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目次
プロローグ/第1話:願い
どうも、どうも~小説家見習い八咫神このはです!
本日より、週1(願望)で投稿することになった私自身の小説。
ゆっくり、ゆっくりストーリーを進めていく予定なので…楽しんで読んでください!
また、感想やリクエストなどの物も受け付けていますのでぜひぜひ送ってください…BLは書いたことないので少し時間かかっちゃいますけど…頑張って書きます!
プロローグ
その日、魔族の国も獣人族の国も人の国も…世界のすべてに黒と白の入り交じった不思議な羽が舞ったのだ。
ある者は、笑い。
ある者は、恐怖した。
ただ、多くの者は…その本当の意味に気づくことはできなかった。
第1話:願い
目が覚めると、そこは知らない空間だった。
白と黒の入り混じったその空間は、不思議と懐かしい感じがした。
かつて昔…そこにいたかのような…そんな感覚だ。
歩きながら、何故懐かしい感じがするのか考えていると…一つの家にたどり着いた。
その家は、私のような非力な人間が少し小突いただけでも崩れそうなアンバランスな家で…何故、普通に建っているのか…と疑問に思うほどだ。
歩いてきた道に誰かいたような気がしない。
だから、ここも捨てられた家なのだろうか?
そんな疑問を抱くと同時に、目の前の家が自然と扉を開けた。
まるで、私をそこに招いているような感じだった。
罠かもしれない。そんな考えも、脳に浮かんだが…何故か身体が勝手に扉の中に入っていった。
まるで、ここは安全であると知っているかのように自然に…。
「いつまで寝てるんだこのゴミが!!!!」
食事を抜いてやせ細った身体に主人である大男の拳がめり込んでくる。
殴られたところから全身へ痛みが伝わり何かが戻ってくる感じがした。
「もうし…わけ、ございません…。」
「謝ればいいと思っているのか!!!てめえのせいで!俺は、不憫な思いをしてんだ!」
それから、お腹や腕を数発殴られ…午前中のストレス発散は終わった。
しかし、少しの休みもなく私への指名が入り直ぐに仕事へと向かった。
午前の仕事が終わり、午後の仕事の準備のため廊下を歩いていたら、目の前に上司が立っていた。
「***、顔色が悪いぞ?今日は休め。」
上司は、短くそういうとどこかへと去っていった。
上司の命令は、優先度は低いが…自分でも、このままだと午後はどこかの場面で疲れで眠ってしまうだろうと思っていたため今日は休むことにした。
部屋に入ると、ベッドに飲み込まれるように眠りについた。
短めっ!
第2話:旅路〈名前〉
目を開けると、知らない馬車の中だった。
どうやら、だいぶ遠くまで来ていたらしく窓の外に広がる草原は私の記憶にはないものだった。
馬車の進む方とは逆の方を眺めると、私の暮らしていた町の城門が見える。
左を見ても前を見ても誰も座っていない。
外に出ようと思えば出れるが、何故か身体が外に出ることを拒んだ。
多分、ここで外に出たところで外も知らない私は数日もしないうちに魔物に食われて死ぬか餓死するだろう。
そういう考えから私は、外を眺めこの馬車が止まるのを待つことにした。
多分、数時間が経過しただろう…。
外はお日様が顔を隠しお月様が顔を半分隠しながらこっちを見ている。
たまに寝落ちしていたから睡魔は襲ってこないが…。
正直に言うと、ずっと馬車に座っていると腰が痛い…。
ほんとに、この馬車に私だけなのだろうか?
もしそうなら、この馬車を止めたい…。
そういえば、この馬車は誰が動かしているのだろうか?
お貴族様たちの馬車には馬を操る人が一番前に乗っている。
窓の位置からもその操る人が見えると思ったけど…朝から人を一人も見てない。
まるで、馬が勝手に走っているかのような感じだ。
その疑問を解消したく馬のいる方の窓を見ると…。
そこには、首なしの馬が二匹と人骨の魔物スケルトンがいた。
「っひぃ…」
私は驚きのあまり、椅子と椅子の間にある床に尻もちをついた。
何故ここにスケルトンと…ノンヘッドホースが…。
スケルトンとノンヘッドホースとは、アンデッド系統の魔物で冒険者の中で言われているランク分布だとどちらもDランクに該当する魔物だ。
しかし、馬車を引くほどの知性のあるスケルトンや朝から走り続けても疲労をしないノンヘッドホースの事を考えると多分Bランク相当の強さだろう。
分りやすく例えると、このスケルトンとノンヘッドホースで小さな村なら破壊可能だ。
一般人…ましてや、奴隷の私なんて…涙すら出さず殺されるだろう。
そんな魔物が居るのも驚いだが、そんな魔物が従順に馬車を引いてることにも驚きだ。
多分、主人に頼まれた従者的な立ち位置だろうけど…。
その場合、その主人は最低でもAランク以上。
私は姿すら見れず殺されるだろう。
…姿が見えない…。
もしかして、ここには既に主人が乗っていてただ見えていないだけなのでは?
「ふふ、正解だ。君は以外に頭がさえるらしい」
脳内を読まれた?
誰かいるのか確認したいが、目の前を手で隠され誰なのかどんな姿をしているのか分らない。
「ど、どちら様ですか?」
「ふふ、それは後ほど説明しよう。しかし、ずっと馬車の中では疲れただろう。私が良しと言うまで目を閉じといてくれるかい?」
「それ以前に、私は目を覆われているのですが…。」
「いまから、手をどけるからさ」
「そういうことなら…」
私は、手がどけられるよりも先に目を閉じよしと言う言葉を待った。
「〈マジック三番曲〉……もうあけてもいいよ」
案外早かった…そう思いながら目を開けると、さっきの馬車とはまた別の場所に来ていた。
ピンク色や水色といった明るい色と緑や黄色等の自然の色が入り交じる場所だった。
しかも、馬車の中とは比べ物にならないほど広く一つの街がすっぽり入るんじゃないか?と考えてしまうほどだ。
「ようこそ、楽園へ!目的地に着くまで大抵はここで過ごすことになるよ」
声の方向には、私と同じサイズのクマの人形がいた。
「人形が…喋ってる?」
「あれれ?もしかして、怖かったり…」
「お人形さんが、喋ってる!?」
「あらら、目が輝いてるや…。流石、あの方の娘っていうか…。」
「お人形さん!お人形さん!ぎゅーってしてもいい?」
「どうぞ」
私は、知らない誰かが止めに来るまでお人形さんのモフモフ感を満喫したのだった。
あの後、一人の少女の通報を受けた上司が私をこっぴどく叱りお茶会のような場所に連れてこられた。
そこには、二人の仲のよさそうな少女とその少女の後ろに背丈の高いメイド服を着た女性。
そして、少女から見て左側に見たことのない服を着たおじいちゃんが座っていた。
「では、まずは自己紹介から始めましょう。ではまずは、魔将様からお願いします。」
そう、メイド服の女性が言うと上司が立ち上がり話し始めた。
「あぁ、こいつの元上司であり、魔王軍魔将が一人、如月フミだ」
高い部分で結んでるのに、腰くらい伸びる黒髪。
そして、髪からのぞかせるのは赤と白の混じった綺麗な角。
スタイル抜群の身体を引き立たせるような軍服は上司を一言で体現しているように感じる。
…というか、上司って如月フミって名前なんだ…。
なんだか、あまり聞かない響き…。
「その顔、俺の名前知らなかったな?」
「…ソンナコトナイデスヨ」
返しが悪かったのか、冷めた目で見られた。
「では、次に魔帝第1騎士団団長様」
「ふむ、儂か…。初めましてお嬢さん、儂は魔王軍魔帝第壱騎士団団長の玄破浩〈クロハ ツグル〉じゃ。老人じゃが、そこのフミの師匠でもある。剣技を教えてほしいなら、儂のとこへ来るがよい。」
お、おぅ…。
なんだ、何て言うんだこの感情…。すごく、心地のいい声だ。
白髪で肩にかかる髪は、なんというか、老剣士という感じがする。
そして、何よりも彼の着ている服が私が見たことのある騎士の堅苦しい鎧ではなく、もっとラフな服だ。なんていう名前なのか、分らないがなんか…凄い良い!
「おい、ジジィ!俺”が”こいつの師匠になるんだ!お前は黙ってろ!」
「なんじゃ?弟子の分際で…儂に逆らうのか?」
師弟子仲が良いわけでは無いのだろう…。
と言うか、めっちゃ圧が…怖い…。
「お二人とも、次の自己紹介に行きたいので少し静かにできますか?」
「「…!!…すまない」」
メイドさんがそういうと、二人は少し驚いた顔をして直ぐに落ち着き座りなおした。
「では、魔帝第五魔術師団団長様、副団長様お願いします」
「どうも〜魔帝第五魔術師団団長の風上つむぎだよ!」
「ふ、副団長の風上ななです…。」
双子なのだろうか?同じ金色の髪に同じ服、そして同じ背丈の少女二人はそう自己紹介をした。
団長と言ったつむぎさんは元気な女の子で、逆にななさんはずっとつむぎさんの後ろに隠れていそうな感じの雰囲気を出している。
だけど、何故かどちらかと言うとななさんの方が少し威圧感が強いような気がする。
…気のせいだといいんだけど、「お姉ちゃんを取るな」とでも言いたげな感じだ。
「では、メイドの私は最後に回しまして…フミの連れ子さんの自己紹介をお願いできますか?」
「…私!?」
「はい、私たちは貴方様の名前も知らないので」
「えっと、私は…」
そこで気が付いた。
私は、名前を持っていないことに…。
いつも、こいつやお前と呼ばれていたせいで親に呼ばれていた”名前”を忘れていたことに…。
思い出そうにも、主人に拾われた後の事しか思い出せず嫌な…思い出したくない記憶だけがどんどんよみがえってくる。
「私は…わたし…は」
「なぁ、無いなら作ればいいんじゃねえか?お前が、こういう人間になりたい…こういう人になりたい…そう願える名前を自分につければ良いんじゃねえか?」
名前を必死に思い出そうとしているのがばれたのか、上司ことフミさんがそう言ってきた。
自分がどうなりたいのか…。
どういう”人間”になりたいのか…。
考えれば考えるほど、分らなくなっていく。
「ねぇねぇ、フミちゃん名前って…自分が好きなものとかでもいいの?」
「大抵は、自分に自分で名前を付けるってことがないから分らないが…。まぁ、好きなものを名にしている奴もいるんじゃねえか?」
つむぎさんが、こちらを見ながらフミさんにそう問う。
私が余りにも悩んでいたから助け舟をくれたのだろう。
好きなもの…か…私は、奴隷だったし、好きなものなんてあんまりないんだけど。
あったとしても、直ぐに壊されるし…。
その考えに直ぐ違和感を感じた。
奴隷の私が、そもそも物を貰えるはずないのになんで壊されるなんて…。
「おい、大丈夫か!?」
頭痛で、頭を抱えたのに気が付いたフミさんが心配してくるが…そんな声も今の私には聞こえない。
何かが思い出せそうだ。
元主人より前の…暖かい存在…。母について…。
目が覚めると、ベッドに寝かしつけられていた。
多分、さっき記憶を探りすぎて脳が限界を迎えたのだろう。
正直、余り思い出すことはできなかったが…。
母との思い出の一つに何かの小さな葉をお揃いの髪留めにして付けているのを思い出した。
もしかしたら、それが記憶を取り戻す行為へのカギとなるかもしれない。
木の葉っぱ、小さな葉っぱ…。
良いのが思い浮かばない…。
うーん…そうだ!
名前を思いついた瞬間、フミさんたちが私が起きたという知らせを受け走ってこっちに来るのが見えた。
「心配させるなよ…。ほんとに…。」
「ごめんなさい…。」
だいぶ心配をかけたようで、一先ず謝っておく。
「皆さん、私の名前を決めました!」
「ふむ、名を決めるのに脳を使いすぎたのかのぉ?」
「どちらかと言うと、その決めている最中に昔の事を思い出そうとしてって感じで倒れちゃったんですけど…。」
「あんまり無理はしないようにしてください。私達の中に回復職は居るものの余り精度のいいものではないので」
「悪かったね!精度が良いものじゃなくって!」
そんな感じで、しばらく雑談が続いた。
多分、相当心配をかけたんだろう。
フミさんに至っては、目元が少し赤くなっている気がする。
「それで、お前の名前は?」
「私は、今日から”このは”と名乗ります」
「苗字は?」
「みょうじ?ファーストネームみたいな物ですか?」
「ああ、例えば俺の如月やジジィの玄破。あと、そこの二人の風上だったりな」
名前の前につける物…。
「うーん。あんまり思い浮かばない…。」
「苗字は、俺達に任せろ。また倒れられた困るからな」
「では、お任せします。」
そうして、メイドさんを残して全員がどこかへと行ってしまった。
よ、4000文字!?
久々にこんなに書いた気がする…。
自己紹介小説なのに…。
あんま、書くことないから応援や感想をもしよければ送ってください!
じゃあ、また来週~
第3話:〈名前Ⅱ〉
そんなこんなで、メイドさんと二人っきりになってしまった。
多分じろじろ見てるのはバレると思うので堂々と見た目の説明をしていこう。
髪の色は薄い青色で、私の1.5倍近くの身長と豊満な胸部は正直羨ましい。
身長は無くていいから、胸が欲しい…。
想像してみたら、だいぶ変な感じだから…やっぱりこのままでいいや…。
話を、メイドさんに戻すと…。
髪は団子のように結んでおり、頭には…布をかけている…。
メイド服は、私の仕事場ではあまり見なかった形で…動きやすさ重視なのか足が上げやすそうな気がする。
目は糸目で…全く見る事ができない。
あと、メイドさんに対して言う事があるとするならば…。
怖い…なんというか、そこが見えない感じがする。
昔、お客さんとして来た旅人の人に聞いたことがある。
メイド服を着て戦闘ができそうな人は…怒ると殺される…と…。
このメイドさんも…もしかして…。
しかし、メイドさんと二人っきりは少し気まずい…。
そんな感情を読み取ったのか、メイドさんが口を開いた。
「このは様、貴方様の好きなものをお聞かせ願えないでしょうか?」
「えっと…?」
「失礼、私の説明は後ほど行いますが軽く言うならば私は貴方の専属メイドですので苦手なもの、好きなもの等の基本情報を知識に入れておきたいと思いまして…。」
…??専属メイド?
「専属って、どういうことですか!?」
「それは、後ほど…。先に、好きなもの等の基本的なことを教えてください」
なんだか、誤魔化された気がしたが…。
好きなもの…。
食べ物って事かな?それとも、物?
「先に、食べ物でお願いします。物についてはまた旅の終点についたら用意させてもらいますので…」
このメイドさん…心読めてる説ある?
「ありません」
「心読んでる!?」
「あ…聞き間違いです」
「いやいや、無理がありませんか!?」
私がそういうと、メイドさんが少しだけ目を開き物凄い圧をかけてきた。
「私は、心を読めません。いいですね?」
「は…はい…。」
承認すると、私を押さえつけるような圧が直ぐに消えメイドさんもさっきまでの細目で優しそうなメイドさんに戻っていた。
「戻ったぞ~…なんかあったか?」
その後数分もして、フミさんたちが帰ってきた。
メイドさんと一言も話さずお互いだんまりして座っているだけの状態を不思議に思ったのかフミさんが聞いてくるがメイドさんが「何もない」というと何の疑問も抱かずその言葉を承諾した。
もしかしなくても、メイドさんってここにいる誰よりも強いとか…ある?
「な、何もなかったなら…先に、苗字の発表…。」
ななさんがそういうと、思い出したかのようにフミさんが話し出した。
「そうだ!苗字を決めたんだ…あっはっは!」
この感じ…忘れてたっぽいな…。
「ん”ん”、で…苗字だが…。土方、月風、八咫神、古米の4つの案が出た…。どれがいい?」
「…?決めてくれるんじゃないんですか?」
「そうしよう…と思ったんだが、やっぱり自分の名前は自分で決めたほうが良いだろ?」
理にかなってるけど…。なんか、めんどくさくてパスされたみたい…。
でも、考えてくれたから…最後くらい自分で決めないとね…決めるの苦手だけど…。
土方このは…。なんか、玄破さんみたいな感じがする…。
月風このは…。すごい、魔法使ってきそう…。でも、響きは悪くない。
古米このは…。…なんか、すごく罵倒されている気がする…。
最後…八咫神このは…。あんまりしっくりこない…。私のような人間が神様の名前を語るとか…。でも、なんか…この名前にしなければいけない気がする…。
よくわかんないけど、まぁ一番安心できるのはこの名前かな…。
「じゃあ、”八咫神”にします」
「ななの勝ちだな」
「そうじゃのぉ、おとなしく負けを認めよう…」
「おめでとう、なな!流石私の自慢の妹!」
「えへへ、や、やったー!」
…??
もしかして、それぞれ苗字決めて誰の苗字が選ばれるかゲームしてた?
もしかしなくても、それが原因で私は選ばされることになった?
奴隷に、今まで選択することすらできなかった奴隷に?
不慣れなことをさせてた?
「今までのお客さんでもそんなことしないよ!!!」
私は、そう叫びながら地面に膝をついた。
しばらくして、流石に申し訳ないと思った共犯者3人が謝ってきたが首謀者は謝ってこなかった。
「お三方は、首謀者に協力しただけなんですよね?名前もお三方は考えて良い名前を選んでくださったみたいだし…。許します。でも、首謀者さん…。名前、罵倒してますよね?ね?」
「そ、そんなことは無い!断じて!本当だ!」
「じゃあ、こまいってのはどういう意味なんですか?」
「それは…えっと、あれだ…」
「そな、こまいな脳で考えれんほどの暴言なんか?あ”?」
「…ごめんなさい…。」
なんとなく、適当に使ってみた文章でも案外威圧感は出るらしい。
正直に言うと、私は”こまい”と言う言葉の意味も知らない。
本当になんとなくだ…この言葉を現地で使ってる人たちがもしこれを見てるのなら…。
本当にごめんなさい。
私は、内心で顔も知らない誰かに謝り目の前で頭を下げてるフミさんに意識を戻す。
「今回は許してあげます。上司としてのフミさんに免じて…。次は…ありませんからね?」
「肝に銘じとく…。ほんとに…。」
そうして、苗字決めゲームも終了し最後にメイドさんの自己紹介が始まった。
「それでは、最後に私が自己紹介をしましょう。私は、魔帝国ヘルデイズ王家直属のメイドであり、このは様…貴方様のこれからの身の回りのお世話兼護衛当の役割を承ったいわば専属メイドです。名を、仙凪棗〈センナギ ナツメ〉といいいます。」
「魔帝国?」
どこだそこ…。少なくとも、私は何も聞いたことがない。
「あー、それについては俺から説明する。俺たちが今向かってるのは、魔王軍の本拠地魔帝国ヘルデイズ。向かってる理由は、お前…じゃなかった…このはを次期魔王に推薦するためだ。」
「へー…魔王に推薦…。魔王に推薦?…え…??」
「何故、魔法師団団長や騎士団団長、魔将である俺や専属メイドの仙凪が来たと思ってる?迎えだけだったら、俺と仙凪だけで良かっただろうが…魔王に推薦となると話は別だ…。特に、このはのような”出遅れ”はな」
「で、出遅れ…。」
「ああ、他の推薦者たちは今はこのはと同じ10歳だが全員6歳ごろから学園などで授業を受けて今では最低でそこら辺のBランク冒険者並みの力を持っている」
「出遅れ…」
「だから、これから約半年で最低でもCランク…。できればAランク冒険者並みの力をつけてもらうために俺たちが一緒に迎えに来たってわけだ」
「で…おく…れ」
「おい、聞いてるか?」
「出遅れ?」
「返事が変になってるぞ?」
あれから、仙凪さんやななさん玄破さんたちの優しい言葉で立ち直り…明日から本格的な修行を開始することになった。
ちなみに、その時に知らされたのだが…。初めに目を隠してきた魔法使いさんはつむぎさんだったらしい…。
もっと、大人っぽい気がするというのは内心で留めておこう…。
お読みいただきありがとうございました!
今日は少なめの文字数でした…次はもっと書く!
では、また次の小説で~
第4話:修行
日が過ぎるのは、早いものだ…。
一度目を閉じ瞬き感覚で目を開ければすでに一日が経っていた。
時間に干渉する魔法でもかけられているんじゃないか?と思ったが…体の疲れもすべて取れているので良しとしよう。正直なところ、考えるのがつらそうな気がした…。
「まずはこれから半年のスケジュールを発表していきます。」
そんなこんなで、仙凪さんが朝食中に今日からのスケジュールを提示してきた。
そこには、二日おきの訓練が書かれており案外ハードじゃないと感じれる。
まだ、奴隷時代のほうがきつかった…。
あれは、今思い出しても苦痛だ…。
寒い中、服もなしに洗濯させられその後は…
よそう、あれは悪夢だ。
「棗にしては、案外軽いものを提示したな」
「…?フミ様は私の事をなんだと思ってるのですか?」
「っと、今日のパンは美味しいなー」
「あ、それ私が焼いたんだよ!」
「どおりで美味しいと思った、ありがとなつむぎ!」
「私の料理はおいしくないと…。ふむふむ。」
次々と地雷を踏み抜いていくフミさんを横目に私も仙凪さんに質問をした。
「空白が多いのはどうしてですか?」
「それは、今から説明します。まず、このは様にこちらのメイド服を着てもらいます。流石に、その布切れ一枚では寒いでしょうし…ちゃんと寒暖差にも耐えれる優れものです。」
それはありがたい…。正直、奴隷の時に着せられていた布一枚だとここは少し寒い…。
「で、これに汚れが付くごとに修行量が倍増します」
へーそれは、きつそう…。
「え?」
「ぜひ、汚さないように頑張ってください」
仙凪さんは万遍の笑みでそう言い放った。
私を含め、仙凪さん以外はすごく引きつった顔をしていた。
もしかしなくても、このメイドさん頭のねじ数本吹き飛んでるんじゃ…。
「では、食事も終えましたし…。修業を始めましょう。着替えはすでに済ませておりますので」
「え…」
知らない間に、私の着替えが終わっており強制的に修行が開始したのだった。
ちなみにだが、メイド服はすごく軽い。
「まずは、魔力上昇訓練とあと体力上昇訓練…。つまり、基礎運動からだな」
ここからは、ダイジェストでお届けしよう。
…メタいこと言うと、この修行期間殆どやる事一緒だったから書くことが…。
っと、そんなことは置いておいて一つ全員に知ってほしいことがある。
このメイドさんがどれほど鬼畜なことをしているのかを…。
まず、この空間は現実世界での1時間で1日が過ぎるようになっている。
つまり、現実世界の1日ではこの空間内で24日過ぎることになる。
ここからは、単純計算なのであんまり参考にはならないと思うけど…半年(23×7)×24=3864これで、初日から半年間の大体の日数が求まった。
それを、1年単位に直すと…。
3864÷365=10.5
つまり、私はこの半年間で約10年間修行したことになる。
週に直すと、約552週間と言う事になる。
ちなみに、これを知ったのは最終日の2日前だ。
それを踏まえたうえで、修行内容をダイジェストに流していこう。
〈体力上昇訓練(初日)〉
1、服を汚さないように、1.5kmを1週走る。
2、服を汚さないように、腕立て、腹筋、背筋それぞれ20回ずつ
初日のため、この2つだけだったが…。
1.5kmを走る間に罠がしかけられたり、地面が沼地のようになっていたため全身を汚してしまった。
2個目の腕立て伏せ、腹筋、背筋は少しでも休めば首なんか即消し飛ぶであろう魔法が設置されており死ぬか生きるかの瀬戸際運動となった。
初日と言う事もあり、汚れの換算は軽めになったが…それでも修行量は3倍になった。
〈魔力上昇訓練(初日)〉
魔力を感じるところからスタート
元奴隷と言う事もあり、魔力に一切触れてこなかった私は最初に魔力という存在を認識することから始まった。
正直に言おう。
全くわからなかった…。才能がないのか、それとももっと別の問題があるのか。
だが、幸いにも魔力感知が出来なくても魔力量を増やすことはできるらしいのでそれを少し行い初日は終了した。
魔力上昇訓練では、汚れが付くことがないので正直言って安心だった。
それからだいぶ飛び…1週間後
〈体力上昇訓練(8日目)〉
1、12kmのランニング+魔力による身体強化の維持
2、腕立て、腹筋、背筋をしながら防御魔法の維持
その日から、絶望の幕開けだった。
四六時中どんな時でも魔力を纏い続けてどんな攻撃にも対応できるようにすることを目的に体力上昇訓練中に死なない程度(フミさん基準のため私が受けたら即死)の攻撃をつむぎちゃんが放ってきたり…寝てる間に、腕が無くなる攻撃が与えられたり…。
そのおかげなのか、魔力をある程度感じる事ができるようになり…更に、無自覚の内に回復魔法も習得していた。
〈魔力上昇訓練(10日目)〉
つむぎちゃんと魔法のぶつけ合い
魔力上限を伸ばすには、ギリギリまで魔力を使用したり本能的に死を感じることがとっても近道らしい…。
私はそうは思わないけど…。
結果としては、つむぎちゃんの1万分の1の魔力程度なら打ち合えるようになった。
これは、凄いことらしい…。
初日から10週間経った。
先に言っておこう。これは、書くのがめんどくさくなったとかではない!
ほんとに…。
〈体力上昇訓練(73日目)〉
ランニング120㎞+身体強化魔法維持+並列処理を目的とした魔法陣の構築
玄破師匠との剣術トレーニング
いじけたフミの対処…。
このころになると、今になってもおかしいことをしていると思う。
1日にどれだけ訓練するんだよ!!って思ってたけど、案外やればできるもんらしい…。
人間、鍛え方によって違うんだねー(棒)
〈魔力上昇訓練(89日目)〉
やることが思いつかなかったのか、魔法講座が始まった。
なんとなく頑張れ!って前言ってたけど、流石に怒られたのか少ししょんぼりとした顔をしながらつむぎちゃんが教えてくれた。
〈体力上昇訓練最終日兼剣術並列思考トレーニング初日(150日目)〉
73日目から70日強、メイド服を汚さずに過ごす事ができたので1段階上にグレードアップした。
メイド服に、重りを約50kgつけ玄破師匠とフミの剣術トレーニング、そして同時に後方支援課のように飛んでくる魔法をブレイクすることを目的に修行がスタートした。
正直、絶望の始まりだ。
ここからは、あんまり記憶に無い。
〈剣術トレーニング(248日目)〉
メイド服に、重りを340kg付けた状態での剣術トレーニングが始まった。
魔法訓練は、身体に勝手にしみついており無意識の間に身体強化魔法を自在に操る事ができたためかしばらくは剣術トレーニングになりそうだ。
玄破師匠もフミも、お互いに我流のためどんな流派が来ても大丈夫なように様々な流派の対処法を叩き込まれた。
ここまで来ると、内心は疲れた、諦めたい…。
などでいっぱいだったが、逃げようとしても棗には全てお見通しだったらしく次の日の棗担当の訓練(学園に通うため歴史や言語などの基礎知識授業)が10倍になったことからもう逃げようとは考えなくなった。
あとは、3週と1日経った次の2日は休みで完全フリーだったためそれを目指して常に頑張るようにした。
ただの狂気である。
〈剣術トレーニング(598日目)〉
重りが2000kgを超えてきた。
動きがだんだんと鈍くなり、魔力も枯渇状態なのか身体強化魔法が上手く使えず倒れた。
魔力枯渇と疲労による軽い熱だったが、師匠たちが修行のペースを少し落としてくれたからか、1週間全部修行だったのが今では4日まで落とされた。
〈剣術トレーニング(788日目)〉
師匠たちに休めと言われたが、身体を動かしてないと妙に落ち着かづ師匠たちの目を盗みながら素振りや少し前に習った型を復習した。
〈剣術トレーニング(903日目)〉
今日は、自主トレーニングと言われたので剣の修行を半日、もし剣が無くなった時用に師匠が言っていた空手というものをイメージしながら練習した。
〈拳術トレーニング(36日目)〉
師匠が、護身術にはいいだろうと言う事で空手も教えてくれた。
意外に空手も奥が深い…。
ひぃ、ひぃ、あの鬼メイドめ!
修行で書けないほどの内容やらせやがって!
「このは様~まだ今日の課題終わってませんよー」
やばっっっ
逃げないと…
「さぁ、やりましょうね?」
いやだぁ!!!
第5話:修行Ⅱ&修行終わり
〈剣術と拳術を合わせた我流トレーニング(多分1097日目)〉
もしも、剣が取られたら…もしも、蹴りを入れられたら等の想定したことから実践的なことまでをトレーニングした。
型にとらわれないやり方には結構苦戦したが…これから頑張って覚えればいい。
〈我流トレーニング(1580日目)〉
ある程度、防げるようになった。
いやぁ、出来るって偉大…。
〈我流トレーニング+魔法訓練(1908日目)〉
もしも敵に魔法使いもいて一人でしか戦えないってなったら?
と言う事を考えた実践的訓練。
この時に、多分何回か死んでる。
〈魔術トレーニング(合計日数2480日目)〉
炎の鎧とか考えてみれば結構凄そうとおもってやってみたら焼け死んだ。
記憶の中では完璧だったのに…。
〈剣術トレーニング(2908日目)〉
師匠とフミから合格をもらい、剣術トレーニングは終了した。
と言っても、トレーニングが終了しただけでたまに打ち合いとかをすると言われた。
つまり、抜き打ちチェックと言う事だ。
〈魔術トレーニング(3080日目)〉
魔術研究
〈魔術メイキング(3540日目)〉
そのままの意味…。
新魔法研究とか、あとは合成魔法とか?
〈魔術トレーニング(3860日目)〉
後4日で魔帝国に着くらしく渋々終わりとなった。
最後に、どれだけ成長したかをここに書いておこう。
八咫神このは LV.1
筋力 3 魔力 5/5 生命力 10/10 体力(スタミナ) 20
速度 1 魔力操作率 0% 忍耐力 100
物理攻撃力 1 魔術攻撃力 0 物理防御力 1 魔術防御力 0
使用可能魔術:なし
スキル:なし
称号:奴隷から解放されし者
八咫神このは LV.4
筋力 35978 魔力 47996/47996 生命力 289767/289767 体力 98408
速度 14789 魔力操作率 無160% 火87% 水98% 草78% 土40% 風88% 光30% 闇87% 忍耐力 980
物理攻撃力 19800 魔術攻撃力 8690 物理防御力 9807 魔術防御力 15798
使用可能魔術:全属性
常時発動可能魔術:無属性魔術、回復魔術
スキル:なし
称号:不死
総合修行倍増数:約98700倍
総合死亡回数:198,727,688回
「では、馬車に戻りましょう。もう直ぐでつきますので」
そう、棗が言うと景色が一瞬で変わり私と棗、それにフミが馬車に座っていた。
「師匠と、ななちゃんとつむぎちゃんは?」
「あの3人は、さっきまでいた場所の削除が終わったら転移を使って先に魔帝国内に戻るってよ」
「それって、私たちも最初っから転移して魔帝国まで行ってればよかったんじゃないの?」
「そこまでの魔力がないのと、あとは…そこの正門以外で通っていいのは登録してある団長以上の人物だけだからな」
「ついでに、このは様への基礎知識、基礎体力作りを行わなければ…魔王様にあった瞬間…死にます」
「え…なにそれ、こわーい」
魔王、自分の跡取りを殺す気でいるの?
まぁ、実の娘とかじゃなきゃ嫌だもんね…。
たとえ、実力があったとしても…。
「そういえば、今日もう遅いけど門潜った後はどうするの?」
「はい、本日は帰ったら疲れを癒すために玄破様の自宅近くの温泉街に行きます」
「温泉!?」
「ゆっくり疲れ癒そうぜ」
「やったー!!」
こうして、長い長い旅は終わりを迎えたのだった。
読んでくれてありがとう!!
すんごく、短かった…。
物足りないかもしれないけど、来週期待してて!
じゃあ、また来週~
第6話:お祭り
馬車が付いたのは、もう夕暮れ近くの時間帯だった。
今日は、王城にも近い玄破師匠のご自宅にお泊りするとのことで師匠の奥さんに「弟子です!」と伝えたら、「可愛いお弟子さんができておばあちゃん嬉しいわ!」と言われた。
優しそうな人で何よりだ。
ちなみに、師匠のお嫁さんの事は鈴音おばあちゃんと呼んでいいと言われた。
なんでも、娘や息子たちがなかなか会いに帰ってきてくれなくここで過ごす数日でいいから孫代わりになってほしいとのことだった。
私としては、優しい人なら大歓迎のためその話を承諾した。
荷物も自分の部屋に置きメイド服のまま出発しようとすると、鈴音おばあちゃんが引き留めてきた。
「このはちゃん、まさか…その格好でお祭りに行くの?」
「うん?お祭り?私、温泉に行くって聞いたんだけど…。」
「あら、そうなの?でも、せっかくなら今お祭りやってるし一緒に見に行ってみればいいんじゃない?」
鈴音おばあちゃんにそう言われ、温泉の事をすっかり忘れた私はお祭りの準備に取り掛かることにした。
その間に、フミや棗にお祭りに先に行くことを伝えるとすでに行く準備ができていたようであとは私待ちらしい。
「じゃあ、私の昔の服を貸してあげるわ」
鈴音おばあちゃんがそういうと、私は奥の部屋に連れて行かれ服を着替えさせられた。
その時に、服について色々聞くと私が今まさに着させれれている服は和服と言うものらしく女性は綺麗に着飾り男性はかっこよく着飾るものだという。
私は、動きやすさ重視で言うならば巫女服の上着に内側に黒いシャツとミニスカという現代風和服?みたいな服装になった。
髪型は、サイドで編み込みをしてポニーテールで縛った感じだ。
白と黒の上下別れのツートンカラーな髪がいい感じの味を出しているのか、鈴音おばあちゃんもフミも棗も可愛いと言ってくれた。
嬉しい…。
「お小遣いよし!鞄よし!行ってきまーす!」
「はい、いってらっしゃい。ほら、貴方も」
「!?」
「師匠、無理しなくて大丈夫ですよ!」
無言で手を振っていた師匠に鈴音おばあちゃんが無茶ぶりをしたせいで驚いた顔でこっちを見てきたからすかさずフォローに入った。
「ま、まぁ楽しんで来い…」
恥ずかしそうにそういう師匠に内心ニヤつきながらお祭りへと出かけた。
「そういえば、このお祭りって何のためにやってるの?」
「確か、この温泉街の100周年記念だったはずです」
100周年…。
「凄い前から温泉街ってあるんだね…」
「そうですね、今の魔王様が人と起こした戦争の途中で軍人を癒すために作ったと言われています」
温泉って、なんか凄い身体温まるもん。
そりゃ、軍人にも愛されるよね…。
「このは、これは一軍人としての余談だがな…初めの頃の温泉は魔王様が魔法で作ったせいでお湯がマグマみたいに暑かったんだが…上からの命令でその温泉で死にかけたやつが多数いた…。ちなみに、俺もその一人だ。」
急に、フミが話し出したと思ったら温泉での恐怖話を聞かされた。
「え、フミって100年以上生きてるの!?」
正直、温泉で死にかけたという話よりもその見た目で最低でも100年以上生きているという事実のほうが驚いた。
「…、言ってなかったか?」
「うん、聞いたことない」
「このはを迎えに行った全員100を軽く超えてるぞ?俺は、今年でたしか…154になるはずだ」
私は、絶句した。
自分より小さかったつむぎちゃんやななちゃんですら私より年上という事実に…。
「大丈夫ですよ、100年なんて直ぐですから」
「人間の私は100年経ったらお陀仏なんだけどね!?」
なんだかんだ、話しているとお祭り会場についた。
そこには既に多くの人がいて私のようなお祭り服を着てる人も居れば貴族のような礼装の人もいる。
さらに、殆どの人に人間とは違う角や羽、尻尾等が付いていて本当に魔族の国に来たのだと実感した。
「まずは、何から遊びますか?」
「うーん、おすすめは何?」
「そうですね、射的などはどうでしょうか?あとは、温泉街名物の舞等も魅力的ですよ」
ふむふむ、舞に射的…。
「じゃあ、射的から順繰りまわってこ!」
「ああ」
「承知しました」
射的屋につくと、そこには魔力量で威力の変わる魔銃と商品、そして点数の書いてある的が置いてあった。
「お、嬢ちゃん射的やっていくかい?一回銅貨10枚だよ」
店主さんが、そういうと棗が直ぐに銅貨30枚を渡した。
どうやら、二人もやるようだ…。
「ルール説明はいるかい?」
「うん、お願い」
「ルールは簡単、そこにあるコルク球を銃の先端…銃口って呼ばれるところに入れて魔力を込めて打つだけだ。ただ、嬢ちゃん達に渡すものは玩具の魔銃だ魔力を100でも込めれば壊れちまうからそんなに込めすぎないようにな」
「はーい!」
魔力は込めすぎない、よし覚えた!
「弾を込めて、魔力も入れたら引き金を引いて的に向かって打つだけ。的がこんな風に倒れれば横に置いてあるポイント表に倒した分のポイントが記入される。最終ポイントの合計数に応じてもらえる景品が変わるからポイントの高い的を倒すことをお勧めするよ、質問とかがあれば今聞いてくれ」
質問の前に、的について説明しよう。
上に行けば行くほどポイントが高くなる三角形の構造の的で、下の方は多分木でできてるが、一番高いポイントは金属…それもとても固いもので作られているとおもう。
色がそれだけ違ったし…。
で、倒れたらいいっていうのも気がかりだ…。
店主の撃ち抜いた的だけ、跡がたくさんあったことを考えるとあそこだけが倒しやすいのか…それとも、あそこ以外は倒れないのか…。
他の部分も狙われた痕跡はあるが、倒れたような雰囲気はない。
不正を働いていると考えるのがいいだろう。
まぁ、楽しめればいいから関係ないのだが…。
それにしても、質問か…。うーん、そうだ…。
「あのでっかい人形とかは何ポイントでもらえるの?」
「あぁ、犬のぬいぐるみか?あれは、100ポイントだ。他に質問はあるか?」
「個人で100ポイント取らないともらえないの?」
「あぁ、チームゲームじゃないからなこれは…」
個人ゲームでポイント制、一番ポイントの高い人に最後倒させればいけそうな気がするけど…。効率が悪いな…。
「じゃあ、最後に…もし嘘ついてたら、どうするの?」
「そんな事は無い!」
よっぽど自信があるのか…。
「ありがと、じゃあ始めていい?」
「あぁ」
こうして、不正射的が始まったのだった。
弾数は20発。
3人でやるから、計60発。
魔力は…あれ?100以上入れても大丈夫なんだけど…。
…もしかして、あの店主そんな序盤で嘘つき始めてたの?
壊れそうになる直前までゆっくりと魔力入れてみようか…。
………
……
…
おう、これは…。
魔力最高量は多分、1300くらいだ。
流石に壊してはいけないから、正確な量は確認できないけど…。
しかし、この数値は座学で習った魔力銃火器…略称:魔銃に近い数値を叩き出している。
つまり、これが玩具っていうのも嘘か…。
本物を持ったことのある二人は、それにすぐ気が付いたのか目の色が変わっていた。
多分フミは、心置きなく打てるとでも思っていそう。
棗は、今までの感じから冷静にどこを撃ち抜くのか考えていそうだ。
しかし、鉛玉ではなくコルクを魔力で発射…。
座学で習った、非殺傷弾と同じ感じだろう。
しかし、コルクであの鉄っぽい的は倒せるのだろうか?
多分、コルクって非魔導製品…。つまり、魔力通りにくいものだろうし…。
無理な気がする。
いや、ひ弱になっちゃだめだ!
私は、あれを撃ち壊す事ができる!
魔力充填1200、魔力伝導率…多分皆無!!
でも、魔力で押し出せば…。
ーキーン
鉄とコルクでは絶対にありえない音が鳴り響いたが…やはり、1発では一番上の的は倒れなかった。
じゃあ、もう一発…。
「ちょ、ちょい待て!お嬢ちゃん、あんたその魔銃にどれだけ魔力をつぎ込んだんだ!」
弾を装填中に、店主が私の射撃を遮ってきた。
その顔には、驚き…というよりも、焦りが現れていた。
多分、”普段なら感じない”異常な魔力を感じたからだろう。
「なにか、問題でも?」
「ルール上、100以上は入れちゃダメ!これは絶対だ!」
「始めに、これは玩具だから100以上は入れられない…そういったよね…。でも、この魔銃…1300近い魔力を挿入できた…。つまり、店主さん貴方は嘘をついたんだ」
「うぐ」
私の言葉に店主は苦虫を噛んだかのような顔をした。
「そういえば、店主さん…貴方、さっき言ってたよね?嘘はついてないって…さて、嘘が一つ見つかったけど…どうする?」
私の言葉に心が傷ついたのか店主の顔には怒りが浮かんでいた。
「だ、黙れ!!」
そう店主が叫ぶと、魔銃を私に向けてきた。
慣れた手つきで、魔力装填を行い引き金に手をかけた。
その時だった…。
「店主…いや、犯罪者。そこまでだ…。」
殺気が駄々漏れのフミが店主の頭に銃を突きつけていた。
多分、店主が引き金を引くよりも早くフミが発砲するだろう。
「店主さん…私を殺して最悪の刑にかけられるか…自首して軽い刑を受ける…。それとも、今すぐあの世へ走っていく…さぁ、どれがいい♡?」
すごくドキドキして、胸が高鳴る。
もしかしたら、今この瞬間に命の灯が消えるかもしれないというのにゾクゾクしてままならない。
あぁ、愉しい!
その後店主は自首を選び警備員に連れていかれた。
正直、店主が自首を選んだ時…胸が少し満たされなかった。
もし、私を殺すことを選んでいたら…もし、彼が死を選んでいたら…私の心は満たされたんだろうか?
そんな疑問が残りモヤモヤした感情だけが私を包んだ。
ちなみに、店主はその後…裁判で詐欺罪として鉱山で4年強制労働となった。
お読みいただきありがとうございました!
今回のお話はどうだったでしょうか?
ぜひ、応援コメントなどを送ってもらえると幸いです!
それでは、また来週~
第七話:お祭りにっ!
射撃の店主の事件は少し騒がしくなったが…直ぐに落ち着き、私は祭り場とは少し離れた場所で正座させられていた。
多分、さっきの店でのことだろうが…正直自分でも、どうしてあんなことをしたのか分らない。
気が付いたら、その言葉が出ていたというか…なんていえばいいのか分からないがそんな感じだ。
だから、決して…決して自分の意思で言ったわけじゃないし…本当だよ?
今にも叱りそうな二人じゃない誰かに弁明をしてみたが…。
結局、この状況は変わらないのだろう。
そりゃ本人達に言わないと変わらないか…あっはっは…。
「で、賢いこのは様なら分りますよね」
「はい、分ってます。怒っている理由も…怒られる理由も…」
口を開いたのは棗だったが…想像以上に圧がすごい。
例えるなら、蛇に睨まれる蛙のような感覚だ。
上も左右も後ろにも逃げ場があるはずなのに逃げる事ができない…。
そんな感じだ。
「では、何故そんなことをしたのか弁明を聞かせていただきましょう」
「えっと…それは、自分でも分からないっていうか…」
「…はい、それで?」
「そ、それで?…っと、ごめんなさい…」
「具体的に何に対して謝り、その謝罪から次にどうするのですか?」
えー、具体的に?
「何か不満でも?」
「いいえ、何もございません!」
具体的にか…うーん…。
「まず、さっきの射的の事について謝罪させていただきます…で、今後ないように以後気を付けて行きます」
「気を付けて行きますじゃあ、だめだろ?」
私が典型的な謝罪言葉を並べて話すとフミが突っ込んできた。
今まで、喋って無かったから味方だと思ったのに…
「フミ!なんで、なんでそっち側なの!」
「当たり前だろ!?」
「うぅ、二人が怖いよ…」
被害者っぽく言ってみたが、正直無理があったかもしれない。
棗の圧が少し強くなったような気がする。
気のせいだといいんだけど…。
「はぁ、まぁ今回は大事には至らなかったので良しとしましょう」
流石に、初めてだったからか棗が折れて早めに終わる事となった。
正直、ほっとしたと言う事はここだけの話だ。
「ただし、次やったら覚えておいてくださいね?」
どうやら、ほっとはできないようだ…。
いや、まぁ…これからは本当に気を付けよう。
しばらくして、お祭りをもう一度楽しもうと言う事になりまた屋台巡りをすることにした。
流石に、あんなことがあった後だったため全員お腹が空いたとのことでまずは食事を取ろうということとなった。
「らっしゃい!魔帝国名物ソウルイーターの天ぷらにベヒモス肉の焼きそば!他にもいっぱいあるよー!」
そうるいーたー?べひもす?
なんだそれ…なんかのモンスターだったりするのか?
その疑問を解消しようとフミの方を見ると…物凄く涎を垂らした彼女がいた。
普段見ることのない彼女の顔に少し驚き棗のほうを見ると…こちらも、涎こそ垂らしていないが食べたそうな表情をしていた。
「えっと、じゃああそこで食べる?」
「はい、そうしましょう」
「あぁ、あそこがいいな」
どうやら、二人ともあそこで食べたいようだ。
私としてはあのソウルイーターっていうのとベヒモスが何なのか分らないから正直微妙な気持ちだが試してみないことには美味しさも分からないので試してみることにした。
正直に言うと、二人の反応から別のものにしようとは言えなかった。
「はい、おまちどうさん。ベヒモス肉の焼きそば3つにソウルイーターの天ぷら3つそして天雨クラゲのレモネードだよ」
「ありがとう!」
始めにベヒモス肉の焼きそばに手を付けた。
ベヒモス肉はなんというか牛肉焼きそば的な感じの物だ。
味は、臭みがなく濃い目のソースが下の上に広がる。
そして、ベヒモス肉は柔らかいがしっかりと歯ごたえがあり噛めば噛むほど旨味が溢れだしてくる。
そして、肉の旨味と濃い目のソースが絡んだ麺はもちもちで喉の奥まで味が広がった。
「!!!」
言葉にあらせない美味しさに私は目を輝かせながら食べ進めあっという間に焼きそばは食べ終わってしまった。
聞きなれない食べ物だったが…正直とっても美味しかった。
次に、ソールイーターの天ぷらを口に入れるとサクッという食感と同時に身体を包むような寒気が襲ってきた。
しかし、不快という程ではなく逆に人の熱で暑かった身体に涼しい風がふわっと冷やしてくれたような感じだ。
熱々サクサクの天ぷらを齧れば冷っと風が吹く。
食べ過ぎたら流石に寒くなりそうなので一先ず天雨クラゲのレモネードを飲むことにした。
クラゲの毒なのか一口飲むと舌がピリッと痛みその後にレモンの爽やかさが口を洗い流した。
解毒剤が入っているのかそもそも、ピリッとした痛みは毒ではなかったのか気持ち悪さも違和感も感じなかった。
逆に、ピリッとした痛みがこの飲み物の個性なのか痛みがないように頑張って飲んでみると美味しさが半減した気がして首をかしげてしまった。
「ふぅ、美味しかったぁ~」
フミと棗を見ると二人とも満足そうな顔をしていた。
「そういえば、棗…」
「はい、なんでしょうか?」
「ベヒモス肉とそうるいーたー?と天雨クラゲってなんだったの?」
「あれは魔物ですよ?」
私が、食べる前から知りたかったことを質問すると間も開けず直ぐに答えてくれた。
ただ、私は質問をしたことを後悔した。
本当に申し訳ございません。
先週出した気でいた小説…投稿デッキていませんでした。
なので、今週は二つとなります。
重ね重ねお詫び申し上げます。
第8話:温泉
魔物と聞いた後、少し戸惑ったが…あんなに美味しいなら良いかと吹っ切れその後甘味を食べに行ったりくじ引きや輪投げと言ったゲームも行った。
修行の時とは違う疲れが来て、そろそろ帰ろうという流れだったが…フミがせっかくなら温泉に行こうと言うので三人で汗を流すこととなった…
のだが、日頃の食生活もあったのだろう。
私の身体は、まっすぐに落ちるのに対し私の両隣で服を脱ぎ始めた二人の身体に圧倒された。
棗は、腹筋こそ割れていないが決して太っているわけではないお腹に服の上では理解することの出来ない豊満な胸部と臀部は擬音の通りボンキュボンと言えるだろう。
何よりも、結んでいて分からなかったが肩甲骨当たりまである蒼い髪はサラサラでさっきまで結んでいたせいか少しぼっさっりとしているがイケメン系女子見たいでかっこいい。
そして、フミは元々戦闘を行っていたからなのか極限にまで引き絞られた身体は筋肉の入りに無駄がなく胸こそ棗と比べ小さいが褐色肌の身体に引き締まった綺麗な体そして、黒い髪と白と赤の交った角は肌と良い感じにマッチし凄くいい!
「このは様、お背中お流ししましょうか?」
「うん、お願い」
棗に背中を流してもらったり逆に私が棗とフミの背中を流したりしてしっかりと体を洗い入浴し始めた。
「ふぅ~あったかぁ~い」
髪を風呂に付けることはマナー違反と聞きヘアゴムで髪を括りしっかりと肩まで浸かった。
ちなみに、結び方は高い場所でのお団子だ。
さすが棗…なんでも出来る。
「このは様、明日は魔王様との面談ですので今日は早めに睡眠しましょう」
「は~い!!」
元気よく返事したのはいいものの、正直魔王との面談は少し緊張している。
私のような人間が魔族の王にあってもいいのか…そんな風に思うのとあと棗が言っていたなんも鍛えなければ死んでしまうと言う事が物凄く頭に残っていて…正直、案だけ訓練したけど足りないんじゃないかと不安になったりして…。
止めよう。
明日の事は、明日の私に頑張ってもらえばいい。
一先ず、二人と何か話して意識を別の所に向けよう。
「そういえば、私は人族だけど二人って何の種族なの?」
「種族?ですか?」
「うん。ほら、ここって亜人ぽい人とか結構見かかるし魔帝国っていうくらいだから人のほうが少ないんじゃない?」
「そうですね。確かに、私も関わりのある人間種はこのは様を合わせて二人だけですし…来ることは来ますが、あんまり関係は作りませんね…フミはありますか?」
「いんや、俺もこのは合わせて二人目だ」
私より前に、人族の人と関わったことがあったんだ…。
どんな人だったんだろう?
「このは様、その疑問についてはまたいつか答えますので…では、種族について話を戻しましょう。私は、雷狼という種族です」
「らいろう?狼って事?」
「いいえ、近いですが違います。私の種族で一番近いのは精霊狼:フェンリルとか朱雀なんて呼ばれる鳥の精霊ですね」
フェンリル?朱雀?…実際どれくらい凄いのかよくわかんないけど…多分凄いのだろう。
「なんか、凄そう…」
「知らなかったら、感想こまるよな…。このはは勇者伝説っての知ってるか?」
「う~ん、一応…結構昔見て以来だから部分的に覚えてるって感じだけど…」
「あー、じゃあ微妙かもしれないからいくつか例を出すと…東樹:ロード・ドライアド空喰:スカイドラゴン、あとは魔界蛸クロディアーノだな」
「魔界蛸なら…」
魔界蛸…。確か、魔王を討伐するために旅に出た勇者たちが多くの仲間を犠牲にして倒したって言う海の悪魔だっけ?
そこで、私の推しの魔術師の女の子も死んだから鮮明に覚えている部分だ…。
何がひどいって、それ戦士がその場から動かなければ海に落ちず死ぬことなかったってことが後々分ったってことだよ!!
まぁ、海の上で動かないほうが難しいって思うよね?
あの戦士、嵐の中での運航の船に乗ってもビクともしなかったんだよ!!
ちゃんとその部分が執筆されてるからね?
「もしかして…」
「あぁ、棗はその生物を赤子の手をひねる感じで殺せる」
「おぅ…」
それは相当な化け物で…。
「あれ?魔界蛸とかって物語の中の生物じゃないの?」
「いや、実際にいるぞ?何なら、今でも魔帝国と人間国の境にある海に生息してる。まぁ、物語に出てくるような船も飲み込むサイズの奴は産卵期のメスだけだけど…後他なら、全然海辺の街行けば食材として並んでるぞ?」
「えぇ…」
それは、どうなのだろうか…?
原作好きからしたら、そんな場所は恐怖の対象だろう。
しかし、さっきの魔物食を食べてしまった私からしたら…恐怖感とか嫌悪感よりもどんな味なのか食べて確かめてみたいという感情が上回っていつ食べれるか分からないがとてもワクワクしている。
「行きたそうだな。と言っても、しばらくは予定は言ってるしなぁ…よし、夏休みにでも行くか」
「フミ…勝手に決めないでください」
「いいね!楽しみにしとく」
「このは様も…はぁ、ダイエットしないとですね」
私とフミの言葉に諦めたのか、密かにダイエットを決意した棗だった。
すっくなってリアルで声出るほど短かったんだけど…。
えぇ…(引)
次こそは…次こそはもっと長く書こう!うん!
第9話:温泉〈続〉
「棗の種族は分ったけど、フミは?」
「ん?聞いてもなんも面白くないぞ?」
「確かに、予想はできるけど…」
多分、ダークオークとかオーガとかそれに属する魔人だろう。
というか、私はその角を見たらそれしか思い浮かばないよ?
「多分、このははダークオークだとかオーガとかの奴らを予想しているだろうが…どちらも違うぞ?」
何故、フミにも私の心の中が読まれているんだ?
そう疑問に思い問いかけようとしたとき…フミは私の顔を指さした。
「私は、棗みたいに伝説上の生き物的な感じの亜人じゃねぇけどだいぶ長く生きてるからな顔を見れば大体は読めるってもんだ」
なんか、名言っぽく言ってるけど…。
「それでも、私の思考まで読めるものなの?」
「まあな」
本当…?
そう疑問に思ったが…こんな事でいちいち突っかかってたらきりが無いと思いすっと胸の中にしまっておくことにした。
「それで…正解は?」
「鬼人だ。まぁ、いわゆる鬼だな」
鬼?
「その感じ分かってないな…。うーん、日之国と呼ばれる場所がここからはるか遠くにあるんだがなそこをかつて支配していた妖だ」
「あやかし?」
「いわば、魔物のような感じ…だと思う。俺も、詳しくは分らないんだけどな」
「へー。じゃあ、物凄い強い魔物ってことか…。それなら、なんでフミはここに?」
言った後に直ぐ、この質問が不適切ではないかという疑問が脳裏に過り謝ろうとしたらフミが口を開いた。
「負けたんだよ…俺たち、鬼がな。行き場を奪われた俺達は、森に隠れたり海を渡ったり…まぁ、支配者の目の前から消えたわけさ。私は、海を渡ってる最中に船が沈んで気が付いたら魔王領についていた。その時は丁度休戦中でな言葉や文化とかを学び力をつけ実力を証明して…。今に至るってわけだ」
わお…なのと言う事でしょう。
フミは、実力派のつよつよ騎士団長だったらしい。
いやぁ、そんなことも知らず申し訳ない…。
と、内心で謝りながらこれからは丁寧に接しよう…と理想を考えるのだった。
しばらく、雑談や明日の予定について話し私がのぼせかけたところでお風呂を出た。
「あ”~い”き”か”え”る”ぅ~」
私は、風の魔石が埋め込まれた送風機に顔を近づけながら涼んでいた。
隣では心配そうに見ている棗がおり、フミは「温泉の後のは決まってこれを飲まねーと」と言って何か買いに行った。
果たして何を買いに行ったのやら…。
そんな疑問を持ちながら、私はのぼせを治すためという口実の下涼んでいるのだ。
決して、のぼせを治すためではない。
というか、もうのぼせはほぼ完治している。
ただ、涼しいのだ。
この…送風機…例えるのなら、悪魔だ。
私を快楽の沼へと引きずり込もうとしている。
「…様、…のは様、このはお嬢様」
「は、はいっ!」
「そろそろ、髪を乾かさないと風邪をひいてしまいますよ?」
「だ、大丈夫!私、身体強いし…」
送風機から離れたくない理由がまた一つ増えた。
それは、棗に髪を乾かしてほしくないという理由だ。
いや、髪を乾かすのが下手…というわけではない。
丁度いいくらいに氷、火、風の魔法を操り乾かしてくれるのだが…。
その後のクシで髪をとかす時の力が少し強いのだ。
というか、私の全く洗ってこなかった髪では凄く絡まってとかしにくいのも問題ではあるんだけどね…。
一つ弁明させてもらうと、お風呂に入りたくないから入らなかったわけではない。
どちらかと言えば、私はお風呂が好きなほうだ。
髪が長くても歌いながらゆっくりと入るので大好きな部類に入る。
だから、もしお風呂に入る機会があったのなら髪もサラサラだっただろう。
結局、髪は乾かされる…前に、フミが来てくれたのでフミに髪を乾かして貰った。
「で、何を買ってきたの?」
「ふっふっふ…これだ!」
フミは手に3つの瓶を持っていた。
瓶には文字が書かれており、そこには「牛乳」と…。
「牛乳?」
「溶岩牛っていう魔物から取れる乳を加工した物だな」
ま、また魔物だぁ…
「まぁ、上手いから一回飲んでみな」
少し引いているのに気が付いたのか、フミが推してくる。
流石に買ってきたものを粗末にすることは出来ないので一口恐る恐る飲んでみると…。
舌から濃厚な味が広がり口の中全てを満たしてくれる。
「んんんんん~~!!!」
余りのおいしさに、言葉が出ない。
私は、ぐびぐびと音を立てながら牛乳を飲む。
次々に広がる味にいちいち反応は出来ないが…無意識に反応してしまう。
「っかぁ〜!!上手い!」
フミはぐびぐびと一気飲みをした後そう言い放つ。
なんかおじさんっぽいなぁと思ったけど、心にとどめておこう…。
ちなみに、棗は音もたてず飲み終え表情こそあんまり変わっていなかったが凄くご満悦な様子だった。
迎えの馬車が既に温泉街を抜けた場所に止まっており、身体を冷やさないよう馬車に乗り込み今日は終わりとなった。
正直に言えば、とても楽しかった。
ただ怒られたりしたり、色々あって良くも悪くも想いでとなった日だった。
「ふふ、このは様ぐっすりですね」
「あぁ、今日は色々とあったからなぁ相当疲れたんだろう」
馬車に乗り込みしばらくすると、主人であるこのは様がぐっすりと眠ってしまった。
白い髪と黒い髪を上下半々に持つ少女…そんな印象だった彼女はいつしか、私もフミも虜にしていった。
「もう、半年も経っていたのか…あっという間というのか、遅いというのか…」
「そうですね、子供の成長は早いって言いますが…まさかここまでだとは」
「俺達も、長い間生きてたから…かもしれないな」
「私は、まだおばあちゃんではありませんがね?」
「それを言ったら、俺もだぞ?」
「ふふふ」
「あっはっは」
そんな会話の間にも、馬車は揺れながらゆっくりと玄破と鈴音の家へと向かっていった。
本日も、お読みいただきありがとうございました!
いやぁ、GWも終わって…学業やらお仕事が始まってしまいましたねぇ?
え?現実の話はするなって?
現実は、見たくないなら、見なくていい…。
字余りあり…
じゃあ、また次の話で~
第10話:魔王〈前編〉
次の日、目を覚ますと私はベットの上だった。
昨夜は、お祭りに行って…温泉行って…馬車に乗って…それで…。
多分、それで寝てしまったのだろう。
つまり…
「今日、魔王様との対面ってこと!?」
え、心の準備整ってないんだけど…。
どうしよう…。
そ、そうだ…。
あれだ、もう一度寝よう!
「起きてるなら、着替えてください」
「いえ!今から、二度寝するので!」
私は、何故か聞こえてきた言葉に内心をぶちまけた。
その相手が誰だか知らずに…。
「そんな清々しく言わないでください…」
その呆れたような言葉を聞き私は、バッと掛け布団をめくりあげ扉の付近に立つ彼女を見つめ…驚いた。
「…!?なんで、棗私の部屋に?」
「礼装の着付けには時間がかかりますからね」
「回答になってないよ!!そもそも、主人の許可なく…」
「私は、姫や王子よりも位が上ですので」
「そんな横暴なぁ…」
どうやら、雷狼様は魔王の娘や息子よりも立場が上らしい…。
なんか、悔しい…。
「では、お着換えさせていただきます」
「え…二度寝…させ…あああああああああっ!!」
「ぐすん…棗に、いじわるされたぁ」
「人聞きの悪いこと言わないでください」
ウソ泣き攻撃は、あっけなく崩れ落ちた。
でも、いじわるされたのは事実だもん!
拒否権なしに勝手に着替えさせられたんだから…。
「それは、私の仕事なので意地悪をしたわけではございません」
「心読まないでよ!」
私は、涙目になりながら棗にそう訴える。
ちなみに、この涙目はウソ泣き後だからだ。
決して、恥ずかしくて泣いているわけではない
もう一度言おう。
恥ずかしくて泣いてるわけではないっ!!
「恥ずかしかったんですね」
「だから~!!!」
棗の言葉に、子供っぽく怒ったが…。
どうせ、また何か言われるのだろうと半分呆れた。
結局心を読んだのか、何なのか…棗はあの後何も言ってこずこのドレス姿で朝食を食べるという苦行を呈されこぼさないようにと慎重になりながら鈴音おばあちゃんの手料理を完食したのだった。
その後、馬車に入れられ魔王城へと向かった。
馬車は、人の国からここへ来るまでに使ったものと同じらしく私は少し怯えながら乗っていた。
途中で、私の戦闘能力なら馬車を引く馬とかは余裕とのことだとフミが言ってきたが…
実力で勝っていても、心で負けているので結局だめなのだ。
なんやかんや、言っていたら魔王城へついてしまった。
「ねぇ、棗…今からでも帰らない?なんか、嫌な予感がする…」
背筋が凍るような、首裏を刺されるような…。
そんな悪寒が身を包んだので、棗にそのことを相談してみた。
「と、言われましても…。ここで帰っては、私たちが酷い目に会うので駄目です」
「え、主人より身の安全のほうが大事なの?」
「もちろん」
ノータイムで言い切りやがったこのメイド!
ほんとにメイドか?
ほんとに、私の専属なのか?
「大丈夫ですよ?私は、貴方の専属ですから。でも、私も意思があるので」
「はぁ、分ったよ…。」
心を読まれたことと、その回答に少々不満を持ちながらも私は理解し早速魔王城へと踏み込むのだった。
中は、超豪華だった。
流石王族と言うべきなのか、なんというべきなのか…。
正直良く分からないが、今までの私では一生立ち入れない場所と言うのは確かだ。
私のつたない語彙力で悪いが、魔王城内部の情報をここに言おう。
黒曜石なのか、それともそれに準ずる何かなのか黒い石でできた柱や床、壁や天井などは邪悪な感じを出しつつも、とても高貴な雰囲気が出ている。
そして、何よりも真後ろに門があるのに目の前に広がるのは廊下のような壁だった。
普通なら、玄関やホールなどの広い物がある…ような気がするのだが。
これは、あれか?
城としての場所だから、玄関は必要ないという感じなのだろうか?
その景色に、私は一つの反応をした。
「うわぁ…なにこれぇ~」
どこぞの、二重人格的な少年(?)カードゲーマーの様に言ってみたのは良いものの…自分でも、なんでこの反応が出たのが疑問に思った。
「どんな反応だそれ?」
フミもそう思ったのか、質問してきた。
「んん、いや…ね?ほら、なんかそれっぽい感じのなんかだよ」
「意味が分かりません」
棗が、そういうが…正直に言おう私にも分りません。
ごめんなさい。
そう、思うと棗から冷たい視線が向けられている気がした。
「あー、もう…ここで立ち止まっていても何にも始まんないねぇ~早く、魔王様に会わないとねー」
私は、恥ずかしさから右へ曲がり進むと…
「このは様、そっちは逆方向です」
棗によって、制止させられた。
「んんっ!わ、分ってたし?わざと間違えただけだし?」
「見苦しいぞ」
そんな突っ込みがフミから言われる。
正直、羞恥心のせいで全然頭まわって無かったからこういうツッコミはありがたかったのだが…。
「こら、フミ…こういう時は、そうですねっていうんですよ?」
「そうなのか?」
「そうなんです」
「やめて…慰めも、同情もしないで…」
多分、分っている棗にとどめまで刺されかける私であった。
そんな、羞恥心まみれの事があった数分後…。
魔王の間と呼ばれる場所の扉がある一直線の道までたどり着いていた。
ここに来るまで、フミと棗は何ともなかったのに…なぜか私だけ至る所に仕掛けられた罠にかかりまくってせっかくのドレスに汚れが付いた。
そのため、(フミが)予備で持ってきていた和の服に着替えていた。
まぁ、これがここまでの経緯である。
何故、私だけ勇者みたいな扱いをされなければならんのだ!!
そんな文句を頭の中で魔王に愚痴っていると…魔王の間の門が大きな音を立て開き、少しふくよかな…いや、球体にちか…いや、正直言って豚が出てきた。
例えるなら、親の権力を使って暴飲暴食を続けてきた人みたいな?
うーん、一切運動してなさそうな…?
まぁ、そんな感じのオークが苛立ちながらこっちへと向かってきた。
なんだろう。あれかな、親に駄々こねてみたけど駄目だった的な感じかな?
「あれは、グリスフィン・アル・フィンセント皇太子です。この国の第一王子で、第一皇妃アリシア・アル・フィンセント様の実子です。ちなみに、アリシア様は魔王領で1位を争うほど美人です。」
なんか、考えていたら棗が耳打ちしてきた。
第一皇妃の実子で、皇太子…。
「物凄く偉い人?」
「そうですね」
「絶世の美女の息子?」
「そうですね」
「あの、オークが?」
「っく」
「っふ…そうです」
私の質問で、何故か棗もフミも薄っすらと笑っていた気がする。
客観的事実を述べただけなんだけど…。
そんな会話が聞かれたのか、それとも別の理由か…オークがこっちに向かってずかずかと歩いてきた。
数人の騎士とメイドを連れて…
はいは~い…あとがきのこのはちゃんだよ~
オークが手下引き連れて数人のか弱い(笑)女の子に向かうのって一つだけだよね~
いやぁ、現世でやったら犯罪だよ?
強姦だったり、暴行なんてお縄連行で豚箱行きだから駄目だよ~
あ、オークの小屋にはピッタリか…。
ふむふむ…また次回!
第11話:魔王〈中編〉
前回までのあらすじ…。
魔王との面談の日になって、とってもいや~な一日が始まってしまったこのはちゃん。
渋々ドレスを着て、向かったはいいものの嫌な予感が…。
その予感は的中!!魔王の間の門前でオーク率いる数人の精鋭がか弱い(笑)女の子達に襲い掛かる…!!
どうなる、このはちゃん達!
うん。
あらすじ、こんな感じだろう。
ん?なんか、変なの混じってる?
いや、事実ベースだけど?
確かに、省略はしたけど…。
事実だよ?
っと、考えているとオークこと皇太子くんのお顔が真ん前に立っていた。
「っひ…」
正直久々に嗅ぐ、汗や油のような匂いや豚鼻、細い目、二重あごなど凄くモテない要素しかない皇太子に少しだけ恐怖心がでた。
「おい、皇太子だか何だか知らねえがそれ以上俺の主人に近づかないでくれるか?」
フミが、刀の柄部分に手をかけながら皇太子を私から引き離そうとしてくれた…が、数的に皇太子のほうが有利のため気にせず離れようとせずじろじろと顔を見てくる。
そして、しばらく観察すると皇太子が口を開いた。
「お前、ブスだな」
…
「棗、後処理お願いしていい?」
「駄目です」
「フミは?」
「うーん、ムカついたけど我慢」
くそぉ、駄目か…。
「分かった…。我慢する…先っぽだけ」
「駄目です」
「駄目だ」
駄目かぁ…。
言われぱなしで不服だが、私は我慢し魔王の間へと向かった。
「ブスなうえに、チキンかよ」
「…ふん!!」
私は、地面が少しえぐれる程強く地面を蹴り風魔法で覆った拳で豚の顔面に重い一撃を入れてやった。
騎士たちが一瞬、混乱したが私を悪人と決めつけたのか剣を抜いてきたので地面を蹴り土魔法で騎士のあごめがけて魔法を放つ。
丁度いい場所に当たったのか、騎士は空を少し舞い気絶した。
その間に、あたふたしてるメイドさんに少し笑顔を見せて吹き飛んで壁際に行った豚に歩み寄る。
「ねぇ、豚…女の子に、ブスだのチキンだの…言ってんじゃないよ!皇太子だか、なんだか知らないけどさ…オークの分際で、共通語話さないでくれる?汚れが移る」
「なっっっ…ボク、をだれだ…」
「ふん!そもそも、可愛い年頃の女の子にさブスとか失礼じゃないの?ねぇ?」
「また、ぶった」
「何度でも、殴ってあげるよ。豚が!」
フミや、棗は少し遠い場所で私たちを監視し少し呆れてる気がする。
豚のメイドさんたちは、おどおどとどうすれば良いのか迷っているようだ。
そんな間に、騒ぎを聞きつけた近衛騎士団なのか分らないが騎士さん達が私と豚を引き離しそれぞれに事情徴収を始めた。
「不服」
「あんだけ騒げば、このはの方が悪くなるって分りきってただろ?」
そう、フミの言う通り私が悪いと言う事となり騎士団の人たちにこっぴどく叱られた。
「ふつーに考えたら、あの豚が悪いでしょ?だって、私にブスだとかチキンとか…それで殴られないとでも思ってんのかって話でしょ?」
「一里…いや、圧倒的にこのは様が正しいのですが…状況も見ていない騎士団は権力の強い皇太子の方についたと言う事でしょう。」
そういう棗の声には、少しばかリ不満が乗っている気がした。
「…それよりも、今は魔王様の所に急がねばなりません。面談の時間が大幅にずれていますので…」
そう、今回魔王城に来たのは魔王に会いに来たからだ。
そんな中、あんな豚に構ってしまったので面談の予定時刻から大幅にずれ今2時間遅れとなっている。
魔王が私の聞いた通りの人物なら多分、殺されるだろうが…。
少しでも、優しいことを願うしかない。
そう思いながら、歩いていると私たちは再び魔王の居る門の前に着いた。
室内で、魔王が怒っているのか…この門を開けないほうがいいと思うほど身体が寒い気がする。
「ね、ねえ…このまま引き返さない?」
「それもそうだな…あはは…」
「お二人とも、行きますよ?」
私とフミは引き返すことに賛成したが、棗によりそれを阻止され…フミは、腕を捕まれ私は棗の小脇に抱えられた。
「じゃあ、棗一人で行ってよ!!私、ここに入ったら死ぬって思うんだけど!」
「俺も同じだ!こんな場所居てられるか、俺は帰らせてもらう」
「なんだ?入らずに帰るのか?」
「殺気が怖いんだもん!しかたないでしょ!」
「そうだ!そうd…え…なんで、貴方様がここに?」
そう、フミが少し震えながらいう。
私が、疑問に思いながら頑張って後ろを向くとそこには一人の男性が立っていた。
「な、棗おろして」
「はい、分りました」
私は、棗の小脇から命令で抜け出し男性をまじまじと見る。
黒い髪に、黒い執事服みたいな…服装。
頭には角があり、魔族であることが一目でわかる。
「…誰?」
私の問いに、棗が真っ先に口を開いた。
「このは様、こちらが今回面談予定で二時間も遅れてしまった…魔王様本人です」
…は?
多分、次回から書き方変わります。
引き続きお楽しみいただけるように、精進いたしますのでこれからもご愛読の方宜しくお願いします
第12話:魔王と娘
今回の作品から、ハッシュタグに新たに「#セカイとイ世会」を追加しました。
いつか、二次創作とか絵とかかいてくれる人がいるのであれば是非使ってください。
第一皇子を殴り飛ばし、騎士団の人たちに怒られた後…魔王と面談が遅れて行われた。
魔王の間の中に入ると、外で感じ取った殺気は無くとても心地のいい場所だった。
なんというか、安心感がある…?感じの場所だ。
なによりも、高級感のある柱が何本も建てられておりその先には一つの玉座が置いてある。
いかにも…な、見た目の場所に感動していると魔王が玉座に座り肘をつき誰もいない場所に何かを話し始めた。
直後、私とフミが席に座らされた。
私はともかく、フミすら反応できないようでなぜ座らされたのかと混乱していた。
「まずは、挨拶からだな…。俺は、第999代目魔王:テール・レイジ・フォール・アーゼだ…長いからアーゼ…又は、父上とでも呼んでくれ。で、こっちが…。いや、まだ紹介すべきではないか。」
私を指さしながら淡々と自己紹介を開始した魔王もとい父上に少し困惑した。
時間に遅れたし、皇太子を殴ったからてっきり、もっと怒られるかと思ったからだ。
「棗、そこの小娘にどんな教育をしたんだ?こっちが名乗ったのに名乗り返さないとか一般教育ができてないにも程があるぞ?」
「…じゃあ、ハルにも教育したらどうなんですか?アーゼ君。そもそも、ハルが殺気なんて出すから怒られるもんだとお嬢様も身構えてたんですよ?」
魔王が、棗に文句を言うと少し怒り口調の棗が反論した。
意外にも、この二人は仲がいいのかもしれない。
まだ、顔も知らないハルと言う人物も気になるがとりあえず自己紹介を行わないと危険な気がするので自己紹介を行った。
「私は、八咫神このはと言います。えっと…」
「あぁ、一先ず名前だけでいい」
名前だけだと味気ないと思い、何か言おうと考えていると父上が私の言葉を遮った。
私は、「分りました」とだけ言ってまっすぐと父上の方を見た。
「良い名前…だな、これはお前の母親…が付けたのか?」
「いいえ、お母さんはだいぶ前に亡くなっちゃって…叔父様に引き取られたんですけ…ど……」
言葉を発する毎に、どんどんと昔の嫌な記憶が頭を覆いつくしてくる。
目に涙が浮かび始めたときに、父上が「もういい、大丈夫だ。」と止めてくれた。
そのあと、棗たちが私の経緯について簡単に説明してくれた。
引き取られた後、汚物のように扱われていたことや風俗の様な場所で働かされていたこと。そして、ここに来る間のことも。
「すまない、嫌な記憶を蘇らせてしまったな」
「いえ…もう過去の事なので…。克服しないとですよね」
私がそういうと父上がゆっくりと腰を上げこちらに歩いてきた。
そして、私を覆うように抱きついてきた。
「!?」
「すまない。もっと早く部隊を編成して向かわせるべきだった。つらい過去なんて生ませるべきじゃなかった。」
少し涙声の父上に驚きが隠せない。
何故、急にこんなことをしたのか…何故、涙声なのか…。良く分からないが、ただ一つ頭に浮かんだことがある。
(なんだか、懐かしい。とっても、暖かくて落ち着く…)
泣きつかれて寝てしまったこのは様と膝枕をしてあげているフミを見守っていると…突然、横から声が響いた。
「棗、今日は遅いし泊ってったら?」
そこには、淡い赤色の髪と猫のような細い瞳孔がある瞳を持つ少女が立っていた。
「はぁ、ハル。今日は、アーゼ君に会いに来ただけで泊る予定はないんです」
「えー…半年間も待ったのに、私よりそこの女の子のほうが大事なんだ~」
「欲求不満なら、私じゃなくてフユカとかアキカゼに言ったらどうですか?」
「あの子たちだと満足できないの~ねぇ~お願い~」
「いえ、もう帰ります。」
「むー!!」
そう、ハルがほっぺを膨らませるとフミの身体から大量の汗が出てこのは様の表情も苦しそうになっていた。
「ハル…今すぐ止めなさい」
「いや!」
子供みたいにそういう彼女に、私は少し力を解放し殺気を出そうとした瞬間私の肩に手が置かれた。
「ハル、その子は俺の娘だ。丁重に扱え」
「アーゼ様…。分りました…」
「棗も、怒ってくれるのは嬉しいが俺はお前たちが争っている所は見たくない」
「…承知しました。申し訳ございません」
「あぁ。馬車を正門の方に止めてあるから今日はもう帰るといい」
「はい、それでは失礼します」
私は、フミとこのは様を抱え馬車へと向かった。
魔王の間に残った魔王とハルはさっきのことについて話していた。
「ハル、お前はこのはに何を感じた?」
「うーん…物凄く暖かい草原と人間たちよりも黒い悪意と嫉妬?」
その言葉に、魔王は少し驚いた様子を見せたが直ぐに微笑み
「これから、楽しくなりそうだな」
と、小さく言った。
お読みいただきありがとうございました!
新キャラ、魔王ことテール・レイジ・フォール・アーゼ君。そして、正体不明(このは目線)のハルちゃん。あと、名前だけのフユカとアキカゼ。
いやぁ、着実に増えていくね…私の設定してない子たちが…。
後先考えずキャラを作るなー!!ってデモ起こしても、私自身の問題だから自分で言って自分で「この件に関しましては…どうのこうの」って答える羽目になるからあきらめるけどね
…なんか、悲しっっ(泣)
第13話:試験の知らせ
目が覚めると、魔王城内のような黒い鉱石がある部屋ではなく木造の温かみのある部屋だった。
昨日の夜の事があまり思い出せない。
たしか、魔王こと父上と話して…。
それで…。
(…お父様、暖かかったなぁ)
「やあ、泥棒猫ちゃん…もしかして、昨日のアーゼ様のハグを思い出してた?」
昨日の事を思い出してたら、隣から声が聞こえ私はとっさに掛け布団で身体を隠した。
「っだれ!?」
「あー。会うのは初めてだっけ?ふ~」
「ひゃぅ!!」
いつの間にか背後に回られ、左耳に息を吹きかけられた。
驚きのあまり、変な声が出てしまった。
「あれれ?もしかして、お耳弱いの~?」
その言葉には、煽りと喜びに近い感情が感じ取れた。
すると、遠くで扉が開く音が聞こえ…突如、目の前に桃色の髪の少女が現れた。
その少女は、私と同じような背丈なのに対して、棗と同じような威圧感を感じる。
すると少女は、私に顔を近づけて不気味な笑みを浮かべ悪戯っぽくささやいた。
「ん~。そろそろ危なそうだし、悪戯はここまでにしてあげよう」
何を感じ取ったのか分からないが、ようやく普通に会話が出来そうな雰囲気に私は質問を投げかける。
「…っ…。で、何の用なの?あと、君は誰なの?」
「私は、ハル。アーゼ様の専属メイドで、今日は泥棒猫ちゃんにお手紙を届けに来て”あげた”の」
上から目線なその言い方に、少しイラっとしたが…私が何をやっても負けてしまう事は目に見えているので諦めて何も言わずに手紙を受け取った。
中を開けてみると、そこには手紙ともう一つ変な紙が入っていた。
まず、手紙の方を開くとそこには力強く『学園へ入学し、知識を取り入れよ』と記されていた。
書き方的に多分魔王なのだろうが…。
元奴隷の私に学園に行けって?
(いい度胸だ、私は男を喜ばせること”だけ”には自信があるぞ?)
そんなことを考えていると、扉にノック音が響き冷気を纏わせながら棗が入ってきた。
「あ…棗?こ、これは違って…そう!手紙届けに来ただけなのよ!」
何も言っていない棗に、ハルさんが誤解を解く主人のように、いや犯行現場に居合わせた一般人のように言い訳を始めた。
「私は、昨日の事はまぁ許してあげる事にしました…」
その言葉に、ハルさんは少し安堵の表情を浮かべていた。
「しかし!この現場を押さえた今…貴方に、加減する理由はありませんね?」
言葉が言い終わると同時にふわっと私のほうまで冷気が襲ってきた。
その余りの寒さに、私は布団を一段と深く被った。
「ひぃぃ、ねえ、貴方棗の主でしょ?何とかしてよ…」
さっきまで、立ってたのに今では私の背中側にまわり込み私を盾にしながらそう訴えてくる。
私に助ける義理はないのだが…このまま行くと私の部屋も氷付くかもしれない。
そんな嫌な予感が頭を過り…。
「棗!止まって、その殺気を押さえて」
「…っ!?は、はい」
ちょっと強く言ったことに驚いたのか、棗は私の指示にしっかりと従った。
その後、朝からの説明をざっくりと行い手紙を棗に渡した。
「はぁ、アーゼ君今度会ったら一発殴らないと」
「棗、そんなことしたら父上と会いにくくなるから止めてね?」
「…はい」
「…あの棗が飼い犬みたいになってる」
とんとん拍子に会話が進んでいくと、朝ご飯を呼びに来たフミに「何やってるんだ?」と突っ込まれた。
「今日の朝は、白米、柚子味噌のわかめ味噌汁、あと雪妖精の紅葉漬けだ!俺が、鈴音さんの手伝いをして作ったんだ」
「凄い!ありがとフミ!」
えっへんと胸をはるフミに私は拍手をして、褒め称えた。
何も言わないが、これは彼女の照れ隠しの一種だと私は知っている。
朝から、こんなレアな一面を見れたのはいい日の兆しかもしれない。
まぁ、それよりもっと前に嫌な事があったからその埋め合わせなのかもしれないが…。
フミが手伝ったご飯は、いつもより少し美味しく感じた。
ただ、雪妖精の紅葉漬けだけは食べるのに少しだけ抵抗があった。
彼ら、漬けられているのにまだ息があって…そのせいで、箸で掴むと泣き顔を見せてくる…気がするんだもん。
まぁ、食べた瞬間に広がるひんやりとしたあの感じは少し癖になったから次も又食べたいんだけどね
その後、私はハルさんとフミ、あと棗を部屋に招き例の手紙について話し合うことにした。
話し合うといっても、まぁ入学自体は決定してしまっているので今後の動き方について話すだけだ。
例えば、入学に必要な物とか魔王の子だとしても試験はあるわけだからその対策とか…。
まぁ、話すことは色々とあるのだが…。
「で?貴方は何故ここに?」
「さっきも言ったでしょ?そこの泥棒猫ちゃんに手紙を届けに来ただけだって」
私の部屋に入ってから、ずっとこの調子だ。
多分、昨日の事がなにか関係しているのだろうけど…私からしたら何も分からない。
だって、気絶していたのだから…。
しかし…いつまでたっても話が進まないのも癪だ。
「棗、ハルさん…これ以上言い争うなら二人とも出てってもらうよ?」
「私は構わない。元々、手紙だけ届けるつもりだったからね」
「このはお嬢様っ!?私を見捨てるんですか!?」
冷静に帰りたい意思を伝えるハルさんとは裏腹に、涙目でこっちに訴えかけてくる棗。
悪いものでも食ったのではないか?と不安になるほど普段とは大きく違うその姿に私は戸惑いを覚えた。
「じゃあ、争わないって誓える?」
「はい!誓います!」
「ならいいよ…。」
その後は、何事もなく話し合いが進み試験日までの時間割も決まったため早速取り組み始めた。
ー試験当日
「では、私は外で待っていますので」
「うん、じゃあまた終わったらね」
「はい、頑張ってきてください」
「うん!」
棗と短い会話を交わし私は、試験会場であり入学予定のセレンスティア学園に向かって歩き始めた。
いやぁ、久しぶりの投稿だぁ。
ほんと、申し訳ございません。
いや、言い訳になりますけど言い訳させてください。
最近、忙しかったんです。
ほんとに、ワタシウソツカナイ!ホントホントw
っというのは、おいておいて…。
他の小説の執筆とゲームに逃げてました。
来週からは、もっと執筆頑張るので期待しててください