甘酸っぱストーリーです(?)
めっちゃ切ない気がします…
八木透理(やぎ とうり)
勉強はできるが、運動はできない、高校三年生。ファッションセンスはなくて、いわゆるガリ勉陰キャ。
華見姫奈(はなみ ひな)
運動ができて、可愛くて、クラスの中心にいる存在。いわゆる陽キャ。
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目次
君の笑顔が見たいから
僕の名前は|八木透理《やぎとうり》。
僕には、好きな人がいるんだ。
その人は、だれにでも優しくて、運動もできる。
でも何より僕が好きなのは、その子の笑顔。力一杯さくひまわりみたいだけど、飾らないあの顔が大好きだった。
その子の名前は、|華見姫奈《はなみひな》。
彼女は、勉強が苦手だったけれど、僕は学校も放課後もキラキラした瞬間なんてひとつもない、いわゆる、ガリ勉陰キャだ。
勉強はできるけど、運動もファッションセンスもない僕には、姫奈さんなんて釣り合わない。
そうわかっていても、追いかけてしまう。
君の姿を。
君の笑顔が見たいから
「透理、またぼんやりして。先生に指されるよ」
隣の席から、明るい声が聞こえた。
振り返ると、そこには僕が大好きな笑顔があった。
彼女の名前は、姫奈(ひな)。
学年のマドンナで、誰にでも優しくて、運動もできる。クラスの中心にいる彼女は、僕みたいな人間とは住む世界が違っていた。
僕はといえば、机をかじってるんじゃないかと言うくらいのがり勉の陰キャだ。
成績だけは学年上位をキープしているけれど、運動はまるでダメ。
おまけにファッションセンスは皆無。
姫奈とは席が隣同士になったものの、これまでにまともに会話をしたことなんて数えるほどしかなかった。
「……あ、うん。ありがとう、姫奈さん」
「どういたしまして。はい、ここ、今105ページだよ」
彼女が細い指先で教科書を示してくれる。
かすかに甘い香りがして、僕の心臓ははやくなった。慌てて眼鏡の位置を直した。
まともに目すら合わせられない。
そんな僕が、なぜ彼女に恋をしているのか。それは、ある雨の日の放課後のことだった。忘れ物を取りに教室に戻った僕は、一人で居残り、数学のプリントを前に頭を抱えている姫奈を見かけた。いつも完璧な彼女が、誰もいない教室で、ペンをかじりながら
「うーん……分かんないなぁ」
と、飾らない困り顔を浮かべていた。
その姿が、なんだかものすごく愛おしかった。「チャンスじゃないか?」一瞬迷ったけれど、その時ばかりは勇気を振り絞って、机の上にそっと解説を書いたノートを置いて逃げ出した。
次の日、彼女は僕のノートを見てすべてを察したのだろう。
僕に向かって、満開に咲くひまわりのような、最高に眩しい笑顔で「ありがとう!」と言ってくれた。
その笑顔が見たいから、僕は今も、彼女に話しかける口実を探している。
今日の放課後、夕日が教室をオレンジ色に染める頃。
みんなが部活や遊びに飛び出していく中、僕は一人、参考書を開いていた。すると、トコトコと机に近づいてくる足音が聞こえた。
「ねえ、透理くん!」
ノートから顔を上げると、そこには少し耳を赤くした姫奈が、数学のワークを抱えて立っていた。
「……えっ、あ、はい! 何、でしょう!?」
裏返った声を出してしまい、僕は頭を抱えたくなった。
「ここ、またどうしても解けなくて。……もし迷惑じゃなければ、教えてくれない、かな?」上目遣いで僕を見る彼女の顔は、いつもの完璧な優等生の顔じゃなかった。
僕の心臓は、激しく鐘を鳴らし始めた。