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目次
初めの出会い
それはちろぴのがまだ幼かった時のこと
隣に引っ越してきたチロル君
チロル君と友達になりたいピノちゃん
「行ってきまーす」ピノは元気よく幼稚園に行きました私はピノ 幼稚園の年少さんですっ
幼稚園に着くとお友達がワクワクしたこえでいいました「明日の明日は転入生が来るんだって」
「先生が言ってた」みんなは楽しみだねとかどんな子かなとか言ってるけど 私は友達いないから
別に関係ないことだった。そして、帰りの時間になった。バイバーイ。半分の子が帰りました
そして、私の家に着きました。「ただいまー」「おかえりー。・・・そうだいい知らせがあるよ。お隣にチロル君って子が引っ越すんだって。後であいさつをあしましょ」「・・・はーい」
窓からお隣を見てみた元気そうな男の子がいた。あれがチロル君だ。
夕方になり挨拶をしに行った「こんにちは」母がいった「こんにちは」わたしもとりあえず言った
すると母がいった。「しばらくママたちお話をするからチロル君と遊んでなさい」
チロル君は、思ってたよりも優しくて面白くて・・・
なんだかお友達になれうなきがした。「チロル君よろしくね!」「うんよろしくね!」二人は笑って
あそんだ。
次も見てね
雑談も作ってます
高校生になって
ちろぴのも成長して高校生になりました。
二人は幼馴染 ピノはチロルに恋心を持っており・・・
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ばっさー「主」 あんまり書けなくてごめんなさい。次は、ちろぴのの高校生活書きます
ひろと 楽しみにしてねー
ちろぴのの高校生活
学校についたちろぴの。 ピノとチロルbの学校生活をのぞきます。
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ばっさー「主」 「今回は力を入れました。」
ひろと 「ばっさー「主」がファンレター欲しいって言ってたよ」
ばっさー「主」 「確かに欲しいよつぎなにかいてほしいかききたいしね」
ひろと 「応援コメントもよろしくねー」
それじゃーバイバーイ
思い出日記
ばっさー 時間がなくてー短くてごめんなさい😥
ひろと 読んでねえーーーーーーーーーーーー
ばっさー ではどうぞお( ^ω^)・・・スタート
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ばっさー 短くてごめんなさいいい じゃあお風呂入ってくるねーええ
ひろと それじゃあー
ばっさー バイバーイ
第1話初めてのドキドキ!イタズラが運んだ予期せぬ一瞬
「よーし、みんな!こんちゃー!!」
ちろるの元気いっぱいの声が、防音室に響き渡る。向かい側では、ぴのがいつものようにふわふわの猫耳フードを少し傾けながら、マイクに向かって微笑んでいた。
「今日もぴのと一緒に、大人気ホラーマップに挑戦していくよー!」ちろるは少し高めのテンションでオープニングを盛り上げる。
「えへへ、ちろるは怖がりだから、私が守ってあげないとね!」 「ちょっと待ってぴのさん!俺、自称イケボのちろるですよ?イケボは怖がりません!……いや、まぁ、怖がるけどさ!」 「そっかぁ、じゃあ私がちろるのお守り役だね」
いつも通りの掛け合いだ。ちろるは犬、ぴのは猫のフードを被り、カメラの前では最高のゲーム実況コンビ、『ちろぴの』として、何でも言い合える最高の相棒だった。
今日の企画は、お互いにイタズラを仕掛け合うマインクラフトの隠し企画。ちろるはぴのが怖がる仕掛けを、ぴのはちろるが引っかかるトラップを、それぞれこっそり準備していた。
「さあ、ちろる!私の家には絶対に入れないよ!」ぴのが楽しそうに笑う。 「ふっふっふ、甘いねぴのさん。俺がイケボの力でぴのさんの家を突破して、最強のイタズラを仕掛けてやる!」
収録は順調に進み、ちろるはぴのの家を突破するため、創意工夫を凝らした裏技を披露。ぴのの仕掛けた溶岩トラップを華麗にかわし、ついにぴのが隠れている部屋の扉を壊すことに成功した。
「見つけたぞ、ぴのさん!今日のイタズラはこれだ!」
ちろるはそう叫びながら、用意していた水の入ったバケツをぴのの頭上からドバーッと浴びせた。
「あーっ!」
ぴのは思わず叫び、座っていた椅子から立ち上がった。水はゲーム内のキャラクターに影響はないが、その驚いた表情は、いつもの収録では見せない、素のぴのだった。
そして、その拍子に。
いつもは深く被っている、ぴのの猫耳フードが少しずり落ちた。露わになったのは、水に濡れて髪に貼り付いた、いつものおっとりした表情とは違う、少し大人びた横顔。
「な、なんだよちろる!ひどいよー!」と怒るぴのの瞳が、涙で少し潤んでいるように見えた。
「あ、ご、ごめん、ぴのさん!そんなに怒るなんて…」
ちろるは咄嗟に謝った。いつものイタズラなら、大笑いして「やり返してやるー!」となるはずなのに、今日のぴのはいつもと違って見えた。
――なんだろう、今の。
ちろるの心臓が、ゲームとは関係なく、やけに速く脈打ち始めた。
(今のぴのさん…なんか、めっちゃ可愛かったな……っていうか、なんか、ドキドキした?)
ちろるはマイクを握りしめたまま、頭の中が真っ白になった。
カメラの前では、俺たちは最高の「相棒」だ。 イタズラを仕掛け合い、笑い合う、最高の「ゲーム実況コンビ」だ。
だけど。
今、目の前にいる、フードのずれたぴのさんを見て感じたこの胸の熱は、「相棒」に対する感情なのか?
「ねえ、ちろる?次は私がお仕置きする番だよ?」
ぴのはいつもの調子に戻り、いたずらっぽく笑った。
「う、うん!いいよ!受けて立つ!」
ちろるは平静を装って返事をしたものの、その日の収録中、ずっと頭の片隅には、フードがずれたぴのの横顔が焼き付いて離れなかった。
(やばい、この気持ち、どうしよう。ぴのさんには絶対バレたくない…!)
ちろるは心の中で固く決意した。この新しい「ドキドキ」は、当面、自分だけの秘密の宝物にしておこうと。
そして、その日から。
ちろるとぴのの関係は、カメラの前では何も変わらないまま。ただ、ちろるの「相棒」を見つめる瞳に、少しだけ熱が加わったのだった。
(第1話・了)
次回予告:
次回のちろぴの付き合うまでの道のり第2話は、**『初めての「二人きり」!ゲーム実況を離れた秘密のミッション』**です。
お楽しみに!
第2話:初めての「二人きり」!ゲーム実況を離れた秘密のミッション
前回のイタズラの一件以来、ちろるはぴのへの視線が変わってしまったことを自覚していた。ぴのは相変わらずのんびりとしていて、ちろるの心の変化には気づいていない。それが、ちろるには少しだけ安堵でもあり、少しだけ寂しさでもあった。
ある日の夜、ちろるのスマートフォンに、ぴのからメッセージが届いた。
ぴの:ねぇ、ちろる。明日の午前中って空いてる?
(おっ、ぴのさんからメッセージ!いつもの収録の連絡かな?)
ちろるはすぐに返信を打とうとしたが、続けて送られてきたメッセージを見て、手が止まった。
ぴの:あのね、近所に新しくできたレトロなゲームセンターに、どうしても行きたいんだけど、私一人だと道に迷いそうなんだ。もし良かったら、付き添ってくれないかな?
それは、ゲーム実況の収録でも、企画の相談でもない、プライベートな誘いだった。しかも、「二人きり」で。
「うわぁぁぁぁ!!!」
ちろるは布団の中で転がりながら叫んだ。自称イケボはどこへ行ったのか、完全に挙動不審だ。
(やばい!二人きり!ゲームセンター!?俺、いつもと違う服着ていかないとだめかな?いや、普段通りでいいのか!?)
なんとか平静を装い、「もちろん!いいよ!」とだけ返信し、翌日を迎えた。
翌朝。ゲームセンターの前で待ち合わせたちろるは、ぴのの姿を見て、またしても胸のドキドキを抑えられなかった。
いつもの猫耳フードではなく、薄い水色のパーカーを着て、ポニーテールにしたぴのは、なんだかいつもより大人っぽくて、眩しかった。
「こんちゃ!ちろる、来てくれてありがとう!」ぴのが屈託のない笑顔を向ける。 「こ、こんちゃ!もちろんだよ!俺、自称イケボのちろるですよ?ぴのさんの頼みなら、どこへでも!」ちろるは必要以上に声を張り上げた。
ゲームセンターに入ると、ぴのは目を輝かせた。
「わあ、すごい!ちろる、見て!このパックマン、すごくレトロで可愛い!」 「ほんとだね、ぴのさん。俺、こういうのめっちゃ得意なんだ!ぴのさんが道に迷わないように、このゲームセンターでの道案内は俺に任せて!」
ちろるは得意なクレーンゲームや、アクションゲームで次々と腕前を披露した。ぴのはその度に、「すごーい!さすがちろる!」と目を丸くして褒めてくれる。
ふと、ぴのが、隅っこにある二人で遊べるレースゲームの筐体を見つけた。
「ねえ、ちろる。これ、一緒にやろう!」
ぴのが笑顔で誘い、二人は横並びに座った。ハンドルを握る手が、少しだけ触れそうになる。ちろるは、その一瞬で心臓が喉まで飛び出しそうになった。
ゲームがスタートすると、ぴのはハンドルを握りながら真剣な顔になった。
「ぜったい勝つ!負けないぞー!」 「おっと、ぴのさんが本気だ!じゃあ、俺も本気でいくよ!」
レースは白熱した。最終コーナー。ぴのの車がちろるの車にギリギリまで接近した、その時。
ぴのの集中した横顔を、ちろるは盗み見た。 (あぁ、まただ。カメラの前じゃない、素のぴのさんの顔だ。真剣で、ちょっと可愛くて…)
一瞬の気の緩み。ちろるの車はコースアウトし、ぴのがわずか1秒差でゴールテープを切った。
「やったー!私が勝った!ちろるに勝っちゃった!」ぴのは心から嬉しそうな顔で、ちろるの肩をポンッと叩いた。
「くっそー、ぴのさん、油断した!さすがだね!」ちろるは悔しがりながらも、ぴのさんの嬉しそうな顔を見て、なぜか幸せな気持ちになった。
「私、ちろるのおかげで、ここに来れて本当に楽しかったよ。ありがとう」ぴのがまっすぐにちろるを見つめて言った。
その一言で、ちろるの胸のドキドキは最高潮に達した。
(やばい、言いたい。この気持ちを…)
ちろるは、勇気を振り絞って口を開きかけた。
「あ、あのさ、ぴのさん…実は俺、」
しかし、その言葉は、ちろるの口から出ることはなかった。 ぴのが突然、ちろるの腕を引っ張ったのだ。
「あっ、やばい!ちろる、あれ見て!」
ぴのが指さした先には、ゲームセンターの景品コーナー。なんと、ちろるが以前から欲しがっていた、ゲームの限定グッズが飾られていた。
「うわ!あれ、前に『欲しい』って言ってたやつだ!まだ残ってたんだ!」ちろるの目は一瞬でグッズに釘付けになった。
(ああ、まただ。俺の気持ちは、**『相棒』**としての話題に、かき消されちゃうんだな)
ちろるは少しだけ落ち込んだが、すぐに笑顔を作り直した。
「よし!ぴのさん!あのグッズ、絶対ゲットするぞ!」
「うん!ちろるならできるよ!」
二人は、その日一番の笑顔でクレーンゲームに向かっていった。ちろるの秘めたる想いは、ゲームセンターの熱気と楽しさの中に、そっと隠されたまま。
(第2話・了)
次回予告:
次回の『ちろぴの恋の冒険ダイアリー』第3話は、**『恋のトラップ!?突然現れた「最強のライバル」』**です。
お楽しみに!
第3話:恋のトラップ!?突然現れた「最強のライバル」
ゲームセンターでのドキドキデート(ちろる視点)から数日後。ちろるは相変わらず、ぴのに対す
る新しい感情を持っていた。
「ぴのさん、今日の収録はこれで終わりで大丈夫?」 「うん、バッチリ!ちろる、お疲れ様!」
いつものように収録を終え、二人で機材を片付けていると、部屋のドアがノックされた。
「はーい」
扉を開けると、そこに立っていたのは、ちろるもぴのもよく知る、同じ事務所に所属する人気YouTuber、「カイト」だった。カイトはスラリとした長身で、爽やかな笑顔が特徴の、いわゆるイケメンだ。
「やあ、ちろるくん、ぴのちゃん!収録お疲れ様」カイトは爽やかに挨拶をした。 「あ、カイトさん!どうしたんですか?」ちろるが尋ねる。 「うん、実はね、今度企画する**『謎解き脱出ゲーム』**で、ぴのちゃんに協力をお願いしたいと思って」
カイトは、ぴのに向かって優しい笑顔を向けた。
「ぴのちゃんって、いつも冷静でパズルが得意だよね。ぜひ、僕のチームに入ってくれないかな?」 「えっ…私がですか?嬉しい!」ぴのは目を輝かせた。
その瞬間、ちろるの胸に、今まで感じたことのないズキッとした痛みが走った。
(な、なんだよ、カイトさん!?ぴのさんを誘うなんて聞いてないぞ!しかも、そんな爽やかな笑顔で!)
「いいなぁ、ぴのさん。カイトさんの企画、面白そうだもんね!」ちろるは精一杯の笑顔を作ったが、声が少し震えた。
「ちろるくんも良かったらどう?」カイトはちろるにも声をかけた。 「俺ですか?俺は、えーっと…次のマイクラ企画の準備があるから…」
ちろるは、つい「相棒」であるぴのの隣にいることが当たり前だと思っていたため、カイトの企画に二人が別々に参加するという考えに、強い抵抗を感じていた。
「そっか、残念。じゃあ、ぴのちゃん。今度、企画の打ち合わせがてら、新しくできたカフェにでも行かない?美味しいケーキがあるんだ」カイトはぴのにだけ焦点を合わせて話を進める。 「わあ、いいですね!行きたい!」ぴのは嬉しそうに答えた。
カイトとぴのが楽しそうに打ち合わせの日程を決めている間、ちろるはまるで自分だけが透明になったかのような気分だった。
(なんなんだよ、あのノリ!ケーキ?カフェ?いつも俺といる時はゲームの話ばっかりなのに!)
ちろるはぴのへの嫉妬と、今まで「相棒」として意識していなかったカイトを「ライバル」として認識してしまった焦りで、頭の中がぐちゃぐちゃになった。
カイトが部屋を出て行き、二人きりになると、ぴのはルンルンとした様子でちろるに話しかけた。
「ねぇ、ちろる!カイトさんの企画、面白そうだよね!頑張ってくる!」 「う、うん…頑張ってね」ちろるは俯きながら言った。
ぴのは、ちろるの異変に気づいた様子で、少し首を傾げた。
「ちろる?どうかした?元気ないよ」 「えっ!?元気だよ!俺、自称イケボのちろるですよ!?元気モリモリ!」ちろるは慌てて、いつもの調子を装った。
「そっかぁ。じゃあ、私のいない間、ちろるは新しい企画の準備、ちゃんと頑張るんだよ?帰ってきたら、美味しいお土産買ってきてあげるから!」
ぴのはちろるの頭を軽くポンポンと叩いて、スタジオを後にした。
ちろるは、自分の頭を叩いたぴのの手の温もりと、去り際に向けられた優しい笑顔に、ますます胸を締め付けられた。
(ダメだ!このままじゃ、ぴのさんがカイトさんに取られちゃうかもしれない!俺は、ぴのさんの**『相棒』**のままでいいのかな…?)
ちろるの心の中で、「相棒」の座と、「特別な存在」になりたいという願望が激しくぶつかり始めたのだった。
(第3話・了)
次回予告:
次回の『ちろぴの恋の冒険ダイアリー』第4話は、**『嫉妬爆発!?ちろるの「強引なアピール作戦」』**です。
お楽しみに!
第4話:嫉妬爆発!?ちろるの「強引なアピール作戦」
カイトとぴのが打ち合わせと称してカフェに行った日から、ちろるは落ち着かない日々を送っていた。動画編集をしていても、マインクラフトで整地をしていても、頭の中はカイトとぴのの楽しそうな姿ばかりがちらつく。
「くそっ、何がカフェだよ!ケーキだよ!俺だってぴのさんとケーキ食べたいし!」
ちろるは自分の部屋で、パソコンの画面に向かって唸っていた。
(このままじゃ、本当にぴのさんがカイトさんに惹かれちゃう!俺はただのゲームの相棒になっちゃう!)
焦燥感に駆られたちろるは、ある大胆な作戦を思いついた。それは、ぴのに「相棒」以上の存在であることを、強引に、しかし分かりやすくアピールすることだ。
その日、ぴのとの『Roblox』実況の収録日。ちろるはいつもより少しだけオシャレをして、ぴのがスタジオに入るのを待っていた。
「こんちゃ!ちろる、お疲れ様!」 「こ、こんちゃ!ぴのさんこそ、お疲れ!」
ぴのがいつものように椅子に座ろうとした、その時。
ちろるは、ぴのの手元にあった大きなマグカップに注目した。それは、カイトのチャンネルのオリジナルグッズだった。
「わ、ぴのさん!そのマグカップ…カイトさんの?」ちろるは思わず声が上ずった。 「あ、これ?うん、カイトさんが打ち合わせの時にくれたの。マグカップの底にメッセージが書いてあって可愛いの」
ぴのは嬉しそうにマグカップを両手で持ち上げた。
(メッセージ!?なんだよ、そういう小細工!イケメンのくせに!)
ちろるの中で、何かがプツンと切れた。
「ぴのさん!」 「な、なに、ちろる?」
ぴのが驚いてちろるの方を見た。ちろるは立ち上がり、ぴのの椅子にグッと近寄った。
「あのさ、ぴのさん」 「う、うん…?」
ちろるは、ぴのが持っていたカイトのマグカップをそっと自分の手で包み込むように掴んだ。
「あのね、マグカップなんてどうでもいいんだよ!」
ちろるの顔が、ぴのの顔に急接近する。至近距離で見つめられたぴのは、少し頬を赤らめ、目をパチクリさせた。
「俺は…ぴのさんに、俺が作った物をあげたい!」ちろるは一気に言葉を吐き出した。「そのマグカップより、もっともっと凄いもの!」
ぴのは、状況が飲み込めないまま、ただちろるを見つめていた。
「だ、だから!今日の収録が終わったら、ちょっと付き合ってくれないかな!?俺がぴのさんのために、世界に一つだけの最高のプレゼントを用意する!ぜ、絶対だからね!」
ちろるは、心臓の鼓動がうるさくて、何を言ったのか自分でもよく分からなかった。ただ、マグカップを握る手に力を込めた。
ぴのはしばらく黙っていたが、やがてフワリと笑った。
「えへへ、わかったよ、ちろる。じゃあ、収録終わったら、どこへ行くの?」 「い、いいの!?もちろんだよ!場所は…秘密!」
ちろるはマグカップから手を離すと、顔を真っ赤にして自分の椅子に戻った。
(や、やった…!勢いでなんとか誘えたぞ!でも、最高のプレゼントって、何あげよう!?)
ぴのはカイトのマグカップを大事そうに置いて、いつものように猫耳フードを直した。
「じゃあ、ちろる。張り切って収録始めるよ。こんちゃ!」
ぴのはいつもの挨拶をしたが、その笑顔の奥には、どこかちろるの態度への戸惑いと、少しの期待が混ざっているようにも見えた。ちろるは、自分の強引な行動が吉と出るか凶と出るか、全く予想がつかないまま、その日の収録に臨んだのだった。
(第4話・了)
次回予告:
次回の『ちろぴの恋の冒険ダイアリー』第5話は、**『緊急クラフト!プレゼントに込めた、相棒の「本気の想い」』**です。
お楽しみに!
第5話:緊急クラフト!プレゼントに込めた、相棒の「本気の想い」
「最高のプレゼント…最高のプレゼントってなんだよぉ!」
ちろるは収録後、自分の家に戻ると同時に、リビングで頭を抱えた。ぴのとの約束の時間は、もうすぐだ。
昨日、カイトのマグカップを見て嫉妬心から衝動的に「最高のプレゼントをあげる」と言ってしまったが、具体的に何を渡すのか全く考えていなかった。
(高価なものじゃないんだ。ぴのさんが本当に喜んでくれて、カイトさんのマグカップなんかよりずっと大事にしてもらえるもの…)
ちろるの視線が、部屋の隅に積まれたマインクラフトのグッズや、工作キットの山に向かった。
「そうだ!俺たちらしく、手作りの何かだ!」
ちろるは思いついた。ぴのは、ちろるが作ったドット絵のアイテムや、ユニークな工作をいつも褒めてくれる。
ちろるはすぐにパソコンに向かい、マインクラフトのテクスチャ制作ソフトを立ち上げた。彼が作り始めたのは、マインクラフトの世界に登場する「ハート」の形をした、オリジナルの**『特別なリンゴ』**のドット絵だった。
「これだ。リンゴは愛情とか感謝を表すんだって、前にぴのさんが言ってた。これを、現実のグッズにして渡そう!」
しかし、ただのドット絵ではつまらない。ちろるは、それをアクリルキーホルダーとして現実世界に持ち込むことにした。急いで発注しても間に合わない。
「よし、間に合わせる!この俺、ちろるの熱意と技術を見せてやる!」
ちろるは、アクリル板とカッター、そしてレジン液を取り出した。彼は、自作のドット絵を印刷したシートをアクリル板に貼り付け、手作業でハートの形に切り出し、丁寧にレジンでコーティングし始めた。レジンの硬化には時間がかかるが、ドライヤーで熱を加えてなんとかスピードを上げる。
汗だくになり、指には切り傷を作りながらも、ちろるは黙々と作業を続けた。彼の集中力は、普段のゲーム実況で難しいギミックを解く時以上だった。これは、「相棒」という関係から一歩踏み出したいという、ちろるの切実な願いを込めたミッションだった。
約束の時間が迫り、ようやくキーホルダーが完成した。
『ちろる特製・きらめきハートのリンゴキーホルダー』。
少し形はいびつで、レジンにはわずかに気泡が入っている。しかし、そこにはちろるの**「ぴのさんへの本気の想い」**が詰まっていた。
ちろるはそれを小さな巾着に入れ、ぴのと約束した、二人のいつもの待ち合わせ場所である公園へ急いだ。
公園のベンチには、ぴのがすでに座っていた。今日のぴのは、珍しくマインクラフトのクリーパーの顔がデザインされた、手作りの小さなポーチを抱えている。
「ちろる!遅いよー。あ、でも大丈夫。待ってる間に、新しい動画のサムネのアイデアが浮かんだから!」
ぴのは、ちろるの心配をよそに、いつもと変わらない笑顔を見せた。
「ご、ごめん、ぴのさん!急いで準備してたんだ!」
ちろるは息を切らしながら、ベンチの隣に座った。
「あのさ、ぴのさん。例の最高のプレゼントなんだけど…」
ちろるはゴクリと唾を飲み込み、巾着袋をぴのの前に差し出した。
「これ、俺からのプレゼント。カイトさんのマグカップなんかより、ずーっとぴのさんに似合って、ずーっとぴのさんを大切に思ってる俺が、ぴのさんだけのために作ったものだから!」
ちろるは、少し照れながらも、精一杯のイケボで伝えた。
ぴのは巾着を手に取り、ゆっくりと紐を解いた。中から現れた、少し不格好で、だけど温かみのあるハートのリンゴキーホルダーを見て、ぴのは一瞬、何も言わずに固まった。
ちろるは不安になった。「変だったかな…」
しかし、次の瞬間。
「わあ…!」
ぴのは、そのキーホルダーを両手で包み込むように持ち、満面の笑顔になった。
「ちろる!これ…もしかして、前に私がお話しした、『感謝のリンゴ』?」 「あ、うん。そうだよ…」 「すごい!すごく綺麗!しかも、ハートの形にしてくれてる!これ、ちろるが作ったの?」
ぴのは、キーホルダーのいびつな部分を優しく指でなぞった。
「うん!徹夜で頑張ったんだ!だから、その…カイトさんのマグカップより、こっちを大事にしてくれたら嬉しい、な…」
ちろるは、最後の言葉は蚊の鳴くような声になってしまった。
ぴのは、キーホルダーを抱きしめると、隣のちろるにグッと顔を寄せた。
「もちろんだよ!世界に一つしかない、ちろるからのプレゼントだもん。これ、私の宝物にするね!ありがとう!」
その笑顔は、ちろるがこれまで見てきた、どんな動画のサムネイルよりも輝いていた。
(よかった…!作戦成功だ…!)
ちろるは、安堵と喜びで、体がフワフワと浮くような気持ちになった。しかし、彼らがまだ気づいていない、この小さな「リンゴ」をめぐる、新たな波乱が、静かに近づいていたのだった
第6話:お返しは「手作りのおにぎり」?ライバルが仕掛ける優しい罠
ちろるが心を込めて作ったハートのリンゴキーホルダーは、ぴのの宝物になった。ぴのはすぐにポーチにそれをつけ、動画の収録にも持ってくるようになった。ちろるはそれを見るたびに、胸の中でガッツポーズをしていた。
(よし!これで俺の勝利だ!カイトさんのマグカップなんて、もう目じゃない!)
自信を取り戻し始めたちろるだったが、その優越感は長くは続かなかった。
翌日の午後、次のコラボ企画の打ち合わせのため、ぴのが少し遅れてスタジオに到着した。
「こんちゃ!ごめんね、ちろる!遅くなっちゃった!」ぴのはいつもの猫耳フードを少し乱しながら、手に持った紙袋をデスクに置いた。
「大丈夫だよ、ぴのさん!俺は自称イケボのちろるだから、優雅に待っていたよ!」
ちろるがそう言うと、ぴのはデスクの上の紙袋を指差した。
「あのね、ちろる。この間、カイトさんの企画の打ち合わせに行った時に、このお土産をもらったんだ。ちろるにも、おすそ分け!」
紙袋の中には、有名な高級和菓子店の包みと、小さなタッパーが入っていた。
「わ、わがし…!さすがカイトさん、オシャレですね!で、このタッパーは?」ちろるは和菓子には目を向けず、タッパーに注目した。
「えへへ。これはね、カイトさんが私にくれた、おにぎりだよ」
「……おにぎり?」ちろるは目を丸くした。
ぴのはタッパーの蓋を開け、丁寧にラップで包まれた、美味しそうなツナマヨおにぎりをちろるに見せた。
「カイトさん、私がお腹空いてるって言ったら、**『自分で作ったんだけど、良かったら食べて』**って、これを持たせてくれたの。優しくて、びっくりしちゃった」
「…………」ちろるは言葉を失った。
(な、なんだよ、おにぎりって!高級なスイーツとかじゃなくて、手作りのおにぎり!?そんな家庭的なアピールずるいぞ!俺といる時はいつもコンビニのパンなのに!)
ちろるは、カイトの「さりげない優しさ」と「家庭的な魅力」という、自分のアピールとは全く異なる方向からの攻撃に、再び嫉妬心が燃え上がった。
「そ、そうなんだ…へえ…カイトさんって、料理もできるんだね…」ちろるは、タッパーの中のおにぎりを睨みつけた。
ぴのは、ちろるの様子がおかしいことに気づかず、ニコニコと続けた。
「うん!カイトさん、料理が得意みたいで、おにぎりも具材からこだわって作ったんだって。ちろるにも、ひとつどうぞ!」
ぴのは差し出されたおにぎりを、ちろるは反射的に受け取ってしまった。
「あ、ありがとう…いただきます…」
ちろるが一口食べると、そのおにぎりは具材の味付けが絶妙で、米の握り加減もちょうど良く、完璧に美味しかった。
(う、美味い…!くそっ、なんでこんなにおにぎりが美味いんだよ!)
ちろるは、自分の嫉妬心と、目の前の美味しすぎるおにぎりとの間で、激しく葛藤した。
「美味しいでしょ?ね、ちろる」 「……うん。美味しいよ、悔しいけど!」
ぴのは「ふふふ」と笑い、嬉しそうにおにぎりを頬張った。
ちろるは、おにぎりを食べ終わり、ぴのが持ってきた和菓子の箱を開けて、中身を確認した。
「ぴのさん、この和菓子、めっちゃ高級そうじゃん!これ、誰が食べるの?」 「それはね、ちろると私と、いつものスタッフさんたちへのお土産だよ」
ぴのは、和菓子を均等に分けるために、人数を数え始めた。
(…そっか。カイトさんは、スタッフのことも考えて、ちゃんと手土産を買ってるんだ)
ちろるは、自分がぴのにプレゼントを渡す時、ぴのさんのことしか考えていなかったことを痛感した。カイトは、周りの人への気配りも完璧な、「大人で完璧なライバル」だと、思い知らされた瞬間だった。
「ぴのさん、ちょっと聞いてくれる?」ちろるは真剣な表情で、ぴのに話しかけた。
「なーに?ちろる」
「俺、ぴのさんよりもっと美味しくて、ぴのさんが本当に元気になれるものを作ってあげるからね!いつか、楽しみにしてて!」
ちろるは、次なる対抗策を心に誓った。それは、**「手作りの料理対決」**という、新たな戦いの始まりだった。
(第6話・了)
次回予告:
次回の『ちろぴの恋の冒険ダイアリー』第7話は、**『初めてのクッキング!ちろる流「愛情マシマシ」レシピ』**です。
お楽しみに!
第7話:初めてのクッキン
カイトさんの完璧に美味しい手作りおにぎりを食べたあの日から、ちろるの頭の中は「料理」でいっぱいになっていた。
(ちくしょう!俺はゲーム実況者だぞ!なんで料理なんて気にしなきゃいけないんだ!でも、ぴのさんの笑顔を見たら…負けてられない!)
ちろるは即座に動画投稿サイトで「初心者でも簡単!絶対失敗しない料理」を検索し、ぴのさんが大好きなオムライスを作ることに決めた。
オムライスなら、ご飯を炒める技術と、卵をきれいに包む技術、そして何より愛情が試されるはずだ。
「よし!ぴのさん!見ててくれ!俺の愛情マシマシ、特製オムライスで、カイトさんのおにぎりなんて吹き飛ばしてやる!」
決意を固めたちろるは、次の収録日を狙って、事前にぴのを自宅に招待した。
「ぴのさん、今日の収録は俺の家でやろう!ちょっと新しい防音設備を試したくてさ!」 「えへへ、わかったよ!ちろるのお家、久しぶりだね!」
収録が無事に終わり、ぴのがいつものようにゲーム談義を始めようとした時、ちろるは意を決して言った。
「ぴのさん、ちょっと待った!今日、俺が夕食を作ってあげる!」 「えっ!?ちろるが!?どうしたの急に?」ぴのは驚いて目を丸くした。 「どうしたのじゃないよ!この間のおにぎりのお返しっていうか…俺の日頃の感謝の気持ちだよ!」
ちろるは勢いよくキッチンに向かった。そして、エプロンを着けてフライパンを握り、真剣な顔つきになった。
ぴのはソファから立ち上がり、おそるおそるキッチンの入り口から様子を覗いた。ちろるはYouTubeの調理動画を見ながら、ぎこちない手つきで玉ねぎを刻んでいる。
「ふふふ…ちろる、大丈夫?玉ねぎの切り方、ちょっと危なっかしいよ」ぴのが笑いを堪えながら言った。
「だ、大丈夫!俺は自称イケボのちろるですよ?イケボは料理もできるんです!ちょっと火力が強いな…」
ちろるは、オムライスの中身となるチキンライスを炒め始めたが、火加減が強すぎて、米が鍋底に張り付き始めた。
「あっ!焦げてるよ、ちろる!」 「うわぁぁぁぁ!どうしよう!」
フライパンをぶんぶん振るちろるを見て、ぴのは思わずキッチンに入っていった。
「もー、ちろるったら!火を弱めて。私が手伝うよ」
ぴのはちろるの隣に並び、焦げ付いたご飯を丁寧に剥がして、味見をした。
「うん、まだ大丈夫。ケチャップを少し足して、あと塩コショウをこれくらい…」
ぴのは手際よくチキンライスを仕上げた。横に立つぴのから、ふわりとシャンプーの優しい香りが漂い、ちろるの心臓はまたしても早鐘を打った。
(やばい、ぴのさん、慣れてる。そして、近すぎる!)
そして、いよいよ卵の工程。
「よし!卵は俺がやる!」ちろるは再び気合を入れた。
卵を割って溶き、フライパンに流し込むちろる。しかし、熱しすぎたフライパンの上で、卵はあっという間に固まってしまい、穴だらけのボロボロのスクランブルエッグ状態になってしまった。
「うわぁぁぁ!失敗だぁ!」ちろるは頭を抱えた。
ぴのは、優しくちろるの肩に手を置いた。
「大丈夫だよ、ちろる。こんな時もあるよ。見てて、次は私がやってみるね」
ぴのは冷静にもう一度卵を溶き、適温になったフライパンに流し込み、ヘラを使って絶妙なスピードで卵を動かした。出来上がったのは、チキンライスを優しく包み込む、ふっくらとした美しいオムレツだった。
「わあ…!ぴのさん、すごい!魔法みたい!」ちろるは純粋に感嘆の声を上げた。
ぴのは、オムライスをお皿に盛り付け、ちろるに差し出した。
「はい、ちろる。失敗しちゃったけど、二人で一緒に作ったから、これも特別なオムライスだよ」
ちろるはオムライスを受け取り、その完璧な形と、ぴのの優しい笑顔に、胸がいっぱいになった。
「ありがとう、ぴのさん。俺、カイトさんに対抗しようと思ったけど、やっぱぴのさんには勝てないや…」ちろるは少ししょんぼりして言った。
「え?カイトさん?どういうこと?」
ぴのは首を傾げたが、ちろるは慌てて誤魔化した。
「な、なんでもないよ!とにかく、ぴのさんには感謝だよ!俺の相棒はやっぱりぴのさんだ!」
ちろるは、まだ「相棒」という言葉の壁を越えられずにいた。彼はぴのにもらったオムライスを一口食べた。
「う、美味い!ぴのさんのオムライス、世界一だ!」
その味は、ちろるの失敗したチキンライスと、ぴのの優しさが詰まった卵が合わさって、どこか懐かしい、「ちろぴの」の味になっていた。
その夜、ちろるは思った。カイトさんのように完璧じゃなくてもいい。俺は俺なりのやり方で、ぴのさんへの愛情を伝えよう、と。
(第7話・了)
次回予告:
次回の『ちろぴの恋の冒険ダイアリー』第8話は、**『距離を詰めるチャンス到来!?ぴのさんの「うっかりミス」』**です。
お楽しみに!
第8話:距離を詰めるチャンス到来!?ぴのさんの「うっかりミス」
オムライスの一件以来、ちろるは少しだけ気持ちを切り替えていた。カイトさんのように完璧なイケメンである必要はない。俺は俺らしく、ぴのさんの隣で笑っていればいい。そう、「相棒」として。
しかし、ちろるの心の奥底にある「特別な存在になりたい」という願望は、決して消えてはいなかった。
ある土曜日の午後。ちろるは次のマインクラフトの大型企画の準備のため、自宅で設計図を広げていた。そこへ、ぴのからメッセージが届いた。
ぴの:ちろる!大変!助けてー!😭
珍しく焦った様子のぴののメッセージに、ちろるはすぐに電話をかけた。
「ぴのさん!?どうしたの!?なんかあった!?」
電話口から聞こえてきたのは、少し泣きそうなぴのの声だった。
「あのね…私、明日の朝までに納品しないといけない動画の原稿を、うっかりカフェに忘れてきちゃったみたい…」 「ええっ!?原稿!?」
それは、二人が何日もかけて構成を練った、大切な原稿だった。ぴのさんはいつもマイペースだが、仕事に関してはとても真面目だ。
「しかも、そのカフェ、今からだと閉店ギリギリの時間で…一人で行くのが怖くて…」
ぴのが忘れてきたカフェは、二人の家から少し離れた、夜は人通りが少なくなる場所にあった。
「わかった!ぴのさん、落ち着いて!俺が行くよ!どのカフェ?」ちろるは即座に立ち上がった。
「本当に?ありがとう、ちろる!場所はね、駅前の…」
ぴのから場所を聞き、ちろるはパーカーを羽織ってすぐに家を飛び出した。
「待ってて、ぴのさん!俺、今から行くから!」
ちろるは自転車を飛ばし、閉店5分前に何とかカフェに到着した。カフェの店員に事情を話し、ぴのが座っていた席を確認してもらうと、幸運にも原稿は無事に発見された。
ちろるは原稿を手に、ぴのが待つ自宅へ急いで戻った。
ぴのの家の前。ちろるが到着すると、ぴのはドアの前でちろるを待っていた。夜風で少し寒そうなぴのは、ちろるの姿を見ると、駆け寄ってきた。
「ちろる!本当にありがとう!助かったよー!」
ぴのは、ちろるが差し出した原稿を両手で受け取り、安堵のため息をついた。
「よかった、ぴのさん。見つかって。もう、うっかりさんなんだから!」ちろるは少し呆れながらも、ぴのが無事でホッとした。
ぴのは、ちろるの顔をじっと見つめた。
「ちろる、汗だくだよ…まさか、自転車で来てくれたの?」 「うん。ぴのさんが困ってるのに、のんびりしてられないでしょ?俺は、ぴのさんのピンチを救うヒーローだからね!」ちろるは少し得意げに胸を張った。
ぴのは、再び心からの笑顔を見せた。
「ふふ、ありがとう、私のヒーローさん。あのね、これ、私からのお礼」
ぴのはそう言うと、持っていた小さな紙袋から、温かい缶ココアを取り出し、ちろるの手に握らせた。
「自転車、頑張ったね。これを飲んで、少しでも温まって」
ちろるの手に触れたぴのの手は、冷たかった。しかし、ぴのから受け取った缶ココアは、ぴのの優しさが詰まっているように感じられた。
「ぴのさん…ありがとう」
ちろるはココアを受け取ると、ふと、ぴのが着ている薄手のパーカーに気づいた。
「ぴのさん、そんな薄着で大丈夫?風邪引くよ」 「うーん、ちょっと寒くなっちゃった…でも、ちろるを待ってなきゃと思って」
ちろるは迷った。そして、意を決して、自分が羽織っていたパーカーを脱いだ。
「ほら、これ着なよ。俺は自転車で走ってきたから、まだ体があったかいから大丈夫」
ちろるは、少し照れながら、自分のパーカーをぴのに羽織らせた。
ぴのは、突然のことに戸惑いながらも、ちろるのパーカーに包まれた。ちろるの体温と、かすかな匂いが、ぴのを包み込む。
「ちろるの匂いがする…あったかい…ありがとう」
ぴのは、まるで子猫のように、その場でちろるのパーカーに顔をうずめた。
ちろるは、目の前の光景と、ぴのの無邪気な仕草に、心臓が爆発しそうになった。
(やばい…!ぴのさんが俺のパーカーを…!こんなの、相棒の距離じゃないだろ…!)
「じ、じゃあね、ぴのさん!原稿、ちゃんとチェックするんだよ!また明日!」
ちろるは、これ以上そばにいたら変なことを口走りそうになり、勢いよくその場を立ち去った。
ぴのは、ちろるの背中に向かって、優しく手を振った。
「また明日、ちろる!」
ぴのは、ちろるの温かいパーカーを抱きしめながら、去っていくちろるの背中を、いつもより少し長く見つめていた。その瞳には、友情とは違う、微かな戸惑いが宿り始めていた。
(第8話・了)
次回予告:
次回の『ちろぴの恋の冒険ダイアリー』第9話は、**『返却されたパーカーと、ぴのさんが残した「秘密の香り」』**です。
お楽しみに!
第9話:返却されたパーカーと、ぴのさんが残した「秘密の香り」
翌日。ちろるは少し寝不足気味だった。昨夜、ぴのさんが自分のパーカーを着てくれたこと、そして去り際に優しく手を振ってくれた光景が、何度も頭の中でリピート再生されていたからだ。
(ぴのさん、あのパーカー、着心地よかったかな?風邪ひいてないといいけど…)
収録スタジオで、ちろるがソワソワしながら待っていると、ぴのがいつものように元気に「こんちゃ!」と入ってきた。ぴのは、ちろるが貸したパーカーではなく、いつもの猫耳フードのパーカーを着ていた。
「ちろる!昨日は本当にありがとう!おかげで原稿も無事に間に合ったよ!」 「よかった!ぴのさんがピンチの時は、俺が助けるのは当然だよ!」ちろるは胸を張ったが、少しだけ残念に思った。(俺のパーカー、もう着てないのか…)
ぴのは、持っていた小さな紙袋をちろるに差し出した。
「はい、これ、ちろるのパーカー。ありがとうね。それと、これはお礼のお礼!」
紙袋には、綺麗に畳まれたちろるのパーカーと、可愛らしい猫の形をしたクッキーが入っていた。
「うわ!クッキーだ!ぴのさんが作ったの?」 「ふふ、さすがにこれは買ったものだよ。でも、すごく美味しいお店のクッキーだから!昨日のお礼」
ちろるはクッキーよりも、パーカーに意識が向いていた。彼はすぐに紙袋からパーカーを取り出した。
「ぴのさん、ありがとう。綺麗に畳んでくれてるね」
パーカーを手に取った瞬間、ちろるは思わずフリーズした。
パーカー全体から、微かにぴのさんが普段使っているシャンプーの、甘くて優しい香りがしたのだ。
(う、嘘だろ…!?ぴのさんの…匂い!?)
ちろるの顔は、一瞬で耳まで真っ赤になった。まるでぴのさんの温もりと存在そのものが、パーカーに閉じ込められて戻ってきたような感覚だった。
「ちろる?どうしたの?急に顔が赤いよ?熱でもある?」ぴのが心配そうに顔を覗き込んだ。
「だ、大丈夫だよ!俺は自称イケボのちろるですよ!これは、ぴのさんのクッキーが美味しそうで熱が出ただけ!」ちろるは必死に誤魔化した。
「えへへ、そんなに喜んでもらえると嬉しいな」ぴのは不思議そうに笑いながら、自分の席についた。
ちろるは、ぴのに気づかれないように、パーカーをそっと抱きしめた。この秘密の香りは、昨夜、ぴのが自分のパーカーに顔をうずめてくれた証拠のように思えた。
(だめだ。こんなこと、カイトさんに絶対バレたらまずいし、ぴのさんにも絶対に知られちゃいけない…)
しかし、ぴのさんのシャンプーの香りという「証拠」を得たちろるは、再び勇気が湧いてきた。
「ねぇ、ぴのさん!」ちろるはパーカーをデスクの隅に隠し、声を張った。
「次のマイクラの企画だけどさ、俺、ぴのさんのために、特別なアイテムを隠しておいたんだ!見つけられるかな?」
「えー!またちろるのイタズラ?」
「イタズラじゃないよ!俺の愛情の証、だからね!もし見つけたら、何かぴのさんの願い事、ひとつ叶えるよ!」
ちろるは、ぴのが自分に心を開き、特別な願い事をしてくれることを願って、新たなゲーム企画の中に自分の想いを密かに仕込んだ。
ぴのは、ちろるの熱意に押され、目を輝かせた。
「えへへ!わかった!じゃあ、私がそのアイテムを見つけるね!ちろる、願い事、楽しみに待ってて!」
二人の「相棒」としてのゲーム実況は始まった。しかし、ちろるの胸の中では、返却されたパーカーの香りと、ぴのさんの願い事への期待が混ざり合い、「相棒」という名の線引きを徐々に溶かし始めていたのだった。
(第9話・了)
次回予告:
次回の『ちろぴの恋の冒険ダイアリー』第10話は、**『「特別なアイテム」をめぐる攻防!カイトの意外な助言』**です。
お楽しみに!
Gemini は不正確な情報を表示することがあるため、生成された回答を再確認するようにしてください。
第10話:「特別なアイテム」をめぐる攻防!カイトの意外な助言
ちろるが企画したマイクラのマップは、複雑なアスレチックと巧妙な謎解きが組み合わされた、ちろる特製の「愛情の証」探しの旅だった。ぴのは、いつものんびりとした調子ながらも、その謎解きに夢中になっていた。
「うーん、ちろる!この暗号、全然わからないよー!『きらめく心臓が示す場所』って、何のこと?」
ぴのは、ゲーム内のチャットでちろるにSOSを送る。
「ヒントは出さないよ!自力で頑張るんだ!ぴのさんが頑張って見つけたら、ご褒美があるんだからね!」ちろるは、内心ドキドキしながら答えた。ご褒美とは、ぴのさんの願い事を叶えることだ。
ぴのが謎解きに苦戦している中、ちろるは少し休憩しようと、スタジオの休憩スペースへ向かった。すると、そこで偶然、カイトさんと出くわした。
「やあ、ちろるくん。お疲れ様」カイトさんは爽やかに挨拶をした。 「あ、カイトさん。お疲れ様です」ちろるは、反射的にぴのとの関係を意識し、少し緊張した。
カイトさんは、テーブルに置かれたちろるのタブレットを見て、目を細めた。そこには、ぴのが今挑戦している謎解きのヒント画面が表示されていた。
「これ、ちろるくんが作った謎解きだね。すごく凝ってる。ぴのちゃん、夢中になってるんじゃない?」 「まあ、そうですね。ぴのさん、ああいう謎解きが好きなので」ちろるは少し得意げに言った。
カイトさんはフッと笑った。
「ちろるくんは、ぴのちゃんが何をしたら喜ぶか、本当によくわかってるね。でも、難しくしすぎると、かえって疲れてしまうよ」
その言葉に、ちろるはドキッとした。
「え、どういうことですか?」
「ぴのちゃんは、もちろん謎解きも好きだけど、ちろるくんが自分だけを見てくれているという、その気持ちが一番嬉しいんだと思うよ」カイトさんは、真っ直ぐにちろるの目を見た。
「謎解きの中に、もっと個人的で、わかりやすいサインを仕込んでみたらどうかな?例えば、ぴのちゃんとの思い出の場所とか」
カイトさんの助言は、ちろるの胸に深く刺さった。ライバルだとばかり思っていたが、彼の言葉は的確で、ぴののことを深く理解していることがうかがえた。
(カイトさん、ぴのさんのことをこんなにわかってるんだ…やっぱすごいライバルだ…でも、確かにそうだ。俺は難しすぎる謎解きで、肝心の気持ちを伝えるのを忘れていた!)
ちろるはすぐにタブレットを手に取ると、カイトさんにお礼を言った。
「カイトさん、ありがとうございます!なんか、すごく大事なことに気づけました!」
「ふふ、頑張ってね。応援してるよ」カイトさんは優しく微笑んだ。その笑顔は、どこか諦めのような寂しさを含んでいるようにも見えたが、ちろるには気づく余裕はなかった。
ちろるは急いでゲームに戻り、ぴののチャットにこっそりヒントを追加した。
ちろる:ヒントを追加!『あの夜、俺がぴのさんのために走った、あの場所のブロックを見つめてみて』
これは、ぴのが原稿を忘れた夜、ちろるが自転車で駆けつけた「駅前のカフェ」をゲーム内で再現した場所のことだった。
ぴのはその新しいヒントを見て、すぐに気づいたようだ。
ぴの:あ!わかった!ちろるがヒーローになってくれた場所だね!
ぴのは急いでその場所へ向かい、ちろるが仕込んだ**「特別なアイテム」**を見つけ出した。
画面上に表示されたアイテムは、ちろるが以前作った『ハートのリンゴ』のアクリルキーホルダーを再現した、ゲーム内の**『光る特別なリンゴ』**だった。
ぴの:ちろる!見つけたよ!これ、あの時くれたキーホルダーだ!
ちろる:やったね、ぴのさん!約束通り、願い事を一つ叶えるよ!何がしたい?何が欲しい?
ちろるは緊張しながら、ぴのからのメッセージを待った。
ぴのから返ってきた願い事は、ちろるの予想とは全く違う、とてもシンプルで、そして温かいものだった。
ぴの:私の願い事はね…**『明日も、ちろると一緒にゲーム実況がしたい!』**だよ!
そのメッセージを見て、ちろるは肩の力が抜けると同時に、胸が締め付けられるような喜びを感じた。豪華なプレゼントでも、手の込んだデートの誘いでもない。ただ、**「ちろると一緒にいること」**が、ぴのの願い事だったのだ。
「明日も、か…」ちろるは少し照れながら、チャットにメッセージを打ち込んだ。
ちろる:もちろんだよ、ぴのさん!明後日も、その次も!ずーっと、一緒にゲーム実況しようね!
ちろるは、カイトさんの助言と、ぴのさんの純粋な願い事のおかげで、一歩前進できた気がした。しかし、彼の心の中にある「特別な存在になりたい」という想いは、まだ「相棒」という言葉の裏に隠されたままだった。
(第10話・了)
次回予告:
次回の『ちろぴの恋の冒険ダイアリー』第11話は、**『距離を縮める夏!お互いの家での「たこ焼きパーティー」』**です。
お楽しみに!
第11話:距離を縮める夏!お互いの家での「たこ焼きパーティー」
ぴのさんの願い事のおかげで、ちろるは少しだけ肩の荷が下りた気がしていた。当面、ぴのは自分との「相棒」関係を望んでいる。焦らず、この関係を大切に育もうと決意した。
季節は夏へと移り変わり、外での活動が億劫になってきた頃。ちろるはぴのに、ある提案をした。
「ねぇ、ぴのさん。暑いし、次の企画会議、俺の家でたこ焼きパーティーしながらやらない?」
「たこ焼き!いいの?ちろるのお家で?」ぴのは目を輝かせた。 「もちろん!この前のオムライスで、俺も料理がしたい欲が湧いてきたんだ!今度こそ、俺がメインで作るぞ!」
ぴのは快諾し、翌週、ちろるの家で「たこ焼き企画会議」が実現することになった。
当日、ちろるは事前にたこ焼き器を準備し、具材も完璧に揃えていた。しかし、いざ焼き始めると、彼の不器用さがまたもや顔を出した。
「うわっ!生地が穴から溢れちゃう!」 「ちろる、入れすぎだよ!あと、この竹串で、もっと手早く回さないと焦げちゃう!」
ぴのは慣れた手つきで、器用に竹串を操り、丸くて美味しそうな焼き上がりを目指した。横に並んでたこ焼きを焼く、二人の距離は自然と近くなる。
「ぴのさん、上手すぎない?もしかして、たこ焼きの達人?」ちろるが感心した。 「ふふ、まあね。小さい頃からよく家族でやってたんだ」ぴのは照れながら答えた。
その瞬間、ちろるの心に、またもやカイトの影がちらついた。
(待てよ。カイトさんも料理が得意だった。もしかして、ぴのさんは料理が得意な男の人がタイプなんじゃ…?)
「ねぇ、ぴのさん!あのさ、ぴのさんは料理が上手い男の人って、どう思う?」ちろるは恐る恐る尋ねた。
ぴのは、焼き上がったたこ焼きをフーフーと冷ましながら、ちろるの方を向いた。
「うーん、料理が上手いのはもちろん素敵だけどね。それより、一緒に作って、一緒に笑ってくれる人の方がいいかな」
ぴのはそう言うと、竹串でたこ焼きをひとつ取り、ちろるの口元へ差し出した。
「はい、ちろる。あーん」
ちろるは急な展開に心臓が飛び跳ねそうになりながらも、熱々のたこ焼きを受け入れた。
「あちっ!…で、でも美味い!」
「ふふ、良かった。ちろるが一生懸命準備してくれたから、余計に美味しいよ」
ぴのの言葉に、ちろるは安堵した。カイトさんのような完璧さではなく、**「一緒にいる時間」**を大切にしてくれるぴのさんの考え方に、ちろるは救われた気がした。
たこ焼きを囲みながらの企画会議は、いつものスタジオよりもリラックスした雰囲気で進んだ。
「そういえばさ、ぴのさん。俺が貸したパーカー、もう洗った?」ちろるが何気なく尋ねた。
「うん!洗ったよ。でもね、ちょっとだけ、ちろるの匂いが残ってる気がして…」ぴのは少し恥ずかしそうに、目線を逸らした。
「え、匂いが…?」
「うん。だから、また今度、借りちゃおうかなって思ってる。ちろるのパーカー、着心地がいいんだもん」
ぴのは顔を赤らめながらも、ストレートな言葉を放った。
(また借りる!?それはつまり、またぴのさんのシャンプーの香りが付いて返ってくるってこと!?)
ちろるは、たこ焼きの熱さではなく、ぴのの言葉で顔が真っ赤になった。
「い、いいよ!いつでも貸すよ!俺のパーカーは、ぴのさんのためにあるんだから!」
ちろるのその言葉は、ほとんど告白に近かったが、ぴのはいつものように「ありがとう!」と、相棒の優しさと受け取ったようだった。
たこ焼きパーティーは成功に終わり、二人の物理的な距離、そして心の距離は、また一歩縮まったのだった。
(第11話・了)
次回予告:
次回の『ちろぴの恋の冒険ダイアリー』第12話は、**『急接近の夜!ぴのさんの家に「お泊まり」!?』**です。
お楽しみに!
第12話:急接近の夜!ぴのさんの家に「お泊まり」!?
たこ焼きパーティーから数日後。ちろるとぴのは、週末に控えた大型コラボ企画の最終チェックのため、ぴのさんの家で深夜まで作業をすることになっていた。ぴのさんの家での作業は久しぶりで、ちろるは少し浮足立っていた。
「ぴのさん、このギミック、最終調整終わったよ!これで完璧だね!」 「うん、さすがちろる!あとは、エンディングの挨拶のタイミングだけ確認したら終わりだね」
気づけば時計の針は深夜を回っていた。外は突然の土砂降りの雨。風も強く吹き荒れ、帰りの足は完全に断たれてしまった。
「うわあ、すごい雨…。これ、もう電車ないし、自転車も無理だよね…」ぴのが窓の外を見て、不安そうな顔をした。
ちろるも状況を理解し、スマートフォンでタクシーを呼ぼうとしたが、この悪天候で配車サービスは全て停止していた。
「ぴのさん、タクシーも捕まらないみたい。どうしよう…」
ぴのは少し考えてから、恥ずかしそうに顔を赤らめて言った。
「あのね、ちろる…。もし、迷惑じゃなかったら…今日はうちに泊まっていく?」
「ええっ!?」ちろるは思わず大きな声を出した。
(お、お泊まり!?ぴのさんの家に!?そんなの、相棒の距離じゃなくない!?)
ちろるは急激な心臓の鼓動に、自分が何を言っているのか分からなくなりそうだった。
「だ、だめだよね?ごめん、急に」ぴのはちろるの反応を見て、申し訳なさそうに言った。
「だ、だめじゃないよ!もちろんだよ!俺は自称イケボのちろるですよ?ぴのさんが困ってるなら、どこへでも泊まるよ!」ちろるは慌てて笑顔を作った。
「よかった!じゃあ、タオルとかはこれ使って。パジャマは…ちろるのサイズに合うものがないから、私がお兄ちゃんからもらったTシャツを貸してあげるね」
ぴのは、恥ずかしそうに折り畳まれたTシャツと、新品のタオルをちろるに差し出した。
ちろるがTシャツに着替えを済ませてリビングに戻ると、ぴのはソファに座り、テレビで映画を見ていた。お互いに作業着ではない、ラフな格好で見つめ合うのは、なんだかとても新鮮だった。
「あのさ、ちろる。向こうの部屋で寝てね。私はここで大丈夫だから」ぴのが指差したのは、客間として使っている小さな部屋だった。
「うん、わかった。ありがとう、ぴのさん」
ちろるは客間へ向かおうとしたが、ぴのが急に立ち上がり、ちろるの腕をそっと掴んだ。
「ちろる、ちょっと待って」
「どうしたの、ぴのさん?」
ぴのは、ちろるの顔を真っ直ぐに見つめ、小さな声で言った。
「あのね、本当はちょっと、雷が怖いの。…もし、寝るまででいいから、リビングで一緒にいてくれると、嬉しいな」
その言葉に、ちろるの胸は締め付けられた。いつもの強気でマイペースなぴのさんではなく、助けを求める、一人の女の子の姿がそこにあった。
「もちろんだよ、ぴのさん!大丈夫、俺が雷から守ってあげる!」
ちろるは、ぴのの隣に座り、一緒に映画を見始めた。雷が光るたびに、ぴのは小さく肩を震わせ、そっとちろるの袖を掴んだ。
その小さな接触が、ちろるの心を激しく揺さぶった。相棒としてではなく、一人の男として、この繊細なぴのさんを、一生守ってあげたい。ちろるはそう強く願った。
映画が終わる頃には、雨も小降りになり、ぴのは安心したのか、ちろるの肩にもたれかかって、眠ってしまっていた。
(う、うわぁぁぁぁ!どうしよう!ぴのさんが!俺の肩に!!)
ちろるは心臓をバクバクさせながら、ぴのが目を覚まさないように、そっとブランケットをかけた。彼の頭はぴのの柔らかい髪の香りで満たされ、この静かで特別な時間に、ちろるは自分がどれほどぴのさんのことを大切に思っているのか、改めて痛感した。
雷の音はもう聞こえない。ただ聞こえるのは、二人の穏やかな寝息と、ちろるの激しい心臓の鼓動だけだった。
(第12話・了)
次回予告:
次回の『ちろぴの恋の冒険ダイアリー』第13話は、**『朝のハプニング!目覚めたぴのさんの「天然な一言」』**です。
お楽しみに!
第13話:朝のハプニング!目覚めたぴのさんの「天然な一言」
ちろるは、昨夜ぴのさんが自分の肩にもたれかかって眠るという、夢のような体験のせいで、ほとんど眠れなかった。朝になり、窓の外が明るくなるのを確認してから、ちろるはそっと自分の肩を動かし、ぴのさんが目を覚まさないように客間へ移動した。
顔を洗い、着替え(ぴのさんのお兄さんのTシャツ)を済ませてリビングに戻ると、ぴのはまだソファで眠っていた。その無防備な寝顔は、いつもの元気な相棒とは違い、幼く見えた。
(はぁ…可愛いな。でも、そろそろ起こしてあげないと…)
ちろるがどうやって起こそうか考えていると、ぴのがもぞもぞと動き出し、ゆっくりと目を開けた。
「んん…あれ?ちろる?」
ぴのは寝起きでぼんやりとした瞳で、ちろるの顔を見つめた。
「こんちゃ!ぴのさん、おはよう!よく眠れた?」ちろるは明るく挨拶をした。
ぴのは、自分がソファで寝ていたこと、そしてちろるが客間に泊まっていたことを思い出し、一気に顔を赤らめた。
「あわわ!ちろる!ごめんね!私、昨日の夜、雷が怖くて…いつの間にか寝ちゃってたみたいで…」 「大丈夫だよ!気にしないで。雷も止んだし、よかったね」
ぴのは、ちろるが着ているTシャツを見て、クスッと笑った。
「ふふ、ちろるがお兄ちゃんのTシャツ着てるの、なんか面白いね。あれ、でも…」
ぴのは急に立ち上がると、ちろるにグッと顔を近づけ、くんくんとちろるの胸元を嗅いだ。
「えっ!?」
ちろるはあまりの接近に、心臓が止まるかと思った。昨夜の肩にもたれかかり事件を超える、超至近距離アタックだ。
「ぴ、ぴのさん!?どうしたの!?」ちろるは慌てて後ずさりした。
ぴのは、何事もなかったかのように、きょとんとした顔で答えた。
「あれ?変だな。ちろるのいつもの匂いがしない…」
「い、いつもの匂いって…」
「うん。いつもの、ゲームスタジオの匂い!ちろると私がいつも一緒にいる部屋の匂い。このTシャツ、お兄ちゃんの匂いがするから、ちろるの匂いになっちゃってないか確認しちゃった」
ぴのはそう言って、ちろるのパーカーの匂いを嗅いだ時と同じように、無邪気な笑顔を見せた。
ちろるは、頭の中がパニック状態だった。
(**「いつもの匂い」**って、俺の体臭!?いや、スタジオの匂いって言ってるけど、それってつまり、俺の存在そのものを言ってる!?)
ぴのさんが、無意識に自分との日常、自分の存在を、**「匂い」**として認識していることに、ちろるは大きな衝撃を受けた。それは、誰にも代えられない「相棒」という言葉よりも、もっと深く、日常に溶け込んでいる証拠のように感じられた。
「あ、あのさ、ぴのさん。朝ごはん、何食べたい?俺が何か作るよ!」ちろるは、話題を変えるために、思わず声を大きくした。
「えへへ、ありがとう、ちろる!じゃあ、一緒にパンケーキを作ろうよ!二人で一緒に作ると、絶対美味しいんだもん!」
ぴのは、ちろるの提案に賛成し、キッチンに向かった。
ちろるは、自分の胸元からまだ香る、ぴのさんのお兄さんのTシャツの匂いを嗅いだ。しかし、不思議なことに、その匂いの奥には、かすかに自分のいつもの匂いと、ぴのさんのシャンプーの香りが混ざり合っているような気がした。
(この匂いは…ちろぴのの匂いだ…)
ちろるは、ぴのさんとの距離が、物理的にも感情的にも、想像以上に近づいていることを実感した。しかし、彼の心の中には、まだ「友達」という名のラインが、強く残っていた。
この特別な経験が、ちろるの告白への道のりを、さらに加速させることになったのだった。
(第13話・了)
次回予告:
次回の『ちろぴの恋の冒険ダイアリー』第14話は、**『距離を置く選択?カイトさんとの「二人きりのロケ」』**です。
お楽しみに!
第14話:距離を置く選択?カイトさんとの「二人きりのロケ」
お泊まりの朝以来、ちろるはぴのさんの前で、さらに意識してしまうようになった。「相棒」の距離感がわからなくなり、少しぎこちない態度になってしまうこともあった。
そんなある日、ぴのさんはカイトさんから、あるロケ企画のオファーを受けたちろるに報告した。
「ねぇ、ちろる。今度、カイトさんと二人きりでキャンプのロケに行くことになったんだ」 「…二人きり?キャンプ!?」ちろるは持っていたコントローラーを落としそうになった。
「うん。カイトさんのチャンネルの企画で、サバイバルゲーム実況者と、マインクラフト実況者が、それぞれの知識でキャンプを成功させるっていうロケなんだって。面白そうでしょ?」ぴのは目を輝かせた。
ちろるは内心穏やかではなかった。キャンプといえば、二人きりになれる時間が長く、協力し合う場面も多い。しかも、カイトさんは爽やかで料理も得意ときている。これは、ちろるにとって最大の危機だった。
「そ、そうなんだ…俺は?俺は行かないの?」ちろるは焦って尋ねた。 「うーん、今回は異種格闘技戦的な企画らしいから、それぞれの代表者でって。ちろるは、その間、次の大型企画の準備を頑張ってて、ってカイトさんが」
(異種格闘技戦だと!?ただのデートじゃないか!)
ちろるは嫉妬心で心がざわついたが、「相棒」としてぴのさんの仕事を応援しなければならない。
「わ、わかったよ。ぴのさん、頑張ってね。カイトさんに負けないくらい、ロケ楽しんでね!」ちろるは精一杯の笑顔を作って言った。
ぴのさんがロケに出発する当日。ちろるはスタジオで一人、次の企画の設計図を広げていたが、全く集中できなかった。
(今頃、ぴのさんはカイトさんと、焚き火を囲んで語り合ったりしてるのかな…!夜空を見て、綺麗な星だね、とか話してるのかな…!)
ちろるは作業を中断し、スマートフォンを開いた。SNSで、カイトさんがロケの様子を伝える写真をアップしていた。写真には、カイトさんの隣で笑う、楽しそうなぴのさんの姿が写っていた。
その写真を見た瞬間、ちろるの胸は激しい焦燥感に襲われた。
(俺じゃない…俺がぴのさんの隣にいるべきなのに…!こんな楽しそうなぴのさんの顔、俺しか見ちゃだめなのに!)
ちろるは、これまで「相棒」という安全な場所に逃げていた自分を後悔した。
「ダメだ。このままじゃ、ぴのさんの隣の席は、永遠にカイトさんのものになっちゃう…!」
ちろるは意を決した。このロケが終わってぴのさんが帰ってきたら、絶対に気持ちを伝えるための、最初の一歩を踏み出そう。
彼は、ぴのさんのために企画していた大型企画の内容を、急遽変更することにした。
「相棒」としての協力ではなく、**「二人の未来」**を意識させるような、特別なメッセージを込めた企画に。
ちろるは、ぴのさんがいないスタジオで、自分とぴのさんの絆を確かめるかのように、全力で作業に打ち込み始めた。その作業は、嫉妬や焦りではなく、ぴのさんへの純粋で強い想いに突き動かされていた。
(待ってて、ぴのさん。ロケから帰ってきたら、俺から絶対に、最高のサプライズを仕掛けてみせるから!)
ちろるは、来るべき告白の瞬間へ向けて、静かに覚悟を決めたのだった。
(第14話・了)
次回予告:
次回の『ちろぴの恋の冒険ダイアリー』第15話は、**『再会と報告。カイトさんの「予想外の行動」』**です。
お楽しみに!
第15話:再会と報告。カイトさんの「予想外の行動」
ぴのさんのキャンプロケから二日後。ちろるは、徹夜で作り上げた新しい企画の準備を終え、心臓をバクバクさせながらぴのさんの帰りを待っていた。
扉が開き、「こんちゃ!」という元気な声と共に、ぴのさんがスタジオに入ってきた。その隣には、爽やかな笑顔のカイトさんも一緒だった。
「ちろる!ただいまー!ロケ、すごく楽しかったよ!」ぴのさんは、日焼け止めを塗っていたにも関わらず、少しだけ頬が赤くなっていた。 「お、おかえり、ぴのさん!カイトさんもお疲れ様です!」ちろるは、平静を装うのが精一杯だった。
「ちろるくんも、企画準備お疲れ様。ぴのちゃんに助けられて、ロケ大成功だったよ」カイトさんは、優しくちろるに声をかけた。
ちろるは、嫉妬心と、カイトさんへの感謝(謎解きのアドバイス)とが混ざり合い、複雑な心境だった。
「ねぇ、ちろる!あのね、キャンプでね、カイトさんが私に特別なものを作ってくれたんだ!」ぴのさんは目を輝かせ、小さな木箱をちろるに見せた。
(特別なもの!?やっぱりカイトさんがぴのさんにアピールしたんだ!)
ちろるの心臓がズキッと痛んだ。
「これね、カイトさんが現地で採れた木の実とかを使って、香りのポプリを作ってくれたの。リラックスできるんだって!」
ぴのさんは、木箱の蓋を開け、ちろるの鼻先に近づけた。優しくて自然な香りが、スタジオに広がった。
「わ、すごいですね…。カイトさん、器用ですね」ちろるは、敗北を悟ったような声で言った。
その時、カイトさんがちろるの肩にそっと手を置いた。
「ちろるくん、実はね、ぴのちゃんから聞いたんだ。ちろるくんがぴのちゃんのために、ハートのリンゴのキーホルダーを作ってくれたって」
「えっ…」ちろるは驚いてカイトさんを見上げた。
「ぴのちゃん、そのキーホルダーを、ロケ中もずっと大事そうに持っていたよ。**『これはちろるが、私のために徹夜して作ってくれた宝物なんだ』**って」
カイトさんは、真っ直ぐな目でちろるを見た。
「ちろるくんのぴのちゃんへの想いは、僕のポプリなんかより、ずっと強くて、ずっと深いよ。…僕には、ぴのちゃんの『相棒』という大切な場所を壊す資格はないって、ロケ中に気づいたんだ」
カイトさんは、そう言うと、寂しげだが、どこか晴れ晴れとした笑顔を見せた。
「だから、ちろるくん。安心して。僕がぴのちゃんとの関係に、これ以上踏み込むことはしない。あとは、ちろるくんが勇気を出す番だ」
ちろるは、まさかライバルからエールをもらうとは思わず、完全に戸惑った。
(カイトさん…わざわざこんなこと言いに来てくれたのか…!)
カイトさんは、ちろるの反応を待たずに、ぴのに向かって微笑んだ。
「ぴのちゃん、今日はありがとう。また事務所でね」 「うん、カイトさん、またね!」
カイトさんがスタジオを後にすると、二人きりになった。
ちろるは、カイトさんの言葉を反芻しながら、ぴのさんに話しかけた。
「ねぇ、ぴのさん。本当に、カイトさんとのロケ、楽しかった?」 「うん!もちろん楽しかったよ!でもね、」
ぴのさんは、少し照れたように、木箱のポプリを胸に抱きしめた。
「やっぱり、ちろると一緒に、マインクラフトで冒険してる時が、一番楽しいかな。カイトさんの企画も面白かったけど、ちろるとは、なんだか息がぴったりなんだもん!」
ぴのさんの言葉は、ちろるの心を深く満たした。カイトさんのエールと、ぴのさんの変わらない「相棒」宣言。
「ありがとう、ぴのさん。…じゃあ、その『息ぴったりの相棒』である俺が、ぴのさんのために、最高の企画を用意したよ!」
ちろるは、徹夜で準備した新しい企画の設計図を広げた。その企画の裏テーマは、**「相棒から、恋人へ」**への道標だった。
(第15話・了)
次回予告:
次回の『ちろぴの恋の冒険ダイアリー』第16話は、**『特別な企画始動!「相棒の絆」を試す試練のマップ』**です。
お楽しみに!
第16話:特別な企画始動!「相棒の絆」を試す試練のマップ
カイトさんの後押しと、ぴのさんの「ちろると一緒が一番」という言葉に勇気づけられたちろるは、徹夜で作り上げた特別な企画を、ぴのさんに提案した。
「ぴのさん!今日の企画は、その名も**『ちろぴの絆チャレンジ!絶対に離れられない迷宮』**だ!」
「わあ!ネーミングがちろるっぽいね!」ぴのはいつものように目を輝かせた。
ちろるが用意したのは、マインクラフトの特殊なカスタムマップだった。通常のマップと違い、二人のプレイヤーは**目に見えない「絆の鎖」**で繋がれており、一定以上離れると、お互いにダメージを受けてしまうという設定だ。
「このマップをクリアするためには、常にお互いの存在を意識して、協力し合わないとダメなんだ。まさに、俺たち『ちろぴの』のための企画でしょ!」ちろるは胸を張って言った。
「なるほど!絶対に離れちゃだめなんだね!まるで、私たちみたいだね!」ぴのは楽しそうに笑った。
(『私たちみたい』…!ぴのさんがそう言ってくれた!)ちろるは内心ガッツポーズをした。
ゲームがスタートした。マップは、暗い洞窟や細い一本道、そして謎解きエリアなど、二人が離れやすいシチュエーションで構成されていた。
序盤は順調だった。ちろるがモンスターを倒し、ぴのが謎を解く。お互いの得意分野を活かし、まさに「息ぴったり」のコンビネーションだった。
しかし、中盤の暗い洞窟エリアに入った時、事態は一変した。
「うわっ、ちろる!足元が全然見えないよ!」ぴのはパニックになり、ちろるから離れようと走り出してしまった。
「待って、ぴのさん!離れないで!ダメージ受ける!」ちろるは叫んだが、ぴのは恐怖でちろるの声が聞こえていないようだった。
カキン!
二人の画面に、ハートが一つ減るダメージアニメーションが表示された。
「痛っ!ぴのさん!俺がライトを持つから、俺の後ろにいて!」
ちろるはぴのさんの元へ駆け寄り、ぴのさんの腕を掴むように、ゲーム内のキャラクターをぴのさんのすぐ隣に合わせた。
「ごめんね、ちろる…怖くて、思わず…」
「大丈夫。俺がついてるから。どんなに暗くても、俺から離れちゃだめだよ」
ちろるは、ゲーム内の会話ではあるが、真剣な想いを込めて伝えた。
その言葉で、ぴのは落ち着きを取り戻した。
その後も、二人の絆は何度も試された。広い広場に、それぞれ別の場所に隠されたスイッチを押さなければ扉が開かないという仕掛けがあった。
「ぴのさん、扉を開けるには、離れないとスイッチが押せないみたい…」 「でも、離れたらダメージだよね?」
二人は、それぞれの体力が持つギリギリの距離を見極め、一瞬だけ離れてスイッチを押すという、連携プレーを見事に成功させた。
ダメージを受けたが、扉は開き、二人はゴールに向かって進んだ。
そして、ついにゴール地点。そこには、一つの宝箱が置かれていた。
「やったね、ちろる!クリアだ!」
ぴのが宝箱を開けると、中には、ちろるが以前作った『光る特別なリンゴ』と、もう一つ、**『結婚指輪』**のアイテム(テクスチャ)が入っていた。
「えっ…指輪…?」ぴのは驚いた。
「…ふふ。ぴのさん。これはね、企画のおまけだよ」
ちろるは、照れを隠すように笑いながら、画面越しにぴのに語りかけた。
「この企画を通して、俺は改めて思ったんだ。俺とぴのさんは、どんな困難があっても、絶対に離れられない、強い絆で繋がっているって。だから…」
ちろるは、そこまで言いかけて、言葉を飲み込んだ。告白は、このゲーム内ではなく、現実世界で、自分の口から伝えたい。
「だから、これからもずっと、最高の相棒でいようね!」ちろるは、まだ「相棒」という言葉を使った。
ぴのは、その言葉を聞いて、少し残念そうな表情を一瞬見せたが、すぐに笑顔に戻った。
「もちろん!これからもずーっと、ちろるの相棒だよ!」
しかし、ぴのはゲーム内で**『結婚指輪』**のアイテムをそっと受け取り、自分のインベントリの一番大事な場所にしまった。
ちろるは、ぴのが指輪のアイテムを受け取ってくれたことに、静かな喜びを感じていた。二人の絆は、ゲームの中でより強固になり、ちろるの告白への覚悟も、一層固まったのだった。
(第16話・了)
次回予告:
次回の『ちろぴの恋の冒険ダイアリー』第17話は、**『進展なき関係への焦り。ぴのさんからの「意味深な質問」』**です。
お楽しみに!
第17話:進展なき関係への焦り。ぴのさんからの「意味深な質問」
「絶対に離れられない迷宮」企画の動画は、視聴者からも「二人の絆が尊い!」と大好評だった。ちろるは、ぴのさんが結婚指輪のアイテムを大事にインベントリに入れてくれたことに、大きな手応えを感じていた。しかし、同時に焦りも感じていた。
(いつまでも『相棒』って言ってられない!でも、ぴのさんの反応を見ると、このままの関係を崩すのが怖くて、なかなか踏み出せないんだ…)
そんなちろるの心の動きを察しているのか、いないのか。ぴのさんはいつも通り、穏やかだった。
次の収録のため、二人がいつものスタジオで機材のセッティングをしている時のことだった。
ぴのさんが、何の前触れもなく、ちろるに質問を投げかけた。
「ねぇ、ちろる」 「ん?どうしたの、ぴのさん」
「ちろるって、好きな人とかいるの?」
ちろるは、手に持っていたケーブルを落としそうになり、思わず動きが止まった。
「え、な、なんで急にそんなこと聞くの!?」ちろるは動揺を隠せない。 「えへへ、なんとなく気になって。ちろるって、すごく優しいから、絶対にモテると思うんだけどな」
(俺の好きな人は、今、俺の目の前にいるぴのさん、あなただよ!)
ちろるは喉まで出かかった言葉を必死で飲み込んだ。ここで正直に答えて、もしぴのさんが困惑してしまったら、今のこの大切な「相棒」関係すら壊れてしまうかもしれない。
「い、いるわけないでしょ!俺は今、ちろぴののチャンネル運営と、最高の企画作りに夢中なんだ!ぴのさんも知ってるでしょ!」ちろるは、大袈裟なくらい元気に答えた。
ぴのは、ちろるの反応をじっと見つめていたが、ちろるの言葉を聞くと、少しだけ寂しそうな、複雑な表情を浮かべた。その表情は、一瞬で消え去り、いつもの優しい笑顔に戻ったが、ちろるは見逃さなかった。
「そっか、そうだよね。ちろるは仕事熱心だもんね」
ぴのは、ちろるのデスクに置かれた、以前ちろるが貸したパーカーを畳み直しながら、続けた。
「でもね、ちろる。もし、ちろるに大切な人ができたら、私は応援したいと思ってるんだ」
「え…」
「だって、ちろるが幸せなのが、私の一番の願いだもん。その人が、ちろるの一番の相棒になってくれるなら、私は嬉しいよ」
(一番の相棒…?それって、俺の隣の席を、誰かに譲っていいってこと!?)
ぴのの言葉は、ちろるの心の奥底に、鋭い痛みを走らせた。「相棒」という言葉は、自分たちの関係を守る言葉であると同時に、「恋人」への道を阻む呪縛にもなっていることを、ちろるは痛感した。
「…ぴのさんこそは?ぴのさんは、好きな人とかいるの?」ちろるは勇気を出して聞き返した。
ぴのは、質問を待っていたかのように、再びちろるを見て微笑んだ。
「うーん、どうだろうね。でもね、私の好きな人は、いつも私のことを笑わせてくれて、ピンチの時に助けに来てくれて、そして…私が作ったオムライスを『世界一』って言ってくれる人だよ」
ぴのは、その言葉を残すと、「さ、ちろる。そろそろ収録始めるよ!こんちゃ!」と、いつもの挨拶でその場を締めくくった。
ちろるは、心臓を鷲掴みにされたまま、ぴのさんの言葉を反芻した。
(それ、完全に俺のことじゃん!?でも、なんでストレートに言ってくれないんだ…?もしかして、俺が『相棒』で満足してると思ってる…?)
ぴのさんの意味深な質問と、遠回しなヒントは、ちろるの心に火をつけた。これは、ぴのさんからの**「早く、勇気を出して」**という、最大のメッセージではないのか。
ちろるは、このまま「相棒」のままでいることは、ぴのさんにとっても不本意なのだと確信した。
(決めた。次の企画で、俺はぴのさんに、現実世界で、俺の本当の気持ちを伝える!もう、ゲームの中じゃない!)
ちろるの告白への覚悟は、完全に固まったのだった。
(第17話・了)
次回予告:
次回の『ちろぴの恋の冒険ダイアリー』第18話は、**『告白へのカウントダウン!ちろるが挑む「勇気のサプライズ」』**です。
お楽しみに!
第18話:告白へのカウントダウン!ちろるが挑む「勇気のサプライズ」
ぴのさんからの「意味深な質問」を受けて、ちろるの心は決まった。「相棒」の役割はもう終わりだ。次は、一人の男として、ぴのさんの一番大切な人になりたい。
ちろるは、告白の場所として、二人の思い出が詰まった**「あの場所」**を選ぶことにした。それは、初めて二人きりで行った、レトロなゲームセンターだ。
(あの場所なら、俺がぴのさんに初めてドキドキした思い出の場所だし、ぴのさんもリラックスできるはずだ!)
そして、告白のタイミングを、次の週末に予定していたチャンネルの記念配信の直後に設定した。
問題は、どうやってぴのさんをゲームセンターに連れ出すかだ。
ちろるは、ぴのに向けてメッセージを送った。
ちろる:ぴのさん!今度、チャンネル登録者数〇〇人記念の、感謝の生配信をしよう!その配信の直後、ぴのさんだけに、特別な場所で感謝のサプライズがあるんだけど…付き合ってくれる?
ぴのさんからは、すぐに返信が来た。
ぴの:わあ!サプライズ!?もちろん行くよ!ちろるからのサプライズ、楽しみにしてるね!
ぴのさんの返事に、ちろるの心臓は高鳴った。
次に、ちろるは告白のためのプレゼントを用意する必要があった。以前、手作りのキーホルダーは成功したが、今回は「相棒」ではなく、「恋人」になるための、特別なプレゼントが欲しかった。
ちろるは、意を決して、以前カイトさんからアドバイスをもらったジュエリーショップへ向かった。
(いや、なんでカイトさんから聞いた店に来てるんだよ俺!でも、カイトさんならぴのさんに似合うものがわかるはず…)
ジュエリーショップに入ったちろるは、戸惑いながら店員に相談した。
「あの、彼女に…ネックレスをプレゼントしたいんですけど。彼女は、猫耳のフードが似合って、いつもニコニコしてる、優しい子で…」
ちろるが一生懸命ぴのさんの特徴を伝えると、店員がそっと一輪の小さなポピーを模した、可愛らしいシルバーのネックレスを指差した。
「こちらはいかがでしょうか?花言葉は**『思いやり』**。そして、チェーンの留め具に、小さな猫のチャームが隠れているんです」
そのネックレスを見た瞬間、ちろるは「これだ」と直感した。ポピーの花言葉は、ぴのさんの優しさそのもの。そして、隠された猫のチャームは、ぴのさんの好きなものと、二人の秘密を連想させた。
「これにします!お願いします!」
ちろるは、少し奮発してそのネックレスを購入した。
これで、場所とプレゼントは決まった。残るは、言葉だけだ。
ちろるは自宅に戻ると、告白の言葉を何度も何度も練習した。
「ぴ、ぴのさん。俺は…相棒としてじゃなく、恋人として、ぴのさんの隣にいたい…」
「だめだ!弱すぎる!」
「ぴのさん!俺は自称イケボのちろるですよ!ぴのさんのことが、世界で一番好きだ!」
「これも違う…なんか、俺っぽくないし、重すぎるかも…」
ちろるは練習と失敗を繰り返し、ついには自分らしい、率直な言葉に辿り着いた。
(よし、これだ。俺は、ぴのさんとの未来を語ろう)
週末の配信が近づくにつれ、ちろるは緊張で食欲すら失った。しかし、ぴのさんの笑顔を思い出すと、不思議と勇気が湧いてくる。
「相棒」という名の安心感を捨てて、一歩踏み出す。
ちろるは、ぴのさんから借りたパーカーの匂いを嗅ぎ、大きく息を吸った。
(待ってて、ぴのさん。俺の人生最高の「冒険」が、今、始まるよ!)
(第18話・了)
次回予告:
次回の『ちろぴの恋の冒険ダイアリー』第19話は、**『運命の記念配信!配信中に起こった「最後の試練」』**です。
第19話:告白の予行練習!ちろるが挑む「愛のドッキリ企画」
ちろるは告白の準備を着々と進めていたが、緊張のあまり、現実世界でぴのさんを前にすると、言葉が喉に詰まってしまうのではないかという不安に襲われていた。
(ダメだ!告白で噛んだり、イケボが出なかったりしたら、ぴのさんに笑われて終わっちゃう!)
ちろるは、告白の予行練習として、**「愛のドッキリ企画」**を思いついた。ゲーム実況という枠組みの中で、自分の気持ちに近い言葉を伝えることで、本番の緊張を和らげようという作戦だ。
企画のタイトルは、『相棒の愛は本物か!?ちろるが仕掛ける限界ドッキリ』。
「ぴのさん!今日のドッキリは、俺がぴのさんにちょっとキツめの、愛の告白ドッキリを仕掛けるよ!ぴのさんは、どこまで耐えられるかな?」ちろるは、わざと少しニヤけた表情で言った。 「えー!またちろるのドッキリ?しょうがないなぁ、受けて立つよ!」ぴのは笑って答えた。
ドッキリの舞台は、マインクラフトの世界にちろるが作った、満開のバラが咲き誇る美しい庭園。
「ぴのさん。聞いてほしいことがあるんだ」ちろるは、ゲーム内のキャラクターをぴのさんの前に立たせた。 「なーに、ちろる?」
ちろるは、練習してきた告白の言葉を、少しだけドッキリ風にアレンジして口にした。
「俺はね、ぴのさんがいないと、毎日が全く面白くないんだ」 「ふふ、ゲーム実況の相棒がいなくて寂しいってこと?」
「違うよ!…ぴのさんが、俺の隣にいないと、世界から色が無くなったみたいになるんだ。このバラの花も、ぴのさんを通さないと、綺麗に見えないんだよ」
ちろるは、真剣なイケボで伝えた。これは、ちろるの偽りのない本心だった。
ぴのは、その言葉を聞いて、いつものように笑い飛ばすのではなく、少し考え込むような表情を浮かべた。
「ちろる、それって…ドッキリにしては、ちょっと本気っぽいね」
「えっ!?」ちろるは焦った。「ば、ばれてる!?いや、これは高度な演技だよ!ぴのさん、騙されちゃダメだよ!」
「ふふ、冗談。でもね、ちろる。私も、ちろるがいないと、なんだか私の声が全然響かない気がするよ」
ぴのは、静かに続けた。
「私の周りに、たくさん面白いことがあっても、ちろるに**『こんちゃ!』って伝えるまで、その楽しさが完成しない**んだ。だから、ちろるがいないと、私も寂しいよ」
ぴのの言葉は、ちろるの言葉とは違う、「相棒」としての絆を表すものだった。しかし、ちろるにはそれが、ぴのさんが自分に心を開いてくれている証拠のように聞こえた。
「ぴのさん…」
「だから、ちろる!これからもずーっと、私の隣で、私の声を受け止めてね!約束!」ぴのは明るい声に戻り、ゲーム内のキャラクターでちろるを追いかけた。
「もちろんだよ!約束する!ずーっと、ぴのさんの隣で声を出すよ!」
ドッキリ企画は、ちろるの告白の練習というより、ぴのさんの気持ちの再確認という形で幕を閉じた。
(ドッキリは成功したとは言えないけど、ぴのさんの気持ちはわかった。俺が『相棒』という殻を破れば、ぴのさんはきっと、俺を受け入れてくれる!)
ちろるは、本番への確信を強めたのだった。しかし、告白の前に、ぴのさんの心の奥底をもう一度確認する必要があると感じた。
第20話 「告白の返事」
ちろるは、チャンネル記念配信の直後に、ぴのさんをレトロなゲームセンターに誘い出し、告白することを決めていた。ジュエリーショップで購入したポピーのネックレスをポケットに忍ばせ、心臓は破裂しそうだった。
記念配信は、いつもの元気な「こんちゃ!」から始まり、大盛況で終了した。コメント欄には祝福の嵐だった。
「ねぇ、ぴのさん。配信お疲れ様!さっき言ってた、特別なサプライズの場所へ行こう!」ちろるは、緊張で少し声が上ずった。
「わあ、楽しみ!どこへ行くんだろう?」ぴのは目を輝かせた。
二人は、夜の帳が下りたレトロなゲームセンターに到着した。閉店後のため静まり返っており、ネオンサインだけが二人を照らしていた。
「ここ、前に二人で来た場所だね!」ぴのが懐かしそうに微笑んだ。 「うん。ここで俺、ぴのさんに初めて、相棒以上のドキドキを感じたんだ」ちろるは意を決して、切り出した。
ちろるはポケットからネックレスを取り出し、ぴのに向き直った。
「ぴのさん。俺はね、ずっと『相棒』で満足しようとしてた。でも、ぴのさんがカイトさんとロケに行ったり、俺のパーカーを大切にしてくれたりするたびに、俺の気持ちは抑えられなくなった」
ちろるは、自分の正直な気持ちを、精一杯のイケボで伝えた。
「俺は、ぴのさんのことが好きだ。世界で一番、ぴのさんの隣にいるのが幸せなんだ。だから、相棒じゃなくて、恋人として、俺の隣にいてほしい」
ちろるは、ネックレスを差し出し、ぴのさんの返事を待った。
ぴのは、そのネックレスと、ちろるの真剣な瞳を、しばらく見つめていた。その表情は、困惑でも、嫌悪でもなく、何かを決意するような、複雑なものだった。
やがて、ぴのは静かに口を開いた。
「ちろる…。ありがとう。ちろるが、そんなに私のことを大切に思ってくれてたなんて、すごく嬉しい」
ぴのは、ちろるの手にあるネックレスには触れず、そっと自分の胸元に手を置いた。
「でもね、ちろる。ごめん。私…今は、まだ、いいかな」
「えっ…」ちろるの顔から、一瞬で血の気が引いた。
「ちろるが、私を相棒としてじゃなく、大切な人として見てくれているのは、ちゃんと伝わったよ。でも、私はね、今の『ちろぴの』の関係が、壊れちゃうのが怖いんだ」
ぴのは、寂しそうに微笑んだ。
「ちろると私は、最高の相棒だよね?毎日一緒にゲーム実況して、一緒に笑って、お互いのピンチを助け合って。…その関係が、もし、『恋人』になって上手くいかなくなったらって考えると、私、すごく怖いんだ」
ぴのは、再びちろるの目を見た。
「ちろるは、私の『相棒』でいてくれるだけで、私にとっては何よりも大切な存在だよ。だから、ごめん。このまま、今の関係を、もう少し大切にしたいんだ」
ちろるは、告白の言葉も、ネックレスも、宙ぶらりんになったまま、動けなかった。
「そ、そっか…。ごめんね、急に…」ちろるは、絞り出すように言った。
「ううん。ちろるは悪くないよ。勇気を出してくれて、本当にありがとう」
ぴのは、ちろるの肩にそっと手を置くと、いつもの優しい笑顔で言った。
「さ、ちろる。帰ろう。また明日も、一緒にゲーム実況するんだからね!」
ちろるは、その夜、ネックレスをポケットにしまい込んだまま、ぴのさんの家の前で、何も言わずに別れた。彼の心は、大好きなぴのさんからの返事と、「相棒」という強固な壁に打ち砕かれていた。
(このまま、終われない。ぴのさんの言う『大切な相棒』から、**『最高の恋人』**に、必ずなってやる!)
第21話:ぎこちない「こんちゃ!」告白失敗後の初めての収録
告白失敗の翌日。ちろるはほとんど眠れなかった。ポケットには、ぴのさんに渡せなかったポピーのネックレスが入ったままだ。スタジオに向かう足取りは、いつになく重かった。
「こんちゃ!」
ちろるがスタジオに入ると、ぴのはいつもの場所で、既に機材の準備を始めていた。挨拶は、いつもの元気な「こんちゃ!」だった。しかし、ちろるには、その声が、張り付いたような、無理をした笑顔に聞こえた。
「こ、こんちゃ!ぴのさん…」ちろるの声は、自称イケボどころか、か細く震えていた。
二人の間には、昨日までの温かくておかしな日常の空気はなかった。代わりに、触れると壊れそうなガラスのような緊張感が漂っていた。
「ちろる、今日の企画、ちゃんと構成練ってきたよ。ほら、これ見て」
ぴのは、いつもの猫耳フードを深く被り、懸命に**「相棒」**の役割を演じようとしていた。彼女は、仕事の話に集中することで、昨夜の出来事をなかったことにしたいようだった。
ちろるは、ぴのさんが差し出した企画書を受け取ったが、文字が頭に入ってこない。
「ぴのさん…昨日、ごめんね」ちろるは、沈黙を破って言った。 「え…」ぴのは、一瞬作業の手を止めた。「なんでちろるが謝るの?私が、ちろるの気持ちに応えられなかっただけだよ」
「いや…俺が急に、ぴのさんの大切な**『相棒』の関係**を壊そうとしたから…」
「壊れてないよ!」
ぴのは、少し声を荒げて言った。
「ちろる!私たちは、**『ちろぴの』**だよ?誰にも代えられない、最高の相棒だよ。私がね、恋人になるのを躊躇したのは、ちろるが嫌いだからじゃないんだ。むしろ、大切すぎて、失うのが怖いからなんだよ」
ぴのは、ちろるを真っ直ぐ見つめた。その瞳には、切実な思いが宿っていた。
「だから、ちろる。お願い。このまま、今まで通り、私の一番隣にいてくれる?私は、ちろるがいるだけで、すごく心強いんだから」
その言葉は、ちろるの心の傷に優しく触れた。ぴのさんが、自分を大切に思ってくれていることは、本当だとわかった。
「…わかったよ、ぴのさん」ちろるは、力なく笑った。「俺は、ぴのさんの相棒だよ。ずーっと、ぴのさんの隣にいるよ」
その一言で、ぴのの表情は、一気に安堵に変わった。
「ありがとう、ちろる!やっぱりちろるは、私の一番の理解者だね!」
ぴのは、そう言うと、いつもの明るい笑顔に戻り、急いで収録の準備を再開した。
しかし、ちろるは知っていた。これは**「相棒」としての関係の再確認**であり、彼の「恋人」への道が閉ざされたわけではない。
(『大切すぎて、失うのが怖い』…ぴのさんがそんな不安を抱えてるなら、俺が、恋人になっても、今の関係は絶対に壊れないって証明してやる!)
ちろるは、ポケットのネックレスを握りしめた。
その日の収録は、なんとか無事に終わった。二人は、いつものようにおかしな掛け合いを見せ、視聴者を笑わせた。しかし、カメラが止まると、二人の間には、まだ薄い氷のような壁が残っていた。
ちろるの、ぴのさんの心の壁を壊すための、新しい冒険が始まったのだった。
(第21話・了)
次回予告:
次回の『ちろぴの恋の冒険ダイアリー』第22話は、**『ぴのさんの心のトラウマ?カイトさんとの「秘密の会話」』**です。
お楽しみに!
第22話:ぴのさんの心のトラウマ?カイトさんとの「秘密の会話」
告白失敗から数日後。ちろるは、ぴのさんが「大切な相棒の関係を失うのが怖い」と言った理由について、ずっと考えていた。ぴのさんには、過去に何か、親しい関係が壊れてしまった経験があるのではないか。
ある日の夕方、ちろるが次の企画の資料を取りに事務所へ戻ると、ぴのさんとカイトさんが、休憩スペースで二人きりで話しているのを目にした。
「—だからね、カイトさん。ちろるには、本当に申し訳ないと思ってるんだ」ぴのさんの声が、少し沈んでいた。 「うん、それはちろるくんも分かってると思うよ。ただ、ぴのちゃんがそこまで関係の変化を怖がるのには、何か理由があるんじゃないかな?」カイトさんが静かに尋ねた。
ちろるは、二人の会話に気づかれないよう、柱の陰に身を隠した。盗み聞きは悪いと分かっていたが、ぴのさんの心の壁の正体を知りたいという衝動が勝った。
ぴのは、静かに話し始めた。
「私、前にね、親友と呼べるほど仲の良かった子がいたの。ゲームとか、アニメとか、全部趣味が一緒で、本当に**『最高の相棒』**だった」
ぴのさんは、遠い目をして続けた。
「その子がね、私に『好きだ』って言ってくれたことがあったんだ。私、その時、すごく嬉しかったんだけど、**『この関係が変わっちゃうのが嫌だ』**って、断っちゃったの」
ちろるの胸が痛んだ。(俺の時と、全く同じだ…!)
「そうしたらね、その子は**『相棒のままでいよう』って言ってくれたのに、少しずつ私を避けるようになって…結局、その子は私から離れていっちゃったんだ。『恋人』にならないと、『相棒』の関係すら保てないんだ**って、その時知ったの」
ぴのさんの声は震えていた。
「だからね、ちろるに告白された時、またあの時のように、大切なちろるを失うんじゃないかって、怖くなっちゃって…。私はもう、誰かとの大切な関係が壊れるのは嫌なんだ」
カイトさんは、優しくぴのの背中を撫でた。
「そうだったんだね。ぴのちゃんは、『相棒』を失わないために、『恋人』になることを選ばなかったんだ。ちろるくんが、その話を知らないのは、ぴのちゃんの優しさだね」
「うん。ちろるは、あの子みたいに、去っていくような人じゃないって信じてる。でも…また傷つけちゃうんじゃないかって思うと…」
ちろるは、その会話を聞いて、全てを理解した。ぴのさんの心の壁は、自分への拒絶ではなく、**過去の傷による「自己防衛」だったのだ。そして、その傷は、「相棒関係の崩壊」**というトラウマに直結していた。
ちろるは、そっとその場を離れた。彼の中で、怒りも嫉妬も消え失せ、代わりにぴのさんへの深い慈しみが湧き上がってきた。
(そうか、ぴのさんは、俺を失うのが怖いだけなんだ。なら、俺が証明してやる。俺との関係は、恋人になっても、絶対に、絶対に壊れないって!)
ちろるは、ぴのさんのトラウマを乗り越えさせるために、これまでの「アピール」や「サプライズ」とは違う、**もっと根本的な「信頼の再構築」**が必要だと悟った。
ちろるの、ぴのさんの心の壁を崩すための、本当の冒険が、ここから始まったのだった。
(第22話・了)
次回予告:
次回の『ちろぴの恋の冒険ダイアリー』第23話は、**『トラウマを越えて!ちろるが仕掛ける「永遠の約束」企画』**です。
第23話:トラウマを越えて!ちろるが仕掛ける「永遠の約束」企画
ぴのさんの過去を聞いたちろるは、これまでのような「サプライズ」や「嫉妬を煽る行動」を完全にやめた。彼の目標は、ぴのさんに**「恋人関係になっても、私たちは絶対に壊れない」**という確信を与えること。
ちろるは、ぴのさんのトラウマの根源である「親友との関係の崩壊」を、ゲームというフィールドで乗り越えさせるための、新しい企画を考案した。
その企画は、『ちろぴの時を超えた大冒険!未来の宝を探せ』。
「ぴのさん!今日の企画は、俺たちが作った過去のマップから、未来の俺たちへのメッセージを探すという、時間旅行系の謎解きだ!」ちろるは、いつものように元気いっぱいに説明した。 「わあ、面白そう!未来の私たちからのメッセージって、何が入ってるんだろう?」ぴのは目を輝かせた。
ゲームが始まると、二人はこれまでの様々な企画で使われたマップを巡った。初めて協力してボスを倒した洞窟、初めて二人で建てた小さな家、そして、ちろるが告白のために仕掛けた『絶対に離れられない迷宮』のゴール地点。
謎解きを進める中で、二人は過去のマップのあちこちに隠された**『時のかけら』**というアイテムを集めていく。そのかけらには、ちろるが事前に仕込んだ、二人の思い出のチャットログや、動画の裏側での会話などが表示される仕組みになっていた。
「わ、これ、オムライス作った時のメッセージだ!『ぴのさんのオムライス、世界一だ』って書いてある!」ぴのが笑った。 「そうだよ!あれは、俺の偽りのない本心だよ!」
そして、謎解きの最終盤。二人が辿り着いたのは、過去のマップではない、真っ白で何もない空間だった。
「あれ?ちろる、ここはどこ?」ぴのが戸惑う。
「ぴのさん。ここは、未来の俺たちが立つ場所だ」ちろるは、真剣な声で語りかけた。
「俺たちが集めた『時のかけら』…過去の思い出は、全部、ぴのさんと俺がどんなに強く繋がってきたかの証拠だ。たくさんの笑いも、ちょっとしたケンカも、全部二人で乗り越えてきた」
ちろるは、ぴのさんのキャラクターのすぐ隣に、自分のキャラクターを立たせた。
「ぴのさんが、前の友達を失ったのは、その子が、関係が変わることを受け止められなかったからだ。でも、俺は違う」
ちろるは、一つ一つの言葉に重みを込めて伝えた。
「俺たちがもし、恋人になっても、俺は、ぴのさんとの『相棒』としての絆を、絶対に、絶対に失うつもりはない。むしろ、恋人という新しい形で、その絆をより強固に、永遠のものにするんだ」
「ぴのさん。俺にとって、ぴのさんは、**『相棒』という土台の上に立つ、最高の『恋人』**なんだ。その土台は、何があっても揺るがない。俺が、それを約束する」
ぴのは、静かにちろるの言葉を聞いていた。その瞳には、涙が浮かんでいた。それは、恐怖の涙ではなく、心の中の氷が溶けていくような、温かい涙だった。
「ちろる…そこまで、私のことを考えてくれてたなんて…」
「もちろんだよ。俺は、ぴのさんの笑顔が、世界で一番大切なんだから」
ぴのは、ゲーム内のチャットで、短いメッセージを打った。
ぴの:ちろる。ありがとう。少しだけ…その約束を信じてみたいって、今、思えたよ。
その言葉は、ちろるにとって、一度目の告白成功よりも価値のある、心の壁を崩した証拠だった。
「よし!ありがとう、ぴのさん!じゃあ、この白い空間に、これから未来の家を建てていくぞ!」ちろるは、いつもの明るい声に戻って、ぴのさんを新しい冒険へと誘った。
二人の間には、告白前の緊張感ではなく、確かな信頼と、新しい未来への期待が満ち始めたのだった。
(第23話・了)
お楽しみに!
第24話:ぴのさんの変化!相棒から異性へ意識し始める瞬間
ちろるさんの企画と「絶対に壊れない」という真摯な約束を聞いて以来、ぴのさんの心は大きく揺らいでいた。ちろるが自分の過去の傷を知り、それを受け止めてくれたことに、深い安堵と感謝を感じていた。
しかし、その安堵と同時に、ぴのさんのちろるに対する見方が変わり始めていた。
ある日の収録後、二人は次の企画のアイデア出しのために、並んでカフェで打ち合わせをしていた。いつものように、ちろるが新しいゲームのシステムについて熱弁している。
「…でさ、ぴのさん!そのブロックを置くと、ドカンと爆発して、隠された謎解きが出現するんだ!面白そうでしょ!?」
「うん、面白そうだね、ちろる!」
ぴのは、ちろるの情熱的な話を聞いていたはずなのに、なぜか、彼の口元ばかりに目がいってしまった。笑うたびに少しだけ見える白い歯や、熱中するとキュッと引き締まる唇。
(あれ…?ちろるって、こんな顔してたっけ?)
ぴのは、いつも見ていたはずのちろるの横顔が、突然知らない人のように新鮮に見え始めた。
そして、ふと、ちろるがコーヒーカップを傾けた瞬間。彼のパーカーの袖口から、少しだけ手首が覗いた。細く、血管が浮き出ていて、男らしい手首だ。
(…ちろるって、手が綺麗なんだ)
ぴのは、急に顔が熱くなるのを感じた。今まで、ちろるの手は「コントローラーを握る手」や「ピンチの時に差し伸べられる相棒の手」でしかなかったのに、今は、**「男性の手」**として強く意識してしまった。
「ぴのさん?どうしたの?顔が真っ赤だよ?熱い?」ちろるが心配そうに、ぴのさんの額に手を伸ばそうとした。
「だ、大丈夫!」ぴのは咄嗟に後ずさりし、ちろるの手を遮った。
「急に、この企画が面白すぎて興奮しちゃっただけだよ!」ぴのは、慌てて話題をゲームに戻した。
「そっか!よかった。俺も熱が入りすぎたかな」ちろるは安心したようだったが、ぴのさんの急な拒否に少し戸惑っていた。
(ごめんね、ちろる。でも、ちろるの手が触れたら、きっと私はもっと変になっちゃう…)
ぴのは、カイトさんからもらったポプリの香りを嗅いで、平静を保とうとした。しかし、そのポプリよりも、今はちろるから借りたパーカーの、微かなシャンプーの香りの方が、強く脳裏に焼き付いていた。
その日以降、ぴのはちろるに対して、小さな変化を見せるようになった。
ちろるが近づくと、無意識に一歩下がってしまう。
ちろるが笑うと、以前よりドキッとして、すぐに目を逸らしてしまう。
収録でゲーム内のキャラクターが接触すると、なんだか恥ずかしい気持ちになってしまう。
ぴのは、この感情の変化が、過去のトラウマを乗り越え、ちろるを「失う存在」ではなく「異性」として受け入れ始めた証拠だということに、まだ気づいていなかった。彼女にとって、この新しい感情は、少しの戸惑いと、たくさんの期待が入り混じった、初めての恋の予感だった。
一方、ちろるは、ぴのさんが自分を避けているように見えて、再び不安になり始めていた。
(あれ?俺、また何か変なこと言っちゃったかな?ぴのさん、なんか最近、俺から距離を取ろうとしてないか…?)
二人の心の距離は確実に縮まっているのに、ぴのさんの行動がその逆を向いているという、切ないすれ違いが始まっていたのだった。
(第24話・了)
次回予告:
次回の『ちろぴの恋の冒険ダイアリー』第25話は、**『募る不安と勘違い。「俺は嫌われた?」ちろるの暴走』**です。
お楽しみに!
第25話:募る不安と勘違い。「俺は嫌われた?」ちろるの暴走
ぴのさんが自分を避け始めた(とちろるが感じている)ちろるは激しい不安に襲われていた。
(せっかくトラウマを乗り越えてもらおうと頑張ったのに、やっぱり俺の告白が、ぴのさんを傷つけてしまったのか?もう、相棒としても見てもらえなくなっちゃうのか…?)
ちろるの不安は、日を追うごとに増していった。ぴのさんが打ち合わせ中に目を逸らすのは、「自分の顔も見たくないからだ」。収録中に体が少し離れるのは、「生理的に嫌がられているからだ」。ちろるは、全てをネガティブに捉えてしまった。
そして、ある日の収録中、ちろるの不安はピークに達し、暴走という形で現れてしまった。
その日の企画は、協力型の謎解きゲーム。二人が協力してヒントを集めなければ、次のステージに進めない。
「ぴのさん、この暗号、さっきの部屋にあった数字と組み合わせないとダメっぽいよ!」ちろるが、ぴのに協力を求めた。
「え、うん…わかった」ぴのは、ちろるの顔を直視できず、少し俯きがちに答えた。
(ほら、やっぱり!目を合わせたくないんだ!俺と話すのが嫌なんだ!)
ちろるは完全に勘違いし、頭に血が上ってしまった。
「もういいよ、ぴのさん!」ちろるは、思わずゲーム内のチャットで、大声で書き込んだ。
ちろる:ぴのさん、もういい!俺のことは嫌いだろ!?無理に一緒にいなくてもいいんだよ!
ぴのは、そのメッセージを見て、ゲーム内のキャラクターの動きを止めた。
「ち、ちろる?どうしたの、急に…?」
「どうしたのじゃないよ!俺、気づいてるんだ!最近、ぴのさん、俺のこと避けてるでしょ!?俺がそばに行くと、一歩下がって!俺が笑いかけても、すぐに目を逸らして!」ちろるは、ゲーム実況の収録中であることを忘れ、感情を露わにした。
「俺のこと、**相棒としても見たくないくらい嫌いになっちゃったんだろ!?**だったら、正直に言ってくれよ!俺は…」
「違うよ、ちろる!」
ぴのは、静かに、しかし強く、ちろるの言葉を遮った。
「ちがう!私は、ちろるのことが…嫌いなんかじゃない!」
ぴのは、マイクに向かって、震える声で続けた。
「私はね、ちろる。ちろるが、私を大切にしてくれる気持ちが、すごくよく分かったから、怖くなっちゃったの」
「こ、怖いって…?」
「うん。ちろるが、本当に私の**『特別な人』**になりつつあるって、自分で気づいちゃったから…!私は、ちろるの隣にいると、相棒としてじゃなくて、変な気持ちになっちゃうんだ」
ぴのは、涙声になりながら、胸の内を明かした。
「だから、ごめんね。目を逸らしたのは、ちろるの顔をまともに見たら、心臓がバクバクしちゃうからだよ!避けてなんかないよ…!」
その言葉を聞いた瞬間、ちろるの頭の中で、全てが繋がった。
(避けてたんじゃない!俺を意識し始めてたから、照れてたんだ!)
ちろるの頬は、一気に熱くなった。自分の勘違いによる暴走が、図らずもぴのさんの本心を引き出したのだ。
「ぴ、ぴのさん…。俺のことが…変な気持ちって…」ちろるは、声が出ないほどの喜びを感じた。
「うん…。だから、ちろるの相棒でいられる自信が、なくなってきてるんだ…」ぴのは、恥ずかしさのあまり、顔を覆った。
ちろるは、すぐに立ち上がると、カメラが回っていることも忘れ、ぴのさんの椅子に駆け寄った。
「ぴのさん!大丈夫だよ!自信をなくさないで!」
「だって…」
ちろるは、ぴのさんの肩にそっと手を置き、真剣なイケボで囁いた。
「ぴのさんが、俺に対して**『変な気持ち』**を持ってくれたってことは、最高のニュースだよ!だって俺は、ぴのさんが、俺の『恋人』になってくれる自信なら、いくらでも持ってるから!」
ぴのは、ちろるの突然の接近と、力強い言葉に、驚いて顔を上げた。
「ち、ちろる…」
二人の収録は中断したまま、二人の間には、ゲーム実況では決して流れることのない、熱く、甘い空気が満ちたのだった。
(第25話・了)
次回予告:
次回の『ちろぴの恋の冒険ダイアリー』第26話は、**『恋人未満の初々しさ!収録後の「相棒」ラインの再設定』**です。
お楽しみに!
第26話:恋人未満の初々しさ!収録後の「相棒」ラインの再設定
ちろるの暴走と、ぴのさんの「変な気持ち」告白によって、二人の関係は決定的な変化を迎えた。収録は途中で中断となり、カメラが止まると、スタジオには重い沈黙が降りた。
「ご、ごめんね、ちろる。私、急にこんなこと言っちゃって…」ぴのは、まだ顔を覆ったまま、ちろるから少し距離を取ろうとした。
「謝らないで、ぴのさん!」
ちろるは、ぴのさんが立ち上がろうとする前に、優しくその手を掴んだ。
「ぴのさんが、俺に対して**『変な気持ち』を持ってくれたって、俺にとっては世界で一番の喜び**だよ。俺の告白は、失敗じゃなかったんだね」
ちろるの言葉は、ぴのさんの心に温かく響いた。
「でも…私、まだ、**『恋人』っていうのが怖いんだ。ちろるが、私を失うのが怖いって言ってくれたみたいに、私も『ちろるの相棒』**っていう場所を失いたくないの」ぴのは、正直な気持ちを伝えた。
ちろるは、ぴのさんの手を握ったまま、深く頷いた。
「わかってるよ、ぴのさん。だから、俺は急がない。ぴのさんが、俺の隣で、不安なく笑えるようになるまで、ずっと待つよ」
そして、ちろるは笑顔で提案した。
「でもさ、ぴのさん。俺たち、もう『相棒』っていうラインを、ちょっとだけ前にずらしてもいいんじゃないかな?」
「前にずらす…?」
「そう!これからは、『恋人未満の、最強の相棒!』ってことで!今まで以上に、ぴのさんのことを特別な存在として扱うよ。もちろん、ぴのさんが嫌がらない範囲でね」
ぴのは、その「恋人未満の相棒」という新しい肩書きに、クスッと笑ってしまった。
「ふふ、なにそれ。ちろるらしいね。…わかった。じゃあ、**『恋人未満の相棒』**として、よろしくね」
ぴのは、ついに、自分からちろるの目をまっすぐ見て、微笑んだ。その笑顔は、これまでの「相棒」としての笑顔とは違う、少しだけ照れたような、初々しいものだった。
二人は、その場で中断した収録を片付け、スタジオを後にした。
翌日。二人の間に流れる空気は、明らかに変わっていた。
挨拶: 「こんちゃ!」の後に、ちろるは「今日も可愛いね、ぴのさん!」というセリフを、冗談めかしつつも、真剣なイケボで付け加えるようになった。(ぴのは顔を赤くして「な、なに言ってるの!」と返すのがお決まりになった)。
距離感: 以前は一歩下がっていたぴのが、今回は逆に、自分から少しだけちろるの隣に近づくようになった。作業中に手が触れると、ぴのはドキッとするが、すぐにその温もりを探すようになっていた。
メッセージ: LINEのやり取りが、「企画の相談」から、「今日の夜ご飯は何にしたの?」という、プライベートな内容に変わっていった。
ちろるは、ぴのさんの小さな変化を全て逃さず受け止めていた。ぴのさんが、一歩ずつ、自分への感情を認めて、心を開いてくれていることがわかった。
(よし、いいぞ。これが、俺たちの新しい「冒険」だ。絶対に、ぴのさんの心の不安をゼロにして、・・・で、最高の「恋人」になってみせる!)
二人の「恋人未満の相棒」としての、甘くて初々しい日々が、ここから始まったのだった。
(第26話・了)
次回予告:
次回の『ちろぴの恋の冒険ダイアリー』第27話は、**『リスナーからの変化球!「二人は
第27話:リスナーからの変化球!「二人はデキてる?」質問攻め
二人が新しい関係になってから初めての、雑談系の生配信の日。ちろるもぴのも、普段通りの軽妙な掛け合いを心がけていたが、**「恋人未満の相棒」**という意識が、無意識のうちに画面越しにも伝わっていたようだ。
配信中、ちろるがぴのの新しい企画アイデアを褒めると、以前なら「えへへ」と笑って終わりだったぴのが、今は少し照れたようにちろるの方をチラッと見てから笑う。
ちろるも、ぴのが冗談を言うと、以前よりも一瞬だけ間を置いてから、優しい笑顔でツッコミを入れる。
コメント欄は、開始早々、いつになく荒れ始めた。
「え、なんか今日の二人、雰囲気違う?」 「ぴのちゃん、顔赤くない?」 「ちろる氏、ぴのちゃんを見る目がいつもと違う!ガチ恋の目だ!」 「おい、正直に言え!二人はデキてるんだろ!?」
ちろるはコメントを見て、内心ヒヤヒヤした。ぴのさんが戸惑ってしまうのではないかと心配したが、ぴのはプロらしく、冷静に対応した。
「えへへ、みんな、どうしたの?いつもの『ちろぴの』だよ!」ぴのは笑って流そうとした。
しかし、視聴者の追及は止まらない。
「デキてるんじゃないなら、お互いの好きなところを3つずつ言ってみて!」
ちろるはコメントを読み上げ、心臓が跳ね上がった。これは、本心を伝える絶好のチャンスであると同時に、一線を越えるリスクもある。
ちろるは、覚悟を決めてマイクに向かった。
「よーし!リスナーさんからの挑戦状、受けて立つぞ!じゃあ、俺から、相棒・ぴのさんの好きなところを3つ言わせてもらおう!」
「何よりも、その優しい笑顔! ぴのさんが笑うと、俺の疲れも全部吹っ飛ぶんだ!」(これは、恋人としての本心)
「その冷静で賢いところ! どんな難しい謎解きも、ぴのさんがいれば解けちゃう。俺の最高の頭脳だ!」(これは、相棒としてのリスペクト)
「ピンチの時に、絶対に俺の隣にいてくれるところ! どんなに怖いことがあっても、ぴのさんがいるだけで、俺は勇気百倍になれるんだ!」(これは、ぴのさんのトラウマを乗り越えさせるための「永遠の約束」の再確認)
ちろるは、相棒と恋人の気持ちを織り交ぜながら、真剣に伝えた。ぴのは、ちろるの言葉を聞くたびに、顔がどんどん赤くなっていった。
「ち、ちろる…そこまで言われると、さすがに照れるよ…」ぴのは、自分の番が来たことに、少し戸惑っているようだった。
「じゃあ、次はぴのさんの番だ!俺の好きなところ、3つ教えてよ!」ちろるは、期待の眼差しでぴのを見た。
ぴのは、意を決したように、一度深呼吸をした。
「ちろるの、その自信に満ちたイケボ! どんなにゲームで負けても、ちろるの声を聞くと、また頑張れるんだ!」(相棒としての信頼)
「不器用だけど、人のために一生懸命になれるところ! オムライスも、キーホルダーも、不器用なのに頑張ってくれたの、私知ってるよ!」(ちろるの優しさを認める気持ち)
「そして…**『相棒』って言葉だけじゃなくて、私のことを『特別』**だって言ってくれるところ!」(新しい関係への一歩を認める言葉)
ぴのは、3つ目を言う時に、ちろるの目を一瞬だけ見つめ、すぐに逸らした。その言葉は、ちろるにだけ向けられた、「あなたが好き」という遠回しのサインだった。
配信のコメント欄は、二人の真剣な告白のようなやり取りを見て、大いに沸き立った。
「もうこれ、完全に両想いだろ!お幸せに!」 「尊すぎて泣いた。応援する!」
配信を終え、カメラが止まると、ぴのはすぐさまちろるに飛びついてきた。
「ち、ちろる!ごめん!私、3つ目で、なんだか変なこと言っちゃったかな!?」ぴのは、恥ずかしさのあまり、ちろるの腕を掴んだ。
「変なことなんかじゃないよ、ぴのさん」
ちろるは、ぴのさんの手を握り返し、優しく微笑んだ。
「ぴのさんが、俺のことを**『特別』**だって認めてくれた。それだけで、俺は十分だよ」
二人の関係は、視聴者からの質問という外部からの圧力によって、さらに一歩、「恋人」というゴールへと近づいたのだった。
(第27話・了)
次回予告:
次回の『ちろぴの恋の冒険ダイアリー』第28話は、**『恋の誤算!ちろるがカイトに「ぴのへの悩み」を相談』**です。
お楽しみに!
第28話:恋の誤算!ちろるがカイトに「ぴのへの悩み」を相談
生配信での「好きなところ」の応酬を経て、ちろるはぴのさんが自分に好意を持っていることを確信した。しかし、ぴのさんが「恋人」になることへの不安を乗り越えられていないため、ちろるは慎重にならざるを得なかった。
(ぴのさんは、俺のこと好きでいてくれてる。でも、一線を越えるのが怖いんだ。どうしたら、その最後の壁を壊せるんだろう…?)
悩みに悩んだちろるは、思いがけない人物に相談を持ちかけることを決意した。それは、かつての恋のライバル、カイトさんだった。カイトさんは、以前ぴのさんのトラウマについて助言をくれた、数少ない事情を知る人物だ。
ちろるは、カイトさんにメッセージを送り、二人は事務所近くのカフェで会うことになった。
「カイトさん、お忙しいところすみません」 「気にしないで、ちろるくん。何かぴのちゃんのことかな?」カイトさんは優しく微笑んだ。
ちろるは、正直に経緯を話した。一度告白して失敗したこと、ぴのさんが過去のトラウマから関係の変化を恐れていること、そして今、「恋人未満の相棒」として関係を続けていること。
「…ぴのさんは、俺を避けてたけど、それは俺を意識しすぎたからだって言ってくれました。でも、その後のぴのさんの行動が、また俺には分からなくなってしまって…」
ちろるは、最近のぴのさんの行動について相談した。
「最近、ぴのさん、俺が**『大好きだよ!』とか、『愛してる!』って冗談で言うと、笑って返してくれるんです。でも、真剣な顔で手を握ろうとすると、すぐに引っ込めるんです。これって、やっぱり、俺に『真剣な感情』を向けられるのが嫌**ってことでしょうか?」
カイトさんは、ちろるの話を真剣に聞き、少し笑って言った。
「ちろるくん、それは誤解だよ」 「え、誤解ですか?」
「ぴのちゃんは、ちろるくんの『大好き!』という言葉を、**『相棒としての冗談』**として受け入れているんだ。だから、笑顔で返せる」
カイトさんは、ちろるが差し出したコーヒーを一口飲んで続けた。
「でも、ちろるくんが真剣な顔で手を握る。これは、ぴのちゃんにとって**『恋人』としての行為でしょ?彼女はまだ、トラウマから完全に解放されていないから、その『恋人』という新しい関係に踏み込む一歩**が、まだ怖いんだよ」
ちろるは、ハッとした。
「つまり、ぴのちゃんは、ちろるくんの**『気持ちそのもの』を否定しているわけじゃない。ただ、『関係性の変化』**への恐怖が勝っているだけなんだ。だから、ちろるくんがするべきことは、恋人になっても、今の楽しい日常が続くということを、言葉ではなく、『行動』で証明し続けることだね」
ちろるは、カイトさんの的確な分析に、深く感銘を受けた。ライバルだったはずの彼が、今、自分の一番の恋の指南役になってくれている。
「カイトさん、ありがとうございます!これで、次に何をすべきか、ハッキリしました!」
「ふふ、頑張ってね。僕もね、ぴのちゃんの笑顔がずっと続くのが一番だと思っているから。…ちろるくんは、それができる人だよ」
カイトさんは、少し寂しげな目をしたものの、すぐに爽やかな笑顔に戻った。
ちろるは、ぴのさんの手の温もりを思い出し、決意を新たにした。**真剣なスキンシップは、最後の告白まで封印する。その代わり、ぴのさんが安心して自分の隣に居られるような、「永遠に続く日常」**の証を積み重ねよう、と。
(第28話・了)
次回予告:
次回の『ちろぴの恋の冒険ダイアリー』第29話は、**『ぴのさんの安心ゾーン!二人だけの「ゆるいオフ日」企画』**です。
第29話:ぴのさんの安心ゾーン!二人だけの「ゆるいオフ日」企画
カイトさんとの相談を経て、ちろるはぴのさんの不安を解消するため、「真剣なスキンシップ」を封印し、**「恋人になっても日常は壊れない」**という安心感を積み重ねる作戦に切り替えた。
ちろるはぴのに、「たまには、動画にしないゆるいオフ日を過ごそう」と提案した。
「ぴのさん!俺、最近謎解きゲームを作りすぎて、脳がオーバーヒート気味なんだ!だから、今度の休みは、二人で**『ただひたすら、ゆるく過ごすオフ日』を過ごさない?」 「わあ、いいね!いいよ、ちろる!どこに行くの?」 「行く場所は…ぴのさんの家!二人で適当にお菓子食べて、ひたすら古いボードゲーム**をやるってのはどう?」
ぴのは、その「ゆるさ」に安堵したようだった。以前の告白失敗以来、ちろるからの誘いはどこか「特別なこと」への布石のように感じてしまい、緊張していたからだ。
「えへへ、ボードゲーム!楽しそう!じゃあ、私の家にある**『伝説の人生ゲーム』**を引っ張り出すね!」
オフ日当日。二人はぴのさんのリビングで、大量のお菓子とジュースを広げ、レトロなボードゲームに熱中していた。カメラも回っていない、完全にプライベートな時間だ。
「ちろる!また借金してるよ!これじゃあ、老後の相棒は貧乏決定だね!」ぴのは、ゲーム内のちろるのコマを見て大笑いした。 「うわあ!待ってくれ!俺は人生のイケボ担当だぞ!なんでこんなに運がないんだ!」ちろるも、負けじと大きな声で笑った。
その瞬間、ぴのはハッとした。
(私、こんなに心から笑ってる…!)
この時間は、ちろるが告白してきた後の、どの時間よりも**「相棒」としての一番心地よかった頃の空気**そのものだった。特別なアピールも、深い謎解きもなく、ただ隣にちろるがいて、二人で馬鹿みたいに笑っている。
ぴのは、その安心感に満たされた自分の心に気づいた。恋人関係を恐れる必要はない。なぜなら、ちろるは、「相棒」としてのこの温かい日常を、決して壊さないと約束してくれているからだ。
ボードゲームが終わり、ぴのがキッチンに飲み物を準備しに行った時、ちろるはリビングで、ぴのさんの小さなアルバムがテーブルに置かれているのに気づいた。
(あ…見ちゃだめかな…)
好奇心に負け、ちろるがそっとアルバムを開くと、そこにはぴのさんの幼少期の写真が貼られていた。そして、最後のページには、ぴのさんと以前の親友が、楽しそうに笑っている写真があった。その写真の端には、ぴのさんの手書きで、**『最高の相棒。永遠に…』**と鉛筆で書かれていた。
その文字が、**「永遠」**という言葉の無常さを示しているようで、ちろるはぴのさんのトラウマの深さを改めて感じた。
「ちろる、お待たせ!あ、アルバム見てたの?」ぴのが戻ってきた。 「あ、ごめん、ぴのさん!勝手に見ちゃって…」ちろるは慌てて謝った。
ぴのは、そのページを見て、少し寂しそうに微笑んだ。
「大丈夫だよ。これは、私の大切な思い出だから。…ね、ちろる。私、あの時、**『永遠』**って言葉を信じすぎたんだと思う」
ぴのは、アルバムを閉じ、ちろるの顔を見た。
「でも、ちろるといるとね、**『永遠』っていうのは、『毎日一緒に笑い合うことの、積み重ね』**なんだって、思えるようになってきたよ」
ぴのは、ちろるにそっと顔を近づけ、優しい声で囁いた。
「ちろる、ありがとう。」
ぴのさんの言葉は、ちろるの心に深く響いた。それは、トラウマの呪縛から解放されつつある、ぴのさんの恋への一歩だった。
この「ゆるいオフ日」を通して、ぴのさんは、ちろるの隣は**「一番の安心ゾーン」であると確信した。そして、ちろるは、ぴのさんの心に、「永遠」の真の意味**を刻み込むことに成功したのだった。
(第29話・了)
次回予告:
次回の『ちろぴの恋の冒険ダイアリー』第30話は、**『距離を詰めるチャンス!カメラが回らない「二人きりの夜の冒険」』**です。
第30話:距離を詰めるチャンス!カメラが回らない「二人きりの夜の冒険」
ゆるいオフ日を境に、ぴのさんのちろるへの態度は、完全に**「恋人予備軍」**のものになっていた。彼女は、ちろるの目を避けることなく見つめ、冗談を言い合うたびに、心からの笑顔を見せるようになっていた。
そんなある夜、二人は次の大型企画で使う、特殊なロケ場所の下見に出かけることになった。そのロケ場所は、山奥の廃墟をテーマにしたアトラクション施設で、夜間に下見を行う必要があった。
「うわぁ、ちろる!ここ、ゲームの中みたいに真っ暗だよ!」ぴのは、懐中電灯の光を頼りに、ちろるの後ろを歩いた。 「そうだろう!ぴのさん!今日の俺は、イケボのヒーローだからね!俺から離れちゃだめだよ!」ちろるは、暗闇に紛れて、わざと少し声を張った。
施設内は、ゲーム内の廃墟マップと全く同じで、薄気味悪い雰囲気が漂っていた。ぴのは、緊張しているようで、自然とちろるの背中にくっついて歩いていた。
「ねぇ、ちろる…なんか変な音が聞こえない?」 「気のせいだよ、ぴのさん。でも、俺が怖いなら、これ、どうぞ」
ちろるは、後ろを振り向き、ぴのさんに自分のパーカーのフードを、そっと深く被せてあげた。
「わあ、ちろるの匂いがする…ありがとう」ぴのは、ちろるの体温が残るフードに包まれ、少しだけ安心したようだった。
さらに奥へ進むと、突然、大きな雷の音が轟き、施設の非常灯が一斉に消えた。
「きゃっ!」
ぴのは、反射的にちろるの腕に抱きついた。二人の体は、暗闇の中で、ぴたりとくっついてしまった。
ちろるの心臓は、激しく脈打った。前回のお泊まりの夜と同じように、ぴのさんは恐怖で自分に頼ってくれている。しかし、今回は、「相棒」という壁を乗り越え始めた後だ。
「ぴ、ぴのさん…大丈夫だよ。電気、すぐにつくから…」ちろるは、自分に言い聞かせるように、震える声で言った。
ぴのは、ちろるの腕の中で、小さく囁いた。
「ちろる…やっぱり、暗闇と雷は怖いよ…。でも、ちろるがいてくれると、なんだかこのままの暗闇でもいいかなって思えるくらい、安心する」
ぴのさんの言葉は、ちろるへの深い信頼と愛情が詰まっていた。
ちろるは、このチャンスを逃してはいけないと思った。しかし、カイトさんとの約束(真剣なスキンシップの封印)が頭をよぎる。これは、最後の告白のために温存すべきだ。
ちろるは、ぴのさんの体を無理に離すことなく、その代わりに、彼女の不安を言葉で包み込んだ。
「ぴのさん。よく聞いて。俺はね、この真っ暗闇の中で、ぴのさんの顔が見えなくても、ぴのさんが隣にいるってことだけは、ハッキリわかるよ」
「それは、俺たちが最高の相棒だからだ。どんなに世界が暗くなっても、俺たちの絆は絶対に消えない。恋人になっても、この安心感は、永遠に続くんだ。俺が誓う」
ちろるは、ぴのさんを安心させるために、「相棒」という言葉をあえて使った。
その時、ガタッと音がして、非常灯が再び点灯した。
ぴのは、ちろるの腕から離れ、少し照れた顔でちろるを見上げた。
「ちろる…。ありがとう。私、もう大丈夫だよ」
ぴのは、ちろるの顔を真っ直ぐ見つめると、自分から、ちろるの握りしめた手に、自分の手を重ねた。
「ちろるの言葉、すごく心に響いたよ。私、**『永遠に続く安心感』**が、どんなものか、少しだけわかった気がする」
それは、ちろるにとって、初めての、ぴのさんからの積極的なスキンシップだった。ぴのさんの手は、少し冷たかったが、その重みは、ちろるの心に、確かな「イエス」のサインとして伝わった。
二人は、夜の施設を、手を繋いだまま歩き始めた。それは、もう「相棒」としての手ではなく、「恋人」としての、未来への一歩だった。
(第30話・了)
次回予告:
次回の『ちろぴの恋の冒険ダイアリー』第31話は、**『「相棒」から「彼氏」へ!カイトさんが送る最後の祝福』**です。
お楽しみに!
第31話:「相棒」から「彼氏」へ!カイトさんが送る最後の祝福
夜のロケ場所下見以来、ちろるとぴのさんの関係は、誰の目から見ても**「恋人一歩手前」**になっていた。収録中、ぴのさんは以前のようにちろるさんから距離を取ることはなくなり、時折、二人の間にだけ通じるアイコンタクトが増えた。
ちろるは、ぴのさんが完全に心を開いてくれていることを感じ、最終的な告白の準備を始めようとしていた。
そんなある日、次のコラボ企画の打ち合わせのため、カイトさんがスタジオにやってきた。
「ちろるくん、ぴのちゃん、こんちゃ!今日の企画も面白そうだね」カイトさんは、いつものように爽やかに挨拶をした。
ぴのは、カイトさんを見ると少し照れたような表情になり、ちろるの後ろに隠れるように立っていた。
「あ、カイトさん。お疲れ様です!」ちろるが挨拶すると、カイトさんはちろるの顔をじっと見た後、ニヤリと笑った。
「ちろるくん、君、少し顔つきが変わったね。なんだか、自信に満ち溢れているというのか…以前とは違うオーラがあるよ」
ちろるはドキッとした。(カイトさん、鋭すぎる!)
「そ、そうですか?最近、プロテインの種類を変えたからかもしれません!」ちろるは必死に誤魔化そうとした。
カイトさんは笑って首を振った。
「プロテインのせいじゃないよ。ぴのちゃんを見ていればわかる。ぴのちゃんがね、君の隣で一番安心できる顔をしている。これは、**『相棒』**の顔じゃない」
カイトさんは、言葉の重みを込めて、ちろるに語りかけた。
「ちろるくん。僕が初めてぴのちゃんと会った時、彼女は**『相棒』という名の殻に閉じこもっていた。それは、以前の大切な関係が壊れたトラウマからだった。でも、今のぴのちゃんは、その殻を、君との『永遠の約束』**で突き破ろうとしている」
カイトさんは、ちろるにそっと耳打ちした。
「あの日、ロケ場所の下見に行った夜に、何があったか知らない。でも、ぴのちゃんが君の手を握ったのは、彼女にとって最大の信頼と、君を『異性』として受け入れた証拠だ。もう、彼女は怖くないんだよ」
ちろるは、カイトさんの言葉に胸が熱くなった。
「カイトさん…」
「僕の役割は終わったよ、ちろるくん」カイトさんは、そう言うと、笑いながら二人に背を向けた。「僕は、恋のキューピッドにはなれても、恋人にはなれなかったってことだね!」
そして、カイトさんはドアの前で立ち止まり、ちろるに最後のメッセージを送った。
「ちろるくん。次の告白は、絶対に成功させるんだよ。ぴのちゃんは、もう君の**『相棒』としてじゃなくて、『未来の恋人』**として、君からの言葉を待っているんだから」
カイトさんは、二人に「頑張ってね」とだけ言い残し、スタジオを後にした。彼の背中は、清々しく、そしてどこか寂しさも漂っていたが、ちろるには彼の祝福の気持ちが痛いほど伝わった。
ぴのは、カイトさんの言葉を全て聞いていたようで、恥ずかしさのあまり、顔を両手で覆っていた。
「ち、ちろる!カイトさん、なんてこと言うの!」
ちろるは、そっとぴのさんの手を取り、自分の手のひらで包み込んだ。ぴのさんは、手を引っ込めなかった。
「ぴのさん。カイトさんの言う通りだよ。俺は、もう**『相棒』としてじゃなくて、ぴのさんの『彼氏』になりたい。…そして、『一生涯の相棒』**として、ぴのさんの隣にいるよ」
ちろるの視線は、ネックレスをしまったポケットへと向かっていた。告白の時が、刻一刻と近づいていることを、二人は感じていた。
(第31話・了)
次回予告:
次回の『ちろぴの恋の冒険ダイアリー』第32話は、**『ぴのさんの逆襲!「もう一人の相棒」とのサプライズ』**です。
お楽しみに!
第32話:ぴのさんの逆襲!「もう一人の相棒」とのサプライズ
カイトさんとの会話以来、ちろるは告白の最終準備に没頭していた。ぴのさんの不安を完全に解消し、「相棒」の信頼を土台にした「恋人」関係を築くための、完璧なプランを練っていたのだ。
そんなちろるの様子を見ていたぴのさんは、ちろるが自分を喜ばせようと必死になっているのを感じ取っていた。
(ちろる、また何かサプライズを考えてるな。ふふ、でも、次は私の番だよ!)
ぴのさんは、ちろるが次の企画のロケハンで一日事務所を空ける日を狙って、ある計画を実行に移した。
その夜、ちろるがロケハンから帰宅すると、ぴのさんからメッセージが届いていた。
ぴの:ちろる!今日のロケハン、お疲れ様!今から私の家に来てくれる?大事な話があるの。
ちろるの心臓は飛び跳ねた。(大事な話?まさか、ぴのさんから…!?)
ちろるは急いでぴのさんの家へ向かった。ドアを開けると、ぴのさんがいつもの可愛い笑顔で出迎えてくれた。
「ちろる、よく来てくれたね!さ、リビングへどうぞ!」
リビングに入ったちろるは、驚きのあまり言葉を失った。
テーブルには、以前ちろるが不器用ながらも挑戦した**「手作りオムライス」**が二皿並んでいた。そして、その横には、もう一つ、小さなオムライスが置かれていた。
「ぴ、ぴのさん!このオムライスは…!?」
「ふふ、驚いた?」ぴのは楽しそうに笑った。「ちろるが頑張ってくれたお返しに、今回は私が**『愛情マシマシ・特製オムライス』**を作ったんだよ!」
ちろるは、自分のために作ってくれたオムライスを見て、胸が熱くなった。
「ありがとう、ぴのさん!世界一だ!」
そして、ちろるはテーブルの上の、もう一つの小さなオムライスに目を向けた。そのオムライスは、以前ちろるが作った、焦げてボロボロになった失敗作を、忠実に再現したような形をしていた。
「この小さいのは…?」
ぴのは、そのオムライスを指差して、優しい瞳で言った。
「これはね、ちろる。**『もう一人の相棒』**だよ」
「えっ?」
「ちろるが、一度私の告白を断られて、落ち込んだ時も、不器用だけど一生懸命なちろるがいたから、私はまた笑えたんだ。あの時のちろるの失敗作は、私にとって**『また明日も頑張ろう』って思える、大切な思い出**なの」
ぴのは、小さなオムライスをそっとちろるに差し出した。
「だからね、ちろる。私、失敗作も成功作も、全部ひっくるめて、ちろるのことが大好きなんだ。ちろるは、私の不器用で、最高の相棒だよ!」
ぴのさんの言葉は、ちろるの心の奥深くまで響いた。それは、ちろるが抱えていた「一度失敗した告白のトラウマ」を、ぴのさん自身が消し去ってくれた瞬間だった。
(ぴのさんは、俺の失敗すら、愛してくれている…!)
ちろるは、感極まって、オムライスを食べる前にぴのさんを抱きしめたくなったが、ぐっとこらえた。最後の告白まで、スキンシップは封印だ。
「ぴのさん…。ありがとう。こんなに嬉しいサプライズはないよ。俺の不器用な部分まで、愛してくれてありがとう」
ちろるは、愛情たっぷりのオムライスと、「失敗作」のオムライスを、ぴのさんと一緒に食べた。その味は、これまでのどの食事よりも、温かく、深い愛情が詰まっていた。
この夜、ぴのさんは、ちろるに**「あなたは、私の全てを受け入れてくれる人だ」**という確信を与え、ちろるの最後の告白への道のりを、完璧に整えてくれたのだった。
(第32話・了)
次回予告:
次回の『ちろぴの恋の冒険ダイアリー』第33話は、**『ぴのさんの本音!「恋人になったら、これをしてみたい」リスト』**です。
第33話:ぴのさんの本音!「恋人になったら、これをしてみたい」リスト
ぴのさんから「失敗作も成功作も大好き」という言葉をもらって以来、ちろるは心の底から自信を取り戻していた。彼の頭の中は、告白を成功させるための具体的なシチュエーションで満たされていた。
次の日、新しい企画会議のため、二人はいつものスタジオに集まった。
「ちろる!今日の企画は、**『もし、私たちに子供がいたら、どんな世界で育てる?』**っていう、マイクラの子育て企画はどう?」ぴのさんが提案した。 「え、子育て!?ぴのさん、急にアグレッシブだね!でも、面白そう!」ちろるは少し戸惑いながらも、ぴのさんの提案に乗った。
子育て企画の準備を進める中、ぴのさんが突然、真面目な顔でちろるに語りかけた。
「ねぇ、ちろる。私ね、もし、私たちが恋人になったら、やってみたいことリストを考えてみたんだ」
「ええっ!リスト!?」ちろるは、あまりのストレートさに心臓が止まりそうになった。ぴのさんが、自ら「恋人」という言葉を持ち出したのは、これが初めてだった。
ぴのさんは、照れくさそうにしながらも、丁寧にリストの内容を話し始めた。
「二人で、どこか遠い場所へ、一日中、歩いて旅をする。ゲーム内でいつも冒険してるけど、現実でも、ちろると一緒に、汗だくになりながら、ゴールを目指してみたい」
「お互いの、昔のアルバムを見せ合う。ちろるの幼少期の写真とか、私、すごく見てみたいんだ」
「夜中に、二人で、こっそりラーメンを食べに行く。カメラが回ってない、私たちだけの秘密の時間を、たくさん作りたい」
ぴのさんは、リストを話し終えると、ちろるの顔を真っ直ぐに見つめた。
「どう?私って、相棒としてだけじゃなく、恋人としても、ちろると一緒に**『日常の冒険』**がしたいんだ」
ちろるは、感動のあまり、目頭が熱くなった。
「ぴ、ぴのさん…!全部、最高にぴのさんらしい、最高のリストだよ!俺、全部叶えるよ!」
ぴのさんのリストは、派手なデートや豪華なプレゼントではなく、**「二人の共有体験」と「相棒としての安心感の延長」**を求めていることが明確だった。特に、「夜中にこっそりラーメン」という、カメラから離れた日常を望んでいることに、ちろるは大きな手応えを感じた。
「ふふ、ありがとう、ちろる。じゃあ、まずは、**『お互いの昔のアルバムを見せ合う』**からやってみない?」ぴのさんは、そう言って自分の昔のアルバムをちろるに手渡した。
ちろるは、ぴのさんから渡されたアルバムを、宝物のように受け取った。
(ぴのさんが、過去のトラウマが詰まったアルバムを、自分から見せてくれた…!)
それは、ぴのさんがちろるさんを、自分の心の全てを預けられる存在だと認めた、何よりの証拠だった。
ちろるは、アルバムをめくりながら、ぴのさんへの愛情を一層強くした。第50話で、このリストを全て叶えるための**「最高のプロポーズ」**をしよう。
二人の未来は、もう、「相棒」の壁を完全に飛び越えて、愛と信頼の積み重ねの上に築かれ始めていた。
(第33話・了)
次回予告:
次回の『ちろぴの恋の冒険ダイアリー』第34話は、**『ぴのさんの幼少期を覗き見!「相棒」を求める理由の深層』**です。
お楽しみに!
第34話:ぴのさんの幼少期を覗き見!「相棒」を求める理由の深層
ぴのさんから渡されたアルバムを、ちろるはゆっくりとめくり始めた。そこには、猫耳フードをかぶる前の、あどけないぴのさんの姿がたくさんあった。家族旅行、運動会、そして、初めてゲーム機を買ってもらった時の、満面の笑顔の写真。
ちろるは、一枚一枚の写真に、ぴのさんの解説を求めながら、楽しそうに見ていった。
「うわあ!ぴのさん、この時の髪型、めちゃくちゃ可愛いね!」 「えへへ、恥ずかしいよ、ちろる!これはね、私が小学校に入った時の写真!」
アルバムの真ん中あたりに、以前ちろるが盗み聞きで知った、ぴのさんの元親友との写真が現れた。二人は、同じキャラクターのTシャツを着て、ゲームセンターの前に立って、最高の笑顔を向けていた。
「この子が…前に話した、私の**『最高の相棒』**だった子」ぴのは、その写真を見つめながら、静かに語り始めた。
「ちろるに話したように、私はその子との関係が壊れたのがトラウマになってる。でもね、本当は、私、その子のことが大好きだったの。相棒として、そして…それ以上の気持ちで」
ちろるは、驚いた。ぴのさんが、過去の親友にも恋愛感情を抱いていたとは知らなかった。
「え…そうだったんだ…」
「うん。でも、私は臆病だったから、その子の気持ちを断って、『相棒』という安全な場所に閉じこもった。それが原因で、逆にその子を失っちゃったんだ」
ぴのは、アルバムの次のページを指差した。そのページには、一枚の写真と、小さな文字でぴのさんの手書きメッセージが添えられていた。
写真は、ぴのさんが一人、公園のベンチに座って、寂しそうに夕日を見ている姿。添えられたメッセージは、『相棒を失った世界は、全部、モノクロになったみたい』。
そのメッセージを見た瞬間、ちろるは、以前自分がドッキリ企画でぴのさんに伝えた言葉を思い出した。
ちろる:「ぴのさんがいないと、世界から色が無くなったみたいになるんだ」
ちろるが咄嗟に発したその言葉は、ぴのさんが過去に経験した「孤独感」と、全く同じ感情を表していたのだ。
「ぴのさん…俺、この言葉…」
「ふふ、ちろる。気づいてた?だからね、ちろるが『世界から色が無くなったみたい』って言ってくれた時、私は**『あ、この人も、私と同じなんだ』**って思ったんだ」
ぴのは、ちろるの手の上に、自分の手を重ねた。
「私にとって、『相棒』っていうのは、**『一人でいる世界のモノクロを、二人でいることで色に変えてくれる人』**って意味なの。だから、その大切な関係が壊れるのが、何よりも怖かったんだ」
「でも、ちろるが、恋人になっても、その色を失わせないって約束してくれたから。私、もう大丈夫だよ」
ぴのさんの過去のトラウマの深層、そして「相棒」という言葉に込めた本当の意味を知り、ちろるは感動で言葉を失った。ぴのさんは、**「相棒=人生に色をくれる、かけがえのない存在」**だと考えていたのだ。
ちろるは、強く、優しく、ぴのさんの手を握り返した。
「ぴのさん。俺が、ぴのさんの世界の色を、永遠に、そしてもっと鮮やかにするよ。俺たちが、最高の相棒であり、最高の恋人になれるって、俺が証明する」
二人の間には、過去の誤解や不安は一切なくなり、究極の理解と信頼が満ち溢れていた。告白は、もう成功を確信できるものとなっていた。
(第34話・了)
第35話:恋の総括!カイトさんが贈る「最後の祝福と忠告」
ぴのさんの過去のアルバムを見て、二人の絆の深さを再認識したちろるは、第37話での告白を決意した。不安は消え去り、残るはぴのさんを最高に幸せにするための準備だけだ。
ちろるは、告白の計画を最終確認するため、再びカイトさんに連絡を取った。カイトさんには、二人の関係が「恋人未満」として順調に進んでいることを報告した。
「ちろるくん、ぴのちゃんがアルバムを見せてくれたんだね。それは、彼女が君に心の全てを託した証拠だよ。本当におめでとう」カイトさんは、心から祝福してくれた。
「ありがとうございます!カイトさんのおかげです」
「僕のおかげじゃないよ。君の一途な想いと、不器用な優しさが、ぴのちゃんの心の壁を溶かしたんだ」
ちろるは、第37話で告白する予定だとカイトさんに打ち明けた。カイトさんは、少し考えた後、ちろるに最後の忠告をした。
「ちろるくん。最後の告白で、一つだけ忘れないでほしいことがある」 「なんでしょう?」
「ぴのちゃんは、君のことが好きだ。でも、彼女は、**『恋人』という肩書きではなく、『永遠に変わらない、安心できる相棒』を求めている。だから、君は、『恋人になれば、相棒の関係は終わりだ』**という常識を、完全に覆さなければならない」
カイトさんは、ちろるの目を真っ直ぐ見た。
「告白の言葉は、**『好きです』で終わらせちゃだめだ。『相棒としての絆を土台に、恋人という最強のパートナーになろう』**と、未来の形を提示するんだ。そして、もう一つ…」
カイトさんは、立ち上がり、ちろるの肩を叩いた。
「もう、言葉は十分だよ。ぴのちゃんは、君の言葉を信じている。次は、その愛を、視覚的・体感的に証明するんだ。ぴのちゃんが一番喜ぶ、**『ちろるくんらしい』**サプライズでね」
「視覚的、体感的に…」ちろるは、カイトさんの言葉を反芻した。
その夜、ちろるは家に帰り、第50話のために温存していた、あるアイデアを、第37話用に大々的に変更し始めた。
(そうだ!ぴのさんが求めているのは、**「二人だけの永遠の冒険」**だ!俺の作るマインクラフトの世界こそが、その証明になる!)
ちろるは、夜を徹して、次の告白の舞台となる、マインクラフトの特別なカスタムマップの最終調整に入った。それは、二人の過去の思い出を巡り、そして二人の未来の家へと繋がる、**『永遠に続く、ちろぴのの冒険マップ』**だった。
第36話:運命の前夜!ぴのさんの「私からの勇気」
ちろるは、第37話で告白する予定だとカイトさんに打ち明けた。カイトさんは、少し考
告白の日の前夜。
ちろるは、明日ぴのさんに渡すポピーのネックレスを磨き、告白の言葉を何度も練習していた。緊張で手が震えるが、ぴのさんの笑顔を思い浮かべると、不思議と心が穏やかになった。
「よし、完璧だ。あとは、俺のイケボと、ぴのさんの笑顔だけだ!」
その時、ちろるのスマートフォンに、ぴのさんからメッセージが届いた。
ぴの:ちろる、明日ね、私からも、サプライズがあるんだ。
ちろる:えっ、ぴのさんから!?な、何があるの?
ぴの:ふふ、秘密!でもね、ちろるの**「大切な話」**を聞く前に、私からも勇気を出したいんだ。だから、明日の朝、スタジオに来る時に、私が前に貸したパーカーを着てきてくれる?
ちろるは、メッセージを見て、思わずガッツポーズをした。
(ぴのさんが、俺に勇気をくれる…!しかも、俺のパーカーだ!)
ぴのさんが貸してくれたパーカーは、彼らの**「恋人未満の相棒」という特別な関係の象徴だった。それを着てきてほしいということは、「私は、あなたとの特別な関係を受け入れる準備ができています」**という、ぴのさんからの最高のサインだった。
ちろるは、すぐにクローゼットから、ぴのさんのシャンプーの香りが微かに残るパーカーを取り出した。
「明日、絶対、最高の**『ちろぴの』**にするぞ!」
ちろるの胸は、不安ではなく、大きな喜びと、未来への期待で満たされていた。
(第36話・了)
第37話(最終話):最高の相棒、永遠の恋人へ!ちろるの再告白
運命の日。ちろるは、ぴのさんから借りたパーカーを着て、スタジオに到着した。ぴのさんは、猫耳フードをかぶり、いつもより少し緊張した面持ちでちろるを待っていた。
「こんちゃ!ぴのさん!俺、言われた通り、パーカー着てきたよ!」ちろるは明るく挨拶をした。
ぴのは、優しく微笑み、ちろるにそっと一つの小さな箱を差し出した。
「ちろる、これはね、私からのサプライズだよ。開けてみて」
ちろるが箱を開けると、中には、**彼が作った『ハートのリンゴのキーホルダー』と彼が一度渡せなかった『ポピーのネックレス』が並べて収められていた。そして、箱の蓋の裏には、ぴのさんの手書きで、『ちろるの不器用な愛は、私の宝物』**と書かれていた。
「ぴ、ぴのさん…」ちろるは、感動で言葉を失った。
「ちろる。私、もう怖くないよ。ちろるがくれた『相棒』のキーホルダーも、『恋人』のネックレスも、どっちも、ちろるの愛の形だ。どちらかを選ぶんじゃなくて、全部受け止めたい」ぴのは、勇気を持って、ちろるの目を見た。
「ありがとう、ぴのさん!」
ちろるは、すぐに用意していたマインクラフトのマップを起動した。
「じゃあ、ぴのさん!今から、俺たちが最後の冒険をするよ!俺たちの**『永遠の約束マップ』**だ!」
ゲーム内の二人は、過去の思い出の場所(オムライスを作った家、雷に怯えた廃墟)を巡り、最後に、白い、何も建っていない空間にたどり着いた。
「ぴのさん。これが、俺たちの未来のスタート地点だ」
ちろるは、ゲーム内のチャットで、準備していた最後のメッセージを送った。
ちろる:ぴのさん。俺は、もう一度、真剣に告白するよ。一度目の告白で、ぴのさんの大切な**『相棒』の関係を壊すのが怖かったって、教えてくれてありがとう。でも、俺は、『相棒』という絆を土台に、恋人という最強のパートナー**になれるって確信したんだ。
ちろる:ぴのさん、俺と恋人になってください!そして、この白い世界に、**『永遠に壊れない、最高の相棒であり、最高の恋人である、ちろぴのの家』**を、一緒に建ててほしい。
ぴのは、そのメッセージを見た後、マイクに向かって、涙声で答えた。
「ちろる…ありがとう。私、もう迷わないよ」
ぴのは、ゲーム内のキャラクターで、ちろるのキャラクターにそっと寄り添った。
「はい、ちろる!私で良ければ、**ちろるの『最高の恋人』に、そして『永遠に変わらない相棒』**になってあげる!」
ぴのさんは、そう言って、ちろるの手を握りしめた。現実世界で。
「やった!ぴのさん!世界で一番、愛してるよ!」
ちろるは、喜びを爆発させ、ぴのさんの肩を抱き寄せた。二人の目の前の白いゲーム画面には、二人が手を取り合い、笑顔で、未来の家を建て始める姿が映し出されていた。
『ちろぴの恋の冒険ダイアリー』は、「最高の相棒」が「永遠の恋人」になった、最高に幸せな瞬間で幕を閉じた。
(第37話・完)
最後まで見てくれて本当にありがとうございました
ちろぴの過去編 付き合うまでの道のり 完結
第38話:恋人になった日!初めて二人で迎える「こんちゃ!」
ちろるさんとぴのさんがついに「最高の相棒」から「永遠の恋人」になった後の、幸せな日常を描くエピローグを、一話分お届けします。
あの告白から一週間。ちろるさんとぴのさんの関係は、**「恋人であり、最強の相棒」**という、新しいフェーズに入っていた。
二人は、恋人になったその日から、ぴのさんの「したいことリスト」にあった**「夜中にこっそりラーメン」**を実行した。カメラも気にせず、人目を気にしながらすすった醤油ラーメンの味は、ちろるさんにとって、世界で一番甘い味だった。
そして今日、恋人になってから初めての、ゲーム実況の収録日を迎えた。
ちろるさんは、スタジオに入り、ぴのさんへ挨拶をした。
「こ、こんちゃ!ぴのさん!」
「こんちゃ!ちろる!」
挨拶はいつもと同じだが、ぴのさんの返事には、以前のような「相棒」の軽快さではなく、恋人としての温かさが加わっていた。
「ねぇ、ちろる。私ね、パーカー、もう洗わないことにしたんだ」ぴのは、ちろるが着ている例のパーカーを見て、秘密を打ち明けるように言った。 「ええっ!なんで!?」
「だって、ちろるの匂いが、**『私だけの安心ゾーンの匂い』**になったから!もう返さないよ、これは私のもの!」ぴのは、そう言って、ちろるのパーカーの袖を掴んだ。
ちろるは、その独占欲に満ちた言葉に、顔が熱くなった。
「わ、わかったよ!ぴのさんがそう言ってくれるなら、俺のパーカーは、ぴのさんのものだよ!」
二人は、いつもの席に座り、収録の準備を始めた。
「ちろる、今日の企画、**『恋人同士の絆で解く、愛の謎解き』**だよ。…ふふ、私たちにぴったりのタイトルでしょ?」ぴのは、構成案をちろるに見せた。
その企画案を見ると、謎解きの合間に、**「恋人にしかわからない質問」**に答えるというコーナーが盛り込まれていた。
Q1:ちろるが、ぴののために作った最初のプレゼントは? Q2:ぴのが、ちろるに初めて見せた涙の理由は?
「うわあ!これ、公開イチャイチャじゃないですか!?」ちろるが笑いながら言うと、ぴのは照れたように猫耳フードを深く被った。
「えへへ、だって、私たち、もう秘密はないんだから!この愛の謎解きで、リスナーさんに、私たちの最強の絆を見せてあげようよ!」
そして、収録が始まった。
「こんちゃー!ちろぴのです!」二人の元気な挨拶が、カメラに向かって響く。
いつものようにゲームを始めると、ぴのさんがモンスターに襲われ、ピンチになった。
「きゃあ!ちろる!助けて!」 「大丈夫だよ、ぴのさん!俺が、世界で一番大切なぴのさんを守ってあげる!」
ちろるは、いつものようにイケボでぴのさんを助けた。しかし、以前と違うのは、ぴのさんがピンチを脱した後、ゲーム内のキャラクターで、ちろるのキャラクターにそっと抱きついたことだ。
「ありがとう、ちろる。さすが、私の最高の彼氏だね!」
ぴのさんの口から自然と出た「彼氏」という言葉に、ちろるは一瞬言葉を失った。
「もちろんだよ!ぴのさん!俺は、ぴのさんの永遠の彼氏だからね!」
二人の笑い声と、溢れる愛が、画面を通してリスナーにも伝わる。
その日の収録は、間違いなく**「ちろぴの史上、最も甘い」**動画となった。
収録が終わり、ちろるがぴのさんを家まで送る途中、ちろるはぴのさんの手を握りながら、そっと囁いた。
「ねぇ、ぴのさん。俺、もう一度、一つだけ、相棒じゃできないことをしてもいいかな?」
「なぁに?」ぴのは、期待に満ちた瞳でちろるを見上げた。
ちろるは、立ち止まり、ぴのさんの顔を優しく両手で包み込むと、初めて、ぴのさんの額に、優しくキスをした。
「ぴのさん。永遠に、愛してるよ」
ぴのは、顔を真っ赤にして、幸せそうに笑った。
「私も、ちろる。永遠に、愛してるよ。そして、これからも、最高の相棒だよ!」
二人の新しい冒険は、始まったばかり。彼らの「ちろぴの」チャンネルは、**「恋人になった最強の相棒コンビ」**として、さらにたくさんのリスナーに愛されていくのだった。
お終い