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目次
夏
地元の畑の直ぐ側にある。
『生けるトンネル』
それは、近くに信号機がある。
しかし、昔の台風でちょっと斜めを向いている。
まるで、そのトンネルから目を背けているかの様に。
かつての事件を知っているかの様に。
あの日、確かにトンネルは人を消した。
光が消え、また見えた時、其処には誰も居なかった。
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あの日、冷たい夏の夜、友人達と行くことになった。
止めても聞かず、信号機の周りに皆集まっていた。
蛍が辺りを舞っていた。
対称に、トンネルの中は暗い。
端には知らない花が萌えている。
その花の視線が痛い。
僅かな月明かりが其処に在るものを意識させる。
看板を見つける。
先頭の子が、スマホの光で読み上げる。
「`我々は誤った。此処は神の地、人が立ち入ることは許されない。入った者は…`」
光が消えた。
スマホが地に落ち、壊れた。
先頭の子が、消えた。
私達は、怖かった。
だから、走った。
段々と足音が減っていく。
永遠の闇が意識を奪う。
気づけば、私は信号機の足元で倒れていた。
目の前には死んだ蛍が居た。
振り返ると、トンネルの中には月明かりが差し込んでいた。
そして、見えた。
誰も居なかった。
秋
どれだけ時間が経ったのだろう。
あの日から、いったい何日経ったのだろう。
とりあえず、これを読んでいる人に向けて、何があったのか全部書き残そうと思います。
此処は危険です。
山の色彩が鮮やかになってきたあの日の早朝。
ちょっとボーっとしている間に、私は普段の散歩道にはいませんでした。
「道路はあるけど家は無い」という感じの場所にいました。
側には知らない花がいくつか咲いていました。
しばらくの間、一方に歩き続けていると鳥居が見えてきたんです。
それは一つだけではなく、合計で七つ。
少し怖かったが、私は好奇心に負けてそれをくぐってしまった。
一つくぐる度に、得も言われぬ不安を覚えました。
足元の枯れ葉を踏む時の音が、とても耳に残っています。
ほんと、此処でビビって逃げれば良かったんですけどね。
私は全ての鳥居をくぐりました。
気づけば自分の家の中にいました。
休日ということもあって二度寝したんです。
だからまた目覚めるまでは気づかなかったんです。
窓の外の世界が、大きく変わっていることに。
その景色は、私の町に伝わる神界とよく似た場所でした。
今はまだバレてないですが、明らかに危険な化け物が沢山います。
私の町に伝わる話では、それらの退散方法についても記載があります。
今からそれを…
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こちらは「永田ヶ谷市連続神隠し事件」の被害者の一人。
行方不明になった女性の自宅に落ちていたカレンダーの裏に書かれていた文章です。