私のオリキャラの過去編。
納得がいかなくて消したり、書き直す可能性大。
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目次
私の大嫌いな思い出。
※残虐的な描写多数あり。
※そういうのが嫌な人は無理して見ないでね。
〚一応設定(現在)〛
[Name]エフェル・メランコリー
[種族]悪魔(負の感情の悪魔)
[性別]女 [年齢]506歳 [誕生日]4月4日
[能力]
・全能…あらゆることが出来る。
・不老不死…体の成長が止まる。何をしても絶対に死なない。体質的なもの。
『』→エフェル
『()』→エフェルの心の声
|舞台《世界》の名前:Crazy world
---
■■■■/04/04
『(`痛い`)』
それが、最初に浮かんだ言葉だった。
『(`苦しい`)』
次に浮かんだ言葉。
心臓?があるところに、ナイフが深々と刺さってる。
いや、深々ってもんじゃない。肉を抉るようにしたのか、捩じれて刺さっている。
ちょっとでも動けばさらに痛みが増す。
ナイフが刺されているところから、黒い液体が流れ出てる。血だ。
『(`私は死ぬのか?`)』
…意識が、だんだん遠退いていく。
誰かが、私を冷たい目で見つめてる。
…もう一体、私を見つめている者が居る。
木の影からこっそり、少し面白そうに。
『(誰だろう…)』
どんどん視界もぼやけ、血が脈打ちながら流れていく感覚をぼんやりと感じ取る。
『(…嗚呼、とても短い生涯だったな…)』
そんなことを考えてるうちに、私は`気を失った`。
---
…|生きている《`死に損なった`》。
何故?
確実に、急所を刺されていた。血も酷かった。
『(…嗚呼…またあの苦しい、生き地獄を味わうのか。)』
生きていることの喜びなど、一瞬も感じなかった。
先日の状況を考えると、きっと此処には苦痛しかない。
ただ、先日より前のことは何も記憶がない。
ナイフは刺さったままだ。自分に刺されたナイフを抜いた。
ナイフで刺された傷が塞がり、すっかり傷は消えた。
???「なんだ、お前まだ生きてたのか。さっさと死ねばいいのに。」
とっさに振り向くと、そこには1体、女のエルフが私を冷たい目で見下ろしてた。
…私にナイフを刺した、張本人だ。何故だろう、直感でそう分かった。
《テリブル・メランコリー/女/エルフ/能力:毒、薬、不老長寿》
何かが見える…その文字は、はっきりと読めるが、見えるのとは少し違う。
『(…メランコリー…?何か…知ってる…)』
私が色々考えてる隙に、テリブルは何かが入った注射器を取り出した。
そして、テリブルは私に注射器を刺した。
『…っ゛!?!?』
注射器の中に入った液体は、毒だ。しかも、かなり強い。
『(`苦しい`)』
『ガハッ…ゴホッ…』
毒のせいで、吐血した。苦しくて苦しくて、首に手を当てるが、意味がない。
呼吸ができない。少しずつ、呼吸が浅くなる。どさっと、地面に倒れる。
死ぬ
…いや、やっと死ねる。
私は何処か安心したように、目を閉じた。
生き地獄に居るよりも、死んで地獄へ行った方がマシな気がしたから。
その様子を見届けることすらせず、テリブルは早々に何処かへ歩いて行った。
私の意識は途切れた。何も見えない、聞こえない、感じない。
きっともう、私の体は呼吸をしていない。
『(`嗚呼…やっと…これでもう、大丈夫だ…`)』
---
???「駄目じゃないか、これじゃあ目が覚めるのは何時になることやら…」
テリブル「…は?ちょっと待てよ、私は此奴を殺す気で…」
グチャッという音が、テリブルの声を遮った。
ほんの一瞬の出来事だった。
テリブルの目の前に立っている男は、萎れた黒い薔薇を手に持っていた。
そして、その萎れた黒い薔薇を握りしめた途端。
薔薇の枝がテリブルの四肢や心臓を貫いていた。
???「最初に言ったはずだろう?可愛がってやれって。壊せとは言ってない。」
テリブル「っ…ごめんなさっ…」
この世界ではこんな残虐的なことは当たり前なのだろうか。
テリブルが痛覚で顔を歪ませても、全く気にしていない。
それにしても、心臓も貫かれているのに喋れるのは、何故だろうか。
???「君の謝罪なんて、何の価値も無い。嗚呼…憂鬱だ…」
男はそう言いながら、先程まで手に持っていた萎れた黒い薔薇を投げ捨てた。
萎れた黒い薔薇は風化したように粉々になり、消えた。
男は、倒れている少女に近付いた。
???「そういえば、君の名前は?…へぇ、エフェルか。」
倒れている少女は呼吸をしていないが、まるで普通に会話するような素振りだ。
???「私はヘイト・メランコリー。君の父親であり、憂鬱の悪魔だ。よろしくね。」
ヘイトはそう言うと、そっとエフェルに黒い薔薇を添えて何処かへ消えた。
テリブル「…此奴の所為で…」
テリブルはそう小声で呟くと、エフェルに近づいた。
そして、エフェルの頭にある猫のような耳を片方、ちぎり取った。
黒い血が流れ、テリブルの手に付く。
手に付いた黒い血を少し見つめた後、テリブルは何処かへ歩いて行った。
---
『……?』
目が覚めた。数ヶ月間ずっと眠っていたような感覚だ。
上を見上げてみると、暗い空が広がっていた。
しかし、驚いたことに、私が気を失ってから一日しか経っていなかった。
やけに頭が痛い。ふと下に視線を向けると、黒い薔薇が置いてある。
『これは…薔薇…?何でこんなものが…』
黒い薔薇を手に取ると、手に棘が刺さった。黒い血が流れたが、すぐに再生した。
黒い薔薇は、不気味な程に黒く、美しかった。
見ていくうちに、少しずつ黒い薔薇から嫌な気配を感じ、投げ捨ててしまった。
???「…薔薇はお気に召さなかったかい?特に綺麗なものを選んだのだが…」
私が咄嗟に振り返ると、そこには昨日の男が立っていた。
《ヘイト・メランコリー/男/憂鬱の悪魔/能力:全能、不老不死、感情操作》
『…メランコリー…?私と…彼奴(テリブル)も確か…』
ヘイト「?嗚呼、エフェルは昨日、眠っていたね。自己紹介も聞こえなかったか。」
私はヘイトを疑問視した。エフェルは、私の名前のようだ。
ヘイト「私はヘイト・メランコリー。君の父親であり、憂鬱の悪魔だ。」
『…父親…?お前が?』
信じられない。いや、信じたくない。だが、事実にも思える。
ヘイト「そうだよ。テリブルのことは何とでも呼んでいいが、
私の事は「父上」か「お父様」とでも呼ぶんだよ。
君は不完全ながらも悪魔だからね。」
『…お前が私の父親という証拠は?』
私は、警戒しながら訊ねた。疑う理由はないが、疑念で頭がいっぱいだった。
ヘイト「証拠…大きくなればきっと分かるけど、今確かめるなら血が必要かな。」
『…意味が分からない…』
ヘイト「そうだなぁ…」
ヘイトは試験管のような瓶に入れられた何か黒い液体を取り出した。
私は思わず少し後ずさった。とても嫌な気配がする。
ヘイト「嗚呼、怖がらないで大丈夫だよ。すぐに分かるから…」
茨が私を拘束した。ヘイトは無理矢理、瓶に入れられた黒い液体を私に飲ませた。
『!?!?』
途端に、気持ち悪いという言葉では言い表せない程に、全身の血が滾る。
苦しい、怖い、痛い…どの言葉も当て嵌まらない。
段々と内側から侵食されているような気分だ。
体が蝕まれているか、心が蝕まれているか、或いは両方か。
『っ……?』
少し治まったかと思ったが、身体が慣れてしまっただけだった。
割れた鏡が落ちていたから見てみれば、信じられない状態だった。
髪も、目も、黒く染まっていた。羽が、大きくなっていた。
ヘイト「…想定外だ…ここまで力を開放できるとは…流石だね。」
ヘイトはそう言いながら私に触れようとした。
『!触るなっ!』
私は反射的に、ヘイトの手を退けたつもりだった。
しかし、ヘイトの手が無くなり、黒い血がポタポタと落ちていた。
ヘイト「…私に刃向かうとは…悪い子にはお仕置きをしようか?」
逃げたい、体が上手く動かせない。ヘイトから、異常な程の負の感情を感じる。
ヘイト「…残念だけど、暫く影の世界に行ってもらうよ。嗚呼、憂鬱だ…」
そういうなり、私は落とされるように影の世界に連れ込まれた。
---
『…ん…?』
私は、影の世界に連れ込まれてから数ヶ月以上意識を失っていたようだ。
右目がよく見えない。
姿は元通りに戻っていた。
さっきからずっと、何かが聞こえる。
誰かの会話
誰かの心
誰かの記憶
色んなものが見聞きできる。
そこで色んなことを知った。
|この世界《Crazy world》以外に世界があることも。
何となく分かってはいたが、常に私達は見られていることも。
一応、自分のことも調べた。
名前:エフェル・メランコリー/性別:女/種族:悪魔とエルフの混血/能力:不明/6~12歳
…年齢が何故か大雑把だ。正直、能力は知っておきたかったが不明じゃ分からない。
長い間、沢山の話や感情を見聞きする。理解出来ないものが殆どだったけれど…
---
■■■■/04/04
突然、影の世界に小さな光が入る。
私は光の方へ進んだ。
『…これは…罠か?…悪いものは感じない…』
光り輝いている扉を見つけた。
恐らく、この扉から影の世界を出ることが出来るだろう。
扉に手を伸ばした瞬間、光が一段と強くなった。
『!?……此処は…』
6年程経っているが、全く変わっていない「Crazy world」だった。
…ヘイトは6年もずっと、私を影の世界に入れていたということだ。
正気の沙汰ではないが、|此処《Crazy world》と比べて、悪いことは特になかった。
???「スゥ…スゥ…」
ふと、すぐ近くで誰かの安らかな寝息が聞こえる。
『…?』
木の影で、色白な少女が眠っていた。アルビノだ。
《アルビー・メランコリー/女/エルフと悪魔の混血/能力:なし》
『妹…?』
見えてる文字を暫く見て、能力なしじゃ、すぐに死ぬだろうと考える。
私はアルビーを見つめた。この世界に生まれてくるにしては、存在が清らかすぎる。
…今見れば、床は草の生えた地面、鉄格子。牢屋だろうか?何故?
アルビーを見つめながら、ふと嫌な気配を感じ取る。
エルフ1「あれぇ?死んだと思ったのに、生きてたの?なんか増えてるし(笑)」
エルフ2「ねぇ、今殺そうよ!」
よりによって、エルフ達だった。影の世界で見聞きした、残酷で哀れな、化物だ。
エルフ1「そうだね!」
やたらと甲高い耳障りな声で話していたエルフ達は、私にナイフを刺した。
『…』
この程度、全く痛くない。もう、慣れてしまったようだ。
エルフ1「ッチ、つまんない!じゃあそっちの…」
『あ゛?』
エルフがアルビーに手を出す前に、私は威嚇をしていた。
エルフ1「ひっ!?」
エルフ1がナイフを落とした。
私はナイフを拾い、エルフ1を滅多刺しにして殺した。
自分の右目の瞳が黒く染まっていく。案外躊躇いなく、殺せるものなんだな。
エルフ2「え、ちょ、は!?」
エルフ2は困惑しているが、お構いなしに、エルフ2もナイフで殺した。
---
……その後も毎日毎日、エルフは私達の所に来た。
色んな方法で痛めつけて、私を殺そうとした。
アルビーを守り続けながら、私は耐え続けた。
何日、何週間、何か月…
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🈩ⅤⅠ₈/04/04
アルビーの目の前に、エルフ達が立っていた。
エルフa「此奴、本当目障りだよね~」
エルフb「この白い子が死ねば、エフェルの絶望してる表情も見れて一石二鳥♪」
『!!やめろっ』
エルフaは私に毒のナイフを、エルフbはアルビーにナイフを振りかざした。
『やめっ…』
突然、自分の心の中がドロドロに崩れていくような感覚がした。
気付けば、エルフ達は跡形も無い肉片へと為り変わっていた。
アルビー「…何…してるの…?」
初めてアルビーの声を聞いた。酷く怯えている。
『…』
…前みたいにまた髪も、目も、黒く染まっていた。羽が、大きくなっていた。
何故だろう。心地良い?よく分からないが、静かに笑みを浮かべていた。
…私は、アルビーを暫く見つめた後、アルビーを殺した。
『`…嗚呼…憂鬱だなぁ…`』
`嗚呼、殺したい。殺したい。殺したい。助けて。殺したい。殺したい。殺したい。`
私は魔法でCrazy worldに居る者たちを次々と殺していった。
その中に勿論テリブルも居たが、喚いてて五月蠅かったことくらいしか覚えてない。
あぁ、うん。楽しい?いや、どうだろう。もう、何も分からない。
---
ヘイト「…何事だ?」
ヘイトが私の背後に立っている。
私は攻撃したが、ヘイトは攻撃を易々と躱し、私に銃を撃つような仕草をした。
『…?』
我に返った。周囲を見渡すと、辺りには肉片が転がっている。
髪や目の色は戻ったが、羽が戻らない。12歳くらいに成長したような姿だった。
『…私が…やったのか?』
アルビーだけは、首から上がないが、綺麗に死んでいる。何故か、涙が零れ落ちる。
ヘイトは私に近付くと、前に私に飲ませた謎の黒い液体が入った瓶を渡した。
ヘイト「…これは私の血だ。エフェルは私の血が殆どだから、効果も高いだろう。」
『効果…?』
ヘイト「負の感情を高める効果だ。制御が難しいが、途轍もなく強い力を出せる。」
ヘイト「…くれぐれも、他の誰かの手に渡らないように。」
『…どうして、止めなかったんだ…?』
止めれたはず。絶対に止めれるのに。
ヘイト「…これが運命だからだよ。嗚呼、憂鬱になる…」
「`運命`」その二文字に納得は出来ないが、一番しっくりとくる。
『…父上。私はこの狂った世界を壊す。文句があるなら殺す。』
もう二度と、こんなことが起きないように。
ヘイト「…同じ過ちを繰り返さないように。」
ヘイトはアルビーが着けていた、青いマフラーを渡してきた。
ヘイト「…それじゃ、行ってらっしゃい。」
ヘイトはどこか物悲しそうだったが、嬉しそうだった。
『…これも運命なのか…?』
そう呟きながら私はマフラーを着けて、「Crazy world」を壊した。
『嗚呼、憂鬱だ…』
---
その後は、色んな世界を見て回った。
トラウマなのか、二度と何かされないようエルフを殺しながら。
そうして、私は|この世界《オリなり》に辿り着いた。
私のオリキャラ、『エフェル・メランコリー』の過去編を読んでくださり、
有難う御座いました!中々文才が無い所為で、苦戦しました…( ̄▽ ̄;)
他にも私のオリキャラは何体か居るので、過去編書くの頑張ります٩( ᐛ )و
柿
これは、オリキャラの過去編です。
昔々…ではなく、つい最近の出来事。
自然豊かな森に囲まれた小さい村に住む、心優しき青年の生涯のお話。
自然豊かな森。
人が沢山いる街からは離れている。
森の中には、小さな村がある。
その村には、とても仲の良い姉弟が居た。
姉の名前は『ルルディ・カロスィナトス』
明るく、心優しい子だ。ルルディは自然が大好きで、自然もルルディが大好きだ。
弟の名前は『プシュケ・カロスィナトス』
大人しく、心優しい子だ。プシュケは自然が大好きで、自然もプシュケが大好きだ。
ルルディは16歳、プシュケは15歳。
2人は村で、共に助け合いながら幸せに過ごしていた。
小さな村は、とても平和だった。皆温厚で、争いごとも一度も起こったことがない。
ルルディは村に居る子供と一緒に遊んであげていた。
他にも、家事などを積極的に手伝った。
プシュケは畑仕事や植物の世話をした。
プシュケの育てる植物は成長が早く、とても美しく育った。
ルルディとプシュケは、花が大好きだった。
仕事が無い時は、決まって村の奥を進む辿り着く花畑に行った。
この花畑は色とりどりで、とても美しい。
花畑はプシュケが大事に育てていて、立派に育っている。
蝶が美しい花につられて集まってくる。
プシュケは、次第に蝶と心を通わせ、蝶の言葉が分かるようになった。
---
…自然と共存し、平和に過ごしていたある日のこと。
ルルディが奇病にかかってしまった。
身体中に花が咲く病。治す術は無い。花に養分を取られ、最終的に衰弱死する。
プシュケは悲しかった。逃れられない、大切な姉が死んでしまう運命に。
でも、ルルディはあまり悲しんでいなかった。
「死ぬのは怖いけど…何かの為なら…大好きな自然の役に立てるなら、幸せよ。」
儚い笑顔だった。花のように繊細で、今にも散ってしまいそうだった。
---
…プシュケは働きながら、沢山勉強した。寝る間も惜しんで、ずっと、ずっと。
どうにか治せないか、どうにか寿命を延ばせないかと…
でも、方法は見つからなかった。
---
ルルディが奇病になってしまって、数ヶ月の月日が経った。
ルルディは、いつの間にかプシュケがよく行く花畑で眠っていた。
身体の到る所に、白い花々が咲いている。
それをプシュケが知ったのは、ほんの数分後だった。
蝶が、プシュケにルルディのことを伝えたからだ。
プシュケが花畑に行くと、ルルディの身体は冷たくなっていた。
花に囲まれて眠っている様子は、とても美しかった。
プシュケは、ルルディの冷たい手を優しく握ると、涙を流した。
泣いているプシュケに、一匹の蝶が近づいてきた。
蝶は、ルルディに伝えられたことを話した。
「私の命はもうじき散る。私は、自然の中で眠りたい。」
「…私が死んだら、花畑の近くに埋めてほしい…」
…プシュケは、すぐに村の皆に知らせた。泣きながらも、丁寧に。
村の皆は、当然とても悲しんだ。
でも、まずはルルディの願いを聞き入れることが先だった。
花畑のすぐ隣に墓を建てた。何時でも自然を見れるように。
その後、ルルディの身体を、ガラスで出来た棺桶に入れて土の中へ埋めた。
ルルディがかかった奇病は、不思議なものだった。
身体の養分を取って育った植物は、死んでも尚、四季問わず咲き続けるらしい。
しかも、身体は腐敗もせず、ずっと、植物も、身体も、美しいまま。
ただ、眠っているように見えた。
雨が、しとしとと降ってきた。
プシュケは、静かに泣いていた。ずっと、ずっと、泣いていた。
雨は、皆の心を映すかのように、ザァザァと強くなっていった。
---
…ルルディが眠りについてから数年が経った。
プシュケは20歳になった。
ルルディが眠りについてから、プシュケは毎日花畑の所へ行くようになった。
ルルディが伝えたことを話した蝶は、ずっとプシュケに寄り添った。
プシュケは、これまで以上に手伝いや仕事を頑張った。
村の皆は心配し、ちゃんと休むように注意した。それでもプシュケは精一杯だった。
---
また数年経ち、プシュケが24歳になって数ヶ月。
…村で、火事が起きた。
あっという間に家が燃え盛る。
一番に気付いたプシュケは急いで村の皆を避難させ、消火に取り掛かった。
一生懸命避難等を取り掛かったおかげもあり、負傷者が一人も出なかった。
運よく火事もすぐに収まり、被害はとても少なかった。
---
火事が起こった後、片付けを行った。勿論プシュケは積極的に手伝った。
村のまだ小さい子が、うろついている。
(こんな所に居たら危ない)
そう思った束の間、燃えてしまった残骸は運悪く子供の上から落ちてきた。
(このままじゃ間に合わない…)
そう分かっていながらも、子供を助けようとプシュケは全力で走った。
すると、ふと自分の体が浮くような感覚になった。
気付くと、子供と自分の居た位置が入れ替わっている。
能力が発動した。〈対象の位置を入れ替える能力〉
(良かった…子供は助かった。)
プシュケは安心した。
でも…
プシュケは、子供の代わりに燃えてしまった残骸の下敷きになった。
そして、そのまま死んでしまった。
子供は大きな声で泣いていた。
正直、何が起こったのかこの時は分からなかった。
村の皆が、泣いている。
また、ルルディの時みたいに、雨がザァザァと降り始めていた。
---
プシュケの亡骸は、ルルディの隣に埋められた。
ルルディと同じように、ガラスで出来た棺桶の中で眠った状態で。
沢山、青色の蝶が集まっていた。死を悲しむようだった。
ルルディの棺桶の中から、植物の蔓が伸び、プシュケに絡みついた。
そして、ドクダミを中心に色んな白い花がプシュケから咲いた。
---
…確か意識が消えてから、数時間後だった。
目が覚めた。
…いや、俺は死んだのか…?
蝶が近寄ってきた。よく見た光景だ。
蝶にそっと触れた。いつものように。
…触れた途端は蝶は腐った後、粉々になった…
俺はパニックになった。怖かった。夢中で助けを求めるように走り、村に着いた。
俺が生まれ育った村。
…俺は村に入るのを躊躇った。
死んで迷惑をかけてしまっただろうし、きっと誰も俺は見えないだろうから。
すると、声をかけられた。
振り向くと、一匹の蝶が居た。ルルディ姉さんの伝言を話した蝶だ…
蝶がいつの間にか、妖精になって居た。蝶は、「ディア」という名前らしい。
ディアは、花畑の守護者で、ルルディ姉さんと俺の墓守をしていると話した。
ディアは、ルルディ姉さんの伝言を伝えに来たと言った。
「□□□□に、村に入るように言って。きっと大丈夫だから。」
それが、ルルディ姉さんの伝言だった。
でも、やっぱり怖い…不安でいっぱいだ…
誰かに背中を押された気がした。励ましを込めて。
村の子供が、俺に気付いて近づいてきた。
俺は、思わず目を見開いた。
…数時間後ではなく、数年も経っていたのか…
自分に近づいてきた子供は、あの日燃えてしまった残骸から救出された子だった。
名前は「アマ」。あの時はまだ2歳ほどだった。
しかし、すっかり成長して12歳くらいになっていた。
「あの……僕の所為で…死んじゃった…ごめんなさい…」
アマは、今にも泣きそうな表情だった。
『…俺は、お前が助かったならそれで良いんだ。』
そういいながら、アマの頭を優しく撫でた。
「ごめんなさいっ…ごめんなさいっ…」
アマは、泣き出してしまった。
『…おい、今はもう寝てる時間だろ?帰ってもう寝ろ。俺は大丈夫だから。』
そう言って、アマを抱っこした。
今はもう深夜0時。なぜ起きてるのか疑問でしかない。
アマは、すぐに抱っこされたまま眠ってしまった。
『…~♪』
小さな声で子守唄を歌いながら、アマの家まで行った。
「!?アマ…もしかして、プシュケに会いに行って…?」
アマのお母さんは、俺に代わってアマを抱っこした。
「…□□□□、ありがとう…あの時、アマを助けてくれて…」
アマのお母さんは、アマみたいに、今にも泣きそうな表情だった。
『俺は、そうしたかっただけなので…今日はもう遅いので、寝てください。』
そう言うなり、俺は速やかに村から離れた。
ふと気付けば、俺とルルディ姉さんの墓がある花畑に着いた。
『…今なら、助けられる…?』
ふと、そんな気がした。前とは違う能力を感じる。
俺は、ルルディ姉さんを棺桶から出した。
ルルディ姉さんの手を握り、目を閉じた。
何処か暖かい感覚がして、自分から何かが流れていった。
「…ぁ…あ゛?」
…蘇生出来たのかと思った。でも、目を開けると前のルルディ姉さんは居なかった。
r「…養分…¿」
変わり果てた姿。それに、俺を認識していない。
『…姉…さん…?』
困惑した。目の前に居るのは、一体誰だ?姉さんなのか?それとも…
「…魂を狩りなさい。」
何処からか、ルルディ姉さんの声が聞こえた。
俺は、混乱した。何かが手に当たった。
それは、死神が使う鎌だった。
『…ごめんなさい。』
そういいながら、変わり果てたモノに鎌を振った。
光り輝いている、魂が出て来た。
…俺の姿が変わっていく。
---
…俺はその日から、「影人(カゲビト)」になった。
恐らく、能力の使い方を誤った結果だろう。
俺以外、種族が「影人(カゲビト)」の者は居ないらしい。
「…□□□□、貴方は今日から死神の仕事をする。頑張ってね。」
また、何処からか、ルルディ姉さんの声が聞こえた。
『…□□□□?』
今更、違和感を覚えた。
俺の名前は「プシュケ・カロスィナトス」のはず。
でも、その名前は今は自分の名前ではない気がした。
『…俺の名前は…「ヴィラン・チェンジャー」だ…』
名前が、不思議と自分に馴染んでいく。
その様子を見ていたのは、ディアとルルディ姉さんだけだった。
柿…「自然美」「優しさ」「恩恵」「広大な自然の中で私を永遠に眠らせて」。
ドクダミ…「白い追憶」「野生」「自己犠牲」。
アマ…「あなたの親切に感謝します」「感謝」。