韓国のアイドルグループ・BTSと日本人女性のアーミー(仮名)は、ひょんなことから同じ電車に乗り込み、広大な砂漠へと迷い込んでしまう。
彼らを取り巻く摩訶不思議な世界。最初は戸惑いながらも、八人は、自分とは何か、そして幸せとは何かを探り始める。
涙あり、友情あり、恋ありの、一生の絆の物語。
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目次
第1話「反乱 私ver.」
【登場人物】
BTS:韓国の男性アイドルグループ
私:日本生まれ韓国在住の19歳大学生。
(家族構成)両親は中3の頃に離婚し、母とソウルで二人暮らし。
(身長・体重)身長164cm、体重✗kg
(推し)無し
(彼氏)無し
(夢)日本の小学校の先生になりたい。
(好きな色)紫
(趣味)料理、読書、掃除、散歩
(宝物)①両親と撮った最後の家族写真
②中学の頃好きだった男子からもらった腕時計。紫色。
(外見)眼鏡無し。黒髪で、ショートヘア(新垣結衣風)。大抵パーカーとジーン
ズとスニーカー。化粧無し、アクセサリー無し。
(性格)感情をあまり表に出さず、一人でじっくり考えることが多い。真面目 で頑固。滅多に泣かず一人で落ち込むことが多い。
*彼らが使う言葉は、表記は日本語ですが、実際は韓国語を使っています
私が家出を決意したのは、12月の第一火曜日、冬晴れの日だった。
私はその日、いつも通り6時15分に起床し、私服に着替えて朝食をとり、家を出て駅へ向かった。会社員ばかりの電車に揺られて、次第に昇ってくる朝日影に目を細めながら、車窓を眺める。何週間も分厚い雲脚ばかりが見えていた空が、今朝はすっきりと青い。次々に流れていく電柱が、同じ場所できらり、きらりと光る。仁川広域市の方角では、鉛筆のような高層ビル群と、その向こうには北東アジア貿易タワーが、久々の陽を受け止めて冷たく輝いている。そんな冷えたソウルの街を、私も冷たく見つめる。何も考えず、何も思い出さず、何も感じずに、ただやり過ごしていく。
しばらくして、電車は✗✗大学前駅に停車した。いつもはここで降りていたが、私はキャリーバッグを握りしめたまま、その場から動かなかった。ここ一年、私は大学を休んだことがなかった。やがてドアがすっと閉まり、アナウンスが流れ、電車は再び発車した。
今、私は「普段」という名のレールからどんどん脱線している。これって、一体どこまで続いているのだろう。本音を言うとちょっぴり不安。でも先が見えないっていうのは、震えちゃうほど楽しい。新鮮。すごく新鮮。意味もなく、マスクの下で深呼吸をしてしまう。
やがて駅の姿が見えてきた。そういえば、ひとりでソウル駅に行くのは初めてだった。きっと混雑してるだろうな。もしも乗り遅れたら?別の飛行機に乗ったらどうしよう。今までなら母さんがいたから、何もしなくとも安心できた。でも今は、たったひとり。自分だけが頼りなんだ。
今から私、たったひとりで海を渡るの。自分がこれから為そうとしていることの重大さを考えると、鼓動がどんどん速くなっていく。ごくりと唾を飲み込んだ。眩しい朝日がどこかに反射してきらりと光った。
やがて電車は速度を落とし、ぴたりとソウル駅に到着した。大勢の乗客がどうっとホームに流れていく。マフラーをきゅっと巻きつけると、私もその中に潜り込んだ。
ここまで読んでいただきありがとうございました!!
第一話「反乱 私ver.」の“反乱”は、“家出”のことです(^^)
次回、第二話は「反乱 BTS ver.」です😆
どうぞお楽しみに!!
第2話「反乱 BTS ver.」
【登場人物】
BTS:韓国の男性アイドルグループ
私:日本生まれ韓国在住の19歳大学生。
(家族構成)両親は中3の頃に離婚し、母とソウルで二人暮らし。
(身長・体重)身長164cm、体重✗kg
(推し)無し
(彼氏)無し
(夢)日本の小学校の先生になりたい。
(好きな色)紫
(趣味)料理、読書、掃除、散歩
(宝物)①両親と撮った最後の家族写真
②中学の頃好きだった男子からもらった腕時計。紫色。
(外見)眼鏡無し。黒髪で、ショートヘア(新垣結衣風)。大抵パーカーとジーン
ズとスニーカー。化粧無し、アクセサリー無し。
(性格)感情をあまり表に出さず、一人でじっくり考えることが多い。真面目 で頑固。滅多に泣かず一人で落ち込むことが多い。
*彼らが使う言葉は、表記は日本語ですが、実際は韓国語を使っています
「ジンヒョン、忘れ物ありませんか?」
「ないわ。ジョングクは?」
「僕はだいじょうぶです」
「ねえ、列車何時発だっけ」
「えっと確か、7時35分だったと思う」
「違うよテヒョン。40分だよ」
「35分だよ」
「いや、30分だ」
リーダーがきっぱりと言った。
「30分?あと15分しかないじゃないですか。急がないと…」
「乗り遅れても、5分後にまた次のが来るから大丈夫だよジミン氏ィ」
「あ、そうか」
何かと騒がしいbts一行は、閑静なソウルの街をソウル駅に向かって、ようやくてくてくと歩き出した。
「ああそういえば。事務所には僕から連絡しておいたから、心配しなくていいよ」
ナムジュンが振り向いて言った。
「え、事務所に連絡?なんて言ったんですか?」
テテの驚いた声が後ろから叫んだ。リーダーは、厳かに答えた。
「『お騒がせしますが、自分自身を探るための旅に、メンバー全員を連れていきます。当分戻ってきません。ワールドツアーまでには帰ります。』以上」
・・・沈黙。
「失踪やん」
ユンギが呟いた。ジンが吹き出す。爆笑する長男を白い目で眺めながら、リーダーは言った。
「でも思ったより驚かれなかった。マネージャーも僕らの最近の態度に異変を感じてたんだと思う」
ジンはようやく笑うのをやめた。
「僕らの態度、そんなにおかしかった?」
「確かに、何となくそわそわしてたと思います。ナムジュンヒョンなんか、しょっちゅう行ったり来たりしたり、よくわかんないことぶつぶつ言ってたし」
グクがジミンにバックハグしながら言う。テテはその様子をじっと見ながらからかった。
「ジョングクは、vlogの撮影日間違えたしね」
いやあれは、と急いで言い訳しながらグクが振り返る。
「ほんとに30日って言われたんだよ。嘘じゃないもん」
「やめろよ」
ジミンが苦笑してグクのジャケットの裾を引っ張った。
「armyは何て言うかなあ。僕らがもし、ワールドツアーまでに戻ってこなかったら」
ホソクが聞いた。
「うわあ、ニュース絶対見なきゃ。おいbtsが消えたぞ!って大騒ぎになるよ、きっと」
ジミンがグクをおんぶしながら楽しそうに言った。
「もうじき着くよ」
ユンギがそう言ってサングラスを掛けた。早朝なので人はまばらだが、スーパーアイドルなので顔は必ず守らねばならない。メンバーは全員それぞれ巨大なサングラスを掛け、帽子を深く被った。
「これじゃ、素行の悪いヒップホップグループだな」
ホソクがメンバーを見渡して笑った。
ナムジュンを先頭に、メンバーは堂々と朝のソウル駅内に足を踏み入れた。
ここまで読んでいただきありがとうございました!!
次回、第三話は「日常 私 ver.」です😆
どうぞお楽しみに!!
第3話「日常 私ver.」
【登場人物】
BTS:韓国の男性アイドルグループ
私:日本生まれ韓国在住の19歳大学生。
(家族構成)両親は中3の頃に離婚し、母とソウルで二人暮らし。
(身長・体重)身長164cm、体重✗kg
(推し)無し
(彼氏)無し
(夢)日本の小学校の先生になりたい。
(好きな色)紫
(趣味)料理、読書、掃除、散歩
(宝物)①両親と撮った最後の家族写真
②中学の頃好きだった男子からもらった腕時計。紫色。
(外見)眼鏡無し。黒髪で、ショートヘア(新垣結衣風)。大抵パーカーとジーン
ズとスニーカー。化粧無し、アクセサリー無し。
(性格)感情をあまり表に出さず、一人でじっくり考えることが多い。真面目 で頑固。滅多に泣かず一人で落ち込むことが多い。
*彼らが使う言葉は、表記は日本語ですが、実際は韓国語を使っています
母さんは何というか、いつもどこかに偏りがあって、機嫌が良いときは優しいのだけれど、ちょっとした些細なことでカッと頭に血が上る、そんな性格だった。
だからあの夜、私が初めて将来の夢について打ち明けたときも、母さんは激怒した。
母さんは安いワイングラスを汚れた床に叩きつけて、立ち上がった。ワイングラスは粉々に砕けたが、母さんは気にもせず、立ちすくむ私を睨みつけた。
「それじゃ、今の大学はその…小学校の先生になるために行ってんの!?」
「…うん」
「ふざけんじゃないよ!そんなことなら、あんな高い私立に入学なんかさせなかった。たかが先生を目指すならそこらの教育大学で十分じゃないか!」
「…でも、この大学を志望したときから、私の夢は小学校の先生って決まってたんだよ。ここを選んだのは、私のやりたいことが一番学べる環境だったからで…」
「やりたいことなんて、所詮、娯楽だろう!?」
「勝手に妄想しないで!…何も知らないくせに、私の人生に口を挟まないでよ!」
「“私の人生”?ふん、家も飯も用意してもらってる分際で、偉そうなこと言うんじゃないよ。大学のバカ高い授業料だって、全部母さんが汗水たらして稼いだ金で払ってるんだからね!?」
「今まで育ててくれたのは感謝してるよ。でも母さんに私の人生を決められるのは嫌なの!自分の人生は自分で決めたいの!」
「あっそ。じゃあ自分で全部すればいい。金も毎日安いアルバイトで稼いで、授業料も自分で払えばいい。家も出ていけ。家賃から水道代から何から、全部自分で払うんだからね」
「…そんな」
「当たり前だろ。金を払ってる母さんの気持ちも考えずに好き勝手やりたいんなら、自分の世話ぐらい自分でするのが筋でしょうよ」
「…わかった」
「ふん、簡単に言うんじゃないよ」
「私、家出るから」
「あっそ。勝手にしな。母さんは知らないから」
そして今日、私は古いキャリーバッグに身の回りのものを押し込んで、家を出たのだ。出る前に、母さんの寝ている寝室に置き手紙を置いたとき、母さんの寝顔はいつもと全く変わらなくて、胸がきゅっと痛んだ。でも家出の決意は少しも揺るがなかった。
今私は、駅のホームのベンチに座って、もうすぐやってくる電車を待っている。もうすぐ着くだろう。乗ったら、後戻りはできない。これから飛行機で日本に渡って、アパートを借りて、東京の教育大学に通おうと思っていた。
ホントのこと言うと、家に帰りたかった。いくら怒られても、私はやっぱり母さんが好きだから。でもこれは全て、夢を叶えるため。迷ってはならない。いつか先生になれたら、そのときは胸を張って母さんに会いに行こう。
それまでは一人で、頑張るしかないんだ。
電車が遠くに見えた。私はすっくと立ち上がった。
ここまで読んで頂きありがとうございました!!
第四話は「日常 BTS ver.」です😊
どうぞお楽しみに😎
第4話「日常 BTS ver.」
【登場人物】
BTS:韓国の男性アイドルグループ
私:日本生まれ韓国在住の19歳大学生。
(家族構成)両親は中3の頃に離婚し、母とソウルで二人暮らし。
(身長・体重)身長164cm、体重✗kg
(推し)無し
(彼氏)無し
(夢)日本の小学校の先生になりたい。
(好きな色)紫
(趣味)料理、読書、掃除、散歩
(宝物)①両親と撮った最後の家族写真
②中学の頃好きだった男子からもらった腕時計。紫色。
(外見)眼鏡無し。黒髪で、ショートヘア(新垣結衣風)。大抵パーカーとジーン
ズとスニーカー。化粧無し、アクセサリー無し。
(性格)感情をあまり表に出さず、一人でじっくり考えることが多い。真面目 で頑固。滅多に泣かず一人で落ち込むことが多い。
*彼らが使う言葉は、表記は日本語ですが、実際は韓国語を使っています
忘れもしない。2013年6月13日。あの日僕らは、心を踊らせながら、新しい世界へと足を踏み入れた。
初めてソウルに来たときは、不安でいっぱいだった。
練習生は、みんな強かった。でも敵だった。ただ勝つため、選ばれるためにひたすら必死だった。毎日毎日自分だけを見つめて歌い、踊った。それでも、母さんが恋しくて、夜はラーメンを食べながら一人で泣いた。
自分が何を求めているのかもわからなくなって、練習が辛くて辛くてやめたいと思った。父さんに電話で泣きながら「やめたい」と言ったら、「辛かったらやめていいよ。他にも仕事はたくさんあるから、探してみよう」と優しく言われた。そのとたん、簡単に諦めた自分が急に恥ずかしくなった。
誰よりも遅く寝て、誰よりも早く起きる。もっともっと自分に厳しく、努力しなきゃ。練習したい。チームに入りたい。メンバーがそう思わせてくれた。
僕らは些細なことからすぐに喧嘩になった。それでもいつのまにか仲直りしていた。不思議だった。
僕らは世界一になりたかった。世界を見てみたかった。
初めてのライブ、初めてのサイン会。幸せだった。こんなにも沢山の人たちが僕らのことを求めている。毎日がひたすら目まぐるしかった。街に出かけると、自分の写真や自分の歌声をどこかで必ず耳にした。最初は照れくさかったけれど、もう慣れた。
そしてデビューから何年も経った今。ついに僕らは、”世界”のスーパースターに上り詰めた。歌番組やオリコンなどでの一位獲得はもちろん、ワールドツアーが年に何回も行われた。他のスーパーアイドルのメンバーとの熱愛を何度も心配された。アメリカのグラミー賞ノミネート、国連でのスピーチ、ホワイトハウスでの会談…。もう、世界だった。armyは世界中にいた。世界が僕らのことを待っていた。
僕らは最初、7人だけだった。
でも今はarmyがいる。
僕たちは防弾だ。それは永遠に変わらない。
でも…
最近、僕らは居心地の悪さを感じている。華やかな衣装、どこまでも続くレッドカーペッド、向けられる大量のカメラ、大きすぎる会場、そして熱気…。
今思えば、生きるために必死に歌っていた、あの頃が懐かしくてたまらない。もう僕らは、僕らだけのものではなくなったのだ。世界のものになってしまった。
今の僕らの本音は、新曲に込めている。
「皆わたしたちが最高だと言うけれど、それも、今はただ重いだけ。ただ歌い、走っていたあの頃の少年が、まだわたしたちの中にいる。――さあ、今からが始まりだ。」
そう、今からが始まりだ。僕らはあまりにも眩しすぎる栄光のなかで、自分自身を見失ってしまった。
だから、僕らは旅に出る。もう一度、あの頃の自分自身を探す旅へ。
愛しいarmy。君たちと、正しい道を歩んでいくために。
さあ、今からが始まりだ。
第四話「日常 BTS ver.」ここまで読んで頂きありがとうございました!!
”僕ら”はBTS全員という設定です(^^)
今回は、彼ら一人ひとりの練習生時代のエピソードを取り入れてみました(*^_^*)
いかがでしたか?
次回は、第五話「事件」です✍
お楽しみに!!
第5話「事件」
【登場人物】
BTS:韓国の男性アイドルグループ
私:日本生まれ韓国在住の19歳大学生。
(家族構成)両親は中3の頃に離婚し、母とソウルで二人暮らし。
(身長・体重)身長164cm、体重✗kg
(推し)無し
(彼氏)無し
(夢)日本の小学校の先生になりたい。
(好きな色)紫
(趣味)料理、読書、掃除、散歩
(宝物)①両親と撮った最後の家族写真
②中学の頃好きだった男子からもらった腕時計。紫色。
(外見)眼鏡無し。黒髪で、ショートヘア(新垣結衣風)。大抵パーカーとジーン
ズとスニーカー。化粧無し、アクセサリー無し。
(性格)感情をあまり表に出さず、一人でじっくり考えることが多い。真面目 で頑固。滅多に泣かず一人で落ち込むことが多い。
*彼らが使う言葉は、表記は日本語ですが、実際は韓国語を使っています
遠くに電車がやってくるのが見えた。私はすっくと立ち上がった。
ふと、ん?と思った。変だな、と思った。腕時計を見る。9時24分。
あれ、なんか早くない?
私は韓国語に光る電光掲示板を見上げ、乗り場の端から端までを見渡し、また電光掲示板を見上げた。心臓が胸板を強く打ちはじめる。
ああ、やっちまった…。乗り場を間違えた!
どんどん息が荒くなる。間に合わなかったらどうしよう…また腕時計をちらりと見る。私が乗るはずの電車の到着まで、あと8分だった。
深呼吸をする。大丈夫。8分もあるなら間に合う。どこの乗り場か、誰かに聞けばいいんだ。そしてあたりを見渡し、近くに立っている駅員を見つけた。勇気を出して近づき、声をかける。
「あの、すみません」
「…はい?」
「仁川国際空港第1ターミナル駅行きって、30分到着ですよね?」
「はい、そうですが」
「あの…何番乗り場に行けばいいですか?」
「あー、3番乗り場ですね」
「あ、ありがとうございます」
お辞儀をして、キャリーバッグを引きずりながら、急いで3番乗り場への階段を降りる。息がだいぶ戻ってきた。落ち着け、落ち着け。まだ時間はある。大丈夫、きっと間に合うから…。
アイドルのポスターが壁に大きく貼られた階段を降りていくと、3番乗り場のホームは思ったより人が少なかった。少し離れた所に、全員サングラスを掛けてジャンパーを羽織った、なんだか怪しい男の人たちが立っているくらい。
私は、ほうっと安堵の溜息をついてそばのベンチに腰掛けた。危ないところだった。ほんとに、早めに気づいてよかった。まじで乗り遅れるところだった。
「あ、来た来た」
遥か向こうで電車のライトが光る。正真正銘の空港行きだ。
私はキャリーバッグを引きずりながら、停車した電車に近づいた。ドアがすっと開く。電車内に入りながら横目でちらっと見ると、あの怪しい人たちもガヤガヤと電車に乗り込んでいた。
「発車いたします」
私は、はっ?と思った。まだ停車して20秒も経っていない。
「ちょ…どういうこと?」
私が慌てている間に、ドアがすっと閉まる。何かがおかしい。そして号車内を見渡して、気づいた。
乗客がいないのだ。
前を見ても後ろを見ても、この号車には一人も客が乗っていない!
・・・これはなにかの間違いだ。この時間帯、空港に行きたい人は山ほどいるはずなのに。大体、ホームに人がいない時点で、おかしいって気づくべきだったんだ。どうしよう。どこか変なところに行くんじゃなかろうか。警察に通報するべきかな。それとも運転手さんのところに行ってみる?
一人で考えていて、はっと気づいた。
そうだ、さっきのあの怪しげな男の人達も、確かに、この電車に乗ってた!多分別の号車にいるはずだ。
よし、行って話を聞いてみよう。私よりは年上だろうから、なんとかしてくれるかもしれない!
私はキャリーバッグを持ち直すと、誰もいない席を通り過ぎながら、隣の号車のドアに向かって歩きだした。不思議な感覚だった。心臓がドキドキ鳴っていた。
そして、車両間のドアに手を触れたときだった。
「キキーッ・・・ゴトンッッ!!!」
電車がすごい勢いで揺れた。息もつかぬまま、私は電車の前方にふっ飛ばされ、窓に容赦なく叩きつけられた。頭が真っ白になった。まるで巨人が電車を掴んで、空にぶん投げたみたい。天井に叩きつけられたと思ったら、今度は床。ごろごろと転げ回る。どうなってるの、一体!?吐きそうになる。隣の人達は大丈夫だろうか。どうでもいいのに、ふと心配してしまう。
ちらりと車窓が見えたとき、私は「夢を見てるんだ」とはっきり思った。
だって、さっきソウル駅を出たんだよ?まだ発車して五分も経ってないんだよ??
それなのに・・・
なんで、海なの!?
車窓から見える。水面がキラキラ光っているのが。船の上をかもめが飛んでる…。なぜ!?車窓から目が離せずにいた私は、いつの間にか手を離れていたキャリーバッグが、ぐるぐる旋回しながらこっちに吹っ飛んできたのに、全く気づいていなかった。
のたうち回る列車。外は海。もうわけ分かんない。
突然頭に強い衝撃を感じた。目の前が真っ暗になった。
ここまで読んで頂きありがとうございました!!
なんかものすごいことになってきました笑
次回は第六話「出会い」!!よろしくおねがいしまーす(^^)
第6話「出会い」
【登場人物】
BTS:韓国の男性アイドルグループ
私:日本生まれ韓国在住の19歳大学生。
(家族構成)両親は中3の頃に離婚し、母とソウルで二人暮らし。
(身長・体重)身長164cm、体重✗kg
(推し)無し
(彼氏)無し
(夢)日本の小学校の先生になりたい。
(好きな色)紫
(趣味)料理、読書、掃除、散歩
(宝物)①両親と撮った最後の家族写真
②中学の頃好きだった男子からもらった腕時計。紫色。
(外見)眼鏡無し。黒髪で、ショートヘア(新垣結衣風)。大抵パーカーとジーン
ズとスニーカー。化粧無し、アクセサリー無し。
(性格)感情をあまり表に出さず、一人でじっくり考えることが多い。真面目 で頑固。滅多に泣かず一人で落ち込むことが多い。
*彼らが使う言葉は、表記は日本語ですが、実際は韓国語を使っています
夢をみた。
小学生のとき、母さんとふたりで図書館で借りた、北欧が舞台の大きな絵本。透明感のある挿絵が、とってもきれいな絵本だった。こんなふうに、うさぎやリスと仲良くなって、森のなかで暮らせたらいいなと思った。
そしてまさに、ここはその絵本の世界だった。
夕方の湖に、ぽつんとボートが浮かんでいる。乗っているのはわたし。子供の頃のわたし。膝の上に真っ白なノートを広げて、色鉛筆でいっしんに森の絵を描いている。ふと手が疲れたら、夕空をうつしたきれいな水面に触れてみる。透きとおった湖水はひんやりと冷たくて、ふわりと森の香りがする。いい匂い。
やっと絵を描き終わって満足感に浸っていたら、いつのまにか、あたりはすっかり闇に沈み、空には星が瞬きはじめる。少女の私は急いでボートを漕いで岸にのりあげると、慣れた手つきで桟橋に縄を掛ける。
そして軽やかにスキップしながら、母さんの待つ森の小屋へ帰っていくのだ。森の向こうで、煙突からの煙が夜空に上がっているのが見える。夕飯のいい匂いが漂ってくる…今夜はシチュー?それともグラタン?
夜は母さんとおしゃべりしながら、美味しいごはんをお腹いっぱい食べて、星の光を浴びながら、ふかふかのベッドで眠るの。母さんが隣で、優しい子守唄を歌ってくれる。なんて幸せなんだろう。ずうっとずっと、こうしていたい…。
ふと、誰かに肩をゆすられる。やさしい手だ。もう、朝なの…?でも、たった今寝たとこなのに。まだ眠い…もうちょっとだけ、このままでいたい…
「―ちょっと、もしもし」
「ちゃんと生きてる?」
「うん、寝てるだけだ」
ふっと意識が戻ってきた。急にズズッと体が重くなる。全身、特に頭がやけに痛い。
ゴトンゴトンという振動からして、電車が動いているようだ。
気を失う前の記憶が、一気に津波のように戻ってくる。そうだ私、家出したんだ。そばにいるのが母さんのわけがない。
たしか、乗客がだあれもいなくて、隣の車両に行こうとして…それで(なぜか)ふっ飛ばされた。もしかして、あれも夢だったのかな?だとしたら、なんで私は床に寝そべってる?それに、このぼそぼそした話し声は誰だ?誰か人がいるの?
うっすら薄目を開けると、真っ白な天井が見えた。視界がぼやけている。黒いのがこっちを見おろしてる。なんか化け物みたいで怖い。多分人だろうけど。いち、に、さん、し・・・何人いるの!?六人?七人?
「あ、起きた」
目を細めながら一生懸命頭の数を数えていると、誰かが叫んだ。その声はきーんと私の頭を貫通した。あまりの痛みに、思わず目をぎゅっと閉じる。
「大丈夫ですか?」
「起き上がれますか?」
次々に問われ、私はうめきながら首を横に振った。起き上がろうと腹筋に力を入れると、全身に激痛が走る。もしかして私、一度死んだのだろうか?
ともかく、誰かもわからん人物に背中を支えてもらいながら(目を固く閉じたまま)私はゆっくりと体を起こした。
ふーっとため息をつきながらようやく顔をあげると、こちらを覗き込んでいた人物と、もろに目が合ってしまった。
息が止まる。
「大丈夫ですか?」
低い声で問われて、私は人形のようにぎこちなくコクコクとうなずいた。なんて大きな瞳だろう。危ない危ない。吸い込まれるところだった。
ぼんやりした頭のまま、あたりを見回す。どうやらここにいるのは彼らだけのようだ。もう一度数えると七人だった。全員男性。皆深刻そうに何か話している。
記憶を巡らせていると、すぐに気づいた。
「あの、空港行きの電車に乗った人たちですか?」
私は背中を支えてくれた人を振り向いて、たずねた。何となく、この人が一番話しやすいような気がしたからだ。
すると、その人ではなく、鋭い目つきをした人が素早く答えた。
「そうです。あなたも?」
「はい…。でも、さっき電車が揺れて…それで…」
ああ、そうなんですよと、周りが一斉に相槌を打った。そして、口にピアスをした人が口を開いた。
「僕らも空港に行くはずだったんです。でも途中で電車が揺れて、みんな気を失って…。気がついたら、何もなかったように電車は走ってたんだけど…」
そこで彼は言葉を切り、下を向いた。周りもすっかり困り果てたように黙ってしまった。
「…それで、どうしたんですか?」
私はやっと声を絞り出した。すると背中を支えてくれた人が黙って窓を指差した。私は立ち上がって、窓を見た。
倒れそうになった。
「…さ、さばく…?」
声がかすれる。
本当に砂漠だった。写真でしか見たことがない風景。緑がない。サボテンさえも。岩と砂。ただそれだけだ。
電車は、広大な大砂漠の中を走行していたのである。
「なんで…?」
私は砂漠から目を離せずに呟いた。だって、さっきは海だったのに…本当に、なぜ!?
「誰にもわからない」
諦めたような声が返ってきた。私は全身の痛みも忘れて、勢いよく振り返った。向かいの窓からも、全く同じ眺めだった。砂漠がどこまでも広がっている。どこに向かっているのか、どの国にいるのかもわからない。そして、この電車の中には、私とこの七人の男の人達だけ。
私はあまりのショックに、その場にペタンと座り込んだ。
「あ、ちなみに自己紹介しておくと、僕はキム・テヒョンです」
さっき目が合ったイケメンが明るく言った。こんな状況でよく自己紹介なんてできるなと思いながらも、私は答える気にもなれなかった。
第六話「出会い」、お楽しみいただけましたか?🌱
はたして、btsメンバーと ”私”はどうなってしまうのでしょうか…???
まだ、極秘です🤐
どうぞお楽しみに❤
次回は、第七話「あなた誰?」です(^^)
ぜひ読んでね。
第7話「あなた誰?」
【登場人物】
BTS:韓国の男性アイドルグループ
私:日本生まれ韓国在住の19歳大学生。
(家族構成)両親は中3の頃に離婚し、母とソウルで二人暮らし。
(身長・体重)身長164cm、体重✗kg
(推し)無し
(彼氏)無し
(夢)日本の小学校の先生になりたい。
(好きな色)紫
(趣味)料理、読書、掃除、散歩
(宝物)①両親と撮った最後の家族写真
②中学の頃好きだった男子からもらった腕時計。紫色。
(外見)眼鏡無し。黒髪で、ショートヘア(新垣結衣風)。大抵パーカーとジーン
ズとスニーカー。化粧無し、アクセサリー無し。
(性格)感情をあまり表に出さず、一人でじっくり考えることが多い。真面目 で頑固。滅多に泣かず一人で落ち込むことが多い。
*彼らが使う言葉は、表記は日本語ですが、実際は韓国語を使っています
私が気を失っている間、七人はすべての車両を見て回ったという。そこで一番不可解だったのは―空港行きの電車に乗客が誰もおらず、しかも砂漠を走行している、という事実も十分不可解なのだが―
先頭車両の運転席には、誰も座っていなかったというのだ。
でも、電車は走り続けているのである。
「信じられないかもしれないけど、」
背中を支えてくれた人が、私に言った。
「ホントだった。この電車には、運転手もお客さんもいない。いるのは、あなたと、」
手で私を指す。
「僕らだけ」
皆ため息をついた。
「まあ、今はどうしようもないから、とりあえずテヒョンみたいに自己紹介しようよ」
右端の人が初めて口を開き、皆を見回した。
「そうだね」
「うん、ジンヒョンの言う通りです」
「じゃ僕から」
右端の人が、顎に手を当てて、何か言いたげな目で、私をじっと見つめた。そのまま固まっている。私はどうすることもできず、見つめ返した。訳がわからない。そのまま沈黙していると、周りが笑いをこらえているのがわかった。
彼はしばらくして言った。
「君、たぶん僕らのこと知ってると思うんだけど?」
私は「は?」と言ってしまいそうになった。
いきなり何言い出すんだ、この人。
「あのごめんなさい…知らないです」
「マジで?」
「はい」
すると、口にピアスをした人が声を上げた。
「僕らの顔、見たことないですか?街とかで」
私は真剣に考えた。こんな知り合いいたっけ…?いや、いるはずがない。
…もしかして、有名人?
確かにありえる。こんなに顔とスタイルの良い七人組ってことは、アイドルかな?韓国はアイドルが多いからなあ…。街で見かけるっていうのは、たぶんポスターか何かという意味だろう。でもごめんなさい。私は韓国の音楽はあまり聞かないので、K-popアイドルとはてんで縁がないんですよね。
どう答えようか迷っていると、
「僕らは遠い星からやって来たんだ」
彼が静かに言った。その場はしーんと静まり返った。
「遠い星からやって来た…WWHのジンだ。29歳独身」
よろしく、と手を差し出される。
唖然、である。
「え…どこまでが名前ですか?」
「え?ああ、だから、僕はWWHのジンだ」
「ダブリューダブリューエイチのジン」
私は変な名前だなと思いながら呟いた。
「あのね、ダブリューダブリューエイチっていうのは、ワールドワイドハンサムの略でww」
ジンが自分も笑いながら言った。私は絶句した。
「ワールドワイドハンサム…」
「このひと、自分がイケメンだと思ってるんですよww確かにイケメンだけど」
背中を支えてくれた人が笑いながら言った。
「僕はミン・ユンギです。あー、29歳だけどジンヒョンよりは年下です。よろしく」
ジンの隣の人がクールに言った。
「それだけ?」
目が鋭い人が聞いた。ユンギは軽くうなずいた。
「まあいいけど…僕は、リーダーのナムジュンです。キム・ナムジュンです」
リーダー?ああ、やっぱりアイドルなんだと思いながら、握手をした。大きな手だった。
次に右から三番目の、優しい面長の人が言った。
「僕はじぇいほーぷ…じゃなかった、」
慌てて言い直す。周りがどっと笑った。
「チョン・ホソクです。希望的存在です」
元気にウインクしてきた。皆と一緒に笑いながら、じぇいほーぷっていうのは、芸名だろうなと思った。
それにしても、騒がしい。
「次はジョングギ言えよ」
「いや、ヒョン駄目だよ、年齢順だよ」
「じゃジミナから」
すると、背中を支えてくれた人が、前髪をかきあげた。なんだかどきりとしてしまった。
「僕はジミンです。年は26歳…」
「あーはいはいはい」
隣からイケメンが割り込んだ。イラッとしたので、私は思わず睨んでしまった。しかし憎らしいことに、彼は私に睨まれたことに全く気づいていなかった。
「僕はキム・テヒョンです。本名はVです」
私を除く全員が爆笑した。
「嘘つくなよ。本名がキム・テヒョンだろww」
「Vが本名ってwwそんな韓国人いるわけないよ」
私はやっと意味がわかったので、みんなと一緒に笑った。
「これでみんな言った?」
「いやあと一人残ってます」
「おっジョングギだぞ」
「マンネだマンネだ」
口にピアスをした人に注目が集まった。
「ああ、僕はチョン・ジョングクです」
さらりと言う。
「爽やかだね」
ジンが「クーッ」という顔をした。ジョングクが失笑する。
「じゃ、あなたの自己紹介をどうぞ」
リーダーが私を見た。皆も一斉に私を見る。
「あー…」
私は困ってしまった。
おそらく彼らは、大人気アイドルに違いない。全身に溢れるこのカリスマ。自信、個性、ユーモア。そして何よりも、この一般人とは思えないビジュアル…
まだ数分しか話していないにも関わらず、すでにこの人達に惹かれている自分がいる。こんなに魅力的な彼らなら、さぞファンも多いんだろう。
スーパーアイドルに自分の名前を教えるって、どうなの?なんだか、とてつもなく危険な気がする。この人達の後ろには、一体どれだけの数のファンがしたがえているんだろう。服装とかアクセサリーから少しでも熱愛を匂わせると、過去の画像やら何やらを引っ張り出してきて、たちまちプライベートの奥底まで突き止めてしまうのだ。今は合成画像とかも出回っている。私と彼らが親しくなれば、ほんとにどうなるかわからない。しかも、傷つけられるのは私なのだ。そう考えると、空恐ろしくなった。
だから私は、慎重に言葉を選びながらこう言った。
「年齢は19歳、ソウルに住む大学生です。日本人です」
「名前は?」
ジミンが無邪気に尋ねた。
「あの…個人情報だから」
そう言いながら、私は彼らの顔を見ることができなかった。
「そう。別にいいよ」
「教えたくない人もいるしね」
意外な反応に、驚いて面を上げる。
「あの…いいんですか?」
呆然としている私を見て、皆ニコニコ笑っていた。
「全然構わないよ」
「うん、気にしないで」
あまりの優しさに、私が言葉を失くしていると、急にテヒョンが日本語をしゃべった。
「アナタ、日本人デスカ?」
「ハイ、ソウデス」
私がテヒョンの高い声を真似すると、みんな感嘆したように言った。
「韓国語上手ですよね」
「うん、てっきり韓国人だと思ってた」
私は照れてしまった。
「中学生の時から韓国にいるんです」
説明すると、皆ああー、と納得したようだった。
「でも…なんて呼べばいいかなあ」
ジミンが真剣に悩んでいる。
「どういうこと?」
ジョングクが尋ねた。
「ほら、名前がわからないから…」
「ああ、仮の名前をつければいい」
ナムジュンがこともなげに言った。
「仮の名前…」
皆が私をじっと見たので、私はどぎまぎしてしまった。
「アーミー、はどうですか?」
しばらくしてジョングクが呟いた。アーミー。英語で軍隊という意味だ。でも、なんで???
「ああ、いいね。かなりいい」
リーダーが細かくうなずいている。
「アーミーを短くしたらアミでしょ。アミって、友人とか愛人っていう意味なんだよ。いいんじゃない?」
ジミンが得意げに言った。皆も賛成のようだった。よくわからないけど、
「アーミー」
私も小さく呟いてみた。なかなかいい響きだなと思った。
「じゃ、私はみんなをなんて呼べばいいですか?」
七つの顔を見回すと、リーダーが言った。
「僕は…ナムジュニオッパでいいよ」
「いや、ラプモンオッパだろ」
「ラプモンww」
「僕は、あー…ジニオッパでいっか。できればワールドワイドハ…」
「ユンギオッパでいいです」
「ホビホビでいいよ」
「僕のことはジミニオッパ」
「テヒョニオッパ!」
「僕はジョングギオッパでいいですよ」
…いや待て待て、そんな一斉に言われても覚えられんし!
---
それにしても私、
いつまでこの人達と一緒にいなきゃいけないんだろうか…???
まあ、いいや。楽しそうだし、当分このままでも。
第七話「あなた誰?」、お楽しみいただけたでしょうか?❤
*アーミーについて。
ジョングクが提案した”私”の仮の名前「アーミー」は、btsのファン名である「army」からとったものです!(アーミーちゃんはそのことを知りませんけどね)
次回は、第八話「情報収集」です(^^)
どうぞお楽しみに😀
第8話「情報収集」
【登場人物】
BTS:韓国の男性アイドルグループ
私:日本生まれ韓国在住の19歳大学生。
(家族構成)両親は中3の頃に離婚し、母とソウルで二人暮らし。
(身長・体重)身長164cm、体重✗kg
(推し)無し
(彼氏)無し
(夢)日本の小学校の先生になりたい。
(好きな色)紫
(趣味)料理、読書、掃除、散歩
(宝物)①両親と撮った最後の家族写真
②中学の頃好きだった男子からもらった腕時計。紫色。
(外見)眼鏡無し。黒髪で、ショートヘア(新垣結衣風)。大抵パーカーとジーン
ズとスニーカー。化粧無し、アクセサリー無し。
(性格)感情をあまり表に出さず、一人でじっくり考えることが多い。真面目 で頑固。滅多に泣かず一人で落ち込むことが多い。
*彼らが使う言葉は、表記は日本語ですが、実際は韓国語を使っています
「あっ!!」
「うわっ、もうびっくりした。あーテヒョンwwいきなり大声出すなよ。ヒョンびっくりして心臓が…」
「テヒョン、どうしたの?」
「…スマホがない」
「えっ」
皆ぽかんとした。私は急いでバッグの中を探った。
…ない。
「私もありません」
顔を上げてそう言うと、皆も次々に自分のリュックやポケットを漁りはじめた。
「あれ…おかしいな」
「さっきまでは確かにあったのに…」
「落としたのかな」
「いや、違う」
リーダーがゆっくりと首を振った。
「誰かが何かを仕掛けてるんだ。予めこの電車を乗っ取って、乗客を乗せず、僕らのスマホをどこかに隠して通報を防ぎ、電車を暴走させて…」
「砂漠に連れてくる?」
ジミンが言った。
「つまり、」
ジョングクが慌てて咳き込んだ。
「スマホが無いってことは、僕らは自分たちが今どこにいるかも、わからないってことじゃないですか」
「電車がどこに向かってるのかもわからないし…」
テヒョンが床を見つめて不安げに呟く。
「その上、誰にも連絡できないから…助けが、来ない…」
ジミンも途方に暮れて窓の外を見ている。
「だいじょーうぶ!」
突然ジンが大声で叫んだ。
「何をそんなに怖がってんだ。ヒョンがいるだろ?このワールドワイドハ…」
「まずはどうにかして電車を止めないとね」
ホソクがWWHを遮った。リーダーも顎に手を当ててじっと考えこんでいる。長男はしばらくその場に悲しそうに突っ立っていたが、やがて大人しく座った。
うん、えらい。
「電車を止めるって、どうするの?運転手さんもいないのに…」
ジミンが当惑する。
「うーん…」
どうしよう。私も一生懸命考える。
すると、ずっと黙っていたミンユンギが空中にぱっと手を上げて、叫んだ。
「すみません電車止めてください!!」
しーん…
ジンがユンギを見て呆れたように笑った。
「そんなんで止まるならとっくの昔にやっとるわ」
「もしかしたらと思って…」
「確かに、やらないよりマシですよ」
「ヒョンかわいいww」
六人は挑戦した次男を次々に愛でた。ユンギもまんざらではないようだった。
しかし、である。
「ねえ、なんか速度が落ちてない?」
テヒョンがぽつりと呟いた。
え、ほんと?と私達は一斉に窓に駆け寄る。
「あっほんとだ」
「止まろうとしてる」
ジョングクの隣で窓を見ていると、電車の下の方でものすごい砂埃が巻き上がっているのが見えた。
「あっ、見てあそこ。線路が…」
先頭にいたジミンが前方を指差した。電車のすぐ前で、線路の先が消えている。
電車は「キキ―ッッ!」という嫌な音をたてながらゆっくりと停車した。
私達は呆然とミン・ユンギを振り返った。
「おまえ…すごい」
「ユンギヒョンの必死の叫びが届いたんだね、きっと」
「ヒョンのおかげだ」
「ほんとにそうだよ」
「ヒョンすごい‥‥」
ジョングクは感嘆したように次男を見た。ユンギは「俺って天才」という顔で椅子に座っていた。
皆は口々にユンギを褒めながら、今度はドアから外に出ようと次々に走って行った。でも私は、しばらくそこにぽつんと立って、じっとしていた。
電車が止まったのは、すごい。とってもすごい。でもさ、よく考えると、こんな砂漠のど真ん中で停車したところで、嬉しいことは一つもないのだ。まずスマホはないし、水も食料もないし、建物もない。生きて帰れるかさえもわからないんだから。
「おっ、開きそう」
「ちょっと邪魔だよジミナ。どいてて」
ジンとホソクが顔を真赤にさせながら、砂で固まったドアを開こうとしてる。そこにジョングクが腕をまくりながら近づいた。
「ヒョン、僕にまかせてください」
「おっ、たのもしいねえ」
「筋肉モンスターが来たぞ」
「ジョングギ頑張れ」
ジョングクは、ぐぐぐ…と歯を食いしばりながら、渾身の力でドアを押している。両耳が真っ赤だ。それを見てみんな真似したり笑ったり。ジョングク本人も、押しながら笑ってる。ほんとに楽しそうだ。私はなんだか寂しくなった。
…教えてほしい。なんでそんなにはしゃげるの?なんでそんなに楽しそうなの?
ジョングクの恐るべき力で、ついにドアが開いた。明るい陽の光がこぼれてくる。
ジョングクはふーふー言いながら笑ってる。ジンとホソクが、ジョングクのまねをしながら笑ってる。ユンギとナムジュンはそんな彼らを見て笑ってる。ジミンはジョングクにいたずらしながら笑ってる。
よかったね、ドアが開いて。
ひとりあまり楽しめないでいると、こちらをじっと見ていたテヒョンと、ばっちり目が合った。私は、何?と不機嫌な顔をしてしまった。そしてすぐに後悔した。
ところが、テヒョンはにっこり笑った。
皆は、ジョングクが開いたドアから砂漠に飛び出していく。
テヒョンも私から目を離すと、黙ってドアの向こうに消えた。
「アーミ、おいでよ」
ジミンが立ちすくむ私を振り返った。優しく笑っている。私はなぜか、胸がはち切れそうになった。
「うん」
私はやっとうなずいて、急いでジミンの背中を追いかけた。
第八話「情報収集」、いかがでしたでしょうか?
あんまりbtsが魅力的すぎて、アーミーちゃん困ってます💦
寂しいんですね、きっと。
次回は、アーミーちゃんが沢山笑顔になりますように!頑張って書きますね😄
第九話は「Spring Day」です!!この題名、armyの方は思わず「ドキッ」とてしまったのでは…?😁
お楽しみに。
第9話「Spring Day」
【登場人物】
BTS:韓国の男性アイドルグループ
私:日本生まれ韓国在住の19歳大学生。
(家族構成)両親は中3の頃に離婚し、母とソウルで二人暮らし。
(身長・体重)身長164cm、体重✗kg
(推し)無し
(彼氏)無し
(夢)日本の小学校の先生になりたい。
(好きな色)紫
(趣味)料理、読書、掃除、散歩
(宝物)①両親と撮った最後の家族写真
②中学の頃好きだった男子からもらった腕時計。紫色。
(外見)眼鏡無し。黒髪で、ショートヘア(新垣結衣風)。大抵パーカーとジーン
ズとスニーカー。化粧無し、アクセサリー無し。
(性格)感情をあまり表に出さず、一人でじっくり考えることが多い。真面目 で頑固。滅多に泣かず一人で落ち込むことが多い。
*彼らが使う言葉は、表記は日本語ですが、実際は韓国語を使っています
砂漠は、冬ではなかった。灼熱地獄だった。
電車を降りて、何時間経ったんだろう。振り返っても、もう電車の姿はない。私たちの足跡が延々と続いているばかり。暑すぎて、みんなコートやマフラーは途中で脱ぎ捨ててしまった。テヒョンは下着まで脱ごうとしたが、それはさすがに皆で止めた。
時々岩陰で休み、またすぐ歩き出す。前を歩く七人の大きな背中がぼやける。影は短い。太陽はまだ真上だ。
彼らも、最初は元気100%だった。あっちに行ったり、こっちに行ったり。ふざけたり、お喋りしたり。のんびり歩いていたけれど、皆段々疲れてきて、今はただ無言でひたすら進むばかり。
タオルを巻いた首筋に、ジリジリと太陽を感じる。喉が渇いた。水が欲しい。ああ、思いっきり冷たいシャワーを浴びたい。頭の中はかき氷やアイスや、キンキンに冷えたジュースでいっぱい。他に何も考えられない。口の中は砂と汗の味。頭がぼうっとする。こんなことになるなら、電車の中にいたほうがよかったな。
「アーミ、大丈夫?」
ジョングクが足を止めて、心配そうに聞いてきた。私は頑張って微笑んだ。
「うん、気にしないで…」
ホントは限界だった。
「僕、ちょっと無理かもしれない」
そう呟いてしゃがみ込んだのは、さっきまで、下着を脱ごうとしていた人だった。
「テヒョン…もう少しで、あの木に着くから。それまで頑張ってよ」
ジミンが励ましている。ジミンの声もかなり疲れていることに私は気づいた。
テヒョンは膝に手を当てて、マラソン選手みたいにはあはあ言っている。私はアイスやかき氷が頭から吹き飛んでしまった。
「どうした?大丈夫か?」
先頭を歩いていた長男が駆けつけた。暑い暑いと一番文句を言っていたくせに、結局彼が一番元気らしい。
「くらくらするんだ…吐き気もするし」
テヒョンは目を閉じていた。
「熱中症かもしれないね」
リーダーが汗を拭いながら冷静に言った。ジミンは自分のことのように心配している。でもなぜか、熱中症と聞いた途端、テヒョンは元気になった。
「熱中症?ああ、熱中症か。なら大丈夫だ。僕、毎年なってるから」
そういう問題じゃなかろう。
周りの心配を無視して、テヒョンはフラフラと2、3歩歩きだした…ところで、ばったん!見事に大の字に倒れ込んだ。
「ヒョン!!」
ジョングクが叫ぶ。思わず、私はテヒョンに駆け寄った。うつ伏せに倒れている大きな体を苦労して仰向けにすると、テヒョンはびっしょり汗をかいていた。荒い息で胸が大きく上下し、閉じられた瞳の、きれいな睫毛が震えてる。
「疲れてるんだから、無理しちゃダメですよ」
テヒョンは答えない。眉根を寄せて苦しそうにあえぐばかりだ。あまりにも辛そうなその表情に、私はぎゅっと胸が痛くなった。懸命に自分を落ち着かせながら、私は首に巻いていたタオルで、テヒョンの顔を拭いた。ペットボトルの水につけていたので、ひんやりと冷たい。
「気持ちいい?」
「ああ…ありがとう」
テヒョンはふっと目を開いた。だいぶ楽になったようだ。私は心からホッとした。起き上がろうとするテヒョンを支えていると、ジミンも一緒に支えながら言った。
「アーミー、なんだかテヒョンの母親みたい」
私は曖昧に笑った。
母親、だって。テヒョンはそれを聞いてどんな顔をしてるんだろう。気になる。すごく気になる。すぐ近くでテヒョンの微かな息を感じる。肩にはテヒョンの大きな手。心臓が爆発しそうだった。私は無意識に下唇を噛んでいた。
ジミンが、やっと立ち上がったテヒョンの背中にさっと腕を回したけれど、テヒョンは「いいよ」と短く言って、何もなかったかのようにすたすたと歩き出した。
「ヒョン、えっ、もう大丈夫なの」
ジョングクが六男の早すぎる復活に面食らっている。
「テヒョン、無理しなくていいからね?」
「ゆっくりついてこいよ」
ジンとナムジュンが心配そうに言ったが、テヒョンは軽く首を横に振った。
「いや、もうすっかり元気」
憎らしいほどあっけらかんとしている。さすが、毎年なってるだけある。
「そういえば、シュガヒョンはどこ?」
テヒョンがきょろきょろした。つられてジョングクも、そういえば…とあたりを見回す。
「シュガヒョンって、誰のこと?」
私はそっとジミンに聞いた。ジミンはふわっと優しく笑った。
「ユンギヒョンのこと。シュガは、彼の芸名なんだ」
あ、そうなの。
私がジミンにお礼を言っていると、突然遠くで大声がした。
「ヒョン!!早く来て!」
あれはユンギの声だ。
「なんだ?」
リーダーは声のする方に走った。私達も慌てて追いかける。
ユンギが満面の笑みを浮かべてこっちに走ってきた。遠くの崖のそばではホソクが大きく手を振っている。
「どうしたの?」
私達は次男に詰め寄った。ユンギは柄にもあわず、珍しく興奮している。
「何があった?」
ユンギはその場に停止した。目をひっくり返して、頭を整理しているようだった。
「えっと…その、なんだっけ…」
「落ち着け落ち着け」
ジンが喚く。ユンギは深呼吸して息を整えると、ホソクの方を指さした。
「僕と彼で、あの坂の下に行ってみたんだけどね。テヒョンが具合悪そうだったし、休憩できる場所がないかと思って…」
ユンギの細い指が崖の向こうへふっとおちる。
「それで下までおりた。そしたらすごいものを見つけた」
ユンギはキラキラする瞳で私達を見つめた。
「なに、なにがあったの?」
ジョングクが子どものように叫ぶ。ユンギは黙って身を翻して、ホソクの方に走り出した。
「ついてくればわかる!」
第九話「Spring Day」、今回はちょっと長編でしたが、お楽しみいただけたでしょ
うか?
世界が消えた3日間、まだまだ続きます!!
次回はついに第十話!「砂の夜」です。
お楽しみに😚❤
第10話「砂の夜」
【登場人物】
BTS:韓国の男性アイドルグループ
私:日本生まれ韓国在住の19歳大学生。
(家族構成)両親は中3の頃に離婚し、母とソウルで二人暮らし。
(身長・体重)身長164cm、体重✗kg
(推し)無し
(彼氏)無し
(夢)日本の小学校の先生になりたい。
(好きな色)紫
(趣味)料理、読書、掃除、散歩
(宝物)①両親と撮った最後の家族写真
②中学の頃好きだった男子からもらった腕時計。紫色。
(外見)眼鏡無し。黒髪で、ショートヘア(新垣結衣風)。大抵パーカーとジーン
ズとスニーカー。化粧無し、アクセサリー無し。
(性格)感情をあまり表に出さず、一人でじっくり考えることが多い。真面目 で頑固。滅多に泣かず一人で落ち込むことが多い。
*彼らが使う言葉は、表記は日本語ですが、実際は韓国語を使っています
「ついてくればわかる!」
ユンギはホソクの待つ方に勢いよく駆け出した。私達もキャリーバッグを転がしながら急いで追いかける。
やがて、急な崖にたどり着いた。そーっと首を伸ばし、下を見てみると…深っ!
「すごい…」
あまりの迫力に言葉を失っていると、ホソクが言った。
「僕らさ、ひょっとしてアメリカにいるんじゃない?」
「韓国から電車でアメリカに来たの?ww」
ジン以外誰も笑わなかった。ナムジュン、ジミン、テヒョン、ジョングク、そして私は、ただただ目の前の絶景に圧倒されていた。
果てしなく続く峡谷。ホソクが言ったことが正しいのかもしれない。写真でしか見たことがないけれど、ここはグランドキャニオンそのものだ。
ジミンが小石をとん、と蹴飛ばす。小石はころんころんと落ちながら、粉々になって落ちていった。私は自分がここから落ちてばらばらになるところを想像した。
「怖い…」
下を覗き込んでがたがた震えているのは何を隠そう、キム・テヒョンである。それに比べ末っ子はへいちゃらのようだ。口笛なんかふきながら「ヒョン、すごいものってどこ?」と無邪気に次男を見つめている。
「こっち」
ユンギは、私達を崖の脇道に引っ張ってきた。
「ここを下りるんだ。――テヒョン、頑張れ」
絶句している六男を振り返り、ユンギは同情するように言った。どうやら彼は、メンバー認知の高所恐怖症らしい。でも怖がるのも無理はない。右側は切り立った崖で、落ちたら終わりだ。しかも道幅はわずか1mほど。もしも踏み外したら、さっきの石ころちゃんと同じになってしまう!私は思わず首を横に振った。嫌だ。こんなところで死にたくない。
「よし、手をつなごう」
ジンが言った。全員が長男を見る。ジンは珍しくテキパキと指示を出した。
「荷物はひとまずここに置いとく。ホソクとユンギは道案内だから先頭。そこからは年齢順で、一列に並ぶんだ。いや、アーミーは誰かが挟んだほうが安心だから…」
みんなが私を見る。
「僕とテヒョンがアーミを挟むよ」
ジミンがきっぱりと言った。
「ぼくは?」
ジョングクの声が後ろから飛んできた。
「おまえは後ろから安全確認でもしとけ」
ジンが投げやりに言った。
「よし、それじゃ行くぞ。みんな緊張感持てよ」
ユンギとホソクがゆっくりと進み出す。続いてジン、ナムジュンがのそりのそりと進んだ。ジミンが振り返って私の左手をきゅっと握った。テヒョンも私の後ろにまわる。右手がテヒョンの大きな手に包み込まれる。男の人に手を握られるなんて初めてかもしれない。
なんだかどきどきする。
ゆっくり、ゆっくり。そうっと、そうっと。下は見ないで、前だけ見て。
「ああ…」
テヒョンの絶望したような声がした。ちらりと振り返ると、下を見てしまったのか、テヒョンはばっちり目を閉じていた。私は慌てた。ちょ、一歩踏み外したら落ちるっていうのに、目を閉じるなんて信じらんない!
「目を開けて!」
私が夢中で叫ぶと、テヒョンがぱちりと目を開いた。恐怖で顔がひきつっている。
「大丈夫だから、頑張って…」
ほんとに頑張れ。頼むから。
「ヒョン、もうすぐだと思うよ。ほらユンギヒョンが止まったじゃない」
ジョングクが後ろから励ます。テヒョンがあんまり強く握りしめるので、私は右手が痛くなってきた。
「え、なにこれ!!」
ジンのオーバーリアクションが聞こえる。
「なんでこんなものが…」
「すごいでしょ?」
自慢げなホソクの声。
「なんだろう…」
ジミンがウズウズしている。うん、気になる気になる。
そして、それがついに目の前に現れた。
「うわあ…!」
そこは、大きな崖のくぼみだった。奥行きは大体5mくらい。天井が高い。日陰なのでひんやりと涼しい。だが驚くべきものは、奥の壁にあった。
砂の壁にはりついている、真っ白のドア。現代風の玄関ドアだ。きれいな新築一戸建てにありそうな感じ。
でも、砂漠にはあまりにも場違いすぎる。なんでこんなところに!?
「僕の家のドアみたい」
まだ私の手を握ったまま、テヒョンが呟いた。
「ねえ、開けてみようよ」
ジョングクが兄たちにせがむ。
「もしもなにか出てきたら?」
ジミンが不安そうに言う。
「そのときは、そのとき」
「念の為後ろに下がっていたほうがいい」
「あんまり下がりすぎるなよ。落ちるぞ」
「ドアは誰が開ける?」
「やっぱリーダーでしょ」
「うん、代表が開けるべきだね」
「わかった」
ナムジュンはドアの前に躍り出た。みんなで半歩下がって、固唾をのんで見守る。
ナムジュンは金色のドアノブに手をかけ、カチャリとひねった。どうやら鍵はかかっていないようだ。キイ、と微かな音がして、ドアが開く。中から淡い光がこぼれてきた。心臓がバクバクしている。私は無意識にジョングクの腕を掴んでいた。
リーダーは私たちの顔をぐるりと見回すと、勢いよくドアを開けた!
今回短くってすみません💦
砂の夜、お楽しみいただけたでしょうか…?
次回は長編になる予定です😚
題名は、「これが初恋」です!❤
お楽しみに。
第11話「これが初恋」
【登場人物】
BTS:韓国の男性アイドルグループ
私:日本生まれ韓国在住の19歳大学生。
(家族構成)両親は中3の頃に離婚し、母とソウルで二人暮らし。
(身長・体重)身長164cm、体重✗kg
(推し)無し
(彼氏)無し
(夢)日本の小学校の先生になりたい。
(好きな色)紫
(趣味)料理、読書、掃除、散歩
(宝物)①両親と撮った最後の家族写真
②中学の頃好きだった男子からもらった腕時計。紫色。
(外見)眼鏡無し。黒髪で、ショートヘア(新垣結衣風)。大抵パーカーとジーン
ズとスニーカー。化粧無し、アクセサリー無し。
(性格)感情をあまり表に出さず、一人でじっくり考えることが多い。真面目 で頑固。滅多に泣かず一人で落ち込むことが多い。
*彼らが使う言葉は、表記は日本語ですが、実際は韓国語を使っています
ドアの向こうに広がっていたのは、とてつもなく広い“豪邸”だった。
私達は一言も交わさず、導かれるように足を踏み入れた。床はぴかぴかの大理石。まるで鏡みたい。
そして、広々としたリビングが現れた。
「信じられない…。砂漠にこんな家があるなんて…」
「外は砂漠のはずなのに、なんで窓があるんだろう…」
皆つぶやきながら、吹き抜けの天井を見上げている。でも私は、そんなことなどどうでもよかった。だって生まれてこの方、こんな素晴らしい家に入るのは初めて!ほんとに、高級住宅の雑誌から抜け出してきたみたい。
こんな家に住めたらどんなに幸せだろう…。母さんと住んでいたアパートを思い出し、そのあまりの違いにおかしくなる。
大きな窓から入ってくる木漏れ日と、吹き抜けの天井のおかげで、部屋はとっても明るい。ごつごつした壁に巨大なテレビ。透明のテーブルの上にきれいな花が生けてあって、灰色のL字型ソファがテーブルを囲んでいる。窓の外には広いウッドテラス。お洒落なシンボルツリーが眩しい。奥にはプールもあるじゃないの!
友達と一緒だったら、きっときゃあきゃあ言って興奮して、とっても楽しいだろうなあ。
でも。
振り返ればそこにいるのは、雲の上のセレブ達。一人でハイになってるのも、寂しいし恥ずかしい。
スーパーアイドルの七人は、「こんなの家じゃなくてただの夏休みの別荘だろ」ぐらいに思ってるのかもしれない。このゴージャスなリビングに驚いてるのも、私だけだし。
まあいいや。一人だっていいでしょ。セレブに遠慮して、そのうえ寂しがってたら、せっかくなのにもったいない。こっちは貧乏人の大学生。お屋敷に心がときめくのはあたりまえのこと。せいぜい楽しむことにいたしやしょう。
彼らはソファに座って、何やら深刻そうに話している。その姿は、もうこの家の主人みたいに、余裕があって、堂に入っている。
私は話し合いに加わる気になれず、じっくりと家の中をみてまわることにした。
1階をたっぷり20分間見学したあと、私はリビングに戻ってきた。2階に続く階段は、リビングにあるからだ。リビングへと続く廊下を渡りながら、私はお風呂の素晴らしさの余韻に浸っていた。
それにしても、ただの風呂が、あんなに広いとは!ちょっと心配していたけど、どうやら男湯と女湯は、きちんと別れているみたいだった。
木と石の浴槽に、温泉が滾々と湧いていた。半露天風呂で、夕空と森に手が届きそうだった。うっとりするほどきれいだった…。
ぼーっとしたままリビングに入っていくと、皆が私を見てため息をつきながら寄ってきた。なぜかどの顔も怒っている。私は、お風呂など頭からふっとんでしまった。
「もう…勝手にどっかに行かれたら困るよ」
その場に硬直していると、ジンが怖い顔で言った。
「消えちゃったかと思った」
「今から探そうと思ってたんだ」
「心配したよ」
口々に迷惑そうに言われる。私は胸を突かれたような気持ちだった。自分がいかにアンモラルだったかに気づいたからだ。
セレブだから…って馬鹿にしていた私。でも彼らはこの不可解な状況を打開する方を優先していて、はしゃぐ暇などなかったんだ。それなのに私ったら、話し合いに参加もせず、ひとりでウキウキしちゃって、その上のほほんと観光するなんて……非常識すぎる。
私は深く後悔しながら、七人に頭を下げた。
「迷惑かけてすみません…」
「これからは、どこかに行くときは、先に言ってね」
「はい」
ホソクに優しく言われ、私は目を伏せてうなずいた。
今までにないほど、惨めな気持ちだった。
「じゃ、ちょっと家全体をまわってみようよ」
ジミンが明るい声で話題を変える。
「そうだね、何かわかるかもしれない」
「僕も見てみたい」
テヒョンとグクも口々に言う。
「よし、じゃあ行ってみよう」
リーダーを先頭に、七人は何もなかったかのように明るい雰囲気に戻って、てくてく歩き出した。
ワイワイと笑ったり、叫んだり。お洒落なランプや家具に歓声を上げたり。
私は気分が重いまま、一番うしろをトボトボとついていく。
お風呂へと続く廊下をのんびりわたる。窓の外は、雑木林だった。お風呂から見えたのも、この林だ。
変でしょう?砂漠の中の家なのに。でも、すごく素敵。日が沈み始めているのか空の色が暗い。木々の上を、見たことのない鳥が飛んでいく。遠くの空には、ぽつりと水色の星がひとつ。
私は窓から目を離して、ため息をついた。
私、うぬぼれてた。彼らのこと、可愛いと思った。かっこいいなと思った。テヒョンに、ジミンに、手を握られてドキッとした。ちょっとした表情に見とれて、ちょっとした優しさにときめいていた。
でも私、うぬぼれていたんだ。自分の立場をわきまえてなかった。彼らとは住む世界が違うことに、全く気づいていなかった。だから今、どうよ?取り残されてるじゃない、たったひとり。
電車でも、薄々感じてはいた。私が不安で仕方ないのに、彼らは楽しそうだった。あのときは、単に仲がいいだけだと思ってた。でもやっぱり彼らは違ったんだ。雲の上の存在なんだ。それをわかっておくべきだった。
今までは近くに感じていた七人の背中が、これまでになく遠く感じる。
胸が張り裂けるほどの、孤独。
こんなに傷つくなら、最初から一人のほうが良かった――
会いたい。母さんに。
そのとき、右の肩に遠慮がちに手が乗った。
はっとして振り返ると、ジミンがこちらを心配そうに覗き込んでいた。
「大丈夫?」
私はぱちぱちと瞬きしながらうなずいた。何も言えなかった。ジミンはふっと笑って前を向いた。
「さっきのことだけどね、落ち込むことないよ」
私と並んで歩きながら、ジミンはさらりと言った。軽く、でも優しい口調に、なぜか胸がきゅっと痛んだ。
「アーミーがいなくなったことにジョングギが最初に気づいて。ほんとに消えちゃったんじゃないかって心配してたら、すぐ戻ってきたから、ホッとしたよ。でもソクジニヒョンはあんまり安心したから、つい言い方がキツくなったみたい」
ジミンはそこで立ち止まって、私を見つめた。
「誰も怒ってないよ」
ジミンの瞳は美しい。真剣な顔だ。そういえばさっきも私を気遣って、さりげなく話題を変えてくれた。そして今、落ち込んでいる私のことを心配して、わざわざ慰めに来てくれたんだ。
ジミンのあまりの優しさに胸が詰まって、私は涙がこぼれそうになった。慌てて顔を伏せ、声がかすれないように気をつけながら、
「……ありがとう」
と言った。ジミンは黙って私の頭をぽんぽんと叩くと、テヒョンとジョングクのところに戻っていった。
私は、いつまでもその後ろ姿を見つめていた。
それからの私は、なんだか変だった。
気づけば、ジミンの姿を探してしまっている自分がいた。ジミンしか目に入らなかった。
ジミンの声が聞こえると胸が弾む。ジミンが楽しそうに笑うと、思わず微笑んでしまう。
なんだろう、この感情。
ジミンのことを考えれば考えるほど、心臓を鷲掴みにされたみたいに、胸が苦しくなる。無意識に鼓動が速くなる。血が騒ぎ、息が止まる。
皆が大興奮しながらお風呂を見学している間、私は一人脱衣所に残り、深呼吸して気持ちを落ち着かせていた。
するとテヒョンが風呂場から戻ってきて、「空がきれぇでしたぁ」と日本語で話しかけてきた。しかし私の返事が上の空だったので、彼はすっかり気分を損ねてしまったようだった。ブスッとしているテヒョンに、ジミンが「どうしたの?」と不思議そうに尋ねていて、私はぴょんと心臓が跳ねた。
1階を見学した後、一行は2階へと向かった。
「2階は何があるんだろう」
「寝室じゃないかな」
「うわあ、楽しみだー!」
ジミンがはしゃいでいる。
なんて無邪気なんだろう。かわいいなあ……。優しくて、かっこよくて、気遣いができて。アイドルだから、きっと歌やダンスも上手いだろうな。
なんて完璧なんだろう。
ジミン……
こんな気分、中学生以来かもしれない。
そう思いながら、そっと左手首の腕時計に触れる。
私、もしかして……
階段を上りながら、ジミンの背中を見つめる。
恋、したんだろうか。
第11話「これが初恋」、お楽しみいただけたでしょうか…?
アーミーの初恋は果たして実るのか…???
まだまだわかりません。始まったばかりです。
次回は「また、事件」。
#お楽しみに