時雨希空による安堂夏希とその仲間が繰り広げるホラーとギャグの物語。
ホラーと言っても未成年がよく閲覧する小説シリーズなのでえげつないのは書きません。(と思う)
怖くないホラーを目指して頑張ります!
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目次
そっくりさん
主人公:
長井綾 (ながい あや)
進学校に通う女の子。ナツの親友。
他キャラ:
安堂 夏希 (あんどう なつき)
あだ名はナツ。綾と同じ学校。綾の親友。
綾は習字の習い事が終わっていつもの通り道を進んでいた。
何もかも普通でいつも通りだった。
すると、ふと道にナツの後ろ姿が見えた。
「ナツ!」
綾は親友を見かけて近づきながら呼ぶが、ナツは振り返らなかった。
聞こえなかったのかともう一度呼ぶが、また気付いてないようでナツは振り返らなかった。
それどころかズンズンと前を進んでいく。
遠くなっていく姿に焦った綾は、小走りになって追いかけているうちにどんどん加速して走っていた。
しばらくしてナツが止まったので綾はその背中に触れようと手を伸ばし、足を踏み出そうとした…が。
グンッと後ろに手を引かれて、後ろに倒れた。
そしてそのすぐあと、綾野いた場所にトラックが走り去っていた。
「え?」
綾は呆然として、目の前を見つめていた。
あともう少し、一瞬手を引かれるのが遅かったら、綾はひかれていた。
たった、一瞬で綾は死んでいたかもしれなかった。
その事実に彼女は泣きそうになったし、怖くなった。
それでもお礼を言おうと見上げ、愕然とした。
そこにいたのは、ナツだった。
「綾、危なかったよ!僕が手をひいてなければどうなっていたか。そこは道路だよ。なんでいくの?」
その言葉とともに、綾は周囲を見渡した。
塾の帰りの古い一軒家や小さな花などではなく、真っ赤な彼岸花の花が一輪咲いている裏路地のようなところを抜けたところの前の道路、そこに綾は飛び出しかけた。
「ナツを追いかけ、」
反論しようとした言葉は空気に溶けて消えた。
ナツは綾の後ろにいた。
ならば、あのナツは?
思い返せばあれは本当にナツか。
背格好も髪の色も違う。
勘違いする共通点などない。
なのに、なぜ綾は《《アレ》》を《《ナツ》》だと信じてやまなかった?
なんとも言えない恐怖心が綾を襲った。
その次の瞬間、綾はナツの手をひいて走り出した。
彼岸花が足下で潰されたが気にしなかった。
花が好きな綾が気にしないほど、怖かった。
そして綾は無我夢中に走った。
綾は気づかない。
自分の親友がある一角を睨みつけていたことに。
綾は知らない。
自分の親友の呟いた言葉の意味を。
「《《隠されそう》》になったね、綾。」
井谷綾 (いたに あや)
進学校に通う女の子。ナツの親友。今回、隠されそうになった。
花が好き。
安堂 夏希 (あんどう なつき)
あだ名はナツ。綾と同じ学校。綾の親友。霊感あり、対処法もそれなりに。
2話も更新したので見てくれると嬉しいです!
第二話:恨みは強しってね
ナツの本名ちょっと変更しました。
これは1話を読んでから読んだ方がいいです!
ファンレターは嬉しいのでやってくれる嬉しいです!
ちなみに「面白かったです!」の一言だけでも嬉しさで顔がニコニコになります。
どうしよう
どうしよう
どうしよう
誰もいない教室で莉奈は震えていた。
いつもいじめてたアイツを呼び出していじめてたけどその後アイツが自殺して、私が悪いってなって、ママもパパもひどく怒って、人殺しって言われて。逃げてきたら、バケモノが追いかけてきて
殺されそうになって、
怖い
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖いい怖い怖い許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
死にたくな
「リナさん、ミィつけたぁぁ」「ひっ」
リナの目の前にドロドロとした黒いものが立っていた。お大きな口と幾つもある目が気持ち悪くて仕方なかった。
「いやぁぁぁぁぁあっ!!!!」
化け物に手を掴まれた。顔が目の前にしかづいてくる。口が大きく開いて鋭い歯が見えた時、悟った。ここで私は死ぬ。悪いことをした報いなのだろう。でも、お願い、誰か、
たすけて
「背後注意っなんてね!」
雷が落ちたかのような音と共に、一つの影が開いた窓から飛び出した。机が転がり、椅子が吹っ飛び、
「ぇ?」
リナは気づいたら机と一緒に教室の隅に転がっていた。打った頭がジンジン痛む。霞む視界には一つの人影が見えた。窓から差し込む淡い月明かりに照らされたその人物はどうしようもなく自分の願いを聞き入れ救いに来てくれた神のようで
「ヵみさま?」
そう呟いたのを最後にリナの意識は反転した。
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小林理奈が気絶したのを尻目にナツは目の前の存在を見つめた、ソレはナツに向けて腕を振り下ろす。机が転がし椅子が倒れたが誰も気にしなかった。避けた後に追撃としてきた腕を持ち前の緋色の槍ではたき落とした。悲鳴をあげ追撃が止んだ隙を狙い、空中で一回転し着地したナツは小林里奈を背に庇うように立った。ひりつくような空気が頬を撫でる。深呼吸をしてナツは口を開いた。
「佐藤恵様、怒りをお鎮めください。」
佐藤恵だった存在がふるりと震えた。無数の目がナツを見つめる。暗い闇と怒りの色の中に滲んだのは困惑と期待の感情だった。
「ワぁたしぃの、コト、ワカルゥの?」
佐藤めぐみは呟いた。自分は小林梨奈への憎しみの感情で醜く変わってしまった。誰も自分のことをわからないと思っていたから、ナツが佐藤めぐみと呼んだのが信じられなかったのだ。
「えぇ、もちろん。だって、その髪飾りは貴方のでしょう?」
微笑みながら答えたナツの前で怪物は崩れ去った。残ったのは泣き崩れる少女だけ。
「貴方の怒りはもっともですし、小林梨奈呪殺する理由は十分に整っています。ですが阿多田の手を汚す必要などありません。僕と貴方で契約を結べば貴方の望む罰を小林梨奈に与えることができます。 なので、安らかにお眠りください。」
膝をつきながらナツ…安堂夏希は笑った。安堂毛は音量時の家計で、ナツ自身も幼いころから死に関わってきたし、怪異意を払ったこともある。ナツは未練があり現世にの買った例の対処も担当している。だから小林莉菜にいじめられた怒りと憎悪を拗らせた佐藤恵の件もナツの仕事なのだ。
「ごめんなさい、ごめんなさぃ!」
佐藤恵は泣きながら謝った。ナツを傷つけようとしたことを後悔したのだ。彼女を見つめながらナツは内心、うまくいってよかったと安堵していた。このような人に害をなすタイプは説得してもむdk逆上して悪霊へと落ちることがある。ナツは極力それを避けたかった。
悪霊を祓うための実力は申し分ない。戦闘を嫌うわけでもない。ただ、もっとうまくできなかったのかと後悔してしまうから。《《あの子》》と同じことになって欲しくないから。だからナツは|佐藤恵を救おうとした。《自分のために行動した》
「私、莉菜さんのことは許せない。だけど、殺して欲しいほどじゃない。だから、成仏しようと思います。よろしくお願いします、名も知らない人。」
ナツを見つめて佐藤めぐみは懇願した。その願いを聞き入れ、ナツは|形代《かたしろ》(人の形をした札)を取り出した、目を閉じて霊力を込める。風が巻き起こり始めた。
「春の|日和南風《ひよりまじ》。夏の|茅花流し《つばなながし》秋の|野分《のわき》冬の|神立風《かむたつかぜ》無垢なる魂を導きたまえ。」
唱えるたびに風が色づき花が咲く。ナツが目を開けふだを空間に貼り付けると佐藤恵を囲むように結界が張られた。淡い光と共に風が導くように天へ昇り、それを追うようにして佐藤恵は消えていった。微笑みながら見守っていたナツはため息を吐き、後ろを振り返った。そこには気を失っている小林莉菜と一つだけポツンと残っている机。机の上に座ったナツはこめかみを指で揉んだ。
「はぁぁ…後片付け、どうしよ…うん!じゅんに押しつけよっと!」
狂気すら感じられる笑みを浮かべ、ナツは恋人兼同僚へと電話をかけた。
「はい、谷口潤一郎です、ナツ、どうしたん「じゅん!僕さぁいつもの直感で茨城市で|巡警《じゅんけい》(パトロール)してたんだけど、悪霊寸前の霊見つけたから成仏させたんだけど教室はめちゃくちゃだし被害者は気絶してるし面倒臭い…まぁ、つまり…片付けよろ!」うぇっ!?ちょお、まっt」
強制的に電話を終わらせたナツは帰ったら茶でも飲むかと呟き、誰もいないことをいいことに窓から飛び降りた。ふわりと風を薄く纏いながら難なく着地したナツの後ろ姿は闇に消えていった。
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「…にしても」
家への帰り道を通りながらナツは小林莉菜の言葉を思い返してた。
「神様、かぁ。」
目を細めて足元の石を蹴る。その言葉はナツにとっては《《とてつもなく嬉しく》》、《《とてつもなく嫌悪感を抱かせた。》》誰かに救ってくれる存在であると認められて嬉しい反面、どうしようもなく、《《あの子》》との思い出を思い返してしまい、憎くてたまらない運命なんてものを決めた神と自分が同一視されたことに不快感を覚えた。
「…やめやめ!こんなの考えたって何も出ないし!ゆっくりゲームしながら茶を飲んで、ぐっすり寝よ!」
首を振って再び歩き出したナツは月明かりに照らされながら帰路を進んだ。
安堂夏希
通称ナツ。とっても強いバトルジャンキー。某運命ゲームをやっている。そのため槍はニキと同じ緋色。ゲイ・ボルグをイメージしてください。どうやら、神がきらいのよう。原因は、遠い夏の日のあの子に関係しているらしい。
谷口潤一郎
通称じゅん。サポート系。常識人なのでナツに度々振り回されている。
クマの料理長ぶっころし隊!(時雨希空物語集ー第3話)
新キャラ出ますよ!
「はぁ、はぁっはっはぁ」
学校の一室、机の下で生徒は隠れてた。息は荒く目の焦点があってない。
混乱しながら彼はぶつぶつ言葉を呟いてた。
「ごめんなさい、知らなかったんだ、こんなにやばいだなんて、しらなかった、もうやらないから。絶対やらないから、許してください、やめてくれ!おねがいだ、もう、やめt「山口翔介|《やまぐちしょうすけ》、みぃつけた!」ひゅっ」
彼の前にはいつのまにかクマの人形が立っていた。裂けた口が笑っていて、片手には…血で濡れた料理包丁があった。コック帽が頭に乗っていてエプロンをつけているクマの人形といえば可愛らしいものだが、コレは正反対に恐怖を増長させた。
「こわくないよ、クマさんがちゃぁんとおいしくりょうりしてあげるからねぇ」
ケタケタ笑いながら近づいてきた人形は生徒の前でその手にある包丁を、振り落とした。
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翌日、東京私立大和学園の中学部、1年B組では騒がしい教室の中で華の女の子たちが談笑していた。
「それでそれで?どうなったの?」
興奮しながら話を促したのは高野真央|《たかのまお》、通称マオマオ(猫猫)
「綾ね、びっくりしすぎて転んだんだよ!」
笑いながら答えたのは安堂夏希|《あんどうなつき》、通称ナツ
「ちょっと、二人とも!笑いすぎ!」
少し怒りながら言うのは平野綾|《ひらのあや》。通称アヤ
この三人は仲良し成績優秀トリオとして有名で1年生たちにさんこいちといえば?と聞くとこの3人が必ず出てくる。成績優秀、授業態度も良いこの3人は先生たちのお気に入りで、6年B組の良心と呼ばれてる。
ナツの学校に行く理由と言っても過言ではない3人で過ごす時間はとても平和で穏やかなものだ。
だがいつも通りの平穏は突然乱された。
「安堂、呼び出されてるぞ」
近づいてきてナツに声をかけたのは藤丸士郎|《ふじまるしろう》、明るい茶髪が地毛というクラスメートだ。(余談:先生に染めたと疑われ地毛だと説明したにも関わらず黒に戻せと言われ「なんでさ!」と叫んでいたのを見かけた生徒がいる)
「およ?呼び出し?…うげ、もしかして…アイツ?」
顔を引き攣らせてナツは藤丸に聞いた。アイツの呼び出しならすっぽかしてやろうと思ったが次の言葉で気を変えた。
「大和|《やまと》だな。あと谷口。」
「え!じゅんもいるの?じゃあボクいってくるね」
谷口という名前を聞くとすぐに立ち上がったナツは親友2人に一言言って扉から出ていった。残った3人は態度が変わりすぎなんだよな…と思いながら見送った。
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「遅い!お前は移動するのに一生を使う気か?」
空き教室で怒鳴り声をあげるのは大和史弥|《やまとふみや》、
大和財閥|《やまとざいばつ》の御曹司でもあり東京私立大和学園|《とうきょうしりつやまとがくえん》校長の息子だ。真ん中でM字に分けられた黒髪は丁寧に手入れされているとわかる質の良さだ。黒縁の眼鏡の奥にはアメジストを嵌め込んだような目が輝いている。かなりの美少年だがナツの前では端正な顔が崩れて激しい感情を見せることが多い。何故かと言うと、この二人とことんそりが合わないのだ。会うたびに喧嘩をするからよく仲介役が苦労する。
「お坊ちゃんは待つこともできないんですかぁ?ワンちゃんの方がお利口だね。天下の大和家のおぼっちゃまが犬に負けるのかい?」
怒り心頭の史弥にナツは言い返す。いつも天真爛漫な笑顔を見せる顔は歪んでいて普段ののナツを知る者なら二度見するような顔だ。濃い茶髪の髪をかきあげて煽るように吐き捨てながらルビーの瞳が嘲笑った。
「二人とも仲良く…は無理でも喧嘩はやめなって…」
困った顔をしながら谷口潤一郎|《たにぐちじゅんいちろう》は二人を宥めた。7:3分に分けられた黒髪と優しそうな翡翠のタレ目が印象的な少年は史弥とナツに苦労をかけられがちだ。個性の強い二人に挟められた潤一郎は気弱とはいかずとも我が強いタイプじゃないため二人を必死で止めている光景がよく見られる。
「そんで?要件を言え。」
近くにあった机に乗ってナツは史弥に聞いた。藤丸に要件を伝えなかったということは何か機密情報…怪異、或いは呪いなどの3人の家業に関わるということだ。人払いをするために認識阻害と音漏れ防止の結界を張りながらナツは言葉を待った。
「はぁ…またお前はそんな言葉遣いを…女子|《おなご》らしくもう少しおとしやかに話せ。まぁいい。いやよくないが、それは置いといて。
うちの高等部でひとりかくれんぼのオマージュ術をやらかしたやつが出た。既に行方不明者が5人出てる。詳細は書類にあるが…潤一郎、説明を頼む。」
先程とは一変して真剣な顔をした史弥は書類をナツに手渡しながら潤一郎に目線で説明を促した。頷いて潤一郎は話し出す。
「怪異だね。名はクマの料理長。手順はひとりかくれんぼと一緒で、見つかったら料理…解剖されるみたいだ。最近発生した怪異で、特に前例はない。極めて死亡率が高いと想定されてるからお上から討伐命令が出た。被害者が生存してる可能性は、54%と低い。今日中に救出しないといけない。行方不明は山口翔介、山崎茂、その他2名だよ。」
説明を聞いたナツは顔を引き攣らせた。
「うっわ。人肉料理とか嫌だわぁ。キッショ。ねぇねぇそいつ気に入んないからぶっ殺そ!」
「お前のいうことは理解できんが今回は賛成だ。ちょうど血が飛び散らないサンドバックを探してた。その怪異も俺の役に立てるなら光栄だろう。」
物騒なことを涼しい顔で話す二人に潤一郎は胃が痛くなったが止めなかったので可哀想なクマの料理長は史弥とナツによって地獄を見ることが決まった。
(ちょっと可哀想だけど…まいっか。ご愁傷様です…)
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時はたち、放課後。夜の帳が下りる前、黄昏色に染まった空が見える頃。
3人はもはや定位置になった空き教室で儀式の手順に取り掛かろうとしてた。
「えっと、まずはクマの人形を裂いて、綿を取り出し中に米を詰めて糸で縫う。史弥、米とって。」「はぁ…」「うわっちょっと投げないでよ!」「二人とも、真面目にしよっか…」「「こいつが!!」」「ちっ」「くそ…」「真似しないでくれる?」「お前が真似したんだろうが!」「はぁ??」「ふーたーりーとーも!」
…史弥とナツが揉めて時間がかかったがなんとかできた。
「えっと…次は僕らの名前を人札に書いて、クマ以外の動物の人形に貼り付ける。これは僕たちの化身みたいな者だって。捕まったら人札が破れて失格と判断されるみたい。」
次の手順を説明しながら潤一郎は三つの人形を鞄から取り出した。その中の一つに目を輝かせてナツは手を伸ばした。
「ボク猫ね!」「俺は鴉だ」「僕は犬」
それぞれが手順を完了すると、史哉が話し出した。
「そして、クマの人形へ全員で合言葉をいってかくれんぼをする。合言葉は、「料理長、新しい素材が手に入りました。素材は(全員の名前を読み上げる)です。かくれているので、探してください。1分したらスタートです。」…これをいって好きなタイミングでタイマーを始める。それから1分すると人形が動くということだ。」
説明が進むたびに潤一郎の顔は困惑の表情を見せナツは途中からハテナを飛ばしてた。
「えっと、合言葉をいう…そしてその合言葉が…あれ?」
「長い!ふみやぁ紙に書いてよぉ。」
史弥は頭を押さえて突っ伏した。
「この…バカっプルがぁ!!はああ…そう言うと思って紙に書いてきた。ほら、読むぞ。」
バカップルという言葉に二人はムッとした顔をしたがすぐに紙を見つめた。せーので3人は読み始めた。
「「「料理長、新しい素材が手に入りました。素材は安堂夏希、大和史弥、谷口潤一郎です。かくれているので、探してください。1分したらスタートです。」」」
潤一郎がタイマーの時間を始め、三人は空き教室から出た。あらかじめ隠れるところは決めておいたのでそこで迎え撃つつもりだ。
着いたところは家庭科教室。包丁など武器になるものもあるので丁度いいと決めた。潤一郎は後の二人が最悪ガスと火をつけて爆発させれれば良いと話してたのを聞いてたので絶対バフをかけまくってすぐ終わらせると決断しているがそれはまた別の話である。
1分たち、人形は動き出した。素材の気配をたどり人形は家庭科教室の前に着いた。含み笑いをした人形は扉を開け、いつものセリフを言うつもりだったが…その前に二人の術師によって塞がれた。
「「りょーりちょう、あそーびましょ?」」
人形の前に立ち塞がったのは史弥とナツ。黒い笑みを浮かべてそれぞれの武器を手にしてる。先の動いたのはナツだった。 手に持っていたボールのようなかわいらしい球体をなぎつけ、にっこりと笑った瞬間、
ドッカーン!!!
球体…ナツ特製の爆弾(ナツ曰くニャンコ爆弾らしい)が爆発して人形は教室から外の校庭に吹き飛ばされた。
「ドッカーン!ナイスショット!」
サムズアップして笑ったナツを押し除けて史弥が窓から飛び降りる。壁を駆け下り、校庭に落ちた人形へと狙いを定めた。
「雷帝三段突き!!」
技名を叫びながら雷を纏った日本刀を振り下ろした。刀は見事に命中し人形の布が破れ中から米粒が飛び出してきた。
「ガァァァッ!!」
悲鳴をあげた人形は恐しい形相で史弥に近づく。だが人形が攻撃を受けている間に準備していた潤一郎の術が二人を強化した。
「大地は全ての母…子を守るのは当然の事!草岩術式:草花の鳥籠!…君達に、祝福を。」
草花がナツと史弥の周りに咲き乱れ、緑の光が二人を包んだ。満面の笑みを浮かべて二人はそれぞれの術技を発動させる。
「裂いて喰らいて焼き尽くす!風火術式:烈火風桜!お前はコレに、耐えれるかな!?」
「全ての力を我が手に…雷水術式:雷電水印!大人しく、貫かれろ!!」
巻き上がった炎が人形を焼き、鋭い風が切り裂く。浮かび上がった水の印に拘束され、紫の雷によって切り裂かれた。炎、風、水、雷の全てが仄かに優しい若葉色を纏っていて、潤一郎の術(バフ)が掛かっている事を表した。攻撃によってすでにボロボロな人形だったが後追いの術技が潤一郎によって放たれた。
「隕石のように、星のように!潰し尽くせ!
草岩術式:岩天晩鐘! …岩の力を、感じたかな?」
大量の岩が空中に現れ降り注いだ。人形はもはや原形がほとんど残ってない。中から怪異が逃げるように飛び出したがナツの槍によって貫かれた。ギャアという小さな悲鳴を上げたあと、消滅した怪異からドサっと五人の生徒が吐き出された。浅いが呼吸をしているため、生きていることが確認できる。潤一郎が術で体の状態を調べてた結果衰弱状態だと診断され病院に輸送されることとなり、史弥の家の者が回収した。それを見送り、三人は顔を合わせた。全員満面の笑みを浮かべていて、潤一郎が手を差し出すとすぐのハイタッチをした。…が、ナツと史弥は宿敵とハイタッチしたことに固まり、言い合いを始めた。
「今のは反射的にやっただけだから!さっきの攻撃良かったねクソが!」
「こっちこそ意図的にしていない!お前こそ連携攻撃のタイミングが良かったぞバカ!」
「バカじゃない!」
「いーや、お前はバカで阿呆だ!」
「バカでもアホでもないっての!」
ギャイギャイ騒いでる二人を見ながら潤一郎は思った。
(この子達仲がいいのか悪いのか偶にわかんなくなるなぁ…さっきもいい所を伝え合ってたけど最後に罵倒してたし…これだから僕を差し置いてカップル見たいって言われるんだよ…)
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安堂夏希(ナツ)
はっちゃけたつもりはないがはっちゃけた。史弥とライバル。お互い宿敵だと公言してる。頭が少しだけ弱いが勘がすこぶるよい。
大和史弥|《やまとふみや》
初登場だよ、やったね!ナツとライバル。頭がいいが方向音痴と運が悪い。
谷口潤一郎|《たにぐちじゅんいちろう》
初登場ではないよ!でもちゃんと登場したのは初めてかな?サポート型。
更新遅くなりました!!すみません。4話も頑張ります!