俺は馬野。馬刺しをこよなく好む中2男子だ。
ある日、俺は転生。馬になっていた…
いやなんで俺は自分の好物に転生したんだよ!
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目次
第1話 馬刺し
スマホの通知がなった。俺はラインを見る。母からだ。
『部活終わった』>
<『お疲れ様!支所予選優勝おめでとう!』
<『夕飯は今日は特別よ!』
俺は目を見張った。マジで?特別?ということは___
<『**馬刺しよ!**』
---
家に帰ると、玉ねぎの匂いがした。
「ただいまー」
「おかえり、ごはんできてるわよー」
そう言われて、テーブルを見てみると**豪華な馬刺し**!
「ヒョエエエエエエエエ」
「ちょっと!早く手を洗ってきてよ!」
妹にそう言われ、しぶしぶ洗面所へ向かう。あの妹、無駄にお節介なんだよな。
俺は馬野。中2だ。顔もスタイルも普通。成績も普通。スポーツはちょっとできるくらい。それだけだ。
まあそんな平凡な俺は、母と妹と暮らしている。父はいるが、牧場で泊まり込みで働いている。馬の飼育をしているらしい。名字も馬で、働くところも馬関連かよ、と思っている。
---
手もしっかり洗い、夕飯だ。
「いただきまーす!」
俺はまず馬刺しに箸を伸ばす。そう、俺は馬刺しが大好物なのだ!
馬刺しとは、まあ馬肉だ。もう少し詳しく言えば、新鮮な馬肉を薄く刺身状に切って、生で食べる日本の伝統的な肉料理、とのこと。おろし生姜やニンニクなどの薬味を載せ、甘口の醤油につけて食べるのが一般的だそう。
たまらず一口薬味をばーっとつけてばーっと食べる。強い旨味とほのかな甘み!口の中でとろける!これいい馬肉じゃねえか!
「うまっ」
「お兄ちゃんほんっと馬刺し好きよね〜」
そう言いながら妹もパクパク食べている。なんだよお前も好きじゃねえか。
「今日は支所予選優勝祝いだからね!じゃんじゃん食べなさい!」
そう言って母はどぼどぼ炭酸水をコップに注いでくれた。
---
と、懐かしいことを思い浮かべてしまった。俺?俺は馬野。人間“だった”。
あのあと、俺はなんだかんだあって急死(ここの記憶は飛んでいる)、転生した。それも転生したら……**馬だった。**
なんで自分の好物に転生したの?しかも飼い主は俺の“昔の”父親だし。
「ほらほらウマノ〜。餌だぞ〜」
お、馬刺しか?いや草かよ。味気ない。馬=にんじんじゃないのかよ。
そこに、母と妹がやってくる。
「この子、新しい馬?」
妹は興味津々に聞く。
「そうだ!飼い主が見つからないらしくて引き取ったんだ。可愛だろ〜」
「だからってウマノってつけなくても…」
母は呆れたように言う。
「死んだ息子のように可愛がるのだこいつを!」
いや本人です。そう言いたかったが「ブルルルル」と鳴き声が出ただけだ。
俺はただ思っている。人間だった頃より思っている。
**…馬刺し食いてえ…**
深夜に読んでる人ごめんなさい。
第2話 ウマノの毎日
前回までのあらすじ★馬刺しが好きな馬野は、死因覚えてないけど転生したら人間の頃の父が飼っている馬!なぜか自分の好物に転生してしまった馬野はしかたなく馬として生きることに…
「まさかお兄ちゃんが死んじゃうなんて思ってもなかったよー」
妹が俺を撫でながら呟く。母はボロボロ涙を流し始めた。
「うわぁぁぁぁん」
「おい、母さんにあいつの話をするな…」
父はそう言い、おやつのクリープフィード__(固形飼料的な。馬版離乳食)__を持ってくる。そうだ、俺はまだ子馬だった。
「ほら、これあげてみないか?」
「あげるー!」
食べる。味気ねえー。あわよくば玉ねぎと薬味が添えられた馬刺しが食いてえ。しかし、馬刺しは共食いだし馬にネギ類は馬にはタブーだ。
せめて、転生先は馬刺し(薬味、玉ねぎ込み)が食える生き物がよかった……
---
「じゃあ、私は帰るわね」
しばらくして、いつのまにか泣き止んだ母がそう言った。
「わかった、最近休み取れなくてごめんな。来週には戻る」
「おとーさん、久しぶりに馬刺し食べたい〜」
妹が無邪気に言う。言うな。言うな。
そういえば、俺は生後2ヶ月。最後に馬刺しを食べて、死んだのは3ヶ月前。つまり、少なくとも3ヶ月間馬刺しを食べていないのか。
---
たくさん牧草を盛られ、父は帰って行った。俺は「シカヤマ」のところへ向かう。シカヤマは元々競馬の馬だったらしく、引退した後はここで過ごしているとのこと。それだけではなく、シカヤマには重大な秘密がある。
「ヨォ、ウマノ。元気か?」
「元気だぞシカヤマ」
そう、こいつは俺と同じ人間から転生したやつなのだ。だから人間の言葉を喋ることができるのだ。愚痴ったり恋バナしたりしている。人間界で死んだ年齢も同い年くらいだったから話がすごく合うのだ。馬年齢はシカヤマの方が上だ。
「聞いてくれよ。明日は乗馬体験に出なくちゃいけないんだよ。重いから嫌だなぁ」
「わかるぞウマノ……実の息子(の転生先)と気づかずにこき使うとは!」
この牧場は、一応公開している。いろいろ体験内容も充実していて餌やり体験やら乗馬体験やら馬刺し販売などをしている。ここの馬刺しはとても美味しい。
「いいなあシカヤマ。お前明日は餌やり体験担当だろ?」
「人間に好かれまくって何もしなくてもにんじんを供給される…最高だ」
そんな話をしているうちに、真夜中になった。
「そろそろ明日に備えて寝るわ」
「おやすみー」
---
翌日。味気ないクリープフィードを食べ、父に誘導され歩く。四足歩行にも慣れてきた。二足歩行のほうが楽ではあるがそんなことしたら大変なことになる。
あと10分。乗馬体験が迫っている……
第3話 乗馬体験
前回までのあらすじ★
馬野と同じく人間から転生した馬、シカヤマ。
そして馬野は乗馬体験に出されることに…!
地獄の翌日がやってきた。というかあいつの話絶対おかしいだろ。俺まだ子馬だぞ。そう思っていたが人間のパワーなのかなんなのか知らないが人が乗馬できるくらいには成長していた。
「よし!出すか!」
ここは細かいことは気にしない父。さすがだ。いや、これくらいは気にしてほしいものである。ちなみにこんなことは天地がひっくり返っても起こらないので安心していただきたい。実際は骨や背中がまだ柔らかく、人間の体重を支えると大きな怪我や発育不良の原因になるため、子馬は乗ることができない。しかし、骨も発育した!という感覚がなぜかあるため大丈夫だと思う。
---
「この子がウマノ?」
「美味しそうだね、ママー」
「しっ!」
ざわざわ、と観客がざわめく。誰か俺の事食おうとしてなかった?
「では、乗馬体験スタート♪」
父が朗らかな声で言った。
---
乗馬体験と言っても小さな楕円の道を2周するだけだが、みんな楽しみそうだ。集まっているのは6人。老若男女様々。
1人目。若者である。いかにも陽キャって感じだ。
「きゃーゆれる♪」と言いながらも嬉しそうな顔をしている。
2人目。例の俺を食おうとした(?)子供である。
「ねーねー、ウマノはおいしいのー?」
「これは食用の馬じゃないんだ、あはは…」
インストラクターは苦笑い。
3人目。先ほどの子供の母親である。
「わあ!くーちゃんゆれるねえ!ゆれるゆれる!」
「生姜ニンニク醤油玉ねぎ…ブツブツ…」
母を無視して、子供は馬刺しの薬味を言い出す。くう、食いてえ!
4人目。高齢者。先ほどの母親の母親だ。子供の祖母。
「揺れるわねえ!うへへへははははは」
なんでみんなリアクションが「ゆれる」なんだよ。
5人目。年齢不詳の男性。
「この馬可愛いな」と乗馬終了後も俺を撫でた。ちょっと嬉しかった。
にしてもこの人見覚えあるな。
そして6人目。またろくなやつでもねえんだろ。
そう思って少し見てみる。**ドキッ**とした。
「まあ、この馬可愛いわね、お父さん」
この人、まさか…………
投稿遅れてごめんなさい!
第4話 運命の馬
前回までのあらすじを書くのがめんどい
私・猪原みるはイヤイヤ牧場に来ていた。なによ、馬なんて見飽きてるし毎日のように乗ってるのに乗馬体験だなんて。祖母がどうしてもというから私優しいから付いてきてあげた。でも、この馬、なんだか……死んだクラスメートに似てる⁈
---
はぁ…俺はため息をついた。
「……馬野?」
厄介な奴が来た。こいつは猪原みる。転生前のクラスメートで、美少女だ。こちらも牧場経営者を両親に持ち、今回は親睦という名目で来ているに違いない。昔から遊んできた幼馴染なわけだが会話らしい会話はもう何年もしていなかった。
「…馬野……」
みるが泣き出し、俺はギョッとした。
「ちょっとみるさん?どうしたの?」
俺の父(元)に言われ、みるは涙を拭う。
「いいえ、なんでもないんです、はい」
みるは無理に笑い、俺に跨った。みるは馬に慣れているため、少し距離の長いコースを歩く。
つい俺は*「久しぶりだな」*と思ってみた。
「うん久しぶり、馬野…馬野の声…え?」
*「え?なんで通じてんの?」*
つい呟いた。
「うん……てか、なんで馬野の声の幻聴が?」
俺はダメ元でボソボソ経緯を呟いた。
「実はな…」
---
「馬野、死因わかんないんだ」
あっさり信じられた。俺を馬野と信じて疑わない。
*「そうみたいだが、なんでみると喋れるんだ?」*
「私、馬と何年も過ごしてたらなんか心が通じるようになって。てか好物馬刺しでしょ?食べれないじゃん」
なんだよそれ。しかし、俺ははあ…とため息をついてみた。
*「そうなんだよ……」*
「でも馬野、ほんとに覚えてないの?」
は?何がだよ。と思う。
「馬野の死因!ニュースになって大騒ぎだったんだから!」
は?
「馬野ね、**脱走した馬に蹴られたんだよ**」
お久しぶりです!なぞ子です!日記連載予定です!
第5話 恨みの馬
俺は、は?と思った。俺が馬に蹴られて死んだ?言語道断。なぜそんなことが起きる。俺は猪原に聞いてみた。
*「どういうことだ?」*
「え、結構話題になってたよ?全国ニュースにもなったし新聞にも載ったし」
猪原は俺に解説をした。
---
これは俺が支所予選で優勝した翌日の話だそうだ。
「腹減った……」
俺は帰り道を歩いていた。空は青からオレンジのグラデーションで、世界の終わりみたいな綺麗さだった。
そういえば、と俺は思い出した。
--- *「本日、馬らしき動物が|馬猪《うまいの》町に出たと連絡がありました。もし馬が出たら馬の後ろに立ったり大声を出したりしないでください。馬は臆病で視野が広い一方で後ろに死角があるため、驚かせると蹴りや噛みつきなどの思わぬ事故につながる可能性があります。会ったら12m以内に近づかず走って逃げずに馬を見ながら静かにゆっくり後退してください。くりかえします——」* ---
生徒指導の山田が緊急放送でそんなことを言っていた。聞いた時はどうせ牧場から逃げたんだろ。人間慣れしてるからいいんじゃね?と思い、忘れかけていた。今も別に気にしていない。
(昨日の馬刺し美味かったなあ………食べてえなあ)
そう思いながら脱走した馬のことを忘れ、俺はホクホクしていた。
車がいないか確認し、横断歩道を渡る。
目の前にデカくて黒いものがよぎった。
見た。**馬だった。**
「………」
動けなかった。馬は見慣れてるはずなのに。ぎょろりとした目。どうすればいいんだっけ。山田が何か言っていたはずだが思い出せない。
とりあえず走って逃げた。
追っかけてきた。
アタックされた。
「がは………」
痛みがすごい。やべえ、もしや、俺———
最後そう思った。意識が遠のいた。
---
*「で、転生したら馬だったと」*
「そうそう。怖いわよね野生の馬って!」
猪原とヒソヒソ話していた。信じることは到底できなかった。俺が好物に殺されたなんて。
「乗馬体験終了でーす。ありがとうございましたーー」
---
俺は少し成長していた。ぼりぼりと餌であるにんじんを噛み砕く。味気ない。
俺は今日の話をぐるぐる考えていた。
なぜ猪原は馬である俺と喋れた?なんで馬は脱走した?そしてなぜ俺の前に——
考えれば考えるほどわからず、俺は水に顔を突っ込んだ。冷たかった。草が浮かんでいたけど。
**野生の馬に遭遇したら?**
• 40フィート(約12メートル)以上は近づかない
野生の馬は警戒心が強く、不用意に近づくと身を守るために蹴る、噛むなどの行動に出ます。一定の距離を保って見守りましょう。
• 絶対に走って逃げない
急に後ろを向いて走って逃げると、馬が驚いて追いかけてきたり、興奮させてしまう原因になります。離れるときは馬の方を向いたまま、静かにゆっくりと後ずさりします。
第6話 シカヤマ
その日は、猪原の話を聞いてから何も手につかなかった。なぜ記憶がその部分だけ吹っ飛んだんだろう。わけがわからなかった。
---
寝付けなかった。
小屋の壁にかけてある時計は23時を指している。深夜だった。
隣を見ると、シカヤマは優雅にスマホをいじっていた。隙をついて持ってきて、詰んである牧草に隠していたらしい。操作をどうやってるかが気になるところだ。
「シカヤマ、ショート動画を100倍速で見るな」
「俺ドパガキだからなあ、、、ドーパミンを求めているんだよ」
こいつドパガキなのかよ。現代っ子じゃん。俺はぼそっと言った。
「人参でも食ってろ」
「俺にんじん嫌いだから詰んでるんだわ」
シカヤマはニンジンが嫌いだ。だから牧草を毎日食べている。
俺も急成長し、ニンジンが食べられるようになった。味気ない牧草からは脱出できたのだろうか…でも、俺が食べたいのは………
俺は、その話も耳から耳へスルスル抜けていくような感じで全く聞き取れなかった。というか聞く気がなかった、と言えばいいのか。わからない。
「どうしたウマノ、元気ないぞ」
シカヤマが不安そうに覗き込んできた。馬の顔が目の前にドアップで現れる。
シカヤマは馬の中でも1番信頼できる。俺は話すことにした。
猪原から聞いた俺の死因について………
---
「ふーん」
シカヤマは聞いた後、そう言った。ふーん?なんだよ、ふーんって。
「それさ、」
シカヤマはどこか焦っているようにも、余裕があるようにも見えた。そして、しばらく沈黙が落ちた。
「それさ、」
シカヤマが気まずかったからかやっと言葉を発した。
「俺と**犯人探さね?**」
「………は?」
---
翌朝。眠い目をぱちぱちして、俺は目を覚ました。時計は朝5時を示している。
シカヤマは寝ていた。スマホが開きっぱなしだ。「馬刺し特集」の記事が画面に出ていた。
俺はそっとスマホをこっそり奪い(人聞きが悪いぞ作者)、ぽちぽちとGo●gleで検索した。
--- 馬 事故 ---
出てきた。ニュース記事だ。
「中学生が馬に蹴られた事件から半年 馬は脱走したもの?未だ逃走中」
俺が死んでから、もう半年も経っていたらしい。未だ、逃走中……見つかっていないのか。
その犯人に復讐したい。倒して、それから———
「♪〜ニンニク玉ねぎ甘めの醤油…」
俺は口ずさむ。食べたい。馬刺しが。
そういえば、と俺は考える。
(俺がまた死ねば…また人間に転生できる?)
第7話 決心
大雑把なこれからの計画はこうだ。俺を蹴り殺した馬を倒し、俺も死ぬ。人間に転生し、馬刺しをまた堪能する。ざっくり言えば心中だが、仕方ない。それ一択だ。それ以外思いつかない。大体、この体じゃ馬刺しも食べれないし食べたらアカン。共食いになり問題になり牧場を追われる。
俺は(元)父の話(盗み聞きした)からスケジュールを練り込んだ。
まず、明後日に猪原みるが牧場同士の親睦会で来るから、話し合う。外の様子を聞いたり、俺を蹴り殺した馬がどんなのか知ってたら尋ねる予定である。その日にお願いして情報収集もしてもらう。情報が集まり次第、俺は《《心中》》に行く。
---
親睦会。案の定みるがやってきた。相変わらずの美女だ。
「*やあ、みる*」
「やっほ、馬野。どうしたの?」
みるは声を小さくして聞いてきた。
「*お前に聞きたいことがある*」
---
出発はそれから翌日になった。
シカヤマのスマホをこっそり背中に乗せる。
ぎぎぎ、と(元)父が餌をやりに厩舎のドアを開けた瞬間。
俺は風のように駆けた。スマホは落ちなかった。
「おい、待て、ウマノ!」
(元)父は慌て、牧草とにんじんを落とした。そして追ってきた。
俺は一目散に走った。そして、
——牧場の出口から出た。
---
昨日の回想
---
「ああ、その馬ね…捕まったよ」
「*なんだって?!*」
みるに聞いた瞬間、そう言ってきた。みるは申し訳なさそうな顔をしていた。
「それで、私の牧場で引き取って育ててる。子馬だったんだよね、結構大きい」
それを聞き、俺はみるの牧場の場所を必死で思い出した。昔はよく行っていた。そこにいた馬が可愛かったから。でも、どんどん行く目的は変わっていた。生きているうちは気づかなかった。言おうと思っていた。でも、そんなこと頭の中から放り出されていた。
**絶対に、仇を打つ。**
そう思った。
---
馬や鹿、猿が街に出ると、それなりの騒ぎになる。
出たのが早朝だったため、まだ良かった。しかし、警察に通報されるのも時間の問題だ。俺はただみるの牧場の方に駆けた。公道を普通に走っていた。車通りもまだ少ない。この混み具合なら今から5分で着きそうだ。
やがて、みるの牧場の入り口が見えてきた。門を飛び越える。
しばらく走った後。
「`お前か。ウマノというヤツは`」
振り向くと、俺より大きな馬がいた。
あとちょっとだけ続くのじゃ