清少納言のシリーズです。
文スト二次創作です。
ヘ(゜ο°)ノ
続きを読む
閲覧設定
名前変換設定
この小説には名前変換が設定されています。以下の単語を変換することができます。空白の場合は変換されません。入力した単語はブラウザに保存され次回から選択できるようになります
1 /
目次
無情で無慈悲な操人形(1)
前回までのあらすじ。
https://tanpen.net/novel/461a5535-2ec3-4cab-b8fd-42de214f97b5/
↑これを読め((
清少納言side
グリムの一件から数日が経った。
私は暫く探偵社でお世話になることになったんだけど──。
清少納言「……“枕草子”」
ドカンという爆発音が事務室に響き渡る。
|首領《ロリコン》、話しやがったな。
国木田独歩「何事だ!?」
清少納言「爆弾が投げ込まれただけだよ」
国木田独歩「爆弾が投げ込まれただけだよ???」
投げ込まれた爆弾を結界で囲った。
だから音は漏れたけど、事務室に被害はない。
どうしたものか、と私は窓に近づくと目の前に槍があった。
障壁で塞いだものの、槍は貫通してくる。
清少納言「……相変わらず容赦ないな」
トン、と音がしたかと思えば槍の上に人が立っている。
その人物は窓枠に手を掛けて飛び、槍をそのまま押し込んできた。
江戸川乱歩「大丈夫?」
清少納言「あまり大丈夫ではないかな」
槍は私に当たるギリギリに刺さっており、ちょっとでもずれていたら即死だ。
清少納言「相変わらず甘いね」
???「そういうお前は腕が落ちたんじゃないか?」
ふわぁ、と欠伸をした私。
いつの間にか隣に突き刺さっていた槍は抜かれていて、喉元に突きつけられる。
中島敦「何事ですか!?」
外回りに行っていた中島敦が帰って来た。
つまり、治も戻ってきたということになる。
この状態を見てどんな反応をするのかな。
太宰治「“人間失格”」
槍は幾千もの文字となり、消えてゆく。
???「太宰治……!」
太宰治「久しぶりですね、|紫《ゆかり》さん」
思っていたより彼は冷静なようだった。
まぁ、纏っていた雰囲気は最近の治とは全く違うけど。
太宰治「まさかたった一人の幹部を取り戻すために貴女が動くとは思いませんでしたよ」
清少納言「二席空けておくわけにはいかないから、私の席に入れられたんでしょ。本当、可哀想な紫式部」
紫式部「……っ、誰のせいでこんなに苦労してると──!」
清少納言「残念だけど、私は帰るつもりない。マフィアに執着する理由も分からないからね」
無情で無慈悲な操人形(2)
前回までのあらすじ
https://tanpen.net/novel/89749a87-cbcb-4853-abc8-ceca87783ba3/
↑これを読め((
清少納言side
紫式部「……っ、私のことはどうでも良いのかよ!」
いつの間に異能力を発動していたのか、また槍が創られている。
そして、私の胸を貫いていた。
太宰治「清さん!」
紫式部「な、んで……っ」
清少納言「……理由なんかないよ、紫式部。今の私は君の言った通り、随分と腕の落ちたからね」
私は乾いた笑みを浮かべながら槍に触れた。
やっぱり無像じゃないから消すことはできない。
治のように異能で作られたものだから、と無くせたら良かったけど。
清少納言「触れないでよ、治。与謝野晶子の居ない今、槍が消えたら流石の私でも出欠多量で死ぬ」
江戸川乱歩「どうするつもり?」
傍観者でいるつもりなのかと思った名探偵が声を掛けてくる。
江戸川乱歩「暫くは与謝野さん帰ってこないよ」
清少納言「だろうね」
江戸川乱歩「……時の流れを遅くしようとも、君の迎える結末は変わらない」
清少納言「あぁ、変わらないとも」
私の異能力は“枕草子”。
無像を操ることが出来るだけで、完全に時間を止めたり回復を早めることはできない。
清少納言「私が死なないという未来が、変わることはない」
今も吐血してる奴が何を云っているんだ、という空気を感じる。
確かにその通りだ。
与謝野晶子もおらず、私が死ぬ未来以外思い浮かばない。
紫式部「清が死ぬなんて、」
清少納言「……。」
紫式部「そんなの、私が許さねぇ」
蝶が舞う。
紫色の文字列が浮かぶ。
探偵社の面々は、その光景に見覚えがあるようだった。
清少納言「──本当、面倒くさい人ね」
槍が消え、私の傷は塞がる。
彼女の異能力は、正直よくわからない。
ただ、彼女しか《《アレ》》は扱えない。
紫式部「……大丈夫?」
清少納言「見ての通り、服はボロボロよ」
紫式部「……良かった」
まさか、ここまで不安定になるとは。
マフィアを抜けたのは少し間違いだったかもしれない。
太宰治「あの、紫さんの異能力って……?」
紫式部「……。」
清少納言「こら、後輩を睨まない」
紫式部「痛っ……じゃなくて、太宰はもう後輩じゃない! 裏切り者だ!」
清少納言「私もそうなんだけど?」
紫式部「大丈夫、清のことは誰にも殺させないから」
清少納言「今さっき君に殺されそうだったんだけど」
そんなことを話していると、探偵社の扉が勢いよく開かれた。
与謝野晶子「清さん! 大丈夫なのかい!?」
清少納言「うん。もう治してもらったからね」
紫式部「──アキちゃん?」
無情で無慈悲な操人形(3)
前回までのあらすじ
URL貼るの面倒くさくなった((
清少納言side
あぁ、そうだ。
そういえば彼女は──。
与謝野晶子「その呼び方、もしかしてシキちゃんかい……?」
紫式部「──っ、」
紫式部は私の腕を引いて、すぐにこの場から逃げ去ろうとする。
けれども、私は探偵社から出るつもりはない。
逆に引っ張り返してみると、転ばせてしまった。
仕方なさそうに私の手を離したかと思えば、来たときと同じように窓から出ていく。
文字列が彼女の周りに浮かび、道路を挟んだ向こう側のビルまで一回のジャンプで届いていた。
清少納言「流石だなぁ」
そんなことを呟きながら私は紫式部の姿が見えなくなるまで、窓の外を眺めていた。
与謝野晶子「シキちゃんが何故ここに……というか清さんは大丈夫なのかい!?」
清少納言「ん、大丈夫だよ。君もよく知ってる“シキちゃん”だからね、彼女は」
そうかい、と与謝野晶子は嬉しそうで悲しそうな笑みを浮かべた。
国木田独歩「おい……」
太宰治「どうしたの、くにきぃだくん」
国木田独歩「あの女性は一体何者だったんだ……?」
治は私の方を向く。
これは、面倒くさいから私に説明させようという顔だ。
後で文句は云うとしよう。
清少納言「元ポートマフィア幹部の清少納言の最初の部下であり弟子であり相棒であり親友である現在私の席に座らされたと思うと可哀想なただのチートかと思いきや彼女以外では扱えないほど制約が面倒くさい異能力を持っている女で名前は紫式部」
「「???」」
清少納言「だーかーら、元ポートマフィア幹部の清少納言の最初の部下であり弟子であり相棒であり親友である現在私の席に座らされたと思うと可哀想なただのチートかと思いきや彼女以外では扱えないほど制約が面倒くさい異能力を持っている女で名前は紫式部だって」
「「?????」」
清少納言「あー、はてなが増えてる。面倒だから治が分けて説明してあげて」
太宰治「いや、説明してあげてと云われましても」
私がもう説明する気がないのが判ると、治は渋々説明を始めた。
太宰治「まず、名前は紫式部。異能力は私もよく知らない」
中島敦「そうなんですか?」
太宰治「あの人は昔からずっと森さんのお気に入りでね。異能力はポートマフィア内でも“最後の五大幹部”以上に知られていないよ」
与謝野晶子「……。」
太宰治「あとは普通に清さんの部下であり、弟子であり、相棒であり、親友だよ」
国木田独歩「つまり、どういうことだ?」
太宰治「元々清さんの部下で、戦闘技術とかを教えてもらっていた。ただ、ある時から私と中也みたいに組まされるようになって、年齢が同じなのもあって二人は友人なのだよ」
無情で無慈悲な操人形(4)
前回のあらすじ
アキちゃんとシキちゃん((
清少納言side
太宰治「清さん、紫さんの異能力教えてくださいよ」
清少納言「……断る」
ちぇ、と治は自席の机に伏せる。
別に教えても構わないけど、何処で誰が聞いているか分かったものじゃない。
それなら、最初から云わない方がいい。
中島敦「そういえば何で|紫《ゆかり》さんなんですか?」
清少納言「呼びにくいじゃん、|紫《むらさき》って。それに式部も違うかなぁ、って感じであの|幼女趣味《ロリコン》がそう呼び始めた」
太宰治「それがもうマフィア内で定着してるんだよ」
中島敦「な、なるほど……?」
まだ疑問はありそうなものの、中島敦は納得してくれた。
あとはそうだな──。
江戸川乱歩「与謝野さん、少し休憩してきなよ。清さんの為に急いで帰ってきたでしょ」
与謝野晶子「……あぁ。そうさせてもらうよ」
清少納言「珈琲、後で持っていくよ」
私がそう云うと、察してくれたのだろう。
与謝野晶子はいつもとは少し違う足取りで医務室へと消えた。
金色の蝶を、大切そうに撫でながら。
太宰治「清さん。確か紫さんって、森さんがずっと昔からお気に入りなんですよね?」
清少納言「遠回りの聞き方は嫌いだよ」
太宰治「じゃあちゃんと聞きます。与謝野女医と紫さんって、森さんが軍医の時から知り合いですか?」
清少納言「……いいや、もっと前からだね」
私が云えるのはここまで。
後のことは彼女が決めることだ。
清少納言「そんなことより、窓どうにかしようよ」
窓ガラスが床に散らばり、私のせいで血もあちこちにはねている。
普通に申し訳ない、と思う。
やっぱり無像しか操れないのは不便だな。
好きなものをいい感じに操れたらいいのに。
泉鏡花「清さん」
清少納言「ん、どうかした?」
泉鏡花「服を着替えた方がいいと思う。血だらけだし、穴も開いてる」
確かに、と私は面倒なので服を取り寄せる。
会議室が空いてる筈なので着替えに行くことにした。
清少納言「……。」
ついでに電話するか。
???『君から掛けてくるなんて珍しいね』
清少納言「……何故話した。普通に殺しに来たんだけど」
???『一体何のことかな』
清少納言「とぼけるな、森鴎外。紫式部に私が武装探偵社にいることを話しただろ」
森鴎外「紫くんが……!?」
本当にとぼけているのかと思ったけど、この反応は──。
清少納言「──全て話してくれないかな。私にはその権利がある筈だ」
???『“|江戸雀《おしゃべり》は最初に死ぬ”。それは|首領《ボス》も変わらないのを、清も分かっていよう?』
清少納言「……尾崎紅葉」
森鴎外『ちょっと紅葉くん? 今は私が清くんと話しているのだけれど──』
尾崎紅葉『幼女趣味は黙っておれ』
森鴎外『ぴえん』
尾崎紅葉『……お主がマフィアに戻ってくるのなら、|私《わっち》たちは快く紫に関する情報を渡そう』
どうする。
そう、尾崎紅葉は電話越しで笑みを浮かべている気がした。
無情で無慈悲な操人形(5)
前回のあらすじ
『……お主がマフィアに戻ってくるのなら、私わっちたちは快く紫に関する情報を渡そう』
清少納言side
清少納言「分かった」
と、云うとでも思ったのか。
清少納言「戻るくらいならマフィア全構成員の犯罪を政府に売って仲良く死刑にしてもらうよ」
尾崎紅葉『紫の情報は良いのかえ?』
清少納言「良くないよ、勿論。それ以上にマフィアに戻りたくないだけ」
尾崎紅葉『……。』
何を考えているのだろうか。
電話越しではいまいち感情が読み取れない。
尾崎紅葉『……気持ちは変わらない、か』
森鴎外『紅葉くん?』
暫くすると、尾崎紅葉は一言だけ告げた。
尾崎紅葉『清が消えた日に紫も消えた』
清少納言「……。」
尾崎紅葉『現在、五大幹部の席は二つ空いておる。あとは自分で考えるといい』
清少納言「……ありがとう」
私の感謝は届いたのだろうか。
もう通話は切れている。
清少納言「紫式部もあの日に消えた、か。」
予想外の返答に少し動揺が隠せない。
マフィアで待ち続けているものと思っていたけど、自分で動いたとは。
あの感じだと、今すぐにでも動いた方がいい。
清少納言「……面倒ごとは、嫌なんだけどな」
それから私は珈琲を淹れた。
向かうのは勿論、与謝野晶子のいる医務室た。
与謝野晶子「いらっしゃい」
清少納言「顔色は良さそうだね」
与謝野晶子「まぁ、別にシキちゃんに会えたことは嫌じゃあなかったからね」
そう、と私は空いていた椅子に腰かける。
清少納言「……さっき、森鴎外に連絡したら面白いことが判ったよ」
与謝野晶子「面白いこと?」
清少納言「どうやら紫式部はマフィアに暫く帰っていないらしい」
与謝野晶子「それは……面白いよりも、普通に驚きが勝ってしまうねぇ……」
清少納言「今日の襲撃はマフィアの指示じゃない。本物の彼女の筈だけれど……ふふっ、誰が裏にいるのかな」
与謝野晶子「……森|医師《せんせい》以外に、シキちゃんが命令を聞きそうな人がいるとは思えないけどねぇ」
清少納言「私もそう思うよ」
さて、と与謝野晶子は外していた髪飾りへ手を伸ばす。
金色の蝶。
あれは、彼女が大戦中に貰った贈り物。
与謝野晶子「そろそろ昔話でも始めないかい?」
清少納言「……私から誘っておいてあれだけど、別に無理しなくていいからね」
与謝野晶子「無理はしていないよ」
ただ、と与謝野晶子は微笑む。
与謝野晶子「いつまでも逃げ続けるわけにもいかないからね」