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目次
歩め。ただ、進め
「はぁ、はぁ、はぁ」
自分の吐息のはずなのに、違うみたいだ。
「はぁ、はぁ、はぁ」
疲労と辛さがのしかかる。
「はぁ、、はぁ、はぁ」
この氷の道を歩き続けて約3日。まだ、あの街にはつきそうにない。
もう、何年もひまわりを見ていない。夏を見ていない。
「はぁ、、、はぁ、、、はぁ、」
助けてほしい。誰か、お願い。
星だって見えない。空が凍って、凍てついて。ただ、「空」と呼ぶだけの存在。
「はぁ、はぁぁ、は、ぁ」
足がもつれた。硬い雪に埋もれる。頬の雪を払いもせず、倒れ込む。そういえば、もう何日も食べていないな。
無理やり起きる。歩く。木の棒で体を支える。こんなところで終わるわけには行かない。私には、使命がある。かならずやり遂げなければいけない使命が。
遠くに、光が見えた。街。安堵が押し寄せた。
記憶が、途切れた。
【2】この街で
「ふぅ」
ため息も凍るこの世界。永遠に冬のこの世界。
不思議だ。なんで人は生きていられるのだろう。
この世界では、一人ひとりが異能を持つ。人の数だけ能力がある。
でも、厳しいはずだ。何年も冬なのに、なんで生きていられるのだろう。
「春が、みたいな」
最後に見た冬以外の季節は、もう遠い昔の記憶。たった一つの記憶。紅葉の葉っぱの記憶。それだけ。
何で、春が来ないの?
何度も聞いた。何度も。大人は答えない。私はもう13だ。教えてくれたっていいはずなのに。
窓を開ける。こっそりと抜けて走り出す。
この街を抜けて行こう。
氷の道を滑る。滑るほうが好きだ。でも、温かい地面を踏みしめて走るのはもっと好きだったのに。
「わーーーーーーーーー!」
思わず叫んでしまった。眼の前に人が倒れている。
「誰か、誰か来て!」
ぷつり。何かが切れた。それは私の記憶だ。
【3】目覚めのとき
街を目指す旅人目線
目が覚めたのは病院だった。無機質な天井を見た。
何故か涙がこぼれた。
あの、痛い道。氷の道。多分ここは街の病院だ。
「生きてる」
誰かが、助けてくれたのだ。死なずにすんだ。
深い眠りに落ちていった。
「姉ちゃん。お腹すいた」
「ごめん。もう少しで手に入るから」
なんどこのやりとりをしたことだろう。空腹に悶える兄弟姉妹をなだめ、働き、稼ぐ。13の子供にはかなりハードな日常だった。
「父さん母さん。いっていきます」
写真に挨拶をする。父母は、一年前から行方不明だ。出稼ぎに行ったっきり帰ってこない。
冷気を吸い込んで働く。村の炭鉱で肉体労働に勤しむ。炭鉱はどこかの金持ちが営んでいる。賃金は少ない。
しかし、村に貯められた食料で昼食が振る舞われるのがせめてもの救い、一番の目的だった。パンをこっそり持ち帰り、兄弟に食べさせる。一つの日課だった。
村の食料が尽きた。あちこちで乱闘が起きた。奪い合い。当然炭鉱は閉鎖、昼食もない。泣き叫ぶ兄弟姉妹を必死になだめ、木の根っこを茹でる。食べてもらうしかない。
一番上の姉という立場。全員を守らなければいけない。このとき、 12歳。あと少しで13。
「姉ちゃん。あとは任せて、手伝える」
少し立ち、ひとつ下の双子の兄妹が12歳になった。
「できるね?頼む。ちょっと姉ちゃん街に行ってくる。たくさん食べ物持って、星を持って帰って来る」
そう言い残して村を出た。老人ばかりで、若者の少ない貧弱な村。私は村の期待を背負って街へ出向いた。
今までの出来事が流れていく。
助けてくれた人、ありがとう。