅義くんを守ってくれると信じてみーちゃんと手を繋いで走る、ニニとお守りしか持ってないけど、また会えると思うから
息が荒くなる
靴と地面が当たる音が2人分響く
擬波に手を引かれて影に入り込む
「浅義、大丈夫?」
「大丈夫だから早く動くぞ」
どうやら窓から出た姿を見られていたらしく追われている、人形だとか関係なく捕まったらあの家に逆戻りなんて勘弁だ
「背負ってあげようか?」
「やめろ遅くなるだろ」
「変わらないのに」
「そーかよ」
話して休んでいると小さく声が聞こえた
人形やらこっち、だとか言ってるってことは処理班か
「浅義、ここはいろ」
「あぁ」
コンクリと空を写す窓ガラスしか見えない建物に走って隠れる
入る際にちょっと聞こえた音は1人分だけで
「擬波、多分1人だけだ撒けるか」
「いけると思うよ、!っ浅義!」
「は」
目の前が擬波で覆われる
刹那聞こえた2連続の弾の音
腰が抜けて崩れると擬波が倒れ込む
「擬波…?」
「やっと追いついた、観念しろ」
知らない声が入る、処理班の制服じゃなくて警察の服で、そこに背の高い男が立っている
「少年、浅義家の子で合ってるかな、連絡しないと…」
連絡
止めないとダメだ
どうやって
力はない
なら
力が抜けた手で明莉紗の家から持ち出した包丁を持つ
これしか
ない
刃を男の顔を目指して突き刺そうとする
気づいた男はギリギリで避けてすぐ銃をこちらに構える
「何のつもりだ」
「うるさい」
すぐに包丁を持ったまま飛び乗る
すぐには撃てないのかそのまま倒れる
「やめろ、少年…!」
このまま、刺せば
こいつは簡単に死ぬ
殺さなきゃ、
俺が捕まったら擬波が
壊される
包丁を上にあげる
男が青ざめた顔をする
そんな関係ない
このまま
「だめだよ、浅義」
呟く声が聞こえて振り向く
もうそこに擬波はいなくて
俺の後ろに寄り添って包丁を奪う
「浅義は人を殺しちゃダメ、人殺しは僕だけで十分だ」
擬波が男の首を掻き切って血が飛ぶ
血を多く浴びた擬波は
体にできた二つの空洞をそのままに
「バレちゃったね」
いつもより元気がなさそうに微笑んだ
あーあ
バレちゃった、完全にバレちゃった
ほんとにバラすつもりなかったのに
浅義はぽかっと口を開けて僕を見てる
「浅義、家に行ったら別行動しようか」
「は?」
「人形、しかも人殺しの人形の近くにいたら浅義が危ないでしょ、だから」
「そんなの関係ねぇ」
「関係あるよ、その証拠に今浅義は人殺しになりかけた」
「これは俺の意思だ、お前は理由になってねぇ!」
声が近づいてきた
早くしないと
「…ほら、いこ」
「…っ擬波!」
一際大きい声で浅義が僕を呼ぶ
「なぁに?」
浅義は芯をもった目で僕を睨む
「どうせ、人形だからとかが大元だろうがな、知ってんだよ前から、ずっと音鳴らしておきながらバレてねぇと思うなよ」
音…?
「メンテナンス、してないだろ?だから中に入った異物で音鳴ってたんだよ」
まじか…結構前からわかってたってこと?
「ほら、これでもういらんこと考えなくていいだろ?俺はお前と逃げたい、ここから、親から、この現実から!」
現実、…
「俺の事、守ってくれるだろ?擬波」
そう言った浅義は久しぶりに見るいい笑顔をしていた
「…任せて、浅義」
多分僕も、笑顔なのかな
擬波が穏やかに微笑んだ瞬間
銃をリロードする音が小さく聞こえて
すぐに窓から飛び出す
少し高いが擬波が抱えてくれて上手く着地して走る
ちょっと前よりも元気になった気がした
俺らにもう秘密はないから
「浅義」
「なんだ擬波」
「今度はどこにいく?」
「その前に家に帰るんだろ」
「はは、そうだね!」
隙間から見えた光は夜明けを告げていた
「…疲れた」
逃げた後、撒けたから家に帰った
案の定レイファの身体は落ちてなかったけど
それさえ抜けば前のままで
浅義はソファに身を沈めた
「疲れたねぇ…なんか食べる?」
「何あんだ?」
「んー…冷蔵庫の中身無事なら冷凍物ならあるかも」
「チャーハンあるか?」
「あるかもねぇ」
冷蔵庫の中身も無事でチャーハンをレンジで温める
「食べたらすぐ寝よ?」
「風呂はいいのか」
「明日の朝にでも入ろっか、眠いでしょ」
「まぁ、そうだけど」
「ほら、食べよ!」
「…てかなんでお前は食べないんだ?いつも」
「んー…人形の初期体とかってあったでしょ」
「レイファが言ってたやつか」
「うん、僕は進化体、多分ニニくんは順化体だったのかな」
結構綺麗に分かれてたんだね僕ら
「違いがあるのか」
「初期体はパッチがないと自我を表に出さないけど、食べ物食べたり飲んだり、寝たりとか人間の基本行動は大体できるんだ」
「レイファが食べれたのはそれか」
「そーだね、順化体は人外じみた見た目…というか人形といえばみたいな見た目でパッチはいらない、メンテナンスは月一必要な感じ」
「食べたりは?」
「できるほどたくさんは食べないと思うよ」
「で、お前らは?」
「人間に1番近い見た目の代わりに基本行動のほぼすべてができない、寝れないし食べれない」
「…それ劣化してね?」
「気にしない〜ほらごちそうさま、寝るよー」
「おいこら」
それはみんな思ってるから言ったら終わりなんだよね〜
「…おやすみ」
「うん、おやすみ」
慣れてたベットで起きるのは久しぶりで
「ずっと布団だったからな…」
明莉紗の家には布団があるだけでベットはなくて少し最初は慣れなかった
「あ、浅義〜起きたー?」
「おう、おはよう」
「なら降りてきな?話があるからさ」
「話…?」
出てくとかじゃないだろうな
「あ、出てくとかじゃないよ?レイファの話」
「なんでわかんだよ」
「感?」
レイファの話か…なんかあんのか
「ほら早く降りて?」
「はいはい」
「で…」
「うん、レイファちゃんについてのお話だよ」
「あの時の事でも話してくれるのか?」
「いーや?それは無理、でもレイファちゃんと話せる様にはなるから聞きたいなら本人から聞いてね?」
「はぁ?」
話せるようにってなんだよ
そんなバックアップしてたみたいな…
ん?
バックアップ
確か初期体って、パッチが
「もうわかっただろうけど、ここにあのパッチがあります」
「…でも身体がないだろ」
「それは大丈夫、蜜名ちゃん?と交換してきた」
「そーかよ」
「で、どうする?話したい?」
「当たり前だろ」
「おっけー、じゃあ早速やっちゃおうか、人形持ってくるね」
擬波が歩いてく、でもあの店そんなでかい人形あったか?
「はい、お待ちー」
手持ちほどの大きさの黒髪の人形を持って戻ってきた
「…ちっちぇ」
「そりゃこれしかないからね」
「こんな大きさでパッチはいんのか?」
「いけるよ」
背中が開いて丁度入りそうな隙間ができた
「じゃあ、おかえりしよっか」
パッチをいれる
途端、ぱちっと目を開く
手が震え足が動きだす
黒髪がふわふわと揺れて黒目が俺を見る
小さな口が動いた
「ただいま、戻りました」
「…おかえり、レイファ」
レイファは柔らかく、微笑んでいた
それを見た瞬間涙が出たのは
絶対擬波にはバレたくねぇなぁ
…えー久しぶりのあとがき入りです
まず、20206文字…2万字突破大歓喜!!
ただやりたかったシーンあっただけなんですよ⁈
だから文字数そんないかず没またなるかなーって思ったら2万字突破!
普通にキャラ私好きだから感想ほしい気持ちがありながらもその欲はリア友とかで満足させるのさ
まぁでも読んでほしくはあるので小説コンテストあったら出しますけどね!
では、お疲れ様でーす!
和洋闘の狐
山道の中1人の少女が歩いている
黒色のセーラーを着た少女は
突然空を見上げるとつぶやいた
「和の|業《カルマ》、血結針」
くるっと回りスカートが上がった瞬間布の下から大量の針が出てきて何かを貫く
「…まぁーたぼっち狐かよこんちくしょー」
慣れた様な足取りで周りに落ちた針を蹴り飛ばし手を払いしゃがみ、残った針に触れる
「結来蝋」
針が溶けて地面に消えると
後ろからまた別の白色のふわふわとしたワンピースを着た少女が話しかける
「火岸、またお一人の子?」
「あーミヌア、そ、ぼっち野郎だった」
「じゃあまた探し直しね」
「おー」
2人の少女は山道をおりていく
「今日の夕飯なんだ?」
「今日は照り焼きって聞いてるわ」
「お、まじで?あれ上手いよな」
「そうね」
2人で山を降りていく
今日は火岸の好きな物が夜ご飯だから早く終わらせたかったのだけどすぐに終わってよかったわ
火岸は二年くらい前に狐狩りをしてる時出会った
ちょうど高校の一年が過ぎた頃にお父さんをなくしお母さんは狐に攫われてお金がなくなって
高校を中退してムカついて狐を狩っていたらしい
そのまま拾って今では一緒に住んでいるわ
お母さん達は今では私よりも火岸を可愛がっている、
多分拾った頃にしていた愛してほしい、的な言葉が刺さったのでしょう
「ミヌア?」
「あら、どうしたの?」
「どうしたのじゃねぇよ、いきなりぽけってしてどーしたよ」
「何もないわよ」
「そーかよ」
…なんだったかしら
私のこと愛してくれるか
だっけ
今思えば可愛いわね、確実にこれが原因よね
…後ろにいるわね
「洋の|業《カルマ》、|沈黙の刃《クワイエット・ブレイド》」
歩いてる最中、ミヌアがスカートをたくし上げた途端に先が斜めった刃が飛んで見えていなかった狐の首を切る
「うおっなんだいたのか?」
「えぇ、後ろにね」
「狙われすぎだろほんとに」
毎日絶対1匹は見るしやばいだろ頻度
「もう5時ね」
「え、やば急がねえと夕飯減らされるぞ走れ!」
「門限6時だものね」
やーべ照り焼き減らされんのはまじでやべぇ
というか頻度まじでどーするか
お守りでも買ってくるか?
「あら、考え事?」
「息切れてんぞミヌア」
「あなたが体力の化け物なだけよ!」
「明日夜上神社行かね?狐よけつけようぜ」
「その前に待ちなさいよ早い!」
「ミヌアが遅えだけだろ!」
足おっせーなぁ、先中いっちまうぞ
お、長さん待ってら
「ただいま、長さん」
「私の名前は八千予であり長ではないですよ」
「メイド長だからあってるだろ」
あ、きた
「ただいま帰りました八千さん!」
「えぇお帰りなさい、息整えてからお部屋にお入りくださいね」
「わかりました…」
「ミヌア、おっせぇなぁ」
「あなたが足が速すぎるだけじゃない」
「お前が遅いのもあるぞー」
階段から音がして振り向くとミヌアの母さんがこちらを見ていた
「あら、2人ともお帰りなさい」
「あ、母様」
「ただいま、義理母さん」
「もう、母さんでもいいのに義理って何なの?」
「ほんとの母さんではねぇだろ」
「まぁたしかにね」
「こらミヌアまで!」
母様は私と同じ金髪と少し薄い水色の目をしていて少し儚い見た目をしているけど
結構いじられキャラなのよね
「お嬢様、夕飯ができました」
「八千さん、ありがとう」
「今日のお夕飯なんだったかしら?」
「照り焼きだぞ義理母さん!」
「だから母さんってせめて呼んでちょうだい?」
「義理母さん!」
ニッコニコでそう呼ぶから八千さんまで少し笑ってる、珍しいわね
「冷めてしまいますよ」
「あ、やべいくぞミヌア!」
思いっきり手を引かれる
力が強いから少し痛いのだけれど…
「えぇ、火岸」
照り焼きを食べてお風呂に入った後は私の部屋で寝る用意をする
そしていつものことを2人でするの
「名前は?」
「火岸」
「目的は?」
「狐に攫われた母さんを助けること!」
「何歳?」
「17!」
「大丈夫ね」
「次ミヌアな」
「えぇ」
「名前は?」
「ミヌア」
「目的は?」
「人に害をなす狐を全て狩ること」
「年齢は?」
「17ね」
一度、狐に狙われた人間は記憶が曖昧になるという話を聞いてから毎日名前と目的と年齢を忘れないように共有しているの
「なぁミヌア、明日神社行こ?夜上の」
「お守りでも買うの?」
「狐よけ買おうぜ」
「じゃあお金用意しないといけないわね」
「確か前は600円だった筈だぞ」
「じゃあ1200円ね」
「おう!」
「…もうすぐ9時ね」
「んじゃ先寝るぞ?」
「そうね、おやすみ」
「おやすみ」
ベットは一つしかないから2人で一つのベットで寝る、意外とちょうどいいのよね
朝は大体6時に起きてる
毎回長さんが起こしにきてご飯に呼ばれるから
「ミヌアー長さん来たぞー?」
「あと…4735168952秒…」
「何時間寝るつもりだよ」
「火岸さん、お嬢様は私が起こしておきますのでお先にお食べください」
「あ、了解でーす」
ミヌアを置いて部屋に向かう
なんか後ろで悲鳴聞こえた気がするけどしーらね
お、今日クロワッサンか
「飲み物どうします?火岸さん!」
「お、八柄!何ある?」
「牛乳とジュースありますよ」
「ジュース!」
「はーい!」
「もー…置いていかないでちょうだいよ」
「起きなかったのが悪いだろ!」
「というか今日は八柄がいたのね」
「はい!今日もお手伝いですよ!」
八柄がジュースを置く
今日のジュースはりんごか…
私オレンジの方が好きなんだよな…
「八柄、今日は掃除を教えますからお早めに」
「はーい八千予先輩!」
「あらあら、今日も小さなお手伝いさんがいらっしゃるのね」
「ユリィ様!おはようございます!」
「えぇ、おはよう」
「ユリィ様、今日はご友人とのお茶会の予定でしたよね、なぜこんな時間に起きているので?」
「う、ごめんなさいね、寝過ぎてしまったわ」
「母様も同じ事してるのね」
「意外と似てますよあなた方は」
時間…あ
「ミヌア早く食べるぞ!」
「え?」
「夜上神社開くの9時からだろ!」
「あ!そうね!」
クロワッサンにベーコンエッグ、一緒に置かれた私用のお味噌汁、ミヌア達はコンソメスープだけど私だけ特別なんだ
「ごちそうさまでした!」
「夜上神社のお守りなら600円でしたよね」
そう言って長さんが私達に600円とおまけで300円くれる、おまけでなら好きなものを買ってきていいらしい…え、子供だと思われてね?
「いえ、ただユリィ様が散財する性格でいらっしゃるので、念の為ですよ」
「だからといってなんで私財管理八千予なのよ、使えないじゃない」
「最初に124万の鞄を買った方をそれをいいますか、使わせません」
「とりあえず早めに帰りますね、八千さん!」
「はい、いってらっしゃいませ」
「いってらっしゃいお嬢様方!」
「行ってきます」
ちゃんと食べきってから家を出る
神社は結構近くだけどあそこは狐が湧きやすいから早く行きたいんだよな
夜上神社は家の近くにある小さな神社で
狐が見える人しか行き方を知らない場所
だからか神様が経営をしている
「あら…また来たの?お二人さん」
神様は元々は道祖神だったけど人が通らなくなってから飽きて神社を作ったらしい
元々悪運を遠ざける力があったからお守りを作って売っている
「狐よけくれ!」
「せめて敬語はほしいのだけど?」
「まぁ神様ですし…」
「…まぁいいわ、狐よけね」
「はい、600円です」
「すぐ作るわ」
そういうと神様は手で丸を作って
小さく何かを呟くと赤く光って
布に覆われた丸いものができる
「はい、これ二つね」
「ありがとうございます」
受け取って帰ろうとした瞬間
きゅっと手を握られる
「…神様?」
「実は、こんな事貴方達にお願いするべきではないのだけど、貴方達を探して欲しいって言われててね」
「あ!神様!」
高い声が聞こえて振り向くと小さな狐の女の子が走り寄ってきていた
「狐…⁈」
「安心なさい、敵じゃないわ」
「いきなりすまんのじゃ実はお願いしたいことがあるんじゃ!」
案内された先には小屋で
入ると囲炉裏があって近くに座る
「私には名前はないが、狐と名乗るのじゃ」
狐の子は短い白髪と紫の色の目を持った子で
片目は黒色の花で見えないようにはなっていたが愛らしい見た目なのは変わらない
「それで、狐が何の様なんだよ」
「私の父様を倒す手伝いをして欲しいのじゃ」
「…はぁ?」
「黒髪のお主、お主は火岸という名ではないか?」
「…そーだけど何」
「私の母上は、お主の母なのじゃ」
「…は?」
「待ちなさいな、説明して頂戴」
「もちろん説明しよう、私は白狐家の長女として生を受けたのじゃ」
白狐家は現在父様が当主として君臨し
母様は人間の街から父様が連れてきたと聞いている、
私が生まれた数年後、母様と遊んでいると突然母様が泣き出したんじゃ
どうしたのか聞くと母様は
「置いてきてしまったあの子が心配」
と言っていたんじゃ
あの子とは誰かと聞いた時に初めてお主の名を聞いた
それからお主に会いたい気持ちはあったんじゃ
だが父様を倒したいと思ったのはこの時ではない
その数日後、父様が母様を狐の嫁入りに使おうとしている事を知ったんじゃ
狐の嫁入りは本来狐人しか無理なはずだった
だが、数年前には黒狐家の元従者の子がしたという事もありできると思ったらしい
それに、人間でも狐を一度産むと狐人に近づくのでな
私は狐の嫁入りを止めたいんじゃ
だから狐を倒したいお主らに手伝ってほしいのじゃ
「お主らがいやと言うのなら構わん、これは私のわがままなんじゃ」
「…なぁ、あんた、ずっと思ってたんだけどその花はなんなんだよ」
「…これは念の為じゃ、狐共に言われんようにの」
そういって狐ちゃんは花を取る
その下は火岸の色に似た黒目で、そのまま狐ちゃんは微笑んだ
「…わかった、いいよ」
火岸が急に呟いた
「…え」
「つまり、そいつ倒せば母さんも助けられるんでしょ?そっち優先でもいいならやったげる」
「もちろんよい!」
「…なんだ、ミヌアはいやか?」
「ううん、でもいいの?嘘かもしれないのよ?」
「あの神様が迎え入れてんだ、大丈夫だろ」
ほんと、優しいんだから
「わかったわ、私もやる」
「感謝するぞ!お主ら!」
感極まったのか狐ちゃんが私達に抱きついてきた
火岸的には実質的な妹なのもあるのかしら、撫でてるわね
「…もうそろそろ時間じゃの、帰ると良い」
「あ?何時だよ」
「もう11時じゃ、お主らは学生であろう?友人とかおるのでは?」
「私、中退したから行ってねぇぞ」
「私は家庭教師がいるから行ってないわね」
「…?」
あ、わかってないわね、行ってるもんだと思ってたのね
「で、でも友の1人は」
「ミヌアしかいねぇぞ、普通ヤンキーみてぇな奴と友達になりてぇやつなんぞいるわけねぇだろ」
自覚してたのね火岸…
「…えーと、茶菓子でも食べるか?」
「食べる」
すごく気まずいわね…
「…ちなみになんだが鴉乃家の事は知っとるか?」
鴉乃?
「なんだそれ」
「黒狐家に仕えとった従者の家なのじゃ、数年程前に黒狐家が没落した事により私らの家に仕えた、今は長男がお父様に仕えとる」
「じゃあ、敵ってことね」
「おそらくこの事を知ったら間違いなく排除しにくるのじゃ」
「…そいつはどんな攻撃とかすんの?」
「見たことがあるのは三つの棒を振り回している所しかない」
3つ…
「三節棍、かしら?」
「さん、せつ、こん?」
「どこかの国の鎖で繋がれた棒の武器ね、切る、というよりは叩いたり殴ったりね」
「へー…痛そーだな」
興味なさそうね
「まぁいいわ、狐ちゃん、私達とりあえず帰るわね、また来るわ」
「う、うむ!またなのじゃ!」
手を振り別れて家に向かう
「…母さん、生きてんだな」
「そうみたいね、よかったじゃない火岸」
「早く、助けてやらねぇと」
火岸がはっきり言った言葉が大きく聞こえた
狐と話して別れて、ミヌアの家に帰る
母さんが生きてる事に安心すればいいのか
あの狐が私の義理の妹みたいになってる事に動揺すればいいのかわからなくて、ただ
助けないとって思ったんだ
「そうね、早く助けないと」
ミヌアがこちらを見て微笑む
「また、話したいのでしょ?」
「もちろん、また母さんと話したい」
「狐ちゃんがいってた人には気をつけないとね、従者ならそれなりに強いでしょうし」
「そーだな、それぐらい私がやっつけてやる」
絶対に、死なせない
「…姉様は黒髪」
黒髪は狐の嫁入りに使われる事が多い
だから本来なら声を掛けない方が良かった事はわかってるのじゃ
でも私の力だけじゃ絶対母様は救えない
「ごめんのじゃ、姉様」
「そーいえば火岸、今日のお夕飯どうするの?リクエスト求められてたわよ」
「え、まじかよ…」
夕飯か…肉巻もいいし…いやシチューとかでも…
「帰ってから何が残ってるか聞きましょ」
「だな!」
…そーいえば、さっきの外にいた気配なんだったんだ?狐ではなかったし
火岸達が去った神社の前の木の上で2人の青年が座っている
「…あやしいな」
「うーん…そんなあやしい?天矢」
「名前を呼ぶな、犬」
「ごめんって、それにしても嬢さんが人を招待してるの初めて見たね」
「人間を招待してるのも初めてだ、それに嬢さんは妃様の事を大事に思ってるから、妨害する可能性はある、報告するぞ」
「了解、帰ろうか」
2人は少しだけ会話をしてどこかへ消える
その場所には黒い羽が落ちていた
「残ってるもの…ですか?」
「昨日の照り焼き残ってますよ!あとあと…スープもあります!」
「お、なら私それでもいいな」
「人数分あるの?」
「えーと…確認してきます!」
八柄が走って厨房に向かうのを見る
「それにしても帰りが遅かったですね、何かありましたか?お嬢様」
…八千さんは勘が鋭いのよね
私達、狐狩りの話は母様にしかしてないの
八千さん達は心配しちゃうから
母様も心配はするけど結構放任主義だから
「今日は神社の人と話が盛り上がっちまったんだよ」
と火岸が言ってくれた
「…そうですか…お2人とも、今日の残りはお小遣いにして構いませんよ」
「え、まじで⁈よっしゃ」
「あら、いいの八千さん?」
「ユリィ様よりは変な事に使わないでしょう?」
「母様はいっぱい使うものね」
「もう少しお小遣いを減らさなくてはいけませんしね、ユリィ様の」
「…また変なの買ったの?」
「先程、"弱い君でもすぐに相手をぼこぼこに!全自動馬鹿野郎抹殺機(単三で動きます)注、パンチングマシーンと単三は別売りです"と言うものが届きまして」
「…なんだそれ」
「何円?」
「着払いで50万程」
「母様のお小遣いなしにしましょ」
「ええ、そうします」
「2人分ありました!」
八柄が戻ってくる
2人分…
「なら、あなた達のぶんにできるかしら?私達は何か簡単なものでいいわよ」
「え、いいんですか!」
「でしたら今日はビーフシチューにでもしましょうか」
「ビーフシチュー!うまいやつじゃん!」
「部屋で待ってるわね、火岸、戻りましょ」
「おっけー!」
礼をしてる2人をチラリと見てから部屋に戻る
「…どうするの?あの狐ちゃん」
「助けるのは変わらない、従者のやつがどれだけ強いか分からないのはきつくね?」
「それはそうね、また明日狐ちゃんの所行ってみましょ、くるかもしれない」
「確かにな、実体あるって事は結構いい家だろうし従者近くで見てそう」
「ならそれ用の用意してきましょうか」
「なら服明日はお前ふわふわ着ねぇとな」
「火岸もじゃなくて?」
「袖のはむじぃんだよ、掴めねぇ」
「そう、なら仕方ないわね」
ミヌアが微笑む、毎回ミヌアは私に対して微笑んでる、そんな面白いか?私
「もうつけておく?」
「あー…なら、針だけすぐ取れる位置つけるか」
「スカートにでもつけるの?」
「和の|業《カルマ》、血結針」
少し袖を振ると針が数本出てくる、
袖から出たやつを掴んで使う事もできるらしいが私は無理だ
だっていつもと同じ速度だぞ?真剣白刃取りをプロ相手にやってるみたいな事だぞ無理無理
針を制服のリボン近くのポケットに二本
スカートの上の方に縫い付けるみたいに二本…
「…ちくちくしないの?それ」
「いやすげぇちくちくする」
「やった事あるのね」
「他に服無いんだもん、仕方ねぇだろ」
「本当に欲しいならあげるわよ?」
「ミヌアの服ふりふりばっかりじゃん」
「大丈夫、似合うわ!」
「似合うとかの問題じゃねーよ!」
ミヌアの服真っ白だったり薄ピンクだったり水色だったり私に合わねえ色しかないんだよ
「まぁいいわ、ほら合図が来たから下行きましょ」
「合図?なんか鳴ったか?」
「夕飯の時部屋の中を見ないように必ず部屋前の花瓶の中の鈴を鳴らすの」
「なんで中なんだ?」
「さぁ?泥棒さんとかがそれ利用して誘拐とかしないようにじゃないかしら?合図を知ってるのは八千さんだけだから」
「へー」
下にいくとパスタが置いてあった
「ソースの方はお選びいただけますよ」
「え、何あるんだ?長さん」
「和風ソースとミートソース、念の為カルボナーラ風も」
「和風で!」
「了解しました、お嬢様はどうなさいますか」
「私はミートソースで」
「はい」
パスタはすげぇうまかった
まぁ義理母さんはまだ帰ってきてなかった
ちなみに後から聞いた話だと本当にお小遣いはなしになったらしい
「で…なんで風呂入ってきたんだよ」
「あら、火岸は気にするタイプだったかしら?」
「いや別に気にはしねぇけど」
私達はどっちも湯あみ着着てたから別に気にしねぇけどさ
「どうせ後に入るのだから一緒でしょ?ほらほら早く寝ましょ」
「はいはい」
布団に入る…やっぱこいつ体温高えよなぁ…
「おーい、ミヌアー!早く起きろって!」
後ろからすげえ気配してんだって!
ブチギレてんぞこれ!
「ん…ありぇ、おはよー」
「はいはい早く着替えるぞ!」
「えぇえぇ、お急ぎください、後五分以内に来なければお二人のご飯は無しで大丈夫ですよね?」
扉越しから思いっきり脅してきたー⁈
「いやいやそれは勘弁だって!寝過ぎただけじゃねぇか!」
「寝過ぎたと自覚なさっているのでしたら早くしたらどうでしょうか?」
「あっすいませんした」
「もういけるわよ…火岸」
「あっはや、まだ寝ぼけてるだろそれ」
ミヌアは着るの早いなぁ…まぁいいや
「ほらいくぞ!長さん!出るんで退いてください!」
「えぇ、もちろん」
扉開けた瞬間の長さんのニコニコスマイルは怖い
私は覚えた
「…どしたの義理母さん」
問題、
扉を開けたら包帯ぐるぐるにされてる義理母さんがいた私の気持ちを答えよ
答えは困惑そりゃそうだろ
「昨日の見掛け倒しありましたよね?あれの中身買っちゃったらしくて八千予先輩が怒りました!」
「バカね母様…」
「ひかりゃなぁれしょ」
「なんて?」
「仕方なくないですよユリィ様」
「らひろ」
「口のやつなら取ってあげますから普通に話してください」
あ、取った
「だって片方買ったなら買いたいじゃない!」
「あら、ユリィ様は拘束がお好みで」
「ごめんなさい」
「母様弱…」
「ごちそうさま」
「あ、私もごちそうさま!長さん!今日も出かけるな!」
「了解致しました、お早めにお帰りくださいね?」
「はーい!」
「そーいえばさ」
「ん?どうかしたの?」
「私ら狐の家の行き方知らなくね?」
「…確かに」
「とりあえず神社来たけど…どうすんだ」
「神様に聞いてみる?」
話をしていた時知らない声が聞こえた
「中の|業《カルマ》、鎖杖」
「っ火岸!」
「血結針!舞え!」
火岸のスカートに隠していた針が飛び出すと同時に私達が数秒前いた場所に何かの叩く音と砂埃がたつ
針が刺さる音はしなかった
「お前らも|業《カルマ》持ちか…犬連れてこなくてよかったな」
砂埃の中から黒髪の男が歩いてくる
手には三節棍…
「貴方が従者の人?」
「鴉乃ってのって事か」
「知ってるなら話が早い、我らの主人の生命の安全と術の成功を確実なものにする為、命を捧げてもらおうか」
「はぁ⁈いやに決まってんだろ、ミヌア!」
「洋の|業《カルマ》、|細身の剣《スレンダー・ソード》」
袖の隙間からレイピアを生み出して手に取る
「和の|業《カルマ》!鋼乱刃!」
火岸は袖からは取れない
だからスカートから生み出してそれを掴んで使う
「…そうだ、名乗らさせてもらおうか」
黒髪の男はゆっくりとお辞儀をして名乗った
「鴉乃家長男、鴉乃天矢、貴殿らの命を奪う為にここにきた」
「…ミヌア・クロッサルタよ」
「…黒波火岸」
「そうか、名前だけは覚えておく」
「そうね、それはこっちもよっ!」
先手必勝、その言葉も時には本当になる
相手は三節棍、私達よりも構えるのは遅くなる
その予想通り一瞬だけ隙があった
「ほぅ…名乗ってすぐとはずる賢い考えはあるんだな」
「あらあら、賢いだけにしてほしいわね!」
「和の|業《カルマ》!血結針!」
私が下がった瞬間隣から声がして隣を見る
もう構えていて出すと思って咄嗟に飛ぶ
火岸のスカートから出た針の数本が相手に刺さるのが見えた
「っ」
「あら、案外弱いのね…」
どうせならここでとどめでも…
「なにをしとるのじゃ!」
「!狐ちゃん」
狐ちゃんが奥から出てきて私達の間に入る
「…嬢さん」
「やっぱり来とったか、天矢」
「…嬢さんは、そっち側なんすか」
「お主、はよ帰り?犬李も心配するやろ」
「嬢さんは、主人様を殺す気で?」
「…そうじゃな、もしこのまま父様が母様を使うというのならそれも、やむを得ないと思っておる」
「…今日は、帰ります」
「そうするとよい」
「ですが、報告はさせてもらいますよ、嬢さん」
「覚悟の上じゃ」
男は怪我をそのままに木に登って何処かに飛んだ
「…さて、どうしたんじゃ?」
「お前に会いにきたら襲撃されたんだよ」
「そうね、でも思ったより強くなかったわ」
「天矢はいつも犬李と共に行動しとるからの、いなかったから本調子ではなかったのじゃろう」
「その犬李ってやつも業、使うのか?」
「知らぬ、だが天矢よりも力自体は強いと聞いておる」
「…ねぇ、さっき報告って言われてたけれど、狐ちゃんは大丈夫なの?」
「父様は私に少しは甘い、無理矢理戻されたりはせぬよ」
「そう…」
「とりあえず入ろうぜ、話はその後で」
「そうね」
「報告ご苦労、下がれ」
「…はい」
襖を閉めて廊下を歩く
まだ足には針が刺さった痕がそのままで
あいつに会ったらめんどいな…
「あ、天矢!」
「げ」
「げ、ってなんだよ…て、怪我してんじゃん、治療室行かないの?」
「いまから行くんだよ心配するな」
「…ついてくよ、主人様への報告終わったんでしょ?あとでしゃぶしゃぶでも食べに行こう」
「はいはい、わかったから…」
ついてくるなって言おうとしたらいきなり体が浮いた
…浮いた?って
「なんで抱っこなんだよ」
「足、痛いでしょ?早く傷が治る天矢でも痛みは防げないからね」
「…揺らすなよ」
「了解」
抱かれて運ばれる流れになった時に走ってくる音が聞こえた
「天矢さん!」
「|猫月《びょうげつ》、どうした?」
猫月は俺がここにきた時からいる主人様付きの指示係だ、主人様からの指示を皆に伝達する仕事だからよく廊下を走っている
「忘れない内に承ったご指示をお伝えしてもよろしいでしょうか!」
「あぁ、大丈夫だ」
「報告にありました黒髪の少女をここに連れてき、妃様の代わりにしよ、との事です」
「…は?」
「あ、えっと詳細は主人様に聞くしかないのですが…」
「いや、怒ってはないから大丈夫だ、下がっていいぞ」
「あ、はい!失礼します」
猫月が廊下を駆けていく
…黒髪の少女、というと火岸、と言っていた少女か
「…あの時の黒髪の子?」
「あぁ、あの妃様の娘様だ、火岸という名らしい」
「そっか、なら次の時は僕もついてく、置いていかないでね」
「はいはい、リードは俺は持たないから自分で持ってこいよ」
「なぁ、狐、そっちのって誰だ?」
「あー…友達じゃ!」
「はじめまして」
黒髪の、…着物
「狐の子?」
「まー…そうじゃな」
「こらきね!言わないって言っただろう?」
「きね?」
「あだ名じゃ」
「僕達狐は当主になるまで名前がないからね」
「だからお互いを呼び合うためのあだ名をつけてるのじゃ」
「じゃああんたもあだ名あるのか?」
「僕はつろき、少し変かもしれないけどまぁ僕らの中でしか呼ばないからね」
「ふーん…てかささっきのやつどうするの?」
「あぁ、従者の人の事かしら?」
「…天矢は弱かったかな」
「?まぁ思ってたよりはな」
「あやつは黒狐家の中でも戦闘員ではなく世話係なんだよ、だから戦闘慣れしてないんだ」
「…へーなんで知ってんだ?」
「…あ、えーと、黒狐家の親戚だからかな」
…怪しいわね、もしかしたら重要かもしれないし聞かないでおきましょ
「そう、なら従者の人の情報色々聞いても?」
「あぁ、わかった、何が聞きたい?」
「さっき言ってた犬李って人は誰?」
「犬李は元戦闘員、天矢と結華の幼馴染であり親友だ」
「結華って誰だ?」
「天矢の妹だ、今はもう生きてない」
妹ってことは鴉乃家の子つまり元黒狐家の従者…あれ
「…ねぇ、狐ちゃん」
「なんじゃ?ミヌア」
「前言ってた元従者の、狐の嫁入りに使われた子って、もしかしてその子なの」
「…きね、話してたのか」
「軽く話した程度なのじゃ、覚えてたのか」
「…ならさ、あいつも狐の被害者って事か?」
火岸が呟いた
「…そう、かもしれないわね」
「じゃあなんでそれでも仕えてんだ」
「あいつの親は狐に仕える事に誇りを持っている、それにもう長年の仕えによって身体に異常がおき今更仕えるのを辞めたところですぐ時間がきて死ぬだろう」
「…そうかよ」
少し重い空気になったタイミングで
手を叩く音がした
「もうすぐで日没じゃ、2人は家に戻った方が良いじゃろ」
「…そうね、火岸、帰りましょ」
「あぁ、早く帰らな怒られるな、長さんに」
そう手を繋いで帰路に入った
「お帰りなさいませ、…それで、その血はなんでしょうか?」
「…」
「…」
「あ」
戦闘した時のやつ…
「…長さん、洗濯お願いします…」
「えぇ、やりますよ、ですがその針は抜いてくださいね」
あ、火岸が固まった
「ハイ…」
「…絶対バレた」
「八千さん勘鋭いものね…」
傷と針、遅い帰り…
「喧嘩までの思考であってほしいわね…」
「喧嘩にしては武器針って普通ないだろ」
「たしかに」
「とりあえず明日、どうしましょうね」
「…誤魔化すか!」
「で、説明していただけますか?お嬢様方」
…ですよねー…
「いやーただの喧嘩というか…」
「喧嘩で相手の血がべったりつくことがあると?」
…そういえば思いっきりついてましたね…
「いやほら長さん、私だよ?それくらい…」
「では針の説明もいただけますよね?」
「あー…相手が持ってたっていうか」
「ではなぜポケットにあるかは」
逃す気がないのですね八千さん…
「…いえ、ません」
「っ、八千さん!」
「なんでしょうかお嬢様」
「その針は私のものよ、護身用で念の為で渡してただけなのよ」
「そうですか…そこまで理由を作るのです、私達には言えない理由でもあるのでしょう」
「…長さん…?」
「何をしてるのかは分かりませんが、今日外出をするのでしたら条件があります」
「条件?」
「危険に巻き込まれている様子ですので猶予はつけますが、何があっても必ず、明日には帰ってきてくださいね」
「…はい!」
「と、返事はしたけど…やばくね?」
「やばいわね」
「何がじゃ?」
結局長さんに許可はもらえたけど…明日までに必ず帰れる保証ねぇんだよな、多分ミヌアもわかってる
「前の鴉の人、間違いなく今日も来ると思うのよ」
「まぁ、そうじゃな…お茶と茶菓子じゃ好きに食べよ」
「お、さんきゅー狐!」
大福!うまそー…あ、うっま
「いただくわね…まぁ、何をするかわからないからどうしようもないのだけど」
「…姉様を狙う可能性はありそうじゃの」
「姉様?私か?」
「今までの狐の嫁入りでも、代々黒髪の子を使っておった、そして今黒髪で認知されてるのは母様と姉様だけ」
「あー…何、母さんの代わりに使おうってか?」
「そうじゃ、だから攫おうと考えることはありそうじゃの」
ふーん…あ、この大福豆じゃんめずらし
「興味無さそうね…」
「まぁそりゃな」
「とりあえず帰りましょうか、早めに帰らないとまた来るかも」
「そうじゃの、長居は今度にするとよい」
気をつけることを話してすぐに狐ちゃんの結界から外へ出る
まだ明るくて太陽が見えるほど早い時間
「…どっか寄るか?駄菓子屋とか」
「そうね…でも私駄菓子わからないわよ?」
「私がわかるから問題ないだろ?うまいアレンジも教えてやるよ」
「あらそれは楽しみね」
この後の話を軽くして2人で神社の階段を降り切って通路に出ようとした
すると
「わっ?」
と火岸の声がした
「火岸?」
すぐに振り返ると前も見た黒髪の髪の毛とその後ろにいる見知らぬ明るい茶髪の青年がいて火岸を捕まえていた
「あ"ぁ?離せよこら!」
「すまんがこちらも任務だそれはできないな」
「それにさすがに強くてもこの状態で逃げるのは無理じゃないかな?」
「…だれ」
「僕は犬李、天矢の相棒だよ…この子を攫えと主人様に言われてしまったからね」
「そう、なら失敗したらごめんなさいね」
犬李と名乗った茶髪の青年は何も武器を持っていなかった
天矢の方が短刀を火岸が暴れたら当たってしまう程の距離にして持っているだけ
明らかに前より軽装だ
「洋の|業《カルマ》、|細身の剣《スレンダー・ソード》!」
すぐに召喚して刃を向ける
「…鴉、先戻って妃様の所に行ってくれる?」
「は⁈お前今無理だろアホなのか⁈」
「でも鴉よりは僕の方が戦闘はできるよ」
「うぐ…わかった、先行くぞ」
「行かせるわけないでしょう!」
急いで飛び掛かると瞬間的に足が見えて後ろに下がる
「火岸!」
その数秒の間にもう火岸達はもういなくて犬李だけになっていた
「別に君らに手を出すつもりは最初なかったんだよ…僕らただの見守り担当だったしね」
「あら…なら毎回みていたの?」
「いつもは天矢だけだよ、天矢は前から戦闘は苦手だから危ない気配がしたら僕も行く事にしてたんだ」
お互いに私は刃を向けて相手は武術のような構えで硬直する
「ねぇ…貴方、どうして狐に使えているの?」
「深い意味はないよ、天矢がいるからだからね」
「それにしては1人にするのね」
「…なんの話かな」
「狐ちゃんに聞いたのよ、あの子の妹さんの話」
「別に1人にはしてないよ?結華は気に入られてしまった…僕らには何もできない」
「逃げるのはできなかったの?」
「天矢達を逃しても2人ともすぐに寿命がきて死んじゃうよ、2人とも使えてる時間が長いから」
「そう…」
硬直した時間を解くために刃を下ろす
「いいのかい?戦わなくて」
「貴方を倒した所で火岸は解放できないわ、すぐに突撃してあげるから屋敷で待ってなさい」
「…そうかい」
とんっと音がして木に飛び乗って青年は消える
そさて私はすぐに狐ちゃんの元へ走った
「狐ちゃん!」
大きな音を立てて扉を開く
「ミ、ミヌア⁈どうしたんじゃ?」
「白狐家の家、わかる?」
「わかるが…実家であるから」
「じゃあ案内して?火岸の事すぐ助けなきゃいけないもの」
「ふ、ふむ…?」
「ぁ…」
目を開くと見知らぬ木、しかも…いやここ何処だよ!
「起きたか?」
鴉野郎が目の前で立っていてこちらをのぞいてくる
「あ、鴉野郎」
「その呼び方はやめてくれ…」
「ちなみにここ何処だよ」
「マイペースだなお前、白狐家の本家だ」
「本家?」
「…分家はわかるか?」
「知らない!」
「そうかよ…」
あ、ため息つきやがった
「まぁとりあえず立てるだろ?ついてこい」
「いやは?」
「だめに決まってんだろ?」
「ぶー!」
なっがい廊下の先
すごい高そうな扉がひとつだけあった
「…お前からしたら嬉しい方がここにはいる、騒ぎすぎるなよ」
「うれしい方…?」
静かに扉が開かれた先には長い黒髪の…
「…母さん?」
「…火、岸?」
明らかに前とは違った高そうな着物、さらさらだけど長く伸びた髪の毛、確かに色々変わっているが優しげな眼は、変わってない…
「て、天矢?何故ここに火岸が…」
「主人様からの命で連れてこいと、ですが、ここに来たのは自分達の気持ちです」
「気持ち?」
「今の内にお決めください、覚悟を決めるか、もし決まらないのであればお話を…自分は外にいますので」
天矢は私を部屋に入れてゆっくりと扉を閉め静寂な空気になっていく
「…火岸」
「母さん、母さん…何処にいたの?今まで」
泣きそうになりながらも嬉しくなってつい飛び込む、母さんは私を受け止めてくれた
「ずっと、ここにいたわ」
「私、探してたんだ、狐に攫われたんだ、なら助けないとって」
「ごめんなさいね、攫われたわけではなかったのよ」
「父さんもいなくなって、母さんもいなくて、友達もいなくて…私、1人だった」
「そう…」
「でもね、ミヌア達がきて仲良くなって、今私幸せなんだ」
言葉が止まらない、ずっと話したかったことが溢れてきて母さんはずっと頭を撫でて全部を聞いてくれた
「…大変、だったのね」
「うん、…次、母さん話してよ」
「え?」
「父さんの話、あのいなくなった日の話」
「…そうね、あの日は…今でも覚えてるわ」
あの日は晴天でほんのりと暖かい日
貴女は知らないかもしれないけれど、
あの人は貴女がいない時に私を殴るようになっていたわ、時には暴言を浴びせられ、一度なんて作ったご飯を捨てられた
…愚痴を言いたいわけではないの、ごめんなさい
あの日も、同じだったの
でもどうしても嫌になって着ていた服のまま逃げたの必死に走って落ち着いた時には山の中にいたわ
足は血で汚れて髪も肌も汗でびちゃびちゃ
どうしようかと思っていたら鈴の音がなって
あたりが突然暗くなったの
焦っていたら狐が私の前にいて、話をきいてくれた
そしたら狐から
「私と婚約をしてほしい、その代わりにその男を消してやろう」
って言われたの
今思うとあんまり気は進まない言葉よ、でもその時はすごく疲れてたんでしょうね
その言葉に一つ返事で了承したわ
貴女の事さえ忘れて…
「成立だな」
そう言われた瞬間に家の方から雷の音が聞こえたの
そのすぐ後に病院から連絡があってあの人が亡くなったことを知った
その時はすごく安心したの、でも家に戻ろうとしたら
「すまないが契約上返すことはできん、ついてきてもらうぞ」
って、
私はこの家にその頃から住ませてもらっていたの
…ごめんなさいね、長くなってしまって
「ううん、いい…父さん、やっぱりそうゆうことしてたんだ」
「知っていたの?」
「うん、でも私何もできないからさ、聞いてただけだったな…」
「いいえ、貴女がいたからまだよかったのよ、きっと、いなければ私はもっと早く限界がきていた筈よ」
2人でくっついてゆっくりとした時間を過ごす
そんな中ふと鴉の発言を思い返して疑問が浮かんだ
「なぁ母さん鴉野郎が言ってた覚悟ってなんだ?……嫁入りか?」
母さんが答えなかった事ですぐに気づいた
覚悟は自分がいくかって事なんだと
なら、説得ってのは私をか
「私達さ、それを止めるためにここ探してたんだよ」
「え?」
「狐に言われてさ、母さんを助けてって…だから探してた」
「そう…あの子が」
「うん、…まぁとりあえずさ、ミヌアの事だしすぐ突撃してくるだろうし待とうぜ!」
「…思ったのだけど…もしかして火岸、そのミヌアちゃんの事、好きなの?」
「…へ⁈」
ぽっと顔が赤くなってつい顔を母さんに埋もれさせる
それに対して母さんが手を口に当てて微笑んだ
「あらあら、微笑ましいわね」
「いやいやいや!私別に好きな訳じゃないよ!あっちから毎回わざわざ私に近づいてくるから…」
「大丈夫よ、私同性も受け入れるわよ?というか薔薇物も百合物も読めるわよ?」
「いや何それ⁈」
ぎゃいぎゃいと騒いでいると小さめにこんこんと扉を叩く音がする
2人ともそれで静かにすると
「あの…妃様、壁はそこまで太くございませんので…そちらのお話はお控えいただけると…」
と、鴉野郎の声が聞こえて2人でちょっとだけ笑って、楽しかった
「で、ここね?」
「うむ…だが、早くないかの⁈」
「いやこんなものよ?火岸の為だもの」
あれからすぐに走って狐ちゃんの家の前へとたどり着いた…あのわんちゃんもいると思って武器の召喚の準備はしやすい服にしてきたから大丈夫の筈
「なんか…あれじゃの、もしかしてお主姉様の事好きじゃな?」
「…狐ちゃん?こら」
「あ、当たりじゃ当たりじゃ!わかりやすいのう!」
ちょっといらっとして狐ちゃんの頭を掴んで力を込める
「いたいいたいいたいのじゃぁぁぁぁぁ!」
頭を抑える狐ちゃんを横目に家を睨んで召喚していた剣を構える
「狐ちゃん、下がってね」
刃を押し込んでこじ開けて同時に私が使える最強を使うことにした
「洋の|業《カルマ》、|泉に落ちた王の剣《ファウンテン・キングソード》!」
ふわりとした袖から大きな剣がでてきてそれを掴んで重さのまま振り回す
「わわわわわ!危ないのじゃ!」
「さ、いくわよ!」
「…何か、あったのかしら」
「え?」
「何か声が聞こえたの、もしかしたら貴女のお友達が」
母さんがこっちを見た瞬間に扉が開く
そこには全身が真っ白な狐が睨むようにこちらを見ていて
それが見えた瞬間に母さんは私を胸に寄せて守るように後ろに回してくれた
「妃よ、それは誰だ」
「あなた…この子は私の娘よ、言ったでしょう?元々娘がいた、と」
「ではなぜここにその娘がいる…あぁ、お前か」
扉の近くで跪いていた鴉の胸を引き重い音と小さな声がして鴉が倒れ込む
「天矢!」
「どうせぬるいお前の事だ…妃の気持ちでも考えたのだろう?…命令違反までして」
「…当たり前です」
「口答えか?」
「俺は元々黒狐様に仕えたもの、貴方に捧げる忠誠など、元よりない!」
そう叫んだ鴉を白い狐はまた殴ろうと拳を振りかぶって少し嫌になって目を背けた時
「世の|業《カルマ》、彼岸膜!」
その声と共に狐の手が当たる直前で何かに当たってぴたりと止まる
「…犬李!」
目を開けるとあの時見た茶髪が鴉の前にでて微笑んでいた
「主人様、嫁入りの準備ができました…躾をする時間ではないのではございませんか」
「犬か、ならば妃をつれ部屋で待て、躾は今しなくてはきかん」
「それは、できません」
「…お前もあの愚者に堕ちていたわけではあるまい?」
「いいえ、ただ天矢の傷つく姿を見たくないばかりの行動をしているまでです、どうかご容赦を」
「…ならば、2人で今来ている侵入者の世話でもして役にたて、次はないぞ」
「…仰せのままに」
鴉の前で狐に跪く茶髪を横目に白狐はこちらを向く
「妃よ、最後こそ従ってもらうぞ」
「…えぇ」
母さんはまた、寂しそうな目をしていた
「…めんどくさいわね!」
「当たり前なのじゃ!お主は襲撃者なのじゃよ⁈敵は多いに決まっとるじゃろ!」
屋敷の中を2人で走り回りながら追ってくる敵を倒して進む、途中には猫の女の子がいたがその子みたいな敵対してこなかった人は見逃して進んだ
「…最後の別邸ね」
別邸の前、そこには何回も見た黒髪と茶髪の青年が立っている、天矢の頬には小さなガーゼ、犬の方には何もないが心配そうな目で天矢を見ているのがわかった
「…きたね」
「えぇ、今度こそ返してもらうわよ」
狐ちゃんを庇うように前に立ち刃を向ける
狐ちゃんは驚いた顔をしながらもゆっくり後ろに下がっていった
「まぁ、今まで見ていたからくるとは思っていたよ…こんなに早いとは思わなかったけど」
「あら、愛する人をすぐに助けたいのは普通でしょう?」
「それは同感だね、大好きな友達はできるだけ笑っていてほしい、でしょ?」
「あらまぁ気が合うわね」
「そりゃあね…天矢、少し待ってて?」
「はぁ?またお前1人に戦わせるのは」
「違うよ、これは妃様の為さ…天矢は妃様に気に入られているから怪我を増やしては心配されてしまうよ」
「…わかった」
「お話し合いは終わったかしら?」
「あぁ、お互いに友人の為に戦おうか」
「武器はなしでいいのかしら?」
「…世の|業《カルマ》、薙の刃」
ふわりと起きた風に包まれ浮かんだ袖から長い棒のついた刃がでてきて構える
私の方もソードを構えて硬直する
近くで時計の音がして2人が足を踏み出し
瞬間、刃が当たって後ろに下がる
そこからはお互い一言もなく
ただ刃が当たる音だけが聞こえてくる
「…やるわね」
「そりゃあそうだよ…これでも元戦闘員だよ!」
少しずつ息が切れ始めた、その時刃が滑って倒れてしまう
「っ」
「…これで終わりでいいかな?」
「まだ、に決まってるでしょう!」
そう叫んで瞬きをした時に見えたのは驚きの顔
何かと思ってちらりと自分を見ると
「…水…?」
「極、か」
「…何よそれ」
「…|業《カルマ》の強化版みたいなものだよ、君は水が印のようだけど」
「そう、ご説明ありがとう…でも、それなら今の私はさっきよりも強いのよね!」
隙だらけな体に向けてソードを振るう
急いで犬は武器を合わせにいくけどもう遅い
さっきよりも強い力で振るったソードに乗らされ犬は武器と共に少し飛んで地に落ちた
「…ほんと、ずる賢い」
「本気でやっていない癖に言わないでもらえるかしら」
「本気だよ」
「いいえ、あの様子なら貴方も使えるんじゃないかしら?極とやらを」
「…使っても時間稼ぎにしかならないからね」
「…犬李」
ゆっくりと天矢が犬へと近づく
「天矢?どうし」
「時間だ…儀式の」
「儀式…?」
「!ミヌア!空を見るのじゃ!」
狐ちゃんの声に従って空を見る
若干黒んでいた空がぱっと消えて青になって雨が降り出す
「…狐の、嫁入り!」
「え、天矢!結局どちらが」
「妃様だ」
そう聞こえた瞬間ソードを手に全員を置いて飛び出してしまった
廊下に人はいない、奥の方から声が聞こえてその部屋の扉を切り開いた
「火岸!」
そこには黒髪の白無垢をきた見知らぬ女性を引き止める火岸がいた
「母さん…私と一緒に逃げようよ」
狐が部屋を出て鴉たちもいなくなって2人きり
私を包んだ腕はゆっくり解かれていった
「…ごめんなさいね」
母さんはそれ以上何も言わずに
部屋の真ん中、後ろにあった白い着物等に母さんは手をかけて身に纏う
「…母さん、お願い」
母さんはこちらに目をくれず着物を着ていく
すると扉を叩く音がして開く
「…妃様、お時間です」
「猫月ね、ありがとう」
母さんは入ってきた人に引かれて部屋を出る
引き止めようとした私に入ってきた猫の人が微笑んだ
「貴女が娘さん、ですよね…貴女の衣装もご用意させていただいております、よろしければ」
「…いらない」
「了解しました…では、せめてついてきてください」
そっと手を引かれて廊下を歩いて部屋を移る
そこは大きな部屋でまるで道を作るように着物を着た大量の狐が座っている
その道の中にいる母さんは盃を持って座っている
誘導されて母さんの後ろへと座る
「…母、さん」
「…静かに、火岸…失敗してしまうわ」
「でも…」
床に広がった着物の端を握って下を向く
別れたくないせっかくまた会えたのに
そんな気持ちが心を埋めて泣きそうになる
ゆっくりと母さんが立とうとした瞬間
扉が斜めに切れて飛んでいく
「火岸!」
そこにはミヌアが立っていて全員がミヌアの方を見ているのがすぐにわかった
「ミヌア…」
「…何者だ」
大きな座布団に座っていたさっきの狐が低い声で話した
「火岸が攫われたから助けにきたまでよ」
「儀式の途中だ、今すぐ去れ」
「…あら、好きな人が泣いて止める儀式を止めないとでも?」
「へ…?」
「さぁ、儀式は中止よ!」
それを阻止しようと座っていた狐達が飛びかかってきて全て切り捨てる
「…!ミヌア!あとから覚悟しろよ!」
「あら、何かしら告白の準備かしら」
「もうしただろお前がぁぁ!」
その間に私の近くにきていた火岸も刀を召喚して背中合わせになる
火岸のお母さんの近くにはいつのまにか狐ちゃんが行っていて守っている
「侵入者め…!犬どもはどうした」
「あの子達なら今は後から来たつろきくんが構ってくれてるわ」
「あの雑魚どもめ、時間稼ぎすらできないのか!」
「あらあら、充分稼いでいたじゃない…部下の働きすら褒められないのね」
「黙れ人間風情が!」
狐の周りに火が生まれこちらへ向かってくる
狐火というものなのだろうがずいぶんと危ない
「さぁ、観念なさい…」
「…貴様ら…儀式の邪魔をしてタダでいられると思うな…!もう神の姿は現れている!あとは妃が台座へと向かえば儀式は完了する!」
意味深に空いた空の窓からゆっくりと光が入ってくる
そこから見えた不気味にもみえる大きなものの気配に警戒を強める
「…神、様」
そう火岸のお母さんが言った時聞こえた走ってくる音に振り向くと天矢達がこちらに来ていて飛びかかってきたと思ったら私達の近くにきていた狐を倒していく
「…鴉野郎!なんでここに」
「…元の主人への忠誠の印だ」
「意外ね」
「天矢が向かうなら僕も行かないとね」
4人で並びお互いを背に敵へと向き合う
光が強まって周りにいた狐どもを貫くように線が出る
「…見境なしか」
「極世の|業《カルマ》…選ばれし剣」
「極洋の|業《カルマ》…!|泉に落ちた王の剣《ファウンテン・キングソード》!」
「極中の|業《カルマ》、蛇牢王」
「極…?…へーいけるかも…」
犬李は大きな剣を手に持ち極の効果で現れた犬の耳と尻尾をピンとさせる
天矢は槍のようなものを持ち、頬と耳に鴉の羽が現れて敵を睨む
私の剣はまた光を放って私の周りを水が回り出す
火岸は一瞬驚いたと思うとすぐに表情を直して唱える
「極和の|業《カルマ》ぁ!」
ニッとした口元になってすぐに火が燃える音がする
「緋桜刀!」
ぶわっと刀に炎のような模様が出ると共に火が火岸を守るように広がる
「やっぱりな!できるもんだな」
「はっ、普通ならできないんだけどな」
「まぁ私だしな?鴉野郎」
「一時、共闘だからな」
「もっちろん!」
だんっと足を踏み込んで光を切っていく
切れた光がぱらぱらと散って紙吹雪のようにも見える
火岸のお母さんに向かっていく光を切ろうと振りかぶるとその前に火が上がり消える
「私も狐火くらい使えるのじゃ!」
火岸に似たようにニヤッと上がった口角が見えて安心してすぐに他の光を切っていく
「あぁ…!ふざけるな!儀式の邪魔をしたどころか神の光を切るなど…!」
「当たり前でしょ、狐野郎」
当主だからかとかはわからないけど
光に狙われずただ私達に文句をたれる狐野郎に私は刀の切っ先を向けて睨む
「なっ!」
「今のこんな状況見ても、そんな言葉が出るなんておかしいね、お前」
「うるさい!儀式をしなければ我々に平穏など訪れんのだ、例え一時であろうと白狐家の威厳を守る為ならば…!」
「そんな事の為だけにお前は一度でも愛した人を捧げんのか!」
母さんの話の中身だけなら私からしたらこいつは会ったあの時、絶対母さんを愛していた筈だ
それなのに威厳の為だけになんてありえない
そう思った叫んだ言葉に狐野郎が狼狽えて一気に気づいたかのように固まる
「私は…愛していた…?」
「そうじゃなきゃわざわざ父さんを殺すものか、あんなにたくさん高いものを与えるか?…儀式のいくとわかった時の母さん、すごい寂しそうな顔してた」
「何故…」
「母さんもお前の事を愛してたから」
「愛…だと」
「いい加減にしろよ、狐野郎…お前にとって愛があんな扱いの事ならば母さんの愛は儀式に逆らわない事だったんだ、どっちもそれぞれの愛の形を渡しあってたんだよ分からず屋!」
思わず涙が溜まった気がしながらも刀を下ろして狐野郎の胸ぐらを掴む
悔しそうに顔を歪ませたのが見えた
「そう…か」
「母さんの愛を無視してるのは今の私も一緒、だけど私はこれが悪いとは思わない…私に対する愛はまた形が違うからね」
そういうと狐野郎の力が抜けたのを感じて下ろしてまた光を切りに戻る
「大丈夫そうね」
当主の元へ向かった火岸を見てもしかして殺すんじゃないかと思ってしまって焦っていた心が落ち着いていく
でも落ち着いていく心と裏腹に光がどんどん強くなる、数が増えて貫かれない程度には防げているが体にはどんどん傷が増えていく
鴉や犬の方に目を向けると2人で支え合いながらも段々息が切れ始めている
もうそろそろやばいと思った瞬間
狐ちゃんの方から焦った声が聞こえる
「母様危ない!」
急いでそちらを見ると1人で捌き切れなくなった光の一筋が火岸のお母さんをとらえ狙っていた
視界の中にいた火岸の目が見開き鴉達も守ろうとするが間に合わない…と思って目を背けると
「貴方…?」
悲鳴ではなく泣く声が聞こえて光がゆっくりと消えていく、目を向け直すとそこには火岸のお母さんを庇い倒れた当主の姿があった
「父、様、父様!」
「何故、何故庇ったのですが、貴方!元はといえば私が…!」
「お前の娘に教えられたのだ…私が、お前を愛していた事を」
「っ!なら、私なりの愛の形も知っている筈でしょう!」
「あぁ…だが、これは今までお前の愛を無視した罰であろう」
「…置いて、いかないでください、貴方」
「先に行くだけだ…また、会える」
「ですが…」
「…お前くるまでくらい、今までの時間より短いものだろう…お前は、人間なのだから」
「あなた…」
「父様…」
「狐よ、あとは頼むぞ」
そう狐ちゃんの手を握ると当主の体がゆっくり消えていく
おそらく捧げられる筈だった贄の代わりの命になった、という事なのだろう
体があった場所には着ていた着物だけが残ってそれを手に火岸のお母さんと狐ちゃんが静かに涙を流していた
狐の父さんが消えて、母さん達が落ち着いて静寂がきた
静かな空気の中でそこにつろきが入ってくる
「…また、白狐と話せるかと思ったが」
「…黒狐様」
そう呟いた鴉の声を聞いた残っていた狐頭達が騒ぎ出す
「黒狐だと…!」
「滅びた筈では」
「まさか残っていたのでは」
「そうだよ、僕は黒狐家の子孫…今では当主になるけどね」
「…つろき」
「きね、約束を守ろう」
「約束…?」
ミヌアが疑問の声を上げた時につろきが狐の手を引いて立ち上がる
「もし、今回の儀式により白狐家の当主が亡くなった場合、僕はきねと婚約し、白狐家と黒狐を一つにする…不満は出るだろう、だが、これが一番の道だ」
「えっと…おめでとうか?これ」
「そう、じゃな、元より決めていた事じゃ…どうか、認めてほしい」
2人の真剣な顔に何も言えないのか静かにまたなる、すると鴉が2人の前に跪く
「黒狐様、生存のこと、嬉しく思います…また、婚約の件につきましてももちろん、喜ばしく思います」
「天矢…」
「この鴉乃天矢、またお仕えさせていただきたく申し上げます」
「もちろん…ありがとうな、天矢」
全員の前での名乗りをして立ち上がる鴉野郎に
それに反抗さえできないと思ったのか狐達は次々に部屋から出て行き私達もその流れに乗って帰った
数日後
帰ってすぐに八千さんにこってり絞られてしまった私達はそのまま
次の日におかえりなさいパーティーをした
いろんな事があった
鴉と犬は着物が残っていたことから妹の服も残っていそうと考えてそれを回収する為に出かけると
狐ちゃん達はそのまま婚約をして家をまた発展させると
火岸のお母さんは突然出てしまうとどうなるかわからないからと今は狐ちゃん達がいた神様の空間に住んでいるらしい
そんなこれからの話をしていた途端
火岸に声をかけられた
「ミヌア」
「あら、どうしたの?…服、似合ってるわね」
母様達に着せられたひらひらのワンピースを纏った火岸はとても綺麗だった、そんなワンピースがシワになりそうなほどに握って話し始めた
「あん時の事、覚えてるか」
「あの時?」
「お前が、私に告った時」
「…あぁ!…返事、くれるのかしら?」
「…き、だよ」
「なぁに?火岸、聞こえないわよ」
そう煽ると顔が真っ赤になって怒ったような顔になるのが可愛くてついもっと煽りたくなる
「…好きだよ!…バカミヌア」
「…知ってる、待ってたわよ火岸」
そう言って抱きつくと照れたのかすぐに押し返される
そしていきなりパン!とクラッカーの音がして周りを見ると母様達がニヤニヤして立っていた
「あらまぁ…おめでとうね、ミヌア!」
「おめでとうございます、お嬢様方」
「おめでとうございます!火岸さん!ミヌアお嬢様!」
「なっ…見てたのかよ!」
「まぁ…そうよね」
「私だって勘がよくないわけではないもの!」
「あまりにもバレバレでしたね」
「たしか一目惚れでしたっけ?ミヌアお嬢様」
「こら!勝手に言わないの!」
そう怒った瞬間にくいっと袖を引かれた気がして後ろを見るとまだ顔が赤い火岸が私に問いかけた
「…一目惚れ?」
「まぁ、そうね」
「…ふ、ふーん…一目惚れ、なんだ」
「…あら、まだ顔が赤いわね火岸」
「いや!そりゃそうだろ…!」
そう戸惑いがあるかのようにわたわたとしている火岸の顎を引き顔を合わせる
「…これからは、もっと愛してあげるわね、火岸?」
そういうと火岸の顔がもっと真っ赤になって私の事を押しすぐに後ろに下がられてしまう
「…私だって、好きだし…ばーか」
そう目を背けて言う火岸がとても可愛かったのが今日の一番の思い出になった
人の形をしたデータ達 おまけ版
人の形をしたデータ達キャラの内ネームドキャラ達に質問したりしてるだけですね!
ただのおまけですのでよろしくお願いします!
おまけですので一万字言っておりません!
--- 人間、人形組へのQ&A! ---
Q、それぞれ人間組を守るような行動をとった時の気持ちは?
「…捕まりに行った時ですか?」
「レイファちゃんはそうじゃないかな」
「僕だと…明莉紗ちゃんかな」
「じゃあ僕は浅義とのかな」
「私は…ただ、守りたかっただけなので」
「僕は失いたくないなって、思ってしまって気づいたら庇ってた」
「ニニくんと一緒かな、浅義の事、僕は大事だからね」
Q、恋愛するなら?
「私はしないというかできませんので」
「うーん…浅義といれればいいからどうでも」
「僕も別にしたいとは思いませんね」
Q、擬波くんはいつからあの家に?
「あ、僕だけに質問か」
「あの家?」
「私達と一緒に過ごしていた家があったんですよ」
「うーん…覚えてないかな!」
Q、最期、人形組はどうしたいですか?
「…あー、これは浅義の最後にってこと?」
「なら、私も浅義さんですね」
「…僕はもういないから」
「一緒に死ぬよ、当たり前でしょ」
「なら私はお二人が永遠の眠りについてから壊れる時まで見守っていましょうか」
Q、守られた時の気持ちは?
「庇われたってわかった瞬間にブチ切れたせいで覚えてない」
「…ニニ君、死んじゃうのかなって、思った」
「私は別に守られてないんだけど」
「じゃあじゃあ私が守られてた時思った事とか?みてたでしょ」
「…やばそうだなーとは思ったけど」
Q、恋愛するなら?
「ないね!」
「ないな」
「あるわけないし私ほぼ会ってない」
Q、最期、どうしたい?
「そのまま死ぬ、擬波は勝手についてくるしな」
「うーん…ニニと一緒にいたいかな」
「誰にも死に顔なんて見られたくないから1人で死にたい」
Q、無人島に何を持っていく?
「浅義」
「即答すんな」
「じゃあ浅義は?」
「擬波」
「同類ですよ」
「レイファは?」
「私は秒で脱出できてしまうので」
「僕は点検用具で、メンテナンスをしないと壊れちゃうので…」
「ニニで!」
「あんた死ぬよ…?」
「ニニいるならまぁ死んでもいいかなって」
「もう少し命を大切にして?」
「それみーちゃんが言える事じゃないじゃん!」
「あ、私は大きい布巻きで、それで服作れるし罠にも行けるかもだし拠点作れそう」
「めっちゃ無人島快適暮らししようとしてるな」
Q、◯◯しないと出られない部屋、◯◯に入るのは?
「…大喜利始まってないか?」
「あ、じゃあキスにして即出しよう!」
「口はダメな」
「いや頬だよ?」
「いちゃついてるなー」
「ぬいぐるみ作らないといけない部屋にして2人でデカいのでも作る?明莉紗」
「え、いいの⁈みーちゃん!」
「いいよ」
「あー…どうします?」
「…私達は無理ですね」
「ですよね」
Q、現在の時系列は?
「メタいのきたぞ」
「多分終わった後ではあるよ」
「そもそもぐるぐるの世界だから関係ないんじゃ?」
「多分時系列なんてないわよ」
Q、今何問目?
「だからメタいのきたって」
「えーと、」
「…めんどくさいのでスルーしませんか?」
「それレイファが言って大丈夫なのか」
「えーと…あれこれ全部かな、それとも片方の…?」
「わかった、めんどい無視しよ」
Q、やり直せるなら?
「…」
「…」
「やり直せるなら…かぁ」
「私ならあの子が死ぬ前ならどこでも」
「あの子?誰の事だ」
「言ってたでしょ?浅義くん、みーちゃんは乱射事件の時に友達無くしたって」
「…あれか」
「なら、俺はレイファがいなくなる前で」
「じゃあ僕は生まれる前ーとか…ごめんて、浅義、そんな顔しないで?」
「私は…お兄さんがきた時かな、謝りたいから」
「…私は別に、今が一番いいので」
「守れたのは後悔してないし、別に僕もいいかな」