『氷解の魔法使い』の執筆が進まなすぎて、ふざけて作りました。
『氷解の〜』とは設定が大幅に違うため、『氷解の〜』を読んでなくても遊べると思います。というかせっかく作ったので遊んでほしいです。分からないところは雰囲気で楽しんでください。
攻略対象は、チカゼ(女子)・シュウ(男子)・グレン(男子)の3人です。もしかするとキュンキュン要素は少ないかもしれません。乙女ゲーム風なので夢小説タグをつけていますが、夢機能はありません。
もし不具合などがあったらごめんなさい。すぐに対応しますので、ご報告よろしくお願いします。
【結末について】
エンド数は44種類です。目指せコンプリート。
私の感覚だと、成就エンド1割、失恋エンド3割、その他エンド6割くらいです。
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目次
氷解学園物語(ゲームスタート)
私は氷解学園に通う中学二年生。実は最近、気になる人がいる。
……ううん、気になるなんてレベルじゃない。
放課後の図書室、グラウンド、あるいはすれ違いざまの廊下……。
目を閉じれば、いつだってあの人の姿が浮かんでしまう。
私が惹かれているのは……
・孤高のマイペース、チカゼ先輩
→https://tanpen.net/novel/bb5f1df5-a564-4bfc-b2e5-3033a50f0705/
・爽やか王子系生徒会長、シュウ先輩
→https://tanpen.net/novel/af141449-ec25-4616-b414-51e4fe17435f/
・怖そうで実は優しい、グレン先輩
→https://tanpen.net/novel/4152e03c-fc6f-491c-9106-fcaf2d41ccac/
孤高のマイペース、チカゼ先輩
「3年の、チカゼ先輩……」
名前を呟くだけで、胸の奥がぎゅっと熱くなる。
先輩の姿を目で追うだけで、私の平凡な学園生活が鮮やかに色づいていくみたいだ。
クールな彼女ともっと仲良くなりたい。
今日は急な雨で傘持ってないって言ってたし、放課後の今こそアプローチのチャンス……
・「傘、一緒に入る?」と誘う
→https://tanpen.net/novel/f957f02b-4e72-40ea-9db5-d64b4ae565cb/
・傘を貸して、自分は走って帰る
→https://tanpen.net/novel/6718d072-0db5-4766-b39f-732b88396adf/
・……自分も傘ないかも
→https://tanpen.net/novel/b4d21e2e-1cec-4193-990c-28260474009f/
「傘、一緒に入る?」と誘う
勇気を出して差し出した傘。チカゼ先輩は少し驚いたように目を見張ったあと、ふっと柔らかく微笑む。狭い傘の下、肩が触れそうな距離。先輩からほんのり良い香りがして、私の心臓は破裂しそう!
でも結局、微妙な距離を保って歩くことに。「肩が濡れる」と言って先輩が私の傘をぐいっと彼女側に引き寄せる。……あれ、これ私が濡れるやつだ。
エンド1:「貴方の傘小さい、私狭いの嫌い」
傘を貸して、自分は走って帰る・気を取り直し、チカゼ先輩のもとへ
翌日、チカゼ先輩から「いいもの見せてあげるから来て」と言われ、私は理科室に足を踏み入れた。
チカゼ先輩は棚からフラスコを取り出し、怪しげな液体を混ぜ始めた。
曰く、「最高に美味しいコーヒーの再現実験」らしいけど、フラスコから注がれる液体は真っ黒だ。
・「飲んで大丈夫なやつ……?」と疑って訊く
→ https://tanpen.net/novel/fb731a79-09c9-458e-be14-3cde42ac36ef/
・「先輩、お手本として飲んでみて」と切り返す
→https://tanpen.net/novel/5af87ec2-a92a-4a74-9508-a236b4f5e804/
「飲んで大丈夫なやつ……?」と疑って訊く・チカゼ先輩へ「私を助手に」と直談判
「あら。それならこれ、飲んでくれるの?ちょうど被験者が欲しかったところよ」
チカゼ先輩は自信満々にフラスコを近づけてくる。
断りきれず、半ば強制的に飲まされた。
強烈な酸味と苦味に耐えて飲み干した直後、胃のあたりがカッと熱くなり、視界がぐにゃりと歪んだ。
思わず彼女の白衣の袖を掴む。「ちょっと、いきなり……」と驚くチカゼ先輩。
「あら? 急に服がぶかぶかになって……」
いつもは見上げるはずのチカゼ先輩が、なぜかものすごく巨大に見える。いや、違う。私が小さくなっているんだ……!?
まさかの身体を縮ませる謎の薬品だった。
慌てて私を机の上に抱え上げるチカゼ先輩。至近距離で見る先輩の顔はものすごく綺麗だけど、それどころじゃない!
介抱されるうちに「なんだか、手のかかる妹ができたみたい」と、完全に妹ポジションに固定されてしまった。仲良くはなれたけど、そうじゃなーい!
エンド2:「自慢の妹よ」「違います」
「先輩、お手本として飲んでみて」と切り返す
「嫌よ。私は飲まない」
そう言って先輩がシャッと遮光カーテンを閉めると、理科室は一瞬で真っ暗になった。
次の瞬間──フラスコの中の液体が、優しく、そして鮮やかに輝き始めた。
まるで星が瞬く夜空を閉じ込めたみたいに、暗い部屋を美しく照らしていく。
「化学発光よ。綺麗でしょ」
驚きで見惚れる私の横で、チカゼ先輩が小さく微笑んでいる。光に照らされた彼女の横顔が、いつもよりずっと大人っぽくて、胸が締め付けられるように痛い。
二人きりの暗い部屋。彼女との距離が縮まる予感。
・「綺麗……まるで魔法みたい」
→https://tanpen.net/novel/83fdf8c3-c580-4989-a18d-9144dfc277f6/
・「これ、他の人にも見せてたりする?」
→ https://tanpen.net/novel/71d73d18-5652-48a6-9d6e-d2df97337010/
・「明日のお昼、一緒に食べない?」
→ https://tanpen.net/novel/844c6b9f-a509-46dd-a4e8-ad9c0d4d1509/
・「ごめん、暗闇苦手。カーテン開けて」
→ https://tanpen.net/novel/178a857b-63b8-4245-93ad-a98de7060c9f/
「綺麗……まるで魔法みたい」
チカゼ先輩がフラスコを掲げ、少女のように胸を張る。
「ええ、そうよ! 私は魔法を作ることができるの。科学という名の、誰にでも再現可能な魔法をね!」
それ以来、放課後は彼女の「一番弟子」として、怪しい爆発や発光現象に付き合う日々が始まる。恋というよりは、もはや師弟愛だけれど、私は彼女の一番近くで、魔法という実験に魅了される日々を送った。
エンド3:「魔法使いの弟子」
「これ、他の人にも見せてたりする?」
チカゼ先輩が淡々と、しかし饒舌に話し始める。
「ええ、グレンになら何度か見せた。あの人、最初は『興味ない』って言うんだけど、光り始めると黙って見てるの。この前なんてグレンがね……」
ひたすらグレン先輩とのエピソードを聞かされ続ける。
私は「あれ、私チカゼ先輩を攻略してたはずじゃ……?」と虚無感に襲われた。
・グレン先輩に嫉妬
→https://tanpen.net/novel/62afe9e1-91e7-49d5-ba11-eed3c955729f/
・グレン先輩、好きかも……
→https://tanpen.net/novel/1bb0ab61-809a-4235-bd50-0eb9c181f50b/
自転車の二人乗り・グレン先輩、好きかも……
すっかり遅くなってしまった、ある日の放課後。校門へ向かう私を、自転車を押したグレン先輩が追い越した。
「おい、まだ残ってたのか。乗れよ」
「えっ、二人乗りはダメだよ!」
「校門出るまでだよ。ほら、置いてくぞ」
促されるまま、先輩の自転車のリアキャリアにそっと腰掛ける。
「しっかり掴まってろよ」と言われ、先輩の制服の裾をぎゅっと握る。
夕焼けに染まる学園の敷地内を走りながら、先輩の背中の広さと、心地いい風を感じる。
感動に浸っていた、次の瞬間だった。
校門の前に女性が一人、仁王立ちしている。
「テオ……おれの義理の姉貴だ。関わるとまず碌なことにならん」
先輩は、競輪選手ばりの猛烈な勢いでペダルを漕ぎ出した。
ギィィィィィン!!!(駆動音)
「速い! 速すぎ先輩!!」
「どけぇぇぇテオォッ!!」
甘酸っぱさなんて1ミリもない。
先輩は見事なドリフトで校門を突破し、お姉さんを引き離した。
翌日、私とグレン先輩の名が全校に轟いたことは言うまでもない。
エンド25「氷解の韋駄天」
グレン先輩に嫉妬
「明日の球技大会、私が先輩より活躍したら、チカゼ先輩の前から消えて!」
「は……?」
学園の渡り廊下で叫んだ私に、グレン先輩は不思議そうに首を傾げた。
「……ハァ。わかったわかった」
──そして翌日、球技大会。
男子バスケに出場したグレン先輩は、ダンクシュートを連発して大暴れ。その圧倒的身体能力を見たチカゼ先輩は、目を輝かせて彼に絡んでいた。
「グレンすごい、私のチームに来なさい」
「おれが女子バレーに入れるわけねぇだろ」
「女装すればなんとか」
私は楽しそうにしている二人を眺める。
私の宣戦布告なんて、ただの子供のわがままだったと思い知らされた。
エンド27「憧れの貴方は」
「明日のお昼、一緒に食べない?」
チカゼ先輩の目がスッと細くなり、研究者らしい冷徹な顔に戻る。
「……タダで私の時間を拘束しようというの? 良いよ、ただし対価を要求する。……明日のお弁当、私の分も作ってきなさい。卵焼きは甘いやつね」
意外な弱点(甘党)と、家庭的なスキルを要求される展開。
ここから料理を通じた本格的な恋愛が始まる……と思いきや、私はただただ、彼女の胃袋掌握に成功しただけだった。
エンド4:「行きつけの弁当屋」
「ごめん、暗闇苦手。カーテン開けて」
先輩が勢いよくカーテンを開けると、外には女子数名が窓に張り付いていた。
「キャー!チカゼ様が後輩と二人きりで暗闇に……!!」
「許せない、ついこの間シュウ様をフっておきながら……!」
チカゼ先輩は冷静に言う。
「私やシュウの『ファンクラブ』を名乗る不法占拠者よ。気にしないで」
翌日から、私は「チカゼ様に近づく不届き者」「シュウ様の元カノに近づく怪しい人」として、女子ファンからの厳しい視線にさらされる。前途多難な学園生活の幕開けだった。
エンド5:「四面楚歌」
……自分も傘ないかも
探しても探しても見つからない、私の折りたたみ傘。この間、鞄に入れたはずなのに。いや、入れたつもりになってただけで、家にあるんだ……。
……さて、どうしよう?
・一緒に雨宿り
→https://tanpen.net/novel/1cdb6e76-8e9c-4fe9-b613-ffee36a770aa/
・先輩のブレザーに潜り込む
→https://tanpen.net/novel/c1d6430d-f84f-45cd-8c76-98aa7a8412b8/
・雨を操る修行を始める
→https://tanpen.net/novel/8eb0cd91-6326-4ea5-aba4-adbf4ff3996c/
一緒に雨宿り
チカゼ先輩は「……そうね。少し本でも読んで待とうかしら」と応じ、2人で静かに雨音を聞きながら雑談をしていた、その時。
昇降口に停まったのは、ピカピカに磨かれた紺色の高級車。その助手席の窓がウィーンと開き、中からぱっと花が咲くような笑顔が顔を覗かせる。
「やあ、君たち! 良かったら、乗ってよ」
生徒会長のシュウ先輩だ。運転席には使用人らしき人がいる。
「丁度良いところに。乗せてもらいましょう」
チカゼ先輩は当然のように、すたすたと車へ歩いていく。
この二人、つい先日まで恋人同士で、別れたばかりじゃなかったっけ……?
・乗る
→https://tanpen.net/novel/b9085f70-cff7-4461-994f-6fa2c8b5b61f/
・乗らない
→https://tanpen.net/novel/d752403f-2e84-4af2-82d3-eaba6bf2e57e/
乗る
置いていかれたら終わりだ。私は先輩の後を追い、高級車の後部座席に滑り込んだ。いや、めちゃくちゃ広い。本物の革の匂いがする。
「やあ、いらっしゃい!」
シュウ先輩が振り返り、太陽のような笑顔で手を振る。
「シュウ、エアコン強めて。あと、運転手さん、途中でコンビニ寄ってください。アイス食べたい」
「了解。アイスといえば、今話題の限定フレーバーだね?」
「ええ。もちろん」
驚いた。別れたばかりのはずなのに、チカゼ先輩は元カレを自然に、遠慮なく顎で使っている。シュウ先輩も、嫌な顔ひとつしない。
「チカゼ、この車をあまり足代わりにしないでよ」
「あら、使えるものを使わなくてどうするの」
チカゼ先輩はそっけないふりをして、どこか楽しそうだ。
車が走り出すと、シュウ先輩はバックミラー越しに私へ話題を振ってくれる。
その気さくな優しさに、私の緊張はすっとほぐれていった。
・本当に別れたのか尋ねる
→https://tanpen.net/novel/be0c2eeb-ee12-4781-8d12-6cf04681d014/
・まずアイスを優先
→https://tanpen.net/novel/1c01d3d9-f8d5-4fdb-8dca-77d85c5d942d/
本当に別れたのか尋ねる
「本当に、別れたんだよね?」
あまりにも息がぴったりな2人に、ストレートすぎる疑問をぶつける私。
チカゼ先輩はスマホから目を離さず、「ええ。終わった関係にいつまでも執着するのは非合理的でしょう。今の距離感が一番お互いの損にならないのよ」と、どこまでもドライに、しかし確かな信頼を感じさせる答えを返した。
「じゃあ私、お母さんに買い出し頼まれてるから。そこで降ろしてください。あとシュウ、傘貸して。明日返すから。二人とも、また明日ね」
チカゼ先輩はさらっと言い放ち、車から降りてしまう。シュウ先輩は慣れた様子で「また明日、気をつけて」と手を振った。
バタン、とドアが閉まり、彼女の姿が雨の中に消えていく。
・自分も降りて追いかける
→https://tanpen.net/novel/9da8276b-5b89-4030-8350-0433910130eb/
・このまま車に残る
→ https://tanpen.net/novel/40439a2f-0b80-4c3b-b238-047fdab033c2/
自分も降りて追いかける
「あ、私もここで失礼します! 送っていただきありがとうございました!」
私は慌ててお礼を言うと、車のドアを開けた。
助手席のシュウ先輩が驚いて声をかけるけれど、私はそのまま雨の降る外へと飛び出す。
「チカゼ先輩! 待って!」
息を切らせて追いついた私に、彼女は驚いたように足を止め、振り返る。
「……あら。どうして貴方まで降りてきたの? 家まで送ってもらえばよかったのに」
「それは、その……」
好きだから。なんて、言えるわけがない。
脈がないことは、これまでの先輩の態度で痛いほど分かった。でも、彼女はどこまでもマイペースで、こちらからはっきり伝えないと、風のように去ってしまう気がする……。
・「先輩のことが、好きだからです!」
→https://tanpen.net/novel/f28d0c38-1896-4841-9643-633dfa4b09ca/
・「先輩のお買い物、私も手伝いたくて!」
→ https://tanpen.net/novel/8065f8c9-a687-4032-b005-ebc7b9257367/
「先輩のことが、好きだからです!」
想いをストレートにぶつける。
チカゼ先輩は一瞬だけ目を見開くけれど、すぐにいつもの淡々とした表情に戻り、
「……そう。気持ちは受け取っておく。さあ、濡れるから早く中に入りなさい」
優しくも容赦のないトーンで一線を引かれた。
雨の冷たさと胸の痛みが混ざり合って、切なさが込み上げてくる。だけど、逃げずにちゃんと伝えられたから。先輩のあの引き締まった表情を思い出して、私は小さく息を吐き出した。
エンド7:「玉砕確定・でも少しスッキリ」
「先輩のお買い物、私も手伝いたくて!」
結局チキンになってしまう私。
チカゼ先輩は「……奇特な子ね。じゃあ、重い荷物は貴方に持ってもらおうかしら」と、傘を差し掛けてくれる。
結局私は、それからも先輩の便利な後輩ポジションのまま、先輩が卒業するまでに想いを伝えられなかった。
そして数年後、成人した私は、彼女の結婚式に出席して複雑な涙を流すことになるのだった。あの雨の中、もし一歩踏み出していたら、別の未来があったのだろうか。白いドレスを着た彼女は、相変わらず綺麗に笑っていた。
エンド8:「ほろ苦い青春」
このまま車に残る
車内には、私とシュウ先輩、そして運転席の使用人さんだけが残された。
さっきまでの賑やかさが嘘のように静かになった空間で、シュウ先輩が困ったように柔らかく眉を下げて笑う。
「あはは、驚かせちゃったね。チカゼはいつもあんな調子なんだ」
少しトーンの落ち着いたその声に、私は彼の素顔を見た気がした。
「それで、君はこれからどうする? 急ぎ用がないなら、このまま駅まで送っていくよ」
……さて、私はなんと答える?
・「どうすれば彼女の恋人になれる?」
→https://tanpen.net/novel/d669c40d-e3a8-41da-81af-9d4f26b3ad5e/
・シュウ先輩を口説く
→https://tanpen.net/novel/f81c2a37-97d4-474a-b99c-46c7e4cd78a5/
「どうすれば彼女の恋人になれる?」
コミュ強の王子に、プライドを捨ててすがるような思いでアドバイスを求める私。
シュウ先輩は一瞬目を丸くし、それから「くすっ」と楽しそうに声を立てて笑った。
「僕に恋愛相談をするの? 面白いね。……でも、良いよ。元カレの僕から言えるアドバイスは一つだけ」
先輩の表情に、理知的な光が宿る。
「彼女に『恋愛的なアプローチ』は一切通用しない。もしチカゼの視界に入りたいなら、彼女の興味がある分野で、対等に議論ができるくらい自分を磨くことだね。彼女は『自分を退屈させない人間』しか隣に置かないから」
恋バナではなく、まさかのスパルタな自分磨きのすすめ。でも、元カレだからこそ知る、最も確実で冷徹な攻略法だった。
・チカゼ先輩へ「私を助手に」と直談判
→https://tanpen.net/novel/fb731a79-09c9-458e-be14-3cde42ac36ef/
・シュウ先輩をとことん利用する
→https://tanpen.net/novel/b68dd6f5-a09c-407d-95cb-b2fd52be70d0/
シュウ先輩をとことん利用する
使える武器は、たとえ元カレであってもフル活用する。私はシュウ先輩を呼び出し、「チカゼ先輩が今ハマっているテーマと、おすすめの参考書を教えてください!」と迫る。
シュウ先輩は「僕をとことん利用する気だね、君は逞しいなぁ」と苦笑しつつも、「チカゼは今、〇〇の理論について調べているよ」と、門外不出の攻略情報を嬉々として提供してくれる。
でも、チカゼ先輩はちっとも振り向いてくれない。
彼女に「ふられた」元カレの助言を聞いたところで、無駄なのだろうか。
私は徐々に、彼女への想いを諦めざるをえなかった。
・月日は流れ
→ https://tanpen.net/novel/512c5d90-2101-4e38-9d6b-922749f81bd8/
月日は流れ
今日は先輩たちの卒業式。
私の前になぜか息を切らせたシュウ先輩が現れた。その手には卒業証書。
「やっと見つけた。聞いてくれ」
「なんですか? 先輩、もう卒業なんだから早く行ってくださいよ」
あしらう私に、シュウ先輩は真剣な目を向けた。
「僕と付き合ってください」
……えええええ!?
散々冷たくしたのに、まさかのここで告白!?なんで??
必死な顔で私を見つめるシュウ先輩。
チカゼ先輩への未練が、私のせいで綺麗に消え去ったという。
……まあ、そこまで言うなら、付き合ってあげてもいいかな?
エンド10「シュウ先輩の恋人」
シュウ先輩を口説く
チカゼ先輩が去った寂し気な車内。私は学園の王子に向かって、まさかの誘い文句を口にする。
「えっ……!?」
バックミラーに映るシュウ先輩は、顔を赤くして狼狽している。
「チカゼ先輩は脈なしですし。シュウ先輩、今一人になりたくない顔してたので」
「だからって、後輩の女の子の家に寄るわけにはいかないよ……!」
さっきまでの完璧な紳士ムーブはどこへやら。私の家に着くまで、先輩は私に説教をし続けるのだった。
エンド9:「王子の仮面、剥がれたり」
まずアイスを優先
色恋沙汰には深く踏み込まず、目先の利益(アイス)に走る私。
高級車は最寄りのコンビニに滑り込み、3人で冷凍ショーケースを覗き込むことに。
購入後、そのまま車内で食べるのかと思いきや、チカゼ先輩が「ここで食べましょう」と外を指さす。いつの間にか空は小雨になり、雲の隙間から夕日が覗いていた。
コンビニの軒下、三人で和気あいあいとアイスを食べる。
「たまにはこういう寄り道も悪くないね」
「シュウ、早く食べないと溶けるよ」
生徒会長のシュウ先輩と、学年首席のチカゼ先輩。
「次はグレン先輩も誘ってみようかなー」
そんな学園の二大スターに挟まれてアイスをかじる私。
恋愛的な脈はこれっぽっちもないけれど……不思議と居心地が良い。
恋と呼ぶには遠すぎる。だけど、この特別な放課後は、悪くないなと思った。
エンド6:「放課後フレンズ」
乗らない
「あ、私はここで雨が止むのを待つから! お二人でどうぞ!」
助手席のシュウ先輩は「遠慮しなくていいのに」と少しだけ残念そうにしながらも、私の気持ちを無理強いはしなかった。それどころか「それなら、せめてこれ持ってってよ」と傘を差し出してくれる。
──あ、ダメだ。一緒に乗るなんて。
あまりにも住む世界が違いすぎて、自分が惨めに思えてしまった。
チカゼ先輩は振り返りもせず後部座席に滑り込み、高級車は静かに走り去っていった。寂しさと悔しさで、胸の奥がじん頭痛む。
「……はぁ」
激しくなる雨の音だけが、私の情けないため息をかき消していった。
・知らない女性の声
→https://tanpen.net/novel/f73adfed-e4d5-4106-ba81-4c88635b570a/
・階段から荒い足音
→https://tanpen.net/novel/0e9239c6-6e3d-4f44-91aa-09755716e2d8/
知らない女性の声
「あちゃー、乗って良かったのに。あの二人、ただの友達だよ?」
驚いて振り返ると、そこにはスマホを片手に微笑む先輩が立っていた。
ゆるく巻かれた髪に、着崩した制服。どこか慈愛に満ちた瞳で私を見下ろしている。
「だ、誰……?」
「あたし? あたしはマツリカ。よろしくね」
聞き覚えのある名だった。
交友関係が狂うほど広くて、学園中の噂話に通じているという、あの有名な……。
マツリカ先輩はトコトコと私の隣まで歩いてくると、赤いテールランプが消えた雨の向こうを眺めて、ぽん、と私の肩を叩いた。
「ま、相手が悪かったね。チカゼちゃんに惚れたら恋愛ハードモードだよ。だってあのシュウ君ですら落とせなかったんだもん」
マツリカ先輩が、いたずらっぽく笑う。
ふわりと、雨の匂いをかき消すような、甘い香りが鼻をくすぐった。
エンド30「マツリカ先輩」
階段から荒い足音
「あー……クソ、激しく降ってんな」
頭をガシガシと掻きながら階段を下りてきたのは、3年のグレン先輩だった。
肩にスポーツバッグを引っ提げ、制服のネクタイを緩めた姿は、野生の獣みたいな威圧感がある。
先輩は、ぽつんと佇む私のひどい顔に気づくと、ピタッと足を止めた。
鋭い眼光が私をじっと見つめ、それからチカゼ先輩たちの車が去っていった雨の向こうへ視線を走らせる。
「……。おい、大丈夫かよ」
グレン先輩は私の横に並ぶと、自分の制服のブレザーをバサッと脱いで、私の頭の上に放り投げた。
「ほら、それ被れ。……駅まで走るぞ。遅れんなよ」
理由も何も聞かない。でも、今の私の惨めさを全部雨と一緒に吹き飛ばしてくれるような、ぶっきらぼうな優しさだった。
・気を取り直し、チカゼ先輩のもとへ
→https://tanpen.net/novel/6718d072-0db5-4766-b39f-732b88396adf/
・グレン先輩、好き……
→https://tanpen.net/novel/dcbba876-22fe-469c-a207-79cff71e0b68/
夜の学校で遭遇・グレン先輩、好き……
宿題のノートを教室に忘れ、夜の学園にこっそり忍び込んだ私。
歩いていると、窓際の月明かりに人影が見えた。
「……あ? 誰かと思えば」
そこにいたのは、夜風を浴びていたグレン先輩。
誰もいない校舎。一気にロマンチックな雰囲気に──
「君たちどうして……!?」
廊下の奥から走ってきたのは、なんとシュウ先輩だった。
「シュウ、お前まで何して」
「僕は……あっ、グレン、君まさか……いや今は隠れて!」
優しく引っ張られ、全員で近くの教室に身を隠す。
次に、シュウ先輩は素早く片腕を伸ばし、廊下にいた誰かの手首をパシッと掴んだ!
「やっと捕まえた。お願いだから夜に学園七不思議を調査するのやめてって言ってるじゃないかチカゼ!」
「今日も中庭の銅像が動いたという目撃情報があったのよ。もしかすると科学的な真相が……」
チカゼ先輩は大真面目に抵抗している。
「それで、グレン先輩はどうしてここに?」
「チカゼの付き添い」
私の恋心は、先輩たちのカオスな生態と共に夜の闇へと消え去ったのだった。
エンド26「先輩たちこそ七不思議」
先輩のブレザーに潜り込む
傘がないなら、先輩の服に入ればいいじゃない。私は謎の男気(?)を出して、先輩の背後からその制服のブレザーに頭を突っ込んだ。
「先輩、寒いです! 暖めてください!」
「……何してるの。暑苦しい」
チカゼ先輩は明らかに迷惑そうな顔をして、私の頭をブレザーから引っこ抜いた。
そして、私の着ていたパーカーのフードをクイッと持ち上げると、そのまま下駄箱のフック(傘掛け)にガチッと引っ掛けたのだ。
「え、あ、先輩!? フードが突っ張って動けません」
「そう。じゃあね。……あ、マツリカちゃん! 傘持ってる?」
先輩は一度も振り返ることなく、優雅に雨の中へと去っていく。
完全に吊るされた私は、通りかかる先生に見つかって怒られるまで、そのまま虚しく足をバタつかせることしかできなかった……。
エンド28「てるてる人間」
雨を操る修行を始める
先輩を濡らすわけにはいかない。かといって、今の私では傘を差し出すことすら不可能。……なら、やるべきことは一つ。
「はあああああ……ッ!!」
私は下駄箱の前で天に向かって両手を掲げ、全神経を集中させた。気合で雨雲を吹き飛ばすのだ。
「……何、新手の儀式?」
通りかかったチカゼ先輩が、私を見て足を止める。
「あ、チカゼ先輩! 今、先輩のために雨を止める修行をしてます!」
先輩はフッと鼻で笑うと、私の額を人差し指でデコピンした。
「バカなこと言ってないで、風邪ひくから早く帰りなさい」
「あぅ……(でも先輩に触られた!)」
結局雨は止まなかったけれど、おでこに残る熱だけで向こう1ヶ月は生きていけそうだった。
エンド29「気象系能力者(自称)」
爽やか王子系生徒会長、シュウ先輩
「3年の、シュウ先輩……」
ある日の放課後。夕暮れ時の誰もいない教室に残っていると、廊下からカツカツと足音が響いてきた。教室の扉を見ると、そこには先輩の姿が。
「あ、君は……こんな時間まで居残りかい? 頑張ってるね」
その笑顔は、まさに少女マンガの王子様そのもの。
私は、心臓がうるさく跳ねるのを必死に抑えた。
どうしよう、なんて返事をする……?
・「先輩に会いたくて残ってた!」
→https://tanpen.net/novel/2874d4f6-d766-4c3c-9484-d71dd7d2a91d/
・緊張のあまり、お辞儀だけして逃げる
→https://tanpen.net/novel/5f4645a9-bdab-4776-89c7-b591e849ccf7/
「先輩に会いたくて残ってた!」
勢いのままに告げた言葉は、教室にやけに大きく響いた。
心臓がうるさく脈打つ音を隠すように、ぎゅっとスカートの裾を握りしめる。
後悔と期待が入り混じる中、シュウ先輩は驚いたようにパチパチと瞬きをした。
「僕に何か用事?」
恋愛の「れ」の字も感じさせない、真っ直ぐな返答だった。
冷水を浴びせられたような気分になりながらも、ここで引くわけにはいかないと、私は震える声で言葉を絞り出す。
・「生徒会の仕事、手伝わせて」
→https://tanpen.net/novel/d3ebde5e-1292-4072-b2f2-0f42c9b97c7c/
・「好きです」
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「生徒会の仕事、手伝わせて」
「ちょうど今から資料の仕分けをするんだ。図書委員の君が手伝ってくれるなら助かるけど……」
こうして私たちは、旧校舎からたくさんの本と資料を抱え、図書館へと向かった。
奥の資料室に着いた瞬間、不意に隣から手が伸びてダンボールの重みが軽くなる。
「ありがとう、助かったよ」
周りに取り巻きはいない、二人きりの空間。窓から差し込む茜色の夕陽が、先輩の輪郭を柔らかく縁取っている。
ふとした拍子に、彼の眉間がごくわずかに険しく歪み、表情が曇ったのを私は見逃さなかった。
・「先輩、悩み事?」
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・おすすめの本を紹介する
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おすすめの本を紹介する
自分のフィールドである本の話題で場を和ませようとする私。シュウ先輩は一瞬きょとんとした後、はじけた笑顔で笑った。
「ありがとう」
私が差し出した一冊の本を、先輩は嬉しそうに受け取る。
「読み終わったらまたここに来るから、感想戦、付き合ってくれるかい?」
・「毎日、先輩が来るのを待ってる!」
→https://tanpen.net/novel/1f22adad-0962-4cd1-8509-4f83f0aedcb8/
・「『登場人物になりきって』感想戦しよう」
→https://tanpen.net/novel/869c508b-fc6d-4b11-bd83-576035193d13/
「毎日、先輩が来るのを待ってる!」・「私にできること何でも言って!」・「先輩のこと、ずっと待ってる」
「良い後輩を持って、僕は幸せ者だ」
シュウ先輩はホッとしたように微笑み、窓の外を眺めた。差し込む夕日の中、静かな時間が流れる。
一見すると、少女漫画のような胸キュンシチュエーション。
でも先輩はどこまでも一線を引いていた。
どんなに健気にアピールしても、私は「安全圏にいる可愛い後輩」から一歩も踏み込めない。何もかも見透かされているような気がした。私は彼を慕う数多の人間のうちの一人に過ぎなかった。
卒業式、先輩は「後は任せた」と軽やかに手を振って、境界線の外側へと帰っていった──。
エンド12「蒼玉と石ころ」
「『登場人物になりきって』感想戦しよう」
ちょっと特殊なルールを提案する私。
シュウ先輩は一瞬呆気にとられるものの、次の瞬間、その蒼い瞳がスッと冷徹な光を帯びた。
「──フッ、面白い。ならば異国の商人よ、我が王宮に眠る知識の書、その価値を私に証明してみせよ」
「えっ……!?」
先輩は窓際の椅子に深く腰掛けた。その立ち居振る舞い、声のトーン、冷徹な眼差し……すべてが本物の若き王そのものだった。
「どうした? 呆然として。……ふふっ、あはは! びっくりした?」
次の瞬間には、いつもの爽やかな笑顔に戻る先輩。
「僕、実は演劇を少しかじっていてね。こういうの、大好きなんだ。よし、次は君の番だよ。商人になりきって!」
まさかの超ノリノリだった。というか、俳優を目指せるレベルの演技力で、中二病の私が逆に気圧されてしまう。
その後、放課後の資料室は、異色の演劇空間と化したのだった。
エンド11「天才役者の秘密の舞台」
「いつまで元カノ引きずってんの」
「……っ!?」
予想外のところから殴られたように、彼は言葉を失った。
私は嫉妬からなのか、苛立ちに任せて言葉を重ねる。
「聞こえませんでした? いつまでチカゼ先輩のこと引きずってるの。王子様なんてあだ名、やっぱり過大評価だったのかな。いつまでもみっともないよ」
一気に言い切ると、凍りついたように、心臓に悪い沈黙が流れた。冷や汗が背中を伝う。
怒らせてしまったのかと息を呑む私をよそに、彼はどこか切なさと熱を帯びた姿を覗かせた。
「凄いね、君。そこまで言った人、チカゼ以外で初めてだよ。……あはは、面白い。でもね、君にそれを言われる筋合いはないよ」
冗談めかしていながらも、その声には真剣な想いが混じっていた。
嫌われたのか、それとも──。
・「筋合い」を作る
→https://tanpen.net/novel/34c19e4d-e371-4e36-9e3c-0fa306b3ba5c/
・昨日は言い過ぎたと猛省し、謝る
→https://tanpen.net/novel/b6e268de-8c02-494a-81e0-624ce748d181/
「筋合い」を作る
夕暮れの教室、赤く染まる空気の中で、私はシュウ先輩に言い放った。
「『チカゼ先輩を引きずってるのはみっともない』って胸を張って言えるだけの理由。私が作ってあげる」
翌日の放課後、私はシュウ先輩を待ち伏せし、昨日と全く同じ不敵な笑みを浮かべた。
「……筋合い、作ったのかい?本当に?」
前髪の隙間から覗く先輩の目は何故かキラキラと輝いている。
「もちろん。私を部外者だなんて言わせない」
・「チカゼ先輩分析ノート」を突き付ける
→https://tanpen.net/novel/c18cfce0-8334-4bef-a9f9-1e47a297f26d/
・「私を好きになって。付き合ってよ」
→https://tanpen.net/novel/b6f9ac71-a0f7-4b2a-9266-6a72c7272900/
「チカゼ先輩分析ノート」を突き付ける
私はカバンから、昨晩一睡もせずに作成した資料を机に叩きつけた。
「これが、チカゼ先輩の生態分析と、先輩がフラれた原因の考察レポートです」
シュウ先輩は、その白く綺麗な指先でノートをパラパラとめくり──そして深くうなずいた。本気で感心しているようだった。
「すごいな、これ。ヒナに見せてもいいかい?」
「えっ、いいけど……」
「ありがとう。おーい、ヒナ!」
シュウ先輩は、同じく生徒会役員のヒナ先輩を呼んだ。たしか彼女は書記の仕事をしている人だ。
「どうしましたシュウ君。ノート? 拝見してよろしいのですか? 分かりました。……なにこれ……。えっ、これを一晩で? それは確かに、そうですね……」
ヒナ先輩の視線が、私とノートを行ったり来たりした。シュウ先輩はにこにこと微笑んでいる。
その後、紆余曲折あって、私は何故か『シュウ・サポーターズ』の一員となった。
エンド14「サポーターズ書記長」
「私を好きになって。付き合ってよ」
シュウ先輩は困ったように、でもすごく優しく微笑んだ。
「君は本当に真っ直ぐだね。僕のカッコ悪いところを突っついてくれたのも、今の言葉も。……でも、ごめん。僕はまだチカゼのことが好きなんだ。他の誰とも付き合う気はないよ」
二度目の告白。綺麗に、完璧に振られてしまった。
・「先輩のこと、ずっと待ってる」
→https://tanpen.net/novel/1f22adad-0962-4cd1-8509-4f83f0aedcb8/
・先輩の未練がましさで、想い冷める
→https://tanpen.net/novel/0e769cdc-2d64-4350-98ab-9a7b376b343b/
・シュウ&チカゼを復縁させる
→https://tanpen.net/novel/33c7d060-018a-4148-bfdc-21e25dce38ab/
先輩の未練がましさで、想い冷める
「そっか。まだそんなに好きなんですね」
さっきまでの熱い情熱が急速に引いていくのを自覚する。
目の前で切なげに微笑む中等部トップのモテ男が、急に「いつまでも過去の恋に囚われている、ちょっと面倒くさい未練がましい先輩」に見えてきてしまった。
「あ、なんか……冷めました」
「え……?」
あ然とするシュウ先輩を資料室に残し、私はさっさと帰宅へと向かった。
・月日は流れ
→https://tanpen.net/novel/512c5d90-2101-4e38-9d6b-922749f81bd8/
シュウ&チカゼを復縁させる
「そこまでチカゼ先輩のことが好きなら……私、二人の復縁を全力で応援する!」
「えっ!? ちょっと待って、君、さっき僕に付き合ってって……」
「先輩の一途な想い、尊すぎる……! 私が絶対にキューピッドになってみせるから!」
自分の失恋の痛みなんて、先輩の「一途な美しさ」の前に一瞬で吹き飛んでしまった。
それからの私は、まさに水を得た魚だった。
チカゼ先輩のさりげない日常を観察してはシュウ先輩に報告し、二人を自然に引き合わせるためのシチュエーションを裏で必死にセッティングする日々。
「明日の放課後、チカゼ先輩が来るよ! チャンス!」
「あ、ありがとう。君、本当に楽しそうだね……?」
そして数ヶ月後──。
校舎の裏手で、照れくさそうに手を繋いで歩く二人の姿があった。
物陰からその光景をそっと見守りながら、私はガッツポーズを決める。
その後も、学園きっての美男美女カップルの公認サポーターとして、私は楽しい学園生活を送り続けた。
エンド15「最高の推しカプが公式でくっついた」
昨日は言い過ぎたと猛省し、謝る
いくらなんでも、相手はあの学園の王子様なのに。
昨晩、ベッドでのたうち回るほど後悔した私は、学校の売店にいた先輩へ、「購買限定・高級メロンパン」を添えて頭を下げた。
「あ、あははは! 何だいそれ! あんなに格好良く啖呵を切っておいて、翌日には菓子パンで許してもらおうとするなんて……!」
彼はお腹を抱えて笑い、メロンパンを綺麗に半分に割って私に片方を差し出してきた。
「──シュウ、また下級生を誘惑してるの?」
刹那、凛とした声が響き渡った。
いつからそこにいたのか、チカゼ先輩が現れ、元カレから財布をひょいと奪い取る。
「してないよっ! というかチカゼ、僕の千円──」
「私の財布、教室にあるの。喉カラカラだから貸して。教室戻ったらすぐ返す」
彼女はガコンと出てきた缶を持って「授業始まるし戻るよ」とシュウ先輩の手首を掴み、半ば強制的に彼を連れていってしまった。
「シュウ先輩、元カノのどこが好きなんだろ……」
エンド13「どっちもどっち?」
緊張のあまり、お辞儀だけして逃げる
逃げ出そうとして足をもつれさせた私を、温かい手がグッと掴み止めた。
「大丈夫?」
すぐそばに先輩がいた。その姿は夕日の魔法も手伝って絵画のように美しい。手首から先輩の鼓動が伝わるみたいで、私はカァッと一気に顔が熱くなる。
「ねえ、今の見た!?」
背後の黄色い歓声を合図に、廊下はたちまち野次馬で埋め尽くされる。
向けられた羨望と嫉妬の視線が、一斉に私を貫いた。
・先輩の手を振り払って逃げ出す
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・先輩に上目遣いですがりつく
→https://tanpen.net/novel/fa3a7713-ad57-4347-b4d8-f874889c7f3f/
・貧血のふりをして倒れ込む
→https://tanpen.net/novel/0c5472fd-6ced-43f4-8cf6-bc0df47d2b6b/
先輩の手を振り払って逃げ出す
私はパニックになって一目散に廊下を駆け抜けた。
泣きそうになりながら昇降口に着いた私は、深呼吸して荒い息を整える。
「……いた」
私の背後に現れたのはシュウ先輩ではなく、生徒会副会長のレト先輩だった。
「シュウ様を置き去りにして逃げ出すとはいい度胸だ……って、そんなに怯えるなよ。俺は別に君を怒鳴りつけに来たんじゃない!」
長身をかがめるようにして、レト先輩は気まずそうに頭を掻く。
「すまない、その、なんだ。シュウ様が『大丈夫かな』って気にしてたからさ」
先輩はジッと私を見下ろすと、どこか切なそうに、そして諦めを含んだような溜息をついた。
エンド31「レト先輩」
先輩に上目遣いですがりつく
先輩は私を庇うように前へ出ると、穏やかでありながら毅然とした笑みを向けた。
「みんな、そんなに囲まないであげて。転びそうだったから支えてただけだからさ。ここ、通路だから集まると邪魔になってしまうよ」
その絶妙ないなし方に野次馬たちは「なんだ、そういうことか」と拍子抜けして次々と散っていく。
シュウ先輩は小さく息をつき、私に視線を戻した。
「大丈夫かい? 急に大勢に見られて驚いたよね。僕がうかつに君を引き止めたりするから……悪かったね」
そして先輩は「気をつけて帰るんだよ」と優しい言葉を残し、軽やかな足取りで去っていった。
エンド32「日常茶飯事」
貧血のふりをして倒れ込む
私の脳内で計算が走り抜けた。緊張して先輩に話しかけられないとか言ってる場合じゃない。ここで下手に逃げ出せば今後の学園生活、この取り巻きたちの格好の標的になる。
私はわざと目を白黒させ、フッと意識が遠のくような演技をした。完璧だ。思わず内心でガッツポーズを作る。これなら「ただの体調不良の女子を、優しい先輩が助けた図」にしか見えない。「あの子、大丈夫かな……?」という同情と心配の空気が周囲を包み込むのがわかった。
「保健室連れて行くから、下がって!」
シュウ先輩は周囲に向けて大きな声を張り上げ、私を軽々と、お姫様抱っこで持ち上げた。
やった。作戦大成功。
・先輩に演技がバレる
→https://tanpen.net/novel/9603d5c2-7fbd-4158-b359-a0af2f03d9b4/
・バレない
→https://tanpen.net/novel/7d33e998-c26e-44f2-8a3a-963efd5b116d/
先輩に演技がバレる
保健室。パイプ椅子が鳴る音のあと、ベッドの脇に置かれた椅子にシュウ先輩が腰掛けた。
「……もういいよ。目、覚めてるでしょ」と落ち着いた声が落ちる。
私はびくっと肩を震わせて目を開け、上体を起こす。先輩は澄んだ瞳で私を見下ろしていた。
「な、なんで先輩……分かったの?」
「だって、あまりに綺麗に崩れ落ちるから、感心しちゃったよ」
優しく目を細める彼に、私は恥ずかしさで顔から火が出そうになる。
「ご、ごめんなさい……! ギャラリーの人たちの視線が怖くて、ついあんな芝居を……」
「ううん、ナイスジャッジだったよ。あのまま囲まれてたら困っちゃうもんな」
彼は少し声音を落とし、ふっと茶目っ気のある笑みを浮かべる。
「それに、僕だって君ともっと話してみたかったからさ。結果オーライってことでいいよね?」
・「先輩が眩しすぎて目が……!」
→https://tanpen.net/novel/9b3eac44-fe47-44e6-9c1d-cf2ccd089dd5/
・「演技の採点、100点満点中何点?」
→https://tanpen.net/novel/59db6747-676b-41eb-b410-362f27526f2e/
「先輩が眩しすぎて目が……!」
見つめてくる美少年の瞳の破壊力に、私のHP(精神力)はとうとう限界を迎えた。
「──っ! 先輩、近い! 眩しすぎて目が潰れる!」
「あははっ、なんだそれ。急にどうしたのさ」
笑い声が響いた瞬間、保健室の空気が本当にふわりと輝いた気がした──その時だった。
ガラッ! とものすごい勢いで引き戸が開く。
「あ、いたっ! 窓からキラキラした光漏れてたから絶対そうだと思った!」
「私の網膜も今すぐ王子の光で焼き切ってほしい……!!」
保健室は、校舎中から駆けつけた生徒たちの群れで瞬く間に埋め尽くされた。
「おっと、これは逃げ遅れたかな」
シュウ先輩は慣れた様子で殺到する生徒たちをなだめ始める。
私は口をぽかんと開け、圧倒的な光の公害を眺めるしかなかった。
エンド33「歩く光害」
「先輩、悩み事?」
「先輩、悩み事?」
そう尋ねると、シュウ先輩の手がぴたりと止まった。
「そう見える?」
複雑な響きを含んだ声だった。
夕暮れの影が、彼の整った横顔を一層切なく染め上げている。
「……少し、疲れが溜まってるだけだよ。ここ最近忙しかったから」
そう呟くシュウ先輩の姿は、学園の王子様ではなく、ただの等身大のひとりの男の子に見えて──胸の奥が、締め付けられるように熱くなった。
・「私にできること何でも言って!」
→https://tanpen.net/novel/1f22adad-0962-4cd1-8509-4f83f0aedcb8/
・先輩を資料室に監禁
→https://tanpen.net/novel/0bc1989f-3f81-4dc8-9c78-e4465bfaca19/
先輩を資料室に監禁
私、本当は知ってる。可愛い先輩の悩みの種。ものすごい人気者なのに、実は寂しがり屋さんだもんね……。
「……ずっとここにいれば寂しくないですよ」
ガチャン!!
私はとっさに、資料室の頑丈な鉄扉を閉め、外側から南京錠をかけた。
扉の向こうからシュウ先輩の困惑した声が聞こえる。王子様を、この薄暗い資料室に私だけのものとして閉じ込める。ゴクリと唾を飲み込んだ、その時だった。
「──おい、何やってんだ、お前」
背後から、地響きのような低い声が降ってきた。
振り返ると、そこにはネクタイを緩め、野生動物のような鋭い眼光を放つ大きな人影──グレン先輩が立っていた。
「え、あ、グレン先輩……!?」
「どけ。……シュウ、今出す」
グレン先輩は、どこからか小ぶりの斧を持って来た。
バキィッ!!!
南京錠が悲鳴を上げて破壊される。
「助かったよ、グレン」
開いた扉から、冷や汗を拭いつつ爽やかに出てくるシュウ先輩。
「冗談で済むかよ。生徒会長を拉致るたぁ良い度胸じゃねぇか」
「ひえっ……!」
私はグレン先輩に子猫のように首根っこを掴まれ、そのまま校長室へと連行されていくのだった。
エンド16「救世主現る」
「好きです」
返事を待っていると、わずかな沈黙の後、シュウ先輩は困ったような、それでいて切なげな息を吐いた。
「……ごめん」
その声があまりにも優しくて、それだけで胸の奥がキュッと締め付けられる。
「気持ちは、嬉しいよ。後輩としてじゃなくて、一人の女の子として向けてくれた言葉なんだって、わかるから」
わかっていたことなのに、頭で理解しているはずなのに、実際に目の前で告げられると涙が出そうになるくらい痛い。
「僕は今、他に向き合わなきゃいけないことがある。だから誰とも付きあう気はないんだ」
どこか自分を戒めるような、そんな複雑な響きを含んだ声だった。
・「向き合わなきゃいけないこと?」
→https://tanpen.net/novel/9be96253-d7e9-46fc-9536-b2a8fe6b3b40/
・「いつまで元カノ引きずってんの」
→https://tanpen.net/novel/641ca948-ec2f-4fd1-aab1-f1f890ddc94c/
「向き合わなきゃいけないこと?」
先輩は、何故か遠い目をした。
「予算案の再修正に、原稿チェック、それから集会のタイムスケジュール調整、あとレトとグレンの喧嘩の仲裁、さらに……」
言いながら先輩が指さした机の上には、終わりの見えない資料の山。
「『向き合わなきゃいけないこと』っていうのは、まさにこの現実のことさ。甘酸っぱいイベントを発生させてる余裕、物理的に1ミリもないんだ……!」
「あの、たまには思いきり休んでもいいんじゃ……?」
私がそう心配すると、彼は疲労の色はどこへやら、むしろフッと目を細めて楽しげに笑う。
「ありがとう。でも、これこそ腕の見せ所って感じで、嫌いじゃないんだよね。むしろ燃えるというか」
まるで難解なパズルを解きほぐすかのように、先輩はワクワクとした手つきで仕事を再開した。
エンド17「モテる以前に三面六臂」
「演技の採点、100点満点中何点?」
「さっきの私の倒れっぷり、先輩目線でどう? 100点満点中だと何点くらい?」
すると先輩の表情からさっきまでの茶目っ気が引っ込み、人を引き込むような真剣な響きが宿る。
「120点満点だ。君、本当にいい演技だったよ」
「え?」
予想外の高得点にポカンとしていると、先輩は背もたれから体を起こした。
「実は君に頼みたいことがあってさ」
「は、はい……?」
「演劇部が絶望的に役者が足りなくて困っているそうでね。さっきの見事な芝居を見てた部長から『あの逸材を引っ張ってきてくれ』って泣きつかれたんだよ。……その才能を演劇部のために貸してくれないかい?」
この顔面と甘い声で「必ず主役を張れる」なんて口説かれ続けた私は、あれよあれよという間に入部届を提出していた。
エンド34「最強の代理勧誘」
バレない
「……で、昨日はシュウに看病されて無事に切り抜けたわけだ」
翌日の昼休み。
中庭のベンチで、私は持参したお弁当を広げようとしていた。しかし、隣にどっかりと座ったグレン先輩がフッと鼻を鳴らしたことで、その平穏は一瞬で打ち砕かれた。
「えっ? な、何の話ですかグレン先輩」
「あのタイミングで見事な倒れっぷりだったなぁ。力の抜け方が完璧すぎて思わず見入っちまったぞ」
……嘘でしょ!? あの完璧な演技、シュウ先輩には見破られなかったのに、離れたところで野次馬に混じって見ていた(あるいは後から噂を聞きつけた)この先輩にはお見透しだったらしい。
「あんた意外といい度胸してんのな」
グレン先輩は自分の弁当箱から大きめの唐揚げを一つ掴み、私の弁当に放り込んだ。
エンド44「グレン先輩と友達」
怖そうで実は優しい、グレン先輩
「……3年の、グレン先輩」
あ、先輩だ。自販機の前で、じっとお札の投入口を見つめている。
彼が駅前でお年寄りを助けていた時のことを思い出すと、なんだか親近感が湧いてしまう。
私の周りの同級生は「無愛想で話しかけにくい」って言うけれど……。
・お札を伸ばしてあげる
→https://tanpen.net/novel/54ef2f6c-a6cb-4c1b-a40a-14e572125357/
・飲み物をおねだり
→https://tanpen.net/novel/d8e13405-cca1-4795-b07c-7fd30a894884/
・まずは変装して尾行
→https://tanpen.net/novel/5afb329d-bfe5-4fca-8cc5-7359a719d697/
お札を伸ばしてあげる
何度入れても千円札が戻ってきてしまい、グレン先輩が「チッ、なんだよこれ……」と舌打ちしている。
「先輩、それちょっと貸して」
私は横からすっと手を伸ばし、その千円札を奪い取った。
「あ? お前、何して──」
「こういうのは、こうやって、ピンと伸ばしてから入れるんですよ」
私がドヤ顔でお札を滑り込ませると、ガコン、と小気味いい音が響く。
先輩はぽかんと固まった後、ふっと笑った。
「……へえ。お前、自販機のプロかよ。サンキュ」
・お礼に連絡先交換してもらう
→https://tanpen.net/novel/9da17275-7bb5-4313-85e8-56cb9fc4b093/
・一緒に帰って、とお願いする
→https://tanpen.net/novel/a86d6a70-5b55-4e69-a9bf-c41c787618bc/
・夜の学校で遭遇
→https://tanpen.net/novel/dcbba876-22fe-469c-a207-79cff71e0b68/
お礼に連絡先交換してもらう
先輩は驚く様子もなくポケットからスマホを取り出した。
無事に連絡先を交換できて、私の胸は期待ではち切れそうだった。
──だけど。
その日の夜に送った『今日はお疲れ様でした!』というメッセージに既読がついたのは、丸一日が経った日の夜。
その後も、私が送るメッセージに対して、先輩の返信はいつも3日後。一言「おう」とか「了解」とか、そっけないものばかり。
後から知ったことだけど、グレン先輩は本当にスマホを見ない人だったらしい。
先輩にどう話しかければいいか分からないまま、季節は変わり、私たちの距離はそれ以上縮まることはなかった……。
エンド18「紅玉は画面の向こう」
一緒に帰って、とお願いする
上目遣いで見つめると、先輩はフイッと目をそらした。
周囲の生徒が「下級生がグレン先輩に絡まれてる……」と遠巻きに見ている。
「……放課後、校門な。遅れたら置いてくからな」
「はい! 絶対遅れません!」
ガコン、と落ちてきた缶ジュース(私が好きなやつだ!)を私の手にポンと握らせると、先輩は今度こそ背を向けて歩いていった。
──やった、約束しちゃった……!
放課後が待ち遠しくてたまらない。
・遠回りしながら帰る
→https://tanpen.net/novel/18e1aa48-f1c0-4398-81b1-0c49ec301d65/
・いつもの道で安全に
→https://tanpen.net/novel/471de9df-7174-437e-82b3-4a27bab564a8/
いつもの道で安全に
慣れ親しんだ通学路。だけど、先輩が並んで歩いているだけで、まるで知らない景色みたいにドキドキする。
「実は私、先輩のこと──」
言いたかった秘密を、思い切って打ち明けようとしたその時。
「なぁグレン、何下級生引っかけてんだ」
突如、現れた美人──グレン先輩の義理のお姉さんが、先輩の首にヘッドロックをキメた。
「んぐ、テオ……っ!? ちげーよ、こいつは自販機のプロで」
「あぁ? ちょっとあんた、名前は? 」
お姉さんはグレン先輩をリリース。今度は私の肩に腕を回してきた。
「連絡先教えな。グレンの恥ずかしいアルバムとか送る」
「余計なことすんな」
──これがすべての始まりだった。
私がグレン先輩に駆け寄るたび、どこからかお姉さんが現れる。
「よ、後輩ちゃん、グレンの弁当に梅干し10個仕込んどいたぞ」
「おいテオ、学校に侵入するな。つか、お前も姉貴の連絡にいちいち返信するな」
私はお姉さんとの交流が楽しくなってしまい、恋愛というより、彼女と2人でわちゃわちゃ過ごすのが日常になった。
エンド19「テオという嵐」
遠回りしながら帰る
「ちょっと遠回りして行きません?」
私の提案に、先輩は人通りの少ない裏道の川沿いに付き合ってくれた。
二人きりの静かな時間。心臓の音が先輩に聞こえちゃいそうで緊張していると、ふいに路地からガラの悪い男たちが数人、行く手を塞ぐように現れた。
「氷解学園の生徒じゃん、ちょっと付き合えよ」
怖くて足がすくんだその時、背後から低い声がした。
「後ろに下がってろ」
振り返ると、カバンを肩に担いだグレン先輩が相手を睨みつけていた。
完全に「戦闘モード」の紅い眼光が男たちを射抜く。
ドカッ、バキッ、と短い衝撃音がいくつか響いたかと思うと、ガラの悪い男たちは全員地面に転がって呻いていた。
先輩は男たちを一瞥してため息をついた。
「わりぃ、おれ、なんかこーいうのに絡まれやすいんだよな」
そう言って、最初はちょっと困ったように自分の頭をガシガシと掻いた先輩だったけれど……。
俯いた私の顔を見て何かを思い直したように、ふっと真面目な表情になった。
「……あんま俺と一緒にいると危ないかもな」
・裾をギュッと掴む
→https://tanpen.net/novel/602d752c-303d-4f3f-8b4d-2a15abb554b0/
・「格闘技習います!」
→https://tanpen.net/novel/d0f555d9-9460-43bd-9c5f-cd505b011b64/
裾をギュッと掴む
離れたくなくて、無言で先輩の制服の裾をぎゅっと掴む。
「……離せよ」
私が首を横に振ると、先輩はため息をついてそっぽを向く。
「お前が良くても、おれが嫌だ。毎回守れるとは限らねぇだろ」
突き放すような言葉。だけど、その声には一切の迷いがなかった。
──それからというもの。
先輩は校内で私を見かけても、いつも通り挨拶を交わすだけで私の横を通り過ぎていってしまう。
届きそうで、もう絶対に届かない距離。
もう何があっても動かないのだと、その自然な態度がかえって冷徹に物語っていた。
エンド20「優しい拒絶」
「格闘技習います!」
シリアスな空気の中、私は拳を握りしめて宣言した。
「……は?」
グレン先輩は、さっきまでの真面目な顔が嘘のようにぽかんと口を開けた。
「なんでそうなる」
「先輩の隣にいても危なくないように、私が強くなれば解決!」
真面目に胸を張る私を見て、先輩は一瞬あっけにとられていたけれど……やがて、フッと力が抜けたように笑った。
「ハハッ、なんだそれ。……まぁ、護身用くらいは身につけてもアリだな。好きにしろよ」
・道場に通う
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・先輩の弟子になる
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道場に通う
「……まぁ、ケガすんなよ」
あの日、グレン先輩にそう言われた私は、本当にその言葉通り、大ケガをしないよう必死に道場で汗を流した。
──最初は、ただ先輩の隣に堂々と並びたかっただけ、のはずだった。
気づけば数ヶ月後、私は道場の誰よりも道着を泥だらけにし、サンドバッグを叩き割る『ガチ勢』へと変貌を遂げていた。
技が決まる快感、強くなる喜び。
頭の中は完全に格闘技一色。グレン先輩への恋心すら、日々の激しいスパーリングの彼方に忘れかけていた、そんなある日の放課後。
「ちょっと、いいかしら」
誰もいない渡り廊下。
呼び出された私の前に立っていたのは、グレン先輩ではなく。
あの有名な、チカゼ先輩だった。
相変わらず涼しげな顔をした先輩は、どこか真剣な、だけど少しだけ緊張した面持ちで私を見つめている。
「あ、あの、好きなの。……付き合ってほしい」
──ええええええええっ!?
廊下に響く私の心(と脳内シャウト)。
恋を忘れて拳を極めていた私に、まさかの斜め上からの超ストレートな告白。
私は……
・お断りして、グレン先輩のもとへ
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・チカゼ先輩と付き合う
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お断りして、グレン先輩のもとへ
私は走り出した。向かうは、グレン先輩がいるはずの3年生の教室。
息を切らせて教室に飛び込むと、夕暮れの教室で一人、カバンを片手に帰ろうとしていた先輩が私を見て目を見開いた。
「私、先輩のことが好き! 付き合ってくださいっ!」
私は彼をまっすぐに見つめて叫んだ。
教室に響き渡る、ド直球すぎる告白。
彼は「ふっ……」と吹き出し、それから楽しそうにクスクスと笑い始めた。
「ハハッ、お前、告白までそんな勢い任せなんか」
そう言ってカバンを肩に担ぎ直し、悪戯っぽい表情で言う。
「お前のそばにいたら、飽きなくて面白そうだな」
照れるでもなく、気取るでもなく、いつも通り自然体な彼の言葉。
だけど、その瞳は今までで一番、楽しそうに輝いていた。
エンド23「グレン先輩の恋人」
チカゼ先輩と付き合う
彼女の頬は夕日に染まるようにほんのりと赤くなっている。
普段は学年トップの成績で、誰に対してもドライで隙のないチカゼ先輩。
そんな彼女が少し震える声で私に想いを伝えてくれている。
数ヶ月間、ただひたすらにストイックに上を目指して突き進んできた私。
進む道は違えど、お互いに「上を目指して自分を追い込む」という性質は同じだった。
先輩はきっと、泥だらけになって孤独に突き進む私の中に、自分と同じ熱量を見つけてくれていたんだ──。
そう思ったら、なんだか胸の奥が熱くなって、グレン先輩への憧れとはまた違う、新しい感情が私の中で芽吹くのを感じた。
「……はい。私で良ければ、よろしくお願いします」
私がそう答えると、チカゼ先輩はハッとしたように目を見張る。
「……よかった。もし断られたら、明日の模擬試験、集中できないところだった」
彼女は、いつものクールな表情が嘘のように、愛らしく微笑んだ。
エンド22「チカゼ先輩の恋人」
先輩の弟子になる
弟子入りをお願いすると、先輩は渋々引き受けてくれた。
だけど、翌日からの放課後特訓は、想像していたものとは180度違っていた。
正直、先輩は、教えるのが下手くそだった。
感覚で体が勝手に動く天才ゆえに、初心者の私に分かる説明が難しいのだ。
「……いや、そこはもっとこう……あー、クソッ、なんで伝わんねぇんだ!」
次第に彼は教えることに疲れ、私も上手くできなくて申し訳なさと気まずさでいっぱいに。
「……わりぃ。おれ、やっぱ向いてねぇわ」
結局、気まずい空気だけが残って特訓は数日で終了。
なんとなく合わせる顔がなくなってしまい、私たちの関係はフェードアウトしてしまった……。
エンド21「天才の感覚、凡人の困惑」
飲み物をおねだり
先輩がボタンを押そうとした瞬間、その横に並んで、わざとらしく喉をトントンと叩いてみせる。
「あーあ、今日疲れたな~。喉カラカラだな~。……チラッ」
グレン先輩はボタンに指をかけたまま、ジト目で私を見てきた。
「……お前、おれに奢れと?」
「えへへ。優しい先輩なら、後輩にジュースの一本くらい……」
「はっ、調子いい奴」
文句を言いつつも、本当に財布を開いてくれる。
ガコン、と取り出し口に転がってきた缶ジュース。
先輩はそれを拾い上げると、私の手元にぽんと放り投げてきた。
「っ、と……! え、いいんですか?」
「ああ、やる」
カシャ、とプルタブを開ける心地いい音が響く。
ジュースを飲む先輩の横顔を見ながら、私は「やっぱり、怖い人じゃなかった」と小さく微笑んだ。
・ラブレターを渡す
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・自転車の二人乗り
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・赤点危機の先輩を救う
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・一緒にサボり
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赤点危機の先輩を救う
「次の中間、赤点取りそうなんだよ……」
「じゃあ、私が勉強教えましょうか?」
テスト結果が貼り出された日の放課後。
「キャ──! グレン君よ───!」
「運動できて、意外と優しくて、勉強までできるなんて……!」
「押すな、狭い、どけ」
人だかりの中心でグレン先輩がもみくちゃにされている。
私の指導のおかげで学年上位に入ってしまったがために、隠れファンたちが一斉にファンクラブ化したのだ。
先輩はまるで泥沼から救いを求めるかのように私に手を伸ばす。
「お前が付きっきりで教えてくれたから……」
一瞬で群衆の視線が私にロックオンされる。
「え? 付きっきり?」
「ひぇっ」
「待ちなさい後輩ちゃん!」
「嫌だぁぁぁ! 私は少女漫画みたいな甘い展開を期待してたのに───!!」
迫りくる女子生徒たちの足音を聞きながら、私は全力でダッシュした。
エンド24「ファンクラブ結成要因」
ラブレターを渡す
自販機が缶を吐き出したのと同じ勢いで、私はポケットからピンクの封筒を取り出し、グレン先輩の胸元に突きつけた。
差し出された封筒を、先輩は微動だにせず、ただ冷めた目でじっと見下ろした。表情は、先ほど自販機にお札を弾き返された時と1ミリも変わっていない。
「……あ?」
「ラブレターです! ずっと好きでした!」
私は顔から火が出そうなくらいだけれど、先輩は照れる気配すらない。
「お前のこと、名前と顔くらいしか知らねえし。そんな奴から突然言われても、返事のしようがねえだろ」
「えっ……」
先輩は封筒を受け取ることもせず、首を振る。
「悪いが、そういうのには付き合えねえよ。じゃあな」
それ以上言葉を交わすこともなく、先輩は缶ジュースを片手にスタスタと歩き去ってしまった。
・翌日から猛烈アピール
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・なんか腹立ってきた
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翌日から猛烈アピール
「おはようございます、グレン先輩! 今日の私の機嫌は最高潮です!」
「……はァ?」
昇降口の前で待ち伏せし、元気よく声をかける。
「名前と顔くらいしか知らないなら、とことん知ってもらおうと思いまして! 毎朝ここにいますから!」
「やめろ……」
文字通り、朝から晩までストーカー一歩手前のアピールを繰り返す日々。
周囲が「あの2年、またグレン先輩に突撃してるぞ……」「肝が据わりすぎだろ……」とヒソヒソ噂する中、当の先輩の反応はといえば──。
「……お前、本当にしつけえな。おれのこと何だと思ってんだ」
・「運命の相手」
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・「ただ、かっこいい先輩」
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「運命の相手」
「どこがどうなったらそんな結論に至るんだよ」
眉間を押さえる先輩に、私は胸を張る。
「自販機の前で千円札を弾き返された瞬間から、魂レベルで引き合っていると感じました」
どこか抜けている私の理屈に、先輩は深々とため息をつく。
トゲトゲした拒絶というよりは、扱いに困る後輩を見るような乾いた苦笑いだ。
「ただ機械が悪かっただけだろ。勝手に運命のパートナーにすんな」
あ、これ、脈ないな……。
エンド35「偶然の間違いだろ」
「ただ、かっこいい先輩」
先輩はわずかに動きを止めた。怪訝そうな顔をしている。
「どこがどうかっこいいんだよ?」
「無愛想なところとか、面倒くさがりつつも追及を振り払いきれない甘さとか、全部!」
「甘くねえ、お前が図々しいだけ」
「だって、簡単に落ちない壁の方が、攻略しがいがあるし!」
「ゲームのボスキャラみたいだな」
ほんの少し笑って聞いてくれるあたり、変化の兆しが見える。
・アピールを続行
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・一旦、引いてみる作戦
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アピールを続行
「ゲームのボスキャラより手強いと思いますよ。なにせ毎朝の昇降口突撃も、昼休みの差し入れ攻撃も、放課後の部室前待機も、ありとあらゆる猛攻を受けてなお、先輩のHPはびくとも減りませんからね!」
「おれのHPじゃなくて、お前の体力が心配だわ」
月曜の朝から金曜の放課後まで、雨の日も風の日も休むことなく繰り返してきた日常。
周囲からは「もはや名物カップル」「いや、片方が一方的に暴れてるだけだろ」と好き勝手に囃し立てられた。
・さらに、アピールを続行
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・一旦、引いてみる作戦
→https://tanpen.net/novel/a2975607-0f80-4e58-8c4f-12c55495e10c/
さらに、アピールを続行
そして、季節が巡り、ある日の放課後。
いつものように待ち構えていた私に、先輩はなぜか、この世の終わりのような、あるいは大勝負に挑むような、真剣な顔つきで近づいてきた。
「……なぁ」
「お疲れ様、グレン先輩! どうしたの、そんな顔して。遺言?」
差し出そうとしたパックジュースをスルーされ、私はきょとんとまばたきをする。先輩は決意を秘めた目で私を見据えた。
「好きだ」
「え、せんぱ」
「結婚してくれ」
「……はい?」
あまりに唐突かつ重すぎるワードに、私の脳みそが盛大にフリーズする。ジュースが指から滑り落ちそうになった。
「な、なに急に……私たちまだ中学生ですが!段階すっ飛ばしすぎでは? 」
「予約だよ予約。返事は?」
普段からは想像もつかない熱っぽい瞳で見つめられ、私はもう頷く以外の選択肢を奪われてしまうのだった。
エンド36「グレン先輩の婚約者」
一旦、引いてみる作戦
翌日もその次の日も、朝の挨拶だけは済ませ、昼の差し入れも放課後の待ち伏せも一切やめてみる。
あんなにまとわりついていた後輩が消えたら、先輩も気にする素振りくらいは見せるかもしれない──なんて、どこかで期待していた。
最初こそ「お、今日は静かだな」と解放された顔をしていた先輩は、1週間が過ぎる頃には完全に「元通りの平穏」を取り戻していた。
廊下ですれ違っても、私の姿など見えていないかのように通り過ぎていく。
彼との思い出は脳が作り出した幻だったのかと思えるほど、先輩は私に興味がなかった。
エンド37「最初からこうだった」
一緒にサボり
「……退屈だ」
授業に耐えかねて、私はそっと教室を抜け出した。
向かう先はもちろん、サボり常習犯であるグレン先輩がいる場所。学園の中庭だ。
案の定、先輩は石段に腰を下ろして空を見上げていた。
「ん? 授業どーした」
「抜け出してきた。先輩がここにいる気がして」
「見つかっても知らねぇぞ」
そう言いながらも、先輩は隣のスペースをトントンと手で叩いて、座るように促す。
並んで腰を下ろすと、木漏れ日が心地よく揺れていた。
「ま、退屈しのぎにはなるか」
呟く先輩の横顔は、いつになく穏やかだった。
・肩を借りて眠る
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・先輩に床ドン(?)
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肩を借りて眠る
目を覚ますと、あたりはいつの間にか薄暗くなっていた。
夕焼けが広がり、校舎の影を不気味に長く伸ばしている。すっかり逢魔が時だ。
「グレン先輩……いない。置いていかれた? ひどいなぁ、もう」
起き上がろうとした時、背筋が凍るような重い音が響いた。
石段のすぐ脇に佇む、歴代学園長の銅像。
その首がオイルの切れた機械のように、ギクシャクと大きな音を立てる。
「え?」
心臓が跳ね上がる。見間違いだと思いたい。でも、瞳の部分が発光し、ゆっくりと右腕を上げ始めた。
「ひっ……!」
腰を抜かしたまま後ろへずり下がる私。銅像は足音を立てながら、こちらへ歩み寄ってくる。
「あ、あの! 私、サボってただけで」
弁解する間もなく、ブロンズの手が私を掴もうと振り下ろされた。
エンド38「学園七不思議と遭遇」
なんか腹立ってきた
乙女が精神削って告白したのに、何よそのリアクションは!
名前と顔くらいしか知らない?これから嫌というほど刻み込んでやる!!
こうして闘いが幕を開けた。
廊下ですれ違えば足払いをかけ(華麗に避けられ)、購買でパンを買おうとすれば絶妙なタイミングで後ろから「それ最後の一つだから譲って」と横取りし(普通に譲ってくれた)、まさに犬猿の仲、いや、不毛な小競り合いが連日繰り広げられた。
「お前なぁ……よく飽きねぇな」
呆れ果てた様子のグレン先輩だったけれど、その顔にはどこか面白がるような色が混じっていた。
エンド40「グレン先輩と悪友」
まずは変装して尾行
私は学ランのボタンを上まで留めた。
同級生たちが「怖い」と怖がるグレン先輩の意外な一面を目撃して以来、私の好奇心は止まらない。でも、女子の制服のままではすぐ私だとバレてしまう(一応面識はある)。だからこその変装計画というわけだ。
手ずから作った特製ウィッグに、完璧なメイク。
鏡に映る姿は、どこからどう見ても「少し小柄な他校の男子」にしか見えない。
さて、放課後のグレン先輩が向かったのは……
・カフェ
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・路地裏
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カフェ
私は怪しまれないよう離れた席に座る。
すると、グレン先輩の向かいにチカゼ先輩が現れて腰掛けた。
どうやら文化祭の劇の配役を話しているらしい。
「私がロミオでシュウがジュリエットだったら面白いでしょ? 問題は衣装よね。男装も女装も、クオリティが低いと冷めるし」
「……クオリティか。丁度あそこにあいつがいるぞ」
グレン先輩が指さした方、つまり私が隠れていた席に、チカゼ先輩が振り返る。
「他校の男子じゃないの」
「いや、中身はうちの奴だ。おまえもよく知ってる」
とっくに、グレン先輩にはバレバレだった。
結果、私は文化祭の衣装とメイクを一手に引き受けるハメになり、寝る間もない修羅場に突入。恋愛どころか、文化祭終了まで作業に溺れる日々を送るのだった。楽しかった。
エンド39「おお、ロミオ、あなたはどうしてチカゼなの?」
路地裏
曲がり角からガラの悪い不良グループが現れた。
先輩は無表情のまま「邪魔だ」と吐き捨てるけど、不良たちは面白半分で道を塞ぐ。
それから、あっという間だった。
気がつけば不良たちは全員地面に転がっていた。
先輩の顔色は普段と一つも変わらない。
私は背筋が凍った。
同級生が言っていた「怖い」というのは、こういうことだったんだ。圧倒的な暴力性に、感情の読めなさ……絶対に関わってはいけない人間だ……!
「……で。いつまでそこに突っ立ってんだ」
平坦な声とともに先輩がこちらを向き、私はその場に平れ伏した。
「ひっ、見逃してくださいっ! 命だけは……!」
「は?」
こうして恋心は恐怖で吹き飛んだ。
私は「先輩に怯えながら勝手に付き従う子分」へとジョブチェンジすることになったのだった。
エンド41「あぁ? ジュースの献上? サンキュ」
先輩に床ドン(?)
先輩の逃げ道を塞ぐように、両手でドンと石段の背もたれをついた。
「それ、昨日のドラマでもやってたな。最近の流行りなのか?」
気まずそうに目を泳がせるかと思いきや、先輩は至って冷静に、じっと私の顔を見上げて首を傾げた。
「……へ? というか先輩、恋愛ドラマ見るの? 意外すぎる」
「姉貴に見させられんだよ。感想言わんと番組変わんねぇの」
気づけば私たちは並んで石段に座り直し、色々なドラマについて熱く語り合っていた。
特に盛り上がった題材は……
・すれ違い恋愛ドラマ
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・壮大なファンタジー
→https://tanpen.net/novel/4b2c09ab-c7ab-4536-bc7f-54ad75f13d1e/
すれ違い恋愛ドラマ
「……昨日って、もしかしてあの、お互い素直になれない両片思いのやつ?」
「そうそれ。姉貴が言うには『結局は実らないのが一番切なくて美味しい』んだとよ」
先輩は小さく苦笑し、遠くを見つめた。
それから月日が流れ。
卒業を迎え、私たちはそれぞれの道を歩き始めた。
たまに街ですれ違っても、お互い少し大人びた笑顔で「元気か?」と声を交わすだけ。
ドラマの主人公たちのように、もしあの時、素直に気持ちを伝えていたなら。
「……ねえ、先輩」
声に出せない言葉は、春の風に溶けて消えていった。
エンド42「初恋は実らない」
壮大なファンタジー
「あれ面白いよね、記憶の片隅にある約束を探す……」
「あぁ、前世の記憶を巡って生まれ変わり続けるやつな」
それから月日が流れ。
私たちの寿命が尽き、生まれ変わった世界。
「またグレン先輩じゃん……!」
前世の記憶を持ったままの私は、青年を見て盛大に頭を抱えた。何度も生まれ変わって顔を合わせているせいで、彼の変な癖やダメなところを熟知しすぎており、ときめきはとうの昔に枯れ果てている。
「ほら行くよ先輩。ぼーっとしてるとまた変な人に絡まれますよ」
「お、おう……って、なんでそんな俺に詳しいんだよ!」
エンド43「来世だろうと何世だろうと」