ある日突然現れた天使と悪魔。
彼らが始めたのは――人生査定。
加点、減点、規約違反。
日常のすべてが評価対象となり、
テスト、恋愛、休日までもが審査イベントへと変貌する。
だが当の本人は、どこまでも平均的。
突出も、破滅も起こらない。
そんな彼の人生に下された、最終査定とは――。
騒がしくも理不尽な共同生活を描く、
監視型日常コメディ。
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目次
天使と悪魔
読んでくれてありがとう⸜(*ˊᗜˋ*)⸝
放課後の疲れを引きずったまま玄関を開けた瞬間、俺は固まった。
リビングに、見慣れない二人がいたのだ。
白い羽の少女と、黒い羽の少年。
状況としては完全にホラーだが、恐怖より理解不能が勝っていた。
「……誰?」
人生で最も慎重な問いかけだった。
「天使です」
白い方が即答した。
「悪魔だ」
黒い方も迷いなく言った。
テンポよく地獄。
「今すぐ帰ってください!」
俺は現実的な交渉を試みる。
「無理です」
「契約上な」
俺はソファに崩れ落ちた。
契約って何…。
俺の知らないところで俺の人生が進んでいる気配しかしない。
――そして、地獄は書類と共にやってきた。
◆ 書類という名の絶望
天使が一枚の書類を差し出してきた。
………見るのが怖い。嫌な予感しかしない。
『観察・介入対象:佐倉 湊(高2)』
俺じゃねぇか。
「観察って何!?」
「日常管理業務です」
「人生の方向性チェックだな」
さらっと怖い。
「いやいやいやいや!人選ミスですよね!?これは何かの間違いですよね??」
「ミスではありません」
「ちゃんと会議もしたぞ」
会議すんな。
俺の知らない会議で俺を議題にするな。
「お前、今わりと分岐点にいるし」
「そうなんです」
何その俺の知らない俺情報。
◆ 第一条:拒否権は存在しない
「とりあえず」
悪魔が立ち上がった。
「部屋どこ?」
「帰れって言ってんだろ!」
「共同生活規約・第一条」
天使が淡々と読む。
「『対象者の生活圏への常駐を許可する』」
「拒否権!」
「ありません」
即答。
「人権!」
「部署違いですね」
部署で分けるな。
なんなんだよもう。
試しに頬をつねってみる。痛い。どうやら夢ではないようだ。
◆ 想像以上に図太い侵略者
「わかったけどやる部屋なんてねぇぞ!床で寝ろ。庭でもいいぞ」
「庭では業務効率がわるいです」
「俺たちが風邪ひいたらお前は減点だぞ」
図々しすぎる侵略者たち。
そして悪魔、お前絶対適当なこと言ってるだろ。
俺の部屋を見回す二人。
「普通だな」
「普通の高校生の部屋に何期待してんの!?」
「もっと闇とかあるかと」
「ねぇよ!」
「意外と健全ですね」
天使まで評価してくるな。
評価される俺の私生活。
机の上。
教科書。漫画。用途不明の充電器。
「これ何です?」
「知らない!」
「俺も気になってた」
なぜ存在するのか不明な文明の遺産。
◆ 朝は戦場
翌朝。
「起きろ人間」
悪魔がカーテンを全開にした。
「まぶしっ……!!」
「遅刻しますよ」
天使が冷静に追い打ち。
「お前ら目覚まし係なの!?」
「業務の一環です」
「寝坊は破滅寄りだぞ」
評価基準が怖い。そして扱いが雑!
なんだかんだで昨日は疲れて放置して寝てしまっていた。
朝食。
「トースト焦げてる」
「誰のせいだよ!」
「俺は焼いてない」
「私もです」
犯人不明の焦げトースト事件。
「悪魔の仕業!?」
「濡れ衣だ」
「火力調整は担当外です」
天使の責任回避が完璧すぎる。
さては「仕事出来る女」ってやつだな。
てか担当細かいな。天界(?)ってのはどうなってんだ?
◆ 介入という名の口出し地獄
学校帰り。
「告白しないのか?」
悪魔が言う。
「しません」
「チャンスでしたよ」
天使まで乗ってくるな。
「なんで知ってんの!?」
「監視対象ですので」
言い方。
「青春イベントは加点対象だぞ」
「査定やめろ!」
◆ 思ってた善悪と違う
数日後。
さすがに慣れてきた自分が逆に怖い。
俺は聞いてみた。
「結局、お前ら何が目的なんだよ」
二人が少しだけ真面目な顔になる。
「最終判断です」
「最適な進路決定」
「進路?」
「はい」
天使が言う。
「人間がどう生きるか」
悪魔が続ける。
「それを見るのが俺たちの仕事」
「……善悪じゃないのか?」
「違います」
「そんな単純じゃない」
少しだけ、空気が静まる。
「天使も」
「悪魔も」
「役職名みたいなものです」
夢を返せ。
◆ 致命的な結論
「で」
俺は聞いた。
「評価どうなってんの」
二人が同時に書類を見る。
沈黙。
嫌な予感。
「……保留ですね」
「は?」
「お前」
悪魔が肩をすくめる。
「普通すぎて判断材料が足りん」
「普通で悪かったな!?」
「減点もありませんが」
天使が補足する。
「加点もないです」
「なんなんだよ俺の人生査定!!」
二人が小さく笑った。
ほんの少しだけ。
「まぁ」
「もう少し観察ですね」
「共同生活継続だな」
「帰れぇぇぇぇぇ!!!」
――こうして俺の平凡な日常は、規約違反気味に騒がしくなった。
たぶんしばらく。
いや、かなり長期間。
うるさいテスト
あれから少し日が経ち…
「起きろ監視対象」
朝から最悪の声で意識が浮上した。
「……言い方!!」
カーテン全開。
視界が光に殴られる。
「本日、定期考査です」
天使がいつも通り無駄に丁寧な口調で告げる。
「知ってるよ!!」
悪魔と天使に挟まれて迎えるテスト当日の朝。
どう考えても人生の設計ミスである。
◆ 朝から査定モード
「緊張してますね」
天使が言う。
「誰のせいだと思ってんだよ」
「適度な緊張は加点対象です」
「評価制度やめろ」
悪魔が欠伸をした。
「別に赤点でも死なんだろ」
「悪魔が教師より現実的なこと言うな」
「破滅ではない」
「慰めになってねぇよ!」
◆ 問題は常に理不尽
教室。
配られる問題用紙。
開いた瞬間、俺は悟った。
「終わった……」
「まだ開始五秒です」
「この時点で諦めるのは減点だぞ」
「評価が早すぎる!」
(※学校内では頭の中で会話してます)
第一問から知らない世界。
見たことのない数式。
異文化交流か。
周りから聞こえるカリカリという音が余計に知らない世界に来たような感覚になる。
いや待て。
同じ教科書使ってたよな?
同じ授業受けてたよな?
なんで俺だけ異世界編に突入してんだ。
◆ 介入業務、開始
「落ち着いてください」
天使が冷静に言う。
「無理だろこの問題!」
「まず設問を整理しましょう」
「時間ないんだよ!」
悪魔が覗き込む。
「書け」
「何を!?」
「それっぽい何か」
「悪魔が一番ダメな助言してきた!」
考えろ。考えるんだ…。
こいつらは当てにできない。
昨日やった範囲だろ。
見たことあるだろ。
あるよな?
……あれ?
待て。
昨日、俺なにしてた?
「空欄は避けるべきです」
「無理に埋めると事故るぞ」
「正確性が重要です」
「勢いも大事だ」
「どっちなんだよ!!」
俺の人生、選択肢がうるさい。
集中できない!
◆ 禁断の誘惑
「カンニングという手段も」
悪魔がさらっと言った。
「やめろ!」
「合理的な選択だ」
「破滅ルート推奨すんな!」
「規約違反です」
天使が即座に却下。
「倫理観担当きた」
「当然です」
「でも見て見ぬふりも可能だぞ」
「悪魔が監督官より悪魔してる!」
◆ 採点会議、開催
「この問題は部分点ですね」
「いや減点だろ」
「採点すんな!!」
「論理構成が甘いです」
「時間制限を考慮しろ」
「教師みたいな議論始めるな!!」
答案用紙が戦場になっている。
◆ 時間という名のラスボス
「残り五分です」
「早すぎるだろ!?」
まだ何も終わってない。
というか何も始まってない。
時間だけが一方的に終盤戦。
俺の答案、まだまだ序盤。
「焦りは判断力を鈍らせます」
「もう鈍ってるよ!」
「祈れ」
お願いだから役に立つアドバイスをくれえええええ!!
◆ 終了
ついにチャイムがなった。
終了。
俺は机に突っ伏した。
「……無理」
「お疲れ様でした」
「平均点寄りだな」
「なんで分かるんだよ!」
「顔」
「顔で人生評価すんな!」
◆ 今回の結論
やっと家に帰れた…。
椅子に座った瞬間、体から魂が抜けた。
テストってこんな命削るイベントだったか?
いや違う。
原因は確実に――
「お前らだよ……」
「なにが」
「今回の査定結果ですが」
疲れすぎて聞く気になれない。
天使が書類を見る。
これまた嫌な予感しかしない。
というか、こいつらが書類を出す時点でろくなことがない。
「……保留ですね」
「またかよ!!」
悪魔が肩をすくめる。
「普通すぎる答案だった」
「答案にまで言う!?」
「突出も破滅もしてません」
「評価が地味すぎるんだよ俺の人生!!」
「まぁ」
悪魔が笑う。
「次のイベントに期待だな」
「人生を連載作品扱いすんな!」
――テストは終わった。
だが俺の査定地獄は終わらない。
たぶん永遠に。
いや、規約が続く限り(はやく終わってくれえええええ!!)。
恋愛イベント
あれからまた少し日が経ち――
「検知しました」
朝から天使が真顔だった。
「……何を」
「恋愛イベントです」
「は?」
寝起き五秒で人生のジャンルが変わった。
◆ 朝の時点で不穏
「ついに来たか」
悪魔がやたら嬉しそうに言う。
「来てない」
「高確率で加点対象です」
「やめろその評価制度」
「本日、重要分岐点となります」
「朝から怖いこと言うな」
俺の人生、なぜ毎回会議案件なのか。
◆ 身に覚えがない
「いや待て待て待て」
俺は冷静に状況を整理する。
「相手誰だよ」
「現在特定中です」
「検知だけ先行するな」
悪魔が腕を組んだ。
「昨日の下校時、異常な反応があった」
「異常って言うな」
「心拍変動」
「言い方!」
「視線の揺れ」
「分析が細かい!」
「典型的な兆候です」
「なんの研究機関だよお前ら!」
◆ 学校という戦場
教室。
「……普通だ」
何も変わらない日常。
何も起きていない平穏。
「対象確認」
「やめろ怖い」
「候補A」
「候補って何」
天使が淡々と告げる。
「斜め前方の女子生徒」
「誰!?」
言われて見てみる。
普通のクラスメイト。
話したことはある。
名前だって苗字にさん付けで呼ぶ。
だがそれだけだ。
「いやいやいやいや」
「休み時間にこちらを見る頻度が高いです」
「偶然だろ!」
「照れていますね」
「違うわ!」
悪魔がニヤつく。
「青春だなぁ」
「勝手に始めるな!」
断じて違う!
◆ 誤検知の加速
「……いや待て」
違和感。
妙な感覚。
「候補B」
「増えた!?」
「後方右側の女子生徒」
「だから誰!?」
見れば――
あ。
「……あいつ?」
「認識しましたね」
「いや別に!」
中学から一緒のただのクラスメイト。
よく話す。
距離感が近い。
呼び方は苗字の呼び捨て。
だがそれだけだ。
「反応が変化しました」
「実況やめろ!」
「確率上昇」
「数値化すんな!」
◆ 当事者不在ラブコメ
休み時間。
問題の候補Bが話しかけてきた。
「あの、佐倉さん」
「っ!?」
悪魔がニヤリと笑う。
(来たぞ)
(来てない)
「消しゴムを貸してください」
「……え?」
「消しゴム」
「……あ、はい」
完全に日常会話だった。
何も起きていない。
「高度な駆け引きですね」
「違うわ!」
◆ 検知システム暴走
「お前ら絶対間違ってるだろ!」
俺は2人に向かって叫ぶ。
もちろん頭の中で。
「誤検知ではありません」
「兆候は揃っている」
「揃ってねぇよ!」
その時――
「佐倉」
また呼ばれた。
候補A。
「ノート見せて」
「……え?」
「数学」
「……あ、はい」
なぜ今日に限って全員話しかけてくるのか。
「修羅場イベント検知」
「やめろぉぉぉ!」
◆ 世界のバグ
昼休み。
俺は机に突っ伏した。
「マジで……意味わからん」
「進展が見られません」
「もとから何もないから当たり前だろ!」
「停滞は減点対象だぞ」
「そもそも違うって!」
「積極性が不足しています」
「なんの評価!?」
◆ 致命的な真実
放課後。
やっと帰宅。
そして判明する。
「……え?」
俺は固まった。
天使が書類を見て苦笑いしている。
その表情が、妙に気まずい。
「訂正があります」
「嫌な予感しかしない」
「本日の恋愛イベントですが」
「おう」
「……誤検知でした」
沈黙。
「は?」
悪魔が吹き出した。
「ブハッ」
「笑うな!!」
「類似反応との誤認識だ」
「なんだよそれ!?」
「原因は」
天使が淡々と言う。
「テスト結果による緊張状態」
「恋愛関係ねぇぇぇ!」
◆ 今回の結論
「つまり」
俺は聞いた。
「全部勘違い?」
「はい」
「頑張ったよね俺!?加点されたりしないの?」
「プラマイ0ですね」
「壮大な無駄イベントだったな」
「返せ俺の精神力!!」
悪魔が笑う。
「まぁいいじゃねぇか」
「よくない!」
「青春の予行演習だ」
「勝手に俺の人生を試運転するな!!」
――こうして。
俺の平穏な日常は。
今日も意味不明な査定に振り回される。
規約違反レベルで。
本当に。
いい加減にしてほしい。
ポンコツ天使
休日の朝――
「……起きない」
悪魔が言った。
「珍しいな」
いつもなら、規約という名の暴力で俺を叩き起こす天使が――
「……まだ寝てる」
「は?」
嫌な予感しかしない。
◆ 明らかな異常事態
「おい」
俺はベッドの上の天使を見る。
「天使?」
「…………」
反応なし。
「死んでないよな?」
「縁起でもないこと言うな。俺たち天界の住民は死なない」
悪魔が呆れる。
さらっと言っちゃってるけどスゲー。
「ただ寝てるだけだ」
「いやいやいやいや」
ありえない。
あの天使が?
秩序の塊みたいなあいつが??
「寝坊?」
「信じたくない現実だな」
◆ 起こしてみる
「おい天使」
軽く揺する。
「朝だぞ」
「…………」
起きない。
「……ガチ寝だな」
悪魔が妙に冷静だった。
「なにそのレア現象」
「疲労の蓄積だろ」
「天使が疲れるの!?」
「お前の監視って結構面倒だから」
「俺のせい!?」
なんか、うん、ごめん。
◆ ついに覚醒
「……ん……」
小さな声。
「お?」
「…………朝……ですか……」
「いや昼」
「え」
ゆっくり目を開ける天使。
そして――
「え」
固まった。
「え?」
「二度言うな」
◆ 秩序担当、崩壊
「なぜ起こしてくれなかったんですか!?」
「起こしたわ!!何度も起こしたわ!!」
「規約違反です!!」
「いや知らんがな!」
悪魔が吹き出す。
「ブハッ」
「笑わないでください!!」
「いや無理…ハハッ」
「ちょっ…!」
天使が完全に取り乱していた。
◆ 致命的弱点発覚
「……原因は」
天使が真顔に戻る。
が、どこかおかしい。
言いにくそうに口をパクパクして目線を泳がしている。
「昨夜の人間界の娯楽です」
「……は?」
なんだそれ。
「動画視聴が止まりませんでした」
ん…?
俺悪くないじゃん!
「お前何してんの!?」
「興味深い文化でした」
「何時間見たんだよ」
「……気づけば夜が明けていました」
「それ典型的なダメ人間じゃねぇか!!」
◆ 天使、ただのポンコツ化
「信じられません……」
天使が頭を抱える。
「自己管理に重大な欠陥が……」
「欠陥ってレベルじゃねぇよ」
「人間すぎるだろ」
悪魔が笑う。
「なんだか親近感わくな。お前も人間にならないか?」
「揶揄わないでください!」
◆ 生活能力問題
「朝食は!?」
「もう昼食の時間だよ!」
「規則正しい生活が……」
「昨日お前が自分で崩したんだろ!」
「ぐっ……」
天使が言葉に詰まる。
その姿、見覚えがある。
完全にテスト前の俺じゃねぇか。
◆ さらに崩れる威厳
「……コーヒー……」
「は?」
「眠気覚ましに……」
「飲むの!?」
「合理的判断です……」
「天使のイメージが死ぬ!!」
悪魔が爆笑する。
「最高だな今日」
◆ 世界のバグ発生中
休日。
静かなはずの朝。
なのに――
「なぜ人間はこんなにも誘惑が多いのですか……」
「知らんよ」
「破滅の香りがする世界だな」
「悪魔が言うな」
◆ 今回の結論
数時間後――
「……復活しました」
天使がソファで言った。
完全復活モード。
「もう大丈夫か?」
「はい」
いつもの凛とした表情。
……だが。
「本日の件は」
嫌な予感しかしない。
「記録から削除します」
「おい」
「監視業務に不都合なため」
「おい」
悪魔がニヤつく。
「黒歴史処理きたな」
「聞こえていますよ」
◆ 致命的オチ
「ですが」
天使が淡々と言う。
「対象者の怠惰傾向は引き続き問題です」
「なんで俺が説教されてんの!?なぁ悪魔もなんか言ってくれよ!」
「俺は知らん」
「コイツは本件とは無関係です」
「理不尽すぎる!!」
――こうして。
秩序担当の威厳は一日限定で完全崩壊した。
……が。
翌日には何事もなかった顔で復活していた。
非常に納得がいかない。
本当に。
記録から削除するのはずるいと思う。
フェアじゃない。
最終査定
ある日。
「……静かだな」
俺は違和感で目を覚ました。
いつもなら規約という名の暴力と共に叩き起こされるはずの朝。
なのに――
「…………」
声がしない。
◆ 異常な日常
「……おい?」
「なんか言えよ!」
叫んでみたが、他人が見たらただの壁に向かって叫んでいる変人にしか見えない。
「まさか、お前ら…。姿を消す能力を持ってたのか!?」
そんなわけないだろ。
部屋を見回す。
いない。
天使も。
悪魔も。
「……は?」
理解が追いつかない。
いや待て。
え?
何これ。
逆に怖。
「……夢?」
頬をつねる。
普通に痛い。
最悪だ。
◆ 不在という恐怖
静かすぎる部屋。
あの騒音コンビがいないだけで、
ここまで世界が不気味になるとは思わなかった。
「……マジで?」
誰もツッコまない。
誰も評価しない。
誰も減点しない。
「フッ…。気楽でいいじゃないか」
――落ち着かない。
◆ 唐突な宣告
その時だった。
『対象者』
頭の中に響く声。
だが。
いつもの天使の声ではない。
悪魔の声でもない。
『長期観測を終了する』
「……は?」
『査定システム、終了』
「え」
◆ 世界の核心
視界が白く染まる。
音が消える。
感覚が遠のく。
『当該対象は』
『著しい逸脱なし』
『著しい破滅なし』
『極めて平均的』
「……ちょっと待て」
『よって』
『監視対象から解除』
「いや待て待て待て待て」
◆ 最後の抵抗
「ちょっと待てええええええええ!!」
思わず叫んだ。
「何その理由!?」
「平均で解除って何!?」
『基準通りである』
「納得できるか!!」
◆ 彼らの声
その瞬間。
「やれやれ」
聞き慣れた声。
「最後まで騒がしいな」
悪魔。
「……規約違反の大声です」
天使。
「お前らいたのかよ!!」
◆ 最終査定
天使が静かに言った。
「長期観測は終了です」
悪魔が笑う。
「まぁ悪くなかったぜ」
「なにその上から評価」
「事実だ」
「対象者」
天使がまっすぐこちらを見る。
「あなたは」
少しだけ。
間を置いた。
「非常につまらない人間でした」
「最後にそれ言う!?」
悪魔が吹き出す。
「最高のオチだな」
◆ 消える存在
光。
白。
静寂。
「……じゃあな」
悪魔。
「……達者で」
天使。
「いやちょっと待てよ!!」
「なんかもっとこう!!」
なぜか涙が出てくる。
「感動的なやつとか!!」
「ない」
「ありません」
◆ 終幕
そして。
二人は消えた。
静かな部屋。
騒音のない世界。
評価のない日常。
「…………」
「……静かだな」
少しだけ。
本当に少しだけ。
「……うるさい方が良かったかもな」
誰も答えない。
俺の人生から。
査定は消えた。
たぶん。
これからも。
特別なことは起きない。
でも――
「まぁいいか」
悪くない。
たぶん。
二人が来る前、本来の暮らしに戻っただけさ。
また、会えるはず。
―― 完 ――
短編シリーズでした!
コメディを意識して書いてみた作品なんですが、どうでしょう?
読んでくれた人がクスッと笑ってくれますように( ᴗ̤ .̮ ᴗ̤人)