閲覧設定
名前変換設定
この小説には名前変換が設定されています。以下の単語を変換することができます。空白の場合は変換されません。入力した単語はブラウザに保存され次回から選択できるようになります
1 /
目次
物心ついたときから魔法少女だった。1
新シリーズです!今回は短編集ではなく、長編を書いてみました!楽しんでください♡
私は、物心ついたときから魔法少女だった。そのせいで、親に捨てられたんだけど。捨て猫みたいに段ボール箱に入れられて。その時拾ってくれたのが今の私のお姉ちゃん。もちろん血はつながっていない。でも、お姉ちゃんも親がいない。今、私は中学1年生。お姉ちゃんは高校1年生。お姉ちゃんが一生懸命バイトしてくれなかったら私達はとっくに死んでいた。お姉ちゃんの両親もいい人だった。私が魔法を使えることを知っても「素敵だねぇ」と褒めてくれた。去年死んじゃったけど。褒めてもらった魔法にも欠点はある。一日に決まった数しか使えない。ゲームで言うMP。私のMPが10くらいだとすると使える魔法はこんな感じ。
テレポート (移動魔法)消費MP4
ヒール (回復魔法)消費MP7
ディストラクション (破壊魔法)消費MP20
ディストラクションは2日分のMPを消費する。まだ使える魔法は少ないし、力加減もうまくできない。特にディストラクションは力加減をミスると結構な被害が出る。せっかく私のことを知っている人のいない中学校に来たんだから今度は普通の女の子として普通の生活を送りたい。
――だって、小学校のときは、怪我した友達にヒールを使ってみんなにいじめられたから。
「真歩、おかえり。」
「うん。ただいま。」
真歩は私の名前。お姉ちゃんがつけてくれた。魔法が使えるからって安直すぎ。と思ったけど「真実と思った道を歩んでほしいって意味もあるんだよ〜」と言われたとき、一瞬でこの名前を気に入った。それに、お姉ちゃんは里歩。本当の姉妹みたいで嬉しい。そんなお姉ちゃんが私を見て眉を寄せた。
「真歩、テレポートで帰ってきた?」
「そうだけど?誰も見てなかったし。」
「誰が見てるかわかんないんだよ!?それに、一回使ったら回復魔法だって使えなくなるんだよ!」
「めったに使わないじゃん。てか、なんで使ったって分かるの?」
「部活に入ってない真歩が長い帰り道を汗ひとつかかずに帰れるわけないじゃない!それに、めったに使わないからといっても、いつ使う必要があるかは分からないじゃない!」
「はいはい、分かりましたー私が悪かったですー」
「分かってないじゃない!」
「分かったから!私勉強するから騒がないでね。」
テーブルについて勉強を始める妹を見て里歩はため息をついた。
物心ついたときから魔法少女だった。2
キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン
昨日はお姉ちゃんと仲直りできなかった。
――今日は、家も学校も行きたくないな。
休み時間にそんな事を考えていると別のクラスから友達を呼びに来る子たちが入口に集まってきた。
「ゆり、ミチが呼んでるよ〜」
「あ、ミチー昨日はごめんね〜」
あんなふうに謝りたいな〜と思ってゆりという人とミチという人を見ていた。
そして、気がついた。そして私は青ざめた。それに気づいたミチも青ざめた。
ミチ、みち、美知。
私がいじめられる原因になった人だ。
私は善意で助けたのに、彼女は私がいじめられているのを見ても助けてくれなかった。
「ご、ごめん!私、次移動教室だから!」
そう言って美知は慌てて逃げていった。
〈side美知〉
え?おんなじ中学校だったの?私は動揺を隠せなかった。
卒業式後すぐ引っ越しがあって少し離れたところに引っ越した。親戚のゆりがおんなじ学校で楽しく学校生活を送ってたはずなんだけど。真歩が私のせいでいじめられているのは知ってた。でも、自分がいじめられるのが怖くて、いじめっ子になんて言ったらいいか分かんなくて、影から見ることしかできなかった。申し訳ないと思ったけど、小さい頃にいじめられたトラウマが私を縛り付けていた。
――ごめん真歩。ほんとにごめん。
その短い言葉でさえも真歩にかけてあげられなかった。ゆりはすぐ謝れるタイプ。羨ましい。
――真歩は、私のことを恨んでいるだろうな⋯
いつか、真歩に謝りたい。
物心ついたときから魔法少女だった。3
美知なんて嫌いだ。何があっても許さない。
そう思っていると身体の中に黒いものが疼く感じがする。不快感に顔をしかめていると、
「真歩、どうしたと?怖い顔しとーよ?」
博多弁で話しかけてきたのは友達の水川春菜。入学式の日、教室で急に『友達になろう』と話しかけてきた子だ。いい子なのは分かっているんだけど、好きじゃない。明るすぎて話しているだけで疲れる感じ?
「大丈夫。ちょっと体調が悪いだけなので。」
「敬語じゃなくていいって。体調悪いなら保健室連れて行こうか?」
「大丈夫ってば。」
「顔色悪いし、きつくなる前に保健室行っとったほうがいいよ?」
「ほんとに大丈夫なんだってば!」
自分でもびっくりするぐらい大きい声が出てしまった。クラスのみんなが私の方を向いた。その瞬間、身体の中の黒いものが一気に冷えて体に広がり、それが鳥肌となった。数年前のトラウマが蘇る。
――驚いた顔をする美知や周りの人。そしてありとあらゆる罵詈雑言を投げつけ、汚いものを見るような目で私を見る人達。明らかに私を避ける人達。その人達の視線が一気に注がれた気分。
私は急いで通学カバンを棚から乱暴に取り出し肩に掛けて、
走って、走って、走って、ひたすら走った。階段を駆け下り、靴箱で靴に履き替え、ひたすら走って家に帰った。テレポートも使わず、ひたすら走った。
あの人達の視線が自分に絡みついて離れない。振り切ろうと走っても振り切れない。運動もろくにしていない自分が視線から逃れることなんてできないと頭では分かっているけれど、ひたすら走った。
家につき、鍵を開けようとした。でも、全力で走ったことと精神的なショックから手に力が入らず鍵が開けられない。やっとのことで鍵を開けて――
---
目が覚めると私は布団に寝ていた。頭を動かすと姉が料理をしているのが見えた。
「お姉、、、ちゃん」
「起きた?帰ってきたら扉が少し空いていたんだよ。急いで開けたら玄関に真歩が倒れててびっくりしたんだよー。」
「お姉ちゃん、危機感なさすぎ、、、」
「今は、ね。」
「そっか。」
「何が起きたか話せる?」
「う、、、ん。」
「無理しなくていいよ。」
「大丈夫。」
---
今日の出来事を話した私は少し小さな声でこう付け足した。
「あと、『来た』かも。」
「話からしても、可能性はあるよねー」
「うん。」
「じゃあ、今から空き地に行く?」
「そうしよう。」
私は、魔法を使えるためにストレスが溜まったりすると一気に|爆発《魔力暴走》するのだ。
空き地に来ると私は魔法を使う準備をする。魔力暴走するときはディストラクションしか使えない。それも、手加減の一切できない。被害を少なくするために空き地の小石に魔法を使っている。
「あれ、、、?」
「どうしたの?」
「ディストラクションが発動しない、、、」
――プログレス。その言葉が唐突に頭に浮かんできた。そして、私は気付いた。
「新しい魔法、、、」
「え?」
「今日の異常な足の早さ、体力は魔法によるものだった、、、?」
「どういうこと?」
「今日、魔法をすでに使っていたと考えれば辻褄が合う、、、」
「?」
「つまり、知らない間に新しい魔法を覚えていたってこと、、、?」
「、、、、、、! そういうこと!?」
---
五月上旬、新しい魔法〈プログレス(体力向上魔法)〉習得。
姉、里歩との仲直り成功。