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目次
最後の流星
高尾山の頂上で、百合は星を待っていた。 ――“流星が落ちるとき、願いを唱えれば、その願いは叶う” 祖母が幼い頃に語ってくれた、古い伝承。百合はそれを半信半疑のまま、今夜に賭けていた。
その願いとはただひとつ。 亡くなった弟・蒼を、もう一度だけ抱きしめたい――。
夜十時を過ぎても星空は曇っていた。気温は下がり、彼女の頬は冷え切っていた。 「やっぱり、信じても意味ないのかもね」 呟いた直後、不意に雲が割れ、夜空が開ける。ひと筋、空を裂くように光が走った。
百合は反射的に叫んだ。 「蒼に会いたい!」
流星は彼女の願いを受け止めるかのように、静かに闇へと消えていった。
数秒の沈黙――そして、目の前に、小さな影が現れた。 白いパーカーにジーパン。見覚えのある後ろ姿。
「……蒼?」
少年は振り返った。その顔は間違いなく、彼女の弟だった。 「お姉ちゃん。お別れを言いに来たんだ」
百合の目に涙が滲んだ。「会いたかったよ……!」
二人は言葉少なに肩を寄せた。冷たい空気の中でも、その温もりは確かだった。
「願いは叶ったんだね」 そう言い残して、少年はゆっくりと霧のように消えていった。
残された百合は静かに空を見上げた。雲がまた広がり、夜空を覆っていく。
そして、ひとつだけ確かになったことがあった。 それは“奇跡は、信じた者にしか訪れない”ということ。
これからは一話完結を書いていこうかなと思います
封筒の中の真実
午後三時。 三鷹駅前のカフェで、冴子は一枚の茶封筒を見つめていた。差出人不明、宛名はただ一言――「あなたへ」。
彼女が封を開けると、中には一枚の写真と短いメモが入っていた。
“真実はこの中にある。今夜0時、井の頭公園。”
写真には見覚えのある男が写っていた。 元恋人、拓也。 しかし彼は三年前、自殺したはずだった。
冴子は動揺した。何かがおかしい。拓也が死んだ夜――彼の部屋から戻ったとき、彼女は確かに遺書を見つけた。警察も事故死と断定したはずだ。
そして今夜、彼女は恐怖と好奇心に駆られて井の頭公園へと向かう。 静まり返った池のほとりに、一人の男が立っていた。
「……冴子か?」
その声は確かに拓也のものだった。 だが、目の前にいたのは彼と瓜二つの別人。いや、まるで別の人格を持った拓也のようだった。
「俺は…あの夜、殺されかけた。でも、死ななかった。全部偽装だったんだ」 男は封筒の送り主であり、自分の死の真相を語り始めた。
裏切り、金、脅迫。そして冴子が無意識に巻き込まれていた“ある計画”。 彼女の世界が音を立てて崩れていく。
最後に男はこう言った。 「この写真と証言を、警察に持っていけ。今度こそ、すべて終わらせるために」
彼女は写真を手に、夜の闇へと消えていった。
そして――翌朝、ニュースには「三年前の自殺事件に新展開」と報じられていた。
なに書けばいいんだろう?
感情シミュレーター
西暦2042年。 東京はAIと人間が共生する都市として世界をリードしていた。人々の生活はほとんどが人工知能に支えられているが、「感情」は依然として人間だけの領域とされていた。
そんな中、“エモトロン”と呼ばれる新技術が話題を呼んでいた。 それは人の感情をデータ化し、再現する装置――いわば“感情の録音機”。
開発者である青年・真一は、ある目的のためにこの技術を完成させた。
それは、亡き恋人・楓の「感情」を再生すること。
彼女が最期に何を感じ、何を思っていたのか。 それを知るために、真一は彼女の部屋に残されていた旧式のエモトロンを起動した。
そこには、彼女の感情の断片が記録されていた。
“さようなら。でも、あなたと過ごした時間だけは永遠に生きる。”
彼は涙を流した。 感情は記憶となり、記憶はいつしか希望になる。
それ以来、真一は「人を癒すための感情再生技術」を社会に広めることを決意した。
SFはただの空想じゃない。 それは人間の痛みや愛を、未来に伝えるための手段なのかもしれない――。
最近気づいたsfってサイエンスフィクションなんですね
鍵のない宝箱
港町ヴァレリア。霧に包まれたこの町に、ひとりの青年が降り立った。名はレン。職業は“探し屋”――つまり、どんな依頼でも探し出すことを生業としていた。
今回の依頼は風変わりだった。
「鍵のない宝箱を探してほしい」 依頼人は白髪の老紳士。報酬は高額、だが説明は曖昧だった。
「宝箱はこの町の“どこか”にある。鍵がないのに、開く方法があるそうだ」
レンは町を歩き回り、伝承や古い地図を調べ始めた。 そして、ある古書店で奇妙な地図を見つける。地図は“風を読め”と記されていた。
風を読む――それは潮風の流れ、海鳴りの音の先に“鍵のない宝箱”があるという意味だった。
彼は夜の海岸に立ち、風に導かれるまま崖を登る。すると、苔むした岩の中に、金属の箱が埋まっていた。
レンは息を呑んだ。蓋には鍵穴すらなかった。 だが、箱に触れた瞬間、彼の持っていた地図が光り始める。
箱が静かに開いた。中には、古代文字で書かれた書物と一枚の小さな鏡。 それは“世界のどこにいても、真実を映す鏡”だった。
老紳士に報告すると、彼は微笑んで言った。 「私が欲しかったのは“真実”そのもの。鍵がないのは、人の心にこそ鍵があるからだ」
レンは依頼を終えたが、その鏡をひとつだけ手元に残して旅を続けることにした。
この世には鍵のない宝物が、まだまだ眠っているかもしれない――そう思いながら。
あれ?毎日投稿なんにちめだ?