この作品は作者が一度は書いてみたかった『異能学園バトル』×『英国出身の迷ヰ兎』になっています。
エイプリルフールの派生(???)なので失踪するかも。
まぁ、その時はその時ということで((ルイスの飛び蹴りが天泣を襲う…‼︎
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目次
前書き
どうも、天泣です。
ということで、ファンレター来たから書いていくぞぉ!
ここでは注意書きと、設定の再確認(?)をします。
注意書き
・このシリーズは作者が書きたいなぁ、と思ったら書くので無期限の更新停止になる可能性が高いです。
・文スト二次創作です。
・オリキャラが出ます。
・まだ誰かは決めてないけど、死者も出す予定です。
・オリジナルストーリー。
・オリキャラも原作キャラもキャラ崩壊してる。
設定(?)
・四月、入学式の日にルイスたち学生が学校に閉じ込められた。
・閉じ込められるまでは、ただの平和な並行世界。
・登場キャラは国立迷兎学園の“生徒”または“教員”で、原作キャラやオリキャラをテキトーに分けてる。
頑張って文スト知らない人でも楽しんでもらえるように書きたいなぁ…。
無理だろうけど((
てことで、更新お楽しみに!
Day.1-1
「(ルイスによる飛び蹴りが天泣を襲う…!!)」と全く内容一緒です。
興味ない人は後書きだけでも見てってください!
国立|迷兎《めいと》学園。
それはヨコハマにある、世界一入学の難しいと呼ばれる中高一貫校。
元々の偏差値が高いことはもちろん、一番な理由は募集人数が30名というところだろう。
在籍生徒は全校で180名と少なく、まさかの倍率は例年10倍前後。
これは、そんな学園に通う迷ヰ兎達の物語。
---
季節は春、4月上旬だった。
3月中旬から咲いている桜も散ることなく、今日から学園に通う中学一年生達を祝福しているようだ。
???「━━よいしょ、っと……」
“立ち入り禁止”の張り紙が貼られている扉が開かれる。
屋上へやってきたその生徒は、立ち入り禁止にされていることなど気にしていない様子で寝転がった。
空は真っ青で、雲がゆっくりと流れている。
???「……ふわぁ」
眠い、と生徒は目をこする。
今日は中等部も高等部も、入学式があった。
今の時間帯は、高等部の入学式が行われていることだろう。
生徒のネクタイは緑色、つまり二年生だった。
在校生は教室で入学式の中継を見なくてはならないが、その男子生徒は今もなお屋上にいる。
まぁ、普通にサボりだ。
???「こんな暖かい日は昼寝か入水に限るね」
茶色の蓬髪、そして身体中に巻かれている包帯。
そんな個性豊かな生徒━━太宰治は、起き上がって大きな欠伸をした。
一眠りしよう。
そう太宰が思った次の瞬間、扉の開く音が静かな屋上に響き渡る。
???「サボりは感心しないよ、太宰君」
太宰「……うわっ」
太宰は思わず、顔を歪ませる。
金髪に翡翠の瞳。
外国の血が流れているであろう生徒━━ルイス・キャロルは開いた扉が閉じないように寄り掛かる。
ルイス「“うわっ”と云われると傷つくね」
太宰「中也ならまだしも、ルイスさん相手に鬼ごっこはしたくないです」
ルイス「相変わらず呼び捨てにしてくれないんだね、君」
同じクラスなのに、とルイスは屋上へと足を踏み入れる。
何故か太宰は入学時から彼のことを“さん付け”で呼んでいた。
本人曰く特に理由はないらしいが、ルイスは気になって仕方がない。
さて、とルイスが仰向けになっている太宰の顔を覗き込む。
ルイス「早く帰ろうか。先生も待っているよ」
太宰「待たせておけば良いじゃん。時間の無駄だよ、入学式のリモート参加なんて」
太宰は視線を逸らし、目を閉じる。
ルイスはため息をつくことしかできない。
太宰「━━?」
ふと、起き上がった太宰が辺りを見渡す。
ルイス「……どうかした?」
太宰「何か違和感があって」
ルイス「違和感?」
立ち上がった太宰は、格子の先に広がる校庭を見る。
誰もいない筈の校庭に見える、一つの影。
太宰「……あれは━━」
その瞬間、今まで経験したことのないような揺れがルイスと太宰を襲った。
初めのうちは地震かと思っていたが、確実に違う。
学校の塀の内側から空高くへと伸びる壁。
壁は空までも覆い尽くし、二人の脳裏にある仮説が浮かぶ。
━━閉じ込められた。
学園に閉じ込められるなど、意味が分からない。
状況把握の為にも、二人は教室に戻ろうとするがそれは叶わない。
太宰「ルイスさん━━?」
ルイス「うっ……ぐあぁ……」
しゃがみ込んだかと思えば、ルイスは床を転がり回る。
ずっと頭を押さえて、全く離さない。
太宰「何が起こって……っ」
🐰掲示板
迷兎新聞部が様々な情報が掲示している。(読者、そして作者の為にこれから後書きで情報が書かれていくことだろう。)
🐰迷兎新聞部
部活動の一つであり、昨年まで毎日新聞を作っていた。閉じ込められてから新聞が発行されることは無くなったが、代わりに生存者や敵の情報を分かりやすく掲示板にまとめている。(生存している部員は××のみで、一人でまとめている。すげぇな。)
🐰太宰治
高等部二年で、サボり常習犯。出席日数はギリギリだが、頭脳明晰でいつも試験などでは学年一。(原作よりは頭の回転が遅いが、物凄く勘が良い。というか危険が訪れる直前に違和感を感じる。)
🐰ルイス・キャロル
高等部二年で、太宰の面倒を見る係にされている。太宰の捜索で出席日数がギリギリだが、試験の結果はそこそこ良い。(因みにアリスとは双子設定で、この世界の彼は身長が160cmです。特に意味はないけど。)
━━━
てな感じで裏情報とか読者向けは()で書いていきます。
次回もお楽しみに。
Day.1-2
注意とかは同シリーズ『前書き』へ!
壁に閉じ込められる約五分前。
中等部一年。
その教室では入学式が終わり、ガイダンスが行われていた。
???「ふわぁ…」
春の暖かい陽光が少女を眠りへと誘おうとする。
しかし、せっかく“あの”国立迷兎学園に入学できたのだから、と眠らないように我慢していた。
少女は眠気に負けない為にガイダンスに集中したが、つまらない話でまた眠くなってくる。
???「綺麗だなぁ…」
桜、と少女は視線を外へと向ける。
校庭に咲き誇る桜は、自分達の入学を祝福してくれているかのようだった。
風で花弁の舞う姿はとても美しい。
そんなことを考えていた少女は、ふと気になるものを見つけた。
まだまだガイダンスは掛かるため保護者達は帰宅しているのにも関わらず、校庭に人影があるのだ。
その後ろ姿をジーッと見つめていると、その人物が振り返る。
???「…あ、」
その人物と目が合った瞬間━━。
---
時と場所が戻り、屋上にて。
太宰「ルイスさん!」
そう呼び掛ける太宰に対し、ルイスは目に涙を浮かべながら床に転がるのみ。
太宰に反応する余裕すらない。
太宰「とりあえず保健室……否、救急車の方が良い」
携帯電話を取り出し、固まる。
壁の影響なのだろうか。
何故か電波が飛んでおらず、救急車など呼べない。
誰とも連絡が取れない状況に太宰は焦る。
もしも、ルイスがこのまま死んでしまったら。
大切な友人。
否、それ以上の人物を死なせるわけにはいかない。
太宰はルイスを背負い、校舎へと入っていった。
ルイス「ふぅ……ふぅ……」
初めの状態に比べれば、ルイスは随分と落ち着いていた。
太宰はというと、一度も足を止めることなく一階にある保健室へと向かっていた。
とりあえず寝台でちゃんと寝かせた方がいい。
太宰「……。」
太宰は不思議に思っていた。
校舎内には高等部二年と三年、それから中等部は全学年いる筈だ。
しかし、声が一つもしなかった。
ごく普通の生活を送ってきた自分達は逃げ惑い、あの壁は疑問を持つ筈だというのに。
でも教室まで確認しにいく余裕のない太宰は、真っ直ぐ保健室へと向かうのだった。
🐰国立迷兎学園の校舎
とにかく横に広い。東側が中等部、西側が高等部の教室になっており二階が一年、三階が二年、四階に三年のクラス教室がある。また中央には理科室や技術室などの特別教室が二階から四階まである。中高各二つずつ用意されており、授業などがぶつかる恐れはない。体育館とプールは校庭の隅にある。
🐰謎の少女
中等部一年で、凄く眠たそうな少女。(名前は多分次回でます。)
━━━
本当は少女との合流まで行きたかったけど今日はここまで!
次回もお楽しみに。
Day.1-3
注意書きとかは同シリーズの「前書き」見てね。
今まで書いた小説の中でダントツでグロい気がする。
保健室へとやってきた太宰とルイス。
太宰「……ルイスさん」
息は安定しており、大丈夫そうには思える。
だが、万が一のことを考えて太宰は何度か外部との通信を試みた。
太宰「繋がらない、か。本当に何が起こってるのかな?」
災害時のように放送が入って、生徒の避難誘導や安全確認を行ってもいいと太宰は思った。
壁に囲まれているせいで校庭は真っ暗で使えない。
ならば体育館に集合するなど、幾らでもやり方はある筈だ。
その時、保健室の扉の開く音が聞こえた。
不在だった養護教諭が帰ってきたのだろうか。
少女「ほ、包帯は……ッ」
暗い髪色に、青い瞳の少女が駆け込んでくる。
その小さな体が背負うは━━。
太宰「……その怪我」
少女「すみません! 包帯何処か知りませんか!」
太宰「そこに寝かせて」
太宰は包帯の場所など知らなかった。
しかし、いつでも懐に新品の包帯を仕込ませている。
慣れた手つきで太宰は、少女の背負っていた“足から血を流す少女”の手当てを始めた。
太宰「それで、何をどうしたらこんな大怪我になるわけ?」
少女「……先輩、もしかしてあの揺れが収まってから、この部屋から出てませんか?」
質問返しは嫌いなんだけど、と太宰はため息をつく。
太宰「私達は屋上から中央階段を使って真っ直ぐ保健室に来たのだよ」
少女「じゃあ、見てないんですね……あの“怪物”を」
太宰「……怪物?」
---
突如、揺れが少女達を襲い、壁が学校を囲む。
その後、全員が頭が割れそうなほどの痛みに床を転がった。
少女「……ぅ」
数分すれば症状は落ち着いてきた。
一人、また一人と目覚めていく。
少女はある人物に体を揺さぶられたことで、目を覚ました。
???「大丈夫?」
少女「うん」
お姉ちゃんは、と少女は体を起き上がらせる。
改めて外を見てみると、真っ暗だった。
壁のせいで外からの光が入ってこないのだ。
担任「怪我をした人はいませんか!」
少女の担任が生徒一人一人の安全を確認していると、廊下から悲鳴が聞こえてきた。
ちょうど扉の近くにいた担任が廊下を見ると━━。
担任「……え?」
グサッ、と音を立てて担任の腹部に何かが突き刺さる。
その“何か”が抜かれると、担任は床に倒れ込んだ。
“それ”は倒れた担任に何度も突き刺す。
誰かが悲鳴を上げた。
反応した“それ”は担任だった肉塊を踏み越えながら、教室へと入ってくる。
少ししか見えなかった“何か”は人の形をしており、腕は鎌の形をしていた。
扉の近くにいた生徒は逃げようとした。
しかし“何か”はそれを許さず、無惨にもその生徒の頭と身体を分離させる。
頭は、少し離れたところにいた別の生徒の腕の中へと嵌る。
少女の姉「逃げるよ」
少女「お、お姉ちゃん!?」
少女の姉はすぐに手を引いて駆け出した。
それに続くように、クラスメイトも教室から飛び出す。
少女「うっ……」
目の前に広がる光景に、少女は口元を抑える。
何処を見ても肉塊が転がっており、廊下が真っ赤に染め上げられていた。
“何か”の姿は見当たらないが、たくさんの悲鳴が廊下を反響している。
何処かで“何か”は人を殺しているのだろう。
---
少女「━━お姉ちゃんの傷は、逃げてる途中で怪物にやられました」
太宰は正直信用できなかった。
そんな非現実的なことがあるわけがない。
けれども、少女の話はルイスが頭痛で苦しんでいた時刻と一致する。
太宰「……君、名前は?」
少女「さ、桜月です。泉桜月。お姉ちゃんは鏡花━━」
そう、と太宰は冷や汗を流す。
太宰「桜月ちゃん、そこを動かないでね」
次の瞬間、太宰は自分の座っていた椅子を桜月の頭に当たるスレスレに投げた。
🐰泉桜月
中等部一年。華奢な身体をしているが、姉のことを怪物から逃げながら保健室まで連れていくなど意外と力持ち。(みんな大好き“ののはなさん”のところの桜月ちゃんです。リクエストいただいたので登場。キャラ崩壊したらごめん!)
🐰泉鏡花
中等部一年。桜月の双子の姉で、妹を守る為なら何だってできる。(みんなも鏡花ちゃんを推そう!)
🐰怪物
閉じ込められてから学園内を徘徊する“何か”。何故か人間を殺しにくる。(見た目を頑張って文字に起こすのムズすぎる。)
Day.1-4
注意書きとかは同シリーズの「前書き」見てね。
桜月「ひゃあ!?」
頭スレスレに飛んでいった椅子に、思わず桜月は小さな悲鳴を上げる。
そんな桜月の声と、何かの呻き声が重なった。
ドッ、と太宰の蹴りが当たった“怪物”は廊下へと飛ぶ。
椅子を投げつけられ、蹴りも入れられた。
怪物に感情があるのかは不明だが、太宰を睨みつけているように見えた。
桜月「先輩!」
太宰「私が引き付けている間に、君は姉を連れて窓から逃げるといい」
外は暗いが、校舎からの光で全く見えないわけではない。
鏡花を背負いながら桜月が逃げることは可能と、太宰は判断した。
太宰「この学園に安全な場所など無いかもしれないが、少なくとも数分後の此処よりは幾分かマシだろうね」
そう、桜月へ微笑んだ太宰は怪物の攻撃を皮一枚で避ける。
床に転がる先程の投げた椅子を拾い、また怪物へと投げつけた。
狼狽える怪物に、太宰は膝蹴りを食らわせる。
桜月「つ、強い……!」
桜月は、そう声を上げることしかできなかった。
先程まで信用していなかった怪物へ、太宰は臆することなく立ち向かっていく姿は格好良い。
しかし、怪物を完全に倒すことは不可能だった。
雄叫びを上げたかと思えば、どんどん怪物が集まってくる。
太宰「早く行くんだ!」
桜月「……っ」
鏡花を背負い、桜月は窓の鍵を開ける。
だが、窓を開くことはなかった。
ダンッ、と音を立てて何かが窓に突撃してくる。
突然のことに桜月は後ろへ転ぶ。
窓の外には狼のような怪物が、唸り声を上げながら桜月達のことを睨みつけている。
太宰「外からも怪物が……!?」
何度も体当たりをし、窓硝子を壊そうとする怪物。
太宰は目の前の怪物から手を離さず、桜月はただ硝子にヒビの入っていく様子を見ることしかできない。
太宰「桜月ちゃん!」
そう、太宰が桜月の名前を呼ぶ。
同時に窓硝子が破られる。
桜月には、まるでスローモーションのように感じられた。
---
先輩の呼ぶ声が聞こえる。
硝子の破片が私へと降ってくる。
怪物が、喉元に噛みつこうとしている。
反射的に私はお姉ちゃんを守ろうとする。
覆い被さって、痛みに堪えるように目を閉じる。
--- 「“|不思議の国のアリス《Alice in wonderland》”」 ---
🐰不思議の国のアリス/Alice in wonderland
××の異能力。効果は━━。
Day.1-5
注意書きとかは同シリーズの「前書き」見てね。
桜月と鏡花を逃すように立ち回ったものの、窓から怪物が侵入。
その怪物は二人を喰らおうと、その大きな口を開けていた。
手を伸ばそうにも、間に合うわけがない。
正直なところ、太宰は諦めていた。
しかし、次の瞬間。
閉まっていた寝台の仕切りが開かれ、その青年は声を上げた。
--- 「“|不思議の国のアリス《Alice in wonderland》”」 ---
黄色の文字列が、太宰達を包む。
理解が追いつかず、ただただ全員が反射的に目を瞑った。
???「……大丈夫?」
そんな声が聞こえ、太宰は目を開く。
すると、何故か保健室に自身達はいなかった。
真っ白な何もない空間。
否、一つだけあった。
座り込んでいる太宰や、鏡花に覆いかぶさる桜月。
そして、優しく笑っている青年の姿が映っている“鏡”。
たった一つだけある“鏡”に、太宰は異様な雰囲気を感じた。
太宰「な、にが……」
ルイス「心配しなくても、あの怪物は此処に来れない。そして此処は僕の世界……だと思う」
曖昧な回答に、太宰は何も言えなかった。
ただ、怪物が来れないなら一息つけることだけ理解した。
桜月「あれ、私生きてる……?」
ゆっくりと起き上がった桜月に、二人は視線を向ける。
とりあえず太宰は立ち上がり、桜月の元へ向かう。
桜月「あ、先輩! 何ですか此処!」
太宰「此処は私の同級生の世界だから心配はいらない、と思うよ」
桜月「思うよ!?」
もっとちゃんとした説明がしてもらいたい桜月。
しかし、太宰も理解できていないので何も言えなかった。
少ししてルイスが口を開く。
ルイス「初めまして。見たことないし新入生……かな。僕はルイスだ。ルイス・キャロル」
桜月「綺麗……」
ルイス「え?」
桜月「す、すみません! あんまり周りに外人がいなくて……いや、差別とかそういう訳では……!」
ルイス「そんなに焦らなくて大丈夫だよ」
太宰「私は太宰。太宰治だ」
ついでに太宰も自己紹介をし、桜月も改めて自己紹介をした。
桜月「それで此処って……」
ルイス「僕が創った世界、だと思う。上手く説明できないんだけど、あの頭痛の後から胸の辺りに温かいものがあって」
太宰「温かいもの?」
ルイス「自分でも未だに信じられていないんだけど、超能力とかの類いが使えるようになってる。僕の場合は、この世界に出入りする事ができる……みたいな?」
どういうこと、と太宰と桜月はツッコミを入れたくなった。
その時、視界の隅で何かが動いた。
???「あれ、わたし……」
桜月「お姉ちゃん!」
鏡花「さ、桜月?」
抱きついてきた桜月の頭を撫でながら、鏡花は自分の足を見る。
怪我をしている足には包帯が巻かれていた。
視線を上げると、太宰が微笑んでいる。
太宰「痛みはあると思うけど、止血も済んでるから無理をしなければ問題ないと思うよ」
鏡花「……貴方が手当を?」
太宰「うん。桜月ちゃんに助けを求められてね」
鏡花「ありがとう」
先輩だと気がついた鏡花はすぐに敬語を使おうとする。
しかし、太宰はそれを断った。
楽に接してもらえるのが一番らしい。
🐰不思議の国のアリス/Alice in wonderland
ルイス・キャロルの異能力。効果は空間を創造し、人や物を出し入れすることができる。作ることができるのはあくまで空間に関するものだけだが、何故か鏡はある。(壁や扉は可能だが、食べ物や家具などは創ることができないってことだーね。まぁ、やっぱり初登場の異能はルイスくんだよね。)
🐰異能力
床を転がり回るほどの頭痛の後に使えるようになった非科学的な力、超能力。
Day.1-6
久しぶり〜暫くドタバタしそうな天泣だよ〜
注意書きとかは同シリーズの「前書き」見てね。
太宰「それで、これからどうしましょうか」
ふと、太宰が呟く。
確かにワンダーランドには危険がない。
だが、ずっとここにいるわけにもいかなかった。
ワンダーランドには《《何もない》》。
それはこの場にいる四人が餓死する可能性があるということだ。
ルイス「現実へ戻る」
桜月「えっ!?」
ルイス「とりあえず生存者を探して、情報の共有をする必要があるかな」
太宰「もちろん私も行きますからね?」
ルイス「……君は、そういう人だった」
はぁ、とルイスはため息をつく。
ルイス「二人は此処で待っていてくれるかな」
鏡花「判った。此処に来た人に、ちゃんと説明する」
ルイス「ありがとう」
桜月への説明は、鏡花に頼むことにしたルイス。
鏡花へ礼を伝えると、ワンダーランドにたった一つだけある“鏡”へと向かう。
太宰「この鏡を抜けたら戻れるんですか?」
ルイス「その筈だよ。でも━━」
どうしようかな。
そう、小さくルイスは呟く。
近づいた途端、何故か鏡として機能しなくなった。
反射していた面は黒く染まり、ただの壁のようになっている。
ルイスが黒に触れると、水面のように波紋が広がった。
そして、何処かの景色が映される。
太宰「これは……」
ルイス「行くよ」
ルイスが鏡へと入っていく。
戸惑いながらも、太宰はついていくことにした。
鏡を抜けると、そこは鏡の先に広がっていた場所だった。
血で染められた階段の踊り場。
実際に死体が落ちていたりはしないものの、鉄のような匂いはする。
とりあえず、とルイスは鏡を確認する。
自身達の姿を映しており、触れても通り抜けることはできない。
ルイス「行くよ」
太宰「何処へ?」
ルイス「音のする方」
太宰「いや、獣じゃないんだから……」
その瞬間、近くで窓ガラスの割れる音が聞こえた。
何度も音が反響しているものの、大体の出どころは予想がつく。
太宰「……!?」
ルイス「は?」
すぐさま階段を降りた二人は、その様子を見て驚いた。
?「おや、生存者がいたんですねぇ、福沢学園長」
福沢「そこまで意外か、森先生。この二名なら残っていてもおかしくはない」
森「太宰君は判るのですが、ルイス君も喧嘩に強いのですか?」
福沢「……貴君は知らなかったか」
森「どういうことでしょうか?」
学園長である“福沢諭吉”。
そして、副学園長である“森鴎外”。
二人の足元では、桜月や鏡花を襲った怪物が金髪の少女によって取り押さえられていた。
ルイス「福沢さ……学園長」
福沢「怪我などはないか、ルイス」
ルイス「え? あ、その……大丈夫です……」
福沢「ならば良い」
太宰「ちょっと森さん!」
森「君も怪我していないね」
太宰「僕が自殺を失敗した時以外で怪我するわけがないでしょ……じゃなくて! あの壁は何なの!?」
森「残念ながら私も判っていないのだよ。ただ、今の学園に安全な場所はない」
森の言葉に、太宰は少しばかり瞠目した。
しかし、すぐに否定した。
太宰「安全な場所ならある」
森「……どういうことだい?」
ルイス「説明は後程します」
--- 「“|不思議の国のアリス《Alice in wonderland》”」 ---
太宰「……森さん達だけ送れるんですね」
ルイス「さっきの場合は、誰か残しても良いことはなかったから」
それじゃあ行こうか。
ルイスは太宰と、怪物だらけの校内で生存者探しを始めるのだった。
🐰ワンダーランド
ルイスの異能で創られた空間。出るには鏡を通るしかない。ルイスが異能力を発動しなければ入ることはできない。(送る人物はルイスが選択可能。)
🐰ワンダーランドの鏡
人が近づくと鏡部分が黒へと変化する。触れると波紋が広がり、触れた者が思い浮かべた鏡へと繋がる。
🐰福沢諭吉
国立迷兎学園の学園長。過去に剣道を習っており、その腕前は国外にも通用するほど。(何故か学園長室には刀があり、それを使って怪物を倒していた。)
🐰森鴎外
国立迷兎学園の副学園長。過去に軍医をしていた経歴があり、たまに養護教諭の代わりに保健室にいる。(相変わらずの幼女趣味だが、中高一貫校だから手を出すことはない…と思う。)
🐰金髪の少女
森鴎外が好きそうな幼女。(まぁ、勘のいい人は気がつくと思います。“あの子”です、はい。)
Dey.1-7
一年以上ぶりだね!!!!
注意書きとかは同シリーズの「前書き」見てね。
太宰「……見つかりませんねぇ、誰も」
ルイス「時間は掛かるけど、こうやって全ての場所を巡るのは大切だよ」
それにしても、とルイスは辺りを見渡す。
あるのは肉片と血。
昔見た光景がフラッシュバックするものの、別に問題があるわけではない。
ルイス「……アリスは無事かな」
そんな呟きと被さるように聞こえた悲鳴。
声の反響的に、そう遠くはない。
二人で急いでいると、一箇所に怪物たちが集まっていた。
悲鳴は教室の中から聞こえてくる。
もう、今すぐにでも扉という脆い壁が突破されそうな状況。
太宰「君のような得体のしれないものに使いたくないんだけどね」
一歩先に踏み込んだ太宰の手には包帯。
怪物たちの隙間を潜り抜けたかと思えば、包帯が奴らに絡みついて上手く動けないようだった。
太宰「それは私が首吊り健康法で使ってる、普通より切れにくいモノさ。それに、藻掻けば藻掻くほど包帯は引っかかり外れなくなる」
ルイス「色々とツッコミを入れたいところだけど、今は人命救助が先だ」
太宰「其処の扉は奴らで開けれなさそうですけど──」
ドカッ、という音が響き渡る。
何があったか。
簡単にまとめるなら、ルイスが教室の天井近くにある小窓に掃除道具を投げつけて割った。
あとは怪物の頭を踏み、僅かな凹凸に手を掛けて窓から中を確認する。
ルイス「やぁ、怪我はないかい?」
黒髪の女「貴方は……?」
ルイス「高等部二年のルイス・キャロルだ。とりあえず説明はあちらで聞いてくれ」
--- 「“|不思議の国のアリス《Alice in wonderland》”」 ---
ルイス「よいしょ、っと。さて次の生存者を探そうか」
太宰「探そうか、じゃないですよ!? え、何やってんですか?」
ルイス「……人命救助?」
太宰「そうだけどそうじゃない──!」
その時、包帯で身動きが取れなかった怪物が二人の方へ向かってきた。
ちょうど手に持っていた掃除道具で対応しようとするルイスだったが、何もせずに済んだ。
怪物たちを挟んで反対側──奥の方から何者かに倒されていたのだ。
???「見慣れた包帯だと思ったら、やっぱり手前か」
最後の一体が小柄な男に踏みつけられる。
???「とりあえず状況を説明しやがれ、太宰」
太宰「うわっ、生きてたんだ。中也のことだから最初の揺れでロッカーとかに押し潰されてると思ってたよ」
中也「殺すぞ」
🐰黒髪の女
長い黒髪の女子生徒。(これだけで分かったら結構すごい。誰か判明するのは多分もっと先)
🐰教室にいたもう一人の女子生徒
黒髪の女子生徒と同学年。(一ミリも触れてなかったけど、後で必ず登場するから此処で先に云っておきます)
🐰太宰の包帯
普通の包帯と特別な包帯がある。特別な方は本文で書かれたように、包帯か疑いたくなる性能をしている。誰がどのように作っているのかは不明。(別名、太宰自殺専用包帯。異能的に戦闘面で活躍することが難しそうなので考えた、ガチで謎が多い包帯。今後、別の種類が出るかもしれない)
🐰中原中也
高等部二年で、太宰とは中等部から仲が悪い。授業態度は良いが、期末考査などで思うように点数がでない。得意科目は体育と家庭科。(異能は勿論いつも通りです。お兄さんは今回の物語でお休み予定だけど、実際にどうなるかは不明)
Dey.1-8
注意書きとかは同シリーズの「前書き」見てね。
太宰「それで蛞蝓くんはどうして彼処に来たわけ?」
中也「黙れ青鯖」
ルイス「喧嘩するな~」
太宰と中也が顔を合わせるなり喧嘩を始めるのは、今に始まったことではない。
けれども時と場所を考えてほしい、とルイスはため息をついていた。
中也「悲鳴が聞こえたら駆けつけるに決まってんだろ」
ダンッ、と中也の蹴りで怪物が水平に飛んでいく。
中也「逆に聞くが手前は何で彼処にいたんだよ。あとその顔なんだよ」
太宰「君と同じ理由なことが嫌で仕方がない顔」
中也「怪物より先に手前を蹴り殺してやろうか」
そんな二人の間を飛んでいったのは、掃除用の箒だった。
奥にいた怪物へ投げたのは勿論この男である。
ルイス「いい加減にしようか、二人とも」
ニコニコと笑みを浮かべているが、目が笑っていない。
流石の二人も真面目に生存者探しをすることにした。
だがしかし、情報共有は必要だ。
太宰「そういえば中也、高等部はどうなってる? とりあえず中一の教室は怪物たちによって、悲惨なことになったみたいだけど」
中也「少なくとも二年は1/3ぐらい無事だ。怪物によって結構やられたが、変な力が目覚めた奴である程度倒して無事な教室に引きこもってる」
ルイス「……、アリスは」
中也「無事だ。というかアリスが中心になって、生き残ってる奴らをまとめてくれてるからな」
良かった、とルイスは安心しながらも怪物との戦闘を続けていた。
中也「あとは三年の教室が空だったな。犠牲者が出てるのは確定だが」
ルイス「一年は中等部の後に入学式だからまだ体育館か?」
中也「閉会の言葉の後に例の地震が来たから、その可能性が高いだろうな──っと、長かったな」
三人が足を止めたのは二年の教室の前。
パニックで教室の外に出た者から死んでいったのだろう。
道中に比べ、明らかに血の量が多い。
そして、異質な空気が辺りを満たしている。
???「……ルイス?」
ルイス「っ、アリス!」
其処にいるの、と扉を開けるがルイスは中に入れなかった。
見えない壁のようなもので弾かれる。
アリス「シャルル先生!」
シャルル「……すまない、まだ扱いが良く分かっていなくてな」
アリス「ルイス、怪我はない?」
ルイス「大丈夫だよ。その傷は──」
アリス「ただのかすり傷よ。とりあえず太宰君たちも中に入ってちょうだい。ここは、何処よりも安全だから」
🐰アリス・キャロル
高等部二年で、クラスの推薦で学級委員をしているので発言力が高くクラスの中心にいる。ルイスの双子の姉であり、背丈や頭脳明晰なところなど似ている部分が多い。(はい、双子ということでルイスと名字が一緒です。私の独断と偏見で姉になりました。異能は勿論いつも通りだけど、詳細はまたいつか。)
🐰シャルル・ペロー
高等部二年の担任をしており、世界史を教えている。(他に何を書いたら良いか思い浮かばなかった。とりあえずこの人も異能はいつも通り。)
🐰見えない壁
✕✕の異能によるもの。
Day.1-9
注意書きとかは同シリーズの「前書き」見てね。
太宰「それで、何処よりも安全というのは──」
アリス「信じられないかもだけど、先生の力よ」
高等部二年担任、シャルル・ペロー。
社会科の教員であり、普段は世界史を教えている。
興味がないことには一ミリも興味がないが、生徒のことを第一に考えるルイス達が高等部一年の時からの担任だった。
シャルル「“|赤ずきん《Little Red Riding Hood》”。どうやら紅い布を操れるみたいで、こんな風に獣みたいになる。まだ扱い切れていないが、この獣が空間を喰らうことで内と外に壁みたいなのが出来る……で伝わるか?」
太宰「私は理解できましたけど、ルイスさんは?」
ルイス「まぁ、何となく」
中也「どうして手前ら分かるんだよ」
太宰「何処ぞのおこちゃま中也と違って学年トップだから」
中也「あ"?」
アリス「そこ! 喧嘩しないの!」
いつも通りの太宰と中也に、クラスメイトが笑う。
非常事態でも変わらないものがあれば、少し安心できるようだった。
ルイス「アリス、僕の力は異空間に人を出し入れすることが出来る。シャルル先生もずっと力を使っているのは大変だろうし、僕達が見つけた生存者は其処にいるから送っても良いかな?」
シャルル「私のことなら心配いらないが……」
???「良いんじゃないかしら」
アリス「……理由は?」
奥から現れた紺色の三つ編みの女子に、アリスは問いかける。
???「一つ。ルイスが言った通り、いつまでも先生に安全を確保してもらうわけにはいかない。一つ。生存者数によっては通常教室で過ごすのはストレスになる」
太宰「流石ですね」
???「最後にもう一つ」
中也「まだあるのかよ!?」
???「ルイスさえ生きていれば、生存者の安全が確保される。逆にルイスが死んだら全員死ぬことにならないかしら?」
教室がザワつく。
ルイスとアリス──それからもう一人、黒髪の男はため息をついていた。
アリス「レイラ、皆を不安にさせないでちょうだい」
レイラ「あら、私はちゃんと良いと思った理由は云ったわよ? ただ悪い点も知らなければいけないじゃない。死人は何も云えないのだから」
???「それでしたら僕も一つお聞きしたいことが」
アリス「……貴方も何かあるのかしら、フョードル」
大したことではないのですが、とフョードルは一息置く。
フョードル「ルイスさんの異能力で異空間を通じ、外に出ることは無理なのですか?」
ルイス「試してはいない」
フョードル「……。」
ルイス「けど、今は生存者を少しでも救うべきだ。現時点で試さないといけないかい?」
フョードル「……──いえ、考えを知りたかっただけなので」
🐰赤ずきん/Little Red Riding Hood
シャルル・ペローの異能力。効果は自身の服を刃などに変化させるというもの。自身の服ではなくても変化させることができ、紅い布であれば例えハギレだったとしても獣に変化させることが出来る。(本編と同じ能力。ちょうど紅い服だったからよかったものの、もし違ったのなら──。)
🐰レイラ
高等部二年。アリスとはよく女子のトップ争いをしており、何かと比べられがちではある。ファンクラブが面倒くさい。(仲が悪いわけではないけど、用がなければ全く関わらない。)
🐰黒髪の男
高等部二年。唯一レイラが心を許している人物で、基本的に無言。(次の話ではまだ名前でないです。)
🐰フョードル・ドストエフスキー
高等部二年。病弱体質でよく体育は見学しているが、座学では太宰と並ぶ学年一位。(何故かルイスに絡んでは冷たい反応をされて落ち込んでいる。演技の可能性もあるから結局なにがしたいのか分からない。)
Day.1-10
注意とかは同シリーズ『前書き』へ!
???「それで結局どうするんだ?」
或る男子生徒の声に、皆が注目した。
???「レイラの意見を聞いて迷ってる奴らがいるだろ」
フョードル「確かに、ルイスさんの云う“生存者を少しでも多くする”ことを考えるのなら早く決断したほうが良いかと」
アリス「……そうよね。今も誰か困っているかもしれないし」
???「因みに俺は賛成。あの揺れからもう30分ぐらい経つだろ? その間、戦いながら中也と合流して此処まで来たんだ。そう簡単に死なねぇだろ」
レイラ「よくそんなに信用できるわね、直哉。先生とかルイスの力が怖くないわけ?」
直哉「先生は俺等を守ってくれて、ルイスは今まで誰かを助けてきた。それを否定すんのは違うだろ。それに、お前も“良い”って言ってたじゃねぇか」
レイラ「えぇ、良いとは思うわよ。私は入りたくないけれど」
レイラの言動は、もう場を乱すためにやっているようにしか見えなかった。
少なくとも、留まるか否かでクラスが二つに分かれようとしている。
そして、この問題はそう簡単に解決するものではない。
シャルル「少し落ち着け」
アリス「……先生」
シャルル「残りたい者がいるのなら、私が継続して空間断絶で守り続けると約束しよう。ルイスの言う通り、まだ生存者はいるかもしれない。最終的にどうするかは、校内を全て見て回ってからにしたらいい」
レイラ「じゃあ私は残るわ」
続くように手を挙げたのは黒髪の男。
他にもチラホラ出てきたところで、残りは全員入る──と、いうわけでもなかった。
アリス「ルイスは変なところで無理をするから誰か見守らないとね」
ルイス「……別に必要ないよ」
太宰「まぁ、アリスさんなら任せられるかなぁ……。あ、私も教室待機でもいいですか?」
中也「手前もルイスについてくんじゃねぇのかよ」
太宰「いやぁ、ちょっと気になることがあって。二人のことは任せたよ、中也」
中也「手前に任せたとか云われるの気持ち悪ぃんだが」
太宰「うん、私も云ってる自分が気持ち悪くて吐きそうになった」
ルイス「じゃあ、とりあえず直哉は先にいる人達に今の状況を説明してもらっても良い?」
直哉「おう、任せとけ」
シャルル「ルイス、アリス、中也。……無理はするなよ」
🐰志賀直哉
高等部二年で、頭脳派の見た目をしてるが意外と脳筋。一つ上の兄がおり、彼も国立迷兎学園に通っている。(いつか兄弟が揃う予定だけど、いつになることやら。)
🐰現在の校内の状況
揺れから30分が経過。死者が多数出ているが、ルイス達“高等部二年”以外にも生存者はまだいる。(まぁ、焦点が当たるのはいつになるか分からないけど。)
Day.1-11
注意とかは同シリーズ『前書き』へ!
シャルルの異能力により、教室は再び安全な場所へ戻った。
しかし、レイラは特に安心している様子ではない。
レイラ「何故残ったの?」
太宰「云ったじゃないですか。気になることがある、って」
レイラ「それを知りたいのよ」
キョトン、としてから太宰は微笑む。
太宰「ルイスさんと、一年生の子たち以外の力について把握しておきたくて」
レイラ「……まさか、気になることってそれだけ?」
太宰「はい、それだけですよ?」
レイラ「それなら全員がいる時に聞いたほうが良いじゃない。わざわざ私を狙う必要はあるのかしら」
太宰「いやぁ、一番話がしやすいかと思って。普段は無言であることが多いですし、フョードルみたいに面倒くさくないので」
???「……前置きが長い」
太宰「あぁ、すみませんねシャムスさん。じゃあ単刀直入に聞きますけど──」
--- ──その力ってどんな感じなんですか? ---
レイラ「……、どういう意味よ」
太宰「ルイスさんの話だと“頭痛の後から胸の辺りに温かいものがある”らしいんですけど……何故か私、全然分からなくて」
シャムス「……! 君は力がないの?」
太宰「さぁ、どうなんでしょう。でもお二人の反応的に、何か感じてはいるんですね。そして自分自身の能力なら理解できている、と云ったところでしょうか」
シャルル「その話、私も入れてもらっていいか?」
???「つ、ついでに僕も……」
ゆっくりと手を挙げた教室の端にいた彼は、視線が集まったことで即座に下げてカーテンの裏に逃げた。
現在教室にいるのはシャルル、太宰、レイラ、シャムス。
そして彼だった。
???「す、すみません勝手に話に入って──!」
レイラ「謝る必要はないでしょ。というか、その態度やめてくれない?」
ウザい、とレイラが吐き捨てると男がビクッと体を揺らした。
太宰「レイラさんの言う通り謝る必要はないよ、テニエルくん。とりあえず三人とも教えて頂けます?」
テニエル「ぼ、僕は漫画とかでよくある転移能力で……そ、その…まだ使い方が分からなくて……」
太宰「……お二人は?」
レイラ「教えないわよ。ねぇ?」
シャムス「レイラがそう云うなら」
太宰「相変わらず私、信頼されてませんね」
レイラ「……逆に何処をどう見たら貴方が信用できるのかしら」
全身包帯で、一日一回は自殺未遂。
信頼も、信用も。
レイラは太宰のことを信じてなかった。
そもそも誰も信用などしていないが。
🐰ジョン・テニエル
高等部二年で、出来るだけ影でいたいと願っている男子生徒。因みに中等部の頃から、とある先輩たちに振り回されている。(みんな大好きボスだよ〜。知らない人はコラボを見ようね☆)
🐰信用されていない太宰
彼が悪いのは云うまでもないことだろう。
🐰振り回している先輩たち
高等部三年の二人。一人は片目を隠す銀色の髪をした男で、一人は長い金髪を高い位置で二つに結んでいる。(生きているかは、ぜひ物語の先で。)
Day.1-12
注意とかは同シリーズ『前書き』へ!
教室に残らず、校内を探索し始めた三人。
広い校舎を探すのは大変だ。
それは太宰と共に一つずつ教室を確認していたルイスだからこそ分かることだった。
中也「それで、何処から探すんだ?」
ルイス「隠れている人がいるかもだから、手当たり次第になるかなぁ……」
すれ違いが起こることで、命を落とす人がいてはならない。
それはつまり、何度も同じ場所を廻らなければいけないことを表す。
ルイス「書き置きしようにも、見てくれるかは分からないからね」
アリス「そのことなんだけれど少し良いかしら?」
ルイス「ん?」
アリス「私の力“鏡の国のアリス”は鏡を操るもので、鏡に映ったものを手元の鏡へ映し出すことも出来るようなの」
中也「マジかよ。それを使えば探索は少し楽になるか?」
なるだろうね、とルイスは顎に手を添える。
確かに探索は楽になるものの、映すだけでは異空間に送ることはできない。
一定の距離にあるモノではないと送れないのは、ルイスがよく分かっている。
それに、映し出された場所によっては助けに行くのが間に合わないかもしれない。
ルイス「あくまで一方通行?」
アリス「……多分そうね。此方が観測できるだけ」
ルイス「声は?」
アリス「残念ながら映像のみよ」
そうかぁ、とまたルイスは考え込んだ。
中也「そういえば、壁が空まで覆っているのに電気は全く消えそうにないな」
アリス「非常用電源とかじゃない?」
中也「じゃあいつ消えるか分からねぇか。にしてもどうなってんだよ、学校の外も内も。放送一つぐらいあっても良いだろ」
ルイス「……それだ」
アリス「ルイス?」
ルイス「一階の職員室に向かおう。電源が落ちる前に、放送で安全な教室があることを伝えたら其処に人が集まる可能性が高い」
そして、職員室の放送は少し特殊で生徒が使えるものと違う。
高等部二年の教室が遠ければ職員室に集まってくる可能性が高い。
ルイス「放送室から動けないのは厳しいけど、生存者たちは希望を持てる。シャルル先生たちのいる教室にも届くだろうから、きっと受け入れてくれるはずだ」
アリス「……むやみに探すよりは得策ね」
中也「それじゃあ急いで向かいましょうか」
--- ──放送室へ ---
🐰鏡の国のアリス/Alice in mirrorworld
アリス・キャロルの異能力。効果は鏡に映ったものを手元の鏡に映せるというもの。(普通に弱体化してるが、元々転移異能にもなるし強すぎなんだよアリスさん。そしてアリス・キャロルって慣れねぇ!!)
🐰国立迷兎学園の放送室
教員、中等部、高等部と三つの放送室が存在する。教員用は職員室の中からしか入ることが出来ず、鍵を持たないルイスたちが入るためには──。(因みに中等部と高等部の放送室から放送する場合「◯等部放送室からのお知らせです」と流れる。教員用は普通に「キンコンカンコン」ってやつ。伝われ。)
─────
🐰シャムス
高等部二年。唯一レイラが心を許している人物で、基本的に無言。(例の黒髪くんです。前回のあとがきに入れ忘れてたからここで紹介。)
Day.1-13
???「……とりあえず近くには怪物の気配は無さそうだよ」
そうか、と黒髪の男が鎖を出す。
教室の扉や壁が破壊されないよう、廊下側の壁一面に鎖が張り付いた。
黒髪「……本当、何が起こってるんだろうな」
???「さぁ? 何かの災害というわけじゃないだろうし、人為的に起こされたのは確実だろうね。なんか学校全体を使った実験みたい」
???「乱歩さんがそう云うなら、その可能性が高そうだねぇ」
乱歩「直行の使える“|くさり山《鎖を操る力》”についても分かってないけど、とりあえず無理はしないでよ?」
直行「別に疲労感があったりはしないが……乱歩の言う通り、気にしておくことにするわ」
乱歩「与謝野さんたちの力もよく分かってないよね。というか僕だけ仲間外れなの何で!?」
頬を膨らませる乱歩。
そして与謝野が彼をなだめる。
見慣れた光景に、少し安心する同じ教室にいる三名。
与謝野「にしても、逸れてしまったあの二人は大丈夫かねぇ」
???「何となく大丈夫な気がしますが、やはり合流したほうが良いのでしょうか」
乱歩「自分たちの命を第一に考えた方がいいよ。探しに行って怪物に殺されたら元も子もないから」
???「乱歩の言う通りだ、安吾。今ばかりは俺も自分を優先に考えてしまう」
安吾「乱歩さん……織田作さん……」
直行「だが、引きこもってるわけにもいかねぇよな」
直行の言葉に、四名が口を塞ぐ。
ひとまず安全が確認されたとは云え、まだ廊下には怪物がいるような状態。
いつ鎖の壁が突破されるか分かったものではない。
志賀直哉の“くさり山”、そして織田作之助の“天衣無縫”があったからこそ、此処まで生き残ってこれた。
途中で逸れた二人も何かしらの力を持っているようだが、合流するには危険が多く移動ができない。
そして、何より此処で引きこもっていることで一番の問題となるのは、“衣食住”が整っていないこと。
織田作「災害用の非常食を探すのも一苦労だな」
乱歩「僕、あのクラッカー好きじゃないんだけど」
与謝野「今日は冷えるし、せめてブランケットぐらいあったら……なんて、贅沢なことは云ってられないね」
安吾「災害用の物品倉庫が一階なのが難しい理由の一つでもありますね。窓側の避難用滑り台を使っても良いですが──」
直行「あんな真っ暗じゃ何処に倉庫があるか分かったものじゃないな」
乱歩「まぁ、外にも怪物は居るみたいだし、助けが来るのを信じて待っているのが一番でしょ」
🐰江戸川乱歩
高等部三年で、テストの回答は学年トップ。しかし授業態度のせいで成績はやや低い。(相変わらずの“僕がよければ全てよし”精神なので授業中に寝たり、先生の間違いを指摘したりしている。元から頭脳明晰だからか、自身が異能力を持っていないことは自他ともに知っている。)
🐰志賀直行
高等部三年で、二年に弟がいる。はじめから異能の扱いが上手い。(無理しないよう云われても無理をする系男子。異能の使いすぎで倒れないでね。)
🐰与謝野晶子
高等部三年で、医大への進学を考えている。よく担任から乱歩の相手を頼まれているが、本人は別に嫌な様子ではない。(異能力は同じ予定だけど、後で変わるかも。)
🐰坂口安吾
高等部三年で、新聞部に所属している。自身のことは上手く書けないので以上。(最初の方に出た、迷兎新聞部の唯一の生存者。まだ掲示板はやってないけど、まとめてくれてありがとう、安吾。)
🐰織田作之助
高等部三年で、冷静な性格かと思えば普通に天然。異能は自動発動らしいが、使いこなせていると云えよう。(周りより大人っぽい見た目のため、昨年までに何度か職務質問を受けている。自他ともに制服を着ているとコスプレにしか見えない。)
🐰くさり山
志賀直行の異能力。効果は鎖を操るというもの。基本的には防御に使う。(でも、意外と攻撃手段にもなる。鎖の先に鋭利なものをつけたら敵を貫ける。)
🐰天衣無縫
織田作之助の異能力。効果は五秒後の未来を知れるというもの。ただ、自動発動型に加えて五秒という時間制限があるので、チートとは云えない。(発動するタイミングは認識している/近くにいる人が怪我を負ったり生死に関わる時。五秒で対応できない場面もきっと出てくると思う。)
🐰災害用倉庫
食料など色々揃っているが、校庭の隅にある。真っ暗なだけでなく、怪物もいるなか取りに行くのは大変だろう。(でも取りに行かないと何も始まらないよな)
🐰避難用滑り台
ちょうど安全が確保できた或る三階の教室にある。(私は小学校にあったけど、皆はどうだった? 実際使ったことないけど、どうなんだろう)
🐰途中ではぐれた二人
テニエルを振り回している二人と同一人物。
Day.1-14
ルイス「──着いた、けど……」
アリス「酷い有様ね」
道中にも被害者の姿は見えたが、職員室の中も荒れているようだった。
揺れの前に行われていた高等部の入学式──とは云ってもただの進級式であり、保護者などが来ていない。
職員室には担任をしていない教師陣がいたのだろう。
対応する術がなくても仕方がない。
異能力がなければ尚更だ。
???「……あれ、生存者いるじゃねぇか」
戻ってきて正解、と明るい声が響き渡った。
???「キャロル姉弟に、中原かぁ。うんうん、生き残ってそうな奴らだな」
中也「こ、コナン先生……!?」
コナン「はいはーい、保健室の養護教諭コナン・ドイル先生ですよー」
ルイス「……先生もご無事だったんですね」
コナン「あー……何人か、救えなかったけどな」
一瞬だけ暗い表情を見せたが、すぐに切り替えたコナンは白衣のポケットを漁りながら職員室に入っていく。
鍵束を指先で回しながら或る部屋の前に止まり、少し悪い笑みを浮かべる。
コナン「此処に用があるんだろ? 本来なら生徒は立ち入り禁止だが……ま、緊急事態だから仕方ないということで」
怒られるのは俺だけで充分、と鍵を開けた。
重い扉の奥に広がるのは様々な機械が揃った──そう、ルイス達が目指していた放送室だ。
コナンに感謝を伝えた三人は部屋に入って放送するための準備を始める。
まだ電気が落ちていないため、急いで機械の電源を入れてマイクをオンにする。
--- 『キーンコーンカーンコーン』 ---
放送開始ボタンを押せば、三人の聞き慣れたチャイムが鳴り響く。
顔を見合わせ、ルイスはマイクの音量を上げた。
ルイス「──高等部二年のルイス・キャロルです。ご察しの通り、教員用の放送室から失礼します」
ちゃんと放送は流れており、放送室の外にいたコナンの耳にも届いていた。
もちろん太宰たちのいる二年の教室にも、空き教室で休憩をしている三年たちの下にも届いている。
ルイス『例の揺れのあとに現れた壁。ある一定の人が使えるようになった摩訶不思議な力。まだ分からないことは多いですが、ひとまず高等部二年の教室は安全です』
レイラ「……余計なことを」
太宰「良いじゃないですか。生存者は多いに越したことないですし、この放送はちゃんと意味がある」
ルイス『僕の異能力で安全な空間に送ることもできます。……その、信用できないかもしれませんが職員室で待っています。廊下も校庭も怪物が多いので、此処に来るならお気をつけて』
それじゃあ、とルイスはマイクの音量を落とした。
🐰コナン・ドイル。
養護教諭であり、1-3ではタイミング悪く保健室にいなかった。影が見えてついて行ったらルイス達がいたので鍵を貸して上げた。(異能力は次回! やっぱり先生だよね、この人は。)
🐰放送が何処まで届くのか
校舎内はもちろん、プールや体育館までも放送は届く。校庭にもスピーカーはあるので普段なら近所の人へも届くが、壁で何も届いていない可能性が高い。(高い、というか全く届きません。壁は軽く数メートルぐらい幅あるので。)
Day.1-15
ふぅ、とルイスはため息を吐く。
こんなことで放送委員の真似事をすると思っていなかった。
中也「……どれぐらい生き残ってるんですかね」
コナン「さぁな。少なくとも保健室から職員室までに生存者はいなかったな。ついでに怪物も見てない」
ルイス「先生、保健室が荒れてたのは──」
コナン「怪物とやりあったんだろ? そんぐらいのことで怒らねぇから」
ポンポン、と頭を撫でたコナン。
ルイスは少し照れており、それを見てアリスが笑っていた。
何を思っているのか、中也は窓の外を見ていた。
中也「……あれは」
--- `高等部放送室からのお知らせです` ---
--- `中等部放送室からのお知らせです` ---
アリス「……!」
コナン「──異能力」
咄嗟にコナンは異能力を発動し、妖精に指示を出す。
`『ご機嫌如何でしょうか、国立迷兎学園の皆様。予想よりも生き残りが多くて、此方としては残念な限りです』`
ルイス「……行って来る」
アリス「待って。今は放送を聞いた方が良いわ」
ルイス「でも──」
`『例の放送で、敷地内にいる全員が生存者は自身だけではないと安心しただろうか。そんな皆様のために自分は良いことを考えました』`
コナン「良いこと、ねぇ……本当なんだか」
`『今から30分だけ怪物たちを強制的に活動不可能にします。その間、どうするかは皆様にお任せしますが、此方から仕方なく怪物が現れない安全地帯を用意しましょう』`
中等部、高等部の両方の放送はまるでエコーが掛かっているようだった。
理由は職員室にいるからだろう。
この場所や共有教室では二つの放送が聞こえるようになっている。
`『その場所は第二体育館! ご存知の通り、入学式が行われていない方の体育館です。合流するも良し、単独行動するも良し。皆さんにお任せいたします』`
中也「……狙ったかのようなタイミングだな」
`『では、私はこの辺で。誰の異能か自分は把握しているので名指しでは云いませんが──』`
何かを千切る音と、小さな悲鳴がマイクに乗る。
`『此方の詮索は辞めていただきたい。今、放送室の前にいる貴方達も無駄に死にたくは無いでしょう?』`
では、と明るい声で放送が終了した。
何からツッコミを入れるべきか考えていると、ルイスの後ろで物音がする。
コナン「グッ……クソ、が……」
ルイス「先生!」
コナン「大丈夫だ。……チッ、異能力を把握してるからデメリットを教えてあげたつもりかよ。上から目線の放送室野郎」
流れる鼻血を袖で拭いながら、コナンはそう零した。
🐰妖精の到来
コナン・ドイルの異能力。効果は異能生命体である妖精による治癒。妖精を放送室に向かわせ、隙間から犯人を見てきてもらおうとしたが破壊されたことでコナン自身にダメージが入った。(まだ異能名が出てなかったけど、ここで紹介。)
🐰放送室の誰か
今回の黒幕であろう人物。どのようにして二つの放送室から話していたかは不明。
Day.1-16
時は少し遡り、放送が始まった直後。
とある廊下に二人の学生がいた。
???「放送室って近いよね、アーサー」
アーサーと呼ばれた学生は頷く。
アーサー「生き残りが多くて残念? 本当、ふざけているとしか思えないよ」
???「私もそう思う。だから、突撃しようよ」
アーサー「……乱歩くんたちとの合流も優先したいところではあるけど、エマの言う通りだね」
何処にいるか分からないクラスメイト。
高等部の放送室にいると分かっている敵意のある誰か。
どちらに向かったほうがいいのかは、考えるまでもない。
エマ「何か武器あった方がいいかなぁ」
アーサー「……君はそのカッターでどうにかなるでしょ」
エマ「でも相手が誰か分からないじゃん! この放送してるのが物凄く強い怪物だったらどうするの?」
アーサー「まぁ、その時はその時じゃないかな。僕の異能で逃げるのに徹すればいい」
エマ「逃げる暇もないと思うけどね」
そんなことを話しながら向かう二名。
エマ「着いたけど……。うん、人影見えなくない?」
アーサー「……いや、誰かいる」
アーサーがドアノブに手を掛けると同時に響き渡る放送。
`『──今、放送室の前にいる貴方達も無駄に死にたくは無いでしょう?』`
アーサー「……!」
エマ「っ、アーサー」
アーサー「どうやらこれは最適解ではないみたいだね」
では、という明るい声で放送は終了する。
ドアノブから手を離して壁に寄りかかったアーサーは頭を抱えた。
アーサー「……とりあえず第二体育館に向かうべきかな。余計な刺激をするのもよくない」
はーい、とエマはアーサーの後ろをついていった。
少しして、高等部放送室から或る人影が出た。
`???「……っ、」`
その人影が視線を上げれば、ちょうど第二体育館への渡り廊下にいる人物と目が合った。
パクパクと、音は聞こえないものの何を云っているかは理解できる。
だが煽りに乗るほどこの人物も短気ではない。
静かな廊下に、小さな笑い声が響いた。
`???「“次は仮面ごと頭を貫く”なんて、本当に最高の|冗談《ジョーク》だ! 良いでしょう。自分の片足を使えなくしたお礼は、ゲームでしっかりとしましょうねぇ……♡」`
人物の足を貫くのは、《《巨大化したカッターの刃たち》》だった。
エマが渡り廊下からタイミングを見計らって、一歩踏み出した瞬間に能力を使ったのだ。
少し足を引き吊りながら歩く人物の顔は、仮面で隠れていたが言葉から痛みなど気にしていないように見える。
アーサー「……エマ、どうかしたの?」
エマ「ううん。何でもないよ、アーサー♡」
二つの、瞳に光が宿っていない笑み。
大切なものを守るためなら、どんな相手でも喧嘩を売れるのだろうか。
🐰アーサー・ラッカム
高等部三年で、振り回す人物その壱。勉強運動ともに中の上ぐらいで、エマとは幼馴染。片目隠しを毎回注意されているが無視している。(異能はいつもと少し違う予定。)
🐰エマ・マッキーン
高等部三年で、振り回す人物その弐。勉強よりは運動派で、基本的に感覚で生きてる。(学園のマドンナ、と思ったけど文ストって美人多いから断言するのはちょっと。)
🐰悪戯少女
エマ・マッキーンの異能力。効果は質量を変えるというもの。怪物相手に、ペンポーチに入っていたカッターで応戦した。(いつも通りの異能。ただ、カッターの質量を変えて戦うってどうなんだろう。)
🐰放送室にいた人物
仮面をしており、性別は不明。ただエマの攻撃で片足を負傷。(ゲームの詳細はいつか。)
Day.1-17
分かってはいたけれど、とアーサーは体育館の扉を開いて溜息を吐く。
アーサー「一番乗り、というのはあまり嬉しくないね。どうせなら誰かに迎えられたかった」
エマ「そう? 逆にこれから来るルイス達のことを安心させてあげられるじゃん!」
アーサー「……そのポジティブさ、僕にも分けてもらいたいよ」
エマ「んー、どうやってあげたらいいんだろ…?」
むむむ、と悩むエマを置いてアーサーは体育館の照明を着けた。
渡り廊下で一瞬エマが知らない人のように見えたが、話していた感じいつもと変わらない。
一応、怪物が入ってきた時の為に体育館の中心──出入り口から離れた場所で待っていると話し声が聞こえてきた。
???「電気がついているが、誰かもう来ているのか?」
???「これで開けたら怪物だらけ、とかだったら笑えないので辞めてもらっても?」
???「確かに笑えないが──」
ガラッ、と体育館の扉が開く。
???「どうやら、貴様のところの生徒みたいだぞ」
エマ「ニアちゃん先生!」
ヴァージニア「っ、エマにアーサー。無事だったか」
アーサー「途中ではぐれてしまいましたが乱歩くんに与謝野さん、作之助くん、安吾くん……あとは直行くんが無事だと思います」
ヴァージニア「そうか……でも、此処で二人に会えただけでも奇跡だと思う。私は揺れのあと状況把握をしていたところを怪物に襲われ、その後はヴィルヘルム先生と校内を見回っていたんだ」
ヴィルヘルム「道中も死体だらけだったから、そこまで生存者に期待は出来ないな。ルイス・キャロルは確実に生きているとして、教師も誰か一人放送室に入れた人物がいる筈だ」
エマ「あ、放送室と云えば!」
エマがアーサーと共に高等部放送室でのことを話していると、また正面口から誰かが入ってくる。
長い金髪が、風で小さく揺れた。
???「……一人は心細かったけれど、来て良かったみたいね」
周りに妖精が飛んでいる人物──アリスがそう呟くなりエマは話を放り出して抱きついた。
勢いで何周か回ったあとに二人は床に座り込む。
アーサーは苦笑いを浮かべながら駆け寄り、二人に手を差し出す。
アーサー「無事で何よりだよ、アリスさん」
アリス「先輩たちの方こそ、ご無事で何よりです」
先生たちも、とアリスは体育館の奥へ目を向ける。
ヴィルヘルム「一人と呼ぶには、それが気になるがな」
エマ「わぁ、ホントーだ! アリスちゃんの周りに妖精ちゃんが飛んでる! もしかしたら妖精くんかも!」
ヴィルヘルム「発言から推測するに、一人で逃げ回っていたわけじゃないだろう。そもそも貴様はクラスメイトを見捨てるような性格じゃない」
アリス「……私の分かっていることは全てお話しします、グリム先生」
🐰ヴァージニア・ウルフ
高等部三年の担任をしており、普段は英語教諭。“ニアちゃん先生”と生徒から愛されている。(こっちでは皆のために頑張ってね、ニアさん。)
🐰ヴィルヘルム・グリム
担任は持っていない保健体育の教員。授業中にサボっていても注意はしないが、成績に文句を言われたらしっかりとマイナス点をまとめた資料を渡す。
Day.1-18
放送後に時間は巻き戻り──。
ルイス「コナン先生……!」
コナン「だーかーら、もう大丈夫だって。そう心配するな」
でも、とコナンは小さく笑う。
コナン「でもまぁ、流石に顔洗ってくるわ」
中也「俺もついていきます。先生を一人にするのは良くねぇだろ」
アリス「私もルイスか中也くんについて行ってもらおうと思ってたわ」
コナン「ん? 別に大丈夫だぞ?」
アリス「放送は嘘で怪物が徘徊している可能性があるので」
ルイス「放送したのは僕だし、異空間に送るためにも待機していようかな」
中也「じゃあ、行ってくるわ」
近くの手洗いに向かい、血で汚れた顔を洗うコナン。
その後ろでは中也が腕を組んで壁に寄りかかっていた。
コナン「なーんか云いたそうだな、中原」
中也「何もないですよ」
コナン「じゃあ何で自ら志願して俺についてきた?」
中也「……それは」
コナン「ルイス達に言いたくなかったのか? ……あ、血がこっちにも付いてるじゃねぇか」
面倒だなぁ、とコナンは白衣を脱いで簡単に洗う。
中也「先生はよぉ……」
コナン「ん?」
中也「妖精が殺されたことで先生自身にダメージが入っただろ。俺も先生とは違うが、異能をそう簡単に使えねぇ」
コナン「……理由を聞いても良いか?」
中也「ココ、腕のところに痣が出来てるだろ。異能を使うたびに広がっていって、最終的にどうなるかは分からないんだ」
コナン「それは心配だな。良く話してくれたな、中原」
中也「アンタぐらいにしか云えないと思って」
コナンは微笑み、中原の頭を撫でる。
コナン「とりあえず、お互い背負い込まないようにして生きていこうぜ」
中也「……撫でんな」
コナンの後ろをついていきながら職員室へ戻る中也。
しかし、心ここにあらずの状態だった。
中也「……。」
思い出しているのは、謎の人物が放送する少し前。
ルイスの話から、外から怪物がやってくることがないか見ていた。
暗闇の中に怪物がいるのかは、正直見ても判らなかった。
しかし、遠くで何かの目が光っているのが見えて逃げるよう伝えようとしたが言葉をのみ込んだ。
怪物は光に包まれて消えたからだ。
中也「……太宰たちが向かうのか、全く分からねぇな」
コナン「ん、お前が太宰を心配するなんて珍しいな」
中也「偶然です」
コナン「ま、シャルル先生がいるなら大丈夫だろ」
Day.1-19
コナン「キャロル姉弟〜怪物は放送通り出くわさなかったぞ〜」
アリス「じゃあ第二体育館が安全地帯というのも本当かもしれませんね」
ルイス「……そっちに移動した方がいいかな」
アリス「私が行ってくるわ」
中也「なら俺も──」
アリス「一人で大丈夫よ。あちらにいる人たちと情報共有してくるだけだし」
アリスは出来るだけルイスと視線を合わせないようにして話す。
互いが互いを大切に思っており、一人で行かせたくないのだ。
ルイス「……アリス」
アリス「大丈夫って言ってるじゃない。私、貴方より体育の成績いいし」
うぐっ、とルイスはダメージを負う。
コナン「じゃ、決定だな。此処からだと端まで行って、渡り廊下に出ればいいから曲がるまで俺が見守るわ」
アリス「コナン先生、そこまでしてもらわなくても──」
コナン「ルイスが内緒でついていくよりマシだろ」
ルイス「……ベツニツイテイカナイヨ」
中也「カタコトじゃねぇか」
アリス「今度は目を合わせなくなったわね」
全く、ルイスはいつもこうなんだから。
そう呟いたアリスは職員室の扉を開いた。
辺りは血が飛び散っているが、やはり怪物の姿はない。
アリス「行ってきます、ルイス」
ルイス「……本当に気をつけてね」
アリス「分かってるわよ」
コナンも共に扉を抜けて見守る。
その背中を預かるのは中也だった。
一応、職員室による人がいるかもしれない。
可能性の話をし始めれば、全くと言っていいほど終わりが見えないが──これも大事なことだ。
ルイス「……。」
職員室に一人取り残されたルイスは、近くの椅子に腰掛けて宙を仰ぐ。
異空間にいる人たちはどうなっているのだろうか。
直哉が情報共有してくれる話にはなっているが、実際上手くいっているかは分からない。
ルイス「──命が軽いな」
あとがき書く気力ないから暫くお休みします