第一部の続き。
中1女子が趣味で描いている一次創作小説。
⚠️流血表現・R18要素が含まれます。
※誤字脱字もある場合がありますので、そこは温かい目で見ながら読んでください。
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目次
【第二部】第一戦区「フェリックス・ミラー上等兵」
─数時間をかけて拠点へと戻ったアースたちは、軽く傷の手当てもしてもらいながら、神妙な面持ちで座っていた。
切り替えようとしても、受け止めきれない。伍長であったカイの裏切りと死亡に、拠点に帰ってからも、各々動揺を隠せずにいた。
「─おいおい!何だこの空気は!?」
と、突如場違いなほどに明るい声が響き渡る。声がする方へと視線を向ければ、十字架のような動向をして、片目の白目が黒目になっている男性がその場に立っていた。
「うるせぇよ、フェリックス。お前も報告聞いただろ。」
イーサンが背を丸めながら、不機嫌そうに眉間に皺を寄せてフェリックスと呼ばれた男性を睨みつける
「おっと、すまんすまん!いや〜、イーサンは相変わらずだなぁ!」
睨まれても気にしないようにフェリックスは太陽のように明るい笑顔で笑った。
「えっと、誰ですか‥?」
アースは会話に追いつけないまま、その二人のやりとりを聞きながらそう質問した。
「自己紹介がまだだったね!俺はフェリックス・ミラー!階級は上等兵だ!イーサンの一個上だな!」
くるりとアースの方へと向き直り、軽く自己紹介をした。陽キャオーラが凄いため、あまり分からなかったが、イーサンよりも上の階級ということは強いのだろう。
だが、アースの注目はそれよりフェリックスの目の方に向いた。本来ならば白目であるはずの場所が黒く、瞳が白と反転している目だ。
これは先ほどのカイの時と同じように、「人外化」している予兆だが…本人は理性も全然失ってないように見える。アースが不思議に思いながらじっと見つめていると、やがてフェリックスも気づいたのか、「フフッ」と笑って口を開く。
「この目か?いや〜、俺も過去に能力使いすぎて人外化しかけたことがあってな!本来ならば人外化し始めた時点で理性を失い、元に戻ることができないはずなんだが…」
一瞬言葉を切るも、そのまま続ける。
「イーサンとカイが止めてくれたんだ。そのおかげで、俺は理性を取り戻しすことができたのさ。こんな事例は今まで発見されなかったからわからなかったが、どうやらある特定の行動によって、人外化は治るらしい。だが、それが何かは未だわかっていない。それで、俺の目は後遺症として目が人外化しかけた時のまま、残ってるってわけ。」
トントン、と目元を人差し指で叩き、衝撃の過去をアースに話した。アースはそれを聞いて驚きに目を見開いて、息を呑む。
「(まさか、人外化を治めることができたなんて。その方法が何か分かってさえいれば、カイ伍長は……。)
俯いて動揺を隠せないアースを心配したのか、フェイが歩み寄り、震えるアースの背中をポン、と優しく叩いた。
「あんたも、誰も何も悪くないよ、アース。そう気にすんな、って言っても、アースはまだまだ新兵だからな…まぁ、先輩として、師匠として言っておくよ。」
フェイはアースの前のしゃがみこみ、アースと視線を合わせる。
「この先、こんなことが数え切れないほどある。軍人として歩んでいる以上、それは避けられないことだ。だが、いちいち泣いて、悲しんでいては何も解決しない。だから、強くなるんだ、アース。強くなって、お前の手で、敵から仲間を守れ。」
フェイは励ますように、軍人として長い間いるものとしてそうアースに告げると、アースの頭をポンポンと撫で、微笑んだ。
「フェイ、師匠………。」
アースは過去の自分を救い出してくれた、自分が心から尊敬する師匠の言葉に思わず涙をポロポロと流し始めた。今のアースは、18歳という年相応の子供のように酷く幼く見えた。
それを見たフェリックスとイーサンはキョトンとしたように固まりながらも二人で目を見合わせ、やがてフッと笑うと、泣くアースの近くに歩み寄る。
「ま、俺らがいるからな!心配するな!お前は一人じゃないからな!!」
フェリックスがニカっと笑い、アースの背中をバシンと強く叩く。
「こいつの言うとおりだ。お前は一人じゃない。だから、一人で溜め込もうとするな。少しは俺らを頼れ。」
いつも不機嫌でキレ散らかしているイーサンの口からは思い付かないほどの、優しく、不器用な言葉がかけられる。
「おっ、なんだイーサン?さっきはずっと不機嫌だったくせ、開き直ったのか?」
フェリックスがそれを見逃さず、揶揄うように意地悪そうに笑みを浮かべて指摘する。
「うっせぇ!!別に、心配してるわけじゃないからな!お前みたいな若い奴に死なれると胸糞悪いんだよ!」
フェリックスの言葉に耳まで顔を赤くし、フイッと顔を背けた後、すぐに視線を戻し、照れ隠しかのように言葉を紡ぐ。
「あんた結局アースのこと気にかけてんじゃないか!」
フェイがすぐさまツッコミを入れ、フェリックスが隣で心底愉快そうに満面の笑みで笑っている。
「…フフッ……。」
アースも泣き止み、目をこすりながらその強くて騒がしい先輩たちのやりとりを、微笑みながら見つめていた。
「(イーサン一等兵たちみたいに、ボクも強くなって、仲間を守れるようになりたい…!)」
心の中でそう決意し、空一面に広がる青空を見上げた。
(第一戦区:フェリックス・ミラー上等兵 終)
【第二部】第二戦区「プレコグニション」
数日後──
「いや〜、珍しく襲撃がないな。こんなこと初めてだが…。」
フェリックスが頭の後ろに腕を回し、手を組んだ状態で笑いながら呟く。
「あんたがそんなこと言ってたら攻めてくるでしょうが……。」
フェイが呆れたようにため息をつき、腕を組んだままそう厳しく指摘する。フェリックスは「おっと、すまない!」と肩をすくめて、全く反省していない様子で笑った。
「いや、でも、フェリックスの言う通りだ。カイが死んでから、全く動く様子が見られない。偵察部隊に聞いてみても、『全く変化がない』と言っている。なぜだ…?」
イーサンが珍しくフェリックスに同意し、顎に手を当てて考え込むように視線を落とした。確かに、カイが死んでから、ルミナスも、ガイアも全く動いていない。それをきっかけに、ピタリと攻撃をやめてしまった。
「……なんででしょうか…。」
アースも片眉を上げて、考えるように目を閉じたが、全く理由が思いつかない。頭の中にハテナが思い浮かぶばかりだ。
「まっ、そんなこといちいち気にしていたらしょうがない!すぐに動けるように準備してさえすればいいさ!」
フェリックスがパンパンと手袋をはめた手を叩き、場の空気を自身の圧倒的光属性(陽キャ)のオーラで半ば強引に塗り替える。
「そうだねぇ…いちいち気にしていたら、いざという時に体が動かない。」
フェイも頷き、イーサンも顎に当てていた手を下ろした。
「……何してるんですか〜?」
突如として可憐な、鈴を転がすような可愛らしい声が背後から聞こえる。ハッとして後ろを振り向けば、ピンク髪の少女が立っていた。
「うわぁっ!?」
アースは思わず声を上げ、びくりと肩を振るわせて体勢を崩して尻もちをつく。
その様子が心底面白いのか、少女は目を細めてクスクスと笑った。いや、自分たちと同じ軍服を着ているあたり、この子も軍人だろう。可愛らしい見た目であるため気付かなかったが、よくよく見れば軍服を着ている。
「あぁ、あんたは…アースの後に入ってきた子か。総司令官が言っていたよ。」
フェイがその顔を見て、思い出したように指を鳴らした。
「はじめまして!私、ナディール・エスペランサって言います!ナディールって呼んで下さい!!階級は二等兵です!…で、貴方がアース君?」
胸に手を当て、自信満々に言うように自己紹介をすると、体勢を崩したままのアースの方に少し体を折り曲げてずいっと顔を近づける。あまりの距離感の近さにアースは動揺し、どうすればいいのかわからず、目を泳がせるだけだった。
「こらこら、アース君が困っているじゃないか!離れてあげなさい!」
フェリックスが苦笑いしながら、ナディールの肩に手を置き、アースから離れさせた。
「え〜、いいじゃないですか!同じ二等兵なんだし…。」
不満に思ったのか、口を尖らせ、フイッとそっぽを向いて不貞腐れる。
「同じ二等兵とはいえ、アースの方が長く軍人やってるから先輩だぞ。先輩を敬えよ。」
イーサンがため息をつき、相変わらず不機嫌な様子でナディールに向けてそう注意した。
だが、イーサンの言葉にアースは1番衝撃を受けていた。
「せせっ、先輩!?俺がですか!?」
目に見えてわかるように目を極限まで見開いて目を丸くし、頬を赤らめて動揺を隠すことなく声を荒げながらもそう尋ねる。
「え、そうだよアース。階級は同じだけど、あんたの方が先に入ってんだから…。」
フェイもつられてそのアースの言葉に呆気に取られながら、アースのその言葉に対して返した。
「そ!だから、よろしく!アース先輩?」
ナディールがすぐさま面白がるように、小悪魔のような笑みを浮かべてアースを揶揄う。
それを見たイーサンは「先輩には敬語をつけろ!」とアースを援護するように(?)野次を飛ばしている。
「え、あ、う、うん…よ、よろしくね…!!」
アースは未だに困惑したままだが、なんとか状況を飲み込み、笑顔でそう言った。
一方でフェリックスは、その様子を遠くから眺めながらも、ふと違和感を覚え、誰もいない、開けた森の焼け跡を見つめる。
「(………?気のせいか…?)」
心の中で疑問に思いながらも、ふと彼の脳内に、見知らぬ記憶が流れ込む。いや、見知らぬ記憶というより、それは未来を予知したもののように見えた。
だが、ノイズがかかったかのように記憶は見えづらく、鮮明に見ることはできなかったが、何やら見たことがある姿がその記憶の中にあった。
流れ込んだ記憶はいつの間にか消え、フェリックスはハッとして顔を上げる。
「……何だったんだ、あれは。」
フェリックスの能力は「予知」のため、その能力の効果の一つとして今起こったように、未来の記憶が現在のフェリックスの頭の中に流れ込む。それら全てはノイズがかかったようになっているため、はっきりとは見ることはできないが、必ずそれはいずれ起こることとして表れる。
「………………。」
フェリックスはいつもの明るい笑顔を消し、それが何かを考え込むように腕を組み、片手を顎に当てて考える。
「まぁ、気にしてもしょうがないか!」
口癖のようにその言葉を呟いて切り替えると、アースたちの方へと歩み寄り、明るく振る舞いながら会話を続けた。
彼が切り替えた時、一瞬、いつも輝いていた彼の瞳のハイライトがなくなっていたのは誰も知らない。
(第二戦区:プレコグニション 終)