自分のBL小説キャラにした人が実は腐男子でした!!
編集者:勿忘草
ども!!冴えないイベント会社に勤めているOL兼ケータイBL小説家の高槻礼奈です。
そして編集者様はまさかの私のエリート上司、朝霧蓮さん!?
ってかネタがまたまた無くてヤバイよぉぉぉ!!
~二人の腐ったヲタクと仲間が織りなすラブコメディー開幕!!~
......小説家になろうへ重複投稿中......
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目次
自分のBL小説キャラにした人が実は腐男子でした!!
これは、私が魅霊という今はパスワードを忘れて使えなくなってしまったアカウントの時代に書いた作品をアレンジしたものです。
「はぁ...ない...ない...」
なぜいい歳のOLがこんなこと言ってるかって?それは、小説のネタがないからなんだ!!私は、24歳OLの|高槻礼奈《たかつきれな》。とある小説サイトでプチバズリ中の、「甘くて切ない」略して甘切あませつというBL小説を書いている。そして、新シリーズをリクエストされていたので書こうと思ったけど...ネタガナイ...。リクエストの冷徹ドs男子とか...純粋可愛い系男子とか...あったことないし、漫画とかでは見たことあるけど全年齢で書くの難しすぎる...。
「誰か助けてくれぇ!!」
「姉ちゃんうるさい!!」
「あ...ごめん」
私を姉ちゃんと呼ぶうるさい妹は、|朝海《あさみ》という。二個下で一緒に住んでいる。たまたま同じ大学にいくことになったからだ。そして、私の小説の絵師さんでもある!!絵がすごくうまい!!ソノサイノウワタシニモワケテ...
「また、あのリクエストのこと?」
「あぁーうん...ウゥー」
「そんなになるなら簡単に受けるんじゃないよ」
朝海は淡々という。そんな簡単な事じゃないってのに!!
「周りの人たちをアレンジして使ったらどうなの?姉ちゃん」
「それいいね!!」
うん。私の妹は頼りになるねぇ。もう全て任せてしまおうかな...
「私に文章書く才能はないよ」
テッテレパシー!?
---
次の日 会社にて
周りの人を使うだったね。どこかドs男子として使えそうなやつはー?
「おい、これ間違ってる。早く作り直してこい」
一番に目に入ったのは、|朝霧 蓮《あさぎり れん》。黒王子と呼ばれるぐらいにドs男子感がある。これはもってこいな奴だ!!早速使おう。
「ちょっと?高槻さん仕事に集中してる?」
「あ...すみません」
小説にちょっと入りすぎてたかな...仕事に戻ろう。あとは可愛い系男子の受けとかだったな...見つかるかなぁ?
---
夕方
アウゥゥー
「大丈夫かな?高槻さん。朝から元気なかったし...」
「休まれたら困るんだけどww」
そこら辺の女子社員がしゃべってる。すみませんね!!
「あー高槻さんー?」
私の上司の、|正本《まさもと》部長が読んでるみたいだ。
「ハイ、なんでしょうか?」
「いやぁ、君に新しいプロジェクトに入ってほしくて。高槻さん優秀だし」
「分かりました。どのようなプロジェクトでしょうか?」
優秀ではないけどプロジェクトを貰えるのはありがたい。
ちなみに、うちの会社はいろいろな会社のイベントなどの立案・進行していく仕事をしている。
「それが、○○ゲームさんのところのイベントなんだよ。大手だから頑張ってね?」
「ハイッ」
思わず私の声に力が入る。
○○ゲーム、それは任天〇的なものだと思ってくれていい。そして、BLゲームの路線を切り開いた会社でもある。神だ。最&高。嬉しさによって昇天するわ。がんばろっ
---
家にて
「朝海!!○○ゲームから依頼が来てそのプロジェクトに私はいることになっただよ!!スゴクナイ?」
「まぁすごいと思うけど...ネタは?」
「あぁ...うん攻めは見つけた。」
「とりあえず、外見だけ作っといてあげたから。受け」
「アリガトウ。女神様よ。」
「感謝するぐらいなら書け。」
「ハイィ...」
いつも朝海って辛辣だよね....。姉としての面目が....まぁ気を取り直して見ていく。
えーと朝海が書いた受けの絵は、バッチリ純粋ってわかる感じだな。外見を簡単に言うと。ふわっとした白いマッシュルームヘアに、透き通るような水色っぽい(朝海がスカイブルーだと教えてくれた)目、身長は平均よりちょい低めで、全体的に可愛い!!これはすごいイイ。ここに、性格を付けていく。ってことで、できたのが|梨乃《りの》というキャラクター。性格はとにかく純粋ドジっ子という感じである。
「できたぁー!!」
「姉ちゃん声うるさい。」
「あぁーごめん」
「で?」
「とりあえずキャラ完成したぁー」
「よかったね。早く本編書いて。」
「...承知いたしました。」
「締め切り明後日だよー」
「死んだ...」
ちょっと昇天してこようかな...。っていうことで怒涛の締め切り厳守の二日間が訪れた。
---
二日後
何とか...小説は完成させ投稿した...。これで投稿できなかったら死んでたわ...。そういえば、今日から○○ゲームのイベント企画進行のプロジェクト始まるんだったな。行かなきゃ。
「高槻さん。一緒に行きましょー」
このゆるふわ女子は、同期の|亜外小夜香《あがいさよか》。暇な時とかに一緒にいる。まぁまぁな付き合いだ。
小夜香もあのプロジェクトに配属されてたのか。久しぶりだから少し緊張する
「小夜香、久しぶり。」
「ですねー。最近忙しかったのでぇ。」
「まぁ、小夜香はエリート部署の営業一課だからね。」
「でも、高槻さんもイベント企画部じゃないですか。」
あそこは、結構雑用部署として扱われやすいけどねっ!!
「まぁ、そこそこってとこかな。アハハ」
思わず乾いた笑いが出てくるよ。ホント
「そうですかぁ」
「ここだったね。第一会議室」
「ですねぇー」
私が最近小夜香と疎遠になってた理由分かった気がする...。コイツ疲れるんだな一緒にいると。よく今まで気づかなかったな私ww
「お前らか、イベント企画部のエリートと、営業一課の落ちこぼれは。」
頭の上から低い声が降ってきた。
「は?」
あ、これは小夜香キレたんだろうな....当たり前か。
「誰が落ちこぼれだって?」
いつもの猫被ってる小夜香の口から出てると思えないほどのドスの聞いた声が出てきている。
「お前だよ。亜外小夜香。なんでこんないらん人材がいるんだよ。」
そして、小夜香をボロクソに言ってんのがやっぱり黒王子、朝霧さんだ。ってゆか私がエリートってなんでだ?この前も優秀とか言われたけど意味不だね。
「じゃあなんでこんな奴がエリートって言われなきゃなのよ。」
ちょっと?私も同感だけどこっちにまで飛び火させないでほしいヨ。
「はぁ?高槻はこれまで四年で二十個の営業を成立させてる。しかも、イベント企画部で、だ。」
うんイベント企画部では余計だと思うけど。流石に会って早々喧嘩は本当に空気悪いからやめてほしい.....。
「それは運がよかったからです。それに、あってそうそう小夜香を馬頭するのはやめてくれますか?」
しょうがなく私は小夜香のフォローに入る。
これによって私の朝霧さんへの第二印象が当たりの強い自意識過剰になったのであった。
「はぁ。まぁ、とりあえず入ったものはしょうがない。座っといてくれ」
「分かりました」
はぁって思いっきりため息ついてるし。
小夜香は無言だ。そりゃあんなボロクソに言われたらなぁ...。
まぁこんな事があったあったわけなんだけど会議はまぁまぁな感じだ。朝霧さんはちょっと毒舌だけどやっぱり仕事はできるらしい。うまく仕事も決まりそう。とりあえずこんな感じで今回の会議は終わった。小説もそれからいい感じに進んでるしいいねー。神様がやっと微笑んでくれた....と思ったのだけど違ったらしい。
小夜香がドジッたのだ。そう、お得意様に頼まれていた商品の発注部数を間違えたのだ。しかも1000冊、そんな数どうすれば間違うのか聞きたいけどフォローが先だ。相手はお得意様、下手すればうちの会社が痛手を負う。
ただ、このプロジェクトリーダーは朝霧さん、しっかりフォローしてくれて損害は最小限にとどまった。よかった。それにこれを小説のネタにしてドジったのが受けにしたら、まさかの好評でますますいい感じだ。受けを助けるところがカッコいいとかなんとか。よかった。って感じで周りで起こったことをネタに小説を書きまくってたら...ある日呼び出しを食らった。
「おい、高槻ちょっとこっち来い」
うん、コワイコワイコワイコワイ顔が怖いよ。私何もしてないよ!!ココロアタリナイヨ!!神様ひどいって!!と私の脳内は警告を鳴らしまくっている。
「はい、なんでしょうか?朝霧さん」
まぁそんな脳内はほっといてしっかりとした冷静な対応をしていくんだけど。
「ちょっと階段まで来てくれないか?」
「はい」
マジで何の用???不良かよ!階段に呼び出しって!!
「お前、これ見ろ、最近この会社で起こったことがアレンジされてBL小説になってる。」
朝霧さんは私の顔の前にスマホをかざしている。何の公開処刑デスカ?上司が自分の書いたBL小説見てたとか何の公開処刑よ.....いつの時代の拷問なんだ..と私の脳は混乱状態であって。
「はぁ...!?」
しっかり間抜けな声が出ましたとさ。
「これお前が書いたんじゃないか?」
マジか、ヤバイこれ腐女子バレしてるわ。まじでいつバレた?ヤバイヤバイ気が遠くなってきた..
「ッ高槻!?」
私の意識はすぅっと暗闇に吸い込まれたのであった。
---
「ハッ!!」
確か、私が朝霧さんを攻めにしたBL小説を書いてたことがバレて、絶体絶命なところで気絶したはず。えーと、朝霧さんは周りにいないみたいだね...。
今のうちに逃げよう!!でも、なんで私の小説を知ってたんだろ?まさか...腐男子?ないね、絶対に。そんな不純な妄想は打ち消してしまってとりあえず逃げよう。
「抜き足差し足忍び足ぃ~」
「どこ行く気だ?」
スッと扉の横から朝霧さんが顔をのぞかせる。
「ギャーーーー出たあぁぁぁぁーーー!!」
「俺は幽霊か何かかっ!!」
「とりあえず、小説の件詳しく聞かせてもらうぞ。」
拷問確定演出来ました。私の命は今日をもってオワリデス。
「その前に...ナゼワタシノショウセツヲシッテイルノデショウ」
「それは、俺が腐男子だからだ。当たり前だろ?」
「デスヨネ...ハハハ...」
当たってたの?予想。嘘やろ?嘘やろ?なんでやねん!!
「で、この小説書くのやめてもらえないか?」
「なんでですか!!netaがなくなっちゃうじゃないですか!!」
そうそう。リクエストシリーズは今回とても大事なのだ....なんせ出版社とのタイアップの話も出てきてる。
「べつにnetaがなくなろうと、ネタがなくなろうと俺には関係ないんだよ!!」
この人は無慈悲か!!!同類とは思えないよ!!でも、今この瞬間私に一つの考えが浮かんだ。
「あなた、腐男子とい言いましたね?」
「あぁそうだが?」
何を聞いている。みたいな雰囲気を纏っているけどおいそれと信じられるような内容じゃないよ?朝霧さん。
「じゃあ甘切も同時に打ち切り私の小説家人生を終わらせるといったら?」
「そして、それはあなたのせいだということをぶちまけたら?」
朝霧さんの顔がどんどん青ざめていく。うん、いい気味いい気味。
「分かった。この話は無しにしよう。なら、絶対に全年齢で書くんだろうな?」
「そうでしょ。その方針で書いてるんだから。」
当たり前体操だ。
「それならいい」
朝霧さんはさっさと行ってしまった。はぁ疲れた。
「そうだ、高槻お前は早めに帰れるよう手配したから帰っていいぞ?」
「分かりました。」
とりあえず、死ぬことは回避したようだ...意外とこういう手配はしっかりしてるよ、朝霧さん。
---
家にて
グデーン
「どうした?姉ちゃん。」
「会社で一人上司にバレた。腐女子ということが。」
「あ、ガンバレ」
「なんと無慈悲な!!」
「いや、会社だし無理だよ。」
確かにそうだけど無慈悲には変わりない。
「あぁぁっぁぁぁそれがドs攻めにした人でしかも小説読まれてる。」
「なにその最悪な状況。でも小説知ってるってことは?」
「そう、腐男子!!」
さっすが朝海私が見抜いたことなんかすぐ分かるってことか。
「あの小説を討ちきれって言われたけど、甘切も打ち切るぞって言ったら許してくれた。」
「そうなんだ。とりあえず寝れば?疲れたでしょ姉ちゃん。」
珍しく優しいよ.....ちゃんと今回は心配してくれてるらしい。
「ありがと、そうさせてもらいますわ」
そのあとはベッドに倒れこんでグッスリと寝込んだ。
---
家にて朝6時
フーフー
「どうしたの?猫の威嚇みたいなことして。」
「猫の威嚇って、言えてるけどww
「で?なんかあるの?」
「えーとね、まぁ朝霧さんに勝てるように練習中。」
「馬鹿だ...」
高槻朝海は小声で呟く。
「朝海~?」
(姉ちゃんから殺気が湯気みたいにでてる...ヤバイ!
「なんのこと?私呼んでるけど。」
「そう?なんか馬頭の言葉が聞こえた気が...」
「まぁまぁ気のせいだよ。きっと疲れてるからでしょ。」
「そう?まぁ支度しようかな」
(ゴマカセタ...シヌカトオモッタヨ..ネエチャントキドキコワイ..
---
会社にて
「おはようございます。」
「おはよう!!昨日は大丈夫だったかい?風邪って聞いたけど」
正本部長が声をかけてきた。流石に朝霧さんもBL小説の事は言わなかったらしい。私もバレたくないしこの嘘には乗っておこう。
「おかげさまで休めました。」
「それは朝霧君に言ってくれ。じゃ今日も頑張ってね?」
「はい。」
まぁ、そんなこんなで何日か過ぎた。小説はいつも通りかけてたし、朝霧さんに何も言われてない。ちなみに、○○ゲームのプロジェクトはしっかりと進行されて大好評という結果で終わった。朝霧さんの地位はどんどん高くなっている。
そして!!そんな中ネタを見つけた、そう!!朝霧さんとリアルBLしてる社員を見つけたのだ!!(まぁ妄想でほぼ補ってるけどね!(^^)!)内容はこれ。
社員がまず資料をバラバラ落とす。それを朝霧さんが呆れながら拾う。ここの呆れながらが大事。この後の行動がより引き立ってくる!!そして拾い終わった後耳に二言。
「もう、ドジなんでするなよ?お前が心配になるからな」
はい、これ少しいじってますけどほぼ同じ意味でしょう!!これはsaikouでしたねぇー見たときは、妄想が止まりません。ということですよ、小説に即刻書きました。限界腐女子最高。
そんな事を振り返る程暇になりながら仕事してると。
「オイ、高槻。来い」
ん?朝霧さんから殺気が湯気のように立ってるような?
「はい。」
いつもの階段に行く。お決まりのパターンとなっちゃったよ...この不良シチュも
「お前俺で妄想するのやめろって言ったよな?」
「違いますよ?小説を書くのをやめろと言い、それも撤回されました。」
自分でも屁理屈だとは思うけどここは譲れない。
案の定、朝霧さんはイライラとした様子で一回舌打ちをした。
「戻りますよ?」
まだ仕事も残ってるしこれ以上いると嫌な予感がする...
「待て、じゃあ今言う、俺で妄想するのをやめろ」
は?後だしじゃんけん並みに酷い願い突きつけてきたよこの人....
「いいじゃないですか、自分が受けのことイチャイチャできるんですよ?公式で!!腐男子の極みでしょ!!」
うん、これも屁理屈の自覚はある。腐男子の極みは壁という事ぐらい知ってるけどこの状態ではしょうがない。うん、しょうがない。
「俺は受けだ...」
目を伏せながら朝霧さんが言っている。
「は?」
私は理解が追い付かなくてちょっと失礼な声をあげてしまったけどこんな状態だし許してほしい。
「だから、俺は受けだって言ってるんだよ!!」
すっごい恥ずかしそうに大声をあげて朝霧さんは言っている。
「マジか...」
心の底からの底からの奥底からの言葉が出る。
「マジだ...」
「だから...やめろって言ったんですか」
少し納得がいく。
「俺に攻めは似合わないから。」
「あんなに人を罵倒したりしておきながらそれを言いますか?」
「それは...舐められたくないからだよ」
「とにかく、俺を攻めにするのはやめてくれ」
きっぱりいって行ってしまった。取り付く島もないよ....ホント
---
な~ん日かたってぇ~
...あれからどうにかサブキャラのストーリーでつないできたけど....
「もうどうにもできないわぁぁぁっぁぁー-----!!!!!!!!!!!」
「姉ちゃんうるせえぇぇぇ!!!!」
朝海も十分うるさいんだけど言うとしばらく拗ねられるから言わない。
「あっごめん。テヘペロ!!」
私、高槻 礼奈は、朝霧 蓮の申し出に怒っている。メインキャラのストーリーを書くのをやめろ?無理に決まってんだろ!そんなの....
「netaがぁぁぁぁぁっぁー」
「しょうがないじゃん、もうその人に言って許可もらえるようにしてよ...」
呆れたという表情で朝海は言うけどそんなん虎を倒しに行くみたいな無茶だ
「無理!!無理!!あの人取り付く島もないもん!!」
「そこをガンバレ!」
全部私に丸投げかよ!!!!いつものツケが回ってきてしまった...
「ってかこういうのって編集者の仕事でしょ!!」
「うちに編集者はいないよ...」
「ウガァァァッァァ」
(だめだ、手の付けられない「小説家」という名の獣になっている。
「姉ちゃん、チョコ食べる?」
「食べる!!」
(よかった...戻った
---
どうしよう...あれから何もいい手が見つからない。
「ごめん...高槻さん。これ朝霧さんに渡してくれない?ちょっと怖いから苦手なんだよね...」
これはドンピシャだぁぁー!!!ありがとう!!!今だけ感謝するよ!!感謝感激神様仏様
「分かりました。渡しときますね。」
「ありがとう♪助かる~」
「いえいえ...」
ナイス!!これで話す時間が取れたぁ!!!
「すみません?朝霧さん」
「なんだ!?高槻...」
ギョッとした顔をしている。常時能面な朝霧さんがこんな顔をしているのが珍しいのか他の人たちの視線が痛い...
「驚きすぎです...資料渡すのと少し話したいことがあったんですよ..」
「分かった簡潔に頼む」
「とりあえず階段のほうにきてください!!」
「分かったが...?」
やっぱり資料渡すのに階段来てくださいは?がつくよね...。まぁ強引なのはいつものことだし今更変える気もないんだけど
「単刀直入に言います。そんなに文句言うなら編集者になってシチュ考えてください!!」
「は?」
いつもの朝霧さんからは考えられない間抜けな声が出ているのは置いといて
「言っておきます。このままだとリクエストシリーズは終わります。ネタがなくて...なので!!朝霧さんが好きなシチュにします。それをネタに書きます。」
「はぁ...?」
意味が分からないという表情をしているけどここまで来たならば押すのみ!
「そして、今私のところには編集者がいません。今は妹に頼んでますがそれも限界です。なので、朝霧さんは自分が受けになるシチュを頼める。私は、ネタが補充でき編集者さんがいる環境にすることができる。どうですか?」
「それ、俺にメリット少ないないか?」
気づかれた!!でもこのまま押す!!押して勝つ!あと一押し
「そしたら、私はこのまま朝霧さんを攻めとして活用して小説を書くまでです。残念ですが...」
「なら、編集者の条件を外せば俺はやろう」
そうきたか!!流石エリート、抜け目がない。ならば...
「編集者になれば甘切の担当もできますよ?」
今までの行動を見るに、甘切のまぁまぁなファンと見た!!これならいける!!
「ック!!分かった今の条件で飲もう...」
勝ったー!!!!!頭の中で武士風の私が拳を天に突き上げる!!
「では、ラ〇ン交換しましょう!!」
ラ〇ンあったほうが連絡楽だしね。
「めっちゃにっこにこだな...分かったよ」
もう呆れてしまったのだろう。どうでもいいみたいな口調になってる。
「電話番号で行きましょう」
.....朝霧さんはスマホを取り出したところで固まっている。え?もしかして分からない....まさか...ね。
「QRコードにしましょうか。やり方わかります?」
一応やり方わかるかは聞いておこう。分かると思うけど。朝霧さんだし
「友達出来たことないからやったことが....」
どうした!?急に口調沈むじゃん。メンタル豆腐か?
「えーとそこ開いてーここでーできました...」
こんなにライン交換で疲れたことないよ...
「じゃあまた、小説を書くときに!!」
「はぁ、分かったよ」
ってことで私の大勝利!!「戦ってたっけ?」で終わったのだった!!!!!
続く....?
自分のBL小説キャラにした人が実は腐男子でした!!2
「ぎゃぁぁぁっぁぁぁぁ」
無理やり乗せられたジェットコースターにて叫んでいる......朝霧さん。
なんで私が隣にいるのかなぁぁ!?そこ落ちるのぁぁぁッぁぁ
---
どうしてこうなったか。
それは3日前に遡る。(え、回想が急だって?気にしない気にしない)
「高槻、時間あるか?」
私が廊下の自動販売機で飲み物を買っていると呼び止めてくる人がいた。
どーも!24歳OL兼BL小説家の高槻 礼奈≪たかつき れな≫ダヨ。
ある小説サイトでプチパズリ中の「甘くて切ない」甘切という小説を書いて
「高槻、高槻礼奈。現実へ戻ってこい」
おっとっと、私を口うるさく呼んでいるのは朝霧 蓮≪あさぎり れん≫さん。
私の上司兼編集者様なんだけど、詳しいことは前のお話を見てくれると嬉しいな。
「何ですかー?」
私は朝霧さんの方に歩きながら答える。朝霧さんとは違う部署だから前回の企画が終わった後は特に顔を合わせることもなく連絡もラ〇ンで済ませていたのだ。
「遊園地のチケットで二枚セットを二つずつ貰ったんだよ」
胸ポケットから四枚のチケットを朝霧さんは取り出す。
正元部長から要らないからとほぼ押しつけに近い形で貰ったらしい。
流石に取引先の人から貰ったものなのだけどあの人独身だから使いどころも無くて困ってる中噂で最近私とよくいるっていう朝霧さんが近くにいたから渡した(押し付けた)らしい。
噂のくだり必要だったかは置いといて
「私と朝海と朝霧さんで三人としてあと一人どうしますか?」
「あぁ、それなら」
何か朝霧さんに考えがあるらしい
「お、蓮。女の子とお話なんて珍しいじゃん」
「また来戸か」
壁から声が聞こえたと思ったら茶髪の朝霧さんよりも明るめなスーツ姿の人がひょっこりと出てくる。
私がポカンとした表情をしていると面白かったのか笑いながら茶髪さんが自己紹介をしてくれた。
「俺は浜井 来戸≪はまい らいと≫。明るい来戸って覚えてくれよな!」
朝霧さんが来戸は昨日まで海外出張していたんだと追加してくれる。私としてはなんか全体的にチャラい人だなっと思ってしまった。
私も一応自己紹介をしておいた。
さて、ここまで見たところでは純情ビッチ受け的な来戸さんだな......
「なんで来戸と俺達が一緒に遊園地行くんだ」
BL展開を夢想していると氷の朝霧さん塩マシマシverの攻撃が来戸さんへ放たれていた。会って早々これは来戸さん可哀想に。
少しフォローしたほうがいいのかな?とハラハラしながら見てたんだけど意外に来戸さんが強者で
「いーじゃんいーじゃん聞いてたらチケット一枚余るんだろ?旅には陽キャを一人は連れてけって言うじゃん」
屁理屈を混ぜながらヘラヘラと返してしまったのだ。あのいかにもな関わるなオーラを纏った朝霧さんに対抗できる人がいるとは......
「言わない。俺とお前は同僚なだけで特に仲良くする理由もないだろ」
「まぁまぁ、どうせ朝霧さんに誘える友達も居ないでしょうしいいじゃないですか?」
私は間に割って入る。
だって!!こんな面白いネタになりそうな人逃すわけないじゃないですか。あたりまえ体操ですね。ハイ
「礼奈ちゃん意外と辛辣なんだな」
苦笑しながら来戸さんが言った所で朝霧さんが「友達......いない......」と呟いているのに目がいった。そういえば朝霧さんメンタル豆腐なの忘れてたや。
そんなことないですよ~と当たり障りなく返しておいたけど。
「とりあえずいつ行きますか?」
「俺はいつでもいいけど!」
「お前が行くつもりなのが気に障るが実はこれ3日後指定なんだよ。大丈夫か?」
3日後なら丁度日曜日で私も朝海も空いている。
「オッケーです!」
胸の前でグッと拳をだしながら満面の笑みで言ってみる。来戸さんはいつでもいいらしいから聞かなくていいかな。
因みに後から聞いた話なのだけど朝霧さんと来戸さんは高校の時から一緒にいる相棒(来戸さん曰く)みたいな存在らしい。社内でも最近はなりを潜めていたけど有名なコンビだったらしい。これは今度のネタに使えるということで色んな意味でウッキウキな帰り道だった私であった。
---
家にて
「たっだいま~」
ウッキウキな私の雰囲気を察したのか朝海は怪訝な顔をしている。
「姉ちゃん、ついに怪しい薬にでも手を出したの」
朝海よ、帰って早々それはひどくないか。来戸さんに対する朝霧さんの態度並みにひどいよ!
「そんなわけないでしょ。遊園地に3日後行くのだよ。勿論朝海も」
チケットは朝霧さんが持ってるのだけど伝えておく
「姉ちゃん毎回私に聞かず予定決めるのやめてくれるかな」
はぁとため息をついてるのだけど否定はしてないから行くって事なんだろう。
「今日の夜ご飯は?」
「鍋」
一言簡単に告げられた最高の夜ご飯に私は飛びついた後寝てしまったのだけど、その遊園地で朝霧さんが大変なことに巻き込まれるのはまだまだ知る由もなかったのです。
---
遊園地へ ~朝霧の恐怖~
俺は簡単に身支度を済ませた後待ち合わせの駅へと向かう。
来戸ぐらいならさっさと置いていって早めに行っても良かったんだが残念ながら先に来たのは来戸の様だった。
「蓮、おはよー。最高の朝だわ」
「俺は最低の朝だよ」
本当に毎回毎回突っかかってくる奴だ。腐れ縁なんぞを通り越している気がするがこれ以上考えたくなくなったのでやめておく。
「それにしても早いな。待ち合わせ時間より5分前だぞ?」
「社会人は5分前行動は当たり前って習わなかったか?」
嫌味をたっぷりとのせて言ったが習ってねぇわ!という言葉と能天気な笑顔で全てを無にかえされてしまった。毎回コイツには何をやっても効いていない、もう諦めたほうがいいのだろうが負けず嫌いなたちでどうしても張り合ってしまうんだよな。そんな事を考えているといつの間にか高槻とその妹が来ていたらしく来戸と楽しそうに話している。
「高槻、と高槻の妹来たのか」
「どうも」
俺の言葉に応えるように高槻の妹は簡単な礼と一緒に言ってきた。髪を一本にいつも纏めている高槻とは違い妹はショートカットらしい。
「朝霧さんおはようございます!」
来戸と話し終わったのか妹の後ろから高槻がひょっこり出てきた。
「高槻おはよう」
「あ、朝霧さん、来戸さん。紛らわしいので私は礼奈で妹は朝海って呼んでください」
確かに紛らわしいがあまり親しくもない女性を呼び捨てにするのもどうかと思ってしまう。
「オッケー礼奈ちゃんと朝海ちゃん!」
この時ばかりは来戸の能天気さに嫉妬を覚えた。
「じゃあ俺は今日だけ礼奈さんと朝海さんと呼ぶか」
今日だけという所で何か高槻が目で訴えていたのだがろくなことが無さそうだから無視をする。
「あのーそろそろ電車来るんじゃないですか?」
大人三人の中いつ入るか頃合いを見測っていたのだろう高槻の妹が告げた。
「あぁそうだな。そろそろ移動するか」
俺たちは固まってホームへと移動した。
遊園地までは20分電車で移動してそこから徒歩で5分。何かと話しながらというか来戸の海外での面白話を聞いていたらすっかり25分は過ぎていて遊園地に着いていた。
「来戸さんのお話が面白かったからもう着いちゃったって感じがするなぁ」
「出張って大変な感じがしてたけど来戸さんが言うと全部面白く感じます。芸人さんっぽいというか......」
高槻姉妹は口々に感想を言っているようだ。一見かけ離れているように見えるが根本は似てるんだろうな。
「チケットは入場の方に変えてあるからもう入るだけ入るぞ」
はーい!といった元気な声とはいと遠慮がちな声が混ざって聞こえてきた。
この遊園地はどちらかというと地元密着型といった感じだが日曜日ということで人は多い様だ。
「どこから回る?」
呟いてから定番のコーヒーカップ、ゴーカートなどを回っていく。メリーゴーランドを降りたところで来戸が提案してきた。
「やっぱし次はジェットコースターだろ!」
途端に俺の顔が固まる。まぁいつも仏頂面だから周りからすれば差は無いのかもしれないが。
「いいですねジェットコースター」
「よしっ行きましょー!!」
高槻姉妹も同意しているが待ってほしい。実をいうと俺は絶叫系は苦手なのだ。来戸の奴絶対分かってる。分かってて言っている。
「ちょちょちょちょっと待ってくれ?」
「待たねーぞー!」
こうして来戸にずるずると引っ張られて俺の恐怖の時間が始まったのだった。
---
ジェットコースターの時間ダゼ☆ ~来戸の陰謀~
「では、皆さんいってらっしゃーい!」
蓮を無理矢理ジェットコースターの席に押し込んだ所で従業員さんの声が響く。ってかあの従業員さん可愛いな。
「楽しみですな~」
礼奈ちゃんは蓮の横で楽しそうにしているけど蓮は顔面蒼白で動いていない。まぁ、俺がヘタレなところを見せて失望させよーと思って乗せたから当たり前だけど。
「朝海ちゃんジェットコースター大丈夫?」
「大丈夫です。それよりも姉が......」
礼奈ちゃん?あんな楽しそうにしてるけど
「まぁ下りになればわかりますよ」
テ、テレパシー!?(っておい既視感あるぞ。)
そんな話をしたところでそろそろカチカチカチと聞こえ
体が少し傾いてきた。
さっきまで礼奈ちゃんと蓮の話し声が聞こえてたんだけど、どうしたんだ?
後ろを振り返ってみると蓮はさっき見たとして礼奈ちゃんも顔面蒼白でぷるぷるしていた。
「だから言ったのに」
同じように振り返りながらはぁとため息をついて朝海ちゃんは言っている。
その後ふわっとした感覚に襲われたかと思うと急降下していた。
「ぎゃぁぁっぁぁぁぁぁっぁぁぁっぁぁっぁぁ」
礼奈ちゃんと蓮の声が重なって空に吸い込まれていった。
「あー楽しかった」
俺達一向はジェットコースターを降りて次の乗り物に向かって歩いている。
「あれを楽しいと思える神経が分らない」
いつもの如く蓮に一刀両断される。
「まーまーこれで分かったでしょ。蓮がヘタレで怖がりってことが」
俺は礼奈ちゃんと朝海ちゃんにそう言ってあげる。蓮に騙されてるの可哀想だし。
「いや、知ってますけど」
「それが何か」
当たり前といったように礼奈ちゃんも朝海ちゃんもスンとしたすまし顔だ。
「へ?」
「あーそうしたらコイツ腐男子なんだぞ!」
これで、これで蓮から離れるはず。
「知ってますよ。私も腐女子だし」
フジョシ、嘘だろ。コイツに至っては効くはずのない類は友を呼ぶじゃなかったのか。
「らーいーとー」
復活したのか後ろから蓮のこれまでで一番ドスの聞いた低い声が聞こえてきた。ヤ、ヤベェ。こんなはずじゃ
「お前はまたそれか!!!毎回毎回俺の周りから人を払ってくな」
「だって蓮は周りに人がいたらカッコ悪いし」
そう。蓮は孤高の狼なんだ。一人でいるからこそかっこいい。これまでもこうして蓮が高嶺の花になるよう助けてきた。蓮はあぁ言ってるけど俺がこうしてなかったらよってたかって来た女子供にかっこいいと思わせなきゃいけないんだぞ。これ以上脳内で語ったら5時間ぐらい続きそうだからやめるけどとか脳内で会話をしていると
「つまり、来戸さんはメンヘラ攻めという訳ですか!!」
礼奈ちゃんが目を輝かせて間に入ってきた。
「え?いや、違うけど。攻めって何」
俺は混乱したからか本音がするすると口をついて出てくる。
その言葉に衝撃を受けたのか礼奈ちゃんは目をぱちくりしている。
「え、攻めの反対は?」
「守り」
当たり前だよな。なんでそんなことを今聞く必要があったんだろうか。
「おい、高槻ちょっとこっちこい」
結局蓮言い方戻ってるけどまぁいっか。何か二人で話してる。
「朝海ちゃんは何か分かる?」
「さぁ、私は何も」
多分全部知ってるんだろうけどあくまでも知らないと通すらしい。可愛げの無い子だ。
「とりあえずお前はお化け屋敷一時間耐久な」
戻ってきた蓮が普通に言う。
「イヤイヤイヤイヤイヤ俺お化け屋敷嫌いなのしてててててるよね??」
単語を聞いただけでも寒気がして鳥肌が立ってくる。足なんか生まれたての小鹿みたいになってるぞ。
「俺の嫌いなジェットコースターに無理矢理乗せただろ?」
にっこーと笑ってる。蓮が笑ってる。目が笑ってない笑みを見せてきてる。人生終了したかも。
「さぁ行こうか」
「朝霧さん、あんまりにっこりしすぎてるんで気味悪いですよ」
そしてまたまた辛辣な礼奈ちゃんだ。そうか?と蓮は神妙そうな顔をしている。あんなに表情が豊富な蓮は初めて見た......高槻礼奈、何者なんだ。
「じゃ、来戸を頼んだぞ高槻の妹」
「オケです」
俺は朝海ちゃんに押し込まれお化け屋敷に放り込まれてしまったのだった。
---
遊園地にて~高槻礼奈と朝霧蓮~
売店にて、朝霧さんと二人でお土産を選んでいるのだけど、私は朝海とお化け屋敷に押し込まれた来戸さんが気になって朝霧さんに聞いてみる。
「よかったんですかね?すごい嫌がってたけど」
「アイツはあんぐらいしないと仮の反省すらしないからな」
まだ不満に思ってるのか少しむっとしながらそう言っている朝霧さん。まぁ、楽しみにしていた遊園地で急にあんなことを言われたらそうなるもんだよね。しかも仮の反省すらって来戸さんはやはり強者......
「高槻の妹には申し訳ないな。見張り役を押し付けてしまって」
本当に申し訳なさそうにする朝霧さんに思わず吹き出しそうになる。
「大丈夫です、よ」
「何笑ってるんだ」
心外だ。とますますむすっとふくれる朝霧さんの顔にたまわずもっと笑ってしまった。
「だって朝霧さんそんな表情豊かだと思わなかったから」
「確かに、あんまり人前で笑ったりはしないな」
怖い笑みはできるのに。と言いそうになってやめる。メンタル豆腐な朝霧さんにこれ以上悪意は無いとしても辛辣な事を言ってしまうと拗ねちゃうかもしれない。
「あ、これどうですか?」
空気を変えるべく私が手に取ったのは美味しそうなマドレーヌ。会社のお土産にも友人のお土産にもなんにでも合いそうだ。
「いいな。それ買ってあとは来戸が反省するまで待つか」
パパっと朝霧さんにお会計を澄ましてもらって外に出てみる。
「後20分ぐらいあるけど高槻どこか行きたいところあるか?」
「じゃあ、観覧車とかどうですか?」
やっぱり遊園地に行ったら観覧車は乗っておきたいと思っちゃうよね~
ってことで観覧車に朝霧さんと一緒に乗ります。
「久しぶりだな……こういうのに乗ったの」
朝霧さんは奥の方に座って壁の方にもたれかかっている。
「ホントですね~社会人になるとこういうとこいかないし」
私は小説とか書いてたら尚更行く気無くなるからなぁ。
「景色綺麗ですよ。朝霧さん」
ぽつぽつと着き始めた灯りと夕日が差し込む町が綺麗で思わず端の方に小さくなってる朝霧さんに呼びかける。
「俺は大丈夫だから高槻は景色を楽しんどけばいい」
よく見たらぷるぷる震えてるような......
「まさか、高いところも苦手なんですか?」
「格好悪いからあんまり言いたくなかったんだけどな」
そんなに苦手なものが溢れているなら誘わなければよかったのに。今も少し苦々しげな顔をしている朝霧さんを見て思う。
「あ、もうすぐ終わりますよ。一目だけでいいから。ね?」
「じゃ、じゃあ少しだけ」
すすすすすすすと慎重に向かいの席を移動する朝霧さんを見て吹き出しそうになったのは私の秘密だ。
「確かに、綺麗だな」
ぽつりと漏らされた言葉だったけどそう思ってるのがしっかり伝わった。
それにしてもイケメンだなー、朝霧さん。この状態で一枚の絵になるというか
「どうした?俺見て」
あ、ヤベ見てたことバレた。
「いや、何も」
それから二人して景色を見て一番下に着くまでの時間を過ごした。
「ありがとうございましたー」
店員さんにお礼を言って観覧車を降りる。
「姉ちゃーん」
ちょうど朝海がげっそりとなった来戸さんを引きずりながらやってくる。たまに思うけど朝海って意外とパワフルだよね。私に似てというか......
「じゃあ帰るか」
そうですねーと頷きながら歩き出す。
「俺、もー遊園地行きたくない!!朝海ちゃん慰めて!!」
来戸さんは朝海に抱き着いて泣き真似をしている。恥ずかしくならないのかな年下に抱き着いたり泣き真似したり......
「気持ち悪いです。お化け屋敷でも脅かされるたびに抱き着いてきて......」
はぁと大きなため息をつきながら来戸さんを朝海は引きはがしている。微笑ましいなぁ。
「俺、こっちから行ったほうが早いからバイバイ!」
来戸さんが先にそう言って帰ってしまった。居なくなったのが悲しいわけではないけどやっぱり少し寂しくなってしまう。
「あ、姉ちゃん私買って帰る物あったから私もここで降りるね」
「ちょっちょっと朝海まで!?私もついていこうか?」
大丈夫だから。とパパッとバッグをもって電車を降りて行ってしまった。
最近話してなかったこともあり朝霧さんと二人きりというのは少し気まずい。ラ〇ンではやり取りしてるんだけどあんまりにもテンション違うから別人と錯覚してしまうのだ。
「あ、朝霧さん。次の小説どうしましょうか」
とりあえず気まずいから話しかけてみる。返事がない。声が少し上ずった気もするしやっぱり変と思われたかな!?どうしよう、それは困ってしまう。上手く言葉にできないけど。どうしよう、変な顔されてたらと思うと朝霧さんの方を向けない。ほら、朝霧さんのいびきが......ん、いびき!?
バッと朝霧さんの方を振り返ると疲れて眠ってしまってる朝霧さんがいた。確かに来戸さんの事やらジェットコースターやら大変そうだったしね。心配して損してしまった。
どうしようか。起こしてしまってもあれだし寝かしておくのがいいんだろうけど前髪が何故かス〇夫みたいになってるのが気になる。多分、観覧車でおでこぴたってつけて見てたからそのせいなんだろうけど。
私が少し近くで朝霧さんの顔を覗いているといきなりがばっと起きた朝霧さんのおでこと私のあごがぶつかる。
「いだぁぁいおdjぁじゃおああぁっぁ..ぁ..」
私の叫びが電車にこだまする。
「あ、何かすまん。というかどうやったらそうなるんだ......」
朝霧さんは寝てたから何が起こったのか分からないって顔をしている。
プシュー 沢ヶ町~ 沢ヶ町~
「あ、着きましたね!降りましょうか!!」
わざと勢いよく言って考える間を与えないようにする。
うん。考える間を与えたらどうなるか。人権が吹っ飛ぶ。明らかに朝霧さんサイドから見れば怪しいことをしていたって見れるし。
「私、帰りますねぇぇ」
ということでどうした?と頭が?でいっぱいの朝霧さんを置いて逃げ帰ったのであった。
つづく?
自分のBL小説キャラにした人が実は腐男子でした!!3
登場人物紹介(すっとばしてもいいです)
高槻礼奈(24歳)
イベント会社勤務のOL兼ケータイBL小説家。上司の朝霧蓮が編集者。このシリーズの主人公。
朝霧蓮(27歳)
礼奈と同じくイベント会社勤務のサラリーマン。立ち位置的には礼奈の上司。イケメンなのだが腐男子。エリートなのだが仕事以外では不器用でヘタレ
高槻朝海(22歳)
礼奈の二歳違いの妹。現役大学生。
浜井来戸(27歳)
朝霧の同僚で高校から一緒に居る。最近まで海外出張をしていた。イケメンでチャラい。
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1,イケメン王子様モードには気をつけろ
「あ”......あ”ぁ”ぁ......」
「どんな声出してるんだ。高槻」
コーヒーを持ちながら現れたイケメン、朝霧さんに突っ込まれる。
だけど、締め切りギリギリでスランプだからしょうがないと思うんだけど。
「まーたネタ無くなったの?礼奈ちゃん」
朝霧さんの後ろから第二のイケメン、来戸さんが登場する。
しょっちゅうネタがない......とぼやいてるからこそそんなこと聞かれるんだろうけど今回は違う。
「ネタはあるんですけどね......ちょっと問題が発生しまして」
朝霧さんがいぶかしげな顔をしている。
もしかして私が来戸さんとBLしろとか頼むと思ってるのかな。本当だったら失礼だけど。
「問題って何なんだ?」
「クリスマスデートの話にしようと思ったんですけどデートの経験が無いんですよね」
何しろ、彼氏いない歴=年齢なのだ、こっちは。
「礼奈ちゃんって付き合ったことなかったんだ」
「何ですか」
一応睨んでおく。告白はされたことあるもんね!!
「でも、今までの別シリーズの短編にデートの話とかはあっただろ?」
まぁ確かに朝霧さんの言う通りなんだけど。
「今回は甘切、しかも大事な場面なのでこれまでみたいになんとなく書くのは嫌なんですよ」
はぁ、とため息をつく私。そこら辺に簡単にデートさせてくれるイケメンはいないものか。
「つーまり、デートをしたいと。俺とかどう?」
来戸さんが軽い口調で言った。ただ来戸さんだと多分......
「来戸さんだと普通に遊ぶだけになりません?」
確かに、と呟いてすぐ引き下がった来戸さん。納得しちゃうんだ。ハハ
「それなら俺はどうだ?」
今まで傍観していた朝霧さんが横からコーヒーのごみを捨ててから言う。
確かに手っ取り早いけどいいのだろうか?
「朝霧さん予定とか大丈夫なんですか?」
「蓮はどーせ クリぼっち だから大丈夫だって!」
「あぁ大丈夫だ」
朝霧さんが真顔で来戸さんにチョップをかましてるのはスルーするとして、これでデートの経験が出来る訳だ。
「じゃあ24日いいですか?」
「分かった。じゃあまたな」
そして人生の一大イベント、初デート。を朝霧さんとすることになったのだ。
そして運命の24日は来た。
デートプランは協議の結果朝霧さんに任せたため知らないけど。
メイクも服も朝海に選んでもらってバッチリお洒落してきたのだ。
待ち合わせ場所は駅の大きなクリスマスツリーの下。
後ろ姿でそれっぽい人を見つける。
「朝霧さん?」
それにしても昼のクリスマスツリーは新鮮だなぁと感じる。
上にある星が青空と映えていていいかもしれないと思うけど。
「あぁ、高槻さん」
ん。さん?
「朝霧さん、変なものでも食べましたか?」
「変なものは食べてませんよ。高槻さんは辛辣ですね」
朝霧さんが敬語を使っている!?
いや、確かに仕事上使うときとかあるかもしれないけど。
ってかめっちゃニコニコだし!
しかもタートルネック着てる。イメージ無いのに。
「あ、人違いでしたー」
「棒読みで去ってくな」
あ、戻った。
「何ですか!? 急に敬語とか気持ち悪い」
驚きすぎて辛辣になったけどまぁいいや。
「気持ち悪いは酷いだろ。主人公敬語キャラだし、合わせただけだよ」
頭をかきながら不満そうに言っている朝霧さんがいつもの朝霧さんで少し安心した。
「そこまで合わせなくて大丈夫ですよ」
普段とのギャップで可笑しいことになりそうだし。
デートの途中で吹き出したくない......
「そうか。じゃあ行くぞ」
クリスマスの装飾が施された街中を朝霧さんと歩く。
「それにしても町全体が浮かれてる感じですよね~流石クリスマス」
「今日は高槻も多少ははしゃいでもいいんだぞ?」
「子供じゃあるまいし」
まぁそんな世間話というかどうでもいい話をしながら朝霧さんが連れてきたのはクリスマスマーケットが行われている広場。
「人おおっ」
「人多い所苦手だったか?」
心配そうに見てくる朝霧さん。
確かにデート中は相手が不満そうだったら気になるか。
「いえ、普通に驚いただけで苦手じゃないですよ?」
「それならよかった。今日は俺が奢るから高槻の妹とかにお土産買ってあげたらどうだ?」
「奢り......流石、儲かってるんだなコノヤロー!!」
「コノヤローって何だよ。コノヤッハッ」
何かツボったらしい。ほっといて先行こうかな......
ここは真ん中のツリーを中心にお土産から食事まで何でも売ってるらしい。
何を買おうか迷うなぁ。
「おい」
「何ですか?」
今、お土産を品定めしてるところなんだけどな。
「一応これデートなんだが」
「すっかり忘れてました」
完全に私の中の朝霧さんは不器用でヘタレで愛されキャラみたいな感じだから忘れていた。
「はぁ、先が思いやられるな」
そう言うと朝霧さんは自分の手と私の手を繋いできた。
「ちょっと!?」
「デートなんだから手ぐらい繋ぐだろ」
たーしーかーにー。でも、この指を絡める繋ぎ方は恋人つなぎという奴では......煽らなければよかった。
「高槻、これとか似合いそうだぞ」
私が後悔していると朝霧さんがサンタなどが編み込まれたクリスマスカラーのマフラーを手に取っていた。
「そうですか?」
誰かと手繋いだりしないから動きづらい。
「絶対似合うな。マフラーぐらい何個かあっても使うだろ」
朝霧さんは私が返事をする前に買ってしまった。
「あ、私お金払うのに」
申し訳ない。別に自分が身に着けるものぐらい自分でお金を出すのに。
「今日は俺が奢るって言ったろ。それにクリスマスプレゼントでも思ってくれればいい」
大きな手が迫ってきて買ったばかりのマフラーが首に巻かれる。あったかい。
そんなこと言われたら押し返すことも出来なくなる。
「じゃあ、私も何か買いますから」
やられっぱなしも嫌だしねってことで私は朝霧さんにマグカップを買ってあげた。自分が奢ることが出来なかった朝霧さんは不服そうだったけど。
「お土産も買いましたしそろそろ次の所行きます?」
「だな」
荷物は勿論朝霧さんが持って次の場所に向かう。
「次は外で冷えたと思うし中がいいと思って」
朝霧さんはショッピングモールに入っていく。
「あったかいですね~。やっぱり冬は寒い」
確かにナイスチョイスだと思う。ずっと外で寒かったら楽しめるもんも楽しめない。
周りにたくさんいるカップル達と同じように他の人達に映ってるのかと思うと気が気じゃないけど。
「少し遊ぶか」
目の前にはゲーセン。朝霧さんにしては珍しいチョイスなのかな?
「何します?朝霧さんも出来そうなゲーム......」
大人二人でするのだからマシなのを少しは選ばなければいけない。
「太〇の達人とかは?」
朝霧さんもろ下手そうなの提案してるけど大丈夫なのかな。
「別に私はいいですけど」
さっそく朝霧さんのお金で二人プレイ。今日奢られすぎなんじゃ......
曲はhabit。私の難易度はむずかしいで朝霧さんの難易度は鬼。
朝霧さんクリアできるか?という心配はどこかへ飛んで行った。まさかの朝霧さん不可を10にまで抑えてクリアしたのだ。
人って何が得意か分からないものだよね。
「ちょっ、次クレーンゲームしましょう」
因みに久しぶりにむずかしい三連発したせいで私はへとへとです。
「欲しいのでもあったのか?」
確かに、欲しいものといっても......あ、猫のぬいぐるみがある。
「じゃああの猫のいいですか」
「まかしとけ」
まぁ大きい奴だし、無理だと思うけど。
「これでいいか?」
「はい?」
「え、ぬいぐるみ」
朝霧さんが猫の頭を鷲掴みにして立っている。大丈夫か猫さん。
「とりあえず鷲掴みやめましょう」
もしかしたら朝霧さんはゲーセンでは無双なのかもしれない。
ゲーセンを出てしばらく歩いてると朝霧さんが止まった。
「小腹空いたかと思ってたんだが。ここたい焼きとか色々高槻の好きそうなのあるぞ」
そこにはたい焼きや和菓子が売っているテイクアウト専用のお店があった。
「おいしそう!!」
あんこ、クリーム、カスタード、レアチーズ、様々なたい焼きに大福まで。
なんて最高なお店なんだろうか。
「えっとじゃあカスタードとあんこが混ざったたい焼きで」
すぐに買ってきてくれる。意外と朝霧さんはスマートらしい。いや、スマートが当たり前......ダメだ頭が絡まってきた。
「高槻、先半分食べて」
とりあえず言われたとおりに半分を一口で食べる。ちょっと(?)がっつきすぎたかもしれない。
そんなことを思ってると朝霧さんがもう半分を食べている。
「ちょっと!! 私のたい焼き!!」
というか間接キス!! 気づいてないんだったら怖いって。
「全部高槻にやるとは言ってない」
最後の一口も朝霧さんの胃袋に消えてしまった......無念。
「というか、間接キス!!」
そうそう、たい焼き半分食べられたことと同じぐらいヤバイ事を忘れるところだった。
「あ」
「気づいてなかったんですね......」
「口にクリーム付いてるぞ」
ごまかしたぁぁっぁ。ま、まぁいいけど。デートとクリスマスの雰囲気って怖いな。
たださらにここから朝霧さんの王子様度は増していった。
いつもより笑顔だし正直別人か疑うけど姿は朝霧さんそのものだし......としょっちゅうドキドキしっぱなしだ。
少女漫画の要素全て詰め合わせたみたいな甘ったるさなのだ。
今は夜だし、ファミレスでドリンクを取りに行ってもらっていないけど。
ということでラ〇ンにて姉、妹を頼ります。
『朝海!! 相手を傷つけずにデートをすっぽかすにはどうすればいい?』
こんなこと聞くのもおかしいけどしょうがない。
そして既読はついたものの待てども待てども返事が来ない。
見捨てられたかもしれない、と気づいたのは朝霧さんが既に角を曲がったところでした。悲しいなぁ......
『朝海ぃぃぃぃぃ既読無視するなぁぁぁっぁあ』
朝霧さんの到着まで3秒。
そんな中陰でコソコソ動いている者がいたという事を礼奈は知る由も無いのだ。
その者は高槻朝海と浜井来戸。
朝霧に頼まれデートプランを考え今日までサポートしてきたのだ。
どこでどのようなイベントがあるのか調べ、姉の好みに合わせ、完璧になるように太鼓の達人、クレーンゲームの練習に付き合い......とこの二人の手助けあってのこの王子様朝霧、故にラ〇ンも既読無視という訳だ。
『朝霧さん来ちゃったじゃぁぁぁぁぁぁぁんおおおおおおおい』
ダメだ。このままではラーメン〇郎並みに王子様度マシマシ朝霧さんにやられる。
どうにかしなければ。
「大丈夫か?」
いーつのまにか隣に来てるネ。終わったアルネ。顔近いし、キラキラしすぎだろ。
王子様スマイルとか朝霧さんすることじゃないって
「ちょ、ちょっと待ってください。朝霧さん」
「何だ?」
いや、なにそのきょとんとした顔。自分何も悪くないぞ感出してるんじゃないよ
「このままじゃ、少女漫画ですよ!!」
「いや、そういうわけじゃ」
「駄目です」
私の睨みが効いたのか効いてないのか知らないけどやっとキラキラオーラは収まった。
「どうしたんですか?いつも通りの朝霧さんで丁度いいって物を......」
「いや、次の甘切の話はしっかり読者をキュンキュンさせてほしかったからそのためには俺がまず高槻をキュンキュンさせる必要があると思って......」
いや、何その可愛い理由。
ってか相変わらず顔近いから今度は別の萌えでタヒぬんですけど。
「すまん、たかt」
ドンガラガッシャーン
「いってててて」
大きな音がしたと思ったらそこには来戸さんと朝海が重なって倒れてたのだがどういうこと!????
「お前ら出てくるなって!?」
いや、朝霧さん二人来てるの知ってたの?
聞いてないってか聞いてたらデートじゃないし。
「アハハハッハ」
「二人とも空笑いしないで話を聞かせてもらおうか」
ということで、二人の協力であのキラキラ朝霧さんが出てきていたという訳
だ。
本当に私のあのドキドキを返してほしいよ......
そして四人で仲良くクリスマスの街中を帰ったのでした。
2,大晦日は皆で
「おーい!!大晦日ぼっちの蓮~」
「うるせぇよ」
気分を害したのだろう朝霧さんに声をかけた来戸さんは後ろ回し蹴りを入れられる。受け身は勿論取っているだろうけど。
「いや、ここ会社だし。ってか足上がらなくなったね」
「特に誰も見てないから大丈夫だろ。足が上がらないのはスーツだからだ」
「誰も見てない......か」
「誰かいたのかって高槻!?」
そう、私が実は植木の陰から激写していたのでした☆
「この前はありがとうございました~」
お陰で締め切りの25日当日にエグイぐらい高速で書く事になったけどね。
まぁ自分でも自信はあるし、評判も最初の方だけどいい感じだし感謝は本当にしてるよ。
「別に特に何かしたわけじゃないが」
「本当にお前は何もしてないよな」
はぁ......とため息をつく来戸さん。
デートプランの基礎を考えたのは来戸さんらしいしそうなるだろうね、ハハ。
まぁ改めてウォッホンと仕切りなおして
「今年はぼっちじゃないですよ!! 朝霧さん」
そう、私の家で大晦日パーティーをするのだが二人を誘っているのだ。
まぁパーティーなんて名ばかりで特に他に誘う人もいないからいつもの四人で仲良く年を越そうという可愛いものだけど。
「おー楽しそうじゃん!!」
「ああ、俺も参加しよう」
二人とも参加してくれるみたいだし年越しも楽しそうだ。
「あのー朝霧さん......」
端の方にいつの間にか女性社員がいて朝霧さんを呼んでいる。
「後で連絡する。じゃあ」
やっぱりエリートは忙しい......。
24日も無理矢理有給休暇使ったとかだったら申し訳ない。
「そういえば礼奈ちゃんは蓮の事どう思ってるの?」
何を思ったのか来戸さんが私に聞いてきた。
「うーん少し悩みますけど、面白くてエリートなんだけどヘタレでとってもいい編集者様だと思ってますよ?」
素直に朝霧さんの特徴を言うとこんな感じじゃないだろうか。
「じゃあもしかして礼奈ちゃんって蓮に恋愛感情って無い?」
「いや! いつも見てたら分かりますよ。急に何言うんですか......」
ホントに急に恋バナとかびっくりするからやめてほしい。
「へぇー。あ、俺も仕事戻るね!!」
一瞬来戸さんが何かいつもと違う雰囲気だった気がしたけどすぐ戻ってしまって確かめることはできなかった私なのでした。
「いらっしゃーせー。お、朝海ちゃんじゃないかい!」
三時頃、私は空いた時間を使って明日の大晦日に備えて買い出しをしていた。
ここはよく知っている商店街の八百屋さん。野菜が新鮮で安いのが売りだ。
おっちゃんもいい人でいつもおまけをしてくれる。
「味噌鍋に居れたらおいしい野菜ってどのくらいある~?おっちゃん」
「かぼちゃだろー白菜、ネギ、何でもそろってるよ!」
このように威勢よく答えてくれるしこっちも気持ちいい。
どれがいいかな、と一つ一つ手に取ってじっくり考える。
この時間が一番買い物の中で楽しいかもしれない。
「あれ?あ、やっぱり!朝海ちゃんじゃーん!」
キーンと耳に響く大きな声が聞こえたかと思うとこちらに男性が走ってくる。
イケメンだしクッソ目立つんだからやめてほしい。
「あれ、朝海ちゃん知り合いかい?」
「おっちゃん、気にしないで大丈夫。顔見知り程度だから」
「いや、一緒に遊園地行った中じゃん」
いつの間にか隣に来ているのだけど。
「私は姉の付き添いで行っただけなんで」
買い出し中だし、そもそも来戸さん仕事中だと思うけど。
「つれないなぁ、何の材料買ってるの?」
「鍋」
応える間にもかぼちゃ、玉ねぎ、ネギ、白菜、とかごにどんどん材料を入れる。
「おっちゃん、これよろしく」
「俺払おうか?」
「彼氏面ですか。やめてください」
サッと自分のお金で払ってしまう。
おっちゃんは珍しく私が不機嫌なのにわたわたしてるが仕方ない。
「荷物持とうか?」
「大丈夫です。貴方会社でしょ」
「いや、今日は直帰だし大丈夫」
イベント会社、大晦日なのにコイツ直帰させて大丈夫なのだろうか......
「あ、お肉忘れるところだった」
この人と喋ってると注意力が散漫する。
そして肉屋でもこの人は
「今度こそ俺が奢る!!」
「いいです」
本当に何なんだ......もしかして。
「貴方、朝霧さんが姉ちゃんに奢ってる所がかっこよかったんですか?」
図星なのだろう、ぎくぅみたいな顔をしている。
その間にパパッと会計を澄ましてしまう。
「あ、今度は俺持つから」
「あ、ちょっと」
油断していたし力も強いから取られてしまった。
「女の子なんだしもっと頼ってくれてもいいんだけどな」
「頼るも何もそんな仲じゃないですから」
私はそっぽを向く。不覚にも顔が赤いのは袋を取り合ったせいのはず。
それは、言い訳をしながら貴方と帰った日のお話。
そして、大晦日!!
ピンポーン
マンションのインターフォンが響く。
「高槻~」
「礼奈ちゃん!!朝海ちゃん!!」
二人とも時間ぴったりというか2.3分前に来てくれた。
「寒かったでしょー。どうぞどうぞ」
二人とも靴をしっかりそろえて入ってくる。
「もう二人とも来たんですか」
朝海は後ろの二人を見て言っている。
「あ、この前はども、朝海ちゃん!」
「ども」
なんか二人この前あったの?
私知らないんだけど......
「姉ちゃん、夜ごはんにはまだ早いと思うよ」
「じゃあ、ゲームでもしようか」
来戸さんの件をうやむやにしてる気がするけどまぁいいでしょう。
「何しますー?」
ゲームカセットを見せて聞く。
「太鼓の達人」
「マリカー」
「マリカー」
「マリカー」
朝霧さん......。一瞬の沈黙の後朝海がこういった。
「じゃあ満場一致でマリカーで」
「俺をはぶくな!!」
ナイスツッコミ。朝霧さん
もちろん、ワルハナ構成でやっていく。
「スターカップでやっていきますよー!」
とりあえず朝霧さんに負けることは無いと思う。というか負けたくない。
「これ、Aで進むのか......?」
うん、これだもん。誰だって負けないと信じている。
「スタダミスッタァァァ」
「姉ちゃんうるさい」
「バナナァァァァァ」
「来戸さんもうるさい!!」
誰だって、マリカーやったら叫ぶって心理じゃない......?
「なんか逆になってるんだが、これどうしたら」
ちなみに朝霧さんは皆無視している。ご愁傷様。
ということで順位発表。comも含めると12位まである中で1位に輝いたのは誰なのか....ジャンジャカカカカジャン
朝海≫1位
礼奈≫3位
来戸≫4位
朝霧≫12位
朝海はぶっちぎりで、私と来戸さんは接戦だったと思う。点数も1点差だし。
朝霧さんは......
「誰も遊び方教えてくれないから......」
朝霧さんの不器用さってゲームにも影響するらしい。
まぁこの言葉から分かる通りだけどご想像にお任せする。
「鍋、煮込めたよ姉ちゃん」
ワイワイとしていたけど気づいた朝海が教えてくれる。有能な妹、最&高。
「はい、今回は味噌ベースのお鍋でーす!!」
「おぉー」
まぁ仕込みとかほぼ朝海がやったんだけどね。
「ってかこたつめっちゃあったかいよなぁ」
「それは俺でも共感できる」
二人の家にこたつって無いのかな。めちゃくちゃ好評。
「やっぱおいしい」
「だねぇ」
二人を置いて姉妹で先に食べてると
「あ、高槻!」
「二人ともずるっ」
二人とも競うように一緒に食べ始めるのでした。
ってことであっという間に完食。冬は鍋に限る。
「高槻、トイレ借りたいのだが」
朝霧さんがこたつから出る。
「あ、行きますよ」
まぁ寒いからブランケットを引きずっているのだけど。
「ブランケット引きずってるし転ぶぞ」
「大丈夫ですよ。そんなヘマはしません」
ここのドア開けたらあります。と朝霧さんにトイレを教えてどこうとしたその時、朝霧さんが私のブランケットで足を滑らせた。
ドンッ
「大丈夫か?」
うん、まぁ大丈夫なのだけど......壁に押し付けられてるしまさにこれは壁ドンというやつなのでは!?
続く
本編っちゃぁ本編なんだが
登場人物紹介(すっとばしてもいいです)
高槻礼奈(24歳)
イベント会社勤務のOL兼ケータイBL小説家。
上司の朝霧蓮が編集者。このシリーズの主人公。
朝霧蓮(27歳)
礼奈と同じくイベント会社勤務のサラリーマン。立ち位置的には礼奈の上司。
イケメンなのだが腐男子。エリートなのだが仕事以外では不器用でヘタレ
高槻朝海(22歳)
礼奈の二歳違いの妹。現役大学生。
浜井来戸(27歳)
朝霧の同僚で高校から一緒に居る。最近まで海外出張をしていた。
イケメンでチャラい。
「朝海ぃぃぃぃぃ大変じゃぁぁッぁぁぁ」
「姉ちゃんうるさい。ボリュームを蟻まで下げて。ついでに存在感も」
どうも、現在妹に凄まじい毒を吐かれている高槻礼奈24歳でございます。
そして何故、私がここまで叫んでいるのか。
それは、まさかのいつもお世話になっている小説投稿サイト様から最近書籍を出した期待の作者として特集を組むための取材が来たのです!!
「という訳で朝海も絵師様として取材を受けてください」
「顔とか映ったりするなら嫌だけど」
「無論、天才絵師朝海様に立ち絵を二人分作ってもらえば何も問題ありません」
「私の仕事量増やす気なんだねOK。断ってきて」
「やだぁぁぁっぁぁぁぁっぁぁぁっぁ。お願いだよぉぉぉぉぉ」
スライディング土下座からの足にすがりついて泣く。
もう、姉としての威厳なんていいんだ、そんなものとっくに捨てている。
「あー。もう!!うざったらしい。やればいいんでしょやれば」
「流石神様仏様朝海様!!」
「そういえば、編集者枠とかで朝霧さんに取材とかは来ないの?」
ギクゥ......
「朝霧さんは公認の編集者という訳じゃないし最近新規のプロジェクトのリーダーで忙しいから」
嘘は言ってないけど実はそういう人があったらお話伺いたいんですけど~って言われてたんだよねぇ......
ただ前回の壁ドン事件(詳しくは3話)の後パパッと何気ない顔で帰ったと思ったら話す間も無いし自分としても話しにくいから会話が......
「ふ~ん。まぁそれならいいけど」
何か謎の間がありましたよ朝海様。
察したみたいな雰囲気纏うのやめてくれ。
「とりあえず、取材の日には普段のルーティーンとか作品の思い付き方とかを聞くらしいから考えといてね」
「あいあいさー」
すぐ作業に戻ってるけど朝海よ、大丈夫なのか......
---
「いってきまーす」
「気を付けて行ってきてね~?」
毎回、私の姉は子ども扱いをしてくるくせに小説の事や面倒事となると私を頼ってくる。
本当にどうにかしてほしい。
たまにべらんめえ口調とか、どっかの方言とか出るし。
本当にどうにかならないものか。
「あれ、今日は不機嫌?」
私の顔を覗き込んでくるのは|牧《まき》。
同じ大学に通っていてたまに電車が同じになるからよく話しかけてくる。
「不機嫌ではない」
「まぁいつもぶあいそーだもんね」
「うるさい」
そもそも、この時期単位を取り終えて内定も決まってる人が多く大学には行かない人も多いのだけど私は一応聞いときたい講義があるから自主的に足を向けている。
ちなみに牧も見た目によらずその一人である。
「でも、牧講義まで時間あるでしょ。何するつもりだったの?」
「決まってるじゃーん。あの漫画カフェに行こうと思ってた」
牧が言う漫画カフェというのは漫画がたくさん置いてあるカフェで私達の行きつけ。
コーヒーゼリーが絶品なのは言わずもがななのです。
「考えることは同じって訳か」
「わーうれっし!」
そんな感じで牧は、はしゃいでいる訳だがここは電車内。
もう少し控えてほしいものです。
プシュー
電車が最寄りの駅についた事を知らせるアナウンスが流れる。
扉を二人でくぐり抜け目的の場所へと歩き出す。
「カッフェカフェ~」
「あんまり浮かれてると階段踏み外すからね?」
牧はドジな所がありそうだし私もいっしょに落っことされでもしたら堪ったものじゃない。
「その時はキャッチしてもらおっかな」
「あのねぇ......」
二人で他愛のない話をしているとすぐにカフェについた。
「いらっしゃいませ。あ、二人でしたか」
いつもイケボで挨拶してくれるマスターの雛さんが迎え入れてくれる。
「うーんやっぱり雛さんはイケボ!!」
「そうでしょうかね?」
苦笑しながら席に案内するそのしたたかさ。
どっかのチャラい会社員も見習ってほしい。
絵になる。ってか絵にしたい......
「牧さんはカフェオレにたっぷり卵サンド。朝海さんはオリジナルアイスティーにコーヒーゼリーですか?」
「流石、よくわかってます」
「あ、僕卵サンドからし入れてね!! 食べれるようになったから」
「本当ですか?牧さんの舌は子供ですから心配ですね......」
「ひどいぞ!」
雛さんに抱き着きながらこちょこちょしている牧。
仕事の邪魔になるからどかさないと
「ほら、届くの遅くなるから牧は漫画でも選んで来たら」
「朝海は何か見る?」
「私は仕事するから」
サッと鞄からアイパッドとペンを取り出す。
普段、ラフとか簡単な構想図は外出中に書く事が多い。
まぁ清書とか本番は家のパソコンで集中して書くのだけど
「あ、お姉さんの小説良かったよ!! 特に挿絵ともマッチしてたし~」
言うのが遅くなったけど牧も腐っている。
というか腐ってたから付き合いがあるわけだ。普段だったら絶対隣にいない。
「また趣味のお話ですか?」
「急にヒョコッと出てこないでください!!」
びっくりした。カウンター席だからアイパッドの画面を見られたかと思った。
「そうは言いましてもねぇ」
「ワタシハナニモカンケイナイアルヨ」
「ありまくりだろうがテメェ牧」
雛さんは笑いをこらえながらいつものを出してくれる。
「んまぁ。この濃厚な卵がおいしいんだよねぇ」
おやつの時間に軽食よりボリュームのあるサンドを食べれると思うけどそこが牧クオリティとして考えないようにしている。
さて、自分はコーヒーゼリーを堪能する。
苦味の中に豆の甘さがほんのり残ってとっても美味しいのだ。
やっぱりこのカフェでの作業には欠かせないと思う。
「あ、時間」
「ヤバいじゃん」
そんなこんなで三十分程自由時間を過ごしていたら講義の時間が迫っていた。
「雛さんありがと!」
「騒がしくてすみません。ありがとうございました」
「全然大丈夫ですよ。またのご来店お待ちしております」
最後のイケメンスマイルは心の中の素材ファイルにしまっておこう。
さて、講義まであと十分。
私達はカフェから飛び出して全力疾走していたのでした。
続
何でこんな短いんですかって?
色々とあるのよ......
お知らせというか謝罪というか
えーと、不穏な題名ですが大丈夫だよ?
まぁ改めまして作者の勿忘草(占ツクでは瀬夢)です。
何故こんなのを出しているかというと、まぁ作家でごはんというところにも私これ載せてたんですけどそれをやめますってだけです。
だから二週間に一回とかじゃなくても文字数少なくてよかったら更新するし逆に今まで大体8000文字で投稿してたのが2000~4000ぐらいになるかもって話です。
まぁそんなん知らねぇよって感じたと思うけどね。
一応そういうのでお知らせしときますって訳です。
ちなみに、作家でご飯の連載をやめるのは普通に評価というか感想が来ないって事ですね。
多分題名とかで敬遠されてる気がします。
まぁそういう訳なのでヨロシクデス。
BL小説キャラにした人が実は腐男子でした!!4(朝海日常編!!)
え~行く末が決まったので一応日常編として各メンバーの普段の様子を書いていくことにしました!
前々からこんな風に書こうとは思ってたんだけどいつ入れるか迷ってたからね☆
では本編どぞ~
「えー牧君、牧君?出席してないのかな......」
「遅れましたぁぁぁ」
窓から侵入していく牧を現在進行形で外の通路から目撃している高槻朝海こと私ですがどうしてこうなったかは3.8話的な立ち位置の本編っちゃぁ本編なんだがを見てください。
「よいしょ」
とりあえず私も時間が無いから窓から侵入するとしてとりあえず何事もなかったかのようにそこら辺に座っておこうかな。
「ちょちょちょっと高槻君も勝手に座らない」
「何ですか?」
私と牧の声がハモる。
「いや、窓から侵入しちゃぁダメだよね」
「どこでも窓ってあるじゃないですか!!あれから出てきたらたまたまここの窓と繋がってました」
どんな言い訳だよ。牧
「空想科学読本にありそうな話だなぁ......まぁ一応出席にしといてあげよう。牧君、君単位ヤバいんだからね」
あーそっか、コイツは単位ヤバいから来てるのか、あーそーだよねー。
普通そうだわー
「ありがとうございます教授ぅ......」
泣き真似気持ち悪いな。
「朝の牧場コンビじゃん」
「謎のコンビ名つけるなアホ。」
えーこの謎のコンビ名つけてるアホことアホ杉(高杉)は同じサークルのメンバーなだけです。以上
「そうだ、アホ杉」
「お前らこそいい加減人の名前を正しく呼ぶことを覚えようぜ」
「いやでーす」
さて、講義内容を聞くことに戻ろうか。
あのアホ達に構っていたらせっかく来た意味が無くなってしまう。
「えーであるしてーであるーしてー」
今日はハズレかもしれない。
面白い講義もあれば面白くない時もあるし正直そうなればネタ考え時間だな。
「アホ杉、ノート貸して!!忘れた」
「いや、お前何しに来たんだよ」
ここはアホ杉に同感。何しに来たんだ牧。
「あ、ペン忘れた。牧貸して」
「いや、何しに来たんだよテメェアホ杉」
このアホ達何のために抗議受けに来てるんだ......?(A.出席点で少しでも稼ぐ)
天の声がアンサー言ってた気がするけどまぁいいとしよう。
一応真ん中ぐらいの席取ったしあてられることは無いでしょu
「朝海君、先程説明したことを使ってこの問題を解いてくれるかな」
見事、フラグ回収しましたー(棒)
とりあえず、二人にはいつも恩を売ってるからたまには返してもらおう。
「あ、すみません。二人にノートとペン貸してたので講義内容聞き取れてませんでした」
「ノートとペンを忘れるってそこの二人は何しに来たんだかねぇ......」
(A,出席点で少しでも稼ぐたm(((((天の声よ、ちと黙れ
「まぁ、それなら仕方ない。そこの~」
グッジョブ私。ナイス回避
「朝海、次の出席取っといてね」
「高槻、俺は購買おごりで」
「事実を言ったまで、後君達借り返してないからチャラだよ。以上」
さて、次回のツイに上げるネタはどうしようか。
「おい、アホ杉修正テープを貸せ」
「ペン忘れたのに修正テープ持ってるわけ......あったわ」
あるんかい。そこは無いだろ普通......って姉ちゃんのせいでナチュラルにツッコミが体に染み込んでいる恐怖。
「おい、牧。間食しようぜ」
「アホ杉、お前ナイスだ」
牧、テメェたっぷりたまごサンド食べてたのにまだ食べる余裕あるのおかしいだろ。
「はい、没収。ちゃんと講義を聞きましょう」
後で講義終わったらゆっくり頂くか。
「無言だと思ったら次のネタノートに書きだしている人に言われたくないよ」
「..................無意識」
「腐女子こえぇぇっぇ」
「黙っとれアホ杉」
「そこ三人黙りなさい!!」
あー教授がめちゃくちゃ目の前で睨んでたー(棒)
ということで、講義がいつの間にか説教になっていましたとさチャンチャン
朝海は基本同い年と一緒だとこんな感じなんだけど周りに年上が多いだけです。
あーと、アホ杉君こと高杉君は腐男子ではなくBLに理解ある系一般男子です。
では今回の補足は以上、次回は会社員組第一弾朝霧君の日常編です!!
では、次回もお楽しみに~←いつになるとはいっていない
朝霧&来戸日常編!!的な的なテキーラ
よっしゃぁ!日常編第二弾です。
いや~~最近プロセカと他のサイトとかの方々の小説を見る時間が多くて書くのが遅くなってしまいました......本当に申し訳ない。
では、本編どうぞ!!
ー朝霧sideー
朝霧は困っていた。
--- 壁ドンをしてしまった ---
事故だがこの事実は消せないわけで、寝るにも起きるのにも会社へ行くにも憂鬱が付きまとう。
当の高槻には避けられているのか全く会わないがそれが余計に不安感を搔き立てる。
「あ”あ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁぁ朝何て来なければ......」
ベッドの上で体をうずくめるが遅刻するわけにはいかない。
そもそも、俺は編集者であって、会社の上司であって、そこまで悩む必要が......
セクハラという字が頭をかすめたが高槻がそんな解釈をするわけない。そう信じてさっさと準備を終わらせてしまう。
いつもと同じ電車に乗りいつもと同じ時刻に出社。
こういう、悩みが多すぎるときはひたすら仕事をして、疲れて自動的に寝る事を繰り返す。
そのうちにどうでも良くなってるのだ。
「朝霧先輩!! お茶をお持ちしましッ」
ガシャーン
俺の後輩の|金桐 爽汰《かなきり そうた》が俺へお茶を零した。
正確な状況を伝えるには『ぶっかけた』という言い方の方がいいかもしれないが。
「金桐......」
「あああすみません!!! 今すぐ拭いて、クリーニング代も出したほうがいいですよね。ど、どうしよう」
コイツはテンパりやすくてドジをしやすい。
資料作りなどのおおよその器量は良いのだが根本がやはり自分の事を見落としやすい方らしい、こんなことはしょっちゅうだ。
「そもそも、これが初めてじゃないだろう。大丈夫だから手元を見る癖をつけろ」
毎回思うが周りを見すぎて明らかなよそ見になってドジをしている様に見える。
自分の事にも集中してほしいものだ。
「は、はい......」
少し言い方がきつかったかも知れない。
金桐はシュンという背景効果がついて見えるぐらいにしょぼくれてしまってる。
ただ、声をかけても酷くなるだけだろうな......
「はぁ」
やっぱり悩みが多すぎる。
---
朝霧マンションにて
「ただいま我が家。パラダイス」
自分のマンションに帰ってきてやっと気を抜ける。
嫌いなヘタレで不器用な自分を唯一許せる場所。
タンタカタッタラッタッタタカタカタン♪
軽快な電子音がポケットから響く。
画面上に映されている名前を見て出たくなくなるが拒否すると後でもっと面倒くさい事になるのは目に見えている。
「何だ。|香代《かよ》」
『何だって不愛想ね。久しぶりに愛しのお姉ちゃんが電話かけてあげたのに』
「愛しでも何でもないし早く要件言ってくれないか?」
『アンタ。また見合い断ったのね。アンタが結婚しないと私が結婚しないといけないのよ!?』
耳が痛くなるようなキンキンした声にスマホを遠ざける。
「それは俺も同じだし暫く結婚するつもりはない」
『はぁ~。とにかく!! 次、見合い断ったら私がそっちに行くから』
「どうぞご自由に」
どうせ断ってもこっちに来るのだろう。
結婚は考えてないし、そもそも付き合うような女性も周りに少ない。
そもそも、今時見合い結婚なんて古すぎるだろ、せめて上司の紹介とかにさせてくれ。
文句を心の中で並べながらコンビニ飯をかきこむ。
体には悪いけど不器用な俺が料理なんてしたら悲惨なことになるのは目に見える。
「高槻は、良かった更新してるのか」
スマホで軽くBL小説をチェックしていると高槻の小説が目に入る。
一応、L〇NEに原稿が入っていたのはチェックしているし指摘が無いならOKということで出したのだろう。
でも、俺はじゃあ必要ないのでは?
そもそも今はこうやって避けられているし、正直勢いで言っちゃったけどメンドクサイな~とか思われているはず。
そもそも高槻の妹はしっかりしてそうだし編集者何て必要ないだろ、絶対。
ネガティブ思考に陥り、完全に面倒くさい奴になったころには疲れて寝てしまった。
そして
「あ”あ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁぁ朝何て来なければ」
こうなるわけだ。
朝霧日常編END
---
来戸side
来戸は大量の書類を抱えていた。
「小夜香ちゃーん。手伝ってくんね?」
「あ~すみません......彼氏とデート入っててその量は手伝えないかな~ごめんなさいッ」
(この前フラれた~とか言ってたのにまた彼氏できたのか......ってそんな事思ってる場合じゃねぇ。これ今日中に終わんないぞ。)
同じ係内を回ったがその中で手伝ってくれる候補は小夜香で最後。
そもそも、来戸がこのように資料を貯めるのはサボり癖故よくある事で誰も手伝おうとしないのは当たり前といえば当たり前なのだ。
それを自覚しながらも来戸という男は他人を頼ろうとするのに全力を惜しまないが。
「蓮~!! ちょっと資料整理すんの手伝ってく~んない?」
「は?俺も仕事あるんだから自分の分担ぐらい自分で捌け」
因みに、朝霧に限っては来戸のサボり癖をよーく理解している人物なので決して手伝おうとはしない。特別な事情がない限りは。
実はこの資料、来戸の後輩が突然育休を締め切り間際に取ったために溜まっているのだ。
しかも誰もその存在を認知しながらも手を付けない。そして締め切り当日、来戸に回ってきたわけだ。
(はぁ~マジでやるしかないか)
来戸はついにパソコンを前にして取り掛かる。
この男、海外出張をしていただけあって仕事はこなせる。
やる気を誰かに押されないと取り掛かれないだけで、人より出来る男なのだ。
(お、この調子なら定時までに終わるんじゃね~?)
段々と希望が見えてきたおかげで処理する速度が速くなる......が
やはり定時を過ぎ七時、八時となっても終わらない。
チラと廊下を見たが朝霧は定時時刻すぐに会社のエントランスへ降りている。
一人残り、パソコンと格闘するという寂しい時間を送る来戸。
「あ”-蓮の奴ひでぇよ......俺を残して定時で帰るなんてよ!!」
「誰が酷いって?」
来戸の後ろからドスの聞いた低音が降ってくる。
「蓮!! やっぱり来てくれたのか」
「久しぶりに飲んでやろうと思って下で待ってたのに全く来ないからな」
「で、手伝ってくれんの?」
「締め切り今日なんだろ。後輩の」
「全部バレてんのかよw」
「そんな事言ってる場合か。手を動かせ」
開いた自分のノートパソコンで作業を始める朝霧と来戸。
結局二人はなんだかんだいいコンビなのだ。
来戸日常編END
今回は二本立てです!!
朝海より短いし、詰め込んでしまってすみません......
ただ、言うと番外編みたいな立ち位置なのでこんな感じなんだ~みたいに見てもらえるといいです!
さて、次回は礼奈にフォーカスが戻ってきます。
日常編?に入るのかは分かりませんが本編がやっと進みますよ~
では次回もお楽しみに!
やっと本編進むって
えー二回ぐらい周って道草を食っていましたがやっと本編進みます!!
まぁ、後編からぐらいなんですけどね......
では、本編どーぞ!!
「うーん......」
皆様お久しぶり、高槻礼奈です。
今日は、朝海は友達とカフェに遊びに行ったので家に居ません。
有休を消化するために取ったはいいけど何もやることがない......
「よし、とりあえずヨガでもするか」
自分のベッドの上でなんとなくポーズをとってみる。
......暇だ。体感時間的には数分過ぎた気がするけどスマホを見ると一分も経っていない。
こういう時、ヲタクはどうするか。
答えは......
---
「やってきましたー!! ア〇メイト」
そう、ア〇メイトである。
ぬいぐるみからカード、ノート、ファイル、アクキー・アクスタ、ラノベ、漫画、同人誌まで何でもそろっているヲタクの聖地。
今日はちょっと足を延ばしていつも行っているところより大きめのメイトに来ました!!
とりあえず、物色しながら時間をつぶしますかね~
それにしても最近歌い手コーナーが増えた気がする。すと〇りとかいれ〇すとか。
「公式で犬耳がある!?」
そこは猫耳じゃないのかぁぁッぁぁあ。
......誰ですか?そっちかよって突っ込んだのは。
前半は一応私の日常編でもあるんだゾ?
チラッチラッといくつか棚を通り過ぎてヲタク......いや、腐女子の聖地に到着する。
BLコーナー!!!!!
「やはり天国ですわぁ」
思いっきり声に出たけど皆物色に集中してて気づいてないからOKということで。
それにしてもオメガバにサブドムにバース系も増えたなぁ~
いや~作者目線としても嬉しい限り。
いつの間にか手が三冊程の本で埋っていたことは言わなくても分かるはず。
とりあえずこのまま居たのでは金が溶けてしまうので即座に離れる。
次に来たのはぬいぐるみコーナー。このふわふわした雰囲気がたまらん!!
「おっっっっっっっ」
えー推しを発見いたしました。買います。
3000円?そんなんで臆してたら成人腐女子じゃねぇ!!(謝れ)
---
ということで、本日一日だけで1万使いました。
もう、明日給料日だし居酒屋行こ、あんまり酒飲んだらあれだけど、使い果たそ。
「こんちゃーす」
「お~礼奈ちゃん!!」
よく来る居酒屋兼定食屋『アサガオ』の看板娘のるりちゃんに迎え入れられました。
普段は定食屋の時に来るんだけどね。
「珍しいね~礼奈ちゃんが夜来るなんて」
「まぁまぁそれより、るりちゃん。シフトどんぐらい?」
メイトの戦果をチラッと見せながら聞く。
「よし、いますぐ上がりまーす」
「いってらっしゃーい」
反応が早いのはやっぱりヲタクならではなんだろうか......?
とりあえず、先に隅っこのテーブル席をとって注文でもしておこうかな~
「ヘイ、きやしたでぃ礼奈の旦那ぁ」
「旦那は草」
「それ。後、今団体の客きててちょっと注文の来るの遅くなるかもだって」
「戦果見るから大丈夫でーす」
「オケでーす」
まぁこの反応からも分かる通りるりちゃんも腐女子である。
因みに小説へ率直に意見を述べてくれる数少ない人でもある。
「よし、とりあえず大将~!生二つ」
「あいよッ」
ここの大将は気前が良いから好きなんだよなぁ。
さて、戦果戦果~。るりちゃんに漫画を一巻。私は小説を一冊読むことにしました。
あ、ブックカバーは掛かってるので大丈夫です。
「ヘイ。生二つだよ!!」
「センキュー!大将」
「こんなハゲタコに一々感謝なんて言わなくてもいいのに~」
「誰が、給料払ってやってるんだ!!この小るり娘が!」
会話内容はこんな感じだけど周りから見てとっても仲のいい上司と部下なんだよなぁ~。
うちの編集者ももう少し笑えばいいのに......。
いや、笑ったらそれはそれでホラー?
「ぷは~おいし~」
「あ、るりちゃん。私より先飲まないでよ」
急いで私も小説を脇に置いて飲む。久しぶりに飲んだけど意外と美味しいよね~。大学生の時はクッソまずかったけど。
チラッと横を見るともう一杯を飲み干して漫画を見るのに夢中になっているるりちゃんが居る。
な、なんて早い飲みっぷり!?ツマミ頼んでないのに......
「大将~生一つお代わり!!あとだし巻き卵と焼き鳥の皮二皿ずつ」
「めっちゃ頼むねぇるりちゃん」
「うん。だって礼奈ちゃんの奢りでしょ?」
おい、聞いてねぇぞ。私、奢りとは一言も言ってないぞ。BL漫画見せてるのに!??
「ほら~礼奈ちゃんも飲みなよ~」
「奢りじゃないからね!? 決して奢りではないよ!?」
あの~無視してビール飲みながら漫画見ないでください。
とりあえず飲んでツマミ食べよ。小説読も......
---
「朝霧君本当ごめんね。飲み会とかガラじゃないのに......」
現在、俺は正元課長他数人と飲み会という名の接待に居酒屋兼定食屋『アサガオ』に来ている。
普段、営業部でない俺は呼ばれないはずなのだが相手会社の女性社長の好みという事で駆り出されている。俺より来戸の方が適任な気がするのは俺だけなのだろうか。
「朝霧君はお酒飲まないの?」
噂の女性社長が俺に話しかけてくる。
「俺はそんなお酒得意じゃないしこの後車を運転しなきゃいけないので」
「あら、残念」
普通に引き下がってくれてよかった。
正直、お酒が得意じゃないのは本当なのだが車を運転うんぬんかんぬんは口から出まかせだからな。
取り敢えず早めに切り上げるきっかけでも欲しいもんだが。残業手当は出ないだろうし。
「正元部長、ちょっとお手洗い行ってきます」
「お願いだから!!先方さんが帰るまでは帰らないでよ!!」
正元課長が必死に手を掴んで言ってくる。課長も大変だよな......
ー
取り敢えずトイレは済ませたわけだがどうしようか。
因みに一応団体という事で貸し切りではないし、ちらほら客はいる。
一人で酒を飲んでいる者がいれば、恋人二人で酒を飲んでいたり、楽しそうだな。
カウンターに近い端の席を眺めると高槻がいた。
「あ、れんしゃーん!!」
「は?」
俺に気づいたのか高槻は寄って来た、が様子がおかしい。
呂律が回ってないし、酒臭いし、名前で呼ばれているし!?
「すみません、礼奈ちゃん!!」
高槻の連れか俺にすみませんと頭を下げている。
「い、いや」
「そうだよー!れんしゃんは私のしりあいだからさ~。ね~?」
「あ、あぁ」
肩に手を回しながら上機嫌で話しているんだがどんだけ高槻は酒飲んだんだ。
まぁ、テンションは変わってない気がするが。距離感がおかしいだけで......
「あの。知り合いなら礼奈ちゃん頼んでいいですか?」
「え」
「すみません!! ありがとうございまーす」
この状態の高槻を置いたまま行ってしまったのだが。
俺、一応仕事中なのだが。
「れんしゃん、お酒のまないんですかぁ?」
目、離した隙に酒飲んでるんだが。おい。
「高槻、それ以上酒飲むな」
これなら潰れられた方が楽……
「あれ?高槻君居たの?」
「ありぇ〜かちょうじゃないですか!」
「もう出来上がってるね……」
「俺じゃないですからね?」
「うん……」
「取り敢えず放って置けないし朝霧君送ってきたら?元々、接待乗り気じゃ無かったでしょ」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
取り敢えず、高槻の家……高槻の妹に電話するか。
「もしもし。姉ちゃんが何かしましたか?」
「酔いつぶれる直前になってる所発見して一緒に居た女性にヨロシク!!って頼まれた」
「はぁ......」
「とりあえず、家送りたいんだが」
「今、私居ないんですよね。結局友達の家に泊まることにしたので」
「じゃあどうすればいい?」
「朝霧さんの家にでも連れてけばいいんじゃないですか?」
「は!?」
「あ、私お風呂入らなきゃなので」
切れた。俺の家?
連れてったらほぼほぼなんか言われること確定だろう。
あーどうしろと!?
続
いやー。本当に本編出さな過ぎたので途中なんですけど許してください......
ファンレターくれたら早く出すんで!!
では~
ヲタク達のラブコメの世界へようこそ!!
こんにちは!!又は、こんばんは?おはようございます?
まぁどれでもいいのですが、勿忘草と申します。
今回はこんなヲタク達がただ現代でワチャワチャするラブコメの世界でも参加させていただいてありがたく思っています!!
では、初めての方は登場人物紹介からどうぞー
登場人物紹介
高槻礼奈(24歳)
イベント会社勤務のOL兼ケータイBL小説家。
上司の朝霧蓮が編集者。このシリーズの主人公。
朝霧蓮(27歳)
礼奈と同じくイベント会社勤務のサラリーマン。立ち位置的には礼奈の上司。
イケメンなのだが腐男子。エリートなのだが仕事以外では不器用でヘタレ
高槻朝海(22歳)
礼奈の二歳違いの妹。現役大学生。
浜井来戸(27歳)
朝霧の同僚で高校から一緒に居る。最近まで海外出張をしていた。
イケメンでチャラい。
---
「朝海~起きて~!」
どうも、高槻礼奈24歳。今日は朝からマンションの玄関掃除の当番です。
「言っておくけど当番は姉ちゃんでしょ。この前私だけでやった」
何かぼやいているけど無視無視。早めに終わらせちゃいたいしね~
早めに終わらせたい理由は今日は朝霧さん達とせっかくの休みだから遊ぼうって事だから。
箒にちりとりゴミ袋、トングを手に持ちいざ出発!
「まぁ、もともとが綺麗なんだけどね」
冬だから落ち葉も特にないしパパッと砂ぼこりを掃くだけで済みそう。
「とりあえず朝海はそっちの暗がりの方見といてくれない?」
「はーい」
棒読みでスタスタと歩いて行ってしまう。いつ見ても可愛げがない......
とりあえず数分箒で掃いていると瞬く間にロビー玄関は綺麗になる。
「やっぱ少し掃くだけでも違うな~」
遅いし朝海の前から出現して驚かそう!
ということで朝海が入ったほうとは反対方向からマンションを回っていく。
一個目の曲がり角に手が微妙に見える。朝海?
「おーい?朝海だったら返事しな」
返事がない。不愛想にも程があるぞ。
「おーい?」
呼びかけながら曲がり角を曲がって朝海と思ってた手の主を見る。
何か着流しに刀を腰にさしてるコスプレ民が倒れていた。
「......ぎゃぁぁっぁぁぁっぁコスプレ民のしたいいいいいい」
「うるっさ。俺は生きてる」
「ぎゃぁぁぁっぁあ死体が喋ったぁぁぁ」
しかも、足掴んでるよ!?やだやだ、ゾンビじゃん。私噛まれたくねぇよ?
「姉ちゃん、何かあったの......うるっさい声出して」
「死体!死体がぁぁぁ」
「だから、俺は生きて......」
「いや、その人生きてるじゃん......」
「だからゾンビなんだってぇ!」
「俺は生きてるしゾンビじゃない!!というか死ねない」
最後の方ボソッて言ったから聞こえないけどとりあえずゾンビじゃなかったらしい。
「とりあえず、立てる?」
「......」
立てないらしい。見たところ外傷はないけど。
「朝海ーそっち持って」
「はぁ......」
呆れながらもこの子持つのを手伝ってくれるのはちゃんとしてるよね。朝海
---
とりあえずあの姿で誰にも見られずに来れたのは幸いかな。
「よし、じゃあとりあえず」
私が最後まで言う前にギュウウウと大音量の空腹の音がした。
「とりあえず、朝ごはんにしようか」
私は苦笑しながら用意していた味噌汁とパンを温めて出す。
「こんな、テキトーなのしかなくてごめんね」
「いや、食べられるだけで......」
うん、とりあえずお腹が空いてただけなのかな。大丈夫そう
朝海はパパッと食べてもう片づけをしている。早いな!?
「とりあえず、名前は?君」
「俺は零」
零か~。カッコいい名前だな攻めにありそう。
「アンタの名前は」
「私は高槻礼奈。んでこっちが朝海」
自己紹介をしたものの何から聞こうかな......
「俺がなんであんな所に居たのか気になるんだろ」
「バレた?」
「分かりやすいな」
朝海とかにも言われるけどそうなのかな。
まぁ色々と省けるからいっか
「じゃあ説明してもらおうか」
「信じるとは思わないけど飯貰ったしな」
零君は簡潔に三つの事を教えてくれた。
・不死の病を患っている事
・世界を超える能力を持っていて(詳しく言うと瞬間移動の能力)一日はこの世界にいること。
・あそこで、倒れてたのは一週間何も食べてなかったから(というか行った世界で食べれそうな物が無かった)
まぁ、世の中何があるか分からないし。なんならBLの世界とか無かったのかな。
とりあえず、私の欲望は置いといてどうしようかな。
もうすぐしたら私達出なきゃいけないし......
「あ、零も一緒に遊ぶ?」
「あ、それいいじゃん朝海。よし、早速零君には着替えてもらって」
「は」
えーと、男子が着れそうな奴~。お、あったあった
「よし、その着流し脱いで」
「おい!!礼奈!?朝海!?」
とりあーえず脱がして、着させて。はい、かんせー。
「よし、出陣するぞー」
「はいはーい」
まぁ、大丈夫でしょ。零君!!
ということで、零君を連れてアニメ○トへレッツゴーする高槻姉妹なのでした。
---
アニメ○ト
電車をいくつか乗り継いでやってきましたアニメ○ト!
こういう現代的な世界来たことあるか分からないし何か言わないか心配だったけど零君は頭いいみたいなだな。それか、そんな興味ないのか......
それより、朝霧さんはどこかしら。
「あ、おーい! 礼奈ちゃん!朝海ちゃん!」
お、このびっくりマークが多いチャラ男は来戸さん。
「どもー」
「高槻達、来たか」
因みにこっちの無愛想マンは朝霧さんである。
こう見えてメンタル豆腐だから気をつけよう。
「あ、こちら零君。かくかくしかじかだからよろしく」
「は!?ちょ、人の事をペラペラと」
「この人達主要メンバーだから言っといたほうが楽なんだよ」
「うん。礼奈ちゃんメタイよ」
「これがジツフダクオリティーです。来戸さん」
「こいつらコラボで何やってるんだ」
社会人組がワチャワチャしてる隅で零君と朝海は何か喋ってるようで
「いつもあんな感じなのか?」
「あー、まぁね。通常運転」
「へー」
「やっぱり変だよね。社会人なのにさ」
「俺はあんま社会人ってのが分からないがあーゆうのもいいのかもな」
「やっぱり零もそう思うんだね」
「も、か。でも、平和な内しか出来ない事ってあるからな」
「ま、そだね。ただ、その前にツイとピクのログとか色々片付けないと......ハァ、遊んでる暇ないのにさ」
「なんか色々大変なんだな」
「いや、久しぶりに常識人と話で来たからそうでもない」
「誰が常識人じゃないって?」
なーんか朝海と零君話してると思ったらまるで私が常識人じゃないみたいに喋って......本当に悲しいよ。
まぁ、メイトはやっぱりヲタクの方が楽しいから、常人でも楽しめるところに変更しようか。
「さってと、やっぱり気分変わったしゲーセン行きませんか?」
「急だな」
朝霧さんは慣れてるのか、それとも構わないのかあまり困ったようなニュアンスが無い。
「ゲーセン、か」
「零行ったことある?」
何ですか。めちゃくちゃ仲いいじゃん朝海と零君。
「おーおー零君、ゲーセンで勝負しよーぜ!!」
「来戸ー見苦しいぞー」
朝霧さん。注意が棒読み過ぎませんか。
まぁ、来戸さんが零君にシューティングゲームでぼろ負けするのはまた別のお話なんだけど。
---
そろそろゆーやけこーやけーの歌が流れてきそうな夕焼け時に私達はゲーセンとメイトを回り終わりました。
「ふー遊んだ遊んだ」
「楽しかったな」
私は、朝霧さんに猫のぬいぐるみをゲーセンで取ってもらったのでとっても満足です。
因みに、
「なぁ、朝海。あの二人付き合ってるのか?」
「付き合ってないよ」
「じゃあ、幼馴染なのか?」
「編集者と作家って関係だよ」
「あれで付き合ってないのは初めて見たな」
「私もいまだにそう思う」
という会話が後ろの方で行われていたのは知らなかったのですがね。
そして、来戸さんが珍しくイイ感じの二人を放っておいたのも誰一人として知る由も無かったのですが......それは、語られないお話ということで!!
「あ、零君そろそろ移動できる時間?」
「そうだな。一応昨日から行き倒れてたから」
「そっか。常識人が離れるのは悲しいけどバイバイ」
朝海、何だその言い分は。
「大分短かったがまた、会えたらな」
「次、会えたら今度は譲らないからな!!」
「何をだよ」
「じゃあ、バイバイ!!」
私達は本当の最後に、また。とは言わなかった。
だって、それだけ長く生きるのは苦しいと思うから。
でも、せめて私達と会ったこの世界だけでは楽しいだけの世界であってほしいな~なんてガラでもないことを思ったのです。
To Be Continued......?
これからのジツフダと零君に期待!!
いやー、なかなかこういうコラボをしないからどういう風にしようかと大分迷って迷って迷いまくって書きましたww
うーん、零君が......大丈夫かな......常識人書かないから←大問題
では、この作品を呼んでもらうことでジツフダと零君をさらに好きになってもらえますように!!
感想はファンレターにお待ちしております!!
零君については生きる。さんの自主企画の方を見てもらえると......
https://tanpen.net/event/2a3cc4e5-e008-442e-a05f-763ee20b8eb9/
↑生きる。さんの自主企画。
では、おつわすれ~
自分のBL小説キャラにした人が実は腐男子でした!!7
いつの間にか本編七話まで言ってるのに驚きなジツフダシリーズ。
べ、別に失踪してたんじゃないんだからね!?
登場人物紹介
高槻礼奈(24歳)
イベント会社勤務のOL兼ケータイBL小説家。
上司の朝霧蓮が編集者。このシリーズの主人公。
朝霧蓮(27歳)
礼奈と同じくイベント会社勤務のサラリーマン。立ち位置的には礼奈の上司。
イケメンなのだが腐男子。エリートなのだが仕事以外では不器用でヘタレ
高槻朝海(22歳)
礼奈の二歳違いの妹。現役大学生。
浜井来戸(27歳)
朝霧の同僚で高校から一緒に居る。最近まで海外出張をしていた。
イケメンでチャラい。
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~前回のあらすじ~
居酒屋兼食堂『アサガオ』で、BLの戦果を看板娘のるり、と確認しながら酒を飲んでいた礼奈。同時刻頃朝霧も同じ店で接待をしていた。そして、礼奈が酔っ払い朝霧に付きまといなんやかんやで朝霧が礼奈をお持ち帰りすることになったのd((((((朝霧からのグーパンチ
---
取り敢えずあらすじの通り酔っぱらった高槻をどうにかしなきゃいけないわけだが、まずは高槻の状況を先に見てみよう。
「れーんーしゃーんーおさけのみたいれすー」
この状態だ。どんだけ飲ませたんだあの子。
呂律も回ってないし足もフラフラ。
取り敢えず看病しなきゃいけないのは分かるけど接待から離れるにはこの店から一刻も早く出なければいけない。
そもそも、何で今日に限って高槻の妹は家に居ないんだ。
そう考えてる隙にも高槻はふらふらどっか行って他の人に絡んで迷惑をかけそうな勢いだ。
しょうがない、俺は高槻が元気になるまで自分の部屋に入らない。これなら大丈夫だろう。
『アサガオ』を出て少し進んだ大通りでタクシーを呼ぶ。
「○○マンションまで」
「分かりました。ご乗車ください」
頼むから。タクシー内で変なことしないでくれよ。高槻。
俺はできるだけ高槻から離れて座る。
そんな俺の心配を察したか高槻は座席にもたれかかって寝たようだ。寝息が聞こえる。
外を見るとネオンが輝いている。実質一人になったような雰囲気に包まれながら家に着くのを待つ。
でも、さっきの高槻は可愛かったな......いや、俺も男だからな? こう思うのは普通な訳でな、って誰に弁解をしているんだろうか俺は。
大きく長めのため息を吐く。
そういえば高槻は何故俺なんかに構うのだろうか、別に俺は孤独になれている。
むしろ、学生時代の環境からしたら孤独の方が幾分も楽だった。
上司としてもいつか見かけた自分が思ったカッコよくて誰にでも尊敬されてでも、周りに人がいないそんなキャラを参考にして過ごした。
自分のミスを他人に見せたくない。自分の弱点を他人に知られたくない。
そんな自己肯定感の低くてただ高くなっただけのプライドを守る考えばっかりの自分だ。
それが悪いとも思わないけれど、そんな自分からしたら誰にでも好かれて優秀で、しかも自分の好きな事で必要とされる。
そんな高槻が俺には
--- 眩しかった ---
まぁ、羨ましいという気持ちはあるけどソレになりたい、という気持ちには不思議とならない。
自分がなれないと分かっているからかもしれないし、高槻がそれでも大変な想いをしているのを傍で見ているからかもしれない。
結局どっちでもいい。そもそも同じことを言う事になるがなろうとも今更思わない。
でも、そんな高槻を傍で見守って笑い合って時に悲しんで悩み合いたいという気持ちを持ってしまうのは駄目だろうか。
この感情に未だ俺は名前を付けることはできないが高槻を特別扱いしていることは間違いないだろうな。
そこまで思考を飛ばして苦笑する。
俺はそんな自分で自分の事を語るほうでは無いんだがな。悩むことはよくあるけど。
どちらにしろもうすぐ俺の家のマンションに着く。
マンションに着いたら高槻の介護をしなければ、早めに自分の荷物と高槻の周りの荷物を纏める。
「着きましたよ」
運転手が後ろを振り向いて俺達に告げる。
「ありがとうございました。会計はクレジットカードで」
おれは財布からクレジットカードを取り出して渡す。
処理をしてもらっている間に高槻を揺さぶる。
だけど、起きる気配はない。これは熟睡しているようだ。
「お連れ様起きないようですね......」
運転手は少し困っている表情と声音で言う。
「すみません。熟睡しているみたいで、このまま連れていきます」
俺はそう言ってから高槻のシートベルトを外す。
「お手伝いしなくても大丈夫ですか?」
「大丈夫です」
運転手にこれ以上迷惑をかける訳にもいかない。
それに酔った高槻を起こしてこれ以上俺に何かされるのも嫌だという理由もある。
「では、これで」
高槻を慎重に後部座席から引っ張り出しいわゆるお姫様抱っこをする。
鍛えているからこれぐらいは余裕だ。見た目より高槻は軽いし。
取り敢えず途中のエントランスは一回高槻を降ろして俺にもたれ掛けさせて片手で支えて片手で開ける。玄関も同じ方法で開ける。
「ただいま我が家」
誰もいないが、というか誰かいたら怖いが俺は自分の家に帰ってくるとそう呟くのが日課になってしまっている。
自分の部屋の扉を開けベッドに高槻を寝かせる俺は水を取ってこようと部屋を出る。
その時、部屋のぴんぽーんという呼び出しチャイムが鳴った。
来戸か? こんな夜中に迷惑だ。
悪態をつきながらドアを開ける。
その時俺は少しでも誰が来たか確認すべきだと改めて認識したのだった。
---
うぐ......頭が痛い。
私、高槻礼奈はいつもと違うベッドの感触に違和感を覚えながらお酒で頭痛がする頭を押さえて起き上がった。
電気が消えているから詳しいことは分からないけど自分の部屋ではない事だけ確かだ。
しかも、隣からは男と女の話し声が聞こえる。
男の声の方に聞き覚えがある......気がする。何しろ酒を飲んだ訳だし寝起きだし。
足元に気をつけながら手探りでドアを見つけて開ける。
もっとクリアに話し声が聞こえるようになって、しかも目の前に見慣れている人の姿を見つけて目を見開く。
「朝霧さん!?」
「高槻、早いお目覚めだな」
こっちの方を振り返ってそう言う。
目の前の大人っぽいまさに朝霧さんと釣り合いそうな女性にはノータッチ。
そっちの方がとても私には気になるんですが!?
いや、何でこんなマンションにいるのかも気になるけど。
「蓮、アンタお見合い散々断り散らかしてたのってその子がいるからなの」
少しヒステリックな音の高い声で朝霧さんに話しかける女性。
お見合い? この人はそのお見合い相手なのだろうか。だとしたらとんでもない誤解だ。
「あ、あのー」
誤解を解こうと女性に話しかけようとするがその声はまた放たれた女性の声に阻まれた。
「なーんだ、そんな事なら言いなさいよ!! もう。こんな良さそうな子がアンタの彼女なら安心だわ~」
......彼女。それ更にとんでもない誤解です。
当の朝霧さんは女性の話をうまく聞いているようで全部中身を流しているようだ。
私はどうすればいいんですか??!
途中の起こして、の字のこがかで大変な誤字になってしまったのは私だけの秘密です。
一応、この垢健全ですからね!????
自作二次程悲しい物はない
いや、ハイ。えっと本編書きます。書くんですけど待ってください。
いや、すみませんいや......ハハ......あのーあのーえーっとぉ、あのー作業通話したらどうにか頑張れる気がします(白目)
取り敢えずジツフダでお題メーカー使わせていただきました!!
https://shindanmaker.com/525269
あ、二次創作なのでメタメタありです。
そして、ホラゲーやったので脳死です。フリゲーのクオじゃねぇよ......
高槻礼奈と朝霧蓮
『どちらかが泣かないと入れない部屋』
「は?」
「何で来戸さんと朝霧さんじゃないんでしょうか......」
「未だに高槻はそれ言ってるのか。」
どうも、高槻礼奈です。
今回はクソ作者のせいで題名の通りどちらかが泣かないと入れない部屋に入れられてしまいました。
来戸さんと朝霧さんならいいネタになったのにあのKY作者め。
BL欲しいからって朝霧さんの後輩キャラ出してたのを私は知っていr(((((
まぁ、こういうわけで朝霧さんは苦笑しているのですが。
「おい、高槻。ここドアすらないらしいぞ」
「どんな薄い本の展開ですか。まだピーとかピーとかピーピーじゃないだけマシかもしれないですけど」
「高槻。思いっきり自主規制入ってる。一応この垢健全だからな」
私たちが慣れてしまった単語に規制がかけられるのを忘れていた私の発言にはほぼほぼ自主規制音がかけられてしまいました。
「そもそも、未だにこの垢健全でやってたんですね」
「それにはふかーいふかーいクs、作者のトラウマやらがあるらしいから触れないで上げてくれ」
朝霧さんが同情するとはとてもとてもヤバイ黒歴史かトラウマだったんだろうな、可哀想に。
「あ、何か紙が落ちてきました」
ー
朝霧。礼奈。君達は私のふかーいふかーいマリアナ海溝よりふかーい事情に触れた。
よって、この部屋から出る時間を三十分に設定させてもらうよ。
因みに三十分後に出れてなかったら一生自分の好きなBLに出会えない呪いを掛けさせてもらうからね☆
ー
「あんのクソ作者ぁぁぁぁぁぁぁッぁッぁあ」
「今だけは同意する」
今、あの作者は全世界の発酵食品、及び腐の民を敵に回した。
「ふぅー。朝霧さん私を今すぐ泣かせる方法考え付きました」
朝霧さんの耳に何をするかを小声で伝える。
「心を鬼にしてください」
「高槻がそれでいいならそれでいいが......」
朝霧さんは乗り気ではない様子。
私もこんなクソ作者のクソ企画に付き合わなければこんなこと頼むことなかったはずなんだけど。
「しょうがないな」
「腹をくくりましたか...頼みましたよ」
これには私達二人のこれからのライ腐が掛かっている!!
「おい、何で今日の原稿終わって無いんだ?こんなクソ作者のクソ企画に付き合ってる場合じゃないよな。クリスマスの時もその日ギリギリ。お前一応週一配信だよな?そんなペースでどうやっていくんだ。もうそれなら月一配信に切り替えろ毎週待ってる人たちに謝れ。おい。」
「すみませんでしたぁぁぁっぁぁあっぁぁ」
朝霧さんこと、とても厳しい編集者様のお言葉に涙が出てきたところでドアが出現、無事私達は脱出したのでした。
何か短くてごめんなさい☆
自分のBL小説キャラにした人が実は腐男子でした!!8
いや..........この礼奈が酔う話ここまで伸ばすはずじゃなかったんだけどなぁ。
まぁ、結果的には持っていきたいところに持ってけたのでオールオッケー!!
では、お楽しみください。
~あらすじ~
酔って朝霧のマンションで介護されてたら謎の女性がいて朝霧の彼女と間違えられてる。以上。
今週のジツフダはっじまっるよ~!!(あらすじだけでもふざけ倒したい)
---
とにかく、この女性が誰か確認してから誤解を解こう。そうしよう。
「あの、どちら様で?」
「あ、そうね。蓮がこんなかわいい子紹介しないから......。改めまして、蓮の姉でBL雑誌の編集長をしております|朝霧香代《あさぎりかよ》と申します」
ん?BL雑誌。聞き間違いかベーコンレタスサンドイッチ専門雑誌でもできたのかな?
それに、いつか聞いたことあるような気がする声と名前だ。
BL雑誌......何か引っかかる。
「あの、どうかされましたか?」
あ、香代さんが私の顔を覗き込んで心配している。
少し、考え事をしすぎたらしい。
「いえ、あの?何の雑誌の編集長をしているのかもう一度伺ってもいいでしょうか」
「えぇ、BL雑誌の編集長です。ボーイズラブ。」
あ、聞き間違いじゃなかったー。何、朝霧さんって兄弟そろって腐に染まってるの。
しかも、何当たり前ですよ、みたいな言い方。本当に兄弟なんだね!! 似てるよ!!
これは事実確認をする必要があるようだ。
「朝霧さん。少しお話が」
「どっちの朝霧ですか?」
すかさず香代さんが口をはさむ。
兄弟が揃うと苗字問題でめんどくさいことになるよね。
「蓮さんの方です」
「俺か?」
メンドクサイ。みたいな感じで返事をされる。
こっちが正直面倒くさいですよ。大問題ですよ。彼女と間違えられるなんて。
「香代さん少し失礼させていただきます」
朝霧さんの手を引いて少し離れた適当な部屋に入る。
「いやいやいやいや、何で否定しないんですか!?????」
意味が分からない。とてつもなく、IMIが、WAKARANAI。
仮にも朝霧さんイケメンじゃん。残念だけど。
自分でそんな認めるようなことしちゃ駄目よ。
いざとなったときに困るよ姉に見せたあの人は違いました。
自分は此方の人と結婚しますとかさぁ。困るよ!?
「......逆に否定する必要あるか?」
「what?」
否定する必要なんて私の中ではありまくりなんですが。
朝霧さん何を言っているのでしょう。
あんまりにも想定外な事おっしゃるから自分英語に全てを凝縮してしまいましたよ。
「俺は、家族に見合いに出るよう急かされてるんだよ。だけど、高槻が俺の彼女って体をしてくれたら見合いに出なくてもいい。否定するメリットより受け入れるメリットの方がでかい」
いや、私にとってのメリットは?
朝霧さん、今回ばかりは自分勝手ではないでしょうか.......。
「私にとってメリット無いですよね」
「デメリットも無いよな?」
ハイ、そうですね。ともならないんですよぉぉぉぉぉ。
いや、無いようなものだけど。ものだけども。何か、何かこうダメ!!
「そもそも俺達デートしてるし、高槻の家にも行ったし、家族とも面識あるし。付き合ってるようなものだろ」
....................そうですね!! そういえばそうでしたね!!
私達何かすごーいヤバイことしてることに今気づきましたよ。
「だとしてもですよ。だとしても、普通に遊びに行っただけじゃないですか。編集者と作家、上司と部下、それ以上でもそれ以下でも私の中では、無いんです」
朝霧さんが何故かいつもよりも無表情で感情が読めない。
いつもは、もう少し分かりやすいのに今は眉一つぴくりとも動かさない。
「高槻、俺の姉は確かにBL雑誌の編集長なんだがその雑誌に今度はなピヨ様が書き下ろしを出すそうだ。俺の条件を飲めばその書き下ろしもネームも見れる、しかもこれからの雑誌もボツになった企画もぜーんぶ見れる」
急に姉の事話し始めたと思ったら伝説のBL漫画家様の書き下ろしを見ることが出来るなんて.......クソ、酷い酷いぞ。ヲタクの特製を...........エリートのプレゼン力が憎い、とても憎い!!
「その、条件というのは......」
「俺の彼女という体で過ごす事。家族の前でそれをしてくれるだけでいい。外でそうするかは高槻に任せる」
それだけか......いや、それだけで十分問題だけど、でもはなピヨ様......はなピヨ様!!
でも、流石に長時間香代さん待たせても怪しまれるし、それにフリをするだけだったらいいか。
うん......私、今まで無理させたこともあったし......これは~そう、決して恋愛的な意味じゃない。
意味じゃないからね。大丈夫。ウン。大丈夫。
「分かりました。絶対見せてくださいね?」
「あぁ、嘘はつかない」
ドアを開けて先程のリビングに戻る。
「すみません。お酒が入ってたのとお姉さんがいるのを聞いていなかったので朝霧さんに聞いてました」
それっぽく取り繕っておく。これから、フリをするならこれぐらいフォローしておかないと。
というか、私に彼女のフリを頼むとかどんだけお見合い行きたくないの朝霧さん。
「はぁ、蓮は家族の事嫌ってる節があるから......というかお酒って事はもしかしてお楽しみの時間に押しかけちゃったかしら」
誤解に誤解が重なってく......どうやったら建て直せるんだろう。
小説だったらこのまま本当の関係になっちゃえば全部オッケーだけど現実なんだよなぁ。
「香代、あんまり高槻を困らせるな。取り敢えずこれで分かったろもう自分のホテル戻ってくれるか」
香代さんの言う通り嫌いなのか、苦手なのかさっきからイライラしてたけど今は余計声にも出ている。
「もー、しょうがないわね。本当にすみませんね。えと、高槻さん? 失礼しました」
香代さんは言ってる途中ながら朝霧さんに引っ張られて遠ざかっていく。
......今日の朝霧さん本当にどうしたんだろうな。
「高槻も今から送ってくから自分の家帰れるか?」
香代さんは外に既に追い出されたらしい。
私もそうだ。帰らないと。
「あ、ハイ。別に送らなくてもいいんですけど.....」
「もう、深夜だから送ったほうがいいだろ」
朝霧さんはそこら辺に置いてあったコートを掴んで家を出る準備をする。
正直、私もここがどこか分かってない辺り従ったほうがいいかもしれない。
鞄と、春先だから羽織って来た薄めのコートを手に持つ。
流石に春と言っても深夜は冷える。
ここまで遅くなるつもりじゃなかったからこのコートだけじゃ寒い。
朝霧さんが扉を閉めて鍵をしっかりとかけたのを見たらエレベーターが上がってくるのを待つ。
「そういえば、朝霧さん何でそんなにお見合い行きたくなかったんですか。良い人かもしれないのに」
夜の静けさに落ち着かなくて疑問をぶつけてみる。
面倒事に巻き込まれてあげるのだから少し位事情を知る余地はあると思う。
別に拒否されたらそれ以上聞きだすつもりもないし。
「お見合いって言っても行ったらほぼ強制なのは目に見えてる。相手はどっかの重鎮のお嬢様らしいし色々馬鹿騒ぎできる今の方が大切だと思ったからな。高槻の編集者もやめられないし」
こっちは相変わらず見ないで前を向いたままだけど答えてくれた。
いつにも増してぶっきらぼうだけど最後の方で何か思い出したのかふっと朝霧さんは笑った。
それが、少し嬉しくて私も笑ってしまう。
「何だよ」
「いや、やっと笑ったなって」
朝霧さん、笑った顔はいつもよりイケメンだからその顔を見せてくれるのが凄い嬉しいんだ。
ゲームのスチルを解放した時みたいな......。
「別に、いつも、高槻と一緒に居たら笑ってるだろ」
「確かに、そうですね。来戸さんとか面白いですもんね!」
そう考えると、朝霧さんがお見合いで結婚して、私達と一緒に居られなくなるのが嫌って気持ちも分かるな。
朝霧さんは来戸さんの事を思い出して嫌になったのかはぁ、ってわざとらしくため息をついてる。
来戸さんが可哀想だな。心の中で苦笑いする。
「今日、俺イライラしてただろ」
話が急に変わったけど、多分これって香代さんと一緒に居た時の事だろうな。
何かあったのかもしれないけど家族はやっぱり仲良くしてほしい。
「確かに、してましたけど。でも、来戸さんと一緒に居る時もそんな感じなので大丈夫ですよ」
ちょっと相手が違うだけでこんなにも周りの空気は違うのかと思うけど。
「それならよかった」
背伸びをして体の力を抜く朝霧さん。
多分、アサガオから朝霧さんの家までとか私の寝てる間の介護もしてただろうしそりゃ疲れたはずだ。
多分、この時間まで心配で起きてただろうし。
「ありがとうございました」
私は改めてお礼を言う。
「別に、酔った部下を介護するのは上司の仕事だろ」
面と向かって礼を言われて照れたのかそっぽを向かれる。
「あれ、私は彼女じゃないんですか~?」
少しからかってもみる。
「言ってほしかったのか?」
にやっと意地の悪い笑みを朝霧さんは向けてくる。
なんつーしっぺ返し!?
「いや、そんな訳じゃ、決して」
今度は私がしどろもどろになってそっぽを向く番だ。
「はぁ、いい年した大人が何をやってるんでしょうね」
正気に戻って呟く。
「別にいいだろ。今は誰もいないし」
確かに、楽しいしいっか。
「朝霧さんの彼女、いいかもしれない」
楽しいし。フリだし。私ももう少しでアラサーの仲間入りだけど親に何か言われそうにならなくなりそうだし。
「いや、高槻それ!?」
朝霧さんが珍しく驚いている。何があったんだろ。
「どうしました?」
「いや、俺の彼女いいかもしれないって言ったから」
「あ、いやフリですよ?フリ」
言葉に出てたか。危ない。変な誤解また重ねる所だった......
「まぁ、そうだよな」
朝霧さんはまたため息をついている。
「どうかしました?」
「いや、何でもない。大分歩いたけどもうそろそろだろ」
何か、凄い分かりやすく話題を変えられた気がする。まぁ、いっか、家には着いたし。
「じゃあ、また明日」
「ああ、また明日」
私は、朝霧さんと挨拶を交わして家の中に入って今日を終わらせた。