これは正しい物語ではない。
私達は間違っているかもしれない。
それでも、私は君を選ぶ__。
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目次
一話「羽の影に、私は___」
新シリーズ!!どうか温かい目で見守ってください!!
谷に少しの影が差し始め、白い光が窓辺に差す。午前七時十分前後に白髪に青色の目の少女、私_セレは起床する。一番窓辺にあるセレの部屋は日当たりがいい。
セレ「…………寝たい。」
だからこそ一番眠くなる。だけど、ここで寝たら母はリライナの拳骨で叩き起こされることになるので我慢だ。私は寝るという考えを頭を軽く振って振り払った。床に素足で足を置き、冷たいと凍え、布団に戻るのを何回か繰り返し、とうとう諦め床に足を付いた。私は部屋を一望する。クローゼットとベッド、それと机だけの割とシンプルで綺麗な部屋だ。
自分の部屋に満足していると、まるでそんなことないと言うかのように部屋の隅の埃が舞った。私はムッとして埃を指で摘まむと、元の隅に置いた。
セレ「埃は埃らしくそこでじっとしてて!」
素早く着替えると、私は扉を勢いよく閉めた。扉の軋む音と、木の折れそうなミシッという音が聞こえた。更に、凄まじい音が重なり合い、騒音の見本のような音になった。私はやってしまったと公開する。いつだって私は怒りっぽい。それでリナに叱られたばかりなのだ。
オリバー「セレぇ、扉くらいもっと優しく閉めろよぉ…………。」
隣の部屋の同い年の少年、オリバーがぼやく声が部屋の中から聞こえた。
セレ「すまんすまん。」
騒音被害にあったオリバーに取り敢えず謝っとく。
オリバー「お前絶対思ってないだろぅ………。」
セレ「そんなこと言うからモテないのよ?」
ブツブツ言うオリバーへ苛立ちを募らせた私は小声で言ってやった。すると、扉が凄まじい速さで開け放たれた。赤髪に紫色の目の少年が寝巻き姿で立っていた。
オリバー「余計なお世話じゃボケェ!」
セレ「扉をもっと静かに何とかとか言ったのはどこの誰だったかしらねぇ?」
私はわざと甲高い声でオリバーをあざ笑う。オリバーはセレを睨みつけながら、部屋へ戻って行った。二度寝するつもりなのかな。オリバーにはまだ「相棒」がいないからそれもそうかと考える。私は廊下を真っ直ぐと行き、リビングへ来た。リビングには金髪に金目の女性がいた。
リライナ「遅かったねセレ。夜更かしでもしたの?」
リライナはパンにバターを付けながら時計を顎で指す。時計の針は七時五十分を示していた。私は呆気にとられる。寝坊したとは思っていなかったからだ。
セレ「いけない!ママ、いってきます!」
リライナ「ほい!いってらっしゃい。」
私はリライナが差し出したパンを口に咥え、靴を履く。
リライナ「ソキウスを待たせないでよ~!」
セレ「|わはってる。ほうをまはへるはけはひでしょ!ひっへひはふ!《分かってる。ソウを待たせるわけないでしょ!いってきます!》」
セレは口に咥えたパンを落とさないように下に両手を出す。目指すは相棒のいる山、「ペンナ山」。全力疾走したいところなのだが、最初から全力疾走したせいで、現在ばて中である。肩で息をしながら、最後の一かけのパンを飲み込む。それから、ヨロヨロと歩く。その時、急にザァーッと風が吹き、私の白髪を巻き上げた。日が隠れ、影になる。顔の前を腕でガードしながらチラリと上空を見る。
ソキウス「朝早くから随分お疲れのようだな。セレ。」
上空から舞い降りてきたのは白銀の体と翼に宇宙のような深い青と黒の境界線の色をした目を持つ羽を持った狼。学名では「アーラルプス族」と呼ばれているけど私達は個々の名前で呼んでいる。私達、「アーラ峡谷」の裂け目に住む「谷の子」はアーラルプス、略称アルスを相棒にしている。相棒になれば家族と同じくらいかけがえのない存在になる。そして、今来たアルスは私の相棒「ソキウス」。相棒同士は普通はあだ名で呼び合うんだけど、私の名前が短すぎて普通に呼んでるんだ。
セレ「寝坊しちゃって…………。最初から走ったら疲れてバテた…………。迎えに来てくれてありがとう、ソウ!」
私は最大の笑みをソウに見せる。ソウは人間の姿に化けると、私の頭を撫でてくれた。アルスは人間に化けることができる。言い忘れていたが、相棒になる時はアルスが先に勧誘してくれないとなれない。もちろん私も勧誘されたのだが、私の場合は少し特殊で、生まれる前からソウは生まれてくる子を相棒にすると言ったらしい。
セレ「ねぇ、ソウ。」
ソキウス「ん?」
私は一歩先を歩くソウに聞く。ソウは一つに結ばれた白い髪を揺らして、振り向いた。
セレ「………ソ、ソウと私って容姿似てるよね!」
ソキウス「そうだな。白髪だし青い目だし。」
この事だけは相棒になってもう11年目だがずっと聞けない。ソウに見つめられると、声がでなくなるのだ。聞けないともやもやして、自分の中のなにかが騒ぐ。自分の影を見つめたまま、私は黙々と歩く。気がつくと、ペンナ山は目前に迫っていた。空を舞う金と銀のアルスに魅了され、私は思わず足を止める。他の羽狼を見る私が気に入らなかったのか、ソウはアルスの姿に戻り、服を口で引っ張ってきた。
ソキウス「………セレ、乗れ。」
ソウに言われ、私はペンナ山をボーッと見つめながらソウの背中に乗った。ふかふかと心地いいソウの毛に私は安心感をおぼえた。私がソウの毛をしっかりと掴むと、両の翼が動いた。体が浮く感覚と共に地面が遠ざかる。私はこの感覚が苦手で、でも好きだった。
一周りした後、ペンナ山の奥へ向かった。そこには長い長い階段がある。谷の外、「外の世界」へ続く階段だ。大人は誰も外の世界に出ようとしない。けど、私は出たい。向かい風が私を谷の中へと引き戻す。
セレ「………行こう、ソウ。」
ソキウス「そうだな。」
私はソウの背に跨がり、階段を背にしてペンナ山中腹に戻った。
あとがき
お読みいただきありがとうございます!
新シリーズどうでしたか?
これは序の序なので………。
第二章から楽しみすぎます!
龍憑事も進めなきゃ………。
二話「迷いの中で、私は___」
ペンナ山中腹に戻ると、私はソウから下りる。ソウはブルブルと毛を震わせた。はらはらと毛が舞い落ち、私は毛だらけになってしまった。私はソウを真顔で見つめる。
ソキウス「す、すまん………。」
気まずそうにソウは謝った。私はふんと鼻を鳴らす。許すということだ。気を取り直して私はにっこり笑うと、バッグからブラシを取り出した。ソウの目が少し輝いたように見えた。私はソウの体をブラシで撫でる。ソウは気持ちよさそうに目を閉じ、喉を鳴らした。その声に私も嬉しくなる。最後に耳の裏を手で撫でる。ソウはごろんと横になってお腹を見せた。ソウは耳の裏を撫でられると無力化する。私はソウの横に大の字で寝転がる。
セレ「ちょっとお昼寝しよっか………。」
私は目を閉じた。すぐさま夢の中への道が開ける。私はうとうとしながら寝息をたて始めた。ソウが寄り添って来てくれたことを感じると、安心して眠りについた。
---
広い草原を私はソウと駆け回った。笑い声が草原に響き渡る。ふと、ソウが立ち止まり、私も立ち止まる。
ソキウス「セレ、なんか聞きたいこと、あるだろ?」
ソウの言葉に、私はコクリと頷く。
セレ「なんでソウは私を選んだの?」
ソウ「それは_____。」
その答えに私は微笑んだ。そんな夢を見て、起きたのは十一時半頃。他は鮮明に思い出せるのに、ソウの答えだけが思い出せない。もやがかかっている。私は怒り顔でソウを見る。その顔にソウは驚いている、というか恐がってる。
ソキウス「セ、セレ?悪夢でも見たのか?」
私は話そうと思って、口を開けて、噤んだ。私はそっぽを向いて、首を横に振る。
セレ「なんでも、ない。」
ソキウス「そうか。」
ソウはやたらに詮索しない。それが、心地よく、少し寂しい。ソウが再び驚いた。
ソキウス「セレ!?」
セレ「え………?」
その時、頬を水が伝った。私は泣いていた。
ミナリカ「セレ~?」
茶髪の女性がこちらに向かって来る。リライナのママ友のミナリカさんだ。ミナリカさんは私を見るとぎょっとした。
ミナリカ「セレ!?」
私は慌てて服の袖で目を乱暴に擦り、笑顔を作った。目の端が若干赤いだろう。
ミナリカ「狩り、やめとく?」
私はそろそろ狩りの時間であることを思い出す。私は少し迷った挙げ句、結局行くことにした。
セレ「ちょっと、弓矢取ってくるから先にアルクスの森で待ってて!」
私は走り出す。ソウが察して、駆け寄ってきてくれる。私は走りながらソウの首根っこの毛を掴み、飛び乗る。ソウの翼が開く。それはまるで、銀を辺りに散りばめたようだった。何度も見たそれが、今日はなんだか特別だった。ソウが後ろ足で地面を蹴って宙を舞う。このまま宇宙へ行けるのかもと思う。でも、私が行きたいのは違う。昼の日に照らされ、私はペンナ山の反対側の山、リュコス山へ向かった。ペンナ山は私とアルスが交わる場所。アーラ峡谷の裂け目は私達が住む場所。リュコス山はアルスが住む場所。武器はアルスに管理してもらう。だから、いちいちリュコス山に向かうのだ。面倒だが、伝統なので仕方がないと私は諦めた。
---
私はアルクスの森の中でミナリカさんと鳥を伐ち落とそうとしていた。木々の間に隠れ、息を潜め獲物を待つ時も夢の中のソウの答えのことが頭の中をぐるぐる回っていた。思い出せない歯がゆさの裏で、思い出したくないと思う自分もいる。それが、腹立たしかった。
セレ「ソウと私って…………何なんだろう。」
その呟きはミナリカさんには聞こえなかったみたいだ。ミナリカさんは無言で空を指差した。そこには空を舞う鳥がいた。私は弓の弦を引く。ソウのことが頭を回る。手が震える。矢が空を突き抜け、鳥へ飛ぶ。鳥が避ける。矢がスピードを落として地へ落ちる。
セレ「あ…………。」
ミナリカさんが怪訝な顔をして、言った。
ミナリカ「ねぇ、セレ、今日はやめといたら?何か考えてるでしょ?」
セレ「………はい。」
私は渋々ソウとアルクスの森を離れ、家へ向かった。
---
オリバー「セレ?聞いてる?」
セレ「へ?」
私は夕食の席でオリバーに呼ばれ慌てて返事をする。リライナが心配そうな顔で私を見る。
リライナ「セレ、大丈夫?」
セレ「う、うん平気平気。大丈夫…………。」
私は引きつった笑みを浮かべながらビーフシチューを喉に流し込む。やっぱりオリバーの料理は美味しい。
リライナ「何でも吐き出しなさいよ。あ、吐くのは禁止!」
オリバー「掃除が大変なんだから。」
セレ「分かってる分かってる。」
私は苦笑いしながら言う。心の底から笑えない。
今、悩んでいることはなんだろうか?私は木のスプーンを置くと、口を開く。自然と言葉が出てきた。これが、嘘偽りのない私の本心。
セレ「私は、外の世界へと行きたい。」
あとがき
いい物語は「この物語がどこかの世界で本当に起きている」と感じる物語。
私はそれが創りたい。
みんなにできているそれをしたい。
セレは実在するかもって思わせたい。
それだけです。
三話「覚悟の末に、私は___」
リライナ「セレ………!」
リライナが反論する前に、オリバーが机を叩いた。ビーフシチューの入った器が宙に浮き、戻る。
オリバー「セレ、本気か……?」
セレ「………うん、本気。」
オリバーは怒るとも悲しむとも言えない表情でセレを見つめた後、席を立った。
オリバー「………今日はごちそうさま。」
オリバーは歩いて扉の前まで行く。静かに閉まる扉を、私は寂しげに見つめた。
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ベッドに入って、私はオリバーのことを考えた。オリバーは多分本気で心配してくれたんだと思う。だって、彼の父は外の世界に行って帰って来なかった内の一人なのだから。オリバーの父はオリバーと病弱な母を置いて相棒と出て行ってしまったのだ。その後、何年かしてオリバーの母は私の父と同じく流行病で死んだ。それで、私達の家に引き取れた。だから、オリバーが心配するのも分かる。
セレ「分かってるよ………外の世界は危ないことくらい………。」
私は闇の中に溜まったものを吐き出した。それは闇の中に溶けて、混ざって消えた。考えることが多かった。私はしばらく唸った。
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五時半、私は物音で目が覚めた。窓の外に誰かがいる。窓を開けて確認するとそれはソウだった。
セレ「ソウ!?」
ソキウス「セレ、悪い予感がする!」
切羽詰まった様子のソウに私は不安をおぼえる。ソウ、アルスの悪い予感は大抵当たる。私は素早くベッドから出て着替える。ソウが翼の付け根から弓矢を取り出した。私はそれを持つと部屋を出て、大声で叫んだ。
セレ「ソウのお告げが来た!!」
私はソウが悪い予感がすることをお告げと呼ぶ。すると、隣の部屋の扉が壊れんばかりの勢いで開いた。出て来たのは寝癖をつけたオリバー。
オリバー「本当か!?」
オリバーの答えに私が頷いているところに、リライナも来た。包丁を持っているところを見ると、料理中だったのだと思う。
リライナ「ソキウスは!?」
私は部屋の窓を指差す。リライナは大声でソウに確認する。
リライナ「本当!?どんな予感!?」
ソキウス「分からない。けど、これまでとは比べものにならないくらい、大きな災いだ。」
ソウの言葉に、私達は喉を鳴らす。オリバーは自分の部屋に走って戻った。着替えに行ったのだろう。リライナは私の部屋の机に包丁を置く。
リライナ「ソキウス、私の武器を取りに行かせてくれる?」
ソウが頷くと、リライナは窓から外に出た。リライナが跨がると、ソキウスは地面を蹴ってリュコス山へ向かった。それを見届けると、私は振り返った。そこには、開けっ放しの扉の前に佇むオリバーがいた。オリバーは私に気づくと手招きした。私はオリバーの元まで行く。
オリバー「セレ、外の世界に行きたいって気持ち変わんないのか?」
セレ「うん。変わらない。」
オリバーは長いため息を吐き出し終わると、壁の背に座り込んだ。私も倣って座り込む。
オリバー「俺は反対だ。外の世界に行った父さんは帰って来なかったから。」
セレ「うん。」
オリバー「俺はセレとは血のつながりはないけど、家族みたいなもんなんだ。」
セレ「うん。」
オリバー「だから、家族を二人も外の世界に行かせたくないんだ。」
セレ「うん………。」
オリバー「それに、俺はセレが好きだ。」
セレ「は!?」
私は思わず素っ頓狂な声を発する。オリバーの横顔を見ると、顔が耳まで真っ赤になっていた。どうやら本当なみたいだ。私は意地悪な顔で立ち上がる。そして、オリバーの前に仁王立ちした。
セレ「私が好きだと?」
オリバー「あ、ああ………。」
セレ「この私が恋愛に興味あるとでも?」
オリバー「だよなぁ~………。」
オリバーはがっくり肩を落とす。俯くオリバーを私は勢いよく抱き締めた。
オリバー「セレ!?」
私もずっと思っていた。11年しか生きてないけど、オリバーといると楽しかった。次第に、これって恋なのかなと思っていた。私は口を開き、精一杯の笑顔を向ける。
セレ「私………。」
言い終わる前に、爆破音が聞こえた。一つじゃない、次々に爆破音と悲鳴が聞こえた。そして、すぐ近くでなった爆破音は、玄関からだった。
?「谷の子は一《《匹》》残らず全員殺す。」
玄関から聞こえた声と、殺気。私はオリバーの口と自分の口を塞ぐ。ソウはまだ帰ってこない。相手は一人。私は手元の弓矢を見る。
オリバー「__セレ………。__」
セレ「__オリバーは隠れてて。__」
私は弓の弦を指ではじく。弦はピンと張っている。私は矢筒から矢を一本取り出す。相手は多分大人。この一本を外せば死ぬかも知れない。それに、人を殺すことになる。私は両手を見る。この手が血で染まる。
私は、大きく息を吸い込み、吐き出す。そして、覚悟を決めた。大切な人を守るためなら。
セレ「上等だ。人でも何でも殺してやるよ………。」
あとがき
セレよりもオリバーが好きです。
オリバーって聞くと白髪に少し赤が入ったあっちのオリバーが………分かる人いますかね?
いたら教えてください。
けど、その後に登場するあいつも好きだ。
第二章が楽しみだ。