閲覧設定
名前変換設定
この小説には名前変換が設定されています。以下の単語を変換することができます。空白の場合は変換されません。入力した単語はブラウザに保存され次回から選択できるようになります
1 /
目次
寄り道~梅雨終わりの晴れ間~
梅雨の終わりごろ
降り続いていた雨が止み、今日は思いっきり晴れた。でも湿気がすごい。スゴく蒸し暑い。
「暑い~、ねぇ~、|春音《はると》~暑いんだけど~」
「僕にどうしろと言うのさ」
目の前でグダグダと何かぼさいているのは僕の親友。|谷城 照《やつぎ てる》。
ちなみに僕は|有瀬 春音《あるせ はると》。
ごく普通の高校生である。
「下敷きででも仰いでおけばいーんじゃね? 」
「そっかー」
照は下敷きをそそくさと取り出しパタパタと仰ぎ始めた。
「なんか微妙~」
「そっか」
「なんか春音さ辛辣じゃない? 」
「くそ暑いからだよ、多分? 」
「多分ってさぁ~」
今は昼休み、教室はクーラーがついているが何だか効いていない気がする。
てか、クーラーつけているのに換気のために窓を開けないといけないのが不満なのだ。クーラーの意味ないじゃん。
弁当についてる保冷剤もぬるくなったし。
水筒の麦茶もなくなってしまったし。
校則でハンディファンを持って来たら没収だし。
いくら何でも不快、不愉快な暑さなのだ。
「あっそうだ! 春音! 帰りにアイス買いに行こーよ! 外めっちゃ暑いけどさ」
突然何言い出したんだと思ったらナイスアイディアじゃん。
「いーんじゃね? どこで買う? 」
「ん~放課後に考えればいっか! そろそろ呼鈴なるし。じゃあまたあとで! 」
「そうだね~こっちでも考えておくよ。」
タイミングよく予鈴が鳴った。
アイス屋に行ってもいいけど少し遠いし、スーパー行ってお安いアイスでもいいよな~
久しぶりにスーパーでアイス買おっかな。
ちなみに5時間目は数学。6時間目は現国。
くそ暑いしちょっとだるかった。でもアイスのためだからいつもより少し頑張る事にした。
そんなこんなで放課後。
「春音! どーする? 決めた? 」
「スーパーでアイス買おっかなって思うんだけど」
「同じ事考えるじゃん。おれもこっからスーパーって近いしスーパーで買おっかな~って思ってたとこ」
「そうしようか」
と、いうわけで高校の近くにあるスーパーへ向かうことにする。
教室から1歩、廊下に出るとムシッとしたぬる~い空気が全身を覆う。
「ぬる~い」
「暑い……教室に戻りたい」
「そんなこと言わずにさぁ~行こーよ!暑いのは誰も一緒でしょ? 」
「そりゃそうか」
のそのそと靴を履き替えて外にでる。
直射日光とぬるい風のダブルパンチでどうにかなりそうだ。暑い。まだ梅雨明けしていなかったはずなのに、どうしてこんなに暑いのだろう。どうして夏の暑さってフライングしてくるの? なぜ? フライングしてこなくていいのに。
そんなことを考えながら校門を出て3分程歩く。
「暑い。溶けそう。ところで春音はアイス、何買うの? 」
「まだ決めてない。おこづかいと相談中~んで? 照は? 」
「おれは『プノ』にしようかな~って考えてるとこ」
「そっか~いいじゃん」
目的地のスーパーマーケット『テンクス・サークル』の看板が見えてきた。
自動ドアが開き、中に入った。
クーラーが効いているらしくスゴく涼しい。
「涼しい」
「涼し~」
アイスのある冷凍庫の場所へ向かう。
おこづかいとの相談? の結果、『シャリシャリさん』のリンゴ味とペットボトルの麦茶を買うことにした。
照はさっき言ってた通り『プノ』と紙パックのレモンティーを買っていた。
会計を済ませ、近くの公園で溶けないうちにアイスを食べて帰ることにする。
影のあるベンチに座りアイスの袋を開ける。スッとアイスを取り出して大きく1口、「シャリっ」と大きな音を立ててガブリ。
「めっちゃ冷たいけどスゴくおいし~」
清々しいリンゴの味がする。シャリシャリと食べていると、だんだんとお腹の辺りが冷えてきた気がする。ちょこっとだけ涼しくなった。
ふと、隣に座った照の方を見ると、照、なんだか嬉しそう?
「どうした? 」
「あ~ね、プノ開けるじゃん、ピック見るじゃん、たま~にピックってレアなのが入っててさ、まさにそれが当たった訳。めっちゃ嬉しい! 」
「よかったじゃん」
レアが当たってよろこんでたわけね~。
てか、容赦なくプノに刺していいのかよ…
まぁ早く食べないと溶けるから仕方ないけど。
「あ~プノおいし~久しぶりに食べるとめっちゃおいしいなこれ。春音もいる? 」
「いらないかな。シャリシャリさんあるし」
やっぱり暑いからだんだんとアイスが溶けてきた。急いで食べる。
シャリシャリ。シャリシャリ。
こぼれ落ちそうなところで何とかたべきった。
「あ、アタリだ」
「よかったねぇ~」
「何か今日はツイてるね~2人とも」
「確かに。暑い中アイスを買って正解だったかもしれないね」
水道でアイスの棒を洗って持って帰ることにした。
そろそろ帰って宿題をしないとな~とペットボトルの麦茶を飲みながら考えているところだ。照も食べきったっぽいし、ゴミをまとめてゴミ箱に捨て、家に帰ることにする。
「そ~いえば、今日の宿題って何か言われたっけ? 」
「数学のワークと英語のプリント2枚」
「そうだったっけ? まぁいいや。分かんないとこあったら教えてよ」
「はいはい。じゃあまた明日。宿題、忘れるなよ」
「おけおけ、じゃ~バイバイ~」
お互いそれぞれの帰路につき、家にかえった。数時間後、宿題についてのチャットが来たので教えてあげた。
なんだかんだでいろいろあったけど楽しかったな。明日もがんばろうか。
親友との寄り道、そして買い食い。
青春の1ページって感じを目指しました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
寄り道~ドーナツの向こう側は青空~
ドーナツ、食べたい。
なんて事を授業中に考える|有瀬 春音《あるせ はると》、高校一年生。高校に入学し早3ヶ月。なんだかんだ話す事のできる友人ができているし、それなりに充実した日々を送っている。
昼休みに母さんが朝早くから作ったお弁当を食べ、今は6時間目の半分をすぎた辺り。集中していたのかふと、小腹がすいてきた。何故か連想ゲームのようにあれやこれやと浮かんできては消え、最終的にドーナツに行き着いてしまった。なんでだろう?
「なぁ照、帰りにドーナツ食べに行かね? 」
「珍しいね~春音がそんなこと言い出すなんて」
「あ~何となく? 」
そんな感じでドーナツを食べに行くことになった。甘いものが食べたくなったからであって特に深い意味は無い。
残りの授業はほとんど聞いていなかった。板書や重要な所はノートにまとめてあるしいいかなって思って。ポヤァ~と過ごしていた。てか、スゴく暑い。何故かこの前、教室のクーラーがぶっ壊れた。そのせいで僕らのクラスは扇風機が4台稼働しているだけである。無いよりはまし。ぬる~い風がそよそよと吹いている。
そうして放課後。
この前アイスを買いに行ったスーパーのとなりにドーナツ屋がある。僕が小さい頃からある小ぢんまりとしたお店だ。そこへ向かう。外に出ても暑い。梅雨が空けて蝉の大合唱。空は澄みわたった青空。そりゃ暑いわけだ。
「暑い……」
「ドーナツ食べに行くんでしょ? 」
「まぁーそうだけど。にしても暑い」
「暑いしか言わないじゃん」
そんなこんなでドーナツ屋『にじゅうまる』に着いた。
「いらっしゃーい」
「あら、春ちゃんじゃない、久しぶりねぇ~」
「お久しぶりです。|二瀬《にのせ》さん、ドーナツ、食べに来ました。」
「春音、知り合い? 」
「あぁ。小さい頃からドーナツといえばここのドーナツだったから」
「そうなんだ~」
メニュー表を見ながら何にするか考える。
今日はプレーンとチョコチップのやつにしようかな。
「何にするか決めた?」
「プレーンとチョコチップのやつ1つずつください」
「おれはチョコと抹茶にしようかな~」
「出来上がるまで時間がかかるからどっかテラス席にでも座っててね~」
この店は室内に席がない代わりにテラス席があり、基本的に外で食べるのだ。
「そういえば、春音さ、この前のテストどうだった? 」
「良くも悪くもなくいつもと変わらない。凡ミスばっかり」
「そんなこと言って~、結構公共とか成績良かったの知ってるからね? 」
「勝手に人のテスト見たのかよ。」
「見てない、見てない。チラッと見えただけ。」
「見てんじゃねーか。つつくぞこら」
「暴力はんた~い」
いろいろと話しているうちに甘い匂いが漂ってきた。
「はい!どうぞ~」
「「ありがとうございます」」
ホカホカなドーナツが2つずつ。飲み物はお水。トレーに乗せてもらってうけとった。テラス席に腰かけて、プレーンドーナツから食べる。大きさは手のひらより少し小さいくらい。表面がサクッとしてて中がフワッとしてる。ほんのり甘くて、いくつでも食べられそうなくらいおいしい。やっぱりいつ食べても変わらないなぁ~と思った。
今度はチョコチップドーナツを手に取る。なんとなく穴から外の景色を覗いてみた。ちっちゃい頃よくこんなことして母さんに怒られていたっけ。丸く縁取られたドーナツの向こうは限りなく青空。白い雲が遠くで流れてる。
何かこんな感じの曲なかったっけ?
まあ、いいか。
「何してんの? 」
「なんかやってみたくなったから」
「ふ~ん。ドーナツさ、スッゲーおいしい! 」
「そりゃぁよかった」
ドーナツを1口。チョコチップの食感が変わった食感を生み出していてこっちもおいしい。すぐに食べきってしまい、ただ、青空を眺めていた。
照も食べきったらしく自分が持っていたトレーを返しに行った。僕もトレーを返しに行く。
「二瀬さん、ありがとうございました」
「あらぁ~いいわよ~また食べにおいでね! 」
「では、また来ます」
「勉強、頑張るんだよ! お友達もね」
「あ~、がんばりま~す」
少し日が傾き始めた空はまだ少し青かった。
「じゃ、また明日。宿題ちゃんとやれよ? 」
「うぃ~。ちゃんとやるよ。また明日。」
「はぁ~夏休みまであと少しか~」
「それな~」
夏休みまであと数日。彼等はまだ宿題が大量に出されることをまだ知らない。宿題がなかなか終わらず地獄を見るのはまた別のお話。
比較的会話文が多い気がします。
ドーナツって揚げるのと焼くのとどっちが一般的なのかは分かりませんが、焼いてある方が好みなので焼きドーナツになりました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
寄り道~みんなdeカラオケ~
「かなみ~ん、歌ってる?歌いなよ、楽しいから」
タンブリンをリズムにあわせて叩く私に向かって彼女はそう言った。
「えーっ私、音痴だよ? 」
「音痴でも歌えばいーんだよ! 」
「そうだよ歌いなよ~」
もう1人にもいわれてしまう始末。
こんな風に言われると歌うしかないか……
「ねぇ、帰りにカラオケ行かない?」
ことの発端はこの一言だった。
どうも、かなみんこと|野田 奏海《のだ かなみ》です。
午前授業で午後から休み、終礼のまえにそう誘われた。正直、私は人に聴かせられるような歌なんて歌えない。それどころかカラオケなんて家族で1回しか行ったことないのだ。それなのにどうして彼女は誘ってくれたんだろう? 疑問符がもくもくと頭の中でぐるぐるしている。
彼女は|保倉 芽吹《ほくら めぶき》こと芽吹ちゃん。高校の入学式で初めて話して何故か秒できた友達。
「どう? 行く? りんりんもいるけど」
りんりんとは|渡津 鈴《わたつ りん》こと鈴ちゃん。芽吹ちゃんと同じく何故か秒で友達になった。
仲良し3人組が揃ってしまっては断るのもしのびない
「分かった、行く」
こうして仲良し3人組はカラオケに行くことになった。母さんにはチャットで連絡を取り行く許可は取ってある。
カラオケに行ったはいいが、何を歌えばいいか分かんないし、先に2人が歌い出しちゃったからタンブリンを叩く。そして、冒頭に戻るのであった。
「何歌えばいいか分かんないしどうしよう」
「そーいえば、前カラオケ来たとき何歌ったの?」
「えーと、『映画の主役になれたら』かな~」
「いいじゃん、それ歌いなよ」
タブレットを操作しながらマイクを渡されとうとう曲が始まってしまった。
こうなれば歌うしかない。
「~|物語《ストーリー》の線をなぞる、日常のワンシーンみたいな、普通を混ぜこんで、映る正解はどれだろう~」
ひと通り歌いきる。音痴がどうかは別として歌うのは嫌いじゃない。
「そこまで音痴ではないと思うけどな~」
「そうかな~? 」
褒められてる気がしてお世辞でもちょっと嬉しい。
鈴ちゃんがいつの間にか注文してくれた烏龍茶とナゲットやフライドポテトがきたので食べながらわちゃわちゃと談笑していた。
「他に誰か歌う? 」
「りんりんももっと歌いなよ」
「そうならうちもまた歌おうかな~」
鈴ちゃんはタブレットを操作して
『恋する琥珀糖』を歌い始めた。
鈴ちゃんが恋愛ソング歌うのってなんか意外だなと思いながら聴いている。
「~君の姿を思う度、砂糖が溶けるぐらいに熱くなる。そんな想いを琥珀糖と一緒に、受け取ってくれるかな?~」
歌唱力がありすぎて引き込まれてしまいそうな歌だった。
「鈴ちゃんスッゴイ上手いじゃん! 」
「それほどでも~? 」
「りんりんって歌の練習とかってしてんの? 」
「カラオケに行くことか多いからかな~多分。あと、好きな曲だからスゴく聴きまくったからかも」
好きな曲聴きまくるのはすごく分かる。どうしてそんなに歌唱力があるんだろう。羨ましいな~。
「次は順番的にアタシかな? 」
「何歌うの? 」
「そりゃ~アタシの十八番でしょ! 」
芽吹ちゃんの十八番って何? って聞こうとしたらもう歌い始めてしまった。行動に移すのがとても早い。
部屋の画面に出たのは有名なアニソン
『トリック・パレット』
『絵術師の|奇術《マジック》』の主題歌である
「~パレットの上にはどんな色がのってる? 描くキャンバスに思いがけないトリックを見抜いてみせて~」
個性的な歌声だけどやっぱり上手かった。この曲音程の高低差が激しいから歌うの難しいのに。
「芽吹ちゃんも上手いじゃん」
「まぁね~」
「時間もあるしジャンジャン歌お! 」
なんだかんだで私も思いっきり歌った。歌うのはとても楽しかった。
盛り上がって思った以上に時間が経つのが早かった。気付けは夕方。そろそろ帰らないといけない。
「そろそろ帰らないと」
「確かに、時間経つの早すぎ~」
「それな」「わかる」
「それじゃあ、帰りますか」
片付けをして会計に行く。学生料金でどうにかなった。割り勘をして支払う。
「明日は休みだね~」
「そっかー休みだったね~」
「休み何する? 」
「いろいろ」「ゲーム」
「2人らしいっちゃらしいね」
「じゃあまた、学校で」
「バイバイ」「それじゃ」
駅で解散し各々の帰り道を辿る。
今度1人でカラオケに行って練習しようかな。またいつか3人で行ったときにあっといわせてやりたい。まず歌いたい曲の歌詞覚えなきゃ。
このお話で出てきた曲の歌詞は自分で考えたオリジナルです。(既存曲ではないはず……)初めてめてこのシリーズで女子が出てきましたね~。他にもシリーズでいろんなキャラが出る予定なのでこうご期待ください。
お読みいただきありがとうございました。
寄り道~秋空をフレームに収めて~
2学期も始まってしばらくたった9月某日。暑さもそれなりに和らぎ、少しずつ過ごしやすくなってきた。それに伴ってだんだんと木々が色づいてきたような気がする。秋の澄んだ空に楽しそうにトンボが飛んでいた。
「秋の空ってなんか鮮やかだよな。どこか寂しい感じはするけど」
独り言をポツリ、部活で使っている教室で消えた。完全下校時刻が次第に近づき校舎の廊下は自分と同じ部活動生くらい、数人が帰ろうとしているだけでほとんどいない。夏に比べて夕暮れ空になるのが早くなった。
今は、部員の全員で部活動で使った道具を手早く片付け、帰る支度をしている最中だ。
「姿勢、礼」
「「ありがとうございました」」
最後に部長の掛け声が教室に響く。そうして顧問の先生に挨拶をして帰る。相変わらず部長の|榎沢《えのさわ》先輩は帰るのが早い。足速くないか? ここ文化系の部活なんだけど何故か足が速い人が多い気がする。そもそも廊下は走ってはいけない。先生に怒られなければいいが……
「帰るの早っ、榎沢先輩って足が速いよな」
「確かに。運動部とかに入っていてもおかしくないくらい身体能力すごいよね~」
「そういえば先輩って今までずっと新体力テストA判定だったらしいよ。先輩本人が言ってた」
「マジかよ」
「ふと思ったんだけどここの部活っていろいろと不思議な人が多くないか?」
「それは思ったりしたけど……あまり深く考えない方がいいかも知れないね。そんなこと言ってたらホントに日が暮れちゃうから」
「そうだね~」
と、いうわけでこの討論は別の機会にすることになった。
「じゃあまた、次の部活で」
「じゃあね~お先に失礼しまーす」
「またね~」
そう言って同じ学年の尾杉さんと野田さんは足早に去っていった。
靴を履き替え外に出ると、きれいな夕焼けが広がり、回りの木々がオレンジ色に染まっていた。グラウンドでは運動部がまだ活動をしているようで時折掛け声みたいなのが聞こえる。練習風景を見ていると今日のグラウンド利用は駅伝部とサッカー部らしい。校門までの長い一本道を一人で歩きながらふと、空を見上げる。あまりにもきれいだったので空の写真を撮りたくなった。
だかしかし、この学校は学校敷地内での携帯電話の使用は校則で禁じられている。校内では携帯電話の電源を切っておかなければならない。でも、バレないように試行錯誤しながら使っている人をちらほら見かける。
よくそんなことができるなーと思いつつ。許可を取れば親と連絡を取るくらいは大丈夫だけど、無許可で使ったりして先生にバレたら結構面倒くさい。生徒指導である。つまり、学校の敷地の外へさえ出れば携帯電話を使っても怒られないというわけだ。少しばかり急ぎ足で校門の外に出る。
この学校は少し丘の上にあるお陰で見晴らしが良く、今日は天気がいいので空が澄んで見える。坂を少しくだって眺めのいいベストポジションを見つけた。空を遮るものがなく、ちょうどよさそうな場所だった。
早速カバンから携帯電話を取り出し、電源を入れてカメラを起動した。早くこの風景を写真として写したかったのである。時間が立つにつれ鮮やかな黄昏の空がだんだんと紫がかった色へうつろいで行く。その様は何とも幻想的で気づいたら何枚も写真を撮っていた。
こんなことばかりするから携帯電話のアルバムが空とか風景で埋めつくされてしまうんだなと毎度思いつつ、それでも続けてしまうのは幻想的な一瞬の1コマを切り取って残したいと思うからなのだろうと考えている。
今日の写真はいつもよりきれいに撮れた気がした。
そんなこんなしているうちにどこか遠くでカラスの鳴き声が響いた。時間を無視して夢中になって写真を撮っていたので気づかなかったが、辺りも暗くなり始めているようで街灯も灯りはじめていた。運動部の人達も帰り始めていてザワザワと話し声が微かに聞こえる。時間的にもそろそろ帰らないといけない。あまりにも遅いと母さんに心配されてしまう。それだけは避けたい。
きれいな空の写真をお土産に家路を辿る。今度の休み、写真を現像しに写真屋に行ってみてもいいかもしれない。
ところで今日の晩御飯は何だろうか。早く家に帰らないとな。
これは寄り道と言えるのか。大前提として話はそこから始まりますが、気にしないでください。気にしたら終わりです。よく分からないクオリティーでぼちぼち続いていますが、このクオリティーがどこまで持つかは謎ですね。
お読みいただきありがとうございました。
寄り道~焼きいも日和~
最近になってまた夕暮れが早まってきたと思う10月の中旬。朝方や日が暮れた頃になるとだんだんと肌寒くなってくる季節だ。これからどんどん寒くなっていくのだろう。これくらいの季節がちょうどいいと思う気がする。
チャイムが鳴り響き、終礼が終わる。
「姿勢、礼」
「「さようなら」」
長かった授業が終わり、やっと放課後になった。今日は部活がお休みなのですぐに帰ることができる。
どうも、こんにちは、|野田 奏海《のだ かなみ》です。
「か~なみん! 駅まで一緒に帰ろ!」
声をかけて来たのは芽吹ちゃん。
「いいよ、鈴ちゃんも誘おうよ」
「いいねぇ~」
今日も今日とて仲良し3人組で帰ることになった。
「りんりん! 一緒帰ろ!」
「そうだね! 部活も休みだし一緒に帰ろっか」
ガールズトークに花を咲かせながら靴を履き替えた。外に出るといつもより涼しいような気がする。
9月は体育祭、10月に入ってから文化祭の準備などが忙しくて、こうして3人で帰るのは久しぶりだった。
~~~
どこか遠くで何か言ってる?
「何か音がしない?」
「確かにするね、うちにもなんか聞こえた気がする」
鈴ちゃんにも聞こえているらしい。
「するような、しないような、アタシには分からないや。気になるの?」
芽吹ちゃんは不思議そうにしている。
「うーん、気になるんだけどどうしようかな」
「行くだけ行ってみる?」
「行ってみようかな」
音のする方へと進む。
音のする方へと近づいていくうちに何の音か分かるようになってきた。
「いーしやーきいもーおいもー」
「焼きたて、出来立てのおいしいおいもだよー」
「いーしやーきいもーおいもー」
音の正体は公園の前に止まった焼きいもの屋台だった。なんとなく焼きいもの匂いが漂ってきている。
「焼きいもの屋台だよ」
「そっかーもうそんな季節なんだね」
もう秋だもの。焼きいもの匂いがしてくるとなんだか食べたくなっちゃうんだよなー。ふと、芽吹ちゃんの方をチラリとみるとすごく目を輝かせながら屋台を見ている。
「芽吹ちゃん、もしかして焼きいも好きなの?」
「めっちゃ好き」
即答、これはびっくり。そんなこと初めて聞いた。鈴ちゃんもびっくりしてる。
「そうなんだね! 1つ250円だって、買ってく?」
「みんながいいなら」
というわけで焼きいもを買うことになった。
「あの、焼きいも3つ下さい」
「お~焼きいも3つね。合計で750円だよ」
1人250円ずつ支払う。
「焼きたてだから熱いよ~気を付けて食べてね」
新聞紙に包まれた焼きいもが3つ入った紙袋を手渡された。温かい。屋台で焼きいもを買ったのは初めてな気がする。
『ありがとうございます』
公園のベンチに座って袋から焼きいもを取り出してみる。
「熱っ」
思った以上に熱かった。
「ほい」
「ありがと」
「てんきゅ~……って熱いね~」
「だねー」
ハンカチでうまい具合にくるんで二つに分ける。すると、きれいに割れた。ホコホコと湯気が立ち上っている。見るからに美味しそう。
「いただきます」
フーってして少し冷ましてからひとくち。
「すっごくおいしい」
熱いけど、とても甘くてホクホクしてる。蒸かしいもは食べることが何度かあっても石焼きいもなんて頻繁に食べられるものではないしなーと思いながらパクッと食べる。少し焦げているところがあるけど気にしない。さつまいもはさつまいもでも何の品種なんだろう。気になったのだけど聞こうとは思わなかった。
「おいしいねー」
「そうだね! なんだかいくつでも食べられそうな気がする。でも、たくさん食べたら体重増えちゃうな~」
「確かに……」
焼きいもっておいしいけどおいもだし、炭水化物だし、食べ過ぎには注意しないと。うん、地獄見そう。
ワチャワチャしながら空を見上げる。雲1つない青空でだんだんと日が暮れ始めていた。公園の木々はまだ色づいてはいなさそうだ。秋の気配を感じながら食べる焼きいもってとってもおいしいんだなって思った。まさに焼きいも日和。
「焼きいもとかってさ、1つ食べるだけで結構お腹がいっぱいになるよね」
「そりゃ~おいもだもの」
「晩御飯食べられるかなー」
「動けば大丈夫だよ、多分!」
「多分って……確かに動けばどうにかなるかも?」
「そう思うしかないよね~」
食べ終わって焼きいもを包んでいた新聞紙などを公園のゴミ箱に捨てた。
「おいしかったね。私、こうした屋台で買って食べるのは初めてかもしれない。あ、でもお祭りとかの屋台とかだったらあるからね」
「確かに、うちも地域回って販売する屋台の方ならあまりないね。買う機会なければこんな風に買うのってそうそうないからねー」
「アタシはね~毎年この時期になると大抵住んでるとこに回ってきてたからよく買ってたな~今年になって初めてかもしれない」
気がつけば焼きいもの屋台はどこかに移動してしまっていた。今度はいつ遭遇することができるのだろうか。次に期待しながら駅の方へと向かう。向かいながらも話は尽きることがなかった。テストの事や先月の体育祭、今月開催される文化祭の事など、学校行事のことが多かった。
駅に着くと帰宅ラッシュと重なったのかやけに人が多かった。バス停にも人が大勢並んでいる。
「そういえば2人って明日、部活あるの?」
「うちは一応あるよ、コンクールと文化祭近いし練習があるからねー」
「私は休みだけど明日、日直なんだよね。」
「そうなんだ~」
「あ! そろそろ電車の時間ヤバイかも。じゃあ、また明日!」
「じゃあねー」
そう言って3人それぞれ別れて行った。
帰るためにバスを待っているとカラスが大声で鳴きながらどこかへと飛んでいくのが見えた。日が暮れてきて涼しい風か吹いてくる。改めて秋だな~と思う季節になった。やっぱり今日は焼きいも日和だなって思った。
焼きいもっておいしいですよね。小説の書き方が未だに定まらない。あやふやな文章になりがちなんですよね。
今回もお読みいただきありがとうございました。
寄り道~だし茶漬けは囁いた~
今しがた乗るはずだったバスを逃した。急いで駅のバス乗り場に駆け込んだまではいいが、間に合わなかったのである。5mくらい前でドアが閉まり颯爽と走り去っていった。冷たい風が吹き抜けていく。
現在午後8時半。次のバスまで約50分。タクシーに乗って帰ろうかと思ったが、タクシー乗り場は人が多かった。それに伴って選択肢は消えた。家にあるものでどうにかしようと思って晩御飯はまだ食べていない。
「はぁ、お腹空いた」
同時に腹の虫も何かしら食えと主張してくる。
どうしよう。
寒い中で50分も突っ立っているわけにもいかないし、コンビニで弁当でも買うか。コンビニってどこにあったっけ?
見回した視界の端にライトに照らされているのぼりが見えた。
「おかわり無料」
普通の定食屋らしいが行ったことのない店だ。そろそろ空腹が限界に近く惹かれるように店へ向かった。
店の前にメニューが立ててあり、どんなものがあるのか気になったので見てみた。
肉、魚、野菜、さまざまな定食が並んでいる。どれもお手頃価格で財布に優しそうだ。数分眺めた後、最近、魚を食べる機会がないと思って鯖の味噌煮定食にした。
魚って家では食べると後片付けが少々面倒なのである。焼いた時の匂いが部屋にこもってしまうし。
中に入ると食券を購入しないといけないようだ。少し機械に苦戦しながらも食券を購入し、店員に席に誘導される。
「当店はお冷やなどはセルフサービスになっておりますのでご自分でお取りください」
そう告げられ店員は食券の半分を持って厨房に消えていった。
夕飯のピークは過ぎているようで人はまばらだった。飲み物を取りに行く。水か温かい烏龍茶か、温かい方が好みなので烏龍茶にした。烏龍茶の入ったポットの隣にもうひとつポットがある。なんだこれ。ポップには【だし】と書かれていて、最近の定食屋にはだしがおいてあるんだなと感心してしまった。ポップを読み進めるとだし茶漬けがオススメらしく【おいしい食べ方】の図まで書いてあった。
自分の座席に戻って時間を確認する。次のバスまで残り40分。急がなくても間に合いそうだ。
それからさらに数分。
「お待たせしました。鯖の味噌煮定食です。」
目の前に置かれた鯖の味噌煮は照明に照されて輝いて見えた。割り箸を割って……今回はうまく割れたようだ。いつもは片方だけ短くなってしまうので割り箸を割るのは苦手なのである。少し嬉しい。
「いただきます」
鯖を箸で一口大に分ける。よく煮込まれているようで柔らかく簡単に分けることができた。熱そうなので気を付けながら一口食べる。甘めの味噌の味が染みていてなんだかほっこりする。これはご飯がよく進む味だなと思った。魚とご飯の組み合わせっていいよな。時々味噌汁を啜りながら食べ進める。あっという間にご飯がなくなってしまった。鯖も同じようなタイミングで食べきってしまったのだか、少々食べ足りないと言うか、だし茶漬けが気になる。
まるでだし茶漬けに囁かれているかのように。
「おいしいよ。食べてみて。だしとご飯とお漬け物。小腹が空いているのなら。だし茶漬けはいかがかな。だしの香りが誘っているよ」
そう言っているように聞こえた自分は疲れているんだと思う。バスの時間まで20分。時間は少しあるし食べてみようと思う。食べ過ぎだと言われても体重なんて知らない。明日のことは明日の自分に任せればいいのだ。てことで明日の自分、頑張れ。
おかわりもセルフサービスらしく自分で食べる量をよそった。だしをかけて定食についてきた漬け物をのせる。これでだし茶漬けは完成である。お茶漬けはよく食べることが多いけれどだし茶漬けは初めて食べる。作り方ってそこまで変わらないから家で食べることができそうだ。そろそろ食べないとバスの時間が刻一刻と迫ってきている。
おいしい。
だしのかつお節の香りとご飯が絶妙に合っている。漬け物の食感も面白い。一口、また一口と進んでしまいほんの5、6分程で食べきってしまった。
「ごちそうさまでした」
おいしかった。一言、呟いて立ち上がる。バスの時間はもうすぐだ。
「ありがとうございました」
店員さんが笑顔で見送ってくれた。
また機会があればまた来てみようかな。
外に出ると思いの外冷えていて風邪をひいてしまいそうなくらい寒い。バス乗り場に着いた頃、丁度乗ろうとしていたバスが来た。乗り込んだ人は自分を含めて3人、時間も遅いのでガランとしていた。30分程揺られて目的地のバス停に着いた。いくつか手前でバスの乗客は全員降りてしまい乗っていたのは自分だけだった。
家についてお風呂を沸かしている間に本を読んでいたのだか、気づいたらうつらうつらしていた。それだけ疲れていたのだろう。お風呂が沸いた音がしたのでお風呂に入って布団に横になると早々と眠ってしまった。
何故か数匹の鯖に追いかけられる夢を見て夜中に飛び起きたのはまた別なお話。そのせいで次の日は少し寝不足ぎみだった。
先日、だし茶漬けを食べる機会があったのですがとてもおいしかったのでつい筆が進みました。
バスに乗り遅れた絶望感はハンパじゃないです。バスに乗るときは時間に余裕を持って行かないと後悔しますね。