エントランスはとても汚くいかにも廃墟という雰囲気を出していた。床にはこの工場の製品なのかおもちゃが転がっている。奥にはシャッターで閉められていたが、上に青の手形が表示された機械があった。あそこにこのハンドをかざせばいいのだろうか。しかし、ここを通ってしまったら引き返せない気がする。鼓動が早くなる。ここで決断しなければならない。ここで野垂れ死ぬか、進んで出口を探すか。足がすくんでしまう。体が進むことを拒否している。そんな体の反対を押し切って、ハンドで機会にかざしてシャッターを開けた。そこを通り抜けると広場に出た。中央にはさっき説明書の所々に出ていたキャラクターの大きい置物があった。上には『poppy play time』と書かれた看板がある。この工場の会社の名前だろうか。青い毛むくじゃらで口のふちが黄色く大きな二つのクリっとした目のキャラクターからは、薄い狂気を感じた。そんなふうに眺めていると一つ異変に気が付いた。あの毛むくじゃらの置き物が鍵を持っていた。興味本心でハンドで取ってみた。それは扉を開けるものと思われる鍵だった。気になった僕は毛むくじゃらの人形が入った箱を押し除けて探した。箱には「ハギーワギー」と書かれている。この青いキャラクターの名前だろうか。そんなふうに考えながら鍵に合う扉を探していると、その扉があった。扉を開けてみると、電気室の部屋があった。書き置きのようなメモではこのような事が書いてあった。ドアを開ける為の電気の配線の直し方のマニュアルがあった。不器用なせいで時間がかかったが成功したようで物音がした。急ぎたかったのでスライディングしてどこかしらのシャッターが開いたかを確認しようとしたんだけど。あのキャラクターがいなかった。置き物じゃなかった。急な場面の転換に困惑している自分がいる。今すぐ帰りたい。あいつは何者なんだ。いやだ。誰か居ないのか。助けて助けて助けて助けて助けて助けて。助けてください。誰でも良い、死にたく無い。怖くなって埋まっていると何かが端に見えた。顔を上げると、さっき消えた生物がそこに立っていた。食われる食われる食われる死にたくない死にたくない死にたくない。しかしそいつは空気がなさそうで着いて来いと言わんばかりの仕草で去っていった。
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そこからマイクの人の姿は誰も見なかった。もしかしたら誰かは見た事あるかもしれないが家族でも分からないだろう。もう怪物の仲間入りした彼は気づいたら人を食っていた。自分が元同種の誰かに殺されるその瞬間まで、喰らいつく。