ある日、私は公園を歩いていたらノートに万年筆で何かを書き込む少女がいた。
少女は、10分ほどしてベンチにノートを置いて帰っていく。その度に、私は表紙に「読んでください ネガティヴ短編」と書かれたノートを手に取り、読んでいた。
それは、本当にネガティブな物語しか収録されていなかった………。
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目次
①王様役突き落とし事件
私は、公園を歩いていた。すると、少女がベンチに座ってノートに万年筆で何かを書き込んでいた。
(今万年筆を使う人、いるんだ…)
そう思いながら、スルーして散歩を続けた。
そして10分後、またベンチに着くと少女はいなくなっていた。1冊のノートを残して。
そのノートには、表紙に`読んでください ネガティヴ短編`と書かれていた。
「読んでいいんだ」
私はそうつぶやき、疲れた体をベンチに腰を下ろした。そして、ノートを1ページめくった。
---
そのクラスは、本当に仲が悪かった。
授業中はおとなしい。しかし話し合いや行事は一致団結できず、運動会もビリだった。
大切なものや意見、価値観も人によって露骨に違う。
そのため、休み時間は大喧嘩が繰り広げられ、殴り合いも日常茶飯事である。
他のクラスのヤツらは「プロレスだープロレス」とわんさか集まってくる。
菜乃花は学級委員としてこの状況をなんとかできないか考えていた。
だから今回、菜乃花は学年合同のレクを企画した。
内容はみんな唯一、考えがまとまって一致団結できる王様ドッジ。
チームそれぞれ王様を一人決めて、その人が当たらないように、バレないように他の人が警護する。
「なるべく逃げ上手の奴が王様がいいよな」
「じゃ、こいつにするか」
珍しく、休み時間も作戦会議を男女関係なく仲良くするみんなに、菜乃花は安堵していた。
「菜乃花ちゃんのクラス、珍しくケンカしてないね」
他のクラスの友人に言われ、菜乃花はふふんと胸を張った。
「私たちのクラス、ついに団結ができるようになったんだよっ。学年レク、絶対負けないから!」
しかし、レク前日の下校中、隣にいたわがままなお金持ち・マリアが言った。
「私が王様になりたいですわ」
マリアはしばらくハワイ旅行で休んでいたため、作戦会議に参加していなかった。
今、王様として確定しているトモキはビックリして反論した。
「仕方ないだろ。決まったことなんだからつべこべ言うなよ。それに、お前いつも王様じゃねーか」
トモキは休み時間の王様ドッジで、いつも王様の座をマリアに取られていた。
「でも、学年レクですわよ?活躍すれば私は有名になりますわ」
「負けたら恥かくけど」
トモキはポソリとつぶやく。マリアの目が一気に恨みの色に変わった。
**「うるさいですわ!」**
その瞬間、トモキはマリアに押されたことによって車道に出た。
車道には、スピードを出した車が直進していた。**ダンッ**と、ぶつかった音が聞こえた。
トモキは搬送先の病院で息を引き取った。
---
「バッドエンド〜…超ネガティヴだし」
でも、バッドエンド小説が大好きな私にとって読み応えがある一編だった。
「またこの物語、読みたい」
そう言って私はパタン、とノートを閉じ、ベンチにそれを置いて帰った。
②地獄の水溶液実験
ポッキーの日ですね!ポッキーでもプリッツでも食べて祝おう!
**小説の内容はくれぐれも真似をしないでください。**
翌日、私はまた昨日と同じくらいの時間に公園に散歩に来た。
ルーティンでもあるし、またあの少女の物語を見られると少し期待している。
案の定、またあの少女がいた。
ただ、場所は昨日とは違って池沿いの屋根付きベンチに座って万年筆で何かを書き込んでいた。
「昨日のあなたのノート、読んだよ!リアリティーがあって面白かった!」と言いたいがやめた。
私はまた散歩を続行させた。そして、10分後にそこにまた着くとノートを残して少女は消えていた。
私は、`読んでください ネガティヴ短編`と書かれたノートを開いた。
---
春が目を覚ますと、そこは理科室だった。隣にいた友人・夏芽が言った。
「春、また居眠りしてたんだよ?だから優くんが運んでくれてたよ」
「あ゛?」
優くんと言えば、春の元カレであり、春の黒歴史認定のイケメン少年である。
何があったかは書く必要性は全くないので書かないでおく。
そうだ、今日は水溶液の実験だ。その先生嫌いなんだよね……………
前はガスボンベをブンブン振り回してたし、ろうそくの実験では近くに燃えやすいものを置いていた。
今日は何をするか…………考えた途端、春はブルルッと震えた。
そして、先生が来た。
「今日の実験は、**舐めて**水溶液を当てるゲームでーす♪」
説明によると、食塩水、砂糖水、炭酸水、水酸化ナトリウムをそれぞれ舐めて班で当てるというもの。
ひと班4人いるから、1人1つ舐めるのであろう。
「む、無理…」と春はつぶやいた。
春の班は春、夏芽、優がいるのだが1人休みのため、1人2本舐めることになる。
「じゃあ、実験スタァ〜トっ♪」
その後、ジャンケンで敗北した春は2本分舐めることになった。
「う……」
試験管に入った4つの液体。
炭酸水はシュワシュワしているはずなのに、炭酸が抜かれてるらしい。
「水酸化ナトリウムといえば、皮膚溶けるよね。即死じゃん」
優はそう言うと、1本試験管を取り、ぺろっと舐めた。その瞬間。
「ゔっ…!!!」とうめき出した。
(きっと水酸化ナトリウムが当たったのね。ざまぁ♪)
そう思って春は残りの2本を取って、ごくりと飲んだ。
アイツに水酸化ナトリウムが当たったのなら怖いものなしだ。だから飲んだ。
「あ、砂糖水だった、よかった〜」
その声は、夏芽の声である。
では、春は食塩水と炭酸の抜けた炭酸水を飲むハメになる。
最初に、しょっぱいと思った。食塩水だ。塩のたっぷり溶けた食塩水は、本当に気持ち悪い。
それでも春は頑張ってごくりと飲み込んだ。ふう。なんとかいけた。次は炭酸水だ!
春はまた試験管を手に取り、ごくりと飲んだ。その味は、苦くてぬるぬるしていた。
すると、なんかおかしい。焼けるような痛みが走る。こ、これって……
春は意識がもうろうとしてきた。
最後に見たのは起き上がった優が「炭酸抜けた炭酸水不味くて倒れちゃった」と苦笑している所だった。
---
私はノートを閉じた。さすがに酷くて、リアルすぎる。
これ、もしかして実話を収録したものなんじゃ……
私は明日少女がいたらそのことを聞こうと、ベンチにノートを置いて帰った。
水酸化ナトリウムの味はAIに聞きました。**絶対に真似しないでください。**
③まずい事実
その日。晴れていたけど台風が来たから散歩はお休み。あの少女も台風の日はさすがに来ないだろう。
そして、台風情報を見るためテレビをつけた。
どうやら台風は、規模も大きくなりながら私の住んでいる場所に接近しているそうだ。
九州の一角はもう浸水しているらしい。死者が出ないことを願う。
すると、いきなり気象予報が速報に変わった。
『速報です。午後、〇〇県〇〇市でトモキ君という小学生の男の子が同級生に突き落とされ、ひかれて死亡する事故が発生しました。警察は突き落とした同級生や運転手に事情を聞き、突き落としの動機を調べています。』
テレビには『〇〇市で突き落とし事故 小学生男児死亡』のテロップと、晴れた事故現場の映像。
まだこの地域には台風が来てないのだ。…じゃなくて!この事故、なんか聞いたことあるぞ。
「あ、前のノート!」
前に読んだノートの内容を思い出す。
王様役のトモキ君が理不尽なお嬢様・マリアによって突き落とされる事故が起きた…という内容だ!
「たまたま…だよね?」
名前も、事故の背景も一致している…?
背筋が凍るように震えていると、ニュースキャスターがまた話し始めた。
『えー、さきほどお伝えした事故の情報が入ってきました。トモキ君を突き落としたMさんは「王様ドッジで王様役になっててにくかった。私が王様」と言っていると言うことです。以上、速報でした。では、台風●号の情報をお伝えします。』
ニュースキャスターは平然とした顔でそう言い切り、画面は台風の進路予報に変わった。
もし、これがノート通りになるなら、水酸化ナトリウムの悲劇も起こるんじゃ………
また背筋が凍りような悪寒がして、私は慌ててチャンネルをいつも絶対見ないアニメに変えた。
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翌日、カラッとした晴れだった。
台風は九州を襲った後に日本海側に進路を変更。私たちの街は壊滅を免れた。
そして、散歩をしていると車道を救急車がサイレンを鳴らして通って行った。
そして、お決まりの公園に着いた後、ベンチにまたあの少女がいた。
いつもは遠くからで容姿ははっきり見えなかったが、やっとわかった。
真っ黒の上着を羽織り、真っ黒のズボンと真っ黒のスニーカー。光のない黒い瞳に黒い艶のない髪。
まさに「黒ずくめ」。
少女は青ざめながらもニコニコ笑い、万年筆をノートの走らせていた。
人は死んでほしくない。
でも、少女の書くリアリティー満点バッドエンド物語を読めないのも嫌だ。
私は何もせず、突っ立ってることしかできなかった。
そして、怪しまれるかもと遠くへ行き、少女の様子を伺った。
少女はしばらくすると万年筆のインク瓶を取り出し、その中に万年筆を浸からせた。その途端…
**少女は、消えた。**
でも、いつも通りノートは置いてある。私はまたベンチに座って、ノートを読んでみた。
④無くしたい記憶
少女は消えてしまったけど、ノートはある。
私はまたベンチに座って、ノートを読んでみた。
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ドサッ。
人が倒れる音が、校庭に響いた。
「……お前、それで終わり?やっぱチョロ子であだ名あってたわねww」
ルルがそう言うと、周りにいた女子もクスクス笑う。
「…違うもんっ!私、チョロ子なんかじゃないっ……!」
ルルの声に負けず、力強い声で泣きながら|黒音《くろね》は叫んだ。
「ふーん……ちょろいくせに」
「気持ち悪過ぎて吐きそう〜」
「もう無理だわ〜。引く引く引くー。こんな奴の周りにいたらチョロ子菌がうつるww」
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続きだが、私はパタンと本を閉じた。
これは、10年前………私が小学4年生の時の話だ。
当時、私はクラスのリーダー的存在・ルルにいじめられていて、不登校になった。
小5と小6は違うクラスだったためよかったが、中学生にまた同じクラスになり、いじめられた。
だから、転校して遠方の高校を受験した。今は健全な大学生として楽しく毎日を過ごしている。
そうそう、言い忘れてた!私は黒音……黒音ココって名前で。
黒音ココって名前には「黒猫」ってついてることから不幸の象徴になった。
私が他の人とすれ違えば「黒音さんとすれ違っちゃった…終わった…」と言われる。
異変に思った私は図書館でいろいろな資料を漁ってみると…衝撃的なことがわかった。
昔の欧米では、黒猫は不幸の象徴で、たくさんの黒猫が犠牲になったってこと。
「黒猫が横切ると不幸が起こる」っていう迷信があること。
1000冊近くある図書館から、なぜ黒猫の資料を選んだかは覚えてないが……
でも、そんな理由でいろいろな酷いいじめを受けた。
水をかけられる、殴られるはもちろん。
給食の汁物をぶっかけられてやけどさせられたり、コンパスの針で手を刺されたり。
嫌な記憶が記憶の引き出しからはみ出てきて、私は無理やり閉めた。
でも、中学生にいじめを受けていた時に図書館に出しっぱなしになっていた本を読んで……
いじめは法律でやってはいけないことを知った。
だから、私はいじめっ子を訴えて慰謝料を請求し、成功した。
いま、ルルは何をしているのかなんて知らない。だから知りたい。
私はそう思って、またノートを開いた。
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