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目次
私が消えた14年後。
めちゃくちゃ長いです
のどかな朝。
今日はうちの隣に引っ越してくる人がいるらしい。
ママから聞いた。
同じ年ぐらいの子も来るというので楽しみだ。
「ピーンポーン」
早速来た!
ガチャリとドアが開いて同性のあたしから見ても可愛い女の子が入ってくる。
「□□☆☆です。これからよろしくね!」
明るい声で挨拶してくれる。
…?どこかで聞いたことある名字…かな…?
こんな名字、聞いたこと無いんだけど…
不思議。
ともかくよかった。
幸いなことに、☆☆ちゃんと私は同級生。
お友達になれそうだ。
女の人も入ってくる。
「□□★★です。
あなたみたいな可愛いお隣さんが出来て、きっと☆☆も嬉しいと思うわ。
これからよろしくね。」
きっと彼女のママだろう。
綺麗で、大人っぽくて、素敵な人だった。
あんな素敵な人になりたいなぁ、と素直に憧れた。
じゃあ、パパはどんな人かな?
きっとかっこいいんだろう。
次の瞬間、入ってきた彼女のパパ…彼を見てあたしは…いや私は…
全てを思い出した。
小さなころから一緒にいた彼。
幼馴染、というやつだ。
気づいたら恋をしていて、
その笑顔が、私は好きだった。
どうしようもなく、大好きだった。
高校の時、やっと、長い長い初恋を実らせることができた。
「嬉しい。マジありがとう」
と言われた時は涙が思わずこぼれてしまった。
程なくして、私たちは大学生になり、
「お互い社会人になったら結婚しよう」
と約束していた。
私も彼と愛情を深め、気づいたら卒業間近。
本当に毎日が輝いていて、幸せだった。
やっと彼と結婚できる………
………そう、思ったのに。
神様は、運命は残酷だ。
私は彼と彼の家でお家デートしている時に、血を吐いて倒れてしまったんだ。
私は救急車に乗せられ、搬送された。
搬送先の病院で、私は心臓の病気だと診断された。
何万人に1人しか発症しない、珍しい難病。
今の技術だと病状を遅らせることしか出来ないそうだ。
彼も家族も一生懸命看病してくれたけれど
病気は悪くなる一方で…
私はとても、申し訳なく思った…
余命3ヶ月。
ここまで来てしまった。
私は辛い病院での生活から、家で家族と、彼と、みんなで最期まで暮らす道を選んだ。
延命治療を受けながら、毎日穏やかな時間を過ごせた。
母は
「こんな病気の体に産んじゃって本当にごめんね…」
と毎日泣いていたし
未来のお義父さんも
「…こんなことしか出来なくてごめんな。」
と言って目元を腫らしていた。
友人たちも
「気づいてあげられなくてごめん…」
と、かわるがわる家に来てくれた。
みんなのせいじゃないのに…
本当に、申し訳なかった。
だから、なるべく笑って、
「私は大丈夫。みんな、こっちこそごめんね。毎回大変だよね…」
と言ってやり過ごしていた。
そのまま2ヶ月たった。
朝、急に息が出来なくなって、どうしようもなくて、私は意識を手放す。
もう、持たないだろう。
お医者様に言われた。
発症してから約2年。
最期に彼に会いたい。
そう伝えると、家族は部屋から出て行き、代わりに彼が入ってきた。
「…っ!」
姿を見るだけで涙が溢れでる。
「ご……め。…わた………し、こ…んな…に……は……や…………しん…じゃ……て。」
ああ、言葉が途切れ途切れになる。
すらすら言えていたころが、ひどく懐かしい。
「このバカ!本当にそうだよ!!」
そう怒鳴りながら、彼も泣いている。
「バーカ、バカバカ、何でこんなすぐ死ぬんだよ!」
「…ほと……に、……ごめ」
「…俺だってお前のせいじゃないのは分かってるよ。分かってる。
…あーあ、折角初恋が実って、結婚できるところだったのにな…」
苦しそうな彼の姿。
もどかしい。
抱き締めてあげられないこの体が憎い。
「…だ…い………すき」
「俺もだよ。バカ○○」
夕暮れが今までで1番綺麗に見える。
今まで気づかなかった。
こんなにも、世界は綺麗で素敵で美しいもので溢れていることに。
何気なく過ごしていた私がとてもマヌケに見える。
「……あ、………し…て………………る。」
「俺もだよ…」
そっと、頭を撫でられる。
数秒が何時間にも感じられるようだ。
「…っ!俺!お前のこと絶対忘れない!忘れないから!…待っててくれるか?迎えに行くまで」
「…コク………し…あ………わ…せ………に………な……てね?」
「おい!待て!まだ死ぬな!」
とんでもない眠気に襲われる。
疲れた…ちょっと休もう…
…薄々分かっている。
ここで眠るとどうなるか。
彼の声が小さくなる。
ありがとう。
愛してるよ。
そこで、意識はプツリと途切れた。
……と、言うわけだ。
私だって分かっている。
いつか彼にも、他に大切な人が出来るかもしれないことを。
でも、流石にこれは酷くないか?
せめて、もっと遠く、一生会わないようなところに産まれたかった。
最悪なことに、☆☆ちゃんは私と同級生。
嫌でも授業参観などで彼と会うのだ。
+、彼の奥さん、★★さんとと彼らの子供、☆☆ちゃんにに。
…強い悪意を感じる。
ああ、神様は、運命は、本当に残酷だ。
私が死んでから14年。
私と彼は再会した。
…彼は別の人と結婚して父に、私は幼女になって。
早すぎる、再会だった。
私はすくすくと成長し、受験を経てそこそこ頭のいい私立中学に入学することができた。
ちなみに☆☆ちゃんもいる。
前世の知識は引き継がれていないようで、彼らと会わないように必死で勉強した。
でも、彼女もたまたまその学校に惹かれていたようで、私が受験することをお母さんを通じて知り、受けることを決めたらしい。
お母さん!?
受験した意味、無。
入学式でいつもより数倍綺麗な★★さんもにっこり笑って
「あら、とっても素敵ね!
これからもこんな娘だけど、仲良くしてくれたら嬉しいわ!」
と言う。
あはは〜と曖昧に笑って誤魔化した。
泣きたい。
今の父と母は、私と☆☆ちゃんが親友だと思っているから、母が言ってしまったのも仕方ないかもしれないが…
5月に入った。
今日は朝から雨。
何だか気分が浮かない。
ぼーっと授業を受けて、帰ってきたところ、駅でばったり★★さんに会った。
世間話をする。
最近人気のドラマについて話終わった時、★★さんが真面目な顔でこちらを見つめた。
「もう一つ言いたいことがあるんだけど…」
嫌な予感がする。
「私、妊娠したの。」
「…え?」
思考が追いつかない。
「うん。この前わかったばかりでね。
産まれてくるのが楽しみ!
☆☆も弟か妹ができるって言ったらすっごく嬉しそうだったわ!
『ほんと?やったあ!』って!」
「そ、そうなんだ!」
「ええ、長年もう1人欲しいと思っていたのよね〜」
…どうして私に言うかな。
愛想笑いを浮かべながらそう思う。
幸せそうに微笑む彼女をみて、私は耐えられなくなった。
「ごめんなさい。
急ぎの宿題があったのを思い出して…」
「引き止めちゃってごめんね。
宿題、頑張ってね!」
と、嘘を鵜呑みにする★★さん。
スカートに泥がはねるのも、坂道も気にせず私は走った。
「あっ!」
つるりと滑って膝を擦りむく。
ザーザーと降る冷たい雨。
冷え切った心。
★★さんの幸せそうな、暖かい笑顔。
ジンジン痛む足。
病気なんてないはずなのに、息が苦しくなる。
凄く、凄く惨めだった。
「…もうやだ」
フラフラと立ち上がり、道を渡ろうとする私の手を、誰かがガシッと掴んだ。
「危ない!」
その途端、正気に戻る。
目の前は交通量の多い横断歩道。
赤信号。
…自殺行為?
「何バカなことしてるんだ!ほら、風邪引くぞ!」
彼だった。
「…っ……ウッ…ヒック……ウアア」
「!?」
突然泣き出した私を見てオロオロする彼。
「と、取り敢えずうちに!」
瞬間、ふわっと浮く。
これは……お姫様だっこ?
「ちょ、ちょちょちょ、下ろして〜!!」
「怪我人は動くな!」
顔が真っ赤になる。
でも、身動きが取れず、私は彼におとなしく掴まりながら、運んでもらう。
「ほら、着いたぞ。消毒液持ってくるな。」
「あ、ありがとう。」
「別に、このぐらい全然大したことないし…」
気まずい沈黙。
今日は☆☆ちゃんは友達とカラオケって言っていた。
…つまり2人きり!?
ソワソワしてしまう。
「で、何があったんだ?」
「あ、の…失恋、しちゃって。」
「…失恋?」
私は個人を特定できる情報を伏せた上で、(もちろん転生のことは言わず)話した。
「…俺も失恋?したことあるんだぞ?」
彼が私との思い出を話しだす。
「昔な、俺には★★とは別の彼女がいたんだ。
幼馴染で、ちっこくて、何でもやりたがるくせに出来ないんだよ。
俺が怪我した時はすぐ駆け寄ってきて、
『大丈夫?保健室行こ?』
って言うようなお節介なやつで。
でもそう言うところが可愛かったし、愛してた。
でも、大学生のころ難病にかかって…そのまま死んじまった。」
彼の目はいつの間にか湿っていた。
「それから無気力になって、仕事も上手く出来なかったんだけど、そんな時★★に出会った。
献身的にサポートしてくれて、何で?って聞いたら、ほっとけないって返ってきて。
アイツに似てたけど、全然別の人間で…飲み会の後、アイツを失ったことを話したら、泣いてさ。
『私、先輩のこと何にも分かってませんでした。
ただ失恋した、としか聞いてなくて、勝手に軽ーく考えてた私がバカで恥ずかしくて仕方ありません。本当にらごめんなさい。』
って。その時、恋に落ちたんだよ。」
そんなことがあったんだ。
知らなかった。
彼の全てをわかっているつもりでいたけど、まだまだまだまだ、私の知らない彼ががいるんだろう。
「でも、アイツを差し置いて俺が幸せになっていいのか分からなかった。
だから告白出来なかった。
そしたら、おばさん…アイツのお母さんが突然、ビンタしてきたんだよ。
『いつまでもメソメソしてるんじゃない!
あの子は最期に幸せになってねって言ったんだろう!
それなら幸せになるのがあんたがやるべきことだよ!
それが、あの子の願いなんだから!』」
お母さん。
お母さん…
私のお母さんはシングルマザーだった。
お父さんは小さいころに別の女の人と浮気して出ていって、それっきりだ。
怒る時はとっても怖かったけど、怒った後は朝ご飯に大好きな塩おにぎりを置いてくれた、お母さん。
女手一つで私を育ててくれたお母さんには感謝してもしきれない。
酷く懐かしい。
「それで俺は★★と結婚したんだよ。」
「…そう、だったんだ。」
「★★のことは愛してるけど、時々アイツに申し訳なくなる。
アイツが病気にならなかったら、俺は今どうなってたのかなって」
「…バカなこと言わないでよ。」
そっと呟く。
「…え?」
「本当は、あなたと幸せになりたかった。
戻れるなら戻りたい。
たくさん旅行にも行きたかったし、憧れのメーカーから内定ももらえたからそこで働きたかった。
ウエディングドレス姿だって見せたかった。あなたと、暖かい家庭を築いて、子供もたくさん作って、いつも賑やかで笑い声が絶えない家庭。
お互い思いやる素敵な家庭。
★★さんたちみたいな。
そんな家庭を、あなたと共に作りたかったよ。
でも、いくら願ったってもう出来ない。
時は巻き戻せない。
…だから、さ。
せめて、あなたには幸せになって欲しかった。
私の分まで、いろんなところ行って、バリバリ働いて、タキシード着て式場で写真撮って…
そんな私の小さないろんな夢を、叶えてくれてありがとう。
あなたは今を生きてるんだから、前を向いて生きなさい、ね?
約束だよ。」
やっとこの恋を諦められた。
視界が揺れて、段々意識にモヤがかかる。
これでほんとに、私は消えるのかな…
もう悔いはない。
私はにっこりと笑う。
涙が溢れないように。
最大の愛を込めて、あなたに。
「…?」
目覚めると、そこは見慣れた我が家。
「あれ?私、学校から帰って来て…どうしたんだっけ?
何だか長い長い夢を見ていたような…」
記憶がない。
「あっ、やっと起きた!
もう、心配したのよ!」
あたしはママから記憶が飛んだ間に起きていたことを知らされる。
何でも、おじさんが怪我したあたしのことを家まで運んでくれたんだと。
「後でお礼言うのよ?」
はーいと答えながら起き上がる。
しとしとと降り注ぐ雨は、明日には止むそうだ。
「綺麗な虹がかかるといいな!」
フフッと笑うと、心も晴れやかになった。
「さーてと、勉強ー勉強ー
だるいけどがんばるよっ!
☆☆ちゃんと遊ぶためにも〜!」
誰かの想いを背負って、今日もあたしは毎日を生きる。
目一杯楽しんで、精一杯努力して。
辛いことだってあるけど、きっと大丈夫。
あたしなら大丈夫!
きっと明日もあたしはご機嫌だろう。
何故か、そんな予感がした。
いやなっが。なっが。
合計、5286文字也。
…頑張りました、私。
でも書いてて楽しかったからいいのだ!
恋愛ものっていいですよね!
登場人物紹介(私が消えた14年後)
ネタバレありです…
主人公ちゃん
私考える名前は結奈|《ゆうな》ちゃん。
若くして難病にかかった可哀想な子。
実は転生したんじゃなくて後述するあたしちゃん…遊衣ちゃんに憑依してただけ。
お節介。
地頭はそこそこ良かった。
今はもう消滅。
今度こそは、好きな人と幸せになれるといいな…
あたしちゃん
一人称:あたしの元々の体の持ち主。
私考える名前は遊衣ちゃん。
天真爛漫美少女。
青春を謳歌してます。
彼くん
結奈ちゃんをとっても大事にしてた。
その分、結奈ちゃんが死んじゃった時も深く悲しむ。
が、後述する★★さん…梨々香さんによって傷を癒やされる。
思いやりがあっていい夫。
結奈ちゃんに最後一言もらって、より大事に生きようと思った。
☆☆ちゃん
私考える名前は雲母|《きらら》ちゃん
ゆるふわで恋する乙女。
そんなに出てこなかったけど、遊衣ちゃんとはとっても仲良し。
妹が産まれてくるのが楽しみ。
★★さん
私考える名前は梨々香|《りりか》さん。
優しいお姉様。
彼くん大好き♡
2人目(女の子)を授かって、とっても嬉しそう。
2人目の名前は雲|《ふわり》ちゃんにするそうです。
お母さん(前世)
結奈ちゃんのお母さん。
シングルマザー。
浮気されたけど愛娘、結奈のために頑張ってた。
パワフル。
実は看護師さん。
今のお母さん
とっても心配症。
娘大好き。
娘に何かあったら許さないよ!
今のお父さん
お仕事忙しくて不器用だけど娘ラブ。
娘に何かしたら許さないからな!