ヒロプラで書いてたやつをこっちに移します。
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目次
神様神社 1話
1話
私は|加藤《かとう》あかり。早速だがピンチに陥っている。
「道に迷ってしまった」
散歩の途中で道に迷ってしまったのだ。いつも通る道だから安心して歩き回っていたら・・・
「交番ないかな」確か交番があるはずだ。「ここだっけ」
私は狭い路地裏に入っていった。
「何ここ」路地を抜けた先にあったのは、神社だった。
見るからに放置されている神社。苔や木が生えまくっている。
「そこにいるのは誰?」
声が聞こえた。人の声だ。
「あなたは」「神様だよ」
・・・ふぇ?一種の中二病?「本当ですか」「疑ってるな」にや、と声の主――声質からして少女だろう――が言った。「じゃぁおいで」少女がくるり、と振り向く。
黒いインナーにジャンパー、ゆるいジーンズ。赤っぽい長い黒髪がさらり、となびいた。
「あの、名前は?」「ないよ」「え?」「神様だから、明確な名前がないんだよ。好きなように呼びなよ」・・・「じゃぁ、ただ神様とだけ」「それでいいと思う。下手な名前つけられるよかマシだし。あんたは?」「私は加藤あかりっていいます」「オッケー、じゃぁあかりね」
神様が奥の扉を開ける。きれいな和室が広がる。
「ゆっくりしていきなよ」
神様がパチン、と指を鳴らすと、机にお茶が出てきた。
神様は神様だって、確信した瞬間だった。
神様神社 2話
「いやわたしも神様だよ?なのに配属された神社にまったく人が来ないわけ」
現在、私は神社の奥の和室で神様のぐちを聞いています。
「配属、とかあるんですね」「あるよ〜。一番偉い神様が、神社ができるたびに神様を一人づつ配属するんだよね。んで、120年前にわたしが配属されたのが、ここ。なのにここが出来て早々に参拝者とか、人間がいなくなったんだよねぇ・・・神の力も弱るっつの」
「力ってどう決まるんですか?」「お供物とか信仰心とか参拝とかお賽銭とか、神になにかしてあげると神様の力が強くなるね。わたしは昔の絞りカスで力を使ってる感じ」かろうじて残ってるからなぁこれでも、と神様が苦笑する。「さっきのお茶も神様の力ですか?」「うん」
「あ、そういえばずっとここにいる感じだけど、時間は・・・」「ああ、大丈夫!此処にいる間は時間が止まってるから、好きにしてていいよ」神様が言う。
「神様って、普段何してるんですか?」「この街を見守ってる、っていうのもあるし、あとは・・・あ、そうそう、化け物と戦ってる!」「化け物、ですか?」「うん」
神様が言うには、人間の負の感情があまりにも貯まると、意思を持った化け物になるらしい。
それを浄化したり、倒したりして無力化するのが神様の仕事の一つだそうだ。
「神様の力がないと倒せないから困るんだけど・・・なぜかこの街には化け物がいないんだよ」神様が不思議そうにいう。「人間がいる限り、負の感情は少しでもあるはずなんだけど・・・なにかの結界かな?まぁ楽だからいいんだけど」神様のつぶやきに、私はとりあえずうなずいた。
「じゃぁ、そろそろ」「じゃぁね!あ」神様が走ってきて、私に小さな木札を渡した。
「これは・・・?」「これはね、お守り、かな?」神様が説明してくれた。
「お守りにもなるし、此処に来るパスポート、みたいにもなるよ。どこにいても『此処に来たい』って願うだけで此処に転移できる。わたしの僅かな神様の力だから、お守りの機能はそんなにないかもしれないけど・・・」「ありがとうございます!」申し訳無さそうにつぶやく神様に、私はお礼を言ってうちに帰った。
(途中まで神様が送ってくれた。)
神様神社 3話
ある日のこと。
「早く家に帰りたいな・・・ん?」
背筋が凍る感覚。
何かがいる。
思わずその感覚の主を突き止めようと、周りを見渡した。
なにか黒いものが視界の端に写った。凝視する。
それは大きな黒い塊だった。そしてそれを、神様がぶん殴っていた。
「ていやぁぁぁっ!!!!」
神様の渾身の一撃。黒いものははじけとんで、びちゃ、と黒い肉?が周りに飛び散って、霧散した。
「ふぅ・・・って、あかり!?なんで此処に・・・っているのは普通か、これが見えてるの!?」「は、はい・・・」拳についた黒い肉を振り払いながら、今度は神様が私を凝視した。
「なるほど、それが化け物だよ」私の話を聞いた神様が言った。「あれが?」「うん。あんな感じじゃない、色んな形の化け物がいるけどね。」「じゃあなんで今になって見えるように?」「おそらくこれのせいだろうね〜」神様が、私のカバンの横についた、あのお守りを指差す。
「これですか?」「うん。私の力でも一応神の力にはなってるからね・・・この僅かな神の力の影響で、化け物が見えるようになったんだと思う。」「そうですか・・・」
「って、うぅ・・・」突然神様がばたーん!とぶっ倒れた。
「神様!?」「あかり〜・・・何か・・・」「何か?」「何か・・・お賽銭か・・・お供物か、ない?」「あ、はい!」私はカバンの中に隠し持っている小銭入れから、500円玉を取り出した。
「それを神社の賽銭箱の中に・・・」「は、はい・・・」私は神社の賽銭箱に、500円玉を投げ入れた。
「・・・ふぅ、助かった・・・」「神様、さっきのは?」「力切れ〜。さっき化け物を倒すときにも神様の力を使うからさぁ、もともと神様の力少ないし、こうやってぶっ倒れちゃうんだよね〜・・・」「なるほど」「あ、そうだあかり!」「はい?」
「うちの巫女さんにならない!?」
・・・は?
神様神社 4話
「神様、あの、巫女さんって言うのは・・・」「ああ、あかりが考えてるような巫女さんではないよ!」神様が慌てて説明してくれた。
「あかりにやってほしいのは、まぁ、わたしの秘書?みたいな感じ。お供物をしてくれたりして、神様の力を上げてくれる存在、ズバッと言うと神様の相棒って感じかな?」「相棒、ですか?」だめかな、と神様が私を上目遣いに見上げる。
「まぁ、それくらいなら・・・」私は熱意に負け、そう返した。神様の顔がぱぁっと輝く。
「いいの!?ありがとう!」じゃぁ、と神様が私に手を出した。
「お菓子頂戴!」「は?」「いいから、なにかお菓子かお金持ってない?」
私はカバンから、お菓子を取り出して神様に上げた。「ありがとう!」と言って、神様がお菓子を食べる。「よし!」神様が私に手をかざす。それだけなのに、私の体は一瞬ふわっと浮いたような気がした。「いまのは?」「簡単に言うとね、あかりに神様の力を付与したの。ちょこっとだけ」「神様の力を、私が?」「そう!化け物でも負の力がすごいやつがたまーにいてさ。化け物が見えるだけの普通の人間が近づいたら、瘴気でおかしくなっちゃうから、そうならないように。」「そうなんですね・・・」
神様が言うには、何度も言うけど化け物は人間の負の感情とかが固まってできている。
そのため普通の人間が触れたりすると、瘴気でおかしくなったり、発狂したりするらしい。最悪、化け物の糧となり、飲み込まれてしまうこともあるそうだ。
そのため、化け物にとって有害な神様の力を、私に付与したそうだ。
「神様、化け物の糧になるっていうのは?」「化け物は負の感情が形を持ったもの。つまりは人の言う妖怪とか幽霊と同じことなの。取り殺されるって言うじゃない?あれと同じことが、化け物にもできるの。違う点は、その人間を取り込んだ後、自分の強化に使えるってことだね。強いやつほど負の感情が強いか、人間を取り込んでるかの二択なの」あ、そうだ、と神様が手をたたく。「大事な説明忘れてた、『性質』の話!」「性質?」
「性質って言うのはね、ポ◯モンとかパ◯ドラとか、そういうゲームとかにある種族的なやつのこと!火の性質を持ってる神様は炎を自由に操れるとか、そういうやつ!」「ああ、なるほど・・・それで言ったら、神様はなんの性質なんですか?」「わたしは光の性質だね!」「光?」「うん、化け物に一番強い性質だから、力が少なくても一応倒せはするんだよね」神様が両手をグーパーしてみせる。「だから、あかりに付与した力の性質も光ってことになるかな。いろんな性質があるから、倒し方も神様それぞれだけど。」
その日の夜。
立ち並ぶビルの屋上に、一人の少女が座っていた。
黒地に赤線の入った、古式なセーラー服。黒いおかっぱ頭。
そして何より目を引くのは、我、と書かれた顔隠しをつけていることだった。
「・・・ここの神様、何をしてるんだろうねぇ」かろうじて見える口元に、特徴的な八重歯が覗いている。
「まぁあたしらにとっては好都合だし、別にいいけどさ」
夜風を頬に受けながら、少女はビルから飛び降りた。
神様神社 5話
「やっぱり塾だるかった・・・」
私は現在、塾の帰りである。
空には満天の星。「お腹へった・・・」
ふいに、あの嫌な感じが全身を駆け巡った。
化け物だ。
嫌な感じの方へ振り向く。やはり化け物だった。黒く大きい塊。ぎょろりと光る大きな目。それが全身に無数についている。前に神様が倒していたやつとは違う形のやつだった。
「神様に連絡しよう・・・!」そう思って、お守りを握りしめ、念じようとしたその時だった。
小さな人影が、天空から落ちてきて、化け物の頭に乗った。
「あれは・・・誰?」呟いたとき、人影の後ろに大きな影が浮いた。
鋭く黒い、昆虫の足のような、鎌のような・・・ものだった。
それが、化け物の体を切り裂く。
「え?」
面白いぐらいに真っ二つに割れた化け物の体から、小さい、けれども存在感のある輝く石が出てきた。人影がそれを奪う。
「あなたは」私は知らぬ間に問いかけていた。「あなたは、神様なんですか?」
「・・・ん?」人影がやっと気づいたようにこちらに振り向く。声からして少年だろう。
「僕は神様じゃないよ」
神様じゃ、ない?
ばきばき、と音を立てながら、虫の足みたいなそれが少年の体に引っ込む。「神様じゃないなら、あなたは一体」
たんっ、と消えかけた化け物の体を足場にして蹴って、少年が闇夜に消えていく。
「待って・・・!?あなたは・・・!?」私がそう言っても、少年が戻ってくることはない。
「神様のところ行くか・・・」私は再びお守りを握りしめた。
「は?神様じゃないのに化け物を殺せた?」神様が目を丸くした後、何かをつぶやき始める。
「そうか・・・『あいつら』がこの街には居たから、化け物の数が少なかったんだ・・・!なんでもっと早く気づかなかった?いや、そもそも『あいつら』がこの街に居る意味とは・・・」
「神様、どうしたんですか?」「そっか、あかりにはまだ話してなかったね、ごめん」神様が私の方を向く。
「あかりが目撃した子って言うのは・・・間違いなく、『|貘《ばく》』って奴らだと思う」
神様神社 6話
「貘って?」「貘っていうのはね、簡単に言うと神様じゃないけど化け物を倒せる人間のこと。」「人間なのに、ですか?」「うん。でね、貘と神様の違いなんだけど・・・
貘はね、化け物を食べるんだよ」
「化け物を、食べる・・・?」「そう。でも消滅しちゃう体を食べるんじゃなくて、あかりも見たと思うんだけど・・・化け物の動力源になってる『石』って言うのを食べるの。そして力をつける」
神様に説明して貰ったが、『石』というのは化け物ができる原因になる負の感情の塊だそうだ。
そして石は、ちょっとした神様同様の力を持っているらしい。
「でも、石を食べてどうするんですか、貘って人たちは・・・」「昔、かなりの力を持った貘が、天界に侵入して、天界を滅ぼそうとしたんだって。だから神様の間では貘は危険視されてるの。貘を見つけたらすぐ殺すっていう神様も居るからね」「ちなみに、その貘は・・・?」「一番偉くて強い力を持った神様によって、消滅させられたよ」「消滅、ですか」「それほど危なかったからね。・・・だから、今回の貘は、もしかしたらこの街を支配して、ついには天界も滅ぼすつもりかもしれないんだよ」
「あ、神様」「どうしたの?」「でもその貘の子、石を食べてませんでした。持ち帰ってました、どこかに」「どこかに、持ち帰った?」神様が驚く。
「もうひとり、仲間がいるのかもしれない!きっと食べさせようとしてたんだよ仲間に!きっとその子は下っ端、仲間が首謀者なのかもしれないね」「そうですね・・・」
事件があったのはそれから3日後だった。
「あかり!」登校してすぐ、友達が私に話しかける。「どうしたの?」「今日、転校生が来るんだって!」「え!?珍しいね・・・」今は6月。夏休みの後じゃないんだな、と思う。
ガラガラ、と音を立ててドアが開かれ、先生が教室に入ってくる。「知っている人も多いと思うが、今日は転校生がうちのクラスに来る。入ってこい」がらり、と遠慮がちに扉が開く。
その時、私は声を抑えていたつもりだった。「ぁ・・・」誰にも聞こえていないようでホッとした。しかし驚きは拭い去れなかった。
制服の黒い学ラン。色素の抜けた白い髪。分厚いレンズの丸眼鏡。
「|水無月《みなづき》|凪無《なぎな》です、よろしくおねがいします」
その顔は、あの夜に見た『貘』の少年と、同じだった。
神様神社 7話
どう見ても間違いない。あの夜の貘だ。
「じゃぁ水無月は・・・加藤の隣だ」先生が私の隣を指差す。
気まず、、、
授業中、隣の人を気にしないように勉強していたら、ひら、と小さくちぎられたノートの切れ端が隣から来た。
『今日の放課後、校舎裏に来て』
やっぱりか・・・と思いながら、私はこっそりカバンの方を見た。
「神様、これは?」「あかりが貘に会ったって聞いて、昨日急いで作ったんだ」あの少年――水無月君が転校してくる前日。私は神様にあるものを手渡された。
小さなストラップサイズの、白い鏡。
「これはね、はっきり言うと貘を退治できる道具」「貘を退治、とは?」「貘をやめさせるには、貘の体に溜まった神様の力を吸い込むのね。その力を吸い込む道具がこれ。貘退治だけじゃなくて、化け物を取り込むこともできるよ。・・・貘にあったら、これ向けてね」
放課後。
私は誰にも見つからないように、校舎裏に向かった。――ポケットの中には、例の鏡を入れてある。
水無月君はすでに来ていた。「来ました」「あ、来た」丸眼鏡をかけた顔がこっちを向く。
「単刀直入に言うね。――君、『巫女』さん、でしょ」
・・・っ!
私はすぐさまポケットの中の鏡に手を伸ばした。
「あ、それ効かないよ」「・・・は?」効かない、とは?
「一応効くっちゃ効くけど・・・僕、強いから壊れるってことです・・・」「なるほど・・・?許容量オーバーする、と・・・」「はい」
って!そんな事してる場合じゃない!
「とりあえず目的は!?主犯格の人いるんですよね!?」「あ、そこまで分かってるんだ」水無月君はちょと驚いていた。「目的は君たちと同じだと思うよ?『化け物を倒す』、それだけ。あといいこと教えてあげるね」水無月くんは後ろを向いた。
「僕はある人のために行動してる。君たちが言う主犯格の人っていうのはその子。そしてこの街には危機が訪れている。僕達はそれを防ぐためにこの街に来たんだ」
危機?「んじゃね」止める間もなく、水無月くんは消えた。
夜。
たんっ、と足音がして、ビルの屋上に座っていた少女は振り向く。
「あ、凪無くん。おかえり〜」「ただいま」黒いセーラー服の少女が、足音の主――水無月凪無に声をかける。
「ねぇ」「何?」「また一人で勝手に化け物倒して石食べたでしょ」「ぎくっ」凪無が半眼を作って少女に問いかける。「・・・はい、ごめんなさい3体くらい倒して自分で食べました」「・・・全く、一人で出歩いたら駄目だって言ったろ!?神様一応居るんだから、見つかったら・・・」
「そうだ凪無くん」「何?」
「お腹すいたお腹すいたお腹すいたお腹すいたお腹すいたお腹すいたお腹すいたお腹すいたお腹すいたお腹すいたお腹すいたお腹すいたお腹すいたお腹すいたお腹すいたお腹すいたお腹すいたお腹すいたお腹すいたお腹すいたお腹すいたお腹すいたお腹すいたお腹すいたお腹すいた」
「じゃぁこれまでの分。はい」「ありがと〜!」凪無がポケットに入っていた袋から、きれいな石の結晶を取り出す。「ごめんね小粒で・・・まだ『奴』は最後のやつに溜めてるみたいで・・・」「全然!ありがと!」少女はわずかに見える口の中に、石を放り込む。
「うん、おいしい」「よかった。で、どう?」凪無の問いかけに少女は腕を回して。
「うーん・・・ごめん、まだっぽい」「そっか・・・また集めてくるね。待ってて」
凪無はそう言って、ビルから飛び降りた。
神様神社 8話
あの日からとてもクラスが苦手になった。
なぜなら・・・神様たちに危険視されている、『貘』の男子が隣の席だから!!
「というわけで、鏡、効かないそうです」「効かないの!?」そんな貘初めて知ったよ・・・と神様が絶望する。
「じゃぁ、様子見するしか無いね・・・ほんとに何も企んでないか、あかりに探ってもらうしか無いよ」「私が、ですか!?」「お願い!実は天界からも今回の件で助っ人を呼ぶことになってるの!」
「え!?助っ人呼ぶんですか!?」「まぁ助っ人って言っても、ある力のある神社の巫女さんをこっちに配置してもらうだけだけどね・・・何しろ『貘』だから、事態が事態なんだよ・・・というわけで、その巫女さんが来るまでの間、頼むね!」「は、はい」
1日目。
・・・何も起こらない。隣で勉強してたり、本読んでたりする。
貘も勉強できるんだ・・・まぁ、元人間、だしね・・・
ちなみに成績は馬鹿みたいに良い。こないだの小テストも満点だった。
2日目。
本日も何も起こらない。
転校生で入ってきた、というのに、前からいるみたいに馴染んでいる。誰ももう質問攻めとかはしない。
というか、誰とも話してない。
3日目。
帰りをつけていったら、化け物を倒していた。
そして例の『石』を回収して、どこかに去っていった。
ちなみに学校では何も起こらなかった。
「・・・こんな感じです」「嘘でしょ全然何もやってないじゃん・・・手がかりゼロじゃん・・・でも!」神様は握りこぶしを作る。
「明日、助っ人の巫女さんこっちに来るって!あかりのことは話してあるから、安心していいってさ!」良かった・・・!
「えー、水無月に続き、また転校生だ」先生の言葉にみんながざわめく。
入ってこい、と合図されて出てきたのは、端正な顔立ちをした少年。吸い込まれそうなほど奥の深い瞳。不思議なオーラを放っている。
「|葛西《かさい》|充希《みつき》。よろしくおねがいします」
はっきり言って、めちゃくちゃイケメンだった。
この先の展開は完全に読めて・・・葛西くんは一躍、女子のアイドルになった。
下駄箱にラブレターが何通も入っていたが、すべて断っているらしい。
そしてやっと、葛西くんから直接言われた。
「改めて、貘関連で派遣されてきた葛西だ。話は聞いている。うちのクラスだと、水無月ってやつが貘なんだろう?そして鏡でも祓えなかったと」「はい。本人談ですけど、力が相当強いらしいです」「そうか・・・なにかしでかす前に、速く祓わないと」
こうして、葛西くんと私のお祓い作戦が始まった。
神様神社 9話
9話
「方法は簡単だ」葛西くんが私に白い石を渡す。不思議な光を放つ、この世のものとは思えない石。
「葛西君、これは・・・?」「それは神の石」「神の石?」「そう」
葛西くんの話によると、これは葛西くんが使えている神様が作ってくれたものだと言う。
これには化け物の力を浄化する力があるらしい。
「これを化け物の石の代わりに飲ませる」「でもどうやって・・・」「それが問題なんだよな・・・」「・・・あ、給食に混入させるとか・・・は?」「すぐに気づかれるだろ・・・小さいとはいえ、石が入ってたら誰でも気づくぞ」「「・・・」」二人共固まってしまった。
「そうだ、もうこれしかない」「何だ?」
「・・・言葉で交渉するんです!」「・・・ぇ?」
「あー。君も巫女さんでしょ?」「なっ・・・!?」校舎裏に呼び出したところで、葛西くんも早々にバレてしまった。というか、初対面で最初の一声がこれだ。「そんで、どういうことかはわかってるんだよね・・・そのポケットの石、どうにかして僕に貘の力を失わせたいんでしょ?」流石だ。
「でも、駄目」
ばき、と、あの夜に見た虫の足が背中から生えてくる。それが私達の方に真っすぐ伸びて・・・
--- パリン ---
と、小気味いい音を立てて、それぞれの石を粉々に砕いた。
「石が・・・!ちっ、もう言ってやる、お前らもどうせこの街を壊して、貘だけの世界にするつもりなんだろ!?わかってるんだよ、お前らみたいな奴らのことなんて――」「あの子のことを悪く言わないで」
あの子?
いつの間にか、水無月くんの様子が変わっていた。日本人に同化するためなのか、黒かった瞳は今は赤黒い。わずかに、黒い髪も毛先が白くなったように見える。
血の気を失った真っ白なその面には、今は恐怖しか感じない。
「君たちに通告するね。君たちに与えられた選択肢は、3つしか無いんだ」3本指を立てる。
「1つ目。僕たちを殺す。2つ目。街の未来は捨てる。3つ目・・・僕たちと協力して、この街を守る」
「前にもそれ言ってた・・・ほんとに、君たちの目的は何なの?」「僕たちの目的は、この街を守ること。」「この街を守る、だと?」かすかに怒りをにじませた葛西くんを、水無月くんは一瞥する。
--- 「僕たちは僕たちの|主様《ぬしさま》に命令されて、此処に来たんだから」 ---
「じゃぁね」「待って、主様って・・・!?」水無月くんは消えていく。でもこれでわかったことがある。
「このまちには、3人以上貘が居る」
神様神社 10話
あの二人――加藤さんと葛西君、だっけ
もうあの二人には会いたくないかもしれない・・・でも、学校に潜入して、あの二人と神様を懐柔しないと・・・
灰色のビル群の上を走っていく。そして一番高い等の頂点では、あの子が待っている。
「あ、凪無くん!こっちこっち~」あの子が僕を呼んでいる。「|月《つき》ちゃん、遅れてごめんね」黒いセーラー服の少女――月ちゃんが嬉しそうな顔をする。と言っても、口元しか見えないけど。
「じゃぁ、みんなのところに行こうか」「うん!」
「遅いぞ、凪無」「ごめん、|正夢《まさゆめ》」藤色の髪に両違いの瞳―赤色と青色のオッドアイの少年が、口をとがらせて僕を非難する。「|逆夢《さかゆめ》もごめん」「ボク気にしてないから、大丈夫」正夢の隣りに座っていた、顔の良く似た、うぐいす色の髪の少年―黄色と青のオッドアイだ―が言う。「逆夢は優しいね・・・正夢と違って」「月、うるさい」
--- 「それで、結果はどうなんだ」 ---
凛とした青年の声。「|主《あるじ》様!」「|千《せん》君!」「千」声の主は灰色の髪に、灰色の瞳。色彩を一切失ってしまったような、真っ黒な服装。僕たちの主の千だ。
「今のところ懐柔は無理そう・・・こっちのことを話すしかないっぽいね・・・」「まぁそうだよな」「ボクたちは『貘』だしね」僕の返答に、正夢と逆夢が応える。
「やはりこちらのことを話すしかないのか・・・?」「で、でも千君!」月ちゃんが焦った声を出す。「あたしたちは貘なんだよ!?こっちのことなんて話したら、祓われるに決まってる・・・!」「それが駄目だから、協力が難しいんだ、月」かすかに震える月ちゃんの頭を、千が撫でる。「安心していい。きっといい案が見つかる」「そうだぞ月、主様の言う通りだ」「だから、一回落ち着こうね」「うん・・・そう、だよね!きっとそうだよ!」月ちゃんがやっと明るい表情を取り戻す。
--- 「まぁ、バラすよりほかは無いか」 ---
「やっぱり・・・」千が腹をくくったみたいだ。「凪無、近々バラせ。その後は正夢と逆夢がこっちに転送する。いざとなったら戦闘しか無いが、そうするしか無いだろう。その時は凪無、月、頼むぞ」「了解」「おっけー!!」
静かな夜に、少年少女の笑い声は響いて、風に流された。
1000行きませんでした964文字でした!!!
更新遅くてすいませんでした
受験生なので許してくださいッッ!!