能力がすべての世界で主人公レオは奮闘する。仲間を求め、希望を抱く。
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目次
薄闇世界を超えていけ
能力がすべての世界。1〜100のレベルの中での上下関係。
な世界です。
今日、俺は歩いている。桜の舞う坂道。生まれて初めて桜を「美しい」と思ったのかもしれない。俺は今まで、家族と呼べる存在がいなかった。孤独。幼かった俺には重すぎた感情。そのすべてをここで、洗い流す。
新学期特有の騒がしい教室。1ーE。ここが俺の教室になる。学校は全寮制だ。卒業するまでは住むことができる。家も売り払った。
チャイム音。
「ご入学おめでとうございます」
「早速ですが、行事について説明します。学年末に私立シュプリーム学園との対抗戦があります。準備するにあったっての注意です。一年生は第1実戦室が使えます。使用するときは今日これから決める班で行動するようにしましょう」
班を決めるか。嫌だな。あの頃はまだ10にも満たなかった。クラスの中で一人だけ残った孤独。誰にも誘われなかった辛さ。思い出してしまう。
どうせ今回も俺一人、残るだろう。希望も持っていない。
「おい、組もう」
は?は?はは?はあああああああああ?
いま、俺は話しかけられた。あまりのイレギュラーに頭がくらむ。
やっとの思いで頷いた。
「入れて」
二人が入ってくる。合計4人、班ができた。他の班も次々に決まっていく。
「その班は、卒業までの3年間、ずっと変わりません」
3年間ずっとこの方々か。いいかもしれない。
俺は、素直に嬉しさを噛み締めた。
初です。結構たどたどしいとは思いますが、読んでくださった方ありがとうございます。
始まりの日
続きです
放課後、俺達は第1実戦室にいた。俺は壁にもたれて傍観している。
「そこどいてぇえええ」
明らかに不慣れな身体強化により、足が強くなりすぎて歩くだけでロケットみたいに吹っ飛んでいるやつ、もろにぶち当たって吹っ飛んでいるやつ、タライが落ちてくる現場。
「ほんと狭すぎるよな」
班のメンバー、ルガが言う。同感だ、狭い。100人は優に超える人数が能力を使うための部屋。もう少し余裕を持った広さがよろしいと思う。
「おい、お前ら出ていけよ」
Eクラス(略してE)の面々がAのやつらに脅されている。
「ここは俺達みたいな優秀な人間が使うための場所だ。お前らは狭い教室で十分だな」
一瞬にして険悪な雰囲気に包まれる。この学園では日常茶飯事らしいが、上のクラスのものが下のクラスのものに立ち退きを要求することが多々あるようだ。しかし、根性が素晴らしいEの面々は負けずに睨み返す。
「いや、ここは誠実で向上心に満ちた人間のための場所だ。君たちが他人を立ち退かせる資格はない」
ソーダのコール。団結した「そーだそーだ」が実戦室中に響く。
「わからせてやるよ」
真っ白な光が炸裂した。反論した|Eのやつ《キルさん》に光が迫る。キルが悔しそうに目を閉じた。動いた、体が勝手に。攻撃の速度より早く対象の間にはいりこむ。
「シールドオオオオ」
使ったことのない技。見様見真似のうろ覚え。でも、でも。守れる。
__バァァァーーーーーン__
弾き返した。光は勢いを失い、消滅する。
「あり得ない.........。俺の攻撃がなぜ跳ね返る」
蒼白な顔をしたAの奴らは、速やかに退散していった。
一方俺は、力を使い果たしてへたりこんだ。安堵が襲う。
「レオ、強すぎないか?」
ルガが問う。たしかにそう思うだろう。表向きはかなりの低レベルの弱者、として生きているから。そう生きると決意してはや5年。その決意は貫いてきた。
「あいつら、、、、何様だと思って」
まだ怒りがおさまらないキルはぶつぶつと呟く。その呟きに突っ込む力も、同調する力も、使い果たしてしまった。完全な回復には数日かかるだろう。それまで俺は、寝るとしよう。
そう考えて、俺は意識を手放した。
読んでくださってありがとうございました。
3 仲間の存在
沈む。苦しい。
俺はまぶたを上げた。苦しい夢の断片が記憶の端に残っている。
「起きた」
レガの声。俺は意識を完全に取り戻したようだ。
「大丈夫?」
勇敢キルが問う。俺は小さく頷く。
「いつ?」
問うてみる。かなりの時間が過ぎている気がする。
「お前が倒れてから5日後だ」
5日か。そこそこ寝てたな。
「Aのやつらは、逃げたけど、しっかり叱られてた」
キルが晴れ晴れという。それにしても、この方々はなぜここにいる?まだ、朝早いはずだが。
「なんでここにいる」
「え?ちょっと様子をね」
キルは言うが、ルガはそっぽを向く。
「ルガが君の首絞めてたよ」
「は?」
何してんだこいつ。
「締めてない!!心配で心配でお札を首にまこうとしただけだ!!」
要注意人物だ。これからも注意しておく必要がある。
「じゃあ、そろそろ行く。明日は学校来いな」
二人は出ていった。
二人は多分俺が起きるのを待っていた。ルガは御札を首に巻こうとするほど心配してくれたらしい。家と言って首を絞めるのはやめてほしいけど。
でも、俺は嬉しかった。待っててくれた。十分すぎる事実だ。俺一人、苦しむわけじゃない。俺一人で抱え込まなくていい。
嬉しかった。
ありがとうございます!
【4】戦いの合図
俺は一週間ぶりに教室に足を踏み入れた。倒れて回復してから休みが2日ありこの次第だ。まだ、入学したばかりでそこまで長くいたわけでもない教室。しかし、どこか懐かしい。
「レオ!!ちゃんと御札は持ってきたよな!!」
御札にこだわるルガ。曖昧に笑って誤魔化す。
「レオ君!御札は首に巻いちゃだめだよ....」
事情を知るキルが忠告してくれる。俺は学校に来ただけだ。教室に入っただけだ。でも、気にかけてくれる仲間がいた。
「レーオー君!ルガ君がこの一週間御札御札うるさいんだけど!」
班のメンバーの一人、ジェニスが言う。やっぱりルガは御札に相当の執着を持っているようだ。
「うるさいよね、レノもそう思うでしょ?」
「う、ん」
無理やり頷かされてる気がする。苦笑いが.....。
--- がらがらがらがら ---
先生が教室に入ってくる。素晴らしいスピードでクラスは静かになり、立っていた連中は席につく。
「おはようございます」
「ま」と「す」の間に伸ばし棒がいくつも入る挨拶がこだまする。
「はい、今日の予定について説明します。今日の午後は、Aクラスとの模擬戦です。全員が戦う時間はな
いので、希望者だけが戦います。定員は10人程度です。模擬戦を希望する人はいますか?」
一気に教室は活気を取り戻した。傍観する声や勇猛果敢な言葉が飛びかう。
「レオ、希望する?」
「ルガはどうなんだよ」
「希望するに決まってるだろ。チャンスだよ、チャンス」
ルガが戦うなら俺も戦いたい。しかし、心は揺れていた。
「希望する人は挙手をお願いします」
パラパラと手が上がる。ルガに至っては手を先生に向かって振っている。
「あと2,3人お願いします」
俺は、俺は、俺は。守りたい。このクラスの連中を。班のメンバーを。
守れるほどに本当の強さを持ちたい。
俺は手を上げた。
ルガが意味不明な目線を送ってくる。
「はい。それではこの10人でいいでしょうか?では皆さんよろしくお願いします」
俺は戦うことになった。
【5】模擬戦
前の分を読まないとわからないかも
午後までずっと心臓が波打っていた。手を上げた事自体緊張物で、上げる前から鼓動が激しかった。そして、今。Aクラスに2人が敗れている。次の試合が俺の試合。ちなみに、ルガは俺の次の試合だ。
負けた。クラスメートが負ける場面は本当に気持ちが悪い。
対して3連勝中のAクラスは活気に満ちて、野次を飛ばしてくる。
俺は実戦室に立った。この戦いでは、相手を怪我させてはいけない。ボーダーラインはかすり傷。それ以上はアウトだ。怪我させずに地面に倒す。それなりに難しい課題だ。
「開始」
相手は文句無しに強い。それは戦う前から知っている。では、どう戦うか。真正面からは無理だ。となれば、相手の隙をつく。それが、今現在の俺の戦い方だ。
迫りくる水の直球。俺は少しの動作でかわし、少しずつ近接戦に持ち込んでいく。焦りを感じたのか、相手は能力で剣を生成する。なら、こっちも同じように対応する。俺は波動系の能力をもつ。剣は振るたびに衝撃派を帯びる。
先制攻撃。俺はスピードを重視した一撃を加える。剣で受けられるが問題ない。これで相手に一気に近づくことができた。右をかする水剣。素早くかわし、攻撃を繰り出す。俺も相手も疲労が著しい。
これで、終わりだ。
俺は魂を乗せた一撃を加えた。剣自体は受け止められたが、衝撃波によりAクラスの相手は吹っ飛ぶ。
--- 俺の、勝ちだ ---
気づいたときには周りはEクラスの面々の奇声に包まれていた。絶叫には喜びが含まれている。俺はひっそりと元いたところに戻る。目立ちたくはない。
でも、やっぱり、本当は、嬉しかった。
続く試合でルガは圧勝し、軌道に乗ったEクラスは勝ち試合を連発。脅威の喜びに包まれて模擬戦は終了した。
あのAクラスを滅した狂気が教室に充満している。どうやら俺はその立役者らしく、多くの人に称賛の声をかけられた。そこまで話したこともない人に褒められ、称えられる。
その不思議さとシンプルな嬉しさに浸った。
【6】戦いに向けた
前回の続きなので、前回読んだほうがわかりやすいと思います!
日常回です。大きな進展はありません。
この間の模擬戦での快挙から、1−Eは圧倒的に活気づいた。Aを筆頭に他のクラスからやじがとんでも喧嘩を売られても、めげずに喧嘩を買うほどとなった。俺としては喧嘩などやめていただきたいが、本人たちは喧嘩する気満々で、手のつけようがない。
「レオ、今日はBの連中に決闘を申し込まれていてな。御札で潰してくる」
こんな物騒な会話も最近多くなっている。そして、そういった事例に比例して、Eのクラスメートはどんどん強くなっている。「そういった事例」が比例しているのかもしれない。
「レオ、今日はまじで雑魚だった」
一日の戦績を|逐一《ちくいち》報告してくるルガもどうかと思う。俺は、逐一報告してくる友人ができたのだ。
「今日の連中は俺が御札を見せただけで逃げてったんだ。これぞ秒殺だな」
ルガはテンションアゲアゲで自慢してくる。Bの諸君、逃げて正解だ。ナイス判断。心のなかで、呟く。ルガが御札を取り出したら、ほんとに危険なので逃げてほしい。
そんな会話をしながら、第1実戦室へと急ぐ。ここでは、日々、学園対抗大会に向けた特訓が繰り広げられている。
また、今はAとEが実戦室の端と端に陣取って|睨み合って《にらみあって》いるため、他のクラスはそれぞれ、どちらかについて実戦室を利用する形となる。
例えば、B、CクラスはAクラスにつき、DクラスはEクラスにつく。といったようになっている。つまり、Eクラスは2番目に弱いDクラスしか味方がいないということで、やっぱり、Dクラスも強化していかなければならない。
しかし、前のようなAクラスによるEクラスの迫害は少なくなっており、今は比較的平和だと言える。
「レオ君、あの|剣《けんorつるぎ》の出し方教えて」
班のメンバーであるレノとジェニスも実戦室を利用している。班の中で教え合う。だからこそ、Eクラスは比較的強くなってきている。班やクラスとしての結束が強いのだ。これは、Eクラスとして最も良い点だと思う。
能力で生成した剣は強度が高く、元となる能力が付与されるため、鉄製の武器よりも強く、効率が良い。そのため、剣を作り出す技は覚えておいたほうがいい。ということで、俺は惜しみなくクラスメートに剣の生成を教えている。
「おい、腰抜け!」
|時折《ときおり》、Aクラス陣営から悪意ある言葉が聞こえてくるが。Eクラスの人々は、冷静な性格の人々が多いため(例外あり)、大体がスルーされ、ただの暴言に終わる。
しかし、この行動にEクラスの人々は神経をすり減らしており、ストレスの原因にもなっているため、早めに対策が必要だ。
と、キルが言っていた。
「そろそろ一発食らわせないとな」
俺は呟いた。
「よし、食らわせよう」
ルガの反応と、ジェニスたちの武装。心強い、が。やっぱりこの人たちは喧嘩っ早いきがする。
【7】小さな争い
続きです。
「模擬戦で負けてから、毎日毎日暴言吐くのやめていただきたいが」
「挙句の果てに、この間、Eのクラスメートの金銭を巻き上げたそうじゃないか」
「許されるとでも思ってるの?」
--- シャキーン ---
俺、ルガ、ジェニス、レノ。この順番で1文ずつ喋る。平等で良い。レノに限っては喋らずに武装を整えてたけど。
「え?負ける気?」
どこまでも腹立つやつだ。この機会でぶっ飛ばす。
しかし、相手は約10人。Aクラスのリーダー的存在。俺達だけでは無理がある。そこで、俺は後ろを振り返る。
頷いてくれる仲間がいる。不敵に笑ってくれる仲間がいる。剣を構える仲間がいる。
「ほんとに平和的にしようとは思わないんですかぁ」
ルガは多分煽っている。言ってることは筋が通っているが、その言い方で言われると余計に怒るのが人間だ。Aクラスのエース、フェニックスは、顔がブルーベリーみたいになってる。さっさともとに戻すか、真っ青にしてあげるしかない。俺は呟いた。
「行け」
各地で各々が戦闘を開始する。ルガは一人で二人を相手にしている。レノとジェニスは背中合わせに立ち、守り合いながら戦っている。その中でも俺達国立学園生は、こういった場では怪我をさせずに圧倒することを心得ている。
Eクラスの面々は、小隊を作り、集団で戦っている。真正面からでは倒される弱さ。でも、団結して戦える強さ。この2つを併せ持っている。
俺も、負けてはいられない。確実に、勝つ。
気配を感じた。
振り返り、応戦。剣を受けて、押し返す。相手の木製の剣は、正直|脆《もろ》い。俺の勝利は確実だ。それでも、気を抜かず、剣の衝撃波で吹っ飛ばす。
Aクラスは俺を最大の敵として認識したらしい。集団で俺を倒そうとかかってくる。俺は、そんなんじゃ負けない。最強の仲間がいるから。
木製の剣が迫ってくる。俺は、最小の動きで避けると、|能力剣《のうりょくけん》で剣をへし折る。ついでに、衝撃波で吹っ飛ばす。
AもEもほとんどがふっとばされて、負傷宣告を受け、2階部分から見学している。Eでは俺とルガがまだ戦っている。が、Aはフェニックスのみ。
フェニックスの能力剣は、紫色だ。恐らく、ダメージをエネルギーに変えるような能力を付与しているのだろう。しかし、それさえも俺達には及ばない。おれたちは団結できるから。
紫の閃光。俺のシールド。2つがぶつかる。混ざり合う。俺は負けを覚悟した。負けないと思った。勝てると思った。絶大な自信さえも持っていた。でも、そんな自信はうち消える。
--- ザシイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン ---
能力剣の音響。そう、まだ、終わってなんかない。
「レオ、諦めるのはまだ早い」
ルガの一言で、俺の力は奮い立つ。
何も言わずとも俺達は同じ行動を取った。
フェニックスに近づき言う。
「「お前の負けだ」」
【8話】最強への道
完全日常回です。が、新しい人物が一部に登場します。
俺達は確実に強くなっている。最弱クラスのはずが今では最も優秀なクラスを|凌駕《りょうが》するほどの実力を身に着けている。もちろん、何で最弱クラスにいるのかわからないほど強い一部の連中の力もある。しかし俺は、クラス全体の能力が向上していることを感じている。
が、当然他のクラスも黙ってはいない。何かと理由をつけて突っかかってきたり、決闘を申し込んできたりと、なかなかに|物騒《ぶっそう》な毎日である。
「私立シュプリーム学園って、この国立学園に並ぶすげー学校らしいぜ」
ルガの解説のように、私立シュプリーム(以下私立)学園は、高い実力を誇っている。例年は、国立学園が大敗するのが常である。
「今年こそは私達がぶっ倒さないと|恥《はじ》」
ジェニスは決意を固めているが、言葉の端々に殺意を感じるのは気のせいだろうか。その横でレノは静かに剣を|磨《みが》いている。
俺達4人は今、実戦室の2階から階下を|傍観《ぼうかん》している。皆気合を入れて自分の能力と技、武器の使い方を磨いている。前期終了と長期休暇が迫る中、これだけの気迫に満ちていることは割と快挙なのでは、と心のなかで呟く。
また、階下ではところどころ喧嘩になっている箇所があるが、喧嘩も実力を上げるにはもってこいのアトラクションなので、今は目をつぶっておく。これを通して、仲間の大切さ、平和の大切さ、実力がわかると思う。それは、本人たちにも大きなメリットになるはずだ。
「おい、危ないだろ」
ルガが喧嘩腰になっている。相手は、同じEクラスの中でも気性が荒いバギだ。
「あ゙あん?ぶつかってきたのはそっちだろ?」
今にも盛大な喧嘩が始まりそうだ。これは止めたほうが良さそう。
「すみませんでした!俺が場所取りすぎてたのが悪いんです!」
思い切り頭を下げる。まあ事実ではあるが。
「いや、なんかごめん」
バギは困った顔をして謝ってくる。バギは根はやさしいやつなのだ。そのままバギは去っていった。バギはいいやつだ。そんなに話したことはないけれど、余計な喧嘩は止めに入ってるし、喧嘩をふっかけてくるやつがいたら徹底的に威嚇している。まあ、全部得意の風魔術でぶっ飛ばしているだけではあるが。
そんなこんなで俺は、人生で最も楽しいと感じている。俺に楽しいと感じる感覚があることに驚いている。それくらい今までは楽しくなかった、辛かったのだろう。もう、すべてを忘れて、今だけを楽しみたい。が、そうはいかないことは分かっている。
【9話】特訓のカウントダウン
この世界の情報も入ってきます。割と続き読まなくてもわかるっちゃわかると思います、が、前回を読んだほうが楽しめます。
ついに始まった夏の長期休暇。俺の中ではこの長期休暇は怠けるものとして記憶されているがそんな事は決してない。今日も、実戦室で必死に特訓をしていた。
「レオ、自分の強みをもっといかせ」
ルガは強い。ちなみに言っておくとレベルは79とかなり高めだ。だから、ルガは戦いの亡者のように強い。俺はそんなルガに練習の監督を頼んでいる。
「分かった」
俺の能力魔法は水系のものだ。水の能力から別れて別れて別れて、全く別のもののようになってはいるが。一応は水系のものだ。水は自由に形を変えられる。応用力が高いのだ。なら。
俺は波動の形を変えた。丸く広がるだけだった波動を前だけに集中させる。波動は、強く、太くなり、まるで某アニメの空気を集めて飛ばす道具の力のようになった。
「そ、そうだ。やればできるじゃないかレオ!」
ルガは必死に典型的な熱血教師みたいな喋り方を真似している。
「レオ、それ自分で考えたの?」
ジェニスの問に静かに頷く。尊敬の眼差しについついにやけてしまう。隣で休むレノも珍しく口を開いた。
「すご」
短い言葉ではあるが、レノは精一杯の尊敬を伝えている。やっぱりにやけてしまう。しかし、俺は顔を引き締める。にやけてばかりではどうにもならない。俺は用具倉庫から立派な木製の人形をとりだした。実践で使えないとこの技の本当の力はわからない。俺は、実戦形式でこの波動の威力を試すことにした。
「さがってて」
近くにいる人に声を掛ける。中には作業を止めて見物している人もいる。その中には、バギやキルも混ざっていた。
視線を固定する。人形を見る。波動のエネルギーを前方に集める。3,2,1。心のカウントダウンが0になる。
「いけ」
溜まりに溜まったエネルギーが一気に放出される。俺にも反動波が来て、後方にぶっ飛ぶ。しかし、それ以上に放出されたエネルギーは大きい。真っ直ぐな線を描いて人形に直撃した。
粉砕。
人形は砕け散った。それだけ強い力。俺に操れるかはわからない。でも、使ってみる価値はある、ありすぎる。俺は一人でガッツポーズをした。
「なーにひとりでにやけてるの。練習を続けなさい」
ジェニスに叱られた。俺は勢いよく立ち上がり、叫んだ。
「はあああアアアっっい」
自分に気合を入れるために叫んだ。ジェニスへの返事で吹っ切れる。俺は、また、練習を始めた。
【10話】最初の決戦
情報がかなりはいっています。この回はまあまあ重要です。話がまあまあ進みます。
前回や前々回読んだほうが楽しめる....かな??
9月。今日から新学期だ。と言っても寮制なのでほぼ毎日会えていたが。しかし、教室での授業は久しぶりだ。授業と言える授業はないかもしれないが、学校|LIFE《ライフ》を楽しむのもこの年齢ならではだろう。
「こんにちは。久しぶりの授業ですね。休暇中は実戦室を利用していた人も多いと思います。皆さん怪我はしないよう気をつけてくださいね」
多分新学期にふさわしい一言からはじまる。
「学校対抗大会についてです。学校対抗大会が行われるのは2月。あと半年です。私立学園は非常にレベルの高い学校です。正直、今の皆さんの実力では歯も立たないと思います。これから半年、気合を入れて頑張りましょう」
一気に悲しい話題に突っ込んでいった。確かに、今の俺達では歯は立たないだろう。半年、半年。長いようで、短い。この時間で、このクラスを、この学年を、もっと伸ばすことはできるのだろうか。
「でも、4月に比べると、このクラスの実力はかなり上がっていると思います。最弱クラスと言われ、他のクラスに見下されていた4月。今ではどうでしょう。最も優秀と言われていたAクラスをも軽く超える実力を身に着けています。皆さん、自信を持ちましょう。このままのペースで突き進めば、必ず勝てます」
それは俺も思った。これが火事場の底力というものだろうか。おそらくこのEクラスは今では最も強いクラスに成り代わっている。
「また、来月10月には、私立学園と模擬戦があります。この模擬戦で、国立学園の強さを見せつけましょう」
先生がめちゃめちゃに燃えている。多分去年も一昨年も大敗した年だったのだろう。今年こそは、という決意が感じられる。
さらに、教室が爆発的に賑やかになった。私立との模擬戦に盛り上がっている。そこに悲壮感はまったくなく、高揚感がほとんどを占めている。
「ということで、頑張りましょう」
授業が終わり、わーーーー、という全然揃っていない掛け声のもと、俺達はいつも通り、実戦室に駆け込んだ。授業が終わったら、いつもこうだ。狭い実戦室で広い場所を確保する。このルーティーンは欠かせない。クラス内で場所を取り合うこともしばしばある。まあ、基本的には平和的に場所取りをしている。
「私立学園、必ずぼこす」
「ふん」
ーシャキーンー
メンバーの士気が今非常に高まっている。
「ちなみに模擬戦は個人戦じゃなくてチーム戦らしいぜ」
初耳の情報だ。情報元のバギを捕まえて問いただす。気付かないうちにタメ口になっていた。前話したときは敬語だったため少々驚かせてしまったかもしれない。
「模擬戦ってチーム戦なのか?」
「あ、ああそうだ。クラスごとに戦って最後まで残った方の勝ちだ」
「それって魂移入法でたたかうやつだよな」
「う、うんそうだ。魂移入法で戦う」
情報は入手できた。しかし、足りない。このクラスは団結力がある。でも、戦うとなれば話は別だ。この程度の団結力だと負ける。俺の直感がそう告げている。
「ルガ、みんなを集めよう。ここからはクラス全体での練習が必要だ」
【11話】仲間の飛躍
続き、短い、日常回、情報。です!!!
俺達はクラスメートを集めて練習を始めた。各々の班で役割を組み、班同士で守り合いながら、生き残ることを目的とした練習だ。
「各チームで役割を決めろ」
ルガが大声で叫ぶ。ちなみに俺の班は、前衛ルガ、俺、後衛ジェニス、レノ、で組んでいる。
練習が始まる。前衛と後衛の得意とする分野を最も発揮できる攻撃を見つける。効果的に相手にダメージを与え、生き残る練習だ。まだ実戦形式の訓練は行わないが、レベルの高い練習だ。これにはやはり、広い場所が必要なため、今まで以上に実戦室の争奪戦が激しくなりそうだ。
小一時間が過ぎた。それぞれ役割にも慣れてきた頃で、何班かでチームを組んで模擬戦を行う班も出てきた。この練習を続けることで、攻撃力、防御力、団結力、多くの能力が向上するはずだ。
「つまんねええ」
ルガは近接戦が得意で、戦いの亡者だ。なんでも力で解決しようとするクセが有る。
「うおおおおおおおおおおおお」
そんな人物がもう一人。バギがいた。何人かを風魔術を利用してぶっ飛ばし、ふんぞり返って高笑いをしている。
「バギ、倒すのはいいけどちょっと静かに」
キルに一喝されて黙り込む。
「があああああああ」
こっちも一喝したほうが良さそうだ。
【12話】燃える直前期
次への下積みです。
ついに10月に突入した。残り1週間程度で私立シュプリーム学園との模擬戦だ。クラスの雰囲気もピリピリしている。
「実戦室狭くね」
ここで新たな問題が発生する。実戦室が狭いということだ。他のクラスも誘って模擬戦形式でチーム戦をすれば、実戦室の半分は使えるが、半分しか使えない。全面使ってまだ足りないくらいだから、かなり狭いのだ。
「はっはっはああああああ」
やっぱりこういうときは無双するやつが出てくる。ルガとバギ。二人は多くの他のクラスの人々をぶっ飛ばし、爽快に笑っている。これでは他の人達の練習にならないため、一旦二人を退場させる。
「おーーい。そこの二人は上から見ててくれ。問題点と課題点、改善策は後で聞く」
二人は一応クラスのことを一番に考えているようなので可愛そうだが見学してもらう。
「分かった。けど、なんで俺ら?」
「強いからだよ」
あながち嘘ではないだろう。うん。強くて話にならないからだ。
「頑張ってますね」
先生が実戦室に入ってきた。先生はなにか因縁があるのか今回の模擬戦に素晴らしい気合を入れている。今は模擬戦の最中なので、先生は端によって眺めている。
「ピピピイ」
少し間抜けな笛の音が鳴り、模擬戦が終了する。
「みなさん頑張ってくださいね〜〜〜」
珍しく先生が大声を出して去っていく。度々先生も実戦室にやってきて練習風景を見ていく。他の担任はそんなことないため、こっちの士気も高まっている。
「みんなもっと仲間を信じよう」
お互いに気づいたことを言い合って高め合うのが、このクラスのスタイルだ。
「ルガーー、バギーー、なんかあるーー?」
ルガとバギに話を聞いては見るが、特に何も言われない。ぶつぶついうルガと、めんどくさそうなバギはいいコンビだと思う。
「もう一回だ!」
誰かの一言で模擬戦が始まる。もう人踏ん張りしようと思えた。
【13話】勝利か、敗北か
戦闘回です。次回に続きます。次回はもっと盛り上げていきます!
ついにやってきたその日。今日は朝から実戦室で最終調整を行い、今に備えてきた。
「頑張るぞーーー!」
誰かの掛け声。
「おーーー!」
自然と溢れ出る決意の声。今、俺達は高揚感に包まれている。開始30分前、俺達は|魂移入《こんいにゅう》を行う。人形に意識を移入させる。この技術は一部の能力を持つ人間にしかできないため、専門の業者が存在する。
違和感はまったくない。まるで自分の身体であるかのように自由に動くことができる。見た目も本物にそっくりになるようにできているため、仲間の判別も容易にできる。
この今までに経験したことのない高揚感。心臓の鼓動。今、始まる。
「開始」
放送で合図が流れる。ステージは近隣の山ひとつ。隠れ場所も豊富にある。しかし、その分相手を倒すことは難しくなる。
俺達はクラスを2つに分け、15人程度の小隊を組んで移動する。
「襲われたら、いつもの班で散らばってほしい!」
一人にはならないでほしい。状況の確認と、効率の観点から、大人数でいるほうが有利だ。
俺達は順調に生き残る。一人の犠牲も出さずに開始から2時間が過ぎた。
「これ以外と余裕じゃね?」
そんな完全に油断した声も聞こえる。Aクラスの小隊も油断している様子だった。他のクラスの小隊に出くわしても今日は喧嘩などしない。これは国立学園の名誉にも関わってくるからだ。
ときおり笑い声も聞こえてくる。俺も周りと雑談を始めた。
--- ダアアアアーーーーーーーーーーン ---
能力を放出する音。一人のクラスメートが倒れた。この身体は本物ではないとはいえど、仲間が倒れる姿は心臓に悪い。
「だれだ」
ルガが問う。能力剣を握っている。俺も能力剣を作り出す。
「私立シュプリーム学園、フィリアス・ベニーだ」
やけに気取った声が聞こえてくる。どうやら相手は少人数のようだ。推定人数は5、6人といったところだろう。
「俺はな、ルガっつーんだ。覚えとけよ」
一気に緊張感が増す。ルガは能力剣を突き出すと、力を放出した。黄色く、明るい閃光が、ベニーに直撃した。あっけなくベニーは退場した。
「ふん」
目をギラギラさせてルガがうなる。残りの相手はあっという間に逃げていった。
「油断大敵だ。油断するな」
一応声をかけておく。人間は指示があれば安心するらしい。指示と言えるかは怪しいけれど。
「3時間たった」
ジェニスが告げる。終了まであと3時間。半分が過ぎた。
--- ガサ、ガサガサガサッ ---
振り返る。
刹那、耳元を緑の閃光がかすめた。
「危ない!」
叫んでは見たがもう遅い。乱闘が始まった。敵味方入り乱れ、能力剣でうちあう。力をぶつけ、弾き飛ばす。
迫りくる能力剣。俺にはスローモーションのようにはっきりと見えた。最小の動作でかわし、斬りかかる。衝撃波をまとわせ、ぶっ飛ばす。
「班から離れるな」
まじで一人にはならないでほしい。一人での行動はこっちにとって不利だ。
応戦に向かう。苦戦を強いられているジェニスたちの下へ走る。
強い衝撃波を飛ばす。能力剣で薙ぎ伏せる。敵を倒す、倒す、倒す。本物の肉体ではないけれど、手には嫌な感触が残る。それをも忘れようと剣を振る。
なんとか持ちこたえた。何人かは逃がしたが、ほとんどを倒した。相手の人数は約20人、よく勝てたと思う。しかし、こっちの損失も大きかった。10人が退場し、残りは5人。損失は大きすぎた。
「第2小隊に合流しよう」
指示を出し、隠れながら走る。ルガの息はすでに上がっている。なら、多くの人が疲労しているに違いない。もう一つの小隊の位置はおそらく山頂付近。そこまで一気に駆け抜ける。
「大丈夫?」
聞いていく。一人でも走れないようなら歩く。が、みんな大丈夫そうだったので、走り続ける。
「あ、あれじゃね」
ルガが見つけた。第2小隊は残りが3人とほとんどが退場している。
「おーーーーーい」
みんなで叫ぶ。自然と息も合う。バギが右手を上げた。
合流した。合計人数は8人。これでも少ない方だ。しかし、走る。山頂に向かって走る。駆け抜ける。このまま、ずっと。
途中でぶつかった私立の小隊は一網打尽にしていく。怒涛の勢いで駆け上がる。上へ上へ。
「ついた」
ジェニスが控えめに告げる。残り時間は1時間。この時間の中で、生き残る。ひとりでも。多く。
「残りの人数は約20人ほど」
「それ、数えたの?」
「なわけないでしょ。聞いたの」
一喝される。どこで仕入れてきた情報かはしらないが、おそらく正確だろう。俺は仲間を信じることにした。
「みんな、まだまだこれからだ」
【14話】山頂決戦
続きです。一回前は読んだほうがわかりやすいと思います
グロくはないです
「油断するな!あと1時間で終了だ」
山頂付近で点呼する。8人、いる。相手は20人。攻撃してくる相手をなぎ倒す。能力剣に付与した能力は、もう、尽きそうだ。30分程度、そうしていた。こちらから先制攻撃はしない。
10人ほど倒した。残りは10人、こっちの陣営は5人。
--- ガサガサ ---
振り向いた先には、私立学園のエース格の人物、ザール・シルバーがいた。
「こっちは10人いる。決戦だな」
余裕の笑みには、あざけりが多く含まれていた。その瞳は、俺達の闘志に火をつけた。
「行くぞ」
誰かの一言で、切れた。それまで保たれていた平和の糸が。
入り乱れる乱闘。あちらこちらで斬りあい、飛ばし合い、投げ合う。
耳元をかする能力剣。付与された能力により、やけどを負う。本物の肉体ではない。が、不安だった。
その矢先、ジェニスが退場した。
いつも通りに戦いたい。しかし、今の俺にそんな余裕はなかった。仲間が倒れていく。仲間が消えていく。その仲間を、俺は、守れない。
能力不足。今まで何度も感じてきたそれに、今までで一番苦しめられた。
涙目になる。辛い、虚しい。戦っていて、初めて感じた感情。苦しさも、痛みも、感じてきた。普段の生活で感じる感情。それは、戦いとは無縁のはずだった。これが、本物の肉体だったら、色んな人が、この世から消えていた。ジェニスだって。俺が、消した人間もいたはずだ。
俺は、誰かを消したいわけじゃない。勝つために、存在するわけでもない。
虚しい。
「レオ!」
必死のルガの声で、一気に現実に引き戻された。ザールとその仲間を、一人で食い止めている。
「今行く!」
今は、今だ。今は、仲間を助けたい。
衝撃波を作り出す。一点集中。放出。レーザー光線のように一直線に流れ出る。剣を振る、振る、振る。必死で、必死に。
無言の戦い。いつの間にか、他の仲間は全員退場していた。俺達二人。二人だけ。
涙が伝う。一筋、一筋が、思いだった。
「泣くのか?意気地なしだな。やっぱり誰かにひざまずいているのがお似合いだな」
微笑をたたえてザールが言う。ルガの目が一気に燃え始める。無言のオーラが、怒りを表す。
「何」
二文字の言葉だが、それ以上にたくさんのことを表現していた。仲間への侮辱に対する怒り、侮辱でしか自分を守ることのできないザールへの哀れみとあざけり。
黄色い閃光。
ルガの攻撃。ひとつひとつが重い一撃。連打。
「やっと、本気か」
楽しそうに応戦するザールに腹が立つ。
無言で戦いへの準備をする。能力剣に最大の、最高の能力を付与する。
「行くぞ」
決意表明のように告げる。俺は最大限のスピードで風を切る。
「は?」
振り返る、ザールとその仲間。ザールめがけて振った。下ろす。下まで。
「パスッ」
かすった。しかし、外れた。ザールの顔に明らかな安堵が現れた。
刹那、強大な衝撃波が生まれた。衝撃波は波のようにゆらぎ、上へ、下へ、後ろへ、前へ、動く。ザールたちの体が浮かび上がる。
「とどめ、だ」
思い切り、振り下ろす。一撃。
生まれた衝撃波は、後方へ一気に何もかもを押し流す。
「覚えてろ、よ」
ベタな負け犬の決め台詞を吐いたザールたちは、退場していった。
「残り5分。残りは俺らだけ。行こう、山頂へ」
「おう」
俺達は走り出した。山頂へ。100mほどで山頂だ。大した距離じゃない。でも、戦いを終えた俺には、長く険しいものに思えた。
「ついた」
山頂だ。
この山よりも低い山々。生い茂る深い緑の木々。流れる澄んだ青い川。どこまでも続く空。
「ここにこれて、良かった。ルガに会えて、良かった」
今の素晴らしい仲間たちに出会えたことは、俺の人生を変えた。
「うん。そうだな」
ルガの返事がシンプルに嬉しかった。最高だ。
最高の仲間だ。
鳥が美しく歌う。
戦いは、終わった。
【15話】迷い
つなぎです。
が、レオの心情の変化があります
あの勝利から、クラスはより一体感を増していた。油断の愚かさを俺も再確認した。
「勝てるんじゃね?」
しかし、やっぱり油断してしまう。勝利というものは美しくも怖いものだ。今は、Aを始めとする他のクラスとも大きな争いは起こっていない。
俺達は戦いへの気持ちを新たにした。
---
俺は迷っていた。戦うことへの|躊躇《ちゅうちょ》。戦いで解決することへの|疑惑《ぎわく》。すべてが交錯した。本当に、これで正しいのか。誰も傷つかない、戦わない。そんな道は、未来は、ないのだろうか。
正しさってなんだろう。
強さって、なんだろう。
短くてすみません。
【16話】努力次第
この前の勝利は、努力の結晶だ。
実戦室奪還の戦いから、この間の戦いまで、努力を重ねてきた。
が、俺は、行き場のない無力感に襲われていた。あれが本物の肉体の戦いだったら、多くの人が死んでいた。中には俺が殺した人もいただろう。その事実が辛かった。
ジェニスもそう。
俺は仲間さえも守れない。そんなやつに人を攻撃する、ましてやダメージを与える資格なんてない。
初めて戦っているときに感じた、虚しさ。いつも戦いのあとはハッピーエンドだと、信じてた。それはちがう。
殺された人もいれば、殺した人もいる。
それが、戦いだ。
努力次第で、強くなれる。
でも、その「強さ」が分からない。単に強いだけで、本当に良いのだろうか。
俺は、こんな世界を、変えたい。
【17話】平和なとき
日常回です。虫苦手な人は読まないほうがいいかもかもかも知れないです.............。
ちょっと虫に関することが多いです
大きなイベントも終わり、残すは学年末の対抗大会のみとなった。5ヶ月先の大会まではまだじかんがあり、多くの生徒が、平和な時を楽しんでいた。
「今日の食堂のメニューにさー、バッタの唐揚げあったよね」
「あったあった、イナゴとカマキリもあったよ」
平和的な会話を小耳に挟んで考える。今日は、食堂では食べないほうがいいだろうか。何が出てくるかわからない。
「すっごい美味しかった」
マジでしょうか。それは、本当?美味しいんだあれ。
「レオー」
ルガが目を輝かして走ってくる。
「食堂のカマキリがすっげーうまいから、食べに行こう!」
俺の中の警報装置がものすごい音を立てている。
「モンシロチョウもあるから食べてみようぜ」
俺の中の警報装置は、甲高く叫んで爆発した。
「君たち、モンシロチョウには醤油が合うよ」
ジェニスが謎のアドバイスをしてくださった。その横でレノはモンシロチョウの羽らしきものをつまんで微笑んでいる。
「あああぁ」
小さく息が漏れた。虫はちょっと食べたくない。偏見かもしれないし、先入観かもしれない。しかし、食べたくはない。
「レオ結構強くなったよな。今じゃ俺でも勝てるか怪しい」
それはまんざらでもない。俺自身実感していることだ。まあ、レベルはたいして変わらない。いや、変わったけど。レベルは40。平均の50〜55よりは下に位置している。
「強さってなんだろうな」
呟いてみる。声に出すことで、こころのもやもやが消えるとでも言うように。
「レベルの高さ?団結力?ただ、仲間を救おうとする思い?」
響く言葉。落ちていく言葉。俺には分からない。答えを知っている人がかならずいるはずだ。
「強さってさ、わかんないよね」
ジェニスの言葉。すっと身体に入ってくる、言葉。しっくり来る、言葉。強さは、分からない。
「分からないから、強くなろうとするんでしょ」
ひ び く。心にこだまして何度も何度も。俺達が強くなろうとするのは、不安だからだ。辛いからだ。救いたいからだ。救われたいからだ。
この世界さえ、変えてしまえば。変わってしまえば、強くなくたっていい。弱くていい。わからなくていい。戦わなくていい。
変えたい。
強く思った。
この一瞬で、思いが何倍にも膨れ上がった。
必ず、変えてみせる。
「手伝ってほしい、いつか」
我ながら意味深な言葉を発する。
「おう」
「うん」
「シャキン」
仲間は、温かい。とてもとても、素晴らしい。
【18話】緊迫の始まり
ちょっとだけ、伏線(?)が含まれます。ほんとにあっさい伏線ですが。
まあ、会話回、日常回程度に読んでください!!
3ヶ月後、対抗大会。俺達1年生の間で緊張した空気が流れ始めていた。冬休み前のこの季節、乾燥して、寒い。雪がちらつく日もある。日々、実践室に暖房機能が欲しいと願い続けている。
「ああああぁぁぁぁああああぁあ゙!!!!」
血気迫る勢いでジェニスが猛特訓を繰り広げている。相手は、壁。なんだか悲しくなってくるが、これが自分なりの練習法なんだろう。
「みんな本気だなあああっ」
集団に突っ込んでいく|狂人《ルガ》。静かに能力剣を磨く|猛者《レノ》。
「あ゙あ゙あああ゙あ゙ぁぁぁ.............」
唐突にジェニスが泣き始めた。能力剣を杖代わりに、かろうじて立っている状態だ。横で見守っているわけにもいかず、クラスの面々で近寄る。
「あのォォ、なんで泣いてるの?」
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あああぁぁぁぁぁぁぁぁ」
人外の言葉で返された。目は赤く充血している。
手のつけようが無いため、曖昧に笑って保健室送りにする。大人しく保健室へ向かっていった。珍しい。
「なんで泣いてたんだ?」
さも今気づいたかのようにいう|脳筋《ルガ》。少しかたい笑顔を返す。
「分からない」
俺ができる態度じゃないことはよく存じている。
「じゃあ、近接戦の練習でもするか」
すぐそうなれる思考はどうなっているのか非常に知りたい。
「よし」
しかし、そこで頷くということは、俺もその類なのかも知れない。
頷ける環境、皮肉れる環境。それは、幸せなのかもしれない。