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目次
それもそうか
痛い。心が、体が、どこかへ沈んでいく。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
私のせいです、私のせいにしてください。
そっちの方が、理不尽じゃないほうが、
まだ救われるから
いつも通り。その事にがっかりきた。
まず、靴がない。ランドセルも一昨日からない。
無くなるたびに持ってくる手提げもない。
そもそも持ってこなきゃいけないものがない。
それは、どこにあるのか、いま、誰が持ってるのかわからない。
ただ、心だけが重い。
靴下のまんま、階段を登る。
教室に近づけば近づくほど、吐き気と笑い声が増える。
どんっ!
誰かにぶつかる
「わ〜!いったい!も〜汚れちゃった。よりによってこんな汚物にぶつかるだなんて。」
艶のある髪を靡かて、目をぎらつかせ、しわひとつないオシャレな服を着て、すらっと身長の高い女子。
「ねーねー、ぴかりちゃん、人にぶつかる奴にはわからせたほうがいいんじゃないかな!?」
「そうだよ!」
取り巻きたち。
「そーだよねー!」
明日には変わると思っていた現状が、目の前に突きつけられる。
ああ、ねえ、なんでだろ。
こうなった心当たりないし。
辛いなあ
嫌だなあ
死にたいなあ。
「死ねばいいのに。」
母の言葉。
…死んでもいいのか。
許されるのか。
私の覚えていない罪も
かのじょたちも
こんな私も。
許されるんだ。
屋上、風吹く。
夢にまで見たような世界が、校庭に広がっていた。
遊ぶみんな。
コケたら手を差し伸べられる。
「羨ましいなあ…」
ぎぃ…
古いフェンスは、登る時には音を立て、この学校の歴史を語る。
その歴史とは比べ物にならない私の人生。
恐怖は感じなかった。
「ありがとう、私がいない方が綺麗な世界。」
そして、さようなら
1 まあ、そうなるよね
静かな部屋に一人きり。
考えることはたくさんあるけど、あなたのこと思い出せない。
体育座りで疼くまる。
「兄ちゃん…」
あの日、僕が遊びに行ってなければ。
あの日、僕が彼のそばにいたならば。
あの日、僕が死のうとしなかったら。
「ごめんなさいごめんなさい」
「許して許して助けて」
---
3日たった。
食事もまともにしていない、学校にも行っていない。
「|京《ケイ》!」
僕の代わりに、兄ちゃんが死んだ。
電車が止まり、周りがざわつく。
いじめられてる僕は、奴らに呼び出された。
そしてそのまま…。
「にいちゃあああああああああん」
泣き叫んだって意味はない。
彼は帰ってこない。
こんな自分に笑いかけて、悩みを聞こうとしてくれて、勉強もスポーツも。完璧な兄。
かっこいい、憧れが、
羨ましい、妬ましい。
そう、変わった日のこと思い出す。
---
「兄ちゃんはすごいなあ…。」
母親の袖を掴んで見た表彰式。
兄ちゃんは金賞、僕は努力賞だった。
いやまあ、努力賞だってすごい事だ。
「にいちゃ、」
兄の元へ駆け寄ろうとした時。
「すっげーな」
兄ちゃんには友達がいた。
僕には兄ちゃんしかいない。
羨ましいな。
「兄ちゃんは金賞だって、表彰台、すごいね〜」
父親の発言。心に何か…
妬ましい…。
だから、彼にあんな事を言ったんだ。
「お兄ちゃんにはわからないよ。わかったとしても、変わらない!」
兄は驚いていた。自分を捕まえようとしていたっぽいが、するりとかわして逃げた。
一直線に。駅に。
まあ、そうなるよね。
兄殺した同然の僕。
親に見捨てられたのだろう。
こんな部屋に閉じ込められて。