太陽と月の物語です。
不定期に更新致します。
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目次
 
    
        1#はじまり
        
        
        これは、あなたが生まれるほんのちょっと前のお話。
むかしむかし、あるところに太陽と月がありました。太陽と月はとても仲が悪く、月はいつもいじめられていました。
あるとき、太陽が言いました。
「いつまで私に頼っているつもり?」
月は言います。
「しょうがないでしょう。お父様が許してくれないの。」
太陽は月のその言葉に大層腹を立てて、月に光が当たらないようにそっぽを向いてしまいました。
月の大地はみるみる枯れはてて、乾いた土は宇宙センターに「寄付」という名目で捨てられてしまいました。月の人々の死体も、植物の種も一緒くたにして。
ついには大きな石の塊となってしまいました。
月は死んだのでした。
太陽はお父様からの愛情と、ごはんの分け前が増えました。
どんどん明るく輝いていく太陽を人間たちは聖域とし、入ることを禁じました。そして、地球という星に移住し、太陽を信仰の対象としました。
年月が流れ、大きく明るくなっていく太陽を崇める風習は薄れて行きます。
人間は、放射線などのよくないものを沢山飛ばす太陽を邪魔者扱いし、大きな大きな黒い箱に太陽を閉じ込めてしまいました。
人々は寒さに耐えながらなんとか人口太陽をつくり、太陽を閉じ込めた箱の側面に隙間なく並べ、なんとか太陽を再現しました。
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「そして、今の私たちがあるのです。めでたしめでたし。さあ、はやく寝なさい。明日も早いんだから。」
「ねえ、続きは?」
そうね…、太陽が食べちゃったんじゃない?
その日、僕は夢を見た。僕がおっきなおっきな太陽の箱を点検する夢を!
お母さんに言ったら笑われたけど…。
いつもの朝ごはんを食べながら、憂鬱だった宇宙センターの見学がちょっぴり楽しみになった。
        
    
     
    
        2#太陽の箱
        
        
        登録番号12-A 太陽の箱
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太陽の箱とは、宇宙センターの所有する、太陽を覆う大きな箱のことを指します。
A地区―つまり宇宙のちょうど真ん中に位置しています。
我々の祖先の時代からある、歴史的建造物です。内部は太陽で埋め尽くされ、外部は我々を照らす人口太陽パネルがあります。
太陽は、遥か昔には信仰の対象となっておりましたが、ニコロという青年が“太陽は膨張し続けている”、ということを発見しました。そのため、太陽に呑まれることを恐れた先人達がブラックボックス内に収容しました。
現在ではブラックボックスにより膨張は止まっています。 
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皆様も知っている、神話「太陽と月」にも登場しています。
右図がかつての太陽だと言われています。
以前の輝きを取り戻すため、私たちは太陽やブラックボックスの研究を重ねています。
宇宙センターでは、他にも“32-E 月”の研究も合わせてやっています。
興味がある方は是非、E地区―宇宙センター出張所内研究所にもお越しください。
        
    
     
    
        3#夢うつつ
        
        
        しょうらいのゆめ
ぼくのしょうらいのゆめは、太ようの箱を点検する人になることです。
なんでこれをえらんだかと言うと、ぼくのおじさんがこのお仕ごとをしていたからです。
ぼくのおじさんは、すごい大学に行って、大学のすいせんで会社に入りました。ずっとお仕ごとがあこがれで、親せき中に言って回ったそうです。
そしてはじめてお仕ごとをする日、その大きな黒い箱とたくさんのパネルを見たしゅん間、一生このお仕ごとをすると決めました。
でも、ぼくが生まれてすぐに、じこで話せなくなってしまいました。
おいしゃさんはぼくに、
「おじさんはまだゆめの中にいるだけなんだよ。」
と言いました。
ぼくはおじさんの意しをつぐためにも、ぜったいになります。
それで、ぼくがぴかぴかにした太ようの箱を、ゆめからさめたおじさんに見てもらいたいです。
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参観日で頑張って発表した日、お母さんが
「おじさんにも聞かせてあげなさい」
って言ったから、放課後すぐにおじさんの病室に向かった。
『A地区特別総合病院』の一室におじさんはねむってる。
この病院は、宇宙のお仕事で怪我した人が療養する特別な施設。
太陽の箱だけじゃなくって、月とか天の川とかそういう宇宙センターの所有物で事故しちゃった人も。
「おじさん、ただいま。」
返事は帰って来なかった。
おじさんの枕元にはおじさんの元同僚とか上司の人とかが置いてくお見舞いの品でいっぱいだ。
そういう人が来る度に沢山話を聞くんだけど、中々おじさんはかっこいい。
でも、社内の女子にもキャーキャー言われてたって言うけど、それは本当なのか分からなかった。
ぼくにはよく遊んでくれるおじさんとしかうつらない。
        
    
     
    
        4#だいじなひと
        
        
        その日はお父さんもお母さんもお仕事で居なかったから、家で一人だった。
いつもみたいに本を読みながらうとうとしていると、急にお母さんがどたどたやって来た。
「ねえノア、おじさんが…」
ぼくはすっかり目が覚めて、急いで車に乗った。
汗をだらだら垂らしながら「お父さんは?」って聞いたら、仕事場からそのまま向かうって言ってたらしい。
法廷速度ギリギリ、最後の方は病院に近づくにつれ段々と速くなっていった。
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車を飛ばして向かった結果、なんとかぼくは間に合った。
もう覚えてしまった病室への道のり。
階段の方が早かったから、三回まで駆け上がって、一つ目の角を右に曲がってそのまま一番奥まで。途中、こけないようにねって看護士さんが声をかけてくれた。
病室へ入った瞬間、雰囲気はがらっと変わった。
みんなうつむいて、辛気くさい顔しておじさんを見つめてる。
「なんとか容態は回復したよ、一時はどうなることかと思った。」
お医者さんがぼくに言った。言われた途端肩の力が抜けてついふらっときた。
みんな、おじさんが危ないからうつむいてるのかと思った。
お医者さんは、病室から出ていくときに約束してくれた。
「大丈夫。君が一人前になるまでは絶対に生かして見せるから。」
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次の日、ぼくは初めて学校を休んだ。
どうしてもおじさんの隣で眠りたかった。お母さんに言ったら、しょうがないねって簡易ベッドを借りて来てくれた。
機械の音がする個室は少し寂しかったけど、おじさんの側にいるだけでなんだかあたたかかった。
        
    
     
    
        4#宇宙のなみだ
        
        
        とうとう宇宙センターを見学する日になった。
僕はその日まん丸のパン二つに、いつもは塗らないバターを塗って食べた。トースターで焼くと黒焦げになっちゃって、なんだか苦くて困ってしまった。パンと格闘していると時間は刻々と迫っていた。ぼくは息を切らして学校を目指した。宇宙センターまでは学校からバスで一時間半。渋滞には巻き込まれなかった。
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「皆さンこンにちは。本日皆様をごあンないするセトと申します。」
「ごめんなさい。この子、いつも“ん”だけ裏返ってしまうの。私はオカノです。セトと一緒にあなた達をご案内します。」
淡々と話すセトさんはボディがきらきらと光るロボットで、オカノさんはスーツを着た優しそうなお姉さん。二人はバディなのだと言っていた。
セトさんがゆっくりと歩きながら展示物の概要について話し、オカノさんがそこに歴史を付け足していく。時折セトさんは展示物の前で立ち止まり、タブレットの表らしきものにチェックマークを付けていた。休憩中にこっそり聞いてみると、破損や腐敗していないかとか、正しい説明パネルが設置されているかとかを確認しているそうだ。
そんなことまでするんですね、と言うと
「人手が足りていないンです。」
と言った。
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「皆さン。これが太陽の箱です。灼熱の星を覆う為、あなたたちの祖せンが作り出しました。」
「センターに訪れたひとや研究者達は、皆この大きな物体を人類の最高傑作だと言いました。この断面図の模型を見てください。内部には太陽の炎を研究する、無人研究所があります。時々ここから無人探査機を出して表面を調査します。」
みんな模型を真剣に見入っていた。
「オカノ。少し話がある。」
「すみません皆さん。少し待っていて下さい。」
僕は気になって二人をこっそりつけた。以下の話は次の通りだった。
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「オカノ。太陽の箱の表面が劣化しています。」
「分かった。修復科に連絡しておきます。場所は?」
「A-6,D-10,F-2それから…」
「待って。この間点検したばっかりなのに。」
「妙だよね。オカノ、とりあえず修復科にれン絡しておいて。私は清掃科にれン絡する。きっと呼ばれるだろうから、あの子たちのあン内は他の人に頼もう。」
「分かった。シズカにも連絡しておく。何かあったら私に教えて。」
「わかってる。それじゃあまた後で。」
        
    
     
    
        6#炭酸水とスピカ
        
            久し振りの更新です!
        
        
        「こんにちは!ここからは私、シズカがご案内致します!」
どうやら案内係は変わったみたいだった。今度は元気なお姉さん。真っ白な肌が、制服によく似合っていた。
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「どうしてオカノさんとセトさんから変わったの?」
僕がそう聞くと、
「君には教えてあげる!」
といってくれた。
シズカさんによると、あの二人は職員の中でも偉い立場らしい。でも何でそんな人が?とおもったら、人手不足で偉いとか関係なくどんな仕事もやらなければいけないそうだ。それで、修繕の事務所に急遽向かうことになったからシズカさんが…という経緯だ。
そんな偉い人だったなんて。全然知らなかった。
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「今日はここでお昼です!」
と先生の声がきこえた。
今日のひるごはんは母さん特製