地球を侵略した、鉄人兵団の故郷である、ロボットの星・メカトピア。
しかし、その侵略したという事実は、タイムワープによって塗り替えられた。そして、鉄人兵団は消え失せた。
それは、地球人と友好な関係を結んでいたスパイ・リルル、そして土木工事用ロボットの頭脳・ピッポまでも消えるという事実だった。
これは、塗り替えられたその後のロボットたちの物語。
原作:藤子・F・不二雄
※この物語は、原作、旧映画、新映画(のび太と鉄人兵団〜はばたけ天使たち〜)の設定をすべて含めたものになっています。
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目次
プロローグ
__その瞬間、歴史が改変された。
源静香。
地球という星に住む人間であり、メカトピアのロボット・リルルと親しい関係にある。また、そのリルルは一部を土木工事ロボット・ジュド(地球人からはピッポというあだ名をつけられている)と共有している。そして何より、リルルは地球を侵略するために送り込まれたスパイである。
地球が侵略された時、彼女は3万年前のメカトピアへ、タイムマシンという道具を使ってタイムワープをした。
地球を侵略するのはメカトピアのロボットである。そのロボットの祖先は人間を嫌った人間が作ったものであり、彼女らはその人間に会いに行った。そして、「競争本能」が原因だとわかった。良い方向に向かえば、他人に負けたくないと技術は発展してゆく。しかし、ひとつ間違えば、他人を蹴落とし、踏みつけてでも勝とうとする、弱肉強食の世界へと陥る。
そして、彼女らは無事に、「他人を思いやるあたたかい心」を祖先・アムとイムに植え付けることができた。そうすることで、彼女らは鉄人兵団を阻止することができたのだった。
しかし、それはスパイとして送り込まれたリルル、ジュドも同様であった。
「生まれ変わったら、天使のようなロボットに。お友だちになってね」
「その名前、大好きだよ」
遺言を残した2人は、キラキラと砂のように消えていった_____
---
それから、すこしが経った。
リルルとジュドは、地球人であるのび太の前に現れた。
その姿は紛れもなく、天使のようであった。
#1 歴史研究
約150年前のあの日から、すべてが変わったという。
わたし・ハルテは、実に興味深い資料を見つけた。
はるか昔、我が星メカトピアは、どれいロボット等が使われていた。だがしだいに、ロボットは皆平等だという考えが広まり、ついにどれい制度が廃止されたという。新たな仕事人として、人間を支配するため、地球を侵略しようと鉄人兵団が攻めたらしい。
本来なら、圧倒的な数と力に負け、地球は負けただろう。しかし、今現在でも地球は存在し、生き生きと地球人が生きている。
その原因は、とある小学生4人と同じロボット1体。そのロボットはタイムワープが可能であり、小学生が歴史を改変させたという。
メカトピアでも、タイムワープは可能だ。しかしその技術は約20年前に開発されたものであり、当時は実現不可能と言われていたのだ。ただ、他の資料によるとそのロボットは未来___100年あと、つまり1世紀あとから来たと言われている。
歴史を改変し、わたしたちは「心」という技術が組み込まれた。その技術により、争いなどの考えはなくなり、今は平和な世の中になっている。
わたしの父親ロボットであるコーダは、歴史研究学者である。メカトピア、ロボットの歴史を調査、研究し、究極のロボットを生み出すことが目的であるという。
そんなコーダ父さんに憧れ、わたしは歴史研究学者への道として、ひとまず父さんの書斎で調べ物をしいている。
「ハルテ、今は何を調べているんだ」
「ロボットの歴史。特に、メカトピアと地球の関係よ。すごいわよね、1000年前にタイムワープが可能なんて。歴史改変をしたんでしょ?なぜその文献が残っているのかしら」
「さあ。でも、地球の、その子供たちが書いたのかもしれないね」
ああ、とわたしは言った。なるほど、それなら辻褄が合う。
「なるほど。ねえ、地球へ行ってみたいんだけど」
「地球…?」
「そう。この歴史研究として」
「__わかった」
今や、宇宙旅行はメカトピアの一大ブームを過ぎ去った、古いものだ。今ならすいているし、料金もやすいだろう。何より、ワープも可能なのだ。きっかり、あの時から三万五百年後の世界を見ることができるのだ。
「宇宙旅行、銀河系地球まで。滞在期間は1ヶ月、1ヶ月後に着地したところに迎えください」
そう連絡した。
#2 地球
ここが、地球。
あれから150年経っているのだ。いくらメカトピアの歴史が改変されたって、地球の歴史には微塵も影響がない。
メカトピアとさほど変わらない風景だった。すこしばかり、メカトピアの方が遅れている。それぐらいの、小さな差。機械的な風景が広がっており、資料で見た、緑であふれかえる風景はもうない。
そうだ。ドラえもん、というロボットの存在を思い出す。ドラえもんは1世紀後から着たのだ。頑張れば、見つけ出せるかもしれなかった。
リルル。
改変前は、地球へ送り込まれたスパイだった。だけど、今はロボットのため、観光案内をしていたロボットだ。今はもう____
ロボットだと怪しまれないために、リルルに使った最高の技術。その技術は一般的になり、やがてロボットたちは人間と似たような姿になっている。
「すみません」
脳内でさっと翻訳してからたずねる。
「はい、なんですか?」
試しに女性に聞いてみる。
「えっと…ドラエモンって知っていますか?」
「どら……?知りません」
「そうですか、ありがとうございます」
その後、アパートの管理人にも聞いてみた。
「ドラエモンって、ここに住んでいませんか?」
そう聞くと、管理人は驚いていた。
「はい、お知り合いですか?」
事情を話そうか。いや…
「ちょっと言いにくい間柄で」
そう言った時、青いロボットが通った。なんという偶然!
「すみませんっ、ドラエモンさん、ですか?」
「まあ、僕がそのドラえもんだけど」
ドラえもんはびっくりしていた。
「メカトピア」
そう言うと、またドラえもんは驚いた。そして、興奮気味に言った。
「鉄人兵団の?リルルの?ピッポの?ザンダクロスの?」
「本人ではないんですが…。わたし、その末裔…血はつながってないんですけど、メカトピアから来ました。歴史調査の一環で、ドラえもんさんたちをたずねようと思いまして」
「へぇ、メカトピアにも宿題ってあるんだ。のび太くんだったらすぐ投げ出すよ」
ちょっと話そうよ、とドラえもんは部屋に誘ってくれた。
---
「へえ、じゃあ、このロボットが…人間そっくりだけど?」
男の子が住んでいるアパート。その横で、「そうよね、」と黄色いロボットが言う。
「あ、あたしドラミ。妹よ、よろしくね」
「僕はセワシ。鉄人兵団、だったっけ?を倒したって言ったらあれだけど…その孫の孫」
「わたしはハルテ、メカトピアから来ました。1ヶ月ぐらい、地球に滞在します」
そう言うと、「じゃあここに住んできなよ、」とドラえもんが言った。ということで、わたしはここに住むことになる。
#3 調査
調査を進めている間、いろんなことがわかった。
ドラえもんはどらやきが好き。ドラミちゃんはメロンパンが好き。このうちは貧乏で、その貧乏の要因であるのび太をしっかりさせるために、過去に戻った。今はのび太を世話する役目を終え、スローライフを送っているという。
のび太は死んでいるのかと聞いたら、「そうではないよ」という。どうやら、「のび太くんは大人になったからね、もう僕は必要ないんだ」とどこか寂しそうに言った。
彼らは、ロボット、自分自身についてどう思っているんだろう。そう聞くのはまだ早い気がする。
---
ツー、ツー、という音の後、「ハルテ」という父さんの声が聞こえた。
わたしたちロボットは、脳内に電話機能が組み込まれている。脳内で父の電話番号を探し、かける。
〝おー、ハルテ。どう、順調か?〟
「まあ、そこそこって感じ。地球にロボットも確認できたわ。|当時《歴史が改変された時》はロボットなんて全然普及してなかったみたい、って文献に書かれてたけど。その文献によると、その時、人工知能や仕事用ロボットはあったみたい。でも、自分で考え、感情を持つ、人間と同じようなロボットは存在してなかったみたい」
〝そうか、それは興味深いね。誰だったっけ、あの、どら…みたいな〟
「ドラえもん、ね。今、ドラえもんのいるマンションにいるわ。もうのび太っていう子を世話する役目を終えて、スローライフを楽しんでるみたい。いろんな道具を持っているのよ」
〝そうなんだ。じゃあ、その道具でタイムワープしてみたらどうだ?ロボットの歴史について、メカトピアと違うところがわかるはず。そしたら、また違う勉強にもなるだろう〟
「確かに、そうね。でも、リルルの技術がどこから来たのか、わたしは地球だと思うの。だから、メカトピアと地球が、それ以前に人間と交流があったのかを調べたい。あと、地球とメカトピアでは、自身がロボットであるということを、どんなふうに捉えているのかも調べたいわね。うう、いっぱい調べたいことがあるわ」
〝じゃあ、一度帰ったらいろいろと整理して、また地球へ戻るのもいいと思う〟
「本当?わかったわ。きょうのところはこれで終わるわ」
そう言って、わたしはプツリと電話を切った。
ハルテの見た目→https://picrew.me/ja/image_maker/2108449/complete?cd=lyfqSIbXrw
#4 ロボット養成学校
「じゃあ、ロボット養成学校に行ってみたらどうかしら?」
そうドラミちゃんが言ってくれたおかげで、わたしは留学生としてロボット養成学校に通うことになった。
「ハルテさんは、ここの席についてください」
女性教師ロボットが言った。窓ぎわの、後ろから3番目。人型ロボット教室1年2組、きょうからここで1ヶ月過ごす。
「リルル!」
隣の席には、リルルがいた。
ピンク色の長い髪の毛。緑色の瞳、なんとなく近寄りがたいその雰囲気。
「え?」
きれいな声だ。
「わたし、リルルじゃないわ、リルカよ」
「りるか?」
「リルルはわたしの祖母の名前」
ロボットの寿命は長い。|壊れる《死ぬ》のを防ぐ技術が発達しており、人間と違って改造が可能。だから、ロボットの寿命は年々のびているのだ。
「リルルの、孫…」
だとしても、だ。
なんでリルルの孫がいる?リルルは、メカトピアへ帰ったはずだ。
「そうだ」
そう言って、リルカのセーラー服から出てきたのは、ヒヨコ。ピッポ、だったっけ?あれ、でもそれはそれでおかしくないか…?
「あのっ」
「ん?」
「わたし、メカトピアから来たんですけど。リルルさんを知っていて」
「めかとぴあ…ああ、祖母の実家がある」
「えっ、じゃ、リルルさんて、生きてるんですか」
「まあ、そうだけど?」
そっけなく言う彼女。
「ほんとうですかっ」
「そうだけど。メカトピアにあるわよ」
「1ヶ月後にメカトピアに帰るんですけど、わたし。その時、リルルさんを紹介してくれませんかっ」
「ずいぶん食い気味ね。まあいいわよ」
そう言って、彼女はタッチペンを手に取り、ノート型タブレットでノートを取り始めた。
リルカ→https://picrew.me/ja/image_maker/888887/complete?cd=WHF2f9Iuig