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目次
参加者名簿
🌸・|桜井岬《さくらいみさき》
役職:市民
性格:控えめ
備考:主人公。お花見が好き
🧵糸崎高音《いとさきたかね》
役職・?
性格・近づきがたく無愛想
備考・裁縫が好き
🍀・|軌跡《きせき》よつば
役職・?
性格・活発
備考・田舎者
🐱・|猫山田萌《ねこやまだもえ》
役職・?
性格・世話焼き
備考・猫のマオを飼っている
🌙・|藤原由紀子《ふじわらゆきこ》
役職・?
性格・天然
備考・どこか抜けている
💙・|田中葵《たなかあおい》
役職・?
性格・冷たい
備考・知的な感じ
🎶・|本田楽奈《ほんだらくな》
役職・?
性格・地味
備考・親の都合で転校した
🌈・|雷雲麗羅《らいうんれいら》
役職・?
性格・暗い
備考・絵がうまい
👻・|林真綾《はやしまあや》
役職・?
性格・平凡
備考・オカルト好き
🕊️・|中田愛《なかたあい》
役職・?
性格・優しい
備考・魔法好き
#1 0日目・集められた参加者
窓から差し込む光で、目が覚めた。夜型人間になった不登校のわたしにとって、カーテンをさっとしめることは普通になった。
ネットなら、不登校でも許される。そう思う。みんな、「大丈夫?」とか、声をかけてくれる。わたしはパソコンを開き、メールアドレスとパスワードを打ち込む。アイコンメーカーで作った、パステルカラーの黄色の髪をした女の子の姿。それがわたしのパソコンのアイコンだ。イタいかもだけど、こうもしないとわたしの心は狂ってしまう。
いつものチャットサイトのリンクをクリックし、『不登校あつまれ』のチャットルームをクリック__するはずだったのに、いつのまにか違うチャットルームに訪問していた。
『不登校のみんなで人狼ゲームしませんか?』
🌸「…なんで?」
そう言い、わたしは戻るボタンをクリックして、よく見て『不登校あつまれ』をクリック___また同じチャットルームだ。
🌸「…は?」
参加者一覧には、10人のアイコンと名前。ハンドルネームだろう。そして、ダイレクトメッセージで『あなたは市民です』。
___それにしても、さっきまで眠っていたのに眠たい。時間差がすぎる二度寝を、わたしは自室のテーブルに突っ伏して寝た。
---
?「起きて。…ねえ、起きてってば」
知らない子の声で、わたしは目が覚めた。
🌸「だ…」
そう言いかけ、わたしは慌てて起き上がった。ちゃんと着替えてる。なんでだろう。もう1人も寝てる。
🌸「ここって…」
?「さあ?」
全員____合計10人が起き上がる。白い部屋に、ちゃぶ台。ちゃぶ台の上は、パソコン。
💻️「今から、人狼ゲームを開始スル。ゲームマスターはワタシ、ゲームマスターと呼べ。まずは自己紹介だが、役職は言ウナ」
役職…ダイレクトメッセージのやつかな。活発そうな子が自己紹介をした。
🍀「うちは軌跡よつば!田舎住みやけど、最近都会に引っ越してん。よろしゅうお願いするわ!」
💙「わたしは田中葵。趣味は特にないけど、中学受験しなきゃなの。さっさと終わらせたい」
つんとすまして、彼女は言った。
🌙「わたしは藤原由紀子、好きなものは…寝ることです。よろしくね」と、三つ編みの子。
👻「…はいっ、わたし、林真綾、小6。好きなもの……特にない、よろしく」と、ちょっと髪がぼさついてる子。
🐱「あたしは猫山田萌。猫のマオがペットで、世話が好き!よろしくねーっ」と、猫がプリントされているTのシャツを着た子。
🌸「わたし…桜井岬です。家族とのお花見が好きです…よ、よろしくお願いします」と、わたし。
🕊️「わたしは中田愛。魔法とかが好きです、よろしく!」と、目玉焼きの髪飾りをつけた子。
🧵「糸崎高音。趣味は裁縫、よろしく」と、二つ結びの子。
🌈「雷雲麗羅。かみなりぐもに、麗しいにラ」と、ロングの子。
🎶「わたしは本田楽奈。好きなものは、ちょっと、言いたくない」と、一つ結びの子。
💻️「よし、それではスタート」
#2 0日目の夜、そしてルール
といっても、ルールはわからない。そこで、わたしは訪ねてみた。
🌸「あの、ルールって」
💻「役職は以下のトオリ。
市民 能力ナシ。3人。
占い師 誰かひとりを市民か人狼かウラナウ。ひとり。
騎士 誰かひとりを人狼からマモル。ひとり。
霊媒師 死んだ者が市民か人狼かシル。ひとり。
人狼 夜、誰かをクウ。ふたり。
狂人 人狼の協力者。占いでは白とデル。ひとり。
何者か 勝ち方不明。ひとり。
市民陣営は市民、占い師、騎士、霊媒師。人狼をすべて追放したら勝ち。狂者は関係ナシ。人狼陣営は人狼、狂人。人狼の数と市民陣営が同数になったら勝利。何者かがいるときも、ひとりとカウント。何者かは不明」
💙「何者か、が勝利の鍵か」
葵がそうつぶやいた。
💻️「というように、人狼をあぶりダシテモラウ。個室にはトイレと風呂があり、食事場で食ベル。占いや霊媒師は、個室のポストに結果が仕込んであり、それに白か黒かがアル。騎士は、守るための厄除け御守りをそれぞれの個室に仕込んでいるが、朝になると消滅スル。
オオカミは、午前2時ごろに活動を始め、ロックされていても、オオカミは貴方を喰う可能性がアル。その際は、運命なのだと受けイレロ。オオカミはロックを解除して相談可能」
鼻にかかった甘ったるい、機械的な声。うんざりする。
💻️「それでは、0日目の夜をスタート。占い師は占い、オオカミは確認スル」
わたしは市民だから…寝とけばいいのか。
ピンクっぽい畳と内装。可愛くて嬉しい。…眠…い…なんでだろ…
あ、そっか。0日目の夜がスター…だから…
#3 1日目の昼
清々しい朝。わたしは起き、一通り準備を済ませて朝食をとった。けっこう美味しかったけど、何がなんだかわからなくて、味は覚えていない。パソコンがあるところへ行くと、すでに何名かいた。
💻️「皆さん、今から午後6時まで自由時間デス。午後6時が投票時間デスので、お気をつけて」
そう残し、パソコンからは何も発しなくなった。
🧵「|CO《カミングアウト》はいる?」
CO。自分は〜〜という役職だ、と言うことだ。
🌈🌙「「わたし」」
ふたりの声が重なる。
…有り得ないことは、ないよね?
🌈「わたしは、愛を占った。白」
🌙「わたしは岬。白だった」
白、とは市民陣営を指す。黒は人狼陣営だ。
👻「あ、そうだ。これって、何者か…第三陣営って、占われたらどうなるの?追放されたら?」
💻️「追放されたときの勝敗は言わないが、占われたら市民とデル」
どっちいも怪しくはない。
🌸「はい。わたし、一般の市民。だから、べつに追放されてもいいかな。占いとかを守るなら」
🕊️「わたしはやめておいたほうがいい」
どっちかが人狼か狂人、だよね…
🐱「ごめん、全然関係ないことなんだけど、」
萌が口を開いた。
🐱「みんな、どうやって参加した?あたし、『不登校あつまれ』のチャット参加したの。Kids−chatっていうサイトの…いつもみたいに参加してたら、こんなになっちゃった。あたし、ハンドルネームでネココって名前なんだけど」
🎶「え…?ネココ?ネッ友の?わたしはメロ」
🐱「え、メロ!?」
🌸「すご…わたし、サクラって名前なの」
🧵「それなら、わたしも。イトって名前で参加してた」
🍀「えー、すごいやん!うちはクローバーって名前や」
💙「へえ。わたしはアオカって名前だったわ、どうりで見たことがある名前」
🌈「わあ、わたしもレイ」
🕊️「へえ、そうなんだ。わたしはハルカなんだけど!」
🌙「す、すごい。わたしはアース」
👻「えー。わたしはミミ」
すごい。
イト、アオカ、レイ、ハルカとはネッ友だ。他にもこのなかに、すでにネッ友関係の子がちらほらいるみたいだ。
🎶「じゃあ、ここのみんな…全員不登校?」
気まずそうに、楽奈が言った。
わたしは…なんとなく、学校にいづらくなったんだっけ。
🎶「ごめんっ、こんなこと言って…1日目だし、自分が思う人に投票したら、いいと思う。ごめん」
楽奈はそう言って、自分の部屋へ向かった。
🕊️「え、本当にサクラ?」
🌸「うん。誕生日は3月21日だし」
🕊️「えっ、本当にサクラじゃん!あとでメールアドレス交換していい?」
🌸「いいよ」
愛とかるく会釈したあと、わたしは考え始めた。誰に投票しよう。
うーん。占い師はとっておいたほうがいいかも。なんにも言ってない…葵、とかかな。
#4 2回目の昼
起きて、またパソコンがある部屋へ向かうとすでにもういた。
だけど、いない子もいる。
💻️「追放先、襲撃先を発表スル」
ごくり、と飲み込む。
💻️「追放先、本田楽奈。襲撃先、雷雲麗羅。尚、彼女らは抹殺サレタ」
🐱「抹殺!?」
萌がそう叫ぶ。そりゃそうだ。
これは本当のデスゲームなのかもしれない。死ぬか殺すかのデスゲーム…わたしは、不登校だからという単純な理由で、何十万分の1を引き当ててしまったのだ。
なんで本田楽奈が選ばれたのか。単なる運なのか、
🎶〝じゃあ、ここのみんな…全員不登校?〟
というあの言葉のせいなのか。
楽奈を選ばなかったわたしに、そのことを推理するほどの力はない。
---
楽奈のことばっかだったが、よくよく考えれば麗羅は占い師として立候補した人だ。
麗羅は襲撃された。人狼を襲撃することは不可能だ。ということは、狂人か、占い師説が濃厚になる。第三陣営の可能性もなくはないが、このままゲームが続行しているということは…
考えれば考えるほど、どんどん頭が焼けていく。
🕊️「岬」
🌸「愛?」
愛が話しかけてきた。お昼ご飯をとろうとしたときだった。
🕊️「わたし、騎士なんだ。岬を守るから、わたしに投票しないでほしい」
🌸「わ、わかった」
だから貴方の役職を教えて、なんてことは言われなかった。
本当に騎士なのか、とかはどうでもいい。
そんな疑念なんて、頭に浮かばなかった。
---
そろそろ、時間になった。
🌙「葵は白。…麗羅が襲撃されたことでしょう?麗羅が狂人、第三陣営の可能性だってあるでしょ?」
由紀子はそれっきり、黙り込む。
👻「わたしっ」
真綾が切り出した。
👻「…霊媒、師…。楽奈は市民だった。みんな、不登校って言い出したから追放したんでしょう?」
💙「そうだよ…。でも、このゲームは抹殺される。多分、襲撃されなくても追放されなくても、」
🍀「負けたら、死ぬ…?」
ひんやりとしたものが、背筋を走った。
🧵「……負けても、死なないはずだよ……」
高音がつぶやいた。
🧵「だって、そんなに人の命が軽いはずないから…」
そう言って、高音は「行こう、葵」と言ってどこかへ行った。
🕊️「葵と高音って、感じ悪いよね」
🌸「え…あぁ、うん…」
もう、葵と高音は仲良しになっている。何を企んでいるのか、全然わからない。
それに、不登校って言い出したから、追放した。切り出した真綾が誰に投票したか不明だが、少なくとも誰か1人は、あの楽奈の発言をよく思ってない。
学校にいづらくなった。それだけの理由で、わたしは不登校になっていいのだろうか。
とにかく、人狼説が濃厚な由紀子に投票しよう。
わたしの頭の中は、それでいっぱいだった。
#5 3日目の昼
また目覚めて、パソコンのある部屋へ向かう。そこには昨日話した子がいない。
🌸「愛…?」
彼女は、「自分が騎士だ」と主張していた。
機械的な声が聞こえた。
💻️「追放先・藤原由紀子。襲撃先・中田愛」
そう言ったきり、パソコンは黙りこくった。
🐱「…愛って、結局よくわかんない子だったね」
🍀「せやな。岬…やったっけ?一緒におったやろ?」
🧵「たしかに。なにか知ってるはずでしょう?」
🌸「そんな…」
💙「たしかに、」
と言い出したのは葵だった。
💙「愛については、まだ触れてなかったね。でも、愛が人狼だと決めつける手はないでしょ?できるだけ多くの犠牲者を出さないようにしようよ。わたしは、命を最優先にしたい。そのためなら___」
🧵「葵?だって、このゲームの人はどこかに閉じ込められていると思うんだってばっ!」
💙「わたしが追放されても、構わない」
そういったっきり、葵は自室に向かった。
👻「霊媒師の結果を伝える。由紀子は人狼だった」
🐱「だと思った」
そう言って、みんな散り散りになった。
話し相手を失ったわたしは、1人で考えていた。
由紀子は人狼だったはずだ。騎士だって、愛の可能性が高い。あとは…麗羅が占い師ということもほぼ決められる。
狂人って誰なんだろう。霊媒師は真綾だし…萌、よつば、高音で他が割り振られるのかな。楽奈は結局、なんだったんだろう。あ、でも楽奈は市民だったみたい。でも、残ってるのが市民と狂人な以上、その結果はなんの役にも立たない。
はあ、わたし、殺されるのかなぁ…
---
気づけば少しばかり眠っていた。お腹はあまり空いてない。
?「ちょっといい?」
🌸「えーと…」
💙「中田葵だよ。話したいことがある」
そう言って、わたしと葵はパソコンのある部屋へ向かう。葵か高音かを追放する予定だった。
すでにみんな集まっており、葵が話をしだした。
💙「COする。わたしは、人狼です」
は、という声を必死に噛み殺した。
#6 3日目の夕方
葵が、人狼だと自ら明かした。
狂人かとも思ったけど、あまりにも露骨すぎる。かといって、普通の市民がそんなことするわけない。
🍀「は…?」
🐱「そしたら、葵に投票するよ?…葵、本当にいいのっ?」
💙「いいよ。好きにして構わない。人の心理までは変えられないから」
そう言って、冷たい目で言った。
💙「これは、わたしがみんなの命を最優先にすることを考えて、出した結論。もうひとりの人狼は由紀子だよ」
🧵「由紀子…?」
有り得ない。
人狼とCOする理由がない。
💙「確かに、人狼陣営は負ける。でも、《《人狼陣営が負けること》》と《《市民陣営が勝つこと》》は必ずしもイコールじゃない」
🌸「なんで?」
💙「第三陣営がいるから」
第三陣営…
正体も、どんな能力があるかも明かされていない謎に包まれた役職。
🐱「…葵の意見、賛成」
👻「萌っ?」
🐱「だって…狂人だから。人狼にのらないと、どのみち勝てないし…」
💙「ありがとう、萌」
そう言って、葵はわたしを睨んだ。次に騙せそうなのはわたしだ、と言うふうに。
💙「ゲームマスターだけが、この人狼ゲームの中にいない」
🧵「はっ?パソコンがゲームマスターなんじゃないの?」
💙「…高音、《《あなたが一番知っている》》はずでしょ?」
そう言って、葵の視線は高音を射止めた。
🍀「…どういうこと、まさか高音が…」
🧵「違う。本当に違うから!ずっと一緒にいたでしょ、葵!?」
💙「それも戦略のうち、といったらいいかな。だって、命がかかっている…いや」
🌸「どういうこと?命がかかってるって言い出したの、葵でしょっ?」
💙「だって、わたしは人狼なんだもの。命を引き合いに出したほうが、信頼されると思って」
あまりに手段を選ばない葵に、ぞっとする。
👻「なんでゲームマスターって確証が…」
💙「バレバレだよ。まあ、わたししか高音と交流していないから、推理するのも無理はないけど」
🐱「な、なんで高音を選んだの?」
💙「それは単なる勘。なんとなく、のほうが伝わる?」
🧵「…なんで、勘に負けなきゃなのよっ…」
そう言って、高音は葵に掴みかかった。
👻「やめろ!!」
真綾が高音を押し返す。
🍀「暴力反対や。うちは高音に一票いれる」
そう言って、よつばは声を大きくした。
🍀「誰に入れるか、投票して。せーのっ!」
満場一致で、高音を指さした。ただひとり、高音は葵に入れていた。
🍀「糸崎高音、退場やっ」
そう言って、萌も声を荒げる。
🐱「さあ、襲撃して追放した人らを返してもらおうか!」
🧵「…また、大崎中学校で」
そう言って、わたしたちは睡魔にかられ___
エピローグ
夢みたいな出来事だった。
名前も顔も知らなかった、9人の同い年の子。
その子たちと、人狼ゲームをした。
最後は、わたしたちが勝利した。
あのあと、マイページにダイレクトメッセージが届いていた。
---
ご参加ありがとうございました、サクラ様。
不登校の子たちを立ち直させるためという、国が支援したプロジェクトにご参加いただきました。参加していただいた皆様には、同じクラスになるよう調節させていただきます。
ぜひ、学校に来てみませんか?
幸せを掴めるように。
イト
---
あれから、わたしはチャットサイトを閉じた。
少しは、外の世界に目を向けてみよう。
また、人狼ゲームに誘われるかもしれないから。
---
少し窮屈な制服に体をおさめて、お母さんに声をかける。
「いってきまーす」
学校に着く。
クラスを確認する。
最後、仕切ってくれた、軌跡よつば。
ゲームマスターのことを言った、田中葵。
騎士だとわたしだけに明かした、中田愛。
チャットサイトのことを言い出した、猫山田萌。
霊媒師で高音を押し返した、林真綾。
占い師と立候補した人狼の、藤原由紀子。
不登校だと切り出した、本田楽奈。
特徴的な名前の占い師の、雷雲麗羅。
そして____
ゲームマスターの、糸崎高音。
「おはようございます、」
そう言って、教室に踏み入ってみる。
「糸崎先生っ!」
また、この10人で人狼ゲームをしよう。
もちろん、カードゲームのほうの。
これにて完結〜〜っと。
9月まで、またサイドストーリーでもやろうと思います。
軌跡よつば&猫山田萌→8月29日
中田愛&林真綾→9月5日
藤原由紀子&本田楽奈→9月12日
雷雲麗羅&桜井岬→9月19日
田中葵&糸崎高音→9月26日
みたいな予定表。
できるとは言ってないからね?
リアル人狼のリメイクに踏み入ってみたのも、旧リアル人狼を応援してくださった方々のおかげです。また、新しくなってわたしの技術も上がったリアル人狼を楽しんでいただいたら、こんなに嬉しいことはございません(いやまあ、ドラえもんとか東方のグッズとかも嬉しいけどさ、そういうことじゃないんだよ)。
もう少しばかり、サイドストーリーにお付き合いいただけると幸いです。
ご愛読いただき、ありがとうございました。
田舎者? 軌跡よつば編
「〇〇県から来た、軌跡よつばです。よろしゅうお願いします!」
転校初日、うちが自己紹介すると、クラスがざわざわとした。転校生が楽しみとか、素敵な子だとか、そういうのじゃないことはわかる。みんなの顔がにやついている。嫌な顔をしている。
それでもうちは、印象のためににっこりし続けた。
「よつばちゃん、っていうの?」
隣の席の子。「あたしは莉愛っていうの、よろしくねっ」と、軽やかで高い声で言ってきた。髪を染めて、筆箱にはカラフルなペンばかり入っている。
ちょっと、苦手だ。
でも、初めて出来た友達が嬉しくて、「よろしく!」と返事した。
---
違和感。
そんな空気が充満したのは、僅か1日のことだった。
転校してきた翌日。さっそく、うちは避けられていく。そんな時も莉愛は「大丈夫?」とか気にしてくれている。見た目で判断しないことが大切なんだろうな。
でも噂では、
「田舎から転校してきたから、イントネーションがおかしい」だの、
「田舎くさいし、古臭そう。どんくさそう」だの、
「流行りとか気にしてなさそうだよね。ダサい」だの、
そんなことばっかりが聞こえてくる。
イントネーションだって、みんなの言うことはうちにはおかしく聞こえる。
古臭いって、どういう基準なんだろう。いろいろ手伝ってきたから、どんくさいのはみんなの方。
流行りとか縛られずに、のびのびやっていきたい。ダサいって、誰が決めたんだろう。
どんどん避けられていくうちにも、莉愛は優しく接してくれた。
「そんなこと気にする必要ないって!」
「だいじょーぶ、だいじょーぶ!」
「よつばは、なーんにもおかしくないから!」
そんな言葉が、唯一の救いだった。
___噂を吹き込んだのが、莉愛だと知るまでは。
莉愛は、クラス内で相当な権力をもっていた。転校生が人気となり、クラスで自分の地位が低められてしまうんじゃないか。だから、予め転校生を低めろ。そうみんなに吹き込んでいた。そして、その転校生を助けたら、自分の地位はもっと高くなる。みんなの地位も、比例して高くなる。
そう言っていたのだ。
うちを利用して、莉愛はどんどん人気になっていく。
うちは、人気になるための『踏み台』『ただの道具』でしかなかったのだ。
---
間接的ないじめを受け、うちは学校に行けなくなった。
それから、子供用のチャットサイトで、のめり込むように活動した。ネッ友もできた。ここなら、信頼できる。真意はみえないけど、それでも肯定の言葉がほしい。
『不登校のみんなで人狼ゲームしませんか?』
そんなチャットルームを見つけたのは、不登校になってすこしのことだった。
猫好き 猫山田萌編
猫のマオを丁寧にお世話してから、あたし・猫山田萌は登校した。
あたしは、大の猫好きだ。だから、身の回りのもの全て猫にしている。
「おっはよ〜!」
そう元気よく、あたしは挨拶した。
でも、返ってくるのは、沈黙。
沈黙。
沈黙。
「…えっ」
さっきまで、楽しそうにおしゃべりしていた女子。
さっきまで、ドッジボールに行こうとしていた男子。
全員が、時が止められたかのように停止した。
そして、また賑やかな時が流れた。
「みんな、どうしたの?」
今度はあたしに注目されることもなく、ただただ無視された。
「…は?」
そうだ、|花音《かのん》。
あたしの親友。花音だったら、味方してくれる。
「かのーんっ」
「…萌?」
花音が冷たい。そういうのは、すぐにわかった。
「どうした___」
「しつっこいんだよっ!!いっつも猫のやつつけてさ!ずーっと、猫猫猫猫!もう飽きたんだよ、お前にも猫にも!!」
「はっ?」
花音はそう吐き捨てて、あたしを突き飛ばした。
頭にゴンッという衝撃が走る。
最後に視界がとらえたのは、「しつこい」と言われた、Tシャツの猫の柄だった。
---
「っ!?」
気がつけば、家だった。
今日起こった異変。
「そうだ、グルラ___」
「え?」
あたしのクラスの、メールのグループ。
スクロールしてもスクロールしても、グループが見当たらない。
通知に、赤い印がついている。
タップしてみる。
《Moe は 6年2組 から 外され ました》
もう、あのグループに入れない。
それから、あれがトラウマで学校に行けてない。
チャットサイトにずっと入り浸って、勉強なんて忘れてしまった。ひとつでも間違ったら、花音たちに笑われる。そんなふうに感じて、恐ろしかった。
『わたしも、不登校になっちゃったんだよね。だからすごく共感できる!』
『わかる、わかる。わたしもそうだった』
チャットサイトでは、みんな肯定してくれる。
あたしは間違ってない。
そんなふうに言ってくれてる。そんな感じがする。
『不登校のみんなで人狼ゲームしませんか?』
ある日、そんなルーム名が飛び込んできた。
人狼ゲーム。
あんなふうになる前までは、みんなとやっていたっけ。ふと、そう思い出す。
やりたい。
そんな一心で、考える間もなくルーム名をタップした。
オカルト 林真綾
もともとホラー小説が好きだったのもあり、わたしは好きになった。都市伝説や怪異、想像しただけでワクワクする。超能力にも憧れるし、金縛りとか一度でいいからなってみたい。
そんなことを友達に言いふらしていたわたしは、いつからか気味悪がられるようになった。
「あの子と一緒にいると、祟られる」
「おかしな子だから、あんまり遊ばない方がいい」
「超能力とか嘘っぱちなのに、信じているバカだよ」
そんなふうに言われ、気味悪がられて、いつしかわたしは心を閉ざした。そして、気を紛らわすためにもっとオカルトにのめり込んだ。ネットで手頃な都市伝説スポットを見つけて、行ってみたり調べてみたりした。別に命なんてどうでもよかった。好きなことをして死ねるなら、それが本望だった。行ってみて死ななかったら、チャットサイトの日記機能で、『ミミの心霊日記』で公開して、反応を得られた。その反応がわたしの生きる糧になり、わたしの命を天秤にかけるものだった。
心霊現象とか色々調べていると、同じことを考えている人が若干名いるもので、その人たちとオカルト同盟を組んでみたりもした。
---
だいたいの心霊スポットを制覇し、いよいよ遠めのところに行こうというところで、そのチャットルームを発見した。
『不登校あつまれ』
最近マンネリ化してきていた『ミミの心霊日記』より、ずっと面白そう。直感でそう感じた。入ってみると、みんな快く迎えてくれた。オカルト好きを明かしてみても、ちっとも否定されなかった。寧ろ、嫌というほど肯定された。
しだいにオカルトの興味は薄れ、雑談を楽しんでいた時。
『不登校のみんなで人狼ゲームしませんか?』
薄れていたオカルトの血が、ぶわっと騒ぎ出した。面白そう。ネットでこうやって募って、密室でゲームをする…最高だ。
命なんて別にどうでもいい。そこで死ねば死ぬし、そこで生きれば日記のネタになる。起死回生を狙った、すごいネタになる。
問答無用で、わたしはチャットルームのタイトルをクリックした。
魔法 中田愛編
魔法は特別なもので、たとえ存在しなくても、わたしたちの心を満たしてくれる。
キラキラした光。カラフルなビーム。
派手かつ綺麗なその見た目に、わたしの心は掴まれた。どんなことだって叶えてくれる。嫌なやつをやっつけて、宿題だってササッとやってくれて__
そんな魔法、存在するわけないのに。
---
その日もわたし・中田愛は、図書室に来ていた。いつもの漫画コーナーに、見慣れないきらびやかな背表紙がある。魔法漫画の新刊だ。
わたしは他の本を見ず、さっと貸し出しコーナーにいって借りた。この新刊、誰にも取られたくない。
今回はどんなことが起こるんだろう?それを、どんな魔法でスパッと解決してしまうのだろう?
物語、たとえ空想上だとわかっていても、魔法は魅力的に見える。わたしたちを惹きつける魔法を、作者がかけているみたいに。
「あ、愛ちゃんだぁ」
嘲笑うように、くすくすと笑いながら指を指してきたのはクラスの1軍女子。指を人に向けて指すなんて、マナーを知らないバカなのだろう。
「何?」
「いや、子供っぽいなぁって」
子供っぽい?魔法が?
そもそも、これは漫画だが、魔法学校の学園生活を描いたものだ。かなりシリアスでダークな雰囲気で、絵がたっぷりの児童書を読んで「あたし、小説読めまーす」みたいに言っているあの子らが読んでいるものとはわけが違う。
「そう?あなた達の方が、子供っぽいと思うけど。何より、指を指すってマナー違反じゃん?普通に常識がないとか、バカとか、そんなふうに思う」
と言えたら、どれだけいいんだろう。
嫌なやつをやっつける魔法なんて、ない。
それは、今のわたしが証明している。
---
それから、次第に学校に行かなくなった。何故かは知らないが。
小説投稿サイトで、魔法の小説を読んでみたり、チャットサイトでアップされた漫画を読んでみたり。一通り読み終わったあとは、チャットサイトで『オススメの魔法小説・漫画ありますか?』と募ってみたりした。ぽつぽつと読んだことのないものが出てきたが、だいたいは読んだことのあるものだ。
「うぉ?」
ある日、『不登校のみんなで人狼ゲームしませんか?』というチャットルームを発見した。魔法に包まれたみたいに、それは魅力的に見えた。
わたしはあの日のように、さっとそのリンクをタップした。