《死要望対応ロボット》として開発されたAI人型ロボット「hayase」。
『HANABANA』という病院で働いており、手足を無くしたり、心の病を抱え、「死」を望む人達を「介処」と言われる自らの手で生きた人を殺して要望に応える、「心」を持ったモノには出来ない事をやらされている。
そんなロボットが自らの手で殺さなければならない人達と期間中一緒に生活をしていく事で「心」を宿らせてしまう。
『HANABANA』を退職させられ、住む場所を無くした「hayase」を拾った野宿 家族亡き少年と一緒に成長していく物語。
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絡繰少年 成長:①
《死要望対応ロボット》として開発されたAI人型ロボット「hayase」。
『HANABANA』という病院で働いており、手足を無くしたり、心の病を抱え、「死」を望む人達を「介処」と言われる自らの手で生きた人を殺して要望に応える、「心」を持ったモノには出来ない事をやらされている。
そんなロボットが自らの手で殺さなければならない人達と期間中一緒に生活をしていく事で「心」を宿らせてしまう。
--- ピピピッッピピピッッピピピ ---
鳴り響く朝の機械の鳴き声。コレは人を起こす為にあるらしい。
僕は此処にいる人はわざわざ僕の手を血で汚すくらいなら一生機械に起こされずに寝てればいいと思っている。
だが、
---
「なぁ。君は患者が死にたいと本気で思っていることを考えた事はあるかい⁇」
---
以前、明日殺さなければならない「高齢者」の男性が僕に言ってきた。
僕は《死要望対応ロボット》E30型で、この仕事に就くロボットのほとんどの型だ。
「人」の癒しの為に造られた「心」を持つことが出来るロボットとは違い、
「心」を持ってしまうロボットもあるが、製造三年目を過ぎると持つ事はない。
E30型は、製造三年目の状態で、99%の確率で「心」を持たない。
僕は今年で製造五年目。もう「心」を持つ事は不可能である。
だが、彼の言葉で僕のAIプログラムの歯車が暴走する様に機転を変えた。
何かは分からない。だが、異変が感じ取れる事は確かだ。
院長はその事を分からなくて良いと言った。
---
この仕事に慣れてしまう事さえも良いと言った。
---
以前までの僕は患者の言葉など、考える前に覚えてすらいなかっただろう。
愚痴を言われたとしても、「心」が無いから、その人の「心」について考えたり、共感したりする事すら出来ないのだから。
僕のプログラムにはそんな機能は無い。
---
と、思っていた。
---
「介処を開始します」
‥‥‥‥…………………………………………………………………………………
いつもなら始まったと同時に動いていた手が動かない。
いや。「手」では無い。「凶器」だ。
「どうした。hayase。さっさと終わらせろ」
--- どうしただと⁇ ---
今まで何となく着いていけばなんとかなる。と感じた時から院長が言ったことが全てだと思っていた。
正確なのは院長だと…………
深く考えれば考える程腹が立ってくる。
僕には分からない。だけどコレが
---
「心」というモノなのであれば。
---
僕は、
---
「心」を持った。
絡繰少年 成長:②
《死要望対応ロボット》として開発されたAI人型ロボット「hayase」。
『HANABANA』という病院で働いており、手足を無くしたり、心の病を抱え、「死」を望む人達を「介処」と言われる自らの手で生きた人を殺して要望に応える、「心」を持ったモノには出来ない事をやらされている。
そんなロボットが自らの手で殺さなければならない人達と期間中一緒に生活をしていく事で「心」を宿らせてしまう。
すみません。もう僕には出来ません。
言いたかった。叫びたかった。今すぐにでも辞めたかった。なのに、
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「お願いだ。すぐ殺してくれ。」
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人の願いは叶えるのが僕の仕事だ。
僕が開発された理由は人の願いを叶える為だ。
---
だけど。僕を変えてくれた人の、手という名の凶器で血を見たく無かったから。
人間にも出来るが、数は少なく、緊急事態が発生した時しか使ってはならない、
|眠死注射《永遠に眠らせる事が出来る注射》を使った。
---
「どういう事だ」
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「それは「心」をもった人が使いたいという欲望をもつもの………」
「お前。「心」が出来たな」
---
もう院長の話とかどうでも良くて、今まで自分がやってきた事に気づく。
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『なぜ、僕はこんな所でこんな事をしているのか。』
『僕は造られない方が良かった』
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今まで考えるきっかけすら無かったモノが、こんな風に考える日が来るなんて。
五年前の僕にでも言っておきたい。
「心」からそう思うよ。
廊下を歩くスリッパの音が次第に大きくなり、それと同時に手足の震えが止まらない。
---
「心」を持つとこの仕事に支障があるから辞めさせられるんだ。
そんな事分かっているんだ。
だけど、自分の気持ちを抑えられる程僕は有能なロボットでは無い。
---
今は今の事じゃなくて、これからどうするか考えている。
これまでやってきた事ではなく。
ほら。僕はこうなんだ。
いつも人の事より自分のことなんだ。
別に有能では無いはずなのに。
生きたいと思っている人間よりは格下なのに、此処の場では要望に応えて《《あげる》》僕の方が格上だと思っている。
---
ほら。僕はいくら頑張っても「人」には慣れないんだ。