日常にスリルがありすぎて小さな幸せを求める女子高校生と、高校生当時日常が、暇すぎてスリルを求めていたアラフィフ女性のお話です
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目次
Prologue
今日は3ヶ月ぶりに友達と遊ばずに済む休日。
遊ぶのは楽しい。楽しいけど、イジリとか、SNSとかいろいろ、会ってる会ってない関係なしにある「いつでもどこでも繋がってる感」が私は得意じゃない。
その反動で、一切スマホを見ない日を作ってしまうほど。
その日だけはどれだけ友達が盛り上がっていようと一切触らない。
それで明日、詰め寄られたとしても「ごめん、寝てた」とでも言えばいい。それが私が学校で作ったキャラ。まぁ、時々しか使えない奥の手なんだけど。
いつもと違う服、髪型、メイク。この格好で歩くと、自分が主人公みたいに思える。そんな時間が私は大好き。
この前テレビで見たあのバンドのギターボーカルの女性の服が可愛かったなぁ、あんな服見つかるかな?なんて思いを馳せながら、お気に入りの古着屋へと足を進める。
「久しぶりじゃん、なんで最近来てくれなかったの、」
新シリーズ開幕しましたぁ!
どーでしょーか?コメントくれると嬉しいです!
間違えて次の回まで出ちゃってましたね!ゴメンナサイ!来週投稿し直しまーす
1
「久しぶりじゃん、なんで最近来てくれなかったの、」
そう話しかけてくれたのは古着屋の店長の女性。
「え…、覚えててくれたんですか?」
「そりゃ覚えてるよ。君くらいの年齢の子あんま来ないしね」
「っ!ありがとうございます」
いっつもは「みんなと同じ格好で見分けがつかない」なんて言われてるのに。こんなふうに覚えてもらえてて嬉しいな。
「前まで毎月来てくれてたのに最近来ないなぁって思ってたんだよ」
「えっと、ここ3ヶ月ぐらい、毎回休日に友達と遊んでて、それで中々来れなくて」
「ふーん、そうなんだ。じゃ、なんでそんな楽しくなさそーなの?」
「えっ、?」
思わずドキッとする。いつもニコニコな店長が今は、私の腹の中を探るような、そんな目で見てくる。
「普段の君より疲れた顔してる」
「えっと、その…」
どうしよう、なんて言おうとぐるぐる考えて居ると
「ま、別に言わなくても良いけどね」
そう言い、普段のニコニコな店長に戻った。
「あ、そうだ。君が今度来たら誘おうと思ってたんだけどさ」
そう言い、店長は私にスマホを向ける
「ここ、あたしの友達がやってる古着屋なんだけど、君の趣味に合いそうだなぁって。だから、良かったら一緒に行かない?」
「あっ!ここ行きたかったとこです!だけど、1人で入るの苦手で行けてなかったので、一緒に行きたいです!」
「ホント?じゃあ、行こ。今度いつ空いてんの?」
「えっと…今のところ再来週の土曜日なら1日中空いてます」
「おっけー、じゃあ、再来週の土曜の11時ね」
2
「まりー、明日遊べるよね?」
あー、やっぱそうだよね。この前の休み2週間前だもんな。
「何時頃?時間によってはムリかも」
「朝イチで夢の国〜。行ける?」
待ち合わせ場所に近いし大丈夫か。
「11時から予定あるから、それまでだったらいいよ〜」
「おっけー。じゃあ、後でまたLINEするね」
「はーい」
疲れた…。なんでせっかくの休日にこんな朝早くから出かけないといけないんだ。
なんて愚痴を吐きながら、あの古着屋へと向かう。
「あ、遅かったですか??」
「ううん、今来た時だし大丈夫だよ」
「良かったです!じゃあ、行きましょうか」
2人で歩き始める。
しばらく歩いていると、店長が声をかけてきた。「ねぇ、先にご飯食べてかない?あたしお腹空いてんだよね」
「いいですよ、私も朝から外で出てて、お腹空いてますし」
「やった。なんか食べれないもんある?あたし行きたいとこあってさぁ」
「何でも食べれるんで、どこでも大丈夫です!」
と話していると、おしゃれなカフェに着いた。
席につき、メニューを眺めていると、店長からの視線を感じる。
「どうかしました、?」
「今日、最初から思ってたんだけどさ、服いつもと違くない?」
私がいつも店長と会っているときは古着だけど、今日は量産型っぽい服を着ていた。
そりゃ、違和感に思うよね。
「えっと、今日友達と遊んでたんで」
「なんで、友達と遊ぶときはいつもと違う服着るの?」
この前と同じだ。私の中まで見透かされてるような気がする。
「だって、変だって言われるから。1回いつもみたいな服着てったら、『変だ』『可愛くない』って言われて」
「自分の趣味バカにする奴とまで仲良くしなきゃなんないの?今の高校生って大変だね〜。それより、名前教えてくんない?ずっと君って呼ぶの違和感あるし」
「えっ!?このままズケズケ聞いてって店長さんがズバッと解決!みたいな展開じゃないんですか??」
思わずそう聞く。だって私の周りの店長さんみたいな大人の女性に憧れてる人、もっとズケズケ、ゴチャゴチャ言ってくるから。
「何で好きでもないのに人の人間関係あたしが狭めなきゃなんないのよ。あたしは、なんでいつもと違う服着てんのか、なんで友達と遊ぶときはいつもと違う服着なきゃなんないのか、それが気になったから聞いた、それだけ。他のことにキョーミない」
そう言い切る姿を見てカッコいいな、そう思った。
私もいつかこんな大人な女性になりたい。
「あ、名前でしたね。茉莉花です。南茉莉花」
「へぇ、かわいい名前だね。『まりか』じゃなくて『まつりか』ってとことか。あたしそのセンス好き。ジャスミンから?」
親以外にそんな事始めて言われた。みんな「なんでわざわざ『まつりか』なの?『まりか』で良くない?」って言うのに。
私はこの名前、結構気に入ってたから嬉しいな。
「そうです、親がジャスミン好きで」
「いいねぇ、あたしも昔、娘が生まれたら『ジャスミン』って付けようと思ってたもん」
「さすがにそれはちょっとキラキラすぎません?『まりか』とか『まつりか』でジャスミン呼びとかで良いじゃないですか」
「天才じゃん。じゃあ、これから君のこと『ジャスミンちゃん』って呼ぶよ。あたしの名前は菫だよ
、清瀬菫。似合わないよね〜」
「素敵な名前じゃないですか。菫なら、ヴァイオレットさんですね。」
「50年弱生きてきて、初めて言われたなぁ。これからよろしくね、ジャスミンちゃん」
冒頭でも「まり」呼びしてる通り、ジャスミンちゃんの仲良しな子は「まつりか」って変なのぉ。って思ってるタイプですね。
ジャスミン、ヴァイオレット呼びを閃いたのはですね、弟が「特捜戦隊デカレンジャー」を見てたからですね。デカイエローが礼紋茉莉花っていう名前なんですけど、みんなに「ジャスミン」って呼ばれてるんですよ。
それ可愛いなぁ、使えないかなぁって思って。
3
あれから菫さん、もといヴァイオレットさんもといヴィオさんと会うようになってから早3ヶ月。2週間に1度ほどお茶をしたりしている。
あ、ヴィオさんっていうのはヴァイオレットの略。ヴィオさんが急に「ジャスミンちゃんはメンドーだから、ジャスちゃんだね〜」ってそう言われたから。だから私も略して呼ぶことにした。
もちろん同級生とも遊んでいる。同級生と遊んだあとに、ヴィオさんと遊ぶ日々。
前より忙しいはずなのに、疲れは少ない。ヴィオさんパワー凄いなぁ。
今日もヴィオさんと会うからいつもの場所で待ち合わせ。ヴィオさんはお店の2階にお家があるから、いつも待ち合わせはお店の前。
「こんにちは!」
「あ、やっほー、ジャスちゃん」
「行きましょー」
2人で歩いてると、ヴィオさんはふと思い出したように私に声を掛ける。
「あ、ジャスちゃんさ、いっつもあたしの家まで来てくれるけど、遠回りじゃない?」
「私がヴィオさんといっぱいお話したくてきてるだけなんで、全っ然問題ないです!」
「そっか、ならいっか」
今日は私が行きたかったお店に一緒に来てもらっている。
店内に入るとヴィオさんに「いいトコ知ってんじゃん」って褒めてもらえた。
席に着いてからしばらく談笑していると、ヴィオさんが急に
「ジャスちゃんジャスちゃん、今のJKにはさ、先生と付き合ってる人とか居ないの?」
とニヤニヤしながら聞いてくる。
「いないんじゃないですかね。1人にでもバレちゃったらすぐネットで拡散されちゃうし。でも、ロマンチックですよね〜!『禁断の恋!』みたいな」
と力説するとヴィオさんは「若いね〜!」と笑いながら、
「でもね、そんな良いもんじゃないよ。当時は気づかなかったけど、未成年、しかも生徒の女子に恋する男、気持ち悪いしね」
何て言う。まるで経験したかのように。
気になってしまったから、茶化したように聞いてみる。
「もしかして経験者なんですかぁ?」
「あるよ、3カ月で離婚したけどね」
なんて笑いながら言う。
「ホント漫画みたい!いいなぁあたしもそんな人生送ってみたぁい!」
「最初の頃はホントに好きだったんだけどなぁ。結婚してしばらく経つと現実が見えちゃったっていうか」
とどこか遠くを見つめながら話す。
「でもね、やっぱ楽しいのよ。スリルみたいな?誰にも会わないようにこっそり会えたかな、普段の学校での話し方でバレてないかなぁ、みたいな」
「経験者は語る…!ですね。スマホ無い時代いいなぁ。私もその時代のJKやりたぁい!!」
「それを言うならあたしだって今のJKみたいなのやってみたいなぁ」
そう言ったヴィオさんは少し考えたから口を開いた。
「じゃあ今度、ジャスちゃんが2日連続でまるまる空いてる土日に、1日かけてあたしの30年とか前の高校生活とジャスちゃんの現代の高校生活、やってみない?」
「何それ!?めちゃくちゃ楽しそう!やります!速攻で土日空けてきます!」
ここからが本編と言うかクライマックス的な感じですね。
予定通り行けば、あと2、3話で終わります!
まだ、書いてないけど…(5/10現在)
4
ヴィオさんから、「お互いの高校生活を再現してみないか」そう提案されてから早1ヶ月。
実現する日はついに明日!だから、何としてでも、遊びを断らないと。ヴィオさんだって信じてくれてるんだから。
「まり、土日なにする?」
グループのリーダー詩ちゃんが言う。
「ごめん!今回の土日予定あって…」
「最近ノリ悪くない?途中で抜けるとか、途中から来るとか、そういうのもムリなの?」
「今日の夜から泊まって日曜の夜か、月曜の朝イチに帰ってくるから…」
「誰なの?あたしたちが知ってる人?」
「ううん、知らない人、学校外の」
「なんで?週に数回会うか合わないヤツとあたしたちでなんであたしたちが負けるわけ?」
彩葉ちゃん、聖奈ちゃん、詩ちゃん。みんなが次々に質問してくる。
私に言ってくる言葉はしょうがない。だけど、詩ちゃんの、詩ちゃんの言葉だけは許せなかった。ヴィオさんを下げてるとも取れるその言葉だけは。
「なんで、みんなが一番じゃなきゃだめなの?」
「、は?だって、あたしたちが友達だからに決まってる」
「みんなと友達だったら、他に友達いたらダメなの?他の予定があっても、みんなとの遊びを最優先にしないとダメなの?そんなのまるで義務だよ。友達じゃない」
「、!なんで最初に言わないわけ?嫌だったら最初にやめればよかったんじゃん!あたしたちだけ悪者みたいに」
「それは…ごめん。私、小学校高学年の頃には友達いなかったから。友達と遊ぶ、みたいなことしたことなくて。服もメイクも全部自分を偽って。偽りの自分で友だちをつくる。それが普通だと思ってたの。だけどあの人は、ヴィオさんは、ダメだ、変だって言われてきた私も全部ひっくるめて仲良くしてくれて。そこで、これが『友達』ってやつなんだって」
…みんながキョトンとしている。そこで、私が言ったことの重大さに気づいた。
「っ!ごめん!」
思わず逃げてしまう。
でも、私言えたよ。少しはヴィオさんに近づけたかな?
好き嫌いが分かれそうな回だなぁと個人的には思ってます。
だって、あたしが言うのもあれですけど、今回のジャスちゃん、ちょっと自分勝手だもん。
でも、前までの空気読み過ぎのジャスちゃんよりは好きです。
今までのジャスちゃんに必要だったものは、「言いたいことはハッキリと言う、ある意味、空気の読めなさ」じゃないかなぁと思っています。
空気読みすぎて断れなかったり、生きづらいことが多かったジャスちゃんが、ヴィオさんと出会って、もうちょっと奔放に生きてもいいんじゃないかな。そう思えたんだとうれしく思います!
この回、最初の構想では無かったんですよ。
だけど、ジャスちゃんの成長的な部分書きたいなぁと思って。
蛇足じゃないことを願ってます…!笑
5
ピンポンパンポーン。
碧紗は友達がいないので、「女子高生 やること」と調べたことをご了承クダサイー。
「無事遊び断れました!」
そう連絡すると数分後、ヴィオさんから電話がかかってきた。
「もしもし、ヴィオさん?電話珍しいですね」
「今ジャスちゃんの高校の前にいるからさ、このまま一緒に行かないかなって。必要なものは大体あたしの家にあるし」
「ホントですか!?実は、早くヴィオさんに会いたいなぁと思ってて服とか朝カバンに入れてきたんです!校門の前ですか?今直ぐ行きまーす!」
ヴィオさんスパダリ過ぎる…!
こんなに土日が楽しみなの久しぶり!思い切り楽しむぞー!
---
「…ゔぅん」
目が覚めるといつもと違う部屋。
なんでだろう、そうかんがえるのもめんどうくさくてボーっとしていると、部屋の扉が開く。
「あ、ジャスちゃん起きたんだ。おはよー。朝ごはんできてるけど、もう食べれる?」
「おはようございますぅ…。ご飯!?今すぐ食べれます!」
朝からヴィオさんの手作りごはんが食べられるなんて幸せ…!
朝ごはんのメニューは白米と鮭とお味噌汁。
こんなしっかり食べたのいつぶりかな〜。
「和食で良かった?あたしいっつも朝はこんな感じなんだよね〜」
「和食大好きです!ご飯おかわりしても良いですか?」
「いいよ、いっぱい食べな」
「やった、ありがとうございます!」
しばらく食べているとヴィオさんが口を開く。
「今日どこ行くの?」
「夢の国でも行こうかなぁって。ヴィオさんに着てほしい服持ってきたんですけど、着てくれますか?」
「いいよー、ジャスちゃんのお気に召すままに」
「んーと、まず何からすればいいの?」
「とりあえずカチューシャとか買います?」
「そうしよっか」
「じゃあ、おそろいの色違いにしません?」
「いいよ、じゃあジャスちゃんいい感じの見繕ってきて〜」
「はーい!めちゃくちゃかわいいの買ってきますね!」
「よろしくー、あジャスちゃんそれしばらくかかる?」
「そうですね…15分とかかかっちゃうかも…大丈夫ですか?」
「全然大丈夫!ゆっくり選んできてー」
どっれにしよぉかなぁ。ヴィオさんの今日の服ネイビー系だから、ピンク可愛いかな?
だったら私はネイビー系?
そんなこんな考えていると、結局20分近くかかってしまった…。
ヴィオさんに似合うんだろうなぁとウキウキで戻る。
「ヴィオさーん!」
「ジャスちゃん。ありがとー。あ、ポップコーン食べる?」
「良いんですか?やったぁ」
「良いも何もジャスちゃんのために買ってきたんだし。15分ぐらいかかる〜って言ってたから、さっき通ったとこで買ってきた」
「…イケメンすぎでは?」
「よく言われまーす」
それからジェットコースター、シューティングゲームなどたくさん遊び、今はパレードを見ている。
「この後何すんの?結構遊んだけどまだお昼すぎじゃん?ご飯も食べてないし。でももうこの人混みはヤだなぁ」
「どーします?じゃあ、ピクニックしません??ヴィオさん家にレジャーシートあります?でっかいの!」
「あるある!お弁当とかつくる?」
「いいですね!朝のご飯まだ残ってたんで、おにぎりつくりましょ!具は何が良いかなぁ、唐揚げマヨとかどうです?」
「おいしそう!どっちも家あるしすぐ出来るよ」
「じゃあ、あとは卵焼きとウインナーですかね?あ、タコさんウインナーとかつくっちゃいます?」
「ジャスちゃんタコさんウインナーつくれんの?すごいねー。じゃあ、あたしがおにぎりのほうつくるよ」
「ありがとうございます!やった、ヴィオさんの手づくりおにぎり〜!」
「おにぎりおいしぃ!唐揚げマヨ最高すぎません!?」
「ホントだ、おいしー。今度家でも作ろ」
「外で食べるご飯もいいですね!」
「たまにはこういうのもいいね。今度は花見かなぁ」
これからも仲良い前提で話してくれるの、嬉しいなぁ。
「あ、ジャスちゃんバドミントンできる?家にあったから持ってきたんだよねー」
「やりましょやりましょ!久しぶりだけどできるかな?」
「大丈夫だよ、あたしウン10年ぶりだし」
パーンパーンとシャトルを打ちながら話す。
「ジャスちゃんはさ、将来とかもう決めてんの?」
「服に関わる仕事したいなぁって思ってて。だから、卒業後は服飾の専門行くつもりです」
「服飾かぁ、あたしの友達で服飾から走り出しスタイリストなった子居るなぁ」
「ホントですか!私もスタイリストとかそっちの道進みたいんですよね〜」
「いいじゃん、頑張れ」
2人の会話が止まると、様子をうかがっていたであろう女のコ話しかけてきた。
「お姉ちゃん、バドミントンかーして」
幼稚園ぐらいの女のコが声をかけてきた。少し後ろの方で不安そうにしてるのはお兄ちゃんかな?
「ヴィオさん、良いですか?」
「いいよー」
そう言い、女のコの方に向かうと、目線を合わせて話し出す。
「あたしたち、あそこ座ってるから。終わったら返しに来てね」
頭をポンとしてから戻る。
バドミントンをしているあの子達を見ながら2人で話す。
「まだ言っても16時過ぎなんだねー、これからどっか行く?帰る?」
朝から一緒に居るからもう12時間とか?全然辛くない、疲れない。むしろ楽しいってヴィオさん凄いなぁ。
「ホントですね〜、どうします?海とか行っちゃいます?」
普段だったら帰る1択なのにヴィオさんとだと、やりたいことがドンドン出てくる。
「いいね!電車?家戻ったらバイクあるけど後ろ乗る?」
「バイク運転できるんですか!?カッコいい!あ、でもバイク乗る女子高生そうそう居ないかも…」
「そっか、乗らないかぁ。あたしたちはバイクの後ろ乗りまくってたんだけどねー」
「いいなぁ。あ!じゃあ明日いっぱい乗せてください!私後ろで歌うんで!あ、それは自転車?」
「この長い長い下り坂を?」
「そうですそうです」
しょーもないことで笑い合う。めっちゃ楽しい。
その後あの子達…(紗絢ちゃんと隼人くんといって年の離れた幼馴染らしい)からバドミントンを受け取ったので、2人で電車に乗る。
「映画とかでさぁ、車両にあたしたちだけ!みたいなのあるけど、そうそうないよねー」
「確かに、いつ乗ってもいっぱいいますねー。凄い朝とかだったら少ないんですかね?」
「朝は少ないかもだけど、始発街の酔っぱらいとか居るんじゃない?それはそれでヤダ」
「そっかぁ、治安悪いかぁ」
「海だぁぁあ!!」
海に向かって走る。
「何すんの?水遊び?まだ冬だよ?」
ヴィオさんはそう言いながら私の後ろを歩いて追いかけてくる。
「…何するか考えるの忘れてました」
「あははっ!ジャスちゃんらしいや」
「ヴィオさんと海行けるのが嬉しくって…あ!私やりたいことあります!」
必死に記憶の中の海を辿るとあるドラマのオープニングを思い出した。
「えーっと、スマホ立てるの…私のカバンでいっか。あとは…せっかく出し裸足になりましょ!」
ヴィオさんは何が何やら分からないという表情で靴下を脱いでいる。
あ、私に何も説明してなかったんだ。
「私たちは今から…跳びます!」
「へ、とぶ!?」
想定外だったらしく、「飛ぶ、跳ぶ、翔ぶ?」と考えている。
慌ててスマホを開き、その動画を見せる。
「これです!これがやりたくて」
「おっけー、右?左?」
「あ、じゃあ私右やってもいいですか?」
「はーい」
動画のスタートボタンを押す。
スマホの後ろから走り出して、「せーの」の合図でジャンプする。
「疲れたぁ!」
帰り道に背中を伸ばしながらヴィオさんが言う。
「1日中動きましたもんね。帰ったらお風呂入ってすぐ寝ましょー!」
「そーしよそーしよー」
人とこんなに話できる日が来ると思わなかったなぁ。
明日も楽しみ。
大分長かったですね〜。
最後まで読んでくださってありがとうございます!
あと、2話で完結予定です!
最後まで楽しみにしててください!
(あ、でもハードルはあんましあげないでね)
ファンレターもくれたら嬉しいです!
6
とある映画のネタバレ、というか内容に触れるシーンがあります。
ピピピピ。ピピピピ。
昨日の夜セットしておいた午前くじのアラームが鳴る。
寝る前に冷蔵庫はすぐにいじっていいって言ってもらえたから、今日は私が朝食を作るんだ!
冷蔵庫の中には…卵、ウインナーあるし、昨日は和食だったから今日は洋食な感じにしよう!
トーストと、スクランブルエッグとウインナーを焼く。
お気に入りのバンドの曲をイヤホンで聴きながらウキウキで料理をしていると、後ろからトンと肩を叩かれる。思わずビクッ!としながら後ろを振り返ると、まだ眠そうにしているヴィオさんが居た。
「あ、ヴィオさん!おはようございます!今日は私がご飯作ったんですよ?ヴィオさんもう食べれます?」
そう聞くと、目をこすりながらヴィオさんが答える。
「おはよー。うん、もう食べれるよ。ジャスちゃんありがと」
「ヴィオさん、今日はどこに行くんですか?」
ご飯を食べながら聞いてみる。
「バイク後ろ乗りたいんでしょ?だから昼前ぐらいに出て、ご飯食べて。そっからジャスちゃんに見せたい映画あるからレンタルビデオ屋に借りに行って、その映画見たらジャスちゃんやりたくなることがあると思うから、それやりに行く」
「やった!バイクいっぱい乗れるんですね!あ、でも映画ってサブスクとかで見れないやつなんですか?」
そう聞くと、ヴィオさんはにやりと笑い言う。
「ジャスちゃんわかってないねー。ジャスちゃんもサブスクで聴けるのに好きなバンドのCD買うし借りるでしょ?それと一緒だよ。物があるのがいいの」
「なるほど!確かに私CDは買うなぁ」
「ジャスちゃんジャスちゃん!あたしが昔着てたワンピースあるんだけど着る?」
着替えようとしていると、ひょっこりと顔だけだしたヴィオさんが言う。
「ホントですか!?やった!どんなのですか??」
そう聞くと、ジャジャーンと効果音を言いながらそのワンピースを見せてくれる。
「…めっちゃ可愛い…!」
そのワンピースはショッキングピンクなタイトなロングワンピースで右側には膝のあたりからスリットが入っている。
「ほんとに可愛い…!ほんとに私が着てもいいんですか??」
「いいよいいよ。なんならあげるし」
あっけらかんとびっくりするようなことを口にする。
「ありがたく受け取らせていただきます…!」
「ジャジャーン!どうです?似合ってます??」
ヴィオさんにもらった服を着た姿を見せる。
「いいじゃん、かわいい。似合ってるよ」
そう言うと私は通り過ぎ押し入れを開けて、小さめの段ボールを取り出す。
「たぶん私がそのワンピースと一緒に合わせてた靴。ジャスちゃんサイズ合う?」
そう言われ箱を覗くと、そこには綺麗な漆黒のハイヒールだった。
「…キレイ。これ、履いてみても良いですか?」
聞くと「いいよ」と返事が返ってきたので、ハイヒールの上に足を下ろす。
「あ、ピッタリっぽいね。今日履く?」
「履きます!嬉しいなぁ、ありがとうございます!」
「気に入ってくれて良かったよ。靴もあげるからワンピースと一緒に使いな」
「…ヴィオさんって神様でしたっけ?」
「バイク最高ー!私も免許取ろっかなぁ!」
「いいじゃん、それだったらバイク買うとき付き合うよ」
「ほんとですか?やったー!夏休みにでも教習所行こっかなぁ」
初めてのバイクの乗り心地は最高で、冬の冷たい風が気持ちよかった。
「ヴィオさん何借りるんですか?」
気になったので聞いてみると、ヴィオさんは少し口角を上げ口元に人差し指を近づけて「ヒミツー!」と笑う。
「ちぇ、何だヒミツかぁ」
「見てからのお楽しみにしてて。ジャスちゃんは好きなとこ見てきな」
「はーい!」
家に戻り、買ってきたポップコーンを食べながら映画を見る。
その映画は自分の恋人にいじめられているゲイの男のコを助けたことで彼のヒミツの宝物…河原に放置された死体の存在を教えてもらう。主人公、ゲイの彼、そして二人の後輩でモデルの女のコの3人で秘密を共有し、歪んだ絆で結ばれていく…という話だった。
映画の公開は最近だけど、原作の漫画は90年代で、ヴィオさんはすごく好きだったらしい。
最後まで見終わったが、言葉では言い表せないし、何かもわからない、得体も知れない傷を心に残されるような、そんな映画だった。
この傷の正体を解明したい、どうすればいいだろうと考えているとあることを思いつく。
「ヴィオさん、私…」
そう言いかけるとヴィオさんは「ちょっと待って!」と遮り口を開く。
「『河原に行きたい!』でしょ?」
そう言い、ニヤリと笑う。
「なんでわかったんですか!?」
ビックリして聞いてみる。
「だってあたしもこれ漫画で読んだとき、河原言って死体探したもん」
と笑う。
「せっかくだし服着替えよー。どうせならあの世界観に浸りたいっしょ。服ならいっぱいあるからさぁ」
「流石古着屋さん…!」
ヴィオさんは緑のシャツの上にグレーのパーカーを着て、ボトムスは膝下までの丈のデニム。
私はポンチョのような形の赤いチェックの上着と、ベージュのショートパンツに黒タイツという格好。
「かわいい!」
「似合ってる、それもあげるよ。あ、荷物全部持って。家よって荷物置いてから行こうよ。一回ここ戻るの遠回りだしさ」
「はーい!」
「河原!河原!死体あるっかな!」
家に荷物を置いたあと、歌いながら歩いていると、ヴィオさんが笑いながら言う。
「そんなに楽しそうにしたい探すの、サイコパスかジャスちゃんかの2択だよ」
「えぇ、2択ですかぁ?」
しばらく2人でセイタカアワダチソウの中をかき分けるが、死体も、他にワクワクするものも見つからなかった。
2人で地べたに寝っ転がりながら話す。
「結局見当たらなかったなぁ、死体」
「まぁ、早々ないだろーね―。それに今の時代じゃなおさら」
「今の時代じゃ?どういうことです??」
気になったので聞いてみる。
「なんか、そんな本読んだんだよね。あのお話がこの時代にあったらってやつ。途中までの話はおんなじなんだけど、最後焼身自殺した女のコいたじゃん?あの子が二人の浮気を疑ったとき、あとつけて、死体見つけて。SNSに投稿しちゃって。それで撤去されるーみたいな。ロマンもクソも無いねー」
「スマホがあるせいで、か」
「だろーね。便利になったけど、そのせいで居場所を失った子も居たのかもねー」
そんな話をしていると、時間が夜だったということもあり、視界が狭くなってくる。そこで私の記憶はなくなった。
明るい光が瞼に差し込んできて目が覚める。
そこにはもう、ヴィオさんは居なかった。
あの映画、「リバーズ・エッジ」ですね。
あたしまだ15歳なってないので、映画見れて無くて漫画だけなんですけど。
面白いので見てみてください!
このお話もあと1話で完結です!
最後まで楽しんでってください!
Epilogue
あれから1年が過ぎ、私は高校を卒業した。
あの一件から詩ちゃん達とは少し疎遠になっちゃったけど、それはそれで楽しい日々を送っている。やっぱり私は、1人でいるのが性に合うらしい。
あの日は朝1人で家に帰ると、親に泣きながら怒られ、一発ぶたれた。
赤く腫れた頬のまま、制服を着て家を出て、学校に向かったけどやっぱり行く気になれなくて、電車に揺られてひたすら往復していた。
1年経ってもヴィオさんのことを忘れられていない。
二人で過ごしたあの日々が、どうしても、忘れられない。
あの日ヴィオさんがくれた服は、部屋の奥底にしまっている。
時々部屋の中で1人で着たりしていたけれど、最近は受験とかで忙しかったから、見るのも着るのも半年ぶり。
ショッキングピンクのワンピースに腕を通す。その瞬間、そっとあの日を思い出す。
あの時はあれでおしまいなんて考えもしなかったなぁ。
河原のセイタカアワダチソウをかき分ける。流石に危ないからハイヒールは黒スニーカーに履き替えて。
でも結局今回も見つからなかった。今日でここに来るの最後にしようと思ってたのに。まぁ2回しか来たことないけど。
綺麗なワンピースで地べたに寝転がるなんて背徳感、とか馬鹿なことを考えていると、顔に影が差す。
上を見上げると、懐かしい人が居た。
逆光ではっきり顔が見えるわけではないけど、あの時みたいな可愛い洋服、立ち姿。何回も思い出す、記憶通り。
「…ヴィオさん、?な、んで…」
そう言うと彼女はしゃがみ、私の目を見ると、ニコっと笑って口を開いた。
「ジャスちゃん、花見行こ」
ついに完結いたしましたぁ!
初完結!
「息がしやすい場所」ももう少しで完結します!
最初は5話完結のはずだったんですけど、思ったより長くなりましたね笑
補足、というかなんですけど、ジャスちゃんはヴィオさんに常に憧れを抱いていて「私もそうなりたい!」って思っていますが、たぶんそれだけじゃないと思うんです。
例えば恋心とか。
別に、女のコが好きだから、とかじゃなくて、人間として?でも、likeじゃなくてloveっていうか…。
もう言語化難しい!!
なんか、そういうものを感じてくれたら嬉しいです!
最後に!
読んでくださった方への気持ちはやっぱり手書きかなぁと思い、したためてみました!
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