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目次
暗闇の中、私たちは出会う。
私は|三浦夜恋《みうらやこ》。桜華女子高等学校に通う高校1年生。そして、"元"天才歌姫。
馬鹿馬鹿しい。勝手に期待を押し付けて。勝手に幻滅して。価値がなくなったら捨てる。人間つくづく面倒臭い。
夜恋「おはよう」
母「おはよう。夜恋」
夜恋「姉さんは?」
母「まだ寝てるのよ。朝ごはんできるから起こしてきてちょうだい」
夜恋「わかった」
私には姉が一人いる。|三浦朝妃《みうらあさひ》。私と同じ桜華女子高等学校に通う高校2年生。
夜恋「姉さん起きて。朝だよ」
朝妃「んーあと5ふんだけぇ」
夜恋「遅刻するよ」
朝妃「いいもん。サボるから」
夜恋「だめだよ。起きて。デザートのいちご全部食べちゃうよ?」
朝妃「それはダメ!」
そう。私たち姉妹はスイーツが大好き。だから姉さんを起こすならこの方法が最も効果的。
でも、私はこんな時間が一番嫌いだ。嫌いな人に笑顔を見せて、笑ってないといけない。
どうして?だって。私が歌えなくなったのはこの人が原因なんだから。
時は流れて登校時間。姉さんは生徒会だから私より早く家を出る。
学校は嫌いだ。ずっと優等生でいないといけないから、先生の期待に応えないといけないから。家も嫌いだ。お母さんのうるさい愚痴を、お父さんの期待を押し付けられないといけないから。なら、なら私はどこに入ればいいの?
そんな。いつも通りの時のことだった。
学校は全日制、夜間定時制、通信制の3つがあって私はそのうちの全日制なのだけど、私は日直の仕事で夜間定時制の人たちが登校する時間帯まで残っていた。
その時、旧校舎の方から歌が聞こえてきた。歌えなくなってからずっと、ずぅっと遠ざけてきた歌が。
私は吸い寄せられるように音楽室へ行った。
---
歌いたいと何度も思った。何度も何度も何度も何度も。だけど、それでも歌おうとすると息が詰まった。中学2年生の秋だった。
音楽室に着いた。そうすると私と同じで歌に引き寄せられたのか三人の同い年くらいの人たちがいた。
夜恋「貴方達、だれ?」
??「貴方こそ。誰なの?」
夜恋「私は三浦夜恋」
??「私は|神崎綾乃《かんざきあやの》」
??「私は|黒川朱莉《くろかわしゅり》だよ」
??「私は|西園寺菜乃花《さいおんじなのか》…です」
夜恋「ねえ。貴方達も歌を聴きにきたの?」
綾乃「そうね」
菜乃花「気づいたらここにいた…の方が正しいかも」
朱莉「じゃあ開けてみよう。誰が歌っているのかわかるから」
扉を開けたそこは、音楽室じゃなかった。
夜恋「どこ…?ここ」
綾乃「音楽室じゃない…?」
??「はじめまして…だれ…あなたたち」
朱莉「誰…!」
??「…翠華……ここの管理人…」
夜恋「翠華…私、夜恋。三浦夜恋」
綾乃「神崎綾乃」
朱莉「黒川朱莉だよ」
菜乃花「西園寺菜乃花…」
翠華「あなたたち…選ばれた。この場所に」
夜恋、綾乃、朱莉、菜乃花「え…?」
暗闇の中、光を見つける。
夜恋「選ばれた…?」
意味がわからない。他の三人は知らないけど才能のない私が?
翠華「そう、選ばれた…じゃないとここには来れないから…でしょ、零…」
綾乃「零…?」
零「そーだよ。ここは選ばれた人しか入れない空間。どこでもない場所」
朱莉「どこでもない場所…」
零「翠華がこんな喋るの久々だし」
綾乃「ねえ。あなたたちは誰なのよ?」
零「俺?俺は零。ここの管理人だ」
そう、問題なのはこの二人ではない。どうして私たちが選ばれたのか。
翠華「……歌ってよ。ここに集められたんだから」
零「いるもんは全部出せるぞ」
朱莉「歌う?」
菜乃花「私はみなさんがいいのなら…」
綾乃「私も」
夜恋「わ、たしは…」
みんな「……?」
夜恋「歌えないの。私は…歌うことができないっ…」
翠華「……え」
零「歌えない…?」
朱莉「もしかして消えた伝説の歌姫"yoru"って…」
綾乃「あなたなの…?」
菜乃花「歌えなくなって。幻滅されて消えた。歌姫…」
夜恋「そうだよ!もう、歌えないの」
そう言い残して、私はその場所から立ち去ってしまった。
---
あの日以来、あの歌が頭から離れない。
どうも気持ちが悪いので今日、また音楽室に行ってみることにした。
入れるか正直わかんなかったけど、やらないよりはマシだと思ったから。
翠華「……待ってた。絶対、きてくれると思ってたから」
零「昨日ぶりだな、夜恋」
綾乃「翠はずっと不安がってたじゃない」
菜乃花「綾乃さんもですよね」
朱莉「夜恋ちゃん、あなたはどうしたい?」
夜恋「私…?」
夜恋「わたし、は…」
ずっと歌いたかった。でも歌えなかった。だから、私は…
夜恋「歌いたい…みんなと一緒に…」
翠華「じゃあ…歌おう…」
朱莉「ベースとかは?どうするの」
零「お前ら楽器弾けるか?」
綾乃「一応ギターなら」
菜乃花「ベースだったらできます…」
朱莉「私ドラムできるよ」
零「じゃあお前らそれな。俺はキーボードできるから」
翠華「私と夜恋は歌おう…」
暗闇の中、私たちは歌った。
翠華「無理に歌うわけじゃない。夜恋の歌えないところは私が歌う…だから」
また、迷惑をかけるのは嫌。人に頼るのも嫌。だから…
夜恋「ううん。私は自分で歌う。翠華に任せることもみんなに頼ることもしない」
私は一人で立てるようになりたい。
綾乃「じゃあ、決まったし…歌いましょう」
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夜恋『冷たい床に 膝を抱えて。世界の音を ただ消していた』
翠華「時計の針の 刻む音だけ。痛いくらいに 響く部屋』
綾乃、朱莉『「もういいよ」って 呟いた声 誰にも届かず 消えていく』
菜乃花、零『だけど心は まだ終わることを 拒むように 震えてる』
夜恋、翠華『暗闇の隙間 こぼれ落ちた 一筋の光が いま』
綾乃、菜乃花『閉ざした瞳の 奥を叩く どんなに深い 夜の底でも』
朱莉、零『朝は僕を 見捨てはしない』
夜恋『震える足で 光の方へ 歩き出すよ』
翠華『昨日の傷が まだ痛むから 前を向くのが 少し怖い』
夜恋『だけど確かな ぬくもりひとつ この手のひらに 見つけたよ』
綾乃『影が長く 伸びていくのは』
菜乃花『光が近くに ある証拠』
朱莉『俯くのをやめて 顔を上げたら』
零『世界が色を 変えていく』
夜恋、翠華『暗闇を割って 差し込んできた 眩しいほどの 光がいま』
綾乃、菜乃花『冷え切った胸を 溶かしていく』
朱莉、零『どんなに長い 冬の果てにも 花は咲く場所を 探してる』
全員『眩しさに手を 伸ばしながら 走り出すよ』
夜恋『夜が明けていく 光の中へ』
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夜恋「はぁ、はぁ、はぁ」
翠華「どうだった?」
夜恋「やっぱり歌うのって楽しい…!また、歌いたい」
朱莉「じゃあまた歌おうよ。みんなで!」
綾乃「賛成」
菜乃花「私はみなさんがいいのなら…!」
夜恋「じゃあ私たちのグループ名決めなきゃ」
零「それなら俺考えてるぞ」
みんな「…え?」
翠華「名付けて…"暗闇の中に差し込む光"」
夜恋「暗闇の中に…」
綾乃「差し込む…光」
朱莉「いいじゃんいいじゃん!」
菜乃花「素敵ですね」
夜恋「じゃあ私たちは暗闇の中に差し込む光。で」