規則とかマナーとかそういうのが大嫌いな主人公(男)がホグワーツで暴れる話です。最初の方は優等生、途中からおかしくなってくる。
話によっては腐がある場合があります。
にわかです。映画は見ましたが、いまいちよく分かって無いところがあります。
爺世代の学年とか結構適当です。都合のいいようにしてる。
調べながら頑張って書きます!
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目次
 
    
        設定資料
        
            物語の初期設定です。
重要なところは書いてないときがあります。(あとあと分かるようにする)
        
        
        ノア・オーウェン・フォークナー
(Noah・Owen・Falkner)
ノア→ノアの方舟、癒し
オーウェン→よい生まれの、騎士
フォークナー→鷹匠
見た目
・白くふわふわした髪
・丸く大きな水色の目
・頬が赤くなりやすい
・周りより身長が低く体重も軽い
性格
・穏やかだが戦うことが大好き
・人懐こい
家
純血でそれなりに良い
両親共に奔放主義
興味が無いわけではないが自由にしてほしいと考えているから。
---
スタート→孤児院でトムに一目惚れするところから(ホグワーツ入学五年前)
段々と依存されていく過程を書きたい!
今のところ
・惚れ薬とかその辺の魔法にやられる
・ピアスを開けてひと悶着
などその辺を書きたいな…
        
    
     
    
        1.魔法使えるってマ?
        
            第一話目!
        
        
        暇。どうしようもなく暇。
僕、ノア・フォークナーは楽しいことが大好きだった。そもそも両親共に自由を愛していて、純血の貴族であるのにも関わらずマグル界へよく遊びに行くほどだった。僕が小さい頃から勝手に庭の鳥を一羽から二十羽にしても、浴場を真っ黒にして魔王の風呂見たいにしたとしても、ひとつも怒らなかった。それどころか一緒に遊びだす始末。僕が唯一両親に怒られたのは、家を半壊させたときぐらい。マジで怖かった。拘束呪文で逃げないようにされ、二日間父のお説教を食らった。ほんとゴメン。父ちゃん。
そんな家庭で育った僕は、暇を大の苦手としていた。
このバチクソ広い家は五年もすんでりゃ探索しきるし、この世の一人遊びも全部しきった。対戦物は執事とやれば良いと思うかもしれないが、どう言っても手加減される。
「…遊び相手を作れば良いんじゃないか?」
口について出た言葉だった。
よく考えればそうだ。僕天才か?そうと決まればすぐ行動!
「オリヴァー!マグル界にいくから用意して!」
…僕何でマグルって言ったんだろう。
オリヴァーがてきぱきと用意してくれ、マグルのくらす所へ早速行くことになった。
「坊っちゃん、行き先は何処で御座いますか?」
「とりあえず、マグルの孤児院!」
---
孤児院につくと、人の良さそうな女性が出てきて案内をしてくれた。子供達はいかにも貴族としか見えない格好をした僕と執事のオリヴァーを見て緊張している。ちょっとキラキラ過ぎたか。ごめん。
う~んこの子は一緒に走りまわれなさそう。この子は戦術系のゲーム苦手かも…
「この孤児院はこの子達だけですか?」
「いえ…もう一人いますが、少し難しい子で…。」
一応見ときたい。可能性があるなら!
「案内して下さい。」
「でも、少し危険で…。」
「大丈夫です。執事が居るので。」
「…分かりました。こちらです。」
女性は少し考えて、孤児院の奥へ歩いた。
薄暗い廊下にポツンと置かれた扉の前に案内された。物置っぽいけど。
女性が扉を開けると、黒髪黒目の恐ろしく顔が整った子供がいた。
「何ですか。」
「あなたを見たいと言う人がいらっしゃったの。」
「新しい精神科医か?僕はおかしい子供なんかじゃない!」
「違います!子供を引き取るためと見に来て下さった人よ!」
言い争う二人のことなんか気にしてなかった。
かわいい!何で?!僕の好みドストライク!!好き…。
オリヴァーとこそこそ話す。
「オリヴァー、僕絶対この子。」
「何故ですか?坊っちゃん。」
「顔。一目惚れした!」
「承知致しました。」
「君、名前なんて言うの?」
「お前に名乗る名前なんて無い。」
「僕引き取る気マンマンだったんだけどな…。」
女性が驚いた声をあげた。
「すみません。一対一で話してみたいのですが…。」
「わ、分かりました。」
「ごめん。僕が名乗って無いじゃん。僕はノア・オーウェン・フォークナー。」
素直に謝った僕に彼が驚いた。
「お前、怒っていないのか?」
「もちろん。」
「…僕はトム・リドルだ。」
「そう。よろしく。」
僕が女性に引き取る旨を伝えようと動くと、トムは察したのか「待て!」と言った。
「自分で言うのもおかしいかもしれない…僕は変な子だぞ。」
ふーんと興味なさげに言うとトムは少しイラッとしたようだった。
「なんで?」
と僕が言うと、彼の机の上の物が一斉に上へ上がった。
「へぇー。こりゃすごいや。」
「驚かないのか?」
と聞かれたけれど、正直すごくびっくりした。お前、魔法使えるってマ?やば。
「僕も出来るからね。」
と返すので精一杯。
でも、僕の言葉にトムが目玉をかっぴらいて本当なのか?と聞いた。
「嘘つくわけ無いよ。」
「見せろ。この場で。」
トムがそう言うから、僕は指をふってみせた。僕たちの足元が青い花の咲きほこる野原に変わった。
「本当なんだな。」
「まあね。」
今度こそ僕が伝えに行こうと動いても、トムは何も言わなかった。
色んな手続きはオリヴァーがやってくれた。女性は終始驚きっぱなしで、僕が帰るというとありがとうと言った。
…トムってそんな嫌われてんの?
---
「なんでお前は僕を引き取ったんだ。」
「単純な理由だよ。僕が君に一目惚れしたってだけ。」
僕がそう言うとトムは顔を赤らめた。トムの黒目が赤く光った。かわいいな。お前。
「君の目赤くなってる。僕と対照的だね。」
トムはよく分かっていないようだった。
「僕の髪は白いけど君は黒い。目だって僕が青で君が赤。真逆じゃん。」
トムは納得したようだった。
「というか、今更だけど君とかお前って辞めようか。僕のことはノアって呼んで。君のことは何て呼べばいい?」
「トムでいい。」
「おっけー!よろしく!トム。」
        
    
     
    
        2.父ちゃん母ちゃん、それはちょっと適当過ぎるね。
        
            2話目!はやくホグワーツに入学させたいな。
        
        
        「ただいま!」
玄関の扉を開くと、整列した使用人たちが頭を下げていた。トムはここまでの金持ちだと思っていなかったようで、その場で固まってしまった。
「何やってんの。着替えなきゃだからはやく。」
「あ、ああ。」
「オリヴァー!お父様とお母様に“夕食の席で言うことがあるから今日は家に居てね!”って言っておいて!アメリア、いる?」
「はい。ここに。」
「風呂と僕と彼の服の用意をおねがい。」
「承知致しました。」
いまだ玄関で固まっているトムの肩を叩いてこっちだと伝えると、慣れない足で着いてきた。あ、段差だいじょうぶ?
「ここが僕の部屋!とりあえずはここにいて。」
「坊っちゃん、お風呂の用意ができました。」
「ありがとう。」
トムが待てと言った。
「もしかして二人で入るのか…?」
「どっちでもいいけど。まあ使い勝手わからないだろうし今日は一緒に入ろうか。」
---
「あったか~」
花びらが浮いた風呂に浸かる。気持ちよすぎる…。風呂さいこー!!
僕がうとうとしているとトムが口を開いた。
「ノア、お前以外と筋肉があるんだな。」
「遊び回ってるうちに勝手についたんだ。筋肉なんてあって困るもんでもないよね。」
トムが僕のことをまじまじと見つめた。
「なに。触って見たいの?」
腕ならいいよ、というとトムが僕の左腕をぺたぺたと触った。筋肉に興味ある感じ?いいね!
熱くなってきたので、そろそろ出ようかというとトムが頷いた。
白く、刺繍の入ったタオルをトムに投げる。魔法で二人分の髪の毛を乾かすと、無性にその頭を撫でたくなった。ちょっと触るね。ふわふわ~!手触りよ~!
しばらく撫でていると、頬を赤らめたトムがこちらを睨んでいた。
今絶対、同い年なのにって思ったよね?
---
坊っちゃん、お食事のご用意が出来ておりますよ、とオリヴァーに言われたので二人で食堂に向かった。
到着すると既にお父様お母様が席に座っていて、僕らのことを見た。
トムにそこに座ってというとぎこちない素振りで座った。二人に緊張してるの?確かに、するかもしれない。二人とも身長もあるし何より美しい。でもな~。中身は完全に子供(僕)と同じなんだよ…。
「ノア、その隣の子はどうしたの?」
お母様が口を開いた。
「一人だと暇だから、孤児院から引き取って来たんだ。なんか、魔法が使えるらしいから丁度良いかなって思って。」
僕のラフな言葉づかいにトムが驚いた顔を見せた。僕ら堅苦しいの嫌いなんだ。トムは二人の返答がどうなるか緊張している。
「そうか!良かったな。」
「うん!明日から家に住ませていい?」
「もちろんよ。ノア。」
サクサクと進む僕らの話し合いにトムはもう放心状態。ちょっとおもしろい。
「トム、自己紹介してよ。」
はあ?と言いたげな口をトムは無理矢理にっこりとさせて言った。
「トム・リドルです。引き取って下さってありがとうございます。」
切り替えすごいね。君。
「そんな堅苦しくなくていいわ。よろしくね!トム。」
---
食事を終えて部屋でゴロゴロしているとトムが口を開いた。
「良いのか?こんな適当で。」
「二人が良いなら良いんだよ。嫌なことは嫌ってきっぱり言うだろうしね。」
そうか…と納得がいってない顔で本棚を見た。
「好きな本みていいよ。これなんかどう?」
と『世界のおもしろボードゲーム』と書かれた本を渡すとトムは素直に読み始めた。それ読んではやく一緒に遊べるようになってね。
        
            次回はもうホグワーツにいれようと思っています。
番外編でホグワーツに入るまでの五年間を書いて行こうと思っています。
はやく惚れ薬の回を書きたい!
        
    
     
    
        3.僕の杖がいちばんかわいいが?
        
            3話目!いろいろ飛ばしてホグワーツへの準備です。
        
        
        トムをフォークナー家で引き取ってから五年が経った。
トムの性格は相変わらず捻れているしお父様お母様も奔放主義。でも、僕ととにかくたくさん遊んで勉強したトムは結構家に馴染んでいた。というか、トムめっちゃ頭よかったんだね。僕のことすぐ追い抜かしちゃった。ついでに背も。そんな感じで僕らの関係性は変わらないまま10歳になった。
ある朝、眠い目を開けると僕らの部屋にホグワーツへの入学許可証が届いていた。
「父様母様、僕らに入学許可証がきたよー!」
そう言って父様に飛び付くとがっしりとした体で受け止めてくれた。父様の筋肉、レベチ。母様はにこにこと笑っていた。美人!親だけど!
走り出した僕を追いかけてトムが部屋に入ってきた。
トムもめっちゃかわいいまんま。これ以上成長しなくてもいいけどね。
「ノア!急に走るな!…おはようございます。」
トムは堅いな。二人とも“もうフォークナー家の一員だ”って言ってんのに。
「トム、おはよう。ノアから聞いたよ。おめでとう。」
父様がトムの方を向いて言った。
「今日は二人の入学準備のため、ダイアゴン横丁に行きましょう!」
と母様が言った。賛成!と返すと嬉しそうに笑った。
---
「着いた!ここがダイアゴン横丁。トムは初めてだよね?」
と聞くとトムは頷いた。
いろいろなものを買わなきゃいけないから手際よくまわらなきゃ。このままだと周りが人だらけになっちゃうしね。
フォークナー家は父様も母様も素晴らしく美人だから周りが勝手に埋まってしまう。だからダイアゴン横丁にはあんまり来ない。今回もみんなに気づかれる前にぱぱっと移動しなきゃ!
「トム、メモ見せて!」
---
一年生は次の物が必要です
制服
普段着のローブ三着(黒)
普段着の三角帽(黒)一個 昼用
安全手袋(ドラゴンの革またはそれに類するもの)一組
冬用マント一着(黒、銀ボタン)
衣類には名前をつけておくこと
教科書
全生徒は次の教科書を各一冊準備すること
「基本呪文集(一学年用)」 ミランダ・ゴスホーク著
「魔法史」 バチルダ・バグショット著
「魔法論」 アドルバード・ワフリング著
「変身術入門」 エメリック・スィッチ著
「薬草ときのこ千種」 フィリダ・スポア著
「魔法薬調合法」 アージニウス・ジガー著
「幻の動物とその生息地」 ニュート・スキャマンダー著
「闇の力―護身術入門」 クエンティン・トリンブル著
その他学用品
杖(一)
大鍋(錫製、標準、2型)
ガラス製またはクリスタル製の薬瓶(一組)
望遠鏡(一)
真鍮製はかり(一組)
ふくろう、または猫、またはヒキガエルを持ってきてもよい
一年生は個人用箒の持参は許されないことを、保護者はご確認ください
---
うーん…。多すぎ!
「ノア、杖が見たい。」
「まあまあ。とりあえず順番にいこう。最初は…マダム・マルキンの洋装店だよ。」
---
「こんにちはー!」
「いらっしゃいませ。…あら、フォークナーさんのところの!」
「ああ、今日は二人分の制服を頼みたいんだ。」
父様がにこやかに言うと、
「承知しました!もしかして、その黒髪の子は引き取られた子ですか?」
「一緒にホグワーツに行くんです!」
元気いっぱいに答えるとそうなのね、と言って採寸の準備を始めた。
採寸は30分程で終わった。父様がお金を払っていると、
トムが買ったものにピッと線をいれた。買い忘れが無いようにするためだと言った。
---
いろいろな物を買って、時には握手を求められることもあったけれど無事に最後のオリバンダーの店までやってくる事が出来た。
「杖下さい!」
僕が扉を開けて間髪入れずに言うとオリバンダーは笑った。
「そんなに急がなくても良い。さあ、どちらから選ぶ?」
「じゃあ僕から。」
「ずるいぞ。トム!ここは公平にじゃんけんだろ!」
まあまあと父様になだめられ、トムの杖選びを見た。
何度か杖の山が壊れたがこれだ!というものが見つかった。よかったね。
「お願いします!」
「杖腕は?」
「左ー!」
と腕を前に出す。これかな?と言ってオリバンダーが僕に杖を持たせた。杖を振ると窓がガタガタと揺れ、置物が落ちた。
何度かやってもなかなか決まらない。そろそろ手が痛いな。
「これじゃろ!レッドオークの木とジャッカロープの枝角の芯で硬直、34㎝」
僕がふわっと振ると、店の中には花びらが舞い、ふわりと春の香りがした。壊れた物も崩れた杖の山も直っていた。
「おお!これじゃこれじゃ。この杖は主導者を選ぶ。きっと良いリーダーになる。」
とにかく嬉しかった。これからよろしくね!杖くん!
その日は杖を抱いて帰った。
        
    
     
    
        4.組分けってやり直しアリなんだ。
        
            4話目!いよいよホグワーツ…!
今回ちょっと長いです。
        
        
        「たまには手紙書くんだぞ。」
「何かあったらすぐフクロウをだすこと!母様との約束よ。」
父様の筋肉に締め付けられた体がギュウと音を立てた。分かってるからやめて!あばら折れる。
9と4分の3番線で抱き合う僕らにトムが口を開いた。
「大丈夫です。ノアのことはしっかりと監督して見せますので。」
「僕ら同い年だよね?」
トムの言葉を聞いた父様が名残惜しそうに僕から離れた。ごめん、寂しいよね…。
というか、今まで気づかなかったけど周りがみんな僕らを見ていた。こんな感動的な別れは珍しいの?それともただ単に父様と母様の美貌?トムも入るかな。めっちゃかわいいし。
「そろそろ行くね。」
「ああ、気を付けて!」
「オリヴァーも、行ってくるね!」
「ええ。ホグワーツ、楽しんで下さいませ。」
---
三人との豪快な別れを終えた僕らは車両に乗り込んだ。
まずい。コンパートメントが埋まってる…。突っ立った状態でホグワーツまで行きたくない。僕、一応貴族だし!
うろうろ探していると一つのコンパートメントの扉が開いて肩を叩かれた。
「ノア、此方に来い。」
振り替えると、僕の幼なじみがいた。
「アブくん!」
トムが誰だと言いたげな目で僕を見る。そう言えばあったことないか。
「アブクラサス・マルフォイ。僕のちっちゃい頃からの友達だよ。貴族なんだ。」
「お前もだろう?ノア。それはさておき、君はもしかして…。」
「トム・リドルと言います。」
トムはよそ行きの笑顔を貼り付けて名乗った。
「ああ、君が…。」
アブくんは何か言いたいことがあるような感じだった。…あ、トムがマグル生まれだから?
「言いたいことがあるなら言っちゃえば?」
と僕が言うと、アブくんはこちらを見た。
「失礼だろうが言わせてもらう。彼はマグル生まれだろう?」
「まあね。」
「君ほどの人が、なぜマグル生まれなんかを…。」
「まあ良いじゃない。僕は気にしてない。遊び相手であってくれるならそれ以上もそれ以下もいらないよ。」
アブくんは少し黙ってそうかと言った。というか、こんな話してる場合じゃ無いんだよ。
「ごめんアブくん。僕らコンパートメント探してたんだ。ここ良い?」
「構わない。」
よし!席確保!
僕らが席に座ろうとすると、ノア、とアブくんが僕を呼んだ。アブくんが手で隣を叩いている。
「あ~!!そうだった…!」
トムは訳が分からないと言った顔でこちらを見ている。
「ごめん、トム。約束なんだ…。」
トムが説明しろと言った。僕が口を開こうとするとアブくんが僕を制止した。
「以前ノアと行ったゲームのご褒美だ。」
ほうとトムが笑った。
「僕がゲームで負けたから一年間弟扱いするんだって。屈辱だよ!同じ歳なのに。」
ニヤニヤとトムが笑う。
「それは良い。僕もやりたい。」
いつの間にかアブくんが出していたカードで僕らはブラックジャックをした。先に三回勝ったほうが勝利の絶対に負けられない戦いだった。
結局、僕は負けた。トムが兄と呼んでも構わないと言ったが、僕は断った。断固拒否だ。絶対に!
コンパートメントの外には、いつの間にか白熱した戦いを見に人がやって来ていた。助けて…。まだ見ぬ先輩…。
---
ホグワーツへ向かう道中、僕の髪は増えた二人の兄に弄ばれていた。
「何をしているの?」
黒髪の女の子が一人、コンパートメントの扉を開けた。マジで救世主だと思った。
「ヴァルブルガせんぱい、たすけて…!」
情けない声を力を振り絞って出した。たすけて。マジ今すぐ。冗談抜きで。
ただ、残念なことに僕の願いは届かなかった。短い三つ編みをされ、すっかりかわいくなってしまった僕の頭を見て、ヴァルブルガ先輩はニヤリと口角を上げた。
「楽しそうなことをしているじゃない。」
やんぬるかな。ヴァルブルガ・ブラック参戦!
制服を着替える時間になる頃には、魔法で伸ばされた髪が完全に女の子になっていた。この場の誰よりもかわいい。というか、途中からブラック家全員参加してなかった?
「コレ、モドシテ。」
「嫌だ。」
「断る。」
僕はなんとか説得して、白く短いもとのふわふわした髪に戻してもらった。
「制服着替えないとだよ。戻って!はやくはやく!」
これ以上は何されるか分からない。早く帰ってください。本当に。
みんなしょうがないなと言いながら帰った。目は諦めていなかった。
「ふう…。疲れた…。」
そうかと言うトムは上機嫌だった。僕のこといじめるのが好きなの?
コンパートメントにコツンと靴底のの鳴る音が響く。
「アブくんは相変わらず着替えるのが早いね。」
「君が遅いだけだ。」
「そんなことないよ!…着替え終わったアブくんにお願いがあるんだけど。ネクタイしめてもらったりって…。」
「本当に子供だな。」
君も僕も子供ですが?と返すといつの間にかネクタイはきっちりと締められていた。
「革靴は履けるかい?」
アブくんが僕を煽った。
「出来ます~」
アブくんとトムの笑い声が重なった。何でこいつら打ち解けてんの?さっきあんな純血かどうかでバチバチしてたのに。共通の友達がいると早いタイプか?
---
ホグワーツについてからは早かった。
校長先生の緒注意などを聞き、いよいよ組分け!正直どこでも良いよ、ぼく。父様も母様も好きなところに行っていいと言ってくれた。そんなんでいいの?一応純血貴族なのに。
「ABC順に名前が呼ばれます。呼ばれた生徒は前へ出て帽子を被って下さい。」
ABCDEF…僕とトムとアブくんの中で僕が一番最初だ。ちょっとわくわくする。
「Mr.フォークナー、少し話が…。」
振り返ると青いローブを着た先輩をつれた先生がいた。なんですかと聞くと、先輩はにこやかに話始めた。
「レイブンクロー寮の絵画、本当にありがとう御座いました!とっても素晴らしくて、談話室でいつも見とれてしまう程です。あなたがここにいると知っていてもたってもいられなくって…。組分け前にご免なさい。」
「いえいえ!謝らないで下さい。それより、あの絵画は僕のお母様の絵画ですよ。なぜ僕に?」
「フォークナー家の方とはなかなかお話できないので今しかないと思ってしまったんです。」
「なるほど。母に伝えておきます!きっと喜んでくれますよ。」
先輩はぱあっと顔を明るくした。
僕が話し込んでいるといつの間にかアブくんもトムも組分けが終わっていて、あとは僕だけだった。
「フォークナー、ノア」
名前が呼ばれた。帽子に向かって歩くとみんな僕のことを見ていた。ちょっと恥ずかしくない?
座って帽子を被せられる。うーんと考え込んだ後に帽子が
「ハッフルパフ!」
と叫んだ。
拍手が起こる。ちょっと嬉しいな~なんて考えていると、スリザリンのテーブルからブラック家の面々とアブくん、トムがこちらに向かってきていた。それはそれはお怒りだった。
帽子に。
「あり得ませんわ!もう一度、やり直して下さい。」
「帽子はもう古い。もう一度だ。」
そう抗議する彼らを尻目にハッフルパフのテーブルへ向かおうとしていると手首を捕まれた。
「待て。君はもう一度組分けをするんだ。」
それからは先生と彼らの口論だけが響いていた。最終的に先生たちが折れて、僕はもう一度行うこととなった。
マジごめんね。帽子さんと先生たち。
前回の二倍以上の時間をかけて帽子が言った。
「スリザリン。」
声量が全然違う。仕方ないとでも言いそうな感じだった。ごめん。帽子洗ってあげるから許して。
ふっと目を向ければスリザリンのテーブルが沸いていた。ヴァルブルガ先輩に手を引かれ、君のために開けていたんだと言われた席に座る。
先輩と先生の話が終わってご飯が出てくると、これ好きだったよね、これ食べれる?と先輩たちが言いながらご飯を取り分けてくれた。なにこれ、スリザリンの姫みたいになってる。
とりあえずご飯食べようと思って食器を手に取り口に入れた。
…なにこれ。クソうまい。カボチャスープかな?ホグワーツさいこー!!
「あの、Mr.フォークナー。」
声のする方を見た。そこには気弱そうな男の子がいた。
「僕のこと覚えてますか?ダイアゴン横丁で一度、助けて貰ったのですが…。」
あ、あのときの。タッパのある男らに絡まれてるのを助けた子だった。この子、スリザリンでやって行けるのかな。
「もちろんだよ。あのときは大変だったね。」
ちらりとトムを見ると誰だという顔をしていた。君、人混み苦手だからダイアゴン横丁行かないもんね。
「はい。死ぬかと思いました…。」
「だよね。ああそうだ、タメ口でいいよ。Mr.もいらない。僕らは同学年なんだから!」
彼は嬉しそうにうんと頷いた。
それを皮切りに色んな人が話しかけて来た。大概は君に会えて光栄だとかそういうのだったけど、僕は来るものは拒まないからたとえ同じフレーズばかりでも気にしなかった。
ヴァルブルガ先輩にお菓子を勧められるまでずっとそのままだった。トムは僕にほっとかれているからか少しイライラしていた。いや、少しどころじゃない。かなり。ヤバイかも。機嫌かなり悪いだろうな…。
        
    
     
    
        5.この変態が。
        
            5話目!書くの楽しいです!
今回ちょっと腐かもしれません。
ホグワーツの生活は結構想像です。こんなんだったらいいなというやつを書いています。
        
        
        ご飯の時間が終わって、監督生が寮へ案内してくれることになった。寮での生活についてとか設備について解説してくれている中、僕は説明を一つも聞かず動く階段に夢中だった。
だってヤバいじゃん!動くんだよ、ほんとに!
僕が階段をまじまじと見つめていると背中をバシッと叩かれた。
「いった…!」
「何やってるんだ。いくぞ。」
あ…。僕がまたトムをほっといてしまったせいでトムの機嫌は最高に悪かった。話しかけたら殺されるんじゃないかと思うほどだ。すみません。トム様許して下さい。
「部屋分けを行う!まず、101号室…」
名前がなかなか呼ばれない。睡魔と戦うのももう限界。大きなあくびをして待っていると、僕の名前は最後に呼ばれた。
「ノア・フォークナーとトム・リドルは二人部屋だ。今年は二人足りないからな。」
なんだ、トムか~。色々考えなくていいのは楽だけどここでも一緒なんだね。
「部屋割りが終わったから解散だ。鍵は部屋の中に人数分ある。その他分からないことがあれば先輩に聞くように!」
「ノア、行くぞ。」
そう言われ、腕を捕まれた。痛い痛い!怒ってるのは分かるからもう少し優しくして!
---
「へー。こんな感じなんだ。」
と部屋を見渡した。四人用だからか、二人で使うにはちょっと広い。とりあえずベッドどれにしようか決めよう、と思っているとカチャンと金属のぶつかる音が聞こえた。ああ、鍵かけたんだね。わかる。防犯は大事。
僕が本棚を見てみようと歩くと、トムがずんずん近づいてきた。なんか圧があって怖い。ついに壁まで追い詰められた。
鼻先が当たりそうなぐらい近い。僕はトムの顔が大好きだからちょっと頬が赤くなってしまう。たぶん耳も赤い。
「なに…?」
頑張ってそう聞くとトムが答えた。
「なぜ僕のことを気にしない?」
「え?」
「小さい頃からずっと一緒だったのに。お前は僕のものなのに。何故僕が我慢しなければいけないんだ。」
頭のなかが?でいっぱいだ。
「トム、君ってそんなに束縛強いタイプだったっけ?」
「うるさい。黙れ。とにかくお前には僕しかいないと言え。」
「今じゃなきゃだめ?」
「今、この場で。」
「…僕にはトムしかいない。」
「心がこもっていない。」
めんどくさいな。こいつ。ちょっとかわいいけど。
「ほんとに思ってるよ。心のそこから。僕が君に嘘ついたことは…あるかもしれないけどこれは嘘じゃない。本当に。…僕にはトムしかいない、これでいい?」
トムは僕のことを少し見つめ、僕のほくろがある首を見たあと
-噛んだ。それは思いっきり。シャツが血で滲むほど。
「いった!!!」
僕の叫びは周りに聞こえていたらしい。大丈夫か?と近くの部屋の子が様子を見に来てくれた。でも残念ながら、鍵はしまっていた。
今ほど鍵を開けてほしいと思ったことはない。
「大丈夫だ。ノアが転んだだけだ。」
くっそこいつ!!
僕がトムを睨むとトムは今日一番の笑顔を見せた。この変態め。
はあ…疲れた。風呂に入る気力すらない。僕はローブを脱ぎ捨て、ネクタイとボタンを緩めてベッドにダイブした。トムは満足したのか隣のベッドに座った。
「なにしてんの?」
「見ているだけだ。問題ない、寝ろ。」
僕の意識はそこで途切れた。
---
「起きろ、ノア。」
うーんと寝返りを打ってあと五分…と言うところで違和感に気付いた。アブくんの声。それになんか、人多くね?
あくびをして起き上がると周りには何故か人が沢山いた。ベッドの周りはアブくんとブラック兄妹がいた。なんでトムがいないんだ。それにここ、男子寮だよ。というか、入口から人が除いてる。なに?なんで僕の目覚めをこんな見守ってんの?
…なんで僕制服なんだろう。というか首かジンジンする。ぺたっと触ってみるとカリカリしたものがあたった。かさぶただ。そこで全てを思い出した。
トム、覚えてろよ。
とりあえず着替えなきゃ。シャツにシワがよって、ボタンとネクタイが緩まっているせいで胸元が少し見える。ちょっと恥ずかしくない?
「着替えるから出ていって!」
そう伝えると我に帰った女子生徒が顔を赤らめて走り出た。
「アブくんもだよ。」
「ネクタイは出来るようになったのかい?」
「…座って待ってて。」
そう言ってぐちゃっとしたベッドを指差すと分かったと言って素直に座った。
ああ、風呂も入らなきゃ。
脱衣場に入って適当にぽいぽいと洗濯カゴに投げ入れ、シャワーを浴びた。
制服を着替えて大広間に行くとトムが手招きしてこっちだと言った。僕はトムのことを思いっきり睨んでアブくんと隣同士で座った。
「随分と遅いお目覚めだな。」
ニヤニヤしながらトムが言う。
「トムのせいだろ。」
「イライラして、どうしたんだ?」
分かっているくせに聞くんじゃねー!
「低血圧。」
ぶっきらぼうに答えて近くにいた先輩から手渡されたプレートを食べ進めた。先輩、ありがとう。
食べ進めているとトムが僕に言った。
「これ苦手だろう。ここに置け。」
う~ん優しい。ちょっと許しそう。僕チョロいか。
「ありがとー。」
と言ってキノコを皿にひょいっと乗せた。
「そう言えば、なんで朝はあんなに人が居たの?」
ずっと気になってたことを聞いてみた。
「昨日、ノアが悲鳴をあげていただろう?心配でみんな集まったんだ。」
「ごめんね。」
「いや、大丈夫だ。謝るなよ。」
「そっか。…ってかなんで悲鳴あげたか聞かないの?」
「なんとなく聞いちゃいけないかなと思ってね。」
アブくんが苦笑した。ああ、首のね。
「トムに聞いて。全部こいつのせいだから。」
親指でトムの腕をつつくとトムはよそ行きの笑顔で
「何もありませんよ。」
と言った。こいつ絶対泣かす。
いつの間にか他の寮の人たちも僕らのことを見ていた。僕はもう食べ終わっていたのでうとうとし始めていた。僕の意識はまた途切れた。
        
            次はモブ寮生視点でこの騒動をお送りする予定です。
        
    
     
    
        5.5.寮生視点
        
            「5.この変態が。」のスリザリン寮生視点です。
腐です。
        
        
        「いった!!!」
隣の部屋から聞こえた叫び声に俺らは動揺を隠せなかった。
なぜなら、隣の部屋はノア・フォークナーとトム・リドルの相部屋だったからだ。この二人は5年程前に大きなニュースになっていた。
-「フォークナー家の一人息子が孤児院から子供を引き取った」
と。しかも孤児院はマグルのところだった。一応子供は魔法使いだったそうだが貴族の奴がそんなことをするなんてあり得ないと思った。しかも純血。フォークナー家はとにかく自由であることで有名で、家業とは別で度々新聞に出る。彼らの行いに皆が目を丸くすることはあったが今回のはさすがに彼の両親も許さないだろう。誰もがそう思っていたが、彼の両親はあっさりとその子供を受け入れ名字こそ変えないものの家族として見ていた。
そんな二人の、フォークナーの叫び声が聞こえたとき俺らは、フォークナーにリドルが暴行を行ったのだと思った。
急いで扉を開けて、大丈夫か?!と声をかけた。
「大丈夫だ。ノアが転んだだけだ。」
中からそう聞こえたので、俺らは一旦部屋まで帰ることにした。
---
朝、監督生からフォークナーが来ないと聞き、血の気が引いた。
もしかして本当にリドルに殴られて、酷い怪我で動けなかったらヤバい。俺らの思いは一つになった。見に行かなければ。
俺らが部屋に着くと既にマルフォイやブラックの奴らがフォークナーを起こそうとしていた。みんな覗いている。人と人の隙間からちらっと覗いた。
すると、痣も何もないフォークナーがベッドで寝ていた。俺らは一安心した。なんせめちゃめちゃ心配したから。
ベッドの周りにはローブや靴が投げられていて、とうの本人はぐうすか眠っているようだった。マルフォイが揺さぶっても全然起きない。
やっと起きたと思って体を起こしたフォークナーの首もとを見て俺らは固まった。
歯形がついている。シャツに血のあともついている。
それに加え、変わっていない服に緩んだネクタイとボタン。俺らは思考を停止した。色気、ヤバ。
あいつの家はとんでもない美貌の持ち主であることでも有名だった。
あいつも例に漏れず、白くふわりとした髪にくりくりした青い目。程よくついた筋肉。今にも鼻血を出して倒れそうだ。これが、姉ちゃんの言ってた尊いってやつ…?
俺らは互いに目を見合わせてヤバいとしか言えないロボットになっていた。
あっ、あいつ写真を撮ってやがる。
俺らがくらくらした頭を押さえていると、フォークナーが低血圧なのか少しイライラした声色で
「着替えるから出てって!」
と言った。
俺らはそそくさと部屋をあとにした。
出るときに聞こえたんだけど、フォークナーってマルフォイにネクタイやってもらってんの?かわいい。俺らは尊いという感情を完全に理解した。
---
マルフォイにつれられ、フォークナーが大広間にやってくる。まだ眠いのかうとうとしていた。
他寮生も皆フォークナーのことを見ている。俺らはフォークナーたちの会話を盗み聞きすることにすべての脳を使った。
「随分と遅いお目覚めだな。」
「トムのせいだろ。」
「イライラして、どうしたんだ?」
「低気圧。」
ぶっきらぼうでも、かわいい。いけない。邪念だ。
黙々とフォークナーがプレートを食べる。
「これ、苦手だろう。ここに置け。」
「ありがとー。」
キノコ苦手なんだ。喧嘩してる相手にお礼言っちゃうとこ、好き。
「そう言えば、なんで朝はあんなに人が居たの?」
「昨日、ノアが悲鳴をあげていただろう?心配でみんな集まったんだ。」
「ごめんね。」
「いや、大丈夫だ。謝るなよ。」
「そっか。…ってかなんで悲鳴あげたか聞かないの?」
「なんとなく聞いちゃいけないかなと思ってね。」
分かる!ありがとう、マルフォイ…!
「トムに聞いて。全部こいつのせいだから。」
ん?
「何もありませんよ。」
なんとなく、答えが見えた気がした。
…そういうことですか?
勝手ににやける口角を必死で抑えて、フォークナーの方を見た。
あ、またうとうとしてる。やっぱり朝は弱いんだ。
ついに意識を手放して後ろに倒れる!というところでマルフォイとリドルが同時に支えた。
笑顔で睨み合う二人、すやすやと眠るフォークナー。
俺らは決意した。絶対にフォークナーのファンクラブを作ると。
        
    
     
    
        6.僕のファンクラブ作るって…正気なの?
        
            6話目!ファンクラブの回です。
        
        
        目が覚めると、アブくんに背負われていた。歩くときの心地よい振動にまたうとうとし始めていたらふわっといい匂いがした。お花みたいないい匂い~と思っていたらそれはアブくんの匂いだった。
「ノア、どうしたんだ。」
「めっちゃいいにおいがする~。」
僕がばか正直にそう言うとちょっとアブくんの顔が赤くなった。
え?!めっちゃレア!写真に撮りたい!
と興奮した瞬間、完全に目が覚めた。なにこの状況?
「え?ちょっとおろして!」
「だめだ。君は寝起きなんだから。」
いや、もう完全に目が覚めてます。恥ずかしいからおろしてほしい。マジで。
「それに、弟扱いすると言っただろう?」
アブくんが笑いながら言う。そうだったけど、ちょっとずるくない?
教室まで着いた。アブくんはまだ下ろす気は無さそうだった。
背負われてる僕を皆が見ていた。
「なにしてんの?」
声のする方を見ると大好きな幼なじみがいた。
「エイブリー!」
「やっほー、ノア!めっちゃ久し振りだよな?」
「たしかに。もう二年ぐらい会ってないかも。」
「ヤバいな!また一緒に遊ぼうぜ。というかそんなことより…どうしたんだ?それ。」
まだ背負われていることを思い出して、アブくんおろしてーと肩をトントン叩いた。一向に下ろす気配がない。
「僕が朝うとうとしてたらいつの間にか。」
「へー。まあ立ち話もあれだし座ろうぜ。」
エイブリーが親指で差した所には4つの空席があった。
窓側を一つ開けて僕、エイブリー、アブくんの順で座る。まだ授業には15分程時間があった。
「というかお前知ってるか?お前のファンクラブが出来るんだって。」
「はあ?冗談やめてよ~。」
僕があり得ないと言う顔を作るとエイブリーが本当だよと言った。
「いやいや。僕まだ入学して二日目なんだけど…。」
「今日の朝の騒動とかがあったしあり得る話だろ。」
トムの噛み跡ね。と目線で訴えるとちょうどよくトムが教室に入ってきた。
「トム!こっち。」
そう声をかけて、窓側の空席を指で差す。分かったという顔をしてトムが近づいた。
「トム。こんなギリギリまで何してたの?」
「図書室にいた。」
ふーん、優等生じゃんと思ったのを察したのかトムがちょっと得意げにした。
「ああ、ノアが引き取った子か。」
エイブリーがようやく合点がいったという顔をしていた。
「そう。五年前だけどね。」
「トム・リドルと言います。」
またよそ行きの顔。そんなに猫被っておきたいものなの?
「俺エイブリー。敬語いらねえよ。」
「いえ、初対面なので…。」
トムは誰に対してもタメ口になることを頑なに拒否している。タメ口の方が絶対楽なのに。
「何話してたんだ?」
「こいつのファンクラブが出来るらしいってこと。」
「さすがに冗談だと思ってたら、これが本当らしい。」
意味が分からないと呟くと、トムまであり得る話だろうと言ってきた。
「顔だけは良いからな。」
顔だけはというところを強調してトムが言う。
「顔だけはってどう言うこと?中身もって言ってよね。」
「今回のこともあるしな。」
とニヤニヤしながらエイブリーが僕に言った。
「本当にこいつが全部悪いから。こいつに全部聞け。」
「何でもありませんよ。」
朝と同じ返答にエイブリーが笑った。もうどうとでも考えるがいいさ。
チャイムがなって先生が入ってきた。一時間目が始まる。
---
寮生side
結局寝てしまったフォークナーはマルフォイに背負われて教室に入ってきた。
教室に入る前、マルフォイをフォークナーが嗅いで“いい匂い~”って言ってたのが聞こえた。うそ!そこもあるのか。
教室に入ってきた二人に、俺の前の列にいたエイブリーがなにしてんのと声をかけていた。
「エイブリー!」
フォークナーが嬉しそうな声をあげる。
「やっほー、ノア!めっちゃ久し振りだよな?」
「たしかに。もう二年ぐらい会ってないかも。」
「ヤバいな!また一緒に遊ぼうぜ。というかそんなことより…どうしたんだ?それ。」
「アブくんおろしてー。」
肩をトントン叩くフォークナー。かわいいね。
「僕が朝うとうとしてたらいつの間にか。」
「へー。まあ立ち話もあれだし座ろうぜ。」
いつの間にか持ってかれるで良いのか?本当に。同じ部屋の奴がかわいい。といいかけていた。さすがに言ったら怒られる気がする。
「というかお前知ってるか?お前のファンクラブが出来るんだって。」
「はあ?冗談やめてよ~。そもそも僕、まだ入学して二日目なんだけど…。」
「今日の朝の騒動とかがあったしあり得る話だろ。」
その会話を聞き、俺らは同時にヤバい、と思った。ばれたら終わると。さすがに認めてもらえるわけが無いと考えていた。卒業までフォークナーには隠し通さなければいけない。
俺らの思いがまた一つになったとき、教室にリドルが入ってきた。
朝と同じやり取りをする彼らに、俺はニヤニヤが止まらないままだった。
        
    
     
    
        7.箒さん…好き!!!
        
            7話目は飛行術の回です。
先生
スリザリンの監督生(トム以前が調べても出なかった)
この二人の名前はイギリスのよくある名前で調べてつけています。
今後、この物語の中で聞きなれない名前があったら大体そうやってつけていると思って大丈夫です。
        
        
        「はあ…」
暖かい日差しについあくびが漏れた。
いけないいけない。寝たらせっかく早く来たのに授業に遅れてしまう。
今日僕は、飛行術の授業のために中庭に来ていた。授業のためと言っても、飛行術が始まるまで約30分以上時間があった。
しょうがないじゃん!楽しみにしてたんだから!
そう、僕はめちゃくちゃ飛行術を楽しみにしてる。いつも少し遅刻しがちな僕が30分も前に着いてるなんて普通ならあり得ない。それを箒の為ならやって見せるぐらいには。なんなら今日の昼は中庭で食べた。飛行術は午後一番だったからね!!
とりあえずごみは片付けてしまおう、そう思ってサンドイッチが入っていた紙をぐしゃぐしゃと丸めてバスケットの中にいれた。僕、こういうの畳まない派だ。片付けは一瞬で終わった。そりゃそうだ。今日の昼はサンドイッチとお茶しか口にしてない。運動するからと思って、お茶は水筒の中に多めに入れてきたからまだ残っている。もう少し少なくても良かったかも…。飲みきれるかな?まあ誰かに手伝ってもらえばいいや。
そんなことを考えていると余計に眠たくなってくる。
う~ん。まあ少しだけならね。
---
[トムside]
なにやってるんだ?こいつは。
僕が飛行術の授業を受けるために中庭に行くと、すやすや気持ち良さそうに寝るノアがいた。授業が始まる5分前だと言うのに。
僕はノアの鼻をキュッと軽くつまんだ。
「う~ん…、あと5分…。」
寝ぼけながら鼻声のノアが言った。
「始まるぞ。飛行術。」
トントンと肩を軽く叩くと、ノアがガバッと飛び起きた。
「飛行術は?!まだ終わってないよね?!」
「始まってすらいない。」
そっか~…と心底安心したという顔で息を吐いた。そんなに楽しみにしていたのか。
僕はノアがベンチで寝ていたせいで出来たシワを魔法でのばして、先生の到着を待った。
---
「私は飛行術担当のイヴリン・ブラウンです。飛行術は…」
先生の自己紹介と飛行術についての軽い説明を聞いている間、僕はずっとわくわくしていた。待ちに待った箒!!家では箒ずっとを乗り回していたから、ホグワーツに来て全然乗っていない僕はそろそろ禁断症状が出そうだった。やっぱり1日でも開けたらだめだな。早く乗りたい。
先生の話はそんなに長くなく、早速箒を呼ぶ呪文を唱えてみることになった。
「箒に向かって“上がれ!”と言うのです。」
…僕の箒は?!
「せんせ~…。ほうき無いです。」
おずおずと僕が言うとああ!と申し訳無さそうに眉を寄せた。
「Mr.フォークナー、申し訳ないわ…。今取ってきます!」
自分で取ります、どこにありますか?と聞くとあの倉庫だと指差した。
「分かりました。…箒!!こっち来て!!」
僕が大声で倉庫に向かって言うと皆ギョッとした目でこっちを見た。トムを除いて。大きな声出してごめんね。家での癖で…。
2分ほど待って、箒は無事僕の元にやって来た。
よろしくね、箒くん。リボンがついてるし箒ちゃんかも。
結論。この箒、生きがいい。
早速とんでみよう!先生が言った瞬間箒がゆらゆら横に揺れた。リズムでもとってるの?取り敢えず飛びたい。僕がまたがり上がった瞬間、箒はおもむろにわくわくしていた。おもしれー箒っ。
僕は箒に、似た匂いを感じ取った。もー我慢できん!
「先生、ちょっと行ってくる!!」
「ちょっと!Mr.フォークナー、待ちなさい!」
僕はぐんぐん高度を上げた。久し振りの箒!!
それから僕は、地面すれすれに走ったり今できる一番早い速度で飛び回ったり、
とにかく自分の欲望を満たすため遊び回った。箒はめちゃめちゃ楽しんでいた。サイコー!!
他の人たちは、始めのうちはハラハラドキドキしていたものの、途中から慣れて自分の箒に集中した。先生も諦めたようだ。
「そろそろ終わりですよー!」
いつの間にか時間が来ていた。僕は今更気付いた。これ、スリザリンが減点されてしまうかも知れない。ヤバい!どうしよう…。
僕は恐る恐る地面に降りた。
「Mr.フォークナー。」
「はいっ!」
ほんとにまずいかも。何か策は…!
僕が悶々と考えているとブラウン先生は口を開いた。
「“行ってくる!”と元気よく言うので何かと思ったら…。スリザリンは10点減点とします。」
終わった。ごめんなさい。全力の土下座をかまそうとした瞬間、先生が再び口を開いた。
「…と言いたいところですが、あなたの箒捌きは実に見事でした。スリザリンは10点加点!」
なんか、点貰った。
---
びっくりして放心状態の僕に、エイブリーがおもいっきりぶつかって来た。
「ノア、お前マジサイコー!!」
エイブリーが拳を前に突きだしていた。そこでようやく情報を整理仕切った。
僕は力の限りグータッチをしてエイブリーと肩を組んだ。
「エイブリー、お前なら分かってくれると思ってた!」
僕が大笑いしたところで授業が終わる。は~疲れた。風呂入りたい!僕は杖を自分に向けてスコージファイと唱える。汗と土汚れ、服の汚れもついでに落とした。
「あ!ずりぃ!俺にもやってくれよ~。」
エイブリーがぐりぐりと頭を首に埋めてくる。
「しょうがないな~。スコージファイ。」
あとで監督生の大浴場を借りることを約束して、次の授業に向かった。
---
「おなかいっぱいだな。」
「わかるー。」
僕らは夕食を食べてすっかりまったり気分だった。…風呂!
そう思い出してエイブリーに耳打ちする。
『エイブリー、監督生に風呂頼も。』
エイブリーぐっと親指を立てる。監督生は今一人。今しかない!
「ウィルソンせんぱい。ちょっと良いですか?」
スリザリンの監督生、ジャスパー・ウィルソン先輩。ちょっと話したけど優しい人だった。この人なら行けそうだと思う。
「どうしたんだい。Mr.フォークナーにMr.エイブリー。」
穏やかな笑顔で僕らの方を向いた。
「ウィルソンせんぱい、監督生のお風呂貸してくれませんか。」
「ほう…それはどうして?」
「僕らとても疲れてて、久し振りに大きなお風呂にはいりたくなっちゃって…。」
えへへと笑う。お願い。合言葉を教えて。
「そうだなあ…。」
少し考えているようだった。心臓がドクドクと音をならした。
「ウィルソン先輩!このとーり!」
エイブリーも手を前で組んで祈るようにしている。
「しょうがないなあ。いいよ。」
「「やった!」」
僕らの声が重なった。ウィルソン先輩は小さく手招きした。耳を近付けろと言うことらしい。
『合言葉は…』
教えて貰ったものを頭に焼き付けて、ありがとう!と手を振ってその場を去った。
---
「すげー!部屋のとは大違いだ!」
「そうだね!」
僕らは体を洗ってざぶんとお湯に浸かった。
「あ"~」
10歳の少年が出す声じゃねえとエイブリーに笑われた。
確かに。
「それにしてもつっかれた~。」
「それな。箒楽しいんだけどね。」
「それにしてもお前さ、すげーのな。箒。」
「まあ、家で乗りまくってたからね。1日降りない日もあったし。」
「よく体力持つな。」
「確かにキツいけど…慣れかな。箒にのるの、筋トレみたいなもんだし。」
「確かにお前、ムキムキ!どんだけ着痩せしてんの!」
「勝手につくんだよ~。」
---
風呂からあがってほかほかの僕らは折角だから、と寮の空いてる部屋でお泊まり会をすることにした。でも、勝手に違う部屋で眠ると心配されてしまう。
「メモをドアの下から入れておけばいいだろ。」
そうだね、と相槌を打ってメモを書き始めた。
〔今日はエイブリーとノア、二人でお泊まり会をすることにしました。寮の中にはいます。明日の朝食のときには戻ります。〕
全く同じものを2つ書いて、1つはエイブリー達の部屋、もう一つは僕とトムの部屋に置いて、既に目をつけていた僕の部屋の隣の隣の部屋の扉を開けた。
        
    
     
    
        8.僕、トマトは生以外食べれない。
        
            8話目です。
10歳の頃って、食べれないもの多かったな…。
        
        
        扉を開けると、昨日一日過ごした部屋と全く同じ造りの部屋がそこにあった。
ベッドとサイドテーブルは4つずつ、壁沿いに本棚があって入口から離れたところに広いシャワールーム。鏡にうつしたみたいにまるで一緒。
「ベッド決めよーぜ。」
と部屋に入ってきたエイブリーが4つのベッドを見て言った。
「適当でいいんじゃない?どうせ隣同士で寝るでしょ。」
確かに、とエイブリーが頷く。
僕がベッドにボフンと座ると、エイブリーもその隣のベッドにひょいっと飛び乗った。
「なあ、今日のお前の箒凄かったな。ビューンって通りすぎたりいきなり降りてきたり。目で追うのでも大変だったぜ!」
「そりゃどうも。箒は大得意だったからね。」
そのあとは箒から話が広がってクィディッチや他の授業、先生の話になる。
僕らは久し振りの二人だけの時間を目一杯楽しんだ。
結局寝たのは2時頃だった。
そろそろヤバイかなと二人とも感じ始めたところで、おやすみと布団を被って目を閉じた。
---
「起きろ~。そろそろ時間だぞ。」
「やだ~…。もうちょい寝る。」
「俺腹減った。朝飯行こう。」
エイブリーに体を揺さぶられて起きた。ぽやぽやする。寝ぼけ頭でシャツのボタンをとめ、ズボンを履き替える。ローブは…いいか。ネクタイも結べないからとりあえず首にかけた。
「お前、ネクタイどうしたんだよ。ローブも着てねえし。」
「ネクタイは結べない。ローブは重いし暑いから…。そんなことより大広間行こ。」
そうだなとエイブリーが扉の方へ足を進めたので僕もついて行った。
「おはよ~」
眠い目を擦りながらスリザリンのテーブルへ向かうと、既に朝食を食べ始めているアブくんとトムが居た。
ちょうどいいところに!
「アブくん、ネクタイ。」
人差し指でトントンと自分の胸元を叩いた。しょうがないな…という顔をしてアブくんがそこに座れと言った。スルスルとネクタイが抜かれきれいに締められていく。さすが!慣れてる。
「ありがとう。」
「どういたしまして。」
さて、朝ごはんでも食べようかな。どれにしよう…と悩んでいると、この間もご飯を取り分けてくれた先輩達がまたひょいひょいとプレートに盛り付けてくれた。彩りもいい、見た目も崩れてなくて綺麗。これは素敵!ただ、感嘆の声をもらした僕の目にひとつ、赤色が飛び込んできた。それは、トマトの入ったキッシュだった。しかも皮入りの。まずい。どうしよう。
僕は、加熱されているトマトが苦手だ。皮が残っているものはもっと苦手だ。ケチャップは食べれる。スープも、トマトソースも食べれる。でも、形が残っているものはどうもいただけない。あのぐじゅぐじゅとした舌触りに時折ある皮が気持ち悪い。どう切り抜けよう。このピンチを。
-そうだ。
僕は隣に座っている奴…トムを見た。こいつがいる!トムにお願いすれば…!
だが、トムはキッシュの乗ったプレートと僕を見て、ニヤリと笑った。終わった。そういえば僕は昨日部屋に帰っていない。そんな僕にこいつが何かしてくれる訳がない。
トム…ヘルプ!必死に目で訴えるが、トムは容赦なく口を開く。
「こいつ、これ大好きなんです。よかったな。ノア。」
トムはキッシュを指差して先輩に言った。こうなったら腹をくくるしかない。男見せろ!僕!
震える手でフォークを持ち、恐る恐る口に入れる。こうなれば一思いに…!
…おいしい!
驚きが混じった笑顔を浮かべた僕に先輩は
「そんなに好きだったのか…。」
と溢していた。
そんなことより、なんだこれ。皮を全然感じない。うまい!うまい!
結局僕はもう一つ取ってしまった。
チラッとトムを見ると、いかにも面白くないという顔で自分の皿へ顔を向けた。勝ったぞ!トムに!