春休み特別企画
3/25〜4/7 計14話予定
文豪ストレイドッグスわん!の二次創作です。
色々とネタバレを含みます。
注意
・自己満足
・オリキャラ
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目次
#1 迷い犬も歩けばわん!と鳴く
「文豪ストレイドッグスわん!」の内容です。
連載中である「英国出身の迷ヰ犬」の番外編になります。
オリキャラ注意。
英国出身の迷ヰ犬
https://tanpen.net/novel/series/dbc4b7a3-d5a6-4927-bd3f-8e75383d3519/
敦side
忘れもしないあの日。
僕が巡り合った異能者「太宰治」は──
--- 川で死にかけていた ---
「あの……生きてますか?」
「死後、裁きにあう」
生きてた。
---
ルイスside
本当に唐突に始まった「わん!」に、僕は驚きを通り越して冷静だった。
本編通りに進めるなら、ここで自己紹介をしないとだな。
「僕の名前は中島敦! 能力名『月下獣』!」
「私の名前は太宰治。能力名『人間しっかきゅ…しっきゃ…しゅっ」
ゴポァッ、と血を吐いた太宰君。
めっちゃ噛んでるの面白いな。
「自分の能力名すら言えないなんて笑っちゃうよね、ハハッ。あとは頼んだよ…敦…く…ん…」
「噛んだだけで逝ったァァー!? メンタル弱ッ!!!」
「ちょっw敦君wそんなストレートに言わないでwww」
それから少しして、呼吸の整った僕も自己紹介をすることにした。
「僕はルイス•キャロル。能力名『不思議の国のアリしゅ』……じゃないな。『アリス•イン•ワンダーランド』だ」
「る、ルイスさん……」
「何も言わないでくれ、敦君」
──噛んだ。
---
ルイスside
人虎変化の異能『月下獣』。
本編では鋭い牙、獲物を引き裂く爪を持った白虎。
「この通り、とても恐ろしい虎に変身しました!」
「何か君、原作とちがくない!? 大丈夫!?」
ぬいぐるみやん、というツッコミは心の中で入れておく事にした。
「あらゆる能力を無効化する異能『人間失格』。早速お見せしようか…」
お見せしようか、とは言ってもね。
本編とは違ってこんな平和なんだから、もちろん出番はない。
というか、ほぼ無意味だ。
「異能空間から様々なものを出し入れ出来る『|不思議の国のアリス《Alice in wonderland》』。以上」
「え、もう少しないんですか?」
特に面白いことないからな。
あ、そうだ。
僕が指を鳴らすと、《《例のもの》》が異能空間から送られてきた。
「ルイスさん!?」
「残り一秒!?」
例のものとは、|高性能爆薬《ハイエクスプロオシブ》だ。
敦君の入社試験(episode.2参照)で転送していたものなので、もちろん本物ではない。
慌てる二人を見ているのは少し面白かった。
あ、僕はSじゃないからね?
---
太宰side
「いい加減にしないか、貴様!」
敦君とルイスさん話していた私に、そんな声が掛けられる。
「太宰! 遊んでないで仕事をしろ!」
「それはそうだ」
ルイスさんが国木田君の味方をするのは少し予想外。
「子供は遊ぶのが仕事、って云うでしょ」
ふわぁ、と何か眠くなってきてしまった。
子供だし仕方ないよね☆
「後で起こして国き……お母さん」
「誰がお母さんだ!!」
叱られ、渋々仕事をする私。
国木田君は本当にお母さんみたいだな。
「あー、今日の夜は蟹にしようかなー」
ルイス君がわざと私に聞こえるようにそう言ってきた。
そんな風に好物をぶら下げられたって、私はやる気なんて出ないんだからね!
「国木田さん……」
「どうした、敦……って!? 太宰が仕事をしている、だと──!?」
凄く酷いことを言われたような気がするのだけれど。
ルイスside
よし、太宰君が仕事を始めた。
今日は何故か蟹が安くなっていたから良いけど、明日以降はどうしようかな。
そんなことを考えていると、太宰君が少し楽しそうにしていた。
「何してるの?」
「クニキダロボを作ってました」
これじゃ、もう蟹は無しかな。
そんなことを考えていると、太宰君の後ろに人影があった。
ゴゴゴ、と文字が見えるような気がする。
国木田君がめちゃくちゃ怒っていた。
ムズイ。
#2 乱歩、危機一髪
「文豪ストレイドッグスわん!」の内容です。
連載中である「英国出身の迷ヰ犬」の番外編になります。
オリキャラ注意。
英国出身の迷ヰ犬
https://tanpen.net/novel/series/dbc4b7a3-d5a6-4927-bd3f-8e75383d3519/
乱歩side
僕の名前は江戸川乱歩。
異能名は『超推理』で、眼鏡さえあれば何でも推理できる。
今日も殺人現場に呼ばれた。
そして、いつも通り『超推理』が大活躍する──筈だった。
「僕の眼鏡がない……」
あれ、社長に貰ったやつがない。
何で?
「乱歩さん! 代わりの眼鏡を見付けてきました!」
「ワロタ」
そう敦君が持ってきたのは鼻眼鏡。
えぇ、とは思いながらもつけてみる。
すると、皆はかっこいいと言った。
「こんなのかっこ悪いよ!」
次に敦君が持ってきたのは瓶底眼鏡。
「ぐるぐる眼鏡探偵だ!」
「強そう!」
「ワロタ」
ルイス、さっきからワロタしか言ってないんだけど!?
僕の超推理がこんなので使えるわけがない。
なのに周りの人達は『新しい眼鏡の探偵』とか言って胴上げしてくる。
「ぼ、僕は社長のくれた眼鏡じゃなきゃ嫌だー!」
「という悪夢を見た!」
「……そうか」
うぅ、社長から貰った眼鏡は失くさないようにしよう。
---
ルイスside
それは、ある日の探偵社での出来事。
「うわっ」
「如何したんですか?」
どうやら、ピヨこ饅頭の頭だけ食べられていたらしい。
普通に怖いわ。
その時、乱歩が現れた。
タイミングが良すぎるな。
敦君が乱歩にピヨこ饅頭の箱を見せると、面白い返事が返ってきた。
「食べたの僕だけど?」
「探偵が犯人だった!」
「正直、辛いです。これ以上は勘弁して下さい……」
ん、何事だ。
「もう限界なんです! 無理です!」
「飯はまだだ! どうしてもお前の力が必要なんだ!」
あぁ、いつもの光景か。
空腹でないと異能の使えない賢治君。
可哀想だけど、仕事しないとだから仕方ない。
---
与謝野side
|妾《アタシ》が何時も治すと思ったら大間違いだ。
「アンタはこのメスの餌食になるんだ!」
まな板の上には──魚。
仕事終わりの賢治の為に作っとくよう、国木田に頼まれてね。
「与謝野|医師《せんせい》の魚料理おいしいです」
「そうかい」
---
No side
「何時も治療してもらってばかりで……済みません」
「なァに、|妾《アタシ》なんて心の傷は治せないちっぽけな人間さ。後はお前次第だ、ボウズ……」
「|医師《せんせい》にハードボイルドもの貸したのは誰だー!」
「あ、僕だよ」
「ルイスさん!?」
---
ルイスside
それは、ある日の探偵社での出来事(二回目)。
与謝野さんと鏡花ちゃんが話していた。
「アンタ、暗くなるとちっとも用を足しに行かないね。大丈夫かい?」
「夜は(御手洗みたいな個室で)一人になると(襲撃や暗殺で狙われやすくて経験上)怖いから……」
あ、これ誤解生まれるやつだ。
「夜の御手洗が怖いんだって」
「カワイイとこあるんですね」
「ぼ、僕がついていってあげるよ!」
ほら、当たった。
てか敦君がお兄ちゃんみたいなこと言ってる。
「ちょ、ちょっと! ちがっ……!」
「襲撃で狙われやすいよね、個室」
そう言うと、全員が鏡花ちゃんが怖いと思う理由が分かったらしい。
「ルイスさんも分かるの?」
「まぁ、君より十年ぐらい長く生きてるからね」
扉を開くと、そこにはゲラゲラと笑う太宰君の姿があった。
そして、謎の四角と化した敦君。
バタン、と扉を閉じて深呼吸をする。
「ルイスさん、どうかしたの?」
「あー、ちょっと中に変なのがいてね」
ガチャ、と扉を開けた鏡花ちゃん。
「ルイスさん! この格好は──って鏡花ちゃん!?」
鏡花ちゃんは静かに携帯電話を手に取った。
「待って! 夜叉白雪はやめて!」
「違う……これは通報……不審者を警察に……」
「通報!?」
警戒しまくってる鏡花ちゃん、可愛いな。
それで、と私は太宰君の元へ行く。
「敦君の格好は何なの?」
「鏡花ちゃんを歓迎する為の豆腐のコスプレ」
だから白い四角なのか。
#3 白い虎とおでんと
ルイスside
「わぁ〜、如何したんですか?」
給湯室の机に広がるのは大根や卵、はんぺんと言った具材と大きな鍋。
「寒いからおでんでも作ろうかと思ってね。出来たら皆で食べよう」
「太宰さんが作るんです…? 与謝野|医師《せんせい》呼んでおきます?」
「私の料理が致死性だと? 失礼な」
致死性では無いけど、昔凄いの作ってたよな。
えっと、確か釘が打てるほど硬い豆腐。
後は入っているものを聞いたら、普通に気絶しそうな予感がした鍋。
「不安しかない…」
そう言った敦君に、僕は同感しかない。
因みに太宰君は、包丁片手に笑っている。
「おでんの作り方か…」
知らないのかよ。
そうツッコミを入れようとしたけど、太宰君の言葉に遮られた。
「コンビニに行く」
「購って解決しようとしてませんか!?」
「正直ノリで材料揃えちゃった、っていうか私あまり料理しないし」
敦君もおでんの作り方は分からないと言う。
「ルイスさんは?」
「僕も知らないよ。そもそも日本人じゃないし」
そう言えば、と二人はとても驚いていた。
え、もしかして僕、日本人だと思われてた?
「そうだ! 国木田君に聞いてみよう」
国木田君、今は外で仕事じゃなかったっけ。
そんなことを考えている間に、太宰君は電話を済ませていた。
何故か外からドタドタと走る音が聞こえる。
「我が社の危機とは本当か太宰ー!」
可哀想だな、国木田君。
「おでんの作り方だと!?」
そんなことの為に、と国木田君は怒っていた。
敦君が謝ろうとすると──。
「ダシは!? せめてダシはとったんだろうな!」
「えー、そっち?」
怒るところ違くない?
そして、国木田君がキッチンへと立った。
テキパキとおでんを作り出すのはいいけど、詳しすぎて怖いな。
「あ、私は味見係で」
おい、太宰君?
---
No side
「太宰治風おでんレシピ〜!
①国木田独歩を呼ぶ。
はい、これで完成だよ!」
「国木田君、今度なんか日本の料理教えてよ」
「構いませんけど…ルイスさん、料理は出来るんですか?」
「勿論! 今度作ってあげるよ!」
「あー…国木田君、ご愁傷様」
「どういうことだ?」
「いや、普通にルイスさんダークマター製造機だから」
「──!?」
---
敦side
「あれ? 鍋にお餅ばっかり…入れましたっけ?」
どうやら餅きんちゃくを与謝野|医師《せんせい》が解体したらしい。
え、国木田さんがせっかく包んだのに!?
それで油揚げとかんぴょうを乱歩さんが食べる。
「何故外側だけ!」
「餅のとこは味しないから要らない」
「身も蓋もない!」
「あ、餅食べたい」
今取りますね、と太宰さんがルイスさんにお椀に取っている。
「お餅だけでいいんですか?」
「餅は好きだけど、かんぴょうが好きじゃないから丁度いい。てか僕、練り物嫌いだし」
えぇ…
「奇想天外な奴だと思うが、乱歩を同じ社員としてよろしく頼む」
背後から声を掛けられ、普通に吃驚した。
「…はい、勿論です!」
そう答えて乱歩さんの方を見てみる。
すると今度はちくわをストローにして汁を飲んでいた。
あ、良い子はマネしないでね!
悪い子もダメだからね!
「悪い奴ではないのだ…」
「社長、凄い無理してませんか」
---
ルイスside
「おでん、好評で良かったね」
「太宰さん、全然食べてないんじゃないですか?」
そう言えば、発案者なのに一口も手を付けていない気がする。
「私は皆を見てるだけで満足だよ〜」
あ、そういえば味見係なんだっけ。
食べすぎたんだろうな、味見で。
如何やら鏡花ちゃんはおでんが初めてらしい。
敦君がお兄ちゃんらしく、お椀に取ってあげている。
「何が食べたい?」
「じゃあ、そのお豆腐…」
「あぁ、これははんぺんだよ」
待って、鏡花ちゃん驚すぎじゃない?
はんぺん知らないのかな。
でも、確かに豆腐と似てるかも…?
---
No side
「太宰治風おでんアレンジレシピ〜!
①中島敦に材料を買ってきてもらう。
②国木田独歩を呼ぶ。
簡単だね!」
「太宰さんの仕事は!?」
「る、ルイスさん…矢張り忙しいでしょうし、料理を振舞ってもらうのは大丈夫──」
「別に暇してるし、遠慮しなくていいよ」
「そうだルイスさん! 得意の《《アレ》》を作ってあげては如何ですか?」
「あぁ、アレね!」
「おい太宰、俺を殺すつもりか」
「心配しなくても、ルイスさんには得意料理が一つだけあるんだ」
「ふっふっふ。僕の得意料理、その名も『雑草鍋』だ〜!」
「雑草鍋って…あの雑草ですか?」
「もちろん、道端に生えているあの雑草だよ。作り方はとっても簡単!
①道端で雑草を取ってくる。
②鍋に適当に調味料を入れる。
③全部入れて煮込む。
ほら、簡単でしょ?」
「本当だ! とっても簡単ですね!」
「騙されるな、敦! それと太宰、どうしても大丈夫には思えないのだが?」
「私、何回も食べてるけど生きているから大丈夫さ」
ルイス•キャロル=ダークマター製造機☆
#4 噛み合わないやりとり
「文豪ストレイドッグスわん!」の内容です。
連載中である「英国出身の迷ヰ犬」の番外編になります。
オリキャラ注意。
英国出身の迷ヰ犬
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立原side
それは、何処かの秘密基地での話だった。
「おかえりなさい、芥川先輩。単独任務お疲れ様でした!」
今お茶を淹れますね、と席を立つ姉さんと要らん、と答える芥川さん。
会話が成り立っていなさすぎだろ。
そんなことを考えていると、秘密基地の扉が開いた。
「芥川、戻ってるか? |一寸《ちょっと》伝言がよ」
「中也さん。すみません、わざわざ」
「いや何ついでだ」
あー、中也さんの分の茶もいるな。
どうにか姉さんに伝えようと小声&指で2を作る。
しかし、返ってきたのはピースだった。
暫くして、どうやら伝わったようだった。
安心していると、姉さんが盆をもってやって来る。
「お待たせしました」
「全く伝わってねぇ!」
茶も羊羮も一つしかないんだが?
「何で満足そうなんだ樋口一葉。中也さんが見えてないのか!?
そんなに小さいと思っているのか!?
芥川さんをよくよく見てみると、めっちゃ困ってる。
机に只一つ置かれたおやつセットに、あの芥川さんが!
中也さんも無言だ!
これは気まずいぞ!」
「……どうぞ」
「うん! そうなりますよねー!
姉さんはショックを受けるな!」
「お前…」
「ついに芥川さんが動いた!」
「|先刻《さっき》から五月蝿いぞ」
「ほら~怒られた!」
って、俺が怒られた!?
「中也君と芥川君いる?」
「ルイスさん、どうかされましたか?」
「いや|幼女趣味《ロリコン》──あ、|首領《ボス》が至急本部に集合して欲しいって」
「ちっ、とんだ二度手間だったな」
「私も行きます、芥川先輩。こちらの警備は黒蜥蜴に任せますね」
それじゃ、とルイスさんが指を鳴らすと三人の姿が消えた。
異能力で転移したんだろう、多分。
「……俺が食ってもいいよな、コレ」
「(三等分)」
こうして俺たちは、三人で食べるのだった。
---
No side
「エリスちゃんがドレスを着てくれないんだよぉ~」
「……。」
何でルイスくんがいるかって?
番外編だから良いんだよ!
#5 ロッカーの中身は何でしょな
「文豪ストレイドッグスわん!」の内容です。
連載中である「英国出身の迷ヰ犬」の番外編になります。
オリキャラ注意。
英国出身の迷ヰ犬
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敦side
「いきなり掃除係を命じられて不満かい?」
だが社の清掃は立派な仕事の一つ。
そこまでは太宰さんの言うことに納得できた。
「だからね、社員達の私物ロッカーの中だって掃除しないと! 気は進まないけど、仕事だから仕方ないよね!」
ヒャッホウ、と太宰さんはめちゃくちゃワクワクしていた。
いや、私物ロッカーって勝手に開けちゃダメでしょ。
プライベートな場所だし、普通にマナー違反だよね?
「怒られちゃいますよ。大体何時も与謝野|医師《せんせい》のロッカー、赤い液体が漏れ出てて怖いんですよ」
「医者なんだからそういうこともあるだろう」
「医者だから全て許されると思ったら大間違いですよ」
「ほら、掃除のおばちゃんだって男子トイレというプライベート空間に入ってくるだろう?」
「それは仕事だから!」
「そうそう。私達も今日は社の掃除が仕事だから開けてもいいんだよ」
あぁ~なるほど。
……いや、やっぱおかしい。
勝手に開けちゃダメでしょ。
「良いんだよ! 私はさっさと皆のロッカーの中が見たいの!」
「清々しいほどの本音!」
先ずは国木田君のロッカー、と太宰さんが開いた。
すると、ピシッとカレンダーが並べられていた。
「まぁ……予想通り……」
「いや、よくよく見るとおかしいですよ。何でカレンダー二個も三個も並べてんですか」
「この辺とか、国木田恥ずかしポエム集なんか期待してたのに…」
おや、と太宰さんが言ったかと思えば|㊙️俺の理想《それっぽいの》が出てきた。
全部出してみると『㊙️俺の理想の真面目で勤勉な太宰にする方法』という謎のノートだった。
思ってたのと違う感じのが出てきた!
「これは禍々しい…掃除係としてちゃんと捨てておかなければ…」
闇に葬ろうとしてる!
てか、もうゴミ箱へと葬ってるんだけど!?
「あれ、何してるの?」
「ルイスさん!」
実は、と僕が事情を説明している間に、太宰さんは乱歩さんのロッカーを開こうとしていた。
「僕は福沢さんに頼まれて乱歩を探しに来たんだけど──」
「ふゅ? ふぁーに? ふぁんふぁもう?」
「お菓子はまだ分かるけど、本人も収納されてた!?」
「秘密の場所で食べる駄菓子って美味しいよね」
いぇーい☆じゃないですよ。
そんな秘密基地感覚でロッカーに入らないでください、乱歩さん。
「それで社長が呼んでるんだっけ。今行くね」
あ、と掃除してるならとゴミを渡されてしまった。
静まり返ったロッカー室。
「え、えーと次行きますね…」
でも次は与謝野医師のロッカーだ。
「矢っ張り血なんでしょうか…」
「死ぬ間際まで怪我人を此処で放置しているだけかも」
「いや、黒いよ。マフィアの血でも騒いだ?」
「まぁ、此処は飛ばして次に行こうかな…」
もし怪我人が入っていたとしても、別の何かがいたとしても本来の目的は掃除。
なら僕らがすることは──。
「…んだもん」
「はい?」
「本当にロッカーから血が滴ってたら怖いんだもん…与謝野医師が」
ごもっともすぎる。
そんなこんなで次は太宰さんのロッカーだ。
でも、怖いぐらいテンションが高い。
「どうせ自殺関連でしょ。中で死んで、そのまま棺桶に出来るとか」
「いや、太宰さんのことだからもっと凄いものですよ」
ねぇ、と太宰さんに話し掛ける僕。
しかし返事は帰ってこない。
もしかして、とロッカーを開いてみると中には首吊り用のロープがぶら下がっているだけだった。
「…どい」
「ん?」
「酷いですよ! なんで先にネタバレしちゃうんですか!」
「いや、簡単すぎるから」
うぅ、と涙目になっている太宰さん。
でも次の瞬間にはニコニコしていた。
「では、次はルイスさんのロッカーですね!」
「ちょっ、待っ、開けないで!?」
ルイスさんの制止も太宰さんには届かず、ロッカーは開かれる。
中に何が入っているのか。
必死に止めていたので僕も少し気になっていた。
気になる中身は──。
「うわっ!」
ロッカーから出てきたのは《《ぬいぐるみ》》だった。
それも一体や二体ではない。
手に乗るサイズから、ルイスさんとあまり大きさが変わらないものまで。
どうやって入れていたんだ、と不思議なほど沢山のぬいぐるみが出てくる。
太宰さんはぬいぐるみで埋もれてしまった。
「これは、その、えーっと…」
「可愛いですね」
「…それだけ?」
「ルイスさんはぬいぐるみが好きなんですよね。別に差別とかしませんよ」
男の方でも可愛いものが好きでいいと思います。
そう伝えると、ルイスさんは笑った。
でも、その表情は少し違和感を感じる。
「もう掃除はやめて、あんみつでも食べに行こうか☆」
「あ、太宰さん! 待ってくださいよ!」
どうしてそんなに辛そうに笑うんですか、ルイスさん。
---
No side
「俺のノートが何故ゴミ箱に!?」
「太宰君がロッカーの清掃をしてたよ」
「太宰の仕業か! もう許さん!」
「まだ俺は諦めてないぞ! 太宰!」
「私は諦めてるよ」
「そうだ。与謝野さん、ロッカーにワイン入れたりしてない?」
「入れてるが…どうしてそんなことを聞くんだい?」
「いや、多分中で割れてるよ。ロッカーから流れてた」
「本当かい!?」
ギャグとシリアスが酷い((
ルイスくん可愛い((
#6 恋と狼煙/技と力
「文豪ストレイドッグスわん!」の内容です。
連載中である「英国出身の迷ヰ犬」の番外編になります。
オリキャラ注意。
英国出身の迷ヰ犬
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ルイスside
「いや~敦君が居てくれて扶かったよ! 有難う!」
聞き覚えのある声がして川辺を見ると、大量の荷物を運んでいる敦君の姿があった。
「太宰さんも一緒に持って下さいよー」
「…敦君」
「……。」
「敦君と私…どっちが先輩だと思う? やっぱり先輩は敬うものじゃないかと私は常々──」
ゴツン、と凄い音が響き渡る。
この正体は僕が太宰君の頭を殴ったからだ。
「ルイスさん!」
「イタタ…ルイスさん、最近私を踏んだり(episode.4参照)と暴力的になってないかい?」
「誰かさんが先輩として恥じる行動しか取ってないからね」
頭を押さえて床に伏せる太宰君は無視して、僕は敦君から荷物を貰う。
どうやら探偵社に運べば良いらしい。
「それにしても大人ってずるいですよね。まぁ、いいですけど」
「先輩として手本を見せる為、太宰君が持ったら良いと思う」
「でも、太宰さんにはお世話になってるし、感謝してもしきれな…」
「…何してるの?」
歩き疲れた、と太宰君は床に伏せたままだった。
もう一回殴ろうかな。
「…いや、私が荷物を持とう」
「へ? 大丈夫なんですか?」
「そして荷物を持った私を、虎になった敦君が運ぶというのは如何だろうか」
此処に鬼がいる。
敦君の負担が多い以前に、普通に『人間失格』で解除されるから出来るわけがない。
「あーもう、巫山戯てないでとっとと運びますよ」
「私をかい?」
「荷物をだよ!」
「ていうか、コレ中身なんなの? 凄い量だし、普通に重いんだけど?」
その時、ちょうど敦君が転んだ。
もちろん荷物も落ちて蓋が空いてしまった。
中身が沢山出てきたかと思えば、全て《《恋文》》だった。
しかも、色々な女性から。
「犯人は──」
「家に置いとけないし、社に持ってっちゃおうかなって」
「──と、供述しています。中島裁判長、判決は?」
「燃やします」
え、と太宰君が慌てている。
それを横目に、僕は異能でマッチ箱を取り出した。
「ヤメテー! 敦君ヤーメーテー!」
その日は河原に一日中、愛の狼煙が上がっていたとさ。
これにて終演。
---
ルイスside
ある日のこと。
敦君は、何やら考え事をしているようだった。
「やぁ、考え事かい?」
「太宰さん、あの…太宰さんと中也さんってどっちが強いのかなって」
僕は思わず笑ってしまった。
対して太宰君は凄く怒っているようだった。
「も、勿論太宰さんの異能の凄さは判ってますよ!」
「相手が異能じゃなければ無意味だけどね」
「ルイスさん!?」
「で、でも長年|二人組《コンビ》でしたし、お互い弱点も熟知してるのかなーと…」
ふーん、と太宰君はやっぱり怒っていた。
個人的に力の強さなら中也君かな。
元の戦闘能力が高いだけでなく、異能力で重力を自由自在に操ることが出来る。
だが、少しばかり挑発に乗りやすいだろうか。
例の状態も、太宰君が居なければなることは出来ない。
そんな中也君に対して、太宰君はその知能の高さが強み。
頭の回転が早く、作戦が失敗したことは多分ないと思われる。
戦闘向きな異能ではないのが、唯一の弱点だろうか。
銃で撃たれれば、刃物で刺されたら勿論死んでしまう。
「ジャンケンだって常に私の勝ちさ」
「そこまで!?」
「ちょっと待てコラァァァ!」
この声は…。
「誰が誰に何だとコノヤロウ! もう一度云ってみやがれ!」
うわぁ、呼び込んじゃった。
普通に探偵社へ来てるけど良いのかな。
「|手前《テメェ》の仕掛ける勝負事なんてイカサマばっかじゃねーか!?」
「ふーん、へーえ、そういうこと云う?」
何故か内股歩きのお嬢様口調で退散したことを話している。
いや、あれは太宰君の嫌がらせじゃん。
そんなこんなで、二人はジャンケンをすることになった。
どうやら太宰君用にとっておきの作戦があるという。
「これだ!」
グー、チョキ、パー。
その全てを併せもつ最強の型を中也君は出していた。
発想が小学生なんだけど。
「莫迦だなー」
「ッだと|手前《テメェ》!」
因みに太宰vs中也vsルイスの場合。
①中也が出すのが分かる太宰&ルイス
②太宰は中也に勝とうとする
③ルイスはそれだと面白くないのであいこになるようにする
結果、ルイスが飽きるまではあいこ。
#7 お花見に行こう!
「文豪ストレイドッグスわん!」の内容です。
連載中である「英国出身の迷ヰ犬」の番外編になります。
オリキャラ注意。
英国出身の迷ヰ犬
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ルイスside
桜舞い散る、ある春の日のこと。
僕は近くの公園に花見に来ていた。
多くの花見客がそれぞれ楽しんでいる。
食事に、飲酒に、子供は鬼ごっこ。
《《花より団子》》という言葉があるが、殆どは宴会を楽しんでいることだろう。
「あー! 何で花見の場所が|探偵社《コイツら》の隣なんだよ!」
「確かに由々しき事態じゃがなぁ」
聞き覚えのある声が聞こえてくる。
随分イラついているな、中也君。
「楽しそうな鏡花も見えるしのぅ♡ |私《わっち》の鏡花は愛らしいのぅ♡」
「おい、姐さん飲ませ過ぎるなよ」
「紅葉出来上がってるねぇ」
「ルイスさん!」
探偵社とマフィアの仲が良く見えるけど、そんなことないだろうな。
太宰君と中也君は相変わらず言い争ってるし。
このままだと戦争が始まりそうだな。
「せっかくのお花見日和ですし…探偵社と合同のお花見にしてもいいのでは?」
なーんて、と言った樋口さん。
芥川君が嬉しそうだな。
でも中也君がすぐに否定したので、露骨にがっかりしている。
少し可哀想に思える。
「よぉし移動だ─いど…」
「中也さんが酔い潰れた!?」
「お花見、意外と楽しかったんですかね?」
「五月蝿いのがやっと静かになったねぇ。今日ぐらい桜に免じて、皆で宴を楽しもうか」
太宰君はここまで計算して中也君に飲ませていたな。
明日が大変になりそうだ。
「うぅ、|私《わっち》らは何時になったら会えるんじゃのぅ…」
「酔いすぎだよ、紅葉。メタ発言じゃん」
「良かったらコレ」
鏡花ちゃんにおにぎりを渡され、与謝野さんにはワインを押し付け─いや、頂いた。
早々に立ち去るつもりだったのに、おじゃましようかな。
本編ではあり得ない探偵社とマフィアが仲良くしている様子。
敵対組織とはいえ、桜の下では同じく花見を楽しむ人間か。
僕も今、この瞬間は一人の人間としてここに居られる。
「…昔ではあり得なかった」
「お花見なのにしんみりしないでくださいよ、ルイスさん」
「それもそうだね」
ワインを飲み干すと、太宰君が日本酒を渡してきた。
丁度、桜が舞い降りて酒に浮かぶ。
「乾杯しませんか?」
「…何にする?」
そうですね、と太宰君は珍しく頭を悩ませているようだった。
「─|迷ヰ犬《ストレイドッグ》に」
「…|迷ヰ犬《ストレイドッグ》に」
乾杯、とお猪口の当たる音がとても綺麗だ。
僕らは迷い、抗って生きてきた。
そしてこれからもそうやって生きていく。
探偵社もマフィアも、皆同じく|迷ヰ犬《ストレイドッグ》か。
--- 『ルイス』 ---
ふと、懐かしい声が聞こえたような気がした。
桜吹雪の先に見えた、軍服を身につけた沢山の人影。
「…僕はまだ其方へ行けそうにないよ」
君達の分も、生きないといけないから。
そして罪を犯した分、生きて償わないといけないから。
『まだ26歳なのに|あの世《こっち》に来たらぶん殴るから覚悟しとけよ!』
『一人で抱え込むなよ、ガキ』
『僕達のことは忘れて幸せになってね』
『元気にやれよー!』
あぁ、と笑った僕の目から涙が落ちる。
桜の見せた幻覚か、酒を飲み過ぎたのか。
あまり酔わない筈だが、と考えていると一人の男が仲間達の中に混ざっていた。
赤い髪が特徴的な男だ。
砂色の外套は、何処か彼を彷彿とさせる。
「太宰君に用かい?」
『…何でもお見通し、か。お前ならこの会話が夢か現実かも予想ついているのだろう?』
「まぁね」
グイッ、と酒を一気飲みした僕はその男に笑いかける。
「自殺は程々に、とでも伝えておくか?」
『太宰が早く来たら完成した小説を見せられない、とも言っておいてくれ』
「覚えていたらね」
『そんな冷たいこと言うなよ』
色々と話したいことはある。
しかし、こういう場合は大抵長話は不可能だ。
「また会おうね、織田作さん」
織田作ぅぅぅぅぅぅぅぅ!
#8 お風呂に行こう!
「文豪ストレイドッグスわん!」の内容です。
連載中である「英国出身の迷ヰ犬」の番外編になります。
オリキャラ注意。
英国出身の迷ヰ犬
https://tanpen.net/novel/series/dbc4b7a3-d5a6-4927-bd3f-8e75383d3519/
あらすじ
お風呂が壊れてしまった探偵社一行。
銭湯に行くことになりました。
説明が雑ッby.中島敦
---
ルイスside
フラフラと横浜の街を放浪していると、見覚えのある人達がぞろぞろと歩いていた。
持ち物から銭湯に行くことが予想できる。
「あ、ルイスさんだー!」
いつも通り僕のことを見つけるのが異常に早い太宰君。
呼ばれているのを無視するわけにもいかない。
話を聞くと、どうやら探偵社のお風呂が壊れてしまったらしい。
「そういえば国木田さん、皆揃って銭湯に行って大丈夫でしょうか?」
「全員で止めないといけないことがあるからな…」
「え? まさか事件でも…?」
「わーい! 広いお風呂だー!」
そう言った敦君に被せるように、後ろから声が聞こえて来た。
振り返ると、そこには浮き輪にアヒルの玩具を持った乱歩がいた。
あ、これか止めるの。
やっぱり乱歩は、少し子供っぽいところがあるとおもう。
「賢治君、湯船でクロール競争しない?」
「いいですね〜楽しみです」
「賢治君!」
少しじゃないな、コレ。
乱歩を止めに来ているはずなのに、早速危なさそうなんだが。
敦君と国木田君が説得するよう賢治君を呼び出す。
「クロールは他のお客さんの迷惑になるからダメですよ」
「え〜」
じゃあ平泳ぎで競争、と提案する乱歩を見てため息を吐く。
もちろん、満面の笑みで賢治君が了承するところまでが一セットだった。
「困った先輩だねぇ、鏡花ちゃん」
そう、敦君が話し掛けている方へ視線を向ける。
すると乱歩と同じく、アヒルの玩具を持った鏡花ちゃんの姿があった。
まさか、と思ったが乱歩に貰ったのだと言う。
少し安心した。
「男湯と女湯で兄様と離れ離れ」
寂しいわ、とナオミちゃんが呟く。
そして何故か男湯に行きたいと言い出した。
いや、アウトだろ。
「だ、ダメだよナオミ!」
「それでしたら、兄様がナオミと一緒に女湯に来てください♡」
「も、もっとダメだ!」
この兄弟の関係は─うん、やっぱり分からない。
「湯船逆立ち健康法。お湯の中で逆立ちすると健康になるのさ」
「ウソをつけ太宰! また下らん|法螺《ホラ》話を!」
「サウナ水風呂健康法。サウナと水風呂を交互に入ると健康になるのさ」
「もう騙されんぞ! そんな健康法は断じてない!」
「あるよ」
僕がそう言うと、国木田君の眼鏡がパリンと音を立てて割れた。
「ほ、本当にあるんですか…?」
「うん。僕はサウナが苦手だから一回ぐらいしかやったことがないけど」
「私が毎回ウソをつくと思ったら大間違いだよ、国木田君」
国木田君は静かに眼鏡を取り、異能力で新しいものを出していた。
直前まで太宰君が適当なこと言っていたから、確かにウソだと思っても仕方がないか。
少しして、とても不服そうに太宰君に謝っていた。
そう言えば─。
「君、手ぶらだけど銭湯に行かないの?」
よく聞いてくれました、と太宰君はドヤ顔をする。
「全て人から借りる作戦!」
「最低だな」
「うっ、流石にストレートに言われると心にくるものが…」
僕の言葉に、太宰君は胸を押さえて蹲る。
殆どの社員が無視する中、手を差し出す影が一つ。
「僕ので良ければ貸しますよ。ただ僕、髪も体も全部石鹸一つですけど…」
「君って偶に凄くワイルドだよね」
孤児院がそうだったから、と敦君は言っていた。
確かに今までの習慣を急に変えることは出来ない。
僕も戦後は色々と大変だったな、と昔のことを思い出してしまった。
「そうだ、ルイスさんも一緒にどうですか?」
「あー、折角だけど今回は遠慮しておこうかな」
そう言って、僕は探偵社の人達と別れるのだった。
---
あらすじ
アジトのお風呂が壊れてしまったポートマフィア達。
風呂に入りたければ銭湯に行くしかないのだった──。
探偵社と一緒じゃねぇか!by.立原道造
---
立原side
『まぁまぁ、偶には広い湯船に浸かるのも良いものだよ』
そう、首領は言っていた。
だが俺達マフィアがのんびり風呂に入れるかっての。
共感されるかと思っていたが、反応は─。
「え? 何か云いました?」
「古い価値観は洗い落とすべきだな」
「何、銭湯でも行くの?」
うわぁ、と俺は驚いて大きな声を出してしまう。
いきなり背後に現れるとか、心臓に悪すぎるんだが。
「ルイス君ではないか。今回は誰に用かな?」
「ちょっとお風呂借りたかったんだけど、故障してる感じ?」
爺さんがルイス・キャロルに話している間、姉さんは中也さんの所にいた。
「銭湯には体重計があるんですけど、中也さんが居てくれればなぁ」
「あァ?」
「中也さんの異能で、体重も思うがままなんですが…」
その光景を想像してしまい、少し笑いそうになる。
「まー、そのためには女湯まで来てもらわないとダメですけど」
「お、おん!? おんな!?」
あれ、珍しく中也さんが慌ててる。
もしかして、姉さんの冗談を本気にしてるのか?
中也side
「銭湯ねぇ…」
青鯖野郎さえ居なければ何処でもいい。
面倒だが一寸行ってくるか。
「中也さん、お風呂用の帽子忘れてますよ」
風呂用の帽子って何のことだ?
少し考えていると、樋口がシャンプーハットを渡してきた。
後ろでルイスさんが笑いを堪えている。
「アンタの仕業かァ!?」
「あははっ、ムリ、もう我慢できない、」
ルイスside
お風呂に入れないなら此処に用はない。
でも中也にした悪戯は楽しかったな。
「思ったんだけどよぉ、芥川さんの異能って外套を変化させるんだろ? つまり入浴中って実は無防備になるのか…?」
異能力がなければ、芥川君はただの病弱な人間。
銃弾から身を守ることも、人を斬ることも何も出来ない。
太宰君の教育のせいで風呂嫌いにもなった。
少し、可哀想に思える。
僕も嫌いだけどね、お風呂。
シャワーだけで絶対充分だって。
湯船に浸かるのなんて息苦しくなるだけじゃん。
「皆さん! 何てこと話してるんですか!」
「悪ィ、ただの冗談だって」
「芥川先輩は|仮令《たとえ》全裸だって強いに決まってます! 全裸でも!」
樋口さん、凄く全裸を強調するな。
そんなことを考えていると、隣に芥川君がいた。
何とも言えない表情で、彼らの会話を眺めている。
「実際、生身での戦闘はどうなの?」
「…不可能ではありません。一発でも貰ったら駄目ですが」
「太宰君に異能発動だけじゃなく、体術まで叩き込まれたの?」
「否、あの人ではありませぬ」
じゃあ中也君かな。
そんなことを考えていると、芥川君が僕の方を見た。
「|僕《やつがれ》に体術《《も》》教えて下さったのは貴方だけです、ルイスさん」
「…再会した時(episode.4参照)にも思ったけど、僕のこと覚えてたんだね」
何年前よ、と僕は思わず笑う。
たった一週間。
本当に少しの時間だったのに、彼は覚えてくれていた。
「まぁ、色々と頑張りなよ」
「─はい」
書きたいことが多くて長くなっちゃった☆
#9 わん!特別編「文ストシンデレラ」
「文豪ストレイドッグスわん!」の内容です。
連載中である「英国出身の迷ヰ犬」の番外編になります。
オリキャラ注意。
英国出身の迷ヰ犬
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No side
昔々、あるところに|敦《シンデレラ》という名の心優しい娘が居ました。
|敦《シンデレラ》には意地悪な|院長《継母》と|芥川《義姉》が居ました。
「掃除はまだか! この穀潰しが!」
|院長《継母》は|敦《シンデレラ》を叩き、|芥川《義姉》は踏み付けていました。
(憶えとけよ…)
そう心の中で思った|敦《シンデレラ》は、|見て《読んで》分かる様に割とタフでした。
そんな在る日、お城で舞踏会が開かれることになりました。
王子の結婚相手を探す為の舞踏会。
早速、|院長《継母》は|芥川《義姉》を連れて出かけて行きます。
「僕は当然お留守番…」
服も靴もボロボロだが、舞踏会に行きたかった。
そう、|敦《シンデレラ》は独り言を呟く。
「起きろ少年! その願い、叶えてしんぜよう!」
突如現れたのは変な帽子を被り、変な棒を持った太宰─。
「私は親切な魔女だよ。敦君を扶けに来たんだ」
「敦じゃないです。シンデレラです」
そーれ、と|太宰《魔女》が変な杖を振るうと|敦《シンデレラ》の服が綺麗な桃色のドレスへと変わった。
全く違う姿に|敦《シンデレラ》は驚きを隠せない。
「何とお礼を言ったら良いか。如何してこんな親切を…?」
「それはモチロン面白そう…ゴホッ、君が毎日健気に頑張っているからダヨ!」
|太宰《魔女》は本音がダダ漏れだった。
「そうだ、一つ約束だよ。十二時までには必ず帰ってくること」
時間になったら異能『人間失格』で、その変身を解除しに行くからね。
そう言った|太宰《魔女》に、|敦《シンデレラ》はツッコミを入れる。
「異能!? 魔法じゃなくてこれ異能なんですか!?」
「間違えた魔法だった」
「あー吃驚した。急に原作の世界観持ってくるから…」
「まぁ、十二時になったらそれ脱げるから早く行ってきたら?」
ザ・投げやりの|太宰《魔女》だった。
(僕が舞踏会に来れるなんて夢みたい!)
会場に着いた|敦《シンデレラ》はワクワクしていた。
(王子様…一体どんな人なんだろう)
「なんて素敵なお嬢さんなんだ。私と踊ってくれないか?」
振り返るとそこには|ルイス《王子》がいた。
「いや何で!?」
「|海嘯《作者》が原作で王子役をしていたキャラを出したくないんだって。まだ本編に出てないし」
「|尾崎紅葉さん《花見の時にいらした方》(#7参照)は良いのに×××××××××はダメなの!?」
「ほら、伏せ字にされるでしょ?」
本当だ、と|敦《シンデレラ》は感心していた。
「あと、このままだと僕の出番なさそうだから」
「さっきから思ってたんですけど、メタすぎません?」
「因みに×××××××××は路頭を迷うホームレス役です」
「シンデレラってそんなキャラ出てきましたっけ?」
「いや、今テキトーに考えた」
「何してるんですか…」
とりあえず、と話を進める為に王子は|敦《シンデレラ》の手を引いた。
何処からか舞踏会の音楽が流れ始める。
身長的には完全に役が逆だ。
「それでは私が魔法をかけましょう」
いきなり現れた|太宰《魔女》が変な杖を振るうと、二人の衣装が変わった。
ルイスが純白のドレス、敦が純白のタキシード。
髪型も変わったこともあり、二人ともいつもと雰囲気が違う。
(…可愛い)
そう、敦は心の底から思った。
何故か髪が伸び、後ろで結われているルイスの姿はまるで少女のようだ。
それは自身なんかよりシンデレラに向いていたのでは、と本気で思ってしまう程。
「敦君って踊れる?」
「え、あ、恥ずかしながら…」
「じゃあ僕がリードしてあげるよ」
こうして踊ったシンデレラと王子は結婚し、末長く幸せに暮らしましたとさ。
おしまい。
「元気ゴリゴリ🦍」で作らせていただきました。
敦君とルイス君のイメージです。
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#10 地球最後の日
「文豪ストレイドッグスわん!」の内容です。
連載中である「英国出身の迷ヰ犬」の番外編になります。
オリキャラ注意。
英国出身の迷ヰ犬
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ルイスside
その日、僕は偶然会った敦君と探偵社に向かった。
いつも通りの日常を想像していた僕が目にしたのは、はっきり言って異常な光景だった。
「ねぇ、これ如何いうこと?」
「だ、太宰さんがちゃんと仕事してるじゃないですか!」
その気持ちは分かる、と奥から谷崎君の声が聞こえた。
朝からずっとこの調子らしく、真面目に仕事をしているらしい。
「ちなみにこれを目撃した国木田さんは、ショックで寝込みました」
うわっ、凄い魘されてるんだけど。
「うぅ…遅刻にサボり、ずる休み上等の太宰が何と定時十五分前に椅子についていたのだ! もう耐えられん…俺はダメだ」
「逝ったー!?」
「国木田君、床に寝たままでいいの?」
「あまり良くないですね。ソファーへ運びます!」
力のある賢治君が、軽々と国木田君を運んでいく。
その間に太宰君はテキパキと指示を出していた。
変なキノコでも食べたんじゃないのかな。
「ルイスさんも暇ならコピーを取ってきて貰えませんか?」
「僕、探偵社員じゃないんだけど」
そうでした、と太宰君は自身で動いた。
心を入れ替えたにしては変わりすぎだし、入れ替わり系の可能性も低い。
異能力による影響とも考えにくい。
そもそも太宰君は『異能無効化』でその類は一切効かないからだ。
「いやー吃驚しちゃいましたよ。今日は太宰さんの所為で雪でも降るんじゃないですか?」
「いやいや槍かも」
「カエルなんて降ってきちゃったりして」
「太宰が働くなど、地球滅亡の前触れかもしれん」
あ、国木田君が復活した。
にしても酷い言われようだな、太宰君。
そんなことを考えながらふと空を見れば、雲行きが怪しくなってきていた。
今日は晴天の予報だったはずだが─。
「─雪だ」
珍しいこともあるものだな。
「大変だ! 空から槍が降ってきたぞ!?」
「今度は空からカエルが! 今日は一体何なんだ!?」
外からは大勢の人の困惑する声が聞こえてくる。
敦君達、盛大にフラグを建築してたんだな。
「あれ、確か国木田君─」
『臨時ニュースです。超巨大隕石が横浜に向けて落下していることが判明しました。隕石が回避できる確率はほぼゼロと政府の見解は…』
突如流れてきたラジオ。
隕石が降ってくるとか凄すぎるな。
そう、人生に何回も経験できることではない。
僕が呑気に小説を読んでいる間、四人は太宰君を急いで机から引き剥がそうとしていた。
中々離れない太宰君のせいで、人類滅亡(するかも)のカウントダウンは進んでいく。
「─仕方ない」
そういう面倒くさいところも治ってくれたら良かったのに。
小説を机へと置き、太宰君の元へ向かう。
敦君達を避けさせた僕は──。
「ひぃ!?」
──太宰君の脳天へと踵落としを決めるのだった。
敦君と谷崎君は頭を抱えている。
国木田君と賢治君も痛みを想像してか、あまり顔色は良さそうではなかった。
ちなみに太宰君はクラッ、と頭を抱えながらそのまま後ろへと倒れた。
怪我させるわけにはいかないので、そのまま異能空間へと転送する。
彼処には仕事なんてない。
『速報です! 隕石は軌道を変え、衝突は免れました。奇跡以外の何物でもないと有識者は…』
地球は滅亡の危機を免れた。
指を鳴らすと太宰君は戻ってきて、まだ蹲っていた。
座ってる太宰さんの脳天に踵落としって、結構ヤバくね?
足上がりすぎだよ、ルイスくん。
#11 Qの素敵な一日
「文豪ストレイドッグスわん!」の内容です。
連載中である「英国出身の迷ヰ犬」の番外編になります。
オリキャラ注意。
英国出身の迷ヰ犬
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ルイスside
Qの異能である『ドグラ・マグラ』はとても恐ろしい異能だ。
それは、敵味方無差別に襲う精神攻撃。
彼の《《詛い》》を受けた者には掴まれたかのような痣が浮かび上がる。
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
そんな声が、廊下から聞こえてきた。
部屋から顔を出してみると、立原君とQが居た。
「ルイスさん! 俺にQの詛いが!」
「いや、それ以前に鏡見てくることを勧めるよ」
本来なら冒頭で説明したような痣が肩や腕に浮かび上がる筈。
だが立原君には顔面ド真ん中にパーの形になっていた。
堪えることは難しくて、彼には悪いが少し笑いが溢れてしまう。
「笑い事じゃないですよ!?」
とりあえず、と樋口さん達のところへ報告に行くことにした。
もちろん彼女達も笑いを抑えきれない。
「済みません、つい…一体如何したんです?」
「如何したもこうしたも、うずくまっているアイツに気が付かなくてよ、軽く当たっただけだと思うんだが…」
「そんな風に綺麗にパーの形になるなんて《《大当たり》》ですね。チョキとかグーもいらっしゃるんでしょうか…」
その時、部屋の扉が音を立てて開いた。
すぐに芥川君が帰ってきたと気付く樋口さんは凄いが、少し引いてしまう。
中也君とか他の人の可能性もあるのによく分かるな。
「芥川先輩ー!? チョキー!?」
「つまずいて…気付かなくて…」
まさかの同じパターンか。
そういえばQのこと放置したままだったな。
被害が拡大する前にどうにかしないと。
「何てことでしょう、早く何とかしないと!」
「俺と対応違くね!?」
「あの人を探して異能解除するしかないのでしょうか!?」
「ねぇ、俺と対応違くない?」
ドンマイ、と立原君の肩を叩いていると叫び声が聞こえた。
まさかQの被害にあった人がまた出たとは。
「大丈夫ですか、中也さ─」
パー、チョキという順番で来たので次はグーだと思っていた。
しかし何故かダブルピース。
普通に樋口さんはショック受けてるけど、とりあえずの目標は異能解除だろう。
「五大幹部の一角にダブルピースを強要するとは一大事です。早くあの人を捜さないと…」
「合ってるけど合ってない文面」
樋口さんが部屋を出ると其処にはQがいた。
勿論蹴ってしまい、詛いが発動する。
顔面には待望(?)のグーの痣が浮かび上がっていた。
普通に飽きてきたのでQを傷つけないように話し掛ける。
「マフィア内で詛いが発動していて凄いことになってるからさ、普通の部屋でお絵描きしてくれない?」
「分かった!」
Qと手を繋ぎ、元いた部屋へと戻った。
太宰君と出会えるといいな、樋口さん達。
「あら、貴方達ここにいたのね」
「流石に廊下で遊ぶのは危ないから。あの|幼女趣味《ロリコン》が探してた?」
「リンタロウが探していたのはチュウヤなのだけれど…」
その顔どうしたの、とエリスは中也君を見て言った。
仕方なくここ数分にあったことを説明する。
無視するわけにもいかないので、中也君はそのまま首領執務室へ向かうのだった。
「ねぇキュウサク、次はリンタロウを…」
「ほうほう…」
最近のちびっ子(13歳と異能生命体)って凄いな。
とんでもないこと話しているんだけど?
まぁ、とりあえず首領にご愁傷様とでも言っておこう。
Qちゃん可愛い。
エリスちゃん可愛い。
まだ二人とも英国出身の迷ヰ犬に出せてないけど…
#12 ごろごろウォーズ
「文豪ストレイドッグスわん!」の内容です。
連載中である「英国出身の迷ヰ犬」の番外編になります。
オリキャラ注意。
英国出身の迷ヰ犬
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ルイスside
「で、これは一体どういうこと?」
探偵社のいつもの面々があらゆる場所で眠っていた。
「実は皆さん悪霊に取り憑かれてまして…」
「は?」
一人だけ無事だった敦君から色々と教えてもらった。
取り憑いたのはナマケモノの悪霊。
ナマケモノと言えば一日二十四時間は動かないといわれる、のんびりとした生物。
敵の最後の悪あがき、らしい。
怠惰にして仕事を妨害してやろう、とでも思っていたんだろうな。
「今日出社してるのは?」
「えっと、此処にいる太宰さんと鏡花ちゃんと乱歩さんと国木田さん以外だと与謝野さんですかね」
「成程。業務を停滞させるわけにもいかないし、敦君は外回りにでも行ってきてよ」
今日軍警から入っていた任務の資料を渡す。
「でも…」
「事務作業なら僕一人で大丈夫だよ。多分、悪霊にも取り憑かれないだろうから」
頭にはてなマークを浮かべながらも、敦君は外回りへと向かう。
現在取り憑いているのは国木田君。
他の人がまだナマケモノ状態なのは霊の残留思念のせいかな。
「…僕に取り憑くかい?」
そう声を掛けると、黒い影が目の前に現れた。
これが悪霊か。
ナマケモノの姿をしていないということは、大して強くはないだろう。
「悪いけど、そういう訳にもいかないんだよね」
「ふわぁ、よく寝たぁ…」
「あ、与謝野さん」
軽く今の状況について説明する。
すると彼女は笑みを浮かべた。
「一度霊ってのも解体してみたかったんだよ。バラされるかい?」
「…あらら」
成仏してしまったか。
どちらにしろまだ皆は戻りそうにないし、事務作業をしよう。
そもそもナマケモノの悪霊って何?
睡眠妨害でもされたの??
#13 おつかい大作戦
「文豪ストレイドッグスわん!」の内容です。
連載中である「英国出身の迷ヰ犬」の番外編になります。
オリキャラ注意。
英国出身の迷ヰ犬
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与謝野side
そろそろ備品の買い出しに行かないとねぇ。
何かと忙しくって、全然出かけられやしない。
「如何したモンか…」
「僕が頼まれてあげよっか!」
買い出し、と乱歩さんが現れた。
妾の悩みなんてお見通しか。
「でも良いのかい? 乱歩さんに頼むなんて」
「ちゃんと社の誰かにお使いに行くように頼んでおくよ!」
あ、乱歩さんが買い物に行ってくれるわけではないんだね。
それじゃあ、と行ってしまった乱歩さん。
「…大丈夫かねぇ」
「どうかした?」
ルイスさんが珈琲を淹れてきてくれた。
受け取った妾は乱歩さんに買い出しを頼んだことを伝える。
ちょっと心配だと言うと、ルイスさんも同意してくれた。
人によっては、聞き間違いとかで変なものを買ってきそうだ。
「まぁ、もし違ったら違ったで帰りにでも買いに行くんだけどねぇ」
「一応見守ろうか?」
少し悩んだけど、ルイスさんに行かせるわけにもいかない。
気持ちだけ受け取っておくことにした。
乱歩side
与謝野さんの買い物、誰に頼もうかな〜。
「おっ、あれは」
賢治くんが丁度いいところにいた。
買い物を頼みたいことを伝えると快く引き受けてくれる。
「与謝野さんがね、新しいかるてとはさみが欲しいんだって」
「分かりました!」
賢治side
「─あ」
しまった。
今から現場に向かわないとでした。
「お使いしてからだと間に合いませんね…」
「何かトラブルか?」
「国木田さん!」
僕は国木田さんに状況を説明する。
すると買い出しは何とかしてくれるらしい。
「何が必要なんだ?」
えーっと、何でしたっけ。
「あ、かるびとはらみが必要だそうです」
「そんなもの与謝野医師は何に使うんだ?」
「焼肉でもされるんでしょうか?」
「備品が必要なんじゃなかったのか?」
国木田side
「起きろ、この唐変木が」
相変わらず仕事をせずにダラダラと横になっている太宰。
いやまぁ、この前(#10 世界滅亡の日を参照)のように仕事をすることで隕石が降ってきても困るが…。
それとこれは別の話だ。
「ありがた〜い買い出し部隊だ。謹んで拝命されろ」
「えぇ、何買ってくればいいの?」
「与謝野医師が焼肉用のカルビとハラミをご所望だ」
何で、と珍しく太宰がツッコミを入れた。
しかし俺に聞かれても理由は分からん。
「焼肉を食べないと死ぬ患者でもいるんじゃないか?」
「そんな病気、私が罹りたいよ!」
とにかく、と太宰に伝えた俺は仕事をすることにした。
太宰side
本当、国木田くんは人使いが荒いなぁ。
其処にいた敦君に任せちゃおうっと。
「何を買ってくればいいんですか?」
「牛。一頭で良いと思う」
「お小遣いで買える範疇超えてませんか!?」
「何してるの、君達」
その時、ルイスさんが丁度やってきた。
ルイスside
「─牛?」
「ボクを揶揄ってますよね、絶対」
牛なんて絶対必要ないでしょ。
そもそも経費で下ろして良いようなものじゃないし。
まぁ、ツッコミを入れるのも面倒なので放置するけど。
「それで、与謝野さんは何がいるんだって?」
敦君が探偵社をでた後、僕は太宰君に尋ねた。
如何やらカルビとハラミらしい。
いや、絶対違うな。
与謝野さんが欲しがりそうで名前の似たものは─。
「あぁ、|診察録紙《カルテ》と鋏か」
漫画だと、敦君は本当に牛を買ってきたんですよ。
正直そんなにお金を持っていそうには見えない(失礼)
いや、だって一文なしの状態で川辺に倒れてたんですよ?
#14 中也の素敵な一日
「文豪ストレイドッグスわん!」の内容です。
連載中である「英国出身の迷ヰ犬」の番外編になります。
オリキャラ注意。
一応、最終話。
英国出身の迷ヰ犬
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中也side
おいおいおい、嘘だろ…?
勘弁してくれよ。
こんなあからさまに大荷物でございます、ってばーさん初めて見たぜ。
大丈夫か?
「オイばーさん、だいじょう…」
って、俺はマフィアだぜ。
慈善家じゃねェ。
「……。」
ばーさんはふらつきながら歩いていく。
「有難いねぇ」
無視することは出来なかった。
「お兄さんが一寸支えてるだけで、荷物が羽みたいに軽くなっちまったよ」
「あーそうかい」
俺は『汚れちまった悲しみに』を発動している。
「まるで異能だねぇ…若しかしてお兄さん異能力者かい? なんちゃって…」
「手伝って欲しけりゃ黙って歩きな、ばーさん」
「おぉ、ごめんよぅ。つい嬉しくてねぇ。アンタぐらいの年頃の孫が私にも…」
もしかして居るのか?
「居たら良かったんだけどねぇ」
「居ねぇのかよ!」
くそっ、こんなとこ誰かに見られたら…
「……ぁ」
ルイスside
鏡花ちゃんが夕食を一緒に食べないか誘ってくれた。
断ろうかと思ったが、敦君曰く邪魔にはならないらしい。
一食多く作るのも変わらないと言う。
僕の最近の食事と言えばサプリか、栄養を簡単に摂れる奴。
そう言ったら鏡花ちゃんの顔が怖くなった。
無言で圧を掛けてくる。
夜叉白雪で連行されそうになった時は本当に焦った。
|異能空間《ワンダーランド》に逃げようかと思ったぐらい。
「すみません、異能空間に入れさせてもらって」
「気にしなくていいよ」
僕は敦君と買い出しに来ていた。
夕飯をご馳走になるということで、食材代ぐらいは出させてもらったのだ。
それに、あそこは時の流れが現実とは違う。
冷蔵も冷凍も、どれだけ買ってもゆっくり買い物が出来るのだ。
「──あれ?」
見覚えのある帽子がお婆さんの後ろに見えた。
僕が足を止めると、もちろん敦君も止まる。
あ、こっち見た。
「ど、どうも〜。こんにちは、さようなら、」
「おい待て探偵社の! それにルイスさん!」
スタスタと逃げようとする敦君の肩が中也君に掴まれた。
僕は元々逃げるつもりはなかったので、その場に立っている。
「違ぇんだよ、これはお前…」
「別に僕ら、勘違いなんてしてないよ?」
「そうですよ! 恐ろしいマフィアと言っても、優しい所もある温かい人なんだってちゃんと判りました!」
「それだよ|手前《テメェ》!」
敦君の天然(?)が発動。
中也君は困惑した。
「いいか、良く聞けよ。俺はポートマフィアだぞ!? 目的のためなら汚い事だってする! 悪だ! それがだ! 荷物抱えたばーさんを助けましただぁ? かっこ悪いだろうがー!」
「現在進行形で人助けしてる人が何か言ってるー!」
「ルイスさん!?」
どうして煽るようなことを、と敦君はオドオドしていた。
中也君の矛先が敦君に向いたところで、僕はお婆さんに話し掛ける。
「いやぁ、嫌がらせの為とはいえ其処までやるなんて、ある意味尊敬するよ」
「おや、何のことかねぇ?」
僕はため息をつくことしか出来なかった。
「手前、このことは誰にも言うなよ。特にアイツだ! あの野郎には絶対言うな!」
「だ、太宰さんのことですか?」
「アイツがこれを知ったら数年はからかってくるだろうよ」
その時、うふふとお婆さんが笑った。
中也君は少し前から荷物に異能力をかけていない。
「あれ、そういえばお荷物大丈夫なんですか…?」
「平気さ、敦君」
メリッとお婆さんの顔が《《剥がれた》》。
中から現れたのは太宰君。
もちろん中也君はお婆さんが太宰君だなんて微塵も思っていない。
声にならない声が街に響いた。
「私の変装技術も捨てたものじゃないだろう?」
「骨格から変わってましたよね!?」
「僕には判ったけどね」
「何でですか!?」
敦君のツッコミは今日も健在か。
「本当は優しくてあったか〜い中也君について、探偵社に報告しようか」
「いや、僕らは社員寮に帰るから」
じゃあね、と敦君と歩き出す。
後ろからは色々と物騒な声が聞こえたが、聞こえないふりをし聞こえないふりをした。
短い?
私もそう思います。
さて、ここでクーイズッ!
なぜ今日の小説はこんなに短いでしょーうか!
ヒントは本編が短くて増やそうとしたけど、良いのが思い浮かばなかったから!
あ、答え言っちゃった☆
てことで、まえがきでも言いましたが『一応、最終話』です。
春休みが終わる、ということで『わん!』はこれで終わります。
次が『文スト保育園』だったんですけど、元の予定であった14話で終わらせていただきます。
もしかしたら、夏休み企画とかで続きを出すかもしれません。
まぁ、その頃にはもっとルイス君について明かされていることでしょう。
それでは、またいつか平和な『わん!』の世界でお会いしましょう。
以上、海嘯でした。