ある日突然始まった幽霊の未練探しの物語。
恋愛物では無いです
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目次
夏の始まり
初投稿〜
下手なのは許そう
「お前が来てくれてほんと良かった〜!この神社人来なさすぎて〜」
初夏の神社の入口。そこにずっと笑っている男が目の前にいる。どういう状況だよ。誰なんだよお前は。もう5分くらい1人で話してるんじゃないか?
「話をする前に名乗るのが礼儀なんじゃないのか?」
そう言うと目の前の男は少し固まったがそれも数秒でさっきの笑顔に変わった。
「あ、確かに!俺は零!|霧夜零《きりや れい》。20歳で元大学生!お前は?」
なんか聞いたことあるような無いような名前だな。まあどっかの有名人と似た名前とかだろ。
「俺は|九条響《くじょう ひびき》 。20歳で大学生。今は夏休み」
俺も名乗ると零はまた笑い、「響な、よろしく!」と言う。が、まだちゃんと聞かないといけないことがある。
「なあ、零。最初会ったとき、『俺は幽霊だからか』とか言ってたよな?あれはどういうことだ?」
そう。零は最初俺と会ったとき、『俺は幽霊だからか神社の外で俺をチラッと見るだけ見てどっかいくんだよな〜』と言っていた。俺は結構大事な質問をしたと思っているとき、零は一瞬きょとんとした顔をしたあと、この世の常識かのようにまた笑いながら返事をする。
「そのままの意味で、俺は幽霊!ほら、如何にもって感じの格好だろ?」
零は両腕を広げた。が、幽霊といえばの死裝束ではなくダメージジーンズに、白Tシャツという全然如何にもっていう感じじゃない。なんならそこら辺の街中を歩いていても幽霊だとわからないだろう。それをそのまま伝えるとやっぱり笑いながら、そうか?なんて言っている。なんなんだこいつ。
零が言うには、零が死んでしまったときに神社に飛ばされたらしい。それで暇で普段なら絶対に立ち入ってはいけない場所に座って少しでも楽しんでいたようだ。零一人では神社から出られないようで、誰かとなら神社を出られるらしい。俺が来てくれてよかった、というのは出られるからだろう。あと、『零が幽霊だから』じゃなく、『普段なら絶対に立ち入ってはいけない場所に座っていた』から他の人に見られていたんじゃないか?
「でもな〜まぁ俺がここにいるってことは成仏できてないってことじゃん?だからお前と一緒に、俺が成仏できるように心残り?未練?を探さないといけないってこと!」
「ん?いや、は?」
いやいや、初耳だ。会った時に言うことだろ。会ったときに言わなくても自己紹介の時にも言えたはずだ。何故俺が手伝わなきゃいけないんだ、そして何故未だにお前と呼ばれるんだ。名前教えただろ。
「だから!俺の成仏を手伝ってってこと!」
「内容は理解しているよ!なんで俺が手伝わなきゃいけないんだ」
「え?だってそうじゃないと俺、お前の側にずっといることになるよ?俺は全然いいけど〜」
きょとんとした顔で言われたが、またそれも初耳だ。
「それも知らないんだよ、ずっと側にいるって四六時中ってことか?」
「うん!多分近くしか移動できないな〜」
零がずっと近くにいることを想像したが、煩いのは確実だ。
「零を神社においていくのは出来ないのか?」
「え〜ひどっ!!でも出来ないと思う!だってほら、」
零が指さした先は神社の敷居を越えた俺達の足元だった。なるほど、敷居をまたいだから。俺はたった数分前の自分に後悔する。
「あ〜もう分かったよ。手伝ってやる」
もうどうにでもなれの精神で俺は零の未練探しを手伝うことにした。ずっと俺の周りで騒がれるのも大変だ。
「ほんと!?やった〜!!」
零は今日一番の笑顔で喜びを表現した。もう零の元気さに早くも俺は慣れてしまった。夏の始まりと同時に、零の未練探しはスタートの合図がなった。
ファンレターくれたらすごい嬉しいよ〜
無いコーラとお茶、水派の朝食
ファンレターで褒めてくださった方がいました〜
ありがとうございます〜
一話を見ていない方はそちらから読んでいただけると〜
書き溜めていたものがあるので少しの間は早く更新できるかもです
「はぁ、わかったよ。でも何をするんだ?」
手伝うとは言っても幽霊の未練探しなんて当たり前に初めての経験だ。何をすればいいかなんてすぐに思い浮かばない。
「それが分からないから手伝ってほしいんだよ〜!でも俺がしたいことってことだよな?」
「多分そうだろうな」
零が分からないなら俺も分からない、と思ったがまあ零も幽霊になるのは初めてだろうから口に出すのはやめておいた。
「俺のやりたいことか〜なんだろうな〜」
考えるようなポーズをしている零を横目に、俺は自分の家へとやっと歩き始めた。
ずっと神社の近くの公園にいたが、もう初夏の8時頃だ。薄暗いし少し寒い。
「死んだ日は何をする予定だったか聞いてもいいか?」
「ん〜、多分遊園地に行く予定だったような?」
「多分ってなんだよ。じゃあ明日は遊園地行くか…」
そのまま俺達は一緒に賃貸アパートに向かった。小さいものだが、一般の大学生の家に比べたら大きくて設備も良い方だろう。叫んでも隣に聞こえないくらいにはいい部屋だ。
「え〜!コーラ無いじゃん〜!!」
朝特有の静寂はその煩い声によって破られた。
「あ〜?」
目をこすりながら煩い声を発した張本人のもとに向かう。朝からこんな大声を出すのはあいつしかいない。
「な〜、コーラ無いんだけど!」
「俺はお茶とか水派なんだよ。ジュースは飲まない」
俺の家だとか、勝手に冷蔵庫漁るなとか言いたいことはたくさんあったが抑えることにした。言っても無駄そうだと会って数時間だけで分かってしまった。
「で、零は他の人から見えるのか?それとも見えてるのは俺だけ?」
俺は2人分の朝ご飯を用意しながら言った。アレルギーは事前に聞いて無いと言っていたから俺の好みの朝食だ。ウインナーを炒めている間にレタスをちぎり、ミニトマトを半分に切る。朝食は米派で、昨日炊いて冷凍していた米を取り分けて電子レンジに入れる。
「見えるはず!だって神社にいる時、神社の外から俺のこと見てる人もいたし!すごい睨んでくる人とかもいたな〜。なんでだろ?」
それは座っちゃいけないような場所に座ってたからだろっと言うのも面倒で、作っておいただし巻き卵を盛り付ける。丁度温め終わった米にウインナーをのせて零のいる方に持っていく。
「ならチケットは二枚分取らないといけないのか…」
スマホで料金表を出すと結構な金額だ。俺がため息を付いていると質問が飛んできた。
「な〜、お前ジェットコースター乗れる?」
チケットの決済完了の画面を見ながら、またお前と呼んでくる零の質問に答えた。
「一応乗れる。別に好きというわけじゃないけどな」
「おっけ〜!じゃあジェットコースター乗ろう!」
「まぁいいけど」
そして俺達はお昼ご飯の時間に合わせて遊園地へと向かうことになった。
今回は少し短め、、、??
ジェットコースターに乗るハイテンション幽霊
「まぁ分かってはいたけど運転も俺なんだな」
「だって俺車持ってないし!免許もない!」
隣りに座っている零は何故か徒競走で優勝したあとかのような勝ち誇った笑みで言うが、まあ俺も幽霊が車の運転をするなんて話聞いたことがないので許してやることにした。
「ついたぁ〜!!」
俺達は結構有名な遊園地に来た。特定の時期や新アトラクションが出来たらよく番組に取り上げられて特集されるような遊園地だ。
「元気だな。で、どこ行く?」
「そりゃあジェットコースターでしょ!」
零は俺の腕を引っ張りながら目当てのジェットコースターの方に走っていった。
やめろって言っても多分無駄だと判断した俺は諦めて零に引っ張られていく。
そんなこんなで俺はずっと笑っているこの男に連れられジェットコースターに乗った。平日の真昼間はやっぱり人が少なくて待ち時間もそれほど長くはなく、零の話を聞いていたらあっという間に俺達の番になった。最初は、まだ緩やかな方のコースから始まって時間が立つごとにどんどん高くなっていく。おそらくここがジェットコースターで一番高いという瞬間、隣の男は手を上げながら楽しそうに笑いながら叫んでいた。スリルを味わえていいのかもしれないが、俺にはあれをする気力も、やる気もない。後ろのカップルは二人して恐怖の叫びを上げていた。楽しいデートになるといいが。
「楽しかった〜〜!!な、次はどこに行く?」
今さっきジェットコースターから降りてきたばかりだと言うのにこの元気さはどこから来てるんだよ。
「零は何乗りたい?」
「ん〜じゃあ観覧車!」
零は昨日やりたいことを聞いたときみたいに考えるポーズをしてから答えた。観覧車は最後に乗るようなイメージが勝手にあって遊園地に行く機会があったときはいつも夕方に乗っていたことで、何気に昼に乗ったことはない。
「おお〜!!たっか〜!綺麗〜!」
観覧車に乗ってから、いや、もうあの神社で会ってから零はずっとテンションが高い。
だが綺麗なのは同感だ。
「そうだな。遠くまで見える」
空や街並みが好きな俺は思わず口元が緩む。それを零は見逃さなかった。いや、見逃してくれなかった。
「あ〜!ライカが笑ってる〜!!」
「煩いな。俺だって笑うよ」
「え、今まであんまり笑わなかったじゃん!でも楽しんでくれてるみたいで良かった〜!」
「失礼だな。あとこのチケット代出したの俺だからな!」
「まぁまぁ細かいことは気にしないでいいじゃん!楽しんでるだろ?」
確かに楽しい。なんなんだこいつと思ったが、というか今も思っているが、最初に会ったときより不思議と話すのが楽しくなっている。そしてやっとお前呼びじゃなくなった。大きな進歩だ。
「まぁ楽しいけど」
「ツンデレだな〜」
また声を上げて笑う零を横目に、外の景色を見た。小さな着ぐるみが小さい子と一緒に写真を撮っている。綺麗な青のキャンバスに白い絵の具が浮かんでいるような空。
「お、頂上だ〜!」
零の言う通り俺達が乗っているゴンドラは、いつの間にか頂上になっていた。
「二人で写真取ろう!!」
「零は写るの?」
「え、考えたことなかった!写してみて!!」
スマホ越しに零が笑っている様子がはっきり見える。
「しっかり写ってる」
そう伝えると嬉しそうにはしゃぎながらスマホ貸して!と叫んでる零に仕方なくスマホを渡す。
「よ〜し、はいチーズ!」
慣れているのか、いい感じっぽい画角で写真を撮る。流石ハイテンション。
「よし!撮れた〜!」
零が見る写真の中には満面の笑みを浮かべる零と、少しぎこちない笑顔の俺がピースをしていた。
「ライカ写真あんま撮らないのバレバレだ〜!」
「撮る必要がなかったからな」
はいはい分かってるよ〜と何故か軽くあしらわれ、話をしていたら気がつけば地上に近づいてきていた。
一行目セリフで始まるの癖だなぁ、、
消えたもの
「よし!次は甘いものを食べに行こう!」
時刻は午後三時頃、おやつ時だ。相当混んでいることを覚悟しないといけない。
「結構並ぶと思うけど。…何食べたいんだ?」
スマホで遊園地内のスイーツが食べられる店や広場の一覧を見せながら聞く。
「ん〜、ここのパフェ食べたい!」
「じゃあ行くか。こっちだな。」
そういった瞬間、零は俺の腕をまた引っ張りながら進み始めた。零、真逆だ。元気なのに方向音痴なんだな…。
無事案内マップで目当ての店にたどり着く。想定どうり、すごく混んでいた。待ち時間が40分で済んだのはまだ運が良かったのか、と思うくらい。
零とくだらない話をしていると、あっという間に俺たちの名前が呼ばれた。
「うっまぁ〜!あ、そっちも一口頂戴!」
俺の返事など待たずに零は俺の遊園地のキャラクターがイメージされたチョコレートパフェを食べた。
「こっちもうまぁ〜!あ、お前も一口いる?」
どっちでもいいが俺のを一口取られたままでは癪で大人しく一口もらうことにした。
そしてまたお前呼びになっている。
「ん、うまいな。」
零が頼んだいちごパフェは甘酸っぱくて、トッピングのクッキーと食べるともっと美味しそうだった。流石にクッキーはくれないが。
「だろ〜?」
零は自分が作ったかのような顔で言う。が、待ち時間に零と話していたとはいえ、アトラクションに乗った後に40分も立っていたんだから、疲れている。そのせいか、甘酸っぱさが普段以上にすごく美味しかった。
結局、食べ終わった後もあれこれアトラクションには乗ったが成仏は出来そうになく、遊園地に未練はなかったみたいだ。消えたのは俺の時間と貯金だけだったな…。
今回短いね