初めて書く学園ファンタジー×恋愛・日常系作品です。
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目次
《第一話》『入学式での出会い』
「……ここか、色彩学園。」
俺はそう呟くと、学園の校門の前で立ち止まる。
目の前に立っていたのは、聳え立つように大きな、そして豪華に、カラフルに彩られた『色彩学園』の校舎だった。
「へー、すごいねぇ、カラフルだぁ。」
オーラが背後で黄色のウサギの人形を両腕で抱えながら、一足先に校門をくぐり、好奇心に目を輝かせながら、学園内をキョロキョロと見渡して呑気にそう言った。
「ほんと…綺麗ね、」
マゼンタも続いて校門をくぐりながら、感心したように、頰に片手を当てて微笑む。
「ほら、早くいくぞ。」
俺はその二人の様子を見ながらも、このままここでじっとしている訳にも行かない為、二人の背中を軽くポンと叩いて急かすと、俺たちと同じような新入生が集まる、講堂があるはずの方角へと歩き出す。
やがて1分と経たぬうちに、講堂の扉の前へと辿り着く。
「やぁ!君達が新入生かい?」
扉の前には、道化師のような服装を身に纏った一人の男性が笑みを浮かべて顔を覗き込んでくる。
「はい、そうです。」
そのあまりの距離の近さに少し眉を顰め、心の底で困惑しながら何とか冷静さを保とうと、真っ直ぐにその道化師の男の目を見つめて返事を返す。
「そうかいそうかい!いいねぇ、じゃ入って!」
男は返事を聞いて嬉しそうに、満足そうに笑って扉を押し開ける。
視界に入ってきたのは、天井に吊るされた眩しいほどに光り輝くシャンデリアの光、そして、『色彩学園』という名前の通りにカラフルに装飾された堂内だった。
「……すげぇ…。」
俺は思わず声を漏らす。今までこんなに豪華で、カラフルに彩られた学園は見たことがなかった。
そう感激している一方で、遠くから何やら喧嘩のようんな、言い争っている声が聞こえてきた。
「お前がぶつかってきたんだろ!」
「はぁ!?なんでよ、アンタでしょ先にぶつかってきたのは!」
言い争っているのは二人だった。子供みたいな言い争いに俺は額に片手を当て、呆れてため息をつく。まだ子供っぽい奴もいるのだなと思いながら、あまり面倒事に巻き込まれたくないため、なるべく避けようと移動する。
「はいはい、喧嘩はダメですよ。」
藍色の髪を揺らす背の高い影が横を通ったかと思えば、先ほど喧嘩していた生徒二人の間には割って入るようにして仲裁する。
「っ、先生、こいつが…!」
二人のうち男子生徒が、その"先生"を見上げて何か言いかけたが、何をみたのか言葉を途切れさせ、唇を噛み締めて俯いた。
「全く、くだらない。入学式当日だと言うのに、何をしているんです。」
先生は困った様に眉を下げ、腰に片手を当ててやれやれ、とでも言う様に呆れた。ふと此方の存在に気づいたのか、此方に視線を向けてフッと柔らかく微笑む。
「すみません、迷惑をかけましたね。」
確かに巻き込まれたくなかったとはいえ、そこまで迷惑はかけられていなかった。何故この人が代わりに謝っているんだろうと不思議に、疑問に思いながら、戸惑ったまま「は、はい…。」と返した。
「あぁ、申し遅れました。1年1組の担任を担当する、マジェスティ・クロフォードと言います。貴方は…シアンさんですね?」
マジェスティ先生は丁寧にお辞儀して自己紹介をした。1年1組といえば、俺達が入るはずのクラスだ。先程言い争っていた生徒を沈黙させた常識人としての一面をみれば、不思議と安心感が湧き出てくる。
「ほら、同じクラスなんですから、貴方達も自己紹介しましょう?」
マジェスティ先生はくるりと振り返り、言い争いが終わった後、気まずそうにその場に佇んでいる二人の生徒に声をかけた。
「…ッ、…バイオレットよ。」
声をかけられたことに驚き、小さくビクッと肩を揺らし、そっぽを向いてバイオレットが小さく呟く。心なしか、その頬は少し赤く染まっているように見えた。
「俺は、タンジェリンだ…。」
バイオレットより少し離れた場所に立ち、腕を組んで足元を見つめて俯いたまま、眉間に皺を寄せ、無愛想に名乗る。一度は収まったものの、まだバイオレットのことが気に食わないのか、不機嫌なようだった。
「はぁ…まぁ、よろしくお願いしますね。」
「大変ですね、先生。」
入学式当日だと言うのに、バイオレットやタンジェリンの様な問題児に振り回されているマジェスティ先生が気の毒の様に思えてきた。
「…行きましょう?先生。」
後ろで見ていたマゼンタが、少し心配そうにしながら、他の生徒や先生がいる方を指さしてそう促す。
「あ、あぁ、はい、行きましょうか。」
ハッとしてマジェスティ先生は顔をあげ、少し情けないところを見せてしまったと思ったのか、軽くネクタイを整えて誤魔化す。勿論、誤魔化せてなどいないが。
「今日は大変な1日になりそうだな…。」
皆んなの後ろをついていきながら、これからどんなことが起きるのか、そして、また新たな騒動に巻き込まれそうだと予想し、遠くを見つめた。
─《登場人物》─
『シアン・レイシア』
『マゼンタ・フール』
『オーラ・ウェイン』
『マジェスティ・クロフォード』
『バイオレット・エーガン』
『タンジェリン・カミュス』
─《次回予告》─
第二話『新たな出会いと謎の道化師』
《序章》『入学式に向けて』
─春の暖かく心地よい光が、薄暗い部屋の窓から差し込み、部屋を明るく照らす。
少し空いた窓の隙間からは風が入り込み、カーテンを揺らし、頬を優しく撫でては通り過ぎていく。
「ん……。」
ピクリと片眉を動かし、重い瞼を持ち上げる。朝の光に目が慣れず、目がチカチカして痛い。
ぼやけた視界のまま上体を起こし、ベッドの横にあるサイドテーブルの上に置かれたメガネを手に取り、スチャリと装着する。
「ふわぁ……顔洗わないとな。」
腕を伸ばし、欠伸を一つ溢すと、ベッドから降りて自室のドアノブを掴み、押すようにドアを開けて部屋を出る。
「シアン、今日入学式ね。準備はできた?」
一階に降りて廊下を歩く途中、キッチンからひょっこりと顔を出し、そう温かく微笑みながら問いかけてくるのは俺の母だ。少し心配性な部分もあるが、とても優しく、いざという時には頼りになる。
「うん、もう準備できてる。楽しみだな。」
俺がそう笑って返すと、母も「そう」と満足そうに、安心したように笑って朝食の準備をする。
洗面台の鏡の前に立つと、メガネを外し、蛇口を捻り、出た水を両手で掬い、顔にかける。寝ぼけていた頭の中がスッキリと水で洗い流され、ふわふわのタオルで顔を拭く。
「はぁ…よし。」
タオルを置いて再びメガネをかけると、自室へと戻り学校指定の制服へと着替える。そして部屋を出てリビングへと降りると、既に朝食が並べられたテーブルの椅子に腰掛ける。
やがて食べ終わると、ピーンポーンと玄関チャイムの音が聞こえる。
「あら、お友達が来たのかしら。じゃあ、お母さん行ってくるね。」
母がいつの間にか仕事着に着替え終わり、バッグを肩に掛けて玄関へと向かっていく。
「行ってらっしゃい。」
俺はそう言って手を振ると、母も嬉しそうに手を振りかえし、家を出ると同時に入れ替わりに二人の人影が見えた。
「おはよう、今日、入学式だね。」
優しく笑顔で微笑みながら喋りかけてくるのは、俺の幼馴染でもあり親友である「マゼンタ」だ。明るく鮮やかな赤紫色のウェーブがかかった髪を揺らし、リビングに顔を出す。
「ねー、早く行こうよ〜。」
続いてマゼンタの後ろからひょこりと顔を出したのは、黄色いウサギのぬいぐるみを両手に抱えた、何処か子供っぽい一面を持つ「オーラ」。名前が女の子っぽいが、見た目は完全に男である。
「はいはい、分かったよ。」
ため息をつきながら、椅子から立ち上がり、食器を皿洗場へと置いてカバンを手に取って二人の方へと向かう。俺の緑みを帯びた明るい鮮やかな青色の髪が風によって揺れる。
玄関のドアを閉め、鍵をかけ、先で待っている二人の後ろ姿を追いかける。
これから俺たちが向かう『色彩学園』には、どんな出会いが待っているだろうか─。
──《登場人物》──
『シアン・レイシア』
『マゼンタ・フール』
『オーラ・ウェイン』
──《次回予告》──
第一話『入学式での出会い』
《第二話》『新たな出会いと謎の道化師』
「お、マジェスティ〜!お前また喧嘩止めてたのか?w」
遠くからマジェスティ先生と同じく教師らしき人物が、片手をひらひらと左右に振りながら歩み寄ってくる。マジェスティ先生を呼び捨てにしている辺り、それなりに仲は深く、交流があるのだろう。
「はぁ…揶揄わないでください、バーミリオン先生。」
マジェスティ先生は眉間に皺を寄せ、こめかみを片手で押さえ、少し掠れた声でそう呟く。酷く疲れている様子で腕を組み、俯いた。
「いや〜、お前が周りに振り回されているのが愉快だよw」
バーミリオン先生は意地の悪い笑みを浮かべ、腰に手を当てて心底愉快そうに笑った。マジェスティ先生は同僚にも揶揄われて苦労しているのだな…と俺は心の中で静かに思う。
「もうすぐ入学式ですね、さ、席についてください」
マジェスティ先生はふと思い出したように人差し指を立てると、俺の背中をポンと叩いて促した。俺もそれを聞いて自分の椅子の方へと歩き、腰を下ろした。
数十分後─
「はぁ〜、やっと終わったわ!30分くらいあのままなんて酷すぎない!?いくらなんでも長いわよ!」
保護者や先生がゾロゾロと解散していく中、バイオレットは腕を伸ばして文句を垂れる。確かに、普通は10分か15分くらいなような気がするが、こんなに長いのは初めてだった。流石に30分間ほとんど椅子から動かなかった影響で、足腰が少し痛んだ。
「シアン、大丈夫…?」
マゼンタが俺が少し痛がっていることに気づいたのか(片手で抑えているからだろうが)、心配そうに眉を下げて声をかけてきた。
「大丈夫〜?保健室行く〜?」
オーラもぬいぐるみを抱えたまま、ニコニコとしてそう提案した。ずっと笑顔なのが少し気味が悪いが、誰かが怪我した時や落ち込んでいる時はちゃんと心配してくれ、励ましたりしてくれる優しいやつだ。
「あぁ、大丈夫…少しすれば治るよ。」
指先でメガネのブリッジを押し上げ、頷いてそう言った。裾やネクタイを軽く整えていると、ふと視界に人影が入り込む。
「やぁやぁ!!終わったようだね!どうだい?この学園は!」
先ほど、講堂の扉のドアで待ち構えるかのように立っていた、あの道化師だ。
「…この人、さっきもいたよな、入学式中はいなかったように思えるが…。」
タンジェリンが腕を組んだまま、眉間に皺を寄せ、疑問に思ったのか後ろで呟く。
「あぁ、この人はアンバーさんです。見た目通り道化師をやっていらっしゃって、こう見えて教育がとても上手な方なので、時々こうして来てもらっているんですよ。」
マジェスティ先生がアンバーさんの横に立ち、微笑んで俺たちに代わりに紹介してくれた。
「そう!俺もこの学園の卒業生だからね!よろしく!」
マジェスティ先生の自分の紹介を聞いて、ふふんと自慢するかのように琥珀色の目を輝かせて胸元に手を当ててそう言った。
「はぁ…てことは、大先輩ということですね。よろしくお願いします。」
「よろしくお願いしますわ、アンバーさん。」
二人揃って、ペコリと頭を下げ、アンバーさんの目を真っ直ぐ見つめた。
「い、いや〜、それにしても実に美しいね!」
急に真っ直ぐ見つめられたことに少し戸惑ったのか、視線を逸らしながら、アンバーさんはなんとか冷静を保とうとする。全く保ててなどおらず、動揺しているのが丸分かりだが。
「さて、私たちも教室に移動しましょうか。」
マジェスティ先生はアンバーさんの様子を見て小さくふふッと笑いを溢すと、一歩踏み出し、教室へと向かっていく。
「よし、俺らも行こうか!」
バーミリオン先生が他のクラスの生徒、恐らくバーミリオン先生の担任のクラスだろう。腕を上げ、満面の笑みで他の生徒を促し、先導していった。
「‥行こう。」
俺はマゼンタの手を繋ぎ、促して前を向くと、マジェスティ先生の後を追いかけるように走り出す。
「…!?え、ええ、!」
マゼンタは急に顔を赤らめて動揺しながら、俺に引っ張られるがまま走り出した。後ろでは、相変わらずバイオレットとタンジェリンが何やら小声で言い合いしているような声が聞こえたが、気にせずそのまま走り続ける。
「ねー、待ってよ〜。」
パタパタと靴音を鳴らし、ぬいぐるみを両手で抱えながら、オーラが必死についてこようと後ろから走ってくる。
「はいはい、わかったよ」
ため息をついて仕方なく止まり、マゼンタと繋いでいた手を解くと、此方へと向かって走ってくるオーラの方へと視線を向けた。
「置いていくなんてひどいよ〜。」
言葉ではそう言いながら、笑顔なことから全く気にしていない様子でオーラが歩み寄り、疲れたように額の汗を拭った。
「早く行くぞ、他の人も待ってるんだから。」
俺はそう言って再び前を向いて歩き出し、教室がある筈の2階へと続く階段を登っていった。これからどんな出会いがあるだろうかと、期待と高揚感に、密かに胸を弾ませた。
─《登場人物》─
『シアン・レイシア』
『マゼンタ・フール』
『オーラ・ウェイン』
『バイオレット・エーガン』
『マジェスティ・クロフォード』
『バーミリオン・ファーム』
『アンバー・ギンデット』
─《次回予告》─
第三話『賑やかなクラス、そして…?』