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目次
クラスメイト。
目が覚めた。かちかちと短針の進む音が鳴り、針の示す時間は7時を指していた。
窓から光が差し、顔に当たった。
そして、カーテンを閉めその光を遮った。寝落ちしてしまったみたい、椅子を立ち上がってコップ一杯の水を口に含み飲み込んだ。そして、風呂場へと向かった。
[中央寄せ]*[/中央寄せ]
風呂上がり、髪の毛を拭く。
そして制服を着て、そのワイシャツの上から黒色のジップパーカーを羽織る。バックを背負い、靴を履いて家を後にする。朝日が私を包んだ。そして、学校へ、ゆっくりと歩いて行った。
[中央寄せ]*[/中央寄せ]
神山高校の門を通り、教室へと向かっていく。風紀委員が門で風紀調査をする声が聞こえる。その人混みの中を通り抜けて、教室へと向かった。
[中央寄せ]*[/中央寄せ]
1-Cのクラスの中では様々な声が音に留まる。堂々とした大声の話し声、ボソボソとした話し声、紙に鉛筆で何かが書かれる音、そして私を嗤う声。いじめ、というやつかはわからない。
ただ、複数人でクスクスと嗤う声が私の耳に留まっていた。
「おい」
低い怒鳴り声が私の耳に響いた。
その声の方向を見ると、東雲彰人という人物がさっきの複数人の女子に対して怒鳴り声をあげているよう。しかし、その声を聞いた途端、彼女達は怯えて逃げていった。しかし、その目は私を刺すように睨んでいた。
「……大丈夫か?」
「………………別に」
東雲彰人。目上の人に猫をかぶってる同級生、そしてクラスメイト。
彼はその返事を聞いて、私から離れて行った。そして、授業の開始を知らせるチャイムが校内全体に鳴った。
わたし。
私の醜い声がこの狭い空間に響き渡った。
短針がかつかつと音を刻み、時は進んでいく。それ以外に音が鳴らぬこの部屋が、その音を引き立たせた。
その狭い空間を後にして、作業机に体を向けて座私の醜い声がこの狭い空間に響き渡った。
短針がかつかつと音を刻み、時は進んでいく。その音以外音は聞こえない部屋が、その音を引き立たせていた。
その空間で、私はただ、言葉を並べて歌うだけだった。
私は、その狭い空間を後にして、作業机に体を向けて座った。
『確認』
先程、録音した歌とメールを送る。
そして、ナイトコードを開いたまま後にした。そして、やることもなく退屈していた頃、ナイトコードから通知が来ていた。
『アンタねぇ、、メールが淡白過ぎるでしょ』
『ニーゴの皆でも、それ以外でも、何伝えたいか分かんないわよ!』
えななんからのメール、どうやら私に対して怒ってるみたい。よく分からないけれど。でも、反応する気にはならなく、机に伏せた。長い髪が絡まり、顔にかかり邪魔だった。
しかし、また通知音が私の耳に留まった。嫌々、頭を上げてメールを確認した。
『ちょっと!返信してよね』
まるで私の考えを見抜いたかのような返信をえななんが送ってくる。
『そう』
パソコンの電源を落とした。そして、また机に伏せる。
___そして、意識が遠退いて行くのを感じながら、目を閉じた。
友人。
放課後。
暁色の空、太陽から|溢《こぼ》れた光が窓から|溢《あふ》れた。
机や椅子などはその太陽の色に照らされた。
授業は全て終わり、部活のない生徒が皆が帰りだす頃。しかし、殆どの人が教室内に残る中、私は一人、席を立ち上がり教室を後にした。
--- * ---
「………起きられる?」
「蝶野 様」と表示している病室に足を踏み入れた。
病室の中、アルコールの匂いが漂った。パーテーションで仕切られた空間、私は彼女にそう話した。
ただし、彼女はどこかを見ていて返事はなかった。
「………」
隣に置かれた物置きに花瓶を置き、買ってきた花をそっも入れた。アルコールの匂いにかき消されて、まるで花の匂いは私にも逢永の鼻にも届かなかった。
亡くなっているわけではない。
去年、植物状態になってしまった。
私の目の前で車に轢かれた、その日から今日まで、意識は戻ることがなかった。
名前は|蝶野 逢永《ちょうの あいな》。
たった一人の大切な友達。
4歳ぐらいの頃から中学校まで、ずっと一緒に居た。ただ、神様はそれを許してはくれなかったらしい。
医者によると寿命はもう長くない、らしい。
「………起きてよ…」
ふと、彼女の明るく無邪気な笑顔を思い出す。
少しの涙が頬を伝った。
しかし、その目が覚めることはなかった。
どんなに泣き縋ろうが、彼女起きることがなかった。ただ、布団が濡れるだけ。
そして、茶色の短かったけれど時間が経って長くなった髪が煌めいて見えるだけ。
涙を手で拭ってバッグを持って、「蝶野 様」と表示されている病室を後にした。
すごく、久しぶり。