この世は希望だけじゃない。
第一章 現実離れの日常を。
(第一話〜第九話)
第二章 疑いはいつしか確信に。
(第十話〜)
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目次
第零話 『この世にさよなら』
--- 「市民を守る為に我々は存在するのだ!!」 ---
謎の生物による侵略が続き、人間が何千人しか残っていないようなこの国で一番偉い彼女がそう言った。
彼女は「魔法少年」達を導くトップである。
この国を守る為に今まで何人も「魔法少年」の犠牲が出ているが、そんな彼らのおかげで私達は生きていける。希望を見ていられる。
彼らも魔法少年になれて嬉しいはずだ。お偉い方がそう言っていたのだから。
でも、私は知っている。
希望だけがこの世の全てじゃない、と。
---
「はぁッ、はぁッ、」
手が震える。
もう覚悟を決めたはずなのに。
「やめろ《《ヒロ》》!その銃を降ろせ!」
「‥ごめん、《《リウ》》。降ろせない。」
「どうして!!」
何年もずっと一緒だった目の前の彼は、目に沢山の涙を溜めて僕に話しかけてくる。
僕だって死にたくない。
でも、希望のないこの世にもういたくないんだ。
「リウ、今までありがとう。」
目から涙が零れ落ちてしまう。
これじゃ、死にたくないのが丸わかりなのに。
でも僕は死ななきゃいけないんだ。
「やめろ!」
「ばいばい、リウ。」
「やめてくれ!!!」
友の手が僕の手に届く前に引き金を引いた。
バンッ
そのすぐ後には銃声が響き渡り、僕の側頭部からは血が吹き出した。
自分の涙で最期の景色は何も見えなかった。
この苦しい世界からは、もうさよならだ。
メモ1 『魔法少年とは』
メモで作中に出てきたキャラや組織、言葉の説明をしていきます。
「魔法少年」
数年前から出現するようになった化け物から街を守るため、戦いに行く16〜20の少年達の事。
魔法少年になる事に拒否権はないようだ。
連れていかれた後は動物との融合が成功するかを試される。動物との融合に成功した者のみ、その先を知る事が出来る。成功しなかった者はそのまま死んでしまう。
魔法少年になった後は本名ではなく、魔法名と言う別の名前がつけられる。魔法少年の間はその名で暮らさなければいけない。
「ヒロ」
17の少年。
自分より友人の性格をしており、狐との融合に成功したNo.302215。
本名は|宮野千冬《みやのちふゆ》。
「リウ」
17の少年。
仲間想いだが少し強引な性格をしており、兎との融合に成功したNo.302205。
本名は|楓山司《あきやまつかさ》。
第一話 『出会い』
「‥はぁ」
帰路で一人、ため息を吐いた。
学校なんてつまらない。
友達もいない。知り合いもいない。
そんな場所に行くくらいなら「魔法少年」とやらになってみたい。
学校に行かなくて良くなる。勉強なんてしなくて良くなる。苦しまなくて良くなる。
戦闘とか、なんか簡単そうだし。どうせ死なないでしょ。怪物がどんなかとかは僕ら一般市民が知れることじゃないけどさ。
あぁ、「魔法少年」しかいけない街にいってみたい。この生活から逃げ出したい。
勉強なんか、もうやめたい。
「‥ん?」
いつの間にか駅まで来ていた。
僕の家は駅から離れているから早く戻らないと‥
「‥」
駅の広告にこんな変なデカい兎の広告なんてあったんだ‥凄い、なんかキモい。
「あ、早く帰らなきゃ」
こんな広告見てないで早く帰らなきゃ‥そうじゃないと今日の買い出し当番が僕になる。それだけは嫌だ、まだ洗濯畳み係の方がいい。
「‥あれ、君君〜!私の事見えてますよね〜!」
「‥」
「お〜い、ちょっと〜!」
違う違う違う、僕ちょっと疲れてるんだ。
あの広告にいた兎が喋ってるとかそんなわけないよ。うん、ないない。
そう思いながら僕は歩くスピードを徐々にあげていった。
「だ〜か〜ら〜!」
--- パリーン‥ ---
「私の事、見えてますよね!」
「‥は、」
何かが割れるような音がした後、僕の目の前にはさっきの兎が立っていた。
「いや、ちょっ!?」
周りの人とかなんか言わないの‥って、誰もいない!?なんで!?
「こんにちわ!あなたに用があって来ました!」
「いや、貴方が誰かとか僕知らないですし‥それに、周りの人は‥?」
「あぁ!周りの方々は話の邪魔なので一旦変えてもらいました!」
「消え‥!?」
なんでこんな簡単に消したとか言うんだこの兎‥
「そんな事より私の話を聞いてください!聞かなかったら‥カチャあなたの頭に穴があくかも‥しれないですね?」
「き、聞きます聞きます!!」
選択肢がはいかYESしかなかった‥はいかいいえがよかったなその選択肢‥
「聞いてくれて嬉しいです!私があなたに話したい用事とはただ一つ!」
--- 「魔法少年になっていただきたいのです!」 ---
「‥え?」
僕が、あの魔法少年に‥?
第二話 『魔法少年』
「魔法少年って‥アレ、だよね‥?そのまんま‥?」
「はい!皆様ご存知の街を救うヒーロー、魔法少年です!」
「僕に、その魔法少年になれって‥?」
「はい!」
「な、なんで?僕以外にもいい人は沢山いるし、例えば日向君とか‥」
「日向?‥‥‥あぁ!あの方でしたか!」
「日向君の方がずっとカッコいいし、人気者だと思うんだけど‥」
「ですがあの方、あなたを虐めてますよね?」
「い、いじめって‥そんな大きな事じゃないよ。少し、パシられるくらいだし‥」
お金くれないから僕が払って持ってきてるだけ。
いじめって暴力とかそういうのでしょ‥
「物を奪われたりとお聞きしましたが?」
「それは、日向君が困ってたんだよ、きっと。だから貸してあげただけ‥だよ。」
本当に、ただそれだけ。
あの日一日筆記用具無しで過ごしたけど、日向君は困ってたんだ。だから僕は取りに行かなかったし。
‥授業中に、日向君がいつも使ってる筆箱を使ってたのだってきっと見間違いで‥
「でも彼、その日中自分の筆箱を使っていました。これはあなたを困らせる為に奪っただけでは?」
「‥やっぱ、そうなのかな、」
「そうなのかな?」
「少しだけ、思ってたんだ。『本当は僕を困らせたいだけで悪意を持って奪ったんじゃないか』って。でも日向君、人気者だし‥」
「あらら、重症ですねこれは。」
「‥」
「日向とやらに縛られてはいけません!あいつは根っからのいじめっ子です!あなたが思い悩んで苦しむ事を楽しみにしている極悪人!」
「ご、極悪人って‥」
「本当はあなただって心の底では思ってたんじゃないんですか?『日向さえいなければ』なんて!」
「‥ちょっと、だけだけど。」
「では消し去ってしまいましょう!」
「え!?」
こ、殺すって事‥!?
「あ、日向さんを殺すのではなく、あなたを魔法少年だけの世界に連れて行きましょう、という事です!そうすれば日向さんと会わなくてすみますよ!」
「‥本当に、」
「はい?」
「本当に、その世界には日向君がいないの?」
「はい!もちろんです!我々が招待した者だけが入れる世界ですので!」
「‥」
「いかがでしょうか?」
「‥僕は、僕は、!」
--- 「魔法少年にでも何にでもなってやる!」 ---
第三話 『名前』
「!ありがとうございます!《《平野凪》》さん!」
「‥な、なんで僕の名前知ってるの‥?」
「お誘いする前に少し調べさせてもらいました!なので知ってます!」
「へ、へぇ‥」
とんでもない世界かも、魔法少年‥
「では早速魔法少年の世界に行きましょう!着いてきてください!」
「はいぃ‥」
---
「こっちの方に魔法少年の世界に繋がる扉があるんですよ〜!」
「へぇ‥‥あ、あの、貴方の名前は?」
「はい?私ですか?」
「うん、僕の名前は知られてるけど、貴方の名前は知らないから‥」
「‥‥‥あぁ!私、自己紹介していませんでしたね!」
「うん‥だから名前知りたい、」
「私は『特別部隊ルーチェ』の《《K》》です!」
「K‥?それが名前なの?」
「はい!我々魔法少年のサポート役は、名前の頭文字をとって名前にするので!」
「そうなんだ‥って、行き止まり‥道間違えたの?」
「?いえ、間違えていませんよ!ここであっています!」
「でも‥ここどうみても行き止まりじゃん‥」
「えっと‥あ、ありましたありました。これを使えば道が出ます!」
「‥なにそれ?」
「隊員証です!これをこの壁にかざすと‥」
--- ビュン‥ ---
「うわ‥なにこれ、魔法陣?」
「魔法陣といえば魔法陣かと!これがあちらへの扉になります!」
「こ、これが‥?小ちゃい‥」
「あ、これに入るのではなくてですね、とある言葉を言えば扉へと変形します!」
「そうなんだ‥じゃあ、言ってもらって‥」
「私は隊員証で入る事が許可されていますが、凪様は許可されていません!なので凪様が言う必要があります!」
「そうなの!?‥その言葉って‥?」
「凪様は新入りですので‥『ノーヴァ』です!」
「ノーヴァね?ノーヴァノーヴァ‥」
「あとは、その魔法陣に手をかざして『ノーヴァ』と唱えるだけです!」
「うん‥ねぇ、この世界に入ったらもう二度と、この世界にはこれないの?」
「?まぁ、休暇を貰わないなら来れませんね!でも、大きな戦いの後や、犠牲者が出た場合はこの世界に皆で来ます!」
「そう、なんだ‥ほぼ引き返せないって事だ‥」
「はい!‥今なら間に合いますが‥戻りますか?」
「…ううん、もう戻らないよ。」
この苦しい世界からは、もうさよならだ。
--- 「‥ノーヴァ!!」 ---
--- ヒュン‥ ---
第四話 『知らない』
「うわぁ‥!」
あの扉?の先に広がっていたのは素敵な景色だった。プラネタリウムのようなドームの中に小さなビルがいくつかと大きな五本のビルが立っていて、空はさっきまで昼だったのに、もう夜空になっていた。
四本のビルの真ん中にある一つの大きなビルには、魔法陣のような模様が書かれた旗がある。
まるで近未来的な都市だ。
「あれ‥何?」
「あれとは?」
「あのビル。魔法陣みたいな旗がある‥」
「あぁ、あれですか!あれは《《特別部隊ルーチェ本部》》ですよ!お偉いさん方が中にいます!」
「そうなんだ‥」
「そして凪様はこれから、本部内部にある適合室に行きます!」
「あの中に入るの?」
「はい!」
「‥」
楽しみだけど‥少し怖いな‥
「‥沢山人がいるね、この街にも。」
「勿論です!魔法少年達や私のようなサポート係、お偉いさんなどが集まっていますから!」
「‥そう。」
「さぁさ!では早くいきまs」
--- 「ぶっ殺すぞ!!」 ---
「え、」
「あらら、急になんですか?」
大声のした方を見ると、僕と同じくらいの少年が震えた手にカッターを持ってKみたいな狐に刃先を向けていた。
「‥何が不満だ。お前が望んでここへ来たんだろう。」
「そんなの、望んでなんかない!!お前が勝手に連れてきたんだろ!!」
「あの世界から逃げ出したいと言ったのはお前じゃないか。」
「だからって魔法少年になるなんて言ってない!!」
「あの時壁を通ったんだから覚悟はできていたはずだ。」
「お前が大した説明もなしに背中押したんだろ!!」
狐と少年の言い争いは続いてる。
あの狐が少年の意見を聞かずに連れてきた‥って事かな‥?
「ちょっと、K。あれ誰?」
「少年の方は魔法少年候補でしょう!狐の方は‥私と同じサポート役、《《F》》です!少し強引というか雑な性格でして‥」
「あぁ‥あれ、止めに行った方がいいの?」
「いえ、もうすぐ他のサポート役が来ますので大丈夫です!さぁ、中へ行きましょう!」
「‥す、少しだけ、彼を待っててもいい?」
何故かは分からないけど、彼が気になる。
あの暴れる原因はなんなのか。どうなってFと出会ったのか。それを聞いてみたかった。
「いいですが‥話せないと思いますよ?」
「え?」
「どいつもこいつも、自己中ばっかりじゃねぇか!!魔法少年なんて、さっさとやめてや‥い"ぁ!?」
--- バタン ---
後ろから来た仮面の人が彼の首元にスタンガンを当てた。彼は‥気絶した。
突然の出来事すぎて僕は少し後退りをした。
抵抗すれば待っているのはあぁいう事だ。
抵抗を、辞める事を許さないと言うように、僕はもう引き返せないと認めざるおえなかった。
「彼は適合室より先に治療室に向かうでしょう‥我々は早く行かなくてはいけません。行きましょう凪様!」
「‥うん。」
中で待ってたら、彼ともまた会えるかな。
第五話 『適合』
--- 特別部隊ルーチェ本部〔適合室〕 ---
「‥」
適合室の中には、金属の硬いベット?とモニターしかなかった。凄く寂しい部屋。
「凪様!このベットの上に寝てください!」
「え、あ、うん。」
のそのそと怯えながら寝てみると、やっぱり背中は冷たい。
背中だけじゃない、この部屋の空気も冷たい。見えないだけでエアコンとかあるのかな。
--- ガチャン ---
「え‥」
何かが閉まる音がして自分の手を見ると、両手首、両足首をベットにつけられた手錠のようなもので固定されていた。
足を動かしても腕を動かしても、ガチャガチャ煩いだけで外れない。
「ねぇちょっと、これ何、?外してよ、」
「ごめんなさい、それは外せないのです。適合する為の注射を打つと殆どの人が暴れ出すので‥凪様もそうなった時の為なのです。」
「な、何それ‥暴れるって、そんな危険な注射なの、?」
さっきまでなんとなく諦めてた。
断る・辞める‥Noと言う選択肢がこの世界にないなら、全部受け入れるしかないかって。
でも、これは受け入れられない。
「危険ではありません!失敗しても死ぬわけじゃないので安心してください!」
「じゃあなんで皆暴れるの!?おかしいでしょ!?」
「大丈夫ですって!少し落ち着いてください、注射打ちますからズレたら大変な事になってしまいます!」
「‥っ」
大変な事。
それが何かはわからないけど、彼らは「人が気絶させられる」を大変な事とは言わなかった。
‥そういうことかもしれない。
「‥落ち着いてくれてありがとうございます!では、首元失礼します。」
首に注射の針が刺さる。
刺さった時は痛かったが、針が細いのかあまり痛くなかった。
他の人は注射が嫌だったのだろうか。それか痛みを感じやすかった?
注射の針が抜けていくのを感じた。
「‥終わったの?」
そう言ったすぐ後だった。
身体中に広がるありえない痛み。肉が抉られるような。轢かれたような痛みがだんだん強くなっていく。
暴れてもどうにもならないことはわかっていた。
だけど暴れなきゃ痛みから逃げられない。
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!
「暴れないでください!落ち着いて!」
手錠と足枷に加えて上から抑え付けられたせいで痛みから逃げられない。体を捩れない、痛い。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!」
いっそ死んだ方が楽だと思ってしまった。
---
「‥ぁ”、」
叫びすぎたせいで喉が痛い。
あのあり得ないほどの痛みはもうなくなっていた。
「あれ、目が覚めましたか?」
「‥コク」
「それはよかったです!先程は抑え付けて痛めつけてしまってすみません!」
「‥いや、もう大丈夫、だから。」
「!なんとお優しい!‥あ、そう言えばもう起き上がれるようにしてありますよ!」
「‥本当だ。」
目覚めた後は頭が上手く働いてなくて手錠も足枷も外れてたことに気づかなかったな。
「それでご自身の頭の上を触ってみてください!」
「頭の上?‥何?」
言われたように恐る恐る頭の上に手を伸ばすと、フワフワとした感覚。髪ではない、何か耳のような‥?
「ささ、この鏡をどうぞ!」
Kの持ってきた鏡を見ると、そこに写っていたのは《《兎の耳が生えた》》僕だった。
「‥えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「兎との適合実験、成功です!」
--- 適合って‥こういう事なの!? ---
メモ2 『ルーチェ・サポート係とは』
「特別部隊ルーチェ」
魔法少年達が所属する部隊。
この中で戦闘部隊・潜入部隊・技術部隊・救護部隊に分かれる。
「特別部隊ルーチェ本部」
ルーチェのトップ、各部隊のリーダーが話し合い・情報共有などに使うビル。
中には、魔法少年になる為の「適合室」、救護係では治せない傷や暴れる少年が休む為の「救護室」、話し合い・情報共有に使う「会議室」、ルーチェのトップがいる「隊長室」、街全体に放送する為の「放送室」、隊員に司令する為の「司令室」などがある。
「サポート係」
動物との適合がしっかりと出来なかったから着ぐるみの様な姿になってしまった者達。
新たな魔法少年の捜索・説得・街の案内・足りなくなった物の補充などの仕事がある。
人形から元の姿に戻る事はできない。
「K」
平野凪のサポート係。
ピンク兎の見た目をしており、いつも敬語。
「F」
とある少年のサポート係。
狐の見た目をしており、強引な性格をしている。
第六話 『魔法名』
--- 特別部隊ルーチェ本部 〔廊下〕 ---
「‥兎と適合‥まだ実感湧かないや‥て事は僕、兎人間?」
「まぁそういえばそうかもしれません?(仮)魔法少年ですので!」
「魔法少年‥」
「これからルーチェのトップがいるリーダー室‥ではなく、彼方の名付け室に行きます!」
「名付け室?いや、僕は平野凪って言う名前あるよ‥?」
「あぁ!その本名ではなくてですね、魔法少年として過ごす為の名前を付ける部屋です!」
「‥そうなんだ。じゃあ、もうこの名前は使わないの?」
「はい!元の世界に戻る時以外は魔法名で生活していただきます!他の方に自己紹介する時も魔法名なので本名はトップと、私と、あなたしか知りません!」
「へ、へぇ‥」
「というわけで‥中はどうぞ!」
「し、失礼します‥」
---
--- 特別部隊ルーチェ本部 〔名付け室〕 ---
「‥」
電気のついていない真っ暗な部屋の中心に一つのパイプ椅子と、目の前に大きなモニターしかない部屋。またまた寂しい部屋。
「では、私はこれで‥」
「え、ここって僕一人なの?」
「はい!ここは本人以外が入るのを禁止されていますので!」
「そ、そっか‥それじゃあ、僕名前貰ったらどうするの、?」
「それはご安心を!部屋の外で私が待ってきますので!」
「それなら‥よかった。」
「それじゃあ、失礼してもいいですか?」
「うん、ありがとう‥」
--- ギィ‥ ---
扉が閉まると、モニターの明かり以外の明かりがなくなった。
『平野凪。その椅子に座りなさい。』
「!は、はい!」
モニターから突然聞こえた機械音声に驚いて声少し裏返っちゃった‥
言われた通りパイプ椅子に座る。すると目の前のモニターが少し暗くなった。
『貴方の好きな物は何?』
機械音声が僕に質問をする。
「僕の好きな物‥あ、甘いものとか、冬とか、兎とか‥です。」
『貴方の好きな童話は何?』
また機械音声が僕に質問をする。
「えっと‥不思議の国のアリス、とか。」
『ありがとう。貴方の名前を考えるね。』
音声が終わると、モニターには不思議の国のアリスが流れ始めた。
‥童話の中で好きなのがアリスなだけで、特別好きな訳じゃないんダケド‥
『お待たせ平野凪。貴方の名前が決まったよ。』
「あ、はい‥」
少し目が痛くなってきたところだったからちょうどよかった。
『君の名前は“アリス”だ。大事にしてね。』
その言葉を最後に、機械音声とモニターが消えた。少し待っていたけれど何もつかなかったし聞こえなかったから部屋の外へ出た。
---
--- 特別部隊ルーチェ本部 〔廊下〕 ---
「あ!凪さ‥じゃなかった、お名前貰えましたか?」
「あ、うん。ちゃんと貰ったよ。」
「それでは恒例の質問を‥あなたのお名前は?」
「‥僕は、」
『貴方はNo.302235。No.302235、アリス。』
頭に声が聞こえてきた。テレパシーみたいな‥
『No.302235、アリス。』
僕には新しく番号と名前がついたんだ。
深呼吸をして心を落ち着かせる。なんでもかんでも緊張しやすい僕を僕は直したいと思う。
落ち着いてから、僕は口を開いた。
--- 「‥僕の名前は、“アリス”。No.302235だ。」 ---
第七話 『再会』
「‥って言ったけど‥なんかさっきの自己紹介キモくなかった?」
「キモいだなんて思っていません!カッコいい挨拶でしたよ!『僕の名前は』‥」
「言わなくていい言わなくていい!!‥にしても、あの声なんだったんだろう‥」
「あの声、とは?」
「あ、えっと、No.ってあるでしょ?あれ、僕全然知らないけどなんか頭の中で声が聞こえて‥テレパシーみたいだった。」
「誰かが教えてくれたのでは?No.302235でしたっけ!」
「うん、そのはずだよ。」
「では声の謎も解けたところで!他の魔法少年達が集まっている広場へ向かいましょう、アリス様!」
「‥うん、だけど広場ってどk」
--- 「離せ!!!」 ---
「!」
この声、間違いない。あの時の男の子だ。
やっぱりここへ来てたんだ!また会えた!
「また暴れていますねぇ、あの少年。」
「?」
「彼が抵抗している部屋、あれはさっきまでアリス様がいた名付け部屋です。きっと暗闇が嫌なんでしょうけど‥」
「嫌だ!離せ!!」
「‥耳、あれなんの動物なのかな、」
「狐だと思いますよ!彼のサポート係が狐ですので!」
「あ、これサポート係と同じ動物になるんだね。」
「はい!」
「嫌だ、暗闇の中は嫌だ!!離せよ!!名前なんかいらない!!」
「‥大人しくしろ。電気をつけてもらえるよう頼んだ。少し入って待ってればいい。」
「嫌だ、やめてくれ!!」
「‥」
彼の顔は酷く青ざめていて、目は不安げに揺れている。冷や汗が出ているし眉も下がっている。
‥彼、本当に暗闇が嫌みたい。
「大人しく入れ、待ってれば電気がつくと言っている。」
「だから、つくまで外にいてもいいだろ!!」
「‥あ、あの、!」
「‥誰だお前。」
「ば、僕はアリスです。魔法少年の!」
「あぁ‥Kがサポートの奴か。」
「‥あの、彼のこと離してもらえませんか?」
「は‥」
「‥何故だ。」
「いや、暗闇が嫌そうだし、無理して入れる必要ないなって‥それに、電気つくまで待っていればいいですし、!」
ヤバいヤバいヤバい、見切り発車で飛び出してきたせいで心臓バクバク‥!
『無理』とか言われたらお終いだよ‥!
「‥魔法少年が安心して戦いに出れるようにサポートするのが私達の役目だ。Fがその子を不安にさせてどうする。」
「え‥」
なんでKが乗ってくれるの‥?あ、サポート係だからとかかな‥?んー‥思ってたより優しい。
「だが時間が‥」
「将来の“英雄”の誕生だと思えば時間押しても大丈夫だよ。彼の方だってきっとお許しになる。‥だけど、君が彼を無理やり入れようとしてるなら、お許しにならないかもしれない。」
「‥わかったわかった、離せばいいんだろ。」
「うわっ!!」
彼はいきなり後ろで抑え付けられていた手が離されたせいで前に倒れそうになった。倒れる先は階段‥倒れたら絶対痛い!!
--- ギュッ ---
頭が追いつくよりも先に、体が動いていた。
--- ドサッ ---
「アリス様!!」
「い‥あ、だ、大丈夫、?」
「‥なんで。」
「え?」
「なんで助けたんだよ。お前、俺の事何も知らねぇ他人だろ。そんな奴を態々自分が下敷きになってまで助けるとか‥どうかしてる。」
「あ、あはは‥でも、人が危険な目にあってたら助けたいと思っちゃうんだ、僕。」
「‥変な奴。いつか絶対痛い目あうだろうに。」
「あってもいいよ。だって、魔法少年ってそういうのでしょ?」
「‥」
「ねぇ、君の名前は?」
「‥俺は‥」
「アリス様ァ!!その少年はまだ名付けしていません!本名を聞けばアリス様も少年も身バレしてしまい、危険な目にあってしまうかもしれません!!」
「そうなの!?」
「名付けしてからお名前を聞いてください!!」
「う、うん。‥あ、僕広場ってところ行かなきゃ、!またね!」
「‥」
「アリス様!大丈夫ですか!?頭から血が!」
「え?‥あー‥階段から落ちた時かなぁ‥」
「そんな!私の予備包帯をお使いください!」
「えぇ‥ありがとう?」
--- コツ‥コツ‥コツ‥ ---
「‥お前も行くぞ、|霧島凛《きりしまりん》。」
「‥あぁ。名付け室だろ。」
「電気がついた。早く行かなきゃ集まりに遅刻する。体が痛くてもさっさと上がってこい。これから先はそれより苦しい事が待っているんだからな。」
「‥痛みには慣れてる。」
--- ギィ‥ ---
第八話 『集まり』
良ければ自主企画参加お願いします‼︎
--- 特別部隊ルーチェ本部 〔広場〕 ---
「‥広場って‥本当に広いんだね‥」
学校にあるような朝礼台と桜の木、他にも沢山の花で囲まれた広場。今は冬なのに桜が咲いてるなんて、やっぱりこの世界は少し時間がズレてるようだ。
「あ、他の方々は大体集まっているようです!」
「え!?遅刻した!?」
「いやまだですけど、皆様お早いご到着ですね‥私達も席に座りましょう!」
「うん‥」
あの子は‥遅刻しないのかな、?
---
--- 特別部隊ルーチェ本部 〔席付近〕 ---
「え”、Kと僕って座る席列違うの‥?」
「はい、私達サポート係は後ろの方に。アリス様達魔法少年は前の方に座る事になっています!」
「じゃあ僕、知らない人と隣になるって事‥?」
「まぁそうなりますかね?ですがこれは番号順なので、右隣はさっきの少年になると思います!」
「!そうなの、!?」
「恐らくですがそうかと!」
「そっか‥なら、いいのかな。」
何も良くないけど。
「それでは、私は自分の席に向かわせてもらいます!」
「あ、ありがとう!気をつけて‥ね?」
「はい!アリス様こそ、《《楽しみにしてます》》!」
ん?楽しみにしてます?何を?
あぁ‥聞こうとしたのにもう行っちゃった‥しょうがない、僕も席に座ろう。
--- ・ ・ ・ ・ ・ ---
気まずいよぉ‥隣のあの子こないから凄く気まずいよぉ‥左隣の人となんか気まずいよぉ‥
「‥あの、」
「!?はい!!」
驚いたせいで声大きくなっちゃった‥すぐ驚くのどうにかしたいなぁ‥
「!ふふっ、驚かせちゃったらごめんね。」
「あ、いえいえ、!僕すぐに驚いちゃうので‥」
「急に声かけられたら驚くよね、わかる!僕も驚いちゃうかも(笑)」
「あ‥」
なんか凄い、話しやすい人かも‥動物の耳が小さい?何の動物だろ‥
「‥もしかして、この耳気になる?」
「え、あ、すみません!その‥はい。何の動物かなって‥あ、僕は兎なんですけど!」
「兎かぁ‥見てわかるけど、なんか可愛い耳だね。僕はリス‥だったかな?」
「リ、リス?なんで‥」
「僕もなんでかよくわかんないんだけど‥まぁ小さい耳だと邪魔にならないからいいかなって!」
「あ‥確かに!‥僕の耳、大きくないです‥?」
「?‥あはは!大きい!でも可愛いよ!」
「可愛い‥何度も言われるとちょっと恥ずかしいっていうか‥照れるっていうか‥?(照)」
「!あ、ごめん!気付かなかったや、!」
「だ、大丈夫なんですけど‥」
「えーっと、じゃあ‥あ、君の名前は!?」
「え、」
「仲良くしたいんだ!君と!‥駄目、かな?」
「だ、駄目じゃないです!えっと、僕は‥アリス、アリスです!」
「アリスくん!いい名前だね!僕は鈴木‥じゃなかった、《《リン》》だよ。片仮名のリン。」
「リン、さん‥?」
「リンでいいよ?敬語も無しでいいし!」
「じゃ、じゃあ‥よろしく、リン?」
「うん、よろしく。ニコ」
「えっと‥右隣の人、まだ来ないね。」
「ん?あ、本当だ。そこの子はなんて名前なんだろ。」
「それは‥わからないけど、」
「‥あ、なんか狐の人来たよ。」
「狐の人!?‥って、あれFだよ。左の子のサポート係、だったかな、?」
「そうなの?よく知ってるね!」
「あ、えっと‥さっき、会ったから‥でも、なんであの子は来ないんだろ‥」
「確かに、なんでだろうね?」
「んぇ、えーっと、あの〜‥なんでだろう?」
「‥ふっ、アリスくんと話してるとなんか弟達思い出すな〜(笑)」
「弟?」
「そう、僕二人弟がいてさ。なんかおどおどされると弟に姿が重なっちゃって(笑)」
「あ、あぁ‥えっと、おどおどしないよう気をつけるね‥」
「いや全然おどおどしてくれていいよ!?お世話させて!?」
「お世話!?いや流石にそれは____」
--- 「ここに集いし隊員達よ、起立!」 ---
「!?」
突然の声の指示通り、僕らは立った。
周りを見渡してみると、ざっと六十人くらいがここにいた。あとは六十人(Kとかって人なの‥?)くらいのサポート係がいる。
「チョイチョイ、アリスくん、前向いて。」
「あ、ごめん‥」
リンくんに注意されてた‥よし、気を引き締めよう。
--- 「‥これより」 ---
凛としたその声で空気が変わった気がした。
服の擦れる音、息を呑む音、呼吸音一つしなくなった無音の空間。
--- 「特別部隊ルーチェ新入式を開始する!」 ---
その声だけがはっきりと響いた。
長いし下手だし更新頻度低いしですみません‥
第九話 『新入式』
「‥」
アリスは真剣な顔付きで前を向いていた。
姿勢を正し、視線を動かしたりもせずに前を。
だが心の中では‥
(これ、いつまで立ってればいいの‥?)
すごくしょうもない事を考えていた。
---
「‥まずは|私《わたくし》の自己紹介をさせていただく。」
さっき式開始の礼をした人が一歩前に出てくる。
「|私《わたくし》は《《リラ》》。魔法少年No.302209だ。302161から302220の世代に入隊した。」
「‥」
え、魔法少年ってそんな前からあるの?
いや、そう言えば僕が産まれた時から魔法少年の番組、名前なんだっけ‥‥あぁ、《《エスペランサ》》だ。あれがやってたな‥じゃあ、結構長く続いてるのかな?
「‥|私《わたくし》の紹介はこれで終わりだ。そして、特別部隊ルーチェのトップの紹介に移る。」
トップ‥どんな人かな。
男の人だよね‥身長は高めかな、低めかな。
髪の毛長いのかなぁ‥それとも短い?
髪色は何色だろ‥普通の黒髪とかなのかな。
--- コツ‥コツ‥コツ‥ ---
「ぇ‥」
壇上に現れたのは思っていた姿とは掛け離れた存在。
身長は160台、髪の毛は長いツインテール、髪色はまさかのピンクだった。だけど、黒のスーツに白のワイシャツ、赤のネクタイと大人びた服装だ。
顔だけ見れば幼い子。
容姿からしてスーツを着た小学生に見える。
「‥初めまして第八代目魔法少年達よ。」
マイク越しに聞こえる声も高く、子供っぽい。
だけどやっぱり、立ち方や話し方は変に大人びている。
「私は《《マリー》》。貴方達魔法少年のトップであり指示官。よろしくね。」
そう言い、マリーは優しく微笑んだ。
微笑む姿は幼い子供のよう。彼女の年齢はいくつなのだろうか。それが凄く気になってしまう。
「‥早速だけど、選ばれた貴方達はこの国‥日本を破滅させない為に存在している。我々がしくじればこの魔法少年の世界‥《《グラン》》から怪物が溢れ出し、日本へと侵入を始める。そうすれば誰も止める事が出来なくなる。そのままにしとけばいつかは海を渡り、海外まで侵略していき、人類が消える可能性がある。‥いや、消える。」
魔法少年になってからずっと自覚してこなかった責任感が今、背中に重くのしかかった。
僕らの肩に、人類の命が乗っかっている。それを自覚しろ、と。そう言われている気がした。
「‥まぁ、貴方達には期待している。《《伝説の世代》》のような世代になれると、ね。」
「‥伝説の世代‥?」
マリー以外に誰一人として声を発しなかったこの空間に誰かの声が聞こえた。
「そこのお前!まだマリー様が話しているのだから静かに___」
「気にしないで、リラ。私も説明不足だったからね。‥伝説の世代について知らないって事は、ニュースとかエスペランサを見ていない人?」
「‥まぁ。」
「そう、やっぱりね‥」
‥マリー(様の方がいいのかな)の表情が歪む。
何かを我慢するかのような表情で‥
「あー!もう!!」
急に爆発した。
「私やっぱり堅苦しいの似合わない!今から緩くやってこー!」
急に雰囲気が変わってギャルみたいになった。
さっきまでの大人しさはどこへ。
「えっと、伝説の世代、またの名を《《謎の世代》》と呼ぶ世代の事だよね!んー‥リラ、後よろしく!」
え、凄い雑‥じゃなくて、急に辞めるんだ‥
‥この人、本当にトップ‥?
「‥分かりました、マリー様。‥‥では、引き続き話をしていく。伝説の世代、それは|私《わたくし》達‥No.302161〜302220の世代の事だ。」
伝説の世代。
その言葉が僕の記憶の何かに結びつく。
何にか分からない。だから違和感を感じる。
「この世代では、当時一番凶悪だった怪物側のリーダー個体を殺した。その魔法少年達の活躍により怪物が消えていき、暫くの間怪物による被害が無くなったのだ。」
怪物、リーダー個体、活躍、被害‥
全部頭に響く。
何の記憶に引っかかってる?エスペランサの映像?それとも別の何か?
「この個体殺しの活躍者は‥|私《わたくし》の親友、《《ヒロ》》と《《リウ》》だ。彼らは誰よりも戦った。」
ヒロ、リウ‥
僕は知っている。エスペランサで登場していた。
でも、それだけなのか?
もっと、何かを知っている気がする。
ヒロとリウの、何かを‥
「彼らのお陰で犠牲者はゼロのまま戦いが終了した。英雄だと誰もが思ったさ。」
英雄‥ヒロとリウが英雄?
違う。英雄じゃない。
違うってなんだ?僕は何を知っている?
「そう、戦いでの犠牲者はゼロだったんだ。」
「‥戦いでのって事は、戦いの後に誰か亡くなってしまったんですか?」
リンが質問をする。
「あぁ、さっき活躍したばかりの二人‥ヒロとリウが、戦いのすぐ後に近くの廃ビル内で死体になって発見された。」
「‥二人の死因って、なんですか。」
死因が、気になった。
それがもしかしたら、僕が引っかかってる部分なのかもしれないから聞いた方がいいと思った。
「‥ヒロは自分の武器である銃で頭を撃ち抜いて自殺。リウはヒロの武器である銃で同じように頭を撃ち抜いて自殺‥二人とも即死だ。」
なんで自殺したんだろう?
二人ともヒロの武器である銃を使って、その武器じゃなきゃいけない理由でもあったのかな。
「自分達を脅かす存在は消えたのに、何故死んだのか‥それが分からないから、《《謎の世代》》とも言われているのだ。」
「謎の世代‥」
ヒロとリウ。二人について、それと僕の何かについて深く考え込んでしまったら、もう、リラさんの声は聞こえなくなっていた。
僕は何に引っ掛かっている?
僕はあの二人の何を知っている?
僕は、
『死なないでくれ、《《ヒロ》》!!』
僕は何を忘れている?
沢山言葉が出てきましたね。
あとでメモ投稿します‼︎
あと長いですよね、分かります(
途中で切ろうとしたんですけど「やっぱ書いてから終わりにするか」と思ったら2420文字になりました☆
それではおさらば(・◇・)/
メモ3 『番組・世代・新キャラについて』
「エスペランサ」
魔法少年達の活躍や自己紹介、日常の一コマなどを映したテレビ番組。You Tubeの公式チャンネルにはYouTube限定の踊ってみた動画や歌ってみた動画もメンバーシップ限定で見れる。
ちなみに動画の切り抜き等は禁止されている。
現在一番視聴回数があるのは302,509,206回再生の「流行りのダンス踊ってみた」。
「伝説の世代」
No.302161〜No.302220で、謎の世代とも言われている世代。
当時一番凶悪だった怪物側のリーダー個体を殺した二人が存在していた世代。
「謎の世代」
No.302161〜No.302220で、伝説の世代とも言われている世代。
当時一番凶悪だった怪物側のリーダー個体を殺した二人がその後、近くの廃ビル内で死体になって発見された。死因は頭を銃で撃ち抜いた事だが、何故死んだのかが不明のため「謎の世代」と言われている。
「マリー」
特別部隊ルーチェのトップ。
堅苦しい事が嫌いで、子供っぽい性格をしている。実年齢は24。そこそこ歳とってる。
「リラ」
特別部隊ルーチェの副リーダー。
一見冷たい性格をしているように感じるが、実は仲間思いで優しい性格をしている。
ヒロとリウと同じ世代のNo.302209。
「英雄」
ヒロとリウの事。
「グラン」
日本の何処かにある壁を通り抜けた先にある、魔法少年たちの世界の名前。
魔法少年達とサポート係だけが入れる。
ビルを囲むドームの外へ出れば怪物達によって壊された世界が広がっているようだ。
第十話 『戦闘部隊』
僕は何かを忘れてる。
「‥くん、‥リ‥くん、アリ‥ん、アリスくん!」
「!え、あ、リンくん‥?」
「リンだけど‥大丈夫?何回呼んでも返事ないから驚いちゃった。」
「あ、うん‥平気。少し考え込んじゃったみたい(笑)」
「そっか‥でも、その気持ち分かるかも。いきなり君達が日本を守る!とか、伝説の世代が〜!とか言われても分かんないよね。」
「‥だよね。」
それだけじゃないけど‥結局、何を忘れてるのかわからなかったや。話聞きそびれちゃった。
「アリスくんも戻ってきたし、帰ろっか。」
「帰る?どこに?」
「え、そこも聞いてなかったの?」
「ご、ごめん‥」
「別に謝んなくて平気だよ。えっとね‥戦闘部隊、技術部隊、救護部隊に別れて寮があるみたいで、僕ら前の二列は戦闘部隊、真ん中の二列は救護部隊、後ろの二列は技術部隊って別れてたんだ。」
「つまり‥僕は戦闘部隊の寮住みってこと?」
「そうだね、僕と同じ。」
「‥えぇぇぇぇぇ!?僕、戦闘部隊なの!?」
「驚くの時間差あったね‥」
「僕戦闘とか出来るかなぁ‥」
「それは僕も同じ。弟達とヒーローごっこしてたけどほぼ初心者だから。」
「武器とかは‥」
「確か、自室の机の上に用意されてるみたいだよ。」
「そうなんだ‥ごめんね、何にも話聞いてなくて‥」
「気にしないで!こういうの大歓迎だから!」
「大歓迎‥?」
なんかたまにリンくんおかしくなってる気がする‥?
「‥アリスくん、帰れる?」
「あぇ、あ、うん。帰ろう!ごめんねなんか‥」
「気にしないでってば!」
---
--- 特別部隊ルーチェ本部 〔廊下〕 ---
「‥ん?おい!そこの兎耳で包帯巻いてる少年!」
「え、あ、ぼ、僕ですか‥?」
「あぁ、お前だ。」
「‥アリスくん、僕先帰るね。ニコッ」
「あ、うん。ごめんね‥」
「そんな謝らなくていいよ(笑)それでは、失礼します。」
「あぁ、すまないな。‥お前、名をなんという。」
「‥僕は、アリスです。」
「アリス‥フッ そうか、いい名前だな。」
「ありがとう、ございます?」
「‥で、さっきから隠れているお前の名はなんだ。」
「ビクッ‥‥いつから気付いてた。」
「初めからだ。新入式が終わってからずっとそこにいただろう。気配ぐらいわかるさ。」
「‥あっそ。」
「あ‥」
あの子、狐の子‥
「‥で、お前の名はなんだ?」
「‥‥《《ウィラ》》。No.302236だ。」
「No.302236‥アリスの次に魔法少年になった子か。」
「あ、そうっぽい、ですね?」
ウィラ‥ウィラか‥なんでその名前になったんだろ‥本当になんでそうなった??
「‥あ、えっと、リラさん、でしたっけ?」
「あぁ、リラだが。」
「えっと、僕ら、呼び止められたので、何かあったのかな‥って。」
「‥大した事じゃない。少し、親友に似ていたから声をかけてしまっただけだ。すまなかったな。」
「あ、いえ!」
「‥それだけだから、アリス。君はもう部屋に戻ってくれ。‥だがウィラ、君と話したい事がある。|私《わたくし》に着いてこい。」
「‥チッ」
「それでは失礼する。‥あ、戦闘部隊の部屋は本部を出て右にある赤い旗のビルだ。部屋番号は中に入ればわかる。」
--- コツ‥コツ‥コツ‥ ---
「‥あ、部屋帰らなきゃ、!」
右の赤旗だよね‥大丈夫覚えてる!
メモ4 『新キャラについて』
「ウィラ」
No.302236の魔法少年。
アリスがグランに来た時初めて見た魔法少年で、Fに突き落とされ階段から落ちかけた時、アリスに助けてもらった事がある。
本名は|霧島凛《きりしまりん》。
「アリス」
主人公・|平野凪《ひらのなぎ》の魔法名。
「リン」
自主企画参加キャラ・魚様提供「鈴木あさひ」の魔法名。
今気づきましたが凛とリン名前被りしてますね‥次からは被らないように気をつけますm(._.)m
第十一話 『謎と伝説』
さようなら、僕の愛しい人。
「ばいばい、リウ。」
「やめてくれ!!」
バンッ
俺の手が届く前にアイツは自分の頭に突きつけた銃の引き金を引いた。
あと一歩だったのに。
だけど、力なく床に倒れたアイツの口元は緩く弧を描いていた。その目に光はない。
どうして死んじまったんだ。やっと俺達を殺そうとした怪物を倒せたのに。
なんで、どうして‥!!
「ヒロ‥お前は、何がしたかったんだよ‥」
きっと誰にもわからない。
目の前で、救えたかもしれない大事な大事な命が無くなるこの絶望は。
「‥ヒロ、大丈夫だ。一人で寂しい思いはさせない、俺もそっちに行くよ。」
だから大丈夫だ。お前が「寂しい」と思う事を無くすって言ったのは俺だし、何にも怖くねぇよ。俺、自分が死ぬ事よりお前がいなくなる事の方が怖ぇし。
「リウ!」
「!‥《《リラ》》、か。」
親友の声を聞いた瞬間、俺の覚悟は決まった。
ヒロと話をする覚悟が、決まったんだ。
「どうしたんだこんな所‥で‥‥アリス?」
「‥」
「おい、どうしたんだアリス。‥お前が、殺したのか?」
「‥俺は殺してない。アリスが自分で死んだ。」
「自殺ってことか?アリスが?あのアリスが、自殺なんてするわけがないだろ‥」
「アイツは、お前らが思うより強くねぇよ。」
「‥は‥?」
「怪物を殺す時だっていつも怖ぇし、仲間が死んだ時は心抉られるし。‥お前らが見てるアリスと本当のアリスは違う。」
アリスは誰よりも弱くて、誰よりも強かった。
アリスを追い詰めたのは間違いなく俺らだろ。
魔法少年になんかなるんじゃなかった。
「‥じゃあ、アリスは本当に、自殺したのか‥?」
「だから、そうだって言ってるだろ。」
「怪物だって、もう攻めてこない!リーダー個体を殺した!もう何も怖くないのに、どうして!」
「そんなの、俺が聞きてぇよ!!だから、俺は、アリスに話を聞きに行く!!」
「アリスに聞きに行くって、どうやっ‥‥おい、リウ、お前何しようとして‥」
俺はヒロの銃を拾い上げた。
そして、アイツと同じように銃を頭に突きつける。
「お前も死ぬっていうのか!僕を置いて!」
「別に、お前を置いてくつもりはねぇよ。‥お前は、自分らしく生きろよ。何があってもな。」
「どういう事だ‥?僕は、」
「それ、僕僕って。お前一人称|私《わたくし》だろ。それ変じゃねぇし、俺は好きだぞ。」
本当に好きなんだ、お前の「自分らしさ」が。
「!なんだそれ‥そんな最期みたいな‥」
「‥俺は俺らしく生きる。そう、最期までな。」
そう言って引き金に手を添える。
さようならリラ。さようなら楓山司。
「またいつか、必ず会おうな。ニッ」
さようならリウ。
「やめろリウ!!」
バンッ
さようなら、この最低最悪な世界。
さようなら、俺の愛しい人。
第十二話 『新しい出会い』
--- 特別部隊ルーチェ戦闘部隊ビル 〔自室〕 ---
「‥武器?」
僕の机の上に置かれているものは一枚の紙。
‥何これ?
書いてあるのは‥
『特別部隊ルーチェ戦闘部隊所属 アリス 様
入隊おめでとうございます。
早速武器の支給を行う筈でしたが、戦闘部隊の皆様の武器を技術部隊の学習用に使わせてもらいました。
明日の朝、技術部隊ビルに武器を取りに行ってください。
この紙を見せれば貰えるように指導しています。
武器特訓は明日から開始します。
武器を受け取り次第、戦闘部隊ビル三階の〔特訓室〕に行ってください。
又連絡等があれば放送致します。
特別部隊ルーチェリーダー マリー 』
「‥技術部隊、って何?」
文を読んだ限り‥武器を作る部隊、なのかな。
--- コンコンコン ---
「?‥はーい。」
--- ガチャ ---
「うわ、」
僕が扉を開けようと押したタイミングであっちの人も引いたからバランス崩れて倒れる‥!
「おぉ、大丈夫か!?」
「ぇ‥あ、すみません!」
運良くキャッチされたけど‥ほぼ抱きしめられてる‥
「ぁ、えっと、何か用ですか?」
「ん?‥あぁ、その服、回収に来た。」
「‥え?」
「あぁ、変な意味じゃねぇよ?新しい服がクローゼットにあって元の服は不必要だから回収しといてくれって頼まれたからな、回収にきた。」
「あぁ‥ありがとう、ございます。」
「‥あ、男だから裸見ても何も思わねぇからな!?」
「わかってますよ!!」
--- 服お預けタイム ---
「‥よし、ありがとな。」
「いえ、こっちこそありがとうございます。」
「それじゃ、俺別のところいくから!」
「はい!お気をつけて!」
‥あれ、僕あの人の名前聞いてない‥?
「あ、あの!」
「?どうかしたか?」
「お名前、聞きたくて、!」
「あ、言ってなかったっけ。俺《《クロカ》》。戦闘部隊所属のNo.303331。」
「僕は、アリス。No.302235。」
「アリスか、よろしくな。」
「うん‥あ、それだけだから、気を付けて、行ってらっしゃい?」
「ふはっ、んだそれ(笑)‥まぁありがとな。いってきます(笑)」
--- パタン‥ ---
「‥」
クロカ‥僕と同じ戦闘部隊の人、か。
「‥服着てないとかヤバい奴だよね‥」
考えるより先に着替えよう。
クローゼットだから‥これか。中にある服は‥
「‥え?」
セ、セーラー服‥?
‥これしかないなら、着るしかないけどさ‥皆着てるのかな‥
「‥よし、腹を括れアリス。」
--- お着替えタイム ---
‥似合ってるのかこれ‥
寝巻きもこんな女子っぽいのだし‥僕男なんだけど‥仕方ない、これからはこれしか服がないんだから諦めて慣れよう。
メモ5 『新キャラについて』
「クロカ」
自主企画参加キャラ・理沙❄️🧋@桜塚様提供「黒瀬優磨」の魔法名。
No.302231。
「普段着」
魔法少年の普段着はセーラー服。寝巻きも女子らしい物。理由は「可愛いのが好き」とマリーが言ったから。
「戦闘部隊ビル」
赤い旗が目印のビル。
中には特訓室、自室、隊長室、食堂、風呂場、娯楽室‥などがある。