思い出の中だけで生きていた君。
その思い出にすがってばかりだったけど、次に会ったら必ず…。
必ず、思いを伝える。
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目次
海と、カニと。
そういえば、君はカニが大好きだったな。
もうすぐ夕方。
カモメがねぐらに帰ろうと、夕日をバックに飛んでいる。
砂浜に、人影が見えた。
華奢だけどどこかしっかりした佇まい。長い髪が夕日に照らされているよう。
そして君は、こちらを見ずに話した。
「カニってさ、なんか、かわいくない?」
…頭の中で声がこだまする。
久しぶりに聞いた君の声に、脳が驚いているようだ。
「小さいカニはかわいいし、大きいカニはでかかわいいよね。」
…言っていることの意味はわからない。なのに…いつまでも聞いていたいと思ってしまう。
「だから、私はカニ大好き。君も、そう思わない?」
「……俺は、カニのことは…今でも嫌いだ。」
---
「ねぇ、」
「君にもカニの魅力を教えてあげる!」
これが初めて、君の声を聞いた瞬間だった。
突拍子もなくそう言ってきた君は、期待に満ち溢れた顔をしてたっけ。
「……遠慮しておきます。」
そう俺は困惑しながら答えた。
すると君は途端に悲しそうな顔に変わる。表情豊かな人だと思った。
「俺、カニ嫌いなんで。」
「なんでよ!!!」
うるさっ。
君はもっと物静かな人だと思っていた。
教室に入ってきた時も、高校の制服が良く似合う、静かな美人。それが第一印象。
でも、自己紹介では明るくハキハキと喋って、笑顔が絶えなかった。
「…知らないと思いますけど、俺は甲殻類アレルギーなんです。」
「えっそうなんだ。」
昔、部活を頑張ったご褒美として、俺はカニを買った。
トゲトゲした気色の悪い見た目がもともと嫌いだったが、旨さの前では気にならなかった。もともとカニは好きだった。食べ物として。
だが、口の中にいれた瞬間、突然のどが焼けつくような感覚に襲われて、息ができなくなった。
「…あの日以来、俺はカニが嫌いなんだよ。」
「…そっかぁ…。」
すると、頭の上にポン、という感触があった。
すぐに前を向くと…君が、手を伸ばして俺の頭をなでていた。
「そうだよねぇ…そりゃ、カニが怖くなるよ…。命の危機だし。」
…泣きそうになった。
今まで初対面の人にこの話をして、ここまで寄り添ってくれた人は初めてだった。
しかもあんなにカニが好きな人が。
何かが心臓のあたりにぐっと来た。むずがゆいというか、なんというか。
これが、恋なのか。
読んでいただきありがとうございます!
これはとある合唱曲の(カニをプラスした)オマージュでして…そのうち発表しますがどれなのか探すのも面白いのではないかと!!