都立翡翠が丘高等学校ニ年の、俺、前坂柊斗はニ年ながらも研究部の部長だ。何故かって?それは部員が俺しかいないからだ。そんなある日、突如部室に押しかけてきたのは、不思議ちゃん転校生、雛月翠で・・・!?
11/17:主人公目線ではなく、「語り手」目線にしました。
続きを読む
閲覧設定
名前変換設定
この小説には名前変換が設定されています。以下の単語を変換することができます。空白の場合は変換されません。入力した単語はブラウザに保存され次回から選択できるようになります
1 /
目次
雛月翠の爆誕
第一話目は分量長くなる病を患っているので長いです(?)
今日も一日が始まる。
まあ、始まってほしくないが。
|前坂柊斗《まえざかしゅうと》は少しおかしな制服に袖を通し、家を出た。
---
都立翡翠ヶ丘高等学校。ここは、比較的頭が良い生徒が通っている、いわば名門校だ。柊斗もここに通っている。…ホントは通いたくなかったけど。
ここは、名前の通り、少しヘンテコな学校だ。てかなんだよ『翡翠ヶ丘』って。『ヶ丘』がつくのきっと自由が丘ぐらいだろ。
生徒達もだいたいおかしい。成績優秀なのに何かと勉強の他に頭を使いたくないからか、勉強以外の点で何かと欠けている。そんな学校だ。
だから、そんな馬鹿げた高校に入りたくなかったのに。父め、覚えてろよ。
---
ホームルーム時。担任の河野から何やら話があった。
「今日は転校生を紹介したいと思いま〜す。」
転校生か。誰だろう。
「さ、入ってらっしゃい。」
「はい、なのだ!」
…なのだ?
口調からして女子だ。でもこの口調からして絶対変なやつだと柊斗はこの時点で痛感してしまった。
しかも、その予想は見事に的中していた。
ドアが横にスライドさせられたと思うと、そこから小さい女の子が登場した。
ち、ちっさ。
彼女が教卓の前に立つと、黒板にすらすらと文字を書き、
「翠の名前は、|雛月翠《ひなつきすい》と言うのだ!どうぞ、よろしゅうな〜。」
やっぱ変なやつだった。
しかし、周りからは「可愛い!」だの「ちいさ!」だの言いながら盛り上がっている。
すると、河野が手をパンッと叩き、
「はい、皆さん静かに。では、雛月さんはえっと…あ、前坂くんの隣ね。」
「は〜い!」
なんか幼稚園児に話をしてるみたいな光景だなこれ。
すると、雛月はこちらに来て、
「これからよろしくのだ。」
とはにかみながらそう言った。
「…ああ。」
嫌な予感しかしない。
---
授業が終わり、皆が部活へ行き急ぐ。そんな中、俺はのんびりとした足取り、である教室の前に向かった。看板には、『理科室』という文字。入ると、静かな部屋に一つの光が差し込んでいた。
「さて、今日は何をするかな。」
ここは、柊斗が所属している『研究部』の活動場所。研究なので勿論『理科室』で活動している。
「もう4月は過ぎたし、今日も俺一人の活動、か。」
去年までは4人で活動していた。しかし、それは俺と三年生三人だけだったから、その三年生が今年で居なくなり、俺だけ、となっている。もう一ヶ月以上一人だし、孤独感もないが、
「流石にちょっとメンタルが」
来てた。
(まあでも今更入るってやつはきっといないはず_。)
そのときだった。
--- バァンッ ---
「!?」
突然ドアが開き、俺は目を見張った。
「**たのも〜っ!**」
アニメチックな声が理科室中に響いた。
「翠は、雛月翠というものだ〜!誰かいるか〜!…む?」
翠は柊斗の存在に気が付くと、きょとんとした顔で柊斗を見る。
「お前は確か…、翠の隣の前坂か!?」
「あ、ああ。そうだが、なんでお前がここに…?」
「**決まっているであろう!研究部に入部したいから、なのだ!**」
新シリーズ始まりましたねー!
これからどんな展開になっていくか楽しみに待っていただけると嬉しいです!
コメントも良ければください〜!
雛月翠は所属したい。
すご〜く長いです☆
「…は?」
柊斗はちゃんとその言葉の聞き取った。そして理解したつもりだが…。
いや!こんな語尾なのだ不思議っ子転校生が!?この部員一名研究部に!?
なんかそういう系が好きそうな感じがしてなくもなかったが、まさかこんなことになるなんて。
これが『運命』ってやつだろうか。それならとんだ運命だな。
「だーかーらぁ!翠は研究部に入りt、むぐ」
「それはわかった!」
柊斗は翠の口を塞いだ。これ以上大きい声を出されると逆に迷惑だ。
「はぁ…、でもなんでこんな、他の部活よりもしょぼい『研究部』なんかに。」
「そんなの決まってるであろう!」
コイツ、どんだけ語尾に種類があるんだ?
すると、翠は膨らみの少ない胸を堂々と張って、こう宣言した。
「**世界中のあらゆる不思議を解明したいから、なのだっ!**」
・・・
・・・何言ってんだコイツ。
「…あのなぁ、世界中の不思議ってお前」
「だから、前坂。翠に力を貸して欲しいのだ!」
いやお前、そんなこと言える立場じゃないからな。特に身長の面から。
「て言われてもすぐ入部することは出来ないからな。」
「…へ?」
そう鋭い言葉を言い放ってみると、雛月はさっきの様子とは打って変わって間抜けな声を漏らしたのだった。
---
翌日。雛月翠の仮入部が始まった。
柊斗が部室に入って、一息付いたあと、ドアの音が響いた。
「お邪魔するのだ〜。」
「お、雛月。」
「前坂、今日からよろしくなのだ。」
「ああ。」
今日から雛月は一週間仮入部をすることになっている。仮入部期間が終わったら担当教師に許可を取るという流れだ。まあ、研究部の担当教師は色んな部活を掛け持ちしているため、様子を見に来るのは一ヶ月に一回ぐらいだけど。
「ということで、今日は何をするのだ?」
「まあ、研究部は個人で活動するからな。ちなみにこっちの部屋でやる。」
と、理科室の隣の部屋に案内すると、
「…ふおお〜っ!」
と、変な声で雛月が声を上げた。
「ここって…!」
「いわゆる研究室だ。最近ここで活動してる。なんか雰囲気出るだろ?」
「__…やっぱり私が思っていた通り__」
「?雛月?」
「あ、いやっ、、なんでもないのだ。」
と薄っすらはにかんだのだった。
---
1週間後。雛月の運命の日がやってきた。
「そろそろ来ると思うが…。」
すると、ガチャとドアの開いた音がした。それは重く鈍い音だった。
振り向くと、肩をがっくり落とした雛月の姿があった。
「・・・。」
「っ…、雛月、、。」
顔が見えない状態でそっと声を掛けると、パッとその顔を上げて今にも泣きじゃくりそうな顔を浮かべた。
「…っうあ〜ん!先生達審査厳し過ぎだろぉぉぉぉ。」
「…。」
俺はただただ黙り込むことしか出来なかった。
「なんなんだよ。|私《・》は真剣に取り組んでるのに、。ぐす」
「…。」
一人称が『翠』ではなく『私』に変わったのがさっきの言葉ではっきりと分かった。
コイツの本当の自分は今俺に見せている|雛月《コイツ》だろう。
でもなんでわざわざそんな…
考える暇もなく俺は雛月に向かって言葉を発していた。
「**…雛月はどうしてこんな学校に、転校してきたんだ?**」
「!」
雛月は一瞬、驚いたような顔をしたが、涙を拭って俺の方を見ながら_、言い放った。
「**ここの研究部に、入りたかった、から。**」
「!」
いつもとは違った少し鋭い目つきだった。何か柊斗に訴えるようなそんな目を_。
すると、雛月が目線を下に落とした。前髪が長いためあまり見えなかったが、さっきまでうす青緑色をしていた色彩が黒を多く入れた、さっきの色とは全く違う悲しく儚い、濁った色に移り変わっていた。
「…っ。」
その目に俺は息を呑む。すると、雛月の口が少し開いた。
「…私の高校では科学部が無かったんだ。一年生のとき、あるきっかけで科学に興味を持った。だけど、私の家の周辺には科学部のない学校ばっかで…でも唯一あったのがこの学校だった。嬉しかった。でも、結局遠いし、今の家から通うのは到底無理だから引っ越しもした。偏差値めっちゃ高かったから、一年のうちにたくさん勉強して、やっとの思いで受かったのに…、なのにっ…。。」
あまりにも思いが抑えきれなかったからか、嗚咽が混じった小さい声が俺の耳に届いた。
ハッとする。雛月は本音を打ち明けてくれた。裏ではこんなにも努力していたのだ。ここの学校の研究部に入部するために、引っ越しもして、勉強もして、受かって…。そんな思いを真正面から受け止めた俺は、言葉も出ないどころじゃなかった。
「…っ。」
俺は歯を食いしばると、いつの間にかドアの前に立っていた。
「…?前坂」
「…行くぞ。」
「…ふえ?」
振り返るときょとんとした雛月の姿。そこに俺は少し笑みをこぼした。
「いいから、ついてこい。」
「…なんなんだ、その口調。」
「ぐ。」
異世界ゲームでの魔王プレイみたいな口調がどうやら見破られたらしい。
「…ま、まあとにかく。担当教師んとこ行くんだよ。」
「な、なんで前坂が…」
「**決まってるだろ。雛月を、正式な部員にするためだ。**」
「!」
雛月は目を見開いた。そして、ほんのりと、はにかんだ。
すると、俺の心臓の鼓動がドクンと大きくこだました。
にへらと、柔らかく微笑んでいる雛月の顔に、思わず頬が赤くなるのを感じる。
ああもうなんなんだコイツは。
コイツが俺の世界に入り込んだせいで、俺の世界がだんだんと変わっていくような感じがした。
思った以上に長くなりましたね、うん。
これでも抑えたつもりです^^;
では次回また会いましょう!コメントも是非くださいね!
雛月翠は信じたい。
職員室前に到着した二人は、真っ先に担当教師の元へ向かった。
そして、かくかくじかじか、30分講義の結果___。
「やったーぁ!!!!!」
「…はあ。長かった。」
翠の努力が認められ、無事、研究部に入部することが出来た。
「…ありがとう。前坂っ!」
いつもの『雛月翠』は何処に行ったのか、と言わんばかりに語尾なのだが付かない『本当の雛月翠』をあらわにした彼女を見て、柊斗は思わず微笑する。
「別に。でも報われて良かったな。」
「うん!」
元気に返事をした翠は、突然、はっとした表情を見せた。
「あ、、、っ。そーなのだっ…!」
「いや、今から弁解しようとしても無駄だからな?」
「う、。」
言葉に詰まる翠を見て、柊斗は苦笑した。
「あと、えと、その、、、。」
『|雛月翠《語尾なのだ不思議ちゃん》』はあくまで設定だったらしい。
『本当の雛月翠』はただのちっこい女子高校生、なのだ。
「別に、良いんだぞ。俺に対しては、その、。」
「?」
柊斗は翠から目を逸らしながら、ぼそぼそとした声で、言った。
「|雛月翠《本当の自分》をさらけ出しても…。」
翠は目を丸くした。その、真っ直ぐな言葉の矢は翠の心をすっと、射貫いた。
「あんなんじゃなくても…?」
「…ああ。俺はお前が、雛月が俺に対して、お前の本心をさらけ出してくれたのが、その、嬉しかった。」
「…。」
「だから、その!設定なんて作らないで…、表の顔だけを見せるだけじゃなくて、裏の顔も見せて欲しいなぁって…」
「…。」
「…なんか言えよ。気まずいだろうが。」
「…続けて。」
「…お前だって不安だろ。」
「…!」
翠は顔を上げた。
「お前だって、こんな世界入ったとしても、最初は誰も味方してくれないんだ。俺だって…。だから、俺がお前に味方してやるって言ってるんだ。」
あれ、なんでだろう。こんなの、いつもの俺じゃ…
「…前坂も、なんかいつもと違うぞ。」
「…っ。」
「…私も嬉しいよ。前坂の本当の自分、私にさらけ出してくれて。」
「!」
声が、言葉を発しなかった。
口が動かなかった。
「 **じゃあ、信じる。前坂が言ったこと。**」
「ちゃんと保証してよね?」
この言葉を聞いた瞬間、柊斗は『本当の雛月翠』がはっきりと見えたことが分かった。
これが、雛月翠。身長が小さいながらも、努力家で決めたことには真っ直ぐ前へ突き進んでいく、そんな女の子。
--- これが、雛月翠なのだ。 ---
なんか、変な回になりましたね…。。深いなぁ…。
次回もお楽しみに!
コメントとかも是非!
あと、更新めっちゃ遅くなって申し訳ないですm(_ _)m