書きたいと思ったお話をただ書くだけ
意味不明なものばかりになるかもしれない
投稿頻度はノーコメントで
だいたい読み切りになる予定
これを小説と言えるかどうかは謎ですね。
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目次
Different world
「?、此処はどこだ?」
---
状況を説明しよう
学校の帰り
↓
時間確認をしようとスマホを見る
↓
知らないアプリ ナニコレ 開く
↓
スマホめっちゃ光る
↓
気がつくと知らない場所 ココドコ
↑イマココ
---
完全に知らない場所だ。薄暗い、ちょっと地面湿ってるってことは屋外ってことか?ダンションみたい。
「制服汚れちゃったなぁ」
ブレザーとスラックスがちょっと湿ってる。どこか分からないし、ひとまず移動して人を探すことにする。
暫く進むと人影っぽいのがいる。もしかしてここって人がいるっぽい?
「あのっすみませーん此処はどこでs」
近づきながら話しかけてみると
『アアバ?』(どうしたの?)
《《人じゃない!》》
人の形をしたぬいぐるみみたいな、どことなく何かに似ているような気がするが人間じゃなさそうだった。
「ヒィッすっすみませんでした!」
身の危険を感じる。こうなれば全力疾走で逃げるしかない。
『ギヴギァギ』(まってよー)
「追いかけてくるじゃーん。来んじゃねぇぞ、っていゃー」
すげー追いかけて来んじゃん。これ、もしかしなくても死ぬやん。
そもそも帰宅部なんだけど、終礼終われば速攻帰るけれど、運動部じゃないからさぁ、運動得意じゃないから!マジで!
走る 走る 走る。
「此処どこまで続いてんの?」
同じような道が続いている。体力はそろそろ限界に近い。振り向くと化け物はおらずどうやら逃げ切ったようだった。
「そういえばスマホ……」
手にしっかり握ってたわ、よかったぁ。
しかし電波が届いてないから助けを呼べない。ポケットにしまう 諦めよう。
最終手段のこれを使うしかないか。
スゥッ
「たぁーすぅーけぇーてぇー!誰ぁかぁー」
「だぁーれぇーかぁーいーまぁーせぇーんーかぁー?!」
大声で叫ぶ。それが最終手段。叫んでも誰も来ないか。さっきの化け物がやってきたらどうしよう……
その時、
「おー大丈夫か?」
「大丈夫に見えますか?この状況……って人がいた。」
どこからか現れたのか僕よりも少し年上位? のロングコートを着た男の人がいた。人がいて一安心。
「人をバケモン扱いすんなし。で?どうした?」
「化け物に追われてて」
「化け物ってあれか?」
指を指した方向にはさっきの化け物。
『アアバ?ガヴアバ?』(どうしたの?大丈夫?)
「ヒェッそうですアレです。」
びっくりして後ずさる。
「あー大丈夫大丈夫、アレは僕のお友達。化け物って言わないであげてほしいな」
ニッコリしながら男の人はそう言った。
「友達?friend?」
聞き間違えたのかと思って聞き返す。
「そうそう友達、friend。あー、びっくりさせちゃった?」
どうやら男の人のお友達らしい。大丈夫なのだろうか。ぶっちゃけ怖いんだけど。
「びっくりしたって騒ぎじゃないでしょう!?」
「ごめんね。でこんなところで何をしてるのかな?」
これまでの出来事を事細かく説明していく。
「スマホに知らないアプリがあってそれを開いたらここに来てしまって、この有り様です。」
「まぁー大変だったね、大丈夫!ちょっとスマホ貸してごらん」
知らない人にスマホを貸すのは躊躇するけどこの状況下だ、仕方ないと思いながらスマホを貸した。
「見ててね、これをこうすると」
男の人がスマホを操作してさっきのアプリを開いた。とあるボタンをタップして
「光った」
スマホが返される。
「ヨシッ これで元の世界に帰れるよ。あと、これ」
男の人はメモ帳を一枚ちぎってペンで
サラサラッと何か書きなぐって紙切れを手渡してきた。
達筆な字で
---
カフェ『トリミア』
○○市□□町△△ー△
---
なんかどっかでそんな感じの名前の看板をみたことがあるような?
「ありがとうございます」
紙切れをポケットにしまう。
「いーのいーの、じゃあね」
「? ところであなたは何者ですか。」
「カフェのオーナーやってるけど。それ以上は知らなくてもいいと思うけどなー」
彼は微笑みながらそう言った。
その時、スマホがものすごく光って僕は目を閉じた。
「またどこかで会えるといいね」
そう男の人が言っていたのには気づくことができなかった。
「さてと、さっきの続きでもしますかね。いこうか」
『ギャガギヴ!』(そうだね!)
男の人は双剣を構えてどこかへと駆けていった。
---
ガダッ
「ん~?戻って来たのか」
空を見上げると日が暮れかけていた。つまり夕方。スマホ片手に呆然と突っ立ってた、ってことか? 制服汚れてるしポケットにさっきの紙切れ。さっきの事は現実で起こった出来事だったのだろうか? よく分からない。
とりあえず家に帰るか。制服汚した事とこんなに遅くなった言い訳考えないとな~
---
この時、僕は普段の日常がことごとく崩れ去ることをまだ知らなかった。
一度没にしたやつを少し改変しました。いつまでたっても小説の内容はカオスなものばかり。どうすればいいのでしょうね。
読まなくてもいい設定集
主人公君
スマホに入ってた知らないアプリのせいでとんでもないことに巻き込まれた人。高校生くらい。
化け物君
何も悪いことしてない。いろいろと気遣ってくれた心優しい化け物。
人間語は分かるけど喋れない。
謎の人
おそらくカフェのマスターみたいな人だと思われる。実は主人公の8歳上。化け物君の言ってることが分かる
ぱれーど
猫と私と人らしき何か
--- ぱっぱらぱ・ぱらっぱ ---
--- ぱっぱらぱ・ぱらっぱ ---
--- ぱれーど・ぱれーど ---
--- ぱっぱらぱ・ぱらっぱ ---
--- ぱっぱらぱ・ぱらっぱ ---
--- あさでも ひるでも よなかでも ---
--- みんな あつまれ ぱれーどだ ---
--- ぱっぱらぱ・ぱらっぱ ---
--- ぱっぱらぱ・ぱらっぱ ---
不気味な音楽が流れ始めた。今日は何かイベントがあっただろうか。それにしても一体この音楽はなんなのか。時間を考えろ。
腕時計の示す時刻は午後11時過ぎだった。夜中である。
ふと、路地裏に目が行った。とりあえずそこに隠れるとしよう。
路地裏に入ったとき、明かりが付いていた。おや、何かいるらしい。ゆっくり近づくと何かは猫だった。黒い猫。猫は私に気づくと「ニャオ」と鳴いた。逃げはしなかった。
音楽はどんどん近づいて来る。すると、猫は私にすり寄ってきた。人懐っこいやつだなぁ。だか、そんなことをしている場合ではない。音楽は近づいて来る。
不気味だ。そっと猫を抱っこしてビルの室外機の陰で息を潜める。
--- ぱっぱらぱ・ぱらっぱ ---
--- ぱっぱらぱ・ぱらっぱ ---
--- ぱれーど・ぱれーど ---
--- ぱっぱらぱ・ぱらっぱ ---
--- ぱっぱらぱ・ぱらっぱ ---
--- だれでも ひとでも おばけでも ---
--- ミンナ あつまれ ぱれーどだ ---
--- ぱっぱらぱ・ぱらっぱ ---
--- ぱっぱらぱ・ぱらっぱ ---
なんなんだ。もしかしてこれは夢か?。いや、現実か?。猫はおとなしく抱っこされている。シャーシャー言っているが。逃げ出そうとはしない。不気味な音楽がすぐ近くまで近づいている。チラリと音楽のする方を見る。なんてこった。人らしき何かが大勢どこかに向かって動いているではないか。薄暗いせいでよく見えない。
「怖い」
何ともいえない恐怖感に襲われる。動くことが出来ない。その時、猫が突然、腕のなかで暴れだした。慌てて放すと、あろうことか人らしき何かの方へ向かって行った。
「おい、そっちは…」
無理矢理走って追いかける。人らしき何かの1人がこちらを振り向いた。
「不味い」
猫を追いかける。手を伸ばす。間に合え。
「捕まえたっ」
猫を捕まえた、そして全力で走ってさっきの陰に隠れる。しかし、人らしき何かがこちらに近づいてきている。とうとう目の前にやってきた。
人らしき何かは仮面を着けていて背が高かった。手に何か持っている。
「あらら…」
足かすくんで動けない。声も掠れている。
どうしよう。すると猫がピョンと抜け出し。
「ニャーオ」
と鳴いたことを最後に私の意識は途切れた。
意味不明過ぎて自分でもよくわかりません
ご自由に解釈をしてください。
初投稿がこれでいいのか?
もしかしたら消すかもしれません。
ここはどこだ
どこかのお話と繋がっているかもしれないし、繋がっていないかもしれない。
ここは何処だ。気付けば椅子に座っていた。
というか何か忘れているような。
「あっ、猫どこいった」
猫がいない。猫を追いかけて来たのか。
「オヤオヤ、オ呼ビデスカ?」
探していた猫は私の目の前にいた。お前、二足歩行だったのか
はぁ。私は疲れ過ぎているのかもしれない。知らない場所、猫は立ち上がって喋りだし、帰り方もわからない。完全に詰んでいる。
諦めた方が早そうだ。
「何モ 答エナイノカイ?」
「いや、すまない。知っている事でいい、ここは何処だ、教えてくれ。」
「此処は |アッチ《アノ世》ト |コッチ《コノ世》ノ 狭間。アーシハ ココノ 住人。 〈フーチェ〉トデモ 名乗ッテ オコウ。」
「フーチェか、よろしく。」
アッチとコッチって何だ?
もしかしてあの世とこの世か?そしたら私はもう死んでないか?
「安心ナサレ、貴方ハ、此処ノ|客人《ゲスト》トシテ招カレタ。《《マダ》》死ンデハ イナイゾ。此処デ少シ休ンデ帰エルイイ。紅茶ヲ淹レヨウ。」
この猫考えてる事分かるのか?
「そうか、ありがとう。」
平然を装っているが、流石にあり得なさすぎる。とりあえず、ありがたく紅茶を飲んで帰ろう。
テチテチと足音を立てながらフーチェは紅茶を淹れにいった。
私が《《まだ》》死んでいないというのはどういう事なのか。
そんなことを考えている間にフーチェはティーセットを持ってやってきた。
「今カラ紅茶ヲ淹レルガ、ミルクティー ノ方ガイイカイ?」
「いや、ストレートでいい。砂糖はいらない。」
フーチェは慣れた手付きで湯気のたつポットに茶葉を入れ、トポポと湯を注いでいる。どこから持って来たのか分からない懐中時計で蒸らす時間を計り始めた。
猫って紅茶淹れられたっけな。気にしたら終わりか。
「少々時間ガアルノデ聞キタイ事トカナンカナイカ?」
「ならば聞こう。此処は現実なのか?ちゃんと元の場所に帰れるのか?」
「正確ニハ此処ハ現実デハナイ。チャント元ノ場所ニ帰レルヨウニハシテアル。夢ダト思エバイイサ。」
フーチェは器用にポットを持ってティーカップに紅茶を注いだ。白いティーカップに鮮やかな紅い紅茶。まるで宝石のように輝いている。
「オ茶菓子ニクッキーヲドウゾ。」
どこからかクッキーの入った缶を取り出した。どこから持ってきているのか。謎だ。
「あ、ありがとう。」
クッキーを1枚つまみとって食べる。
「うまっ」
サクサクしていて、優しい甘さが広がる。
そして紅茶を一口。
「アツっ、けどおいしい。」
暖かさと華やかな香りが広がった。
「ソウカ、ヨカッタ。サッキノ質問ノ答エデモ答エヨウカ。」
そうして話を聞いた。
分かったことをまとめると
・此処はこの世とあの世の狭間である。
・|主《マスター》が認めないと訪れることができない。《《|主《マスター》って誰だ》》フーチェではないらしい。
・変な音楽と変な集団は|夜行《ぱれー ど》であること
・巻き込まれると存在ごと消され、存在が
なかったことにされること
つまり死ぬのである。
こわっ設定もりもりじゃん。
「どうしたらいいんだ?」
あれ?フーチェが何か言ってるけど聞き取れない。
「◎▼◤◼◌◁○◐…………」
目の前が白くなってきた。何か聞こえるような。
ピピピッピピピッピピピッ
---
「んぇ?ここは?」
意識が覚醒する。見知った部屋の中、何か聞こえたと思ったら携帯のアラームの音だった。
「んー何か知らない所に居たような気がする……」なんだったっけ?
まぁいいか。朝の準備しないと。
後日、夢の中の出来事によってめんどくさいことに巻き込まれることになろうとは知るよしもなかった。
夢オチ………かもしれない。
いろいろと不確定なお話。
よるのあめ
--- 「ひとりになりたい」 ---
そう思いながら雨の中、真夜中の住宅街を歩く。 紺色の傘をさして。あてもなく。
別に誰かと喧嘩しただとか勉強か嫌になったとかじゃないけど、たまに一人になりたくなる。誰の目にもつかない場所に行きたい。ただそれだけ。
雨のせいで寒いのかまた別の何かか《《孤独感》》というのだろうか、それが次々と襲って来るそんな感覚。どうにかしたくてただただ歩く。
傘に叩きつけられる雨の音、靴の音、明るいのは街灯の明かりだけ、後は真っ暗。この感覚がなんだか気分を落ち着かせてくれた気がする。
ひたすら歩いてふとスマホの時計を見る。どうやら日付が変わった直後のようだった。自分はどこに行きたいのか、雨はいつまで降り続けるのか、そんなことも考えつつまた歩き始める。
そういえば家は大丈夫だろうか。誰も起こさないように出てきたつもりだか、バレていないだろうか。バレてたら結構困る。かれこれ10回以上こんな風に歩いている日があるのだか、これまでに5回バレているのだ。何故バレる。訳が分からない。今度バレたら盛大に怒られるかもしれない。
ふと、ポケットに手を突っ込んでみると、飴が入っていた。包みを開くと丸い飴玉。口の中に放りこむとみたらし団子のタレみたいな味がする。 カンロ飴だった。ちょっと溶けているが気にしたら終わりだ。気にしない。
雨も小降りになってきてそろそろ家に帰りたくなってきた。歩いてきた道を引き返す。結構な距離を歩いて来てしまったようだ。
飴玉を転がしつつスケジュールを立てる。
少し寝て起きてから何をしようか。
どうせ休みだから片付けをしたり読んでいない小説や漫画を読むことにしようか、それとも…
抱えていた《《孤独感》》はどこへやら、今は少しでも前を向けたらな、なんて思っている自分がいる。
雨と飴
どんな〈あめ〉が好きですか
逃避行
深夜1時 寝静まる夜 一人きり
月明かり 頼りに 歩き出す 逃避行
見たくない現実 よみがえる過去の記憶
見えない明日の自分の姿
耐えきれないくらいに
押し潰されてしまいそうな重圧
誰か助けてくれますか
哀しき故に歌う空へと逃げるように
怪奇なもの見る視線と鋭利な言葉の囁き
追いかけた夢は何処へ目指した場所は何処
絶望の淵にやられ 背中から堕ちてゆく
手をのばせど 届かぬ 希望に
何度 触れようと したのでしょうか
遠く 薄れゆく 夢の続きは
見られぬまま朽ちてゆく
光差さぬ影の中で偶像を見つめる虚ろな目
誰の役にも立たない役立たず
誰の目にも写せない心を閉ざす
誰にも期待されずに消えてしまいたい
逃げるように 逃避行
今何時 夜は|耽《ふけ》る まだ一人
月明かり 雲隠れ それでも 逃避行
通じない考え また一人減る仲間
明日の自分は何処に行くのだろう
耐えきれなくなった 重圧に
素通りしていく人々
哀しき故に歌う海へ誘われるように
不気味な色をした瞳 誰にも届かなくなった声
高く掲げた目標なんて目指した目的地なんて
着くことのない終着点 暗い道を行く
手をのばせど 届かぬ 星空に
何度 願いを 流したでしょうか
遠く 途切れてく 物語の続きは
誰にも触れられず 朽ちてゆく
光差す光の中で何も映さぬ瞼の奥の目
歪な形の心の中風|靡《なび》く
歪な思考で何を考える
誰にも期待されない要らない子
このままずっと 逃避行
1人きりの逃避行
目的地はどこだろう
行く末はどこか遠く
冷たい風が頬を撫でる
伝わらない思い打ち明けず
暗い道を進み続ける
月明かりすらどこかへ消える
星の光も消える
明日の自分はどこだろう
ずっと続く逃避行
ゆめのあと
夢の後、それは明けゆく朝、目覚め。楽しかった夢もいつかは覚めなければならない。深い眠りから覚めなければならない。
私は夢の後は嫌いだ。いつも後悔と、虚しさ、悲しみを連れてくる。辛い現実を突きつけてくる。
いっそこのまま暖かい夢の中で|溺《おぼ》れてしまいたい、なんていつもそう考えている。
無機質なアラーム、簡素な朝食、準備をして、学校へと向かう。半日位学校で過ごして家に帰る。その後宿題をしたり、夕飯を食べたり、お風呂とかいろいろ。最後に布団に潜り、深々と夢の中へ|堕《お》ちる。毎日その繰り返し。何の意味があるのだろう。生きている意味とはなんだろう。恐らくこれは悪夢なのではないか。ずっと続く悪夢。きっと暖かな夢は幻想に過ぎない。悪夢に囚われた故の幻想。そう考えているとなんだか愚かな気がしてくる。
何故、生きているのか。
何故、忠犬のように人の指示を聞かなければならないのか。
何故、型にはめられ、規律正しくしなければならないのか。
何故、人と何か異なるだけで怪奇な物を見る目で見られなければならないのか。
何故、多数の意見に流されなければならないのか。
何故、人がやりたくないことを押し付けられないといけないのか。
これが私にとっての現実なのである。こんな現実なんて悪夢のようにしか思えない。どうして悪夢は覚めないままなのか。楽しい夢はすぐに消えてしまうのか。これだから夢の後は嫌いなのだ。最近は悪夢から逃げるための現実逃避についてずっと考えている。「現実逃避」が私にとっての「逃げ」なのかもしれない。暖かな夢を見るために。
---
夢の跡、それは自分の夢を諦めた時にできる影。いくら追いかけても追い付けなかった夢。高々と掲げている程、追い付けなくなると私は思う。
私の夢は今、よく分からなくなってきている。なぜなら、長年追い求めていた夢が現実味を帯びていないような気がしてきたのだ。小さな頃からずっと同じ夢を追い続けてきたが。自分にとってこれが憧れなのか、最善なのか、あやふやになってきたのだ。
どうしてこの夢を持ち始めたのか正直覚えていない。このまま夢に向かって突き進んでいいのか、もう夢を諦めて他のことを探すか、どうすればいいのか分からない。もう夢に呪われている。囚われの身なのかもしれない。
夢の跡をなぞって何になろうか。最善は何なのか、|揺蕩《たゆた》うしかない。
---
「暖かい夢に囚われ続けていたい」なんて言っていたら私の周りの人々は離れて行くだろうか。失望させてしまうかもしれない。でも、私は現実なんて見たくないし、やりたくないことはやりたくないし、自分の夢なんて分からなくなってきたのだ。こんな私に存在意義なんてあるのだろうか。
皆が望むのならいっそ消えてしまいたい。
目覚めないままずっと暖かい夢の中で溺れてしまいたい。囚われの身になっても。
ゆめのあとはどんなあじ
森の奥、霧の館へ(前編)
こんな噂知っているかしら?
雨が降ってて霧が濃い夜にあの森に行くとね、大きな洋館があるの。
霧の立つ森の奥を進んで行くと、その洋館の周りだけ霧が晴れているのよ。
霧の館なんて呼ばれているらしいけどそこら辺はあまり知らないわ。
あの洋館の中では美味しいお菓子が沢山あって館の主人がおもてなししてくれるのよ。
行ってみたいと思った?行ってみてもいいけど、でも、これだけは気を付けて、絶対に
『大きな鏡のあるお部屋には入ってはいけない』わ。
絶対に。
入ってしまったら最後、もうこちら側の世界には戻れないわよ?永遠に。
なんでこんなことを知っているかって?
それは、そうね、私はあの洋館の住人ってことでいいかしら?
このことは他の誰にも教えてはいけないわ。
私との約束ね。
そんな夢を見た。あの人綺麗な人だったな、まるで人形みたいな、いや、妖精みたいな感じの。
「夢にしては妙にリアルだったなこれ…本当だったら、行ってみようかな。気になるし。」
ということで雨の日を待って実際に行ってみることにした。
---
数日後
---
今日はザァザァと雨が降り続いている。
時刻は午後6時夕方の時間帯。そういえばこのくらいの時間は逢魔が時とも云われているらしい。
両親は昨日から仕事で県外に出張中、3泊4日で帰って来ない。
実行に移すにはうってつけだ。
傘と携帯を持って噂の森へ向かう。雨が降っているし薄暗くなる時間帯なのでほとんど人は出歩いていないようだった。
森の方へ近づいて行くにつれ、霧がだんだんと濃くなっている気がする。
森の奥へ歩いて行く。
ザァザァと雨の降るなか1人で。
雨の音と自分の歩く音しかしない。
不気味すぎて帰りたくなってきた。
ふと、周りを見渡すとそこは木々の覆い繁る森の中であった。
「帰りたいけどどうしよう、帰り道が分からなくなっちゃった。」
携帯は…
電波飛んで無い=助け呼べない=詰んだ。
こうなったら歩くしかない。
さらに森の奥深くへと歩いて行くのだった。
周りはますます不気味さを増してくる。
体感では2時間くらい歩いている気がする。
「なんだか急に霧が晴れて来たような?」
辺りの霧が薄くなっている気がする。
遠くに光る何かが見える。あれが洋館なのか?
光る何かに向かって走り出した。
「ちょっと走るには邪魔になってきた。」途中で傘が邪魔になり、傘を手放してしまった。小雨にはなりつつあるが、全身がずぶ濡れになってきた。か、気にせずただひたすら走る。走る。走る。
だんだんと光が大きくなって雨も次第に止んできた。
そう、ついについたのだ。あの洋館に。
「ついたのか?ここ。洋館だよね?」
ノンストップで動き続けてもう疲れが限界に近づいており、洋館についてほっとしたのか全身の力が抜けていった。そのまま気を失ってしまった。
---
「おや?お客人かいらっしゃったようだ。はて?様子が少しおかしいようだね。グレース、客人を連れておいで。おもてなしをしよう。」
「分かったわ。行ってくるわね。」
「あぁよろしく。さぁて、僕は客人用の部屋を整えておくとしよう。」
暖炉に薪をくべ、部屋を暖めておく。客人用の部屋はシーツを取り替えて、もしかしたら着替えが必要になるかもしれない。紅茶は後で準備しようか。どのようにおもてなしするか、考えただけで楽しくなってくる。あわよくば自分等の仲間に…なんてね…
しばらくして
「主さん、連れてきたわ。」
お客様をふわふわと魔法で浮かべたグレースが帰ってきた。
「魔法である程度乾かしたりしたけど、この子、気を失っているみたいよ?ベッドに寝かせてもいいかしら?」
「あぁよろしく。グレース、久し振りに魔法使ったみたいだけど、大丈夫?」
「あら?大丈夫だけど、どうしたの?」
「いや、なんでもないよ。さぁ、お菓子を用意してお茶会の準備をしておこう。」
---
甘い匂いがする、お菓子かな。目が覚める。
知らない天井、フカフカのベッド。なにこれ、ずっと寝てたいんだけど。
違う、そうじゃない
「ここはどこだ?」
「お目覚めかな?お客様。」
「ふぇ?!」
「開口一番それとは、面白いね。目が覚めたなら紅茶は如何かね?甘いケーキもあるよ?スコーンとかの方がよかったかな?」
突然何なんだ?気付いたら知らない部屋にいて、漫画とか小説とかで出てくるような
貴族の人達が来てそうな服を着た男の人。どういう状況なんだこれ。
じゃなくて。
「ここはどこなんですか!?」
ちょっと強めに聞いてみる。
「ここはね、君達が霧の館と呼んでいるところだよ。僕はこの館の主、まぁ~適当に呼んでもらえばいいよ。」
「はぁ、ソウデスカ……」
何なんだ?この人。訳が分からない。
とりあえず目的地には着いたらしいけど、どうすりゃいいんだ?
「よーし、今から君を食堂に連れてってあげる。紅茶には何を入れるかな?シュガーにミルク、レモンもあるよ。」
少しヒールの高いブーツを軽やかに鳴らしながら、手を引かれるままどこかに連れられて行く。拒否権は無しかぁ。
トッ トッ トッ トッ トッ トッ
誰か走ってくるような気がする。
「ぐぉ」
腰の辺りに何かがぶつかってきた。地味~に痛かったんだけど。
「わァ~ひっさしぶりノおっきゃくさま~」
「 ねェいっしょニあそぼ!あそぼ!」
『なにしてあそぶ?』
誰ですかこの子達。瞳の色以外瓜二つではありませんか。双子かな?凄く可愛いんだけど。
「こーら、ダメよ2人とも。お客様びっくりしちゃったじゃない。あら、ごめんなさいね。この子達遊び盛りだから、多めに見てあげて。」
今度は女の人だ。綺麗なドレスだなぁ~。何だかどこかで会った事がある気がする。どこだったかな。
「ここで全員が揃うのは面白いね。みんなで食堂に行こうか。この子達の紹介もしたいし。」
と主さん
向かった先は広い食堂だった。
食堂に着くと、お菓子の甘い匂いが広がっていた。ここから甘い匂いってしてたんだ。
大きなテーブルにはレースのテーブルクロスが敷かれ、その上にはティーセットとさまざまな種類のケーキやパイが置いてある。凄く豪華だな。
「さあさあ、座って、|お茶会《ティーパーティー》を始めよう。」
紅茶とアップルパイが一切れ。
出来立てのようで湯気がたっている。
「さぁ、召し上がれ♪」
アップルパイにフォークを刺すとサクッと美味しそうな音がして、甘く煮詰めたリンゴとほのかにシナモンの香りが漂ってきた。一口サイズに切って、頬張る。
「!美味しい。」
サクサクのパイ生地は香ばしくてそこに甘く煮詰めたリンゴがシナモンの香りと上手い具合に混ざってとても美味しい。
何切れでも食べられそう。
ついでに紅茶も一口。
「うま~」
この紅茶ってどこの茶葉なんだろ?
とっても高そう。
まあいいか。
白い陶器のカップに夕焼け空みたいな茜色の紅茶は映えるなぁ~
「お気に召したかな?おかわりもあるからたんと食べるといい。」
ニコニコと主さんはこちらを見守っている。
「食べながらでいいから僕達の紹介をしよう。」
「この双子君達は僕の小さなお友達。瞳の色が紅い方がイルム、瞳の色が蒼い方がテルだよ。凄く似てるけど微妙に違う所がいくつかあるから見分けはつくはずさ。」
「彼女も僕のお友達。名前はグレース。お菓子作りが得意でここに並んでいるお菓子達は全て彼女の手作りなんだ。ちょっとした魔法も使えるんだよ。」
「最後にさっき説明した通り僕は館の主。名前は秘密。みんなからは『|主《あるじ》さん』って呼ばれてる。ここは僕たちだけの館。君は久し振りのお客様だからね、とっても楽しんでもらいたいんだ。」
そういえば今、何時なんだろう?ポケットに携帯が入ってたはず…あれ?無い。ポケットには入っていなかった。
「どうしたのかね?何か気になる所があったのかい?それとも今お探しのこの板のことかな?」
主さんが右手に掲げているのは自分の携帯だった。
「それです。|それ《携帯》、返してくれませんか?大切な物なんです。」
今、携帯を板って言った?スマホ知らない人っているのか?
「それは無理だねぇ~」パシッツ
「え…?」
笑顔で携帯、消されました。なぜ?。マジックかなにか?
「びっくりした?」
「お茶会はもういいかな?僕とちょっとしたゲームに付き合ってもらいたいんだ。君がゲームに勝ったらあの板も返してあげる。でもね、君がゲームに負けたら………ん~どうしようかな。」
「はぁ……」
なんということでしょう、お菓子誘われてお茶会に出てみれば携帯を消されたではありませんか!
現在進行形で地獄見てんだけど。
携帯返してホントに…
「ゲームって言っても至って簡単。館の中で『宝さがし』をするだけだから。この目の前にある振り子時計が3回鳴るまでにこの館のどこかにある|あの板《携帯》を探すだけ。時間確認用の懐中時計を渡すから。ね、簡単でしょ?」
渡された懐中時計は細かな装飾が施されている。針は1時ちょうどを指していた。
「そうですか…分かりました。やりましょう、宝さがし。」
「ヒントはどこかの部屋の棚に置いてあるよ。」
こうして携帯を探す『宝さがし』がはじまった。
---
後編へ続く!
長くてとても意味が分からない小説(当社比)になりました。自分でもよく分かりません。しかも前編て…
書きたかった話からなんか遠くなった気がします。
自分の読みたい話が見つからないからって自給自足して書くのは難しいですね。
最後までお読み頂きありがとうございました。
後編もお楽しみに。
いつ書き上げられるか分かりませんが、いつかは投稿します。
お茶会
謎の招待状を持ったあなたはアゲハ蝶を追いかけて不思議なガーデンテラスにたどり着く。
春の暖かい昼下がり。
どこかのガーデンテラスではお茶会の準備が進められていた。
--- まぁるいテーブル ---
--- 真っ白なテーブルクロス ---
--- ティーポットとティーカップを温めて ---
--- お気に入りの茶葉を準備して ---
--- 角砂糖と蜂蜜、レモンにミルクも準備 ---
--- ケーキスタンドには何を乗せよう? ---
--- ケーキにスコーンにマカロン ---
--- サンドイッチにクッキーも ---
--- 季節に合わせた特別なお菓子を ---
--- たくさん乗せてみんなで食べよう ---
--- そろそろ紅茶を淹れなくちゃ ---
--- 温めたティーポットに茶葉を入れて ---
--- 懐中時計で時間を測らなくちゃ ---
--- 蒸らす時間はとっても大切 ---
--- 紅茶をカップに注いでいこう ---
--- 一つ一つのカップに注いだら ---
--- そろそろ招待状を持った客人がやってくる ---
---
「ようこそお越し下さいました。今からお茶会がはじまります。どうぞ、お好きな席へお座りください。」
「本日のお菓子は季節に合わせたものでございます。ケーキスタンドのお菓子は下段からお食べ頂くのがおすすめですが、ご自由に食べて頂いて構いません。」
「時間いっぱいごゆっくりおくつろぎください。」
春の陽気に誘われて、秘密のガーデンテラスで優雅ににお茶会。お菓子と紅茶、周りは季節の花達。アゲハ蝶の羽ばたきを目で追いながらゆったりとした時間を過ごす。
本日の紅茶とお菓子
・茶葉はダージリン。紅茶のシャンパンと
称される世界三大紅茶の1つです。色は
多少薄いですが、香りがよくストレート
で飲むのがおすすめです。
・ケーキスタンド下段
サンドイッチは軽く塩合えしたキュウリ
と春キャベツを挟んでいます。ひとくち
サイズになっていますのでそのまま手で
つかんでお食べください。
・ケーキスタンド中段
スコーンはシンプルにプレーンで、イチ
ゴや夏みかんなどのジャムをのせて
ください。お好みで蜂蜜もどうぞ。
・ケーキスタンド上段
ケーキはイチゴのショートケーキや春の
フルーツタルトです。素材の美味しさを
生かしたケーキになっております。
ちなみに、使用している果物はこのガー
デンテラスで収穫したものなのです。
今年の果物の出来は今までで一番良いも
のとなりました。
---
「本日のお茶会いかがだったでしょうか、心ゆくまで楽しめましたか?」
「本日のお茶会はこれにて閉会とさせていただきます。またいつか、お越しいただくのを心からお待ちしております。」
「気を付けてお帰りくださいね。」
初めて夢小説風に書いてみました。
内容がごちゃごちゃしている気がします。もしかしたら意味が分からないかもしれませんが、「ふ~ん、そうなんだ~」みたいに雰囲気で読んで貰えると嬉しいです。
お読みいただきありがとうございました
黄昏道中祭時
そう、これは一種の幻想かもしれない出来事
お祭りで神社及びその周辺は身動きが取れない程人でごった返していた。
そのお祭りがあるのを知ったのは約1
週間前。SNSで告知が投稿されていたからだ。旧暦のとある日に合わせて県内のあちこちの神社などでお祭りが開催されるらしく、一週間後、そのお祭りがあるのは隣町の神社のようだった。気になったので行ってみようかな~と思った。そして現在に至る。
「次はー○●神社前。○●神社前。バスが停止してから移動してください」
バスに乗って隣町の神社のいくつか手前で降りた。この先はお祭りで交通規制がかかっている。しばらく歩かないといけない。面倒くさいなぁ~と思いつつ歩く。同じ方向へ進んで行く人達が多かった。だからってこんなに多いとは思ってもいなかった。
--- ワイワイ ガヤガヤ ---
--- ザワザワ ギャーギャー ---
人が多い。どこからこんなに人がやって来るのだろう。
屋台で何か買おうとしたけれど先にお祭りのメインである|灯篭《とうろう》を見に行くことにした。灯篭は神社の境内へ続く階段にズラッと並んでいる。さまざまな人が書いたであろう灯篭が夕方になるにつれてろうそくが付けられていく。
「きれいだなぁ~。灯篭なんて小さい時に作ったっきりだっけ」
幻想的に照らし出すのはなんともいえない感じだった。知り合いの作った灯篭もあった。暫く会っていなかったので何をしているんだろうとは思っていたけど灯篭、作ったんだな。
「今度、連絡してみるか」
一通り見に行った後で何か買おうかなと思っていながらも何を買おうかなんて思い付きもしなかった。ふと、周りの人を観察してみる。なんだか狐の面を着けている人が多い気がする。
「流行ってんのかな、狐の面って」
どこを見ても狐。狐。狐。形は微妙に違うけど狐の面ばっかり。異世界にでも来たような感じだ。このお祭りって狐の面って必要だったっけ? と思いながらもお面の屋台があったので他の人達と同じように狐の面を買うことにした。
「おじさん、これ下さい」
「おう、面白いもん選ぶじゃねぇか。1つ1000円だが安くしとくぜ?700円でいいぞ」
「ありがとうございます」
何か知らんけど安くしてもらった。ちょっと嬉しかった。面1つに1000円って高くないか? と思いつつ。
白をベースに目元が朱くなっている一般的な狐の面に少し飾りがついている。仮面舞踏会の時に着けるようなマスクのような感じで目元だけが隠れるような面にした。早速着ける。視界が少し狭まるがあまり気にならない。似合っているかは……分からない。
屋台ではしまきを買って何処か食べられそうな場所で食べる。
「できたてだ! おいしい。箸に巻いてあるからちょっと食べにくいけど」
(流石に買う時と食べる時は面を外した)
おなかがすいていたのでちょうどいいなと思いつつ、何か食べ足りないなぁ~と思った。さっき買った烏龍茶で喉を潤しつつ、ぶらぶらと屋台を見て回ることにする。
たこ焼き、焼きそば、フライドポテト、かき氷。りんご飴にわたあめ、冷やしパイン。
「いろいろあるな~ホントに迷う」
その中で焼きそばとりんご飴を買った。食べるにしても人が多すぎてゆっくり食べることができないので、少し先にある公園で食べる。
この時点で粉ものと麺類、飴だとかカロリーとか気にしてられない。気にしたら負けである。カロリーを消費するために歩けば良いのだ、歩けば。とにかく楽しんだ者勝ちだ。
公園のベンチに座って焼きそばを食べる。ソースの匂いにつられた。仕方ない。美味しそうな匂いだったからつい買っちゃった。すこし味が濃いけどそれがいい。しれっと食べきってゴミをまとめる。
お次はりんご飴。小さなリンゴに甘い飴が薄くかかっている。飴の部分はすぐになくなってしまい、シャリシャリとリンゴをかじる。
「そういえば、小さかったときよく買ってもらってたな、りんご飴」
お祭りといったらりんご飴だと、思ってる。りんご飴も食べきってゴミもまとめてゴミ箱に捨てに行く。
これからどうしようと考えながらふと、「この時間帯って黄昏時って言うんだっけ」
「そうらしいねぇ~君は特に気を付けなよ~」
「気を付けるって何にさ」
「人ならざる者達にだよ。妖怪とかあやかしとかの類いだね」
「君はいろんなものに好かれやすいから」
「そうなんだ、なんか恐ろしいね。気を付けておくよ」
とかなんとか親友と話していたことを思い出した。
黄昏時、午後5時くらいから7時くらいをさし、段々と暗くなっていく時間帯である。そのことから魔物や災いに遭遇しやすいらしい。
「ここって神社の近くだし何か起こったりして。」
なんて事を考えながら狐の面を着けてブラブラと境内の方へ歩いていると、騒がしい人混みの中から遠くで鈴の音が聞こえる……気がする。
--- シャラン シャラン シャラン ---
--- シャラン シャラン シャラン ---
--- シャラン シャラン シャラン ---
回数が増すごとに段々とこちらに近づいているような。
--- シャラン シャラン シャラン ---
--- シャラン シャラン シャラン ---
--- シャラン シャラン シャラン ---
何か大勢の足音が聞こえる。
その時、これでもかという程騒がしかった人混みの動きが止まった。動いているのは自分だけ。後ろを振り向くと誰もいない。元の方向に戻るとこちらも誰もいなくなっていた。自分以外どこかへと消えてしまった。
「どこ行ったんだ?みんな。ぶっちゃけめっちゃ怖いんだけど」
鈴の音と足音。向こうから紅い傘をさした人達が近づいてくる。
--- シャラン シャラン シャラン ---
--- シャラン シャラン シャラン ---
--- シャラン シャラン シャラン ---
紅い傘をさした人達は1列となって神社の方から歩いてきた。よくみるとみんな狐の面を着けており、和服だった。傘だったり提灯、鈴とか人それぞれ手に持っているものが違った。物陰に隠れようとしたけれど足が動かない。ついには怖くなって腰が抜けてしまった。動けない。ただ、地べたに座って行列を見ていることしかできなかった。
このご一行はどこに向かっているのか。
列の真ん中に豪華な着物を着た女性が歩いていた。
(狐の面を着けていたので顔は分からなかったが背丈からしておそらく女性な気がする)
まるで狐の嫁入りとか花魁道中みたいだと思った。
「きれいだ。」
むせ返るような甘い花の匂いが漂い。周りが霧がかってきてだんだんとご一行の姿も見えなくなった。
「……っい! ……おい! 起きろ! 」
「んえ?」
気が付くと目の前に狐の面。霧は晴れている。
「うわぁ~」
「開口一番に『うわぁ~』とは何だ、貴様」
「貴様って酷くないですか!?」
なんなんだよこの人……あの御一行の仲間かな? 和服だし。
「どうでもいいだろ。で、貴様、ここの奴らじゃないだろ」
「そうらしいですね? 気付いたらここに。というか、人が消えたんですよ! 」
「人が消えたんじゃなくて貴様が|此方《こっち》に来たんだよ」
?いまなんと?
「もう一度言ってやろう。《《人が消えたんじゃなくて貴様が此方に来たんだよ》》」
「はぁ?」
一番あり得ないこと言ってきたぞこの人。
さっきまでお祭りの会場にいたんだけどなぁ~。てか『此方に』てことは自分、死んでね?
いつ死んだんだよ。
「言っておくが死んではいない。約束を守れば向こうに帰れる」
「それを早く言ってくださいよ~。まず、腰が抜けて立てないので手伝ってくれません?」
「あいよ」
手を借りてどうにか立ち上がり、狐の面の人についていくことになった。
「帰るんだったら急ぐぞ、時間が経ったら帰れなくなる」
「はい?」
ついていった先には大きな鳥居があった。
「どうして此方に来たのかは知らねぇが、この鳥居の先を真っ直ぐ進めば元の場所に帰れるはずだ。その代わり約束がいくつかあるがな」
その約束というのがこうだ。
・烏の後をついていくこと(帰り道を知っているから)
・何があっても絶対に振り返ってはいけない
・つけている狐の面をはずしてはいけない
・さっき見たことや聞いたことを他の人に言ってはいけない
言ったら最後また向こうに引き込まれてしまうらしい。
「そもそも貴方って何者なんですか? 」
「世の中には知らない方がいいこともあるさ。特に何もないならもう行け!」
半ば追い出されるように背中を押され、目の前に烏がいた。
「カァ~ガァガァ~」
「ついてこいって言ってるのか? 」
目の前の烏は飛ばずにピョコピョコと跳び跳ねている。かわいい。
ピョコピョコ、ピョコピョコ。
いつまでも歩けばいいのだろう。結構長い時間歩いているような気がする。
携帯は圏外。参道をあるいているのだが、何も変わらない景色なのでだんだんと飽きてきてしまった。
--- シャラン シャラン シャラン ---
まただ、鈴の音。後ろから。けど、振り返ってはいけないんだった。
ただ、ひたすら進むだけ。烏の後ろをついて行きながら。
なんだかまた霧が濃くなってきた。まだ歩みを止めずに進む。
「ガァ~カァ~」
烏が一声あげながら飛び去っていった音がした。
道案内はここまでのようだ。そろそろ家に帰りたい。
ふと、やけに騒がしくなったと思った。
濃くなった霧がバッと晴れ、目の前に人混みが現れた。見上げると大きな鳥居。元の場所に帰りついたのか? 見知った道に突っ立っていた。
「何だったんだ?」
疑問は絶えないが無事帰ってこれたことだし家に帰ることにする。いろいろとありすぎて疲れた。
もう日は暮れており、辺りは屋台の明かりや街灯が灯っていた。
「バス乗って帰ろう」
何事も無かったかのように日常は動き出す。
いろいろ設定もりもりになった気がします。気付いたら増えてた。文章も増えてた。
書いてるやつ異世界ものか何か食べてるやつが多いなぁ~と思う今日この頃。
今回もお読みいただきありがとうございました。
こばなし~烏のごはん探し~
はい、どうも|烏《カラス》です。
今日は空を飛びながらごはん探しをしています。朝ごはんを食べ損ねてしまいましてね。休憩がてら電柱から観察をしていると、食べ物……いえ、さまざまなものがつまった袋が積み上げられているではありませんか! 緑色の網がかけられていますが、袋の端さえついばんでしまえばこっちのものです。どうにかごはんにはありつけそうですね。
近くまで飛び降りてちょっと袋の端をくちばしでツンツン。穴を空けてガサガサとあさってみましょう。
・・・
おや、めぼしいものが見つかりませんでした。こういう時ってかなしいですね。食べ物は無さそうです。
「ゴラァ、なにしとんじゃカラスが!」
おやまぁ、人間に見つかってしまいました。何故か人間に嫌われているっぽいんですよね。理由は知りませんが。そんなことよりこのままじゃ捕まってしまいそうなのでここは逃げるとしましょう。人間さん、さようなら~。
翼があるってこんなところで便利です。
お手入れは多少大変ですが……
ごはんにはありつけなさそうですね。
おや? 遠くに見えるのはビワの木でしょうか? 時期的にはちょっと実は無さそうですが行ってみるとしましょうか。
何ということでしょう! いい感じにビワが実っていました! やっとごはんにありつくことができそうです。いい感じの枝に止まって実をいただくとしましょう。烏って甘いものには目がないんです。
なかなか美味しいですね。はて、どうしてこんなところにビワの実がなっているのでしょう? 時期的にはそろそろ終わりのはずではないですかね。そんなことは今はどうでもいいですね。食べることに集中いたしましょう。ふぅ、今日もごはんを食べることができてよかったです。明日もごはん探しをがんばるとしましょうか。
今日のところはさようなら。またどこかで空を飛んでいるかもしれませんよ?
烏ってかわいいですよね! とくにピョンピョン跳ねながら移動するところとか。いろいろ。
お読みいただきありがどうございました。
海と空と夢
今日も今日とて忙しく。ドタバタとした1日だった。そのせいか風呂に入って髪を乾かしているうちにだんだんと眠くなってしまった。髪は乾ききっていないが、どうせ明日は休みだ。明日の事は明日の自分に任せよう。今日のところは寝てしまおうと、布団に横になる。疲れきっていたのかすんなりと眠ってしまった。
時刻は午後10時。いつもよりずいぶんと早く眠ってしまったのである。
--- 浮遊感 ---
宙に浮いているというよりは水の上で背浮きをしている感じ。そして、目を開く。自分は眠っていたはずなのだが、ここはどこだろう。一面空色である。誰もいないし、何もない。寝ていたのだし、所詮、夢の中なのだろう。浮いているということは、からだの向きさえ変えれば歩けるのか? よく分からないことを考えながら仰向けから起き上がろうとしたのだか、勢い余って1回転してしまった。地に足は着きそうにないようだ。溺れる感じもない。諦めてうつ伏せになってばた足で移動してみることにした。水中で移動するように。意外と動けるらしい。
やはり誰もいないし、何もない。しばらく泳いで? みたのだか、ずっと同じところをグルグルと回っている感じで全然動いている感覚はなかった。そもそも風景が変わらなければ動いているのか分からないのである。また、仰向けになって背浮きをする。プカプカと浮かぶ感覚を味わう。
こうしていると小学校高学年のときを思い出す。プールでよく背浮きをして空を眺めていたっけ。青い空を流れる大きな白い雲を眺めて。
当時の友人に
「なにしてんの? 浮いてて何が楽しいの? 」
と聞かれたことがあって確か、
「楽しいさ。雲の流れとか見てるんだ」
って答えたような気が。そう答えたら呆れられたっけ。
「ふぅん。そうなんだ」
って。
いつか海に行って大空を眺めてみたいとは思っていたけど、夢の中でこうなるとは予想していなかったな。実はこうみえて海どころか川で遊んだことすらないのだ。最近は忙しすぎて海とか川とかに行こうとすら思わなかった。この機会にいいかもしれない。
澄みきった水色の空。陽射しはないが暖かい。まるで自分もその空の一部になったような気がした。夢の中だと分かっていてもなんだかここにずっといたいような感覚に陥る。ここには忙しい仕事もないし、面倒くさい人間関係もない。きっと心も体も疲れきっているのだろう。誰もいない、何もないところに行きたい、海に行きたいって無意識のうちに思っていたのかもしれない。ここは海ではないけれど。
いま何時なんだろう。そんなこと知ったこっちゃない。
♪~♪~♪
何か聞こえる。音のする方へ向かう。よく見ると何か光っているようで、だんだんと近付いている。自分が近付いているのか、あの光が近付いているのかは謎だが。何があるんだろう。眩しすぎて目を瞑る。
再び目を開くと、自分の布団の上だった。夢の中での逃避行はもう終わりらしい。何か聞こえると思ったのは携帯のアラームだった。夢が夢のせいで寝れた気がしない。とりあえず今日も仕事があるので、準備をしなければならない。時刻は午前6時15分。結構寝ていたようだった。
記憶が正しければ髪の毛が濡れたまま寝てしまった気がする。寝癖がひどくありませんように。洗面所に向かう。鏡に映った自分はそこまで寝癖がひどいようではなかった。軽く髪をまとめて朝ごはんの献立を考える。
今度の休みには一人で海にでも行こうかなと計画をたてながら。
忙しい1日は今日も幕を上げる。
夢ってなんなんでしょうね。高確率で変な夢をみてしまいます。
投稿する小説、夢関連の内容が多いと思った今日この頃。
お読みいただきありがとうございました。
おかしな部屋へと招かれて
「朝……か」
枕元に置いてある目覚まし時計が指す時刻は午前5時。まだアラームが鳴る前に目が覚めてしまった。少し空が明るくなり始めた頃。自分ひとりだけの部屋、聞こえてくるのは秒針の音のみ。
今日は休みなので別に再び寝てもいいのだが、二度寝の恐ろしさはこれまで何度も思い知っている。頭は覚醒しきっていないが起きて何かしよう。
布団から出て起き上がってみると思いの外寒く、もう一度布団の中に戻ろうかと考えたほどだった。
部屋の外へ出よう。そう思って部屋のドアを開けた。
ドアを開くとそこには自分の部屋ではない部屋が広がっていた。昨日、寝る直前までは普通の部屋だったはずなのに。どこにでも行けるドアじゃないのだから、こんなことが起こるはずがない。
「ようこそ、いらっしゃい! 」
呼び掛けられた方向に目線を移すと、椅子に腰かけた少年がいた。小学校高学年くらいだろうか。どことなく昔の友人に似ている気もしなくはない。呼び掛けても反応を示さないせいか少年は椅子から立ち上がり、こちらに歩いてきた。
「起きてるの? 返事してくれないと困るな~」
「……あぁ、起きているけれど、どうしたの?」
「そっか~よかった~」
彼は何者なのか。そもそもここは自分の家なのだろうか。きっと寝ぼけているからに違いない。
「私、まだ寝ぼけているのかもしれない。だから……」
引き返して寝室に戻ろうとすると、
「まって! お話していかないの?」
「突然何!」
引き留められてしまった。
「ここに呼んだのはこのボクなんだから。勝手に出ていくことは許さないよ」
少年が指を鳴らすと目の前のドアがきれいさっぱり消えていた。魔法か?
「なっ……」
再び彼の方へ振り向くとティーセットとお菓子を乗せたワゴンを押していた。
「紅茶とお菓子を準備してきたからゆっくりしていきなよ」
拒否権はなさそうだ。誘われるように椅子に座ると色とりどりのお菓子が並べられていく。
「さてと、何の話からしようか?」
「何の話からって一体ここはどこなの? まずはそこからじゃないかな」
「さぁ? ここがどこかなんてキミがいちばん知っているはずだよ」
そんなこと言われても、起きたての脳みそををフル回転させる。しかし、こんな場所は知らない。
「私はこんな場所知らないよ。それよりも早く自分の部屋に帰りたいのだけど」
いささか理不尽だ。どうすれば元の部屋に戻れるのか。できるなら早く帰りたい。
「そう怒こらないで欲しいな。そうだ、キミにはキャンディーをあげよう。キミの好きそうなやつ。お土産に持って帰りなよ」
フヨフヨと浮遊していたキャンディーがテーブルにいくつか置かれた。
「……あ、ありがとう」
「どういたしまして」
不思議な色合いの包み紙で何の味かは分からない。が、受け取ってしまった以上返すわけにはいかないのでポケットに放り込んだ。
一旦紅茶をひとくち、熱いし、味があるし、自分自身起きているのだろうけどこの出来事がどうも現実味を帯びている気がしない。応接室のような部屋でパジャマ姿のままというのも違和感がある。
「帰りたいのだけど、どうすれば元の部屋に返してもらえるの?」
「ん~。ボクの気が済むまでかな~? それかここに呼ばれた理由をキミが気づくまでかな~」
「それなひどいなー」
それからどれくらいの時間がたったのだろう。他愛ない話だとか世間話だとか、なんだかんだいろんな話をした。いつの間にか心のわだかまりがほどけて軽くなった気もしなくはない。
「そうか……」
どうして自分がここに呼ばれたのかが分かった気がする。きっと私が誰かに話を聞いてもらいたかったんだ。最近忙しすぎて悩みとかなんとかって相談する機会がなかったからなのだろう。
「その顔、どうしてここに呼ばれたのか分かったような顔をしているね。どう? 気持ちも軽くなったんじゃないかな?」
最初から《《これ》》が目的だったのか。それならそうと早く言ってくれればよかったのに。
「それは無しだよ。自分自身で気が付かないと意味がない。そうでしょ? 自分の事なんだから、自分が分からなかったら意味がない。」
「それもそうだね、話聞いてくれてありがと」
「どういたしまして! じゃあ、帰るなら後ろのドアから帰ってね~」
後ろを振り向くとさっきまで消えていたドアがもとに戻っていた。いつの間に。帰れるとするなら帰るとするか。
「突然知らない場所に招かれてビックリしたけれどこうなるとはね」
「突然でごめんね~気を付けて帰るんだよ~」
ドアノブに手を掛けて手を振った。ひと言言われた気がしたけどなんて言われたのかは聞き取れなかった。なんて言ったんだろう。気になったがおそらく再びここを訪れることはないだろう。
ドアの向こうは自分の部屋が広がっていた。空は明るくなりきっている。また一人の部屋。聞こえるのは秒針の音と通りに車が通る音。ポケットに手を突っ込むとキャンディーが2つ。入っていたキャンディーが先ほどの出来事が夢でなかったことの証明になっていた。お昼過ぎくらいに誰かに連絡してみようかな。なんとなくそうしたくなっただけである。
おかしな部屋でおかしなお話を
良くも悪くも不思議な話
夢、だろうか。見知らぬ部屋に|行野 導《ゆくの しるべ》は椅子に座っていた。目の前に立っていたのは導よりも年上の女性。青いワンピースに特徴的なブローチ。片手には本を持っているようだ。
「君はとある岐路に立たされている。簡単に言えば君の行動に世界の命運がかかっていると言ったらどうする? まぁ、そんなこと突然言ったって混乱しちゃうよね」
「」
声を出そうとしたら何も音が出なかった。女性は淡々と話を続ける。
「心配しなくてもこの状況を打開するある秘策があるんだ。それがこれ」
差し出されたのは黒い封筒。赤い蝋で封がされている。腕は動くようで封筒を受け取った。
「それにどう答えるのかは君次第。いろいろあると思うけどがんばって、としか言えないんだ。最後に1つ、私は喫茶デリータってところにいる……かもしれない」
と言って女性は消えたところで導は目が覚めた。あくまで夢の筈。夢見の悪い夜だったと思いながら起き上がる。手には黒い封筒があった。
封を開けると便箋が2枚。1枚目には女性が言っていた内容と似たようなこと、2枚目には契約書と書かれている。契約書には「対価と引き換えにこの命運を打開する力を授けん」
みたいなことが書かれていた。対価とは何だ。力って何だ。怖くなってきて引き出しの中に放り込んだ。
その日の学校からの帰り、気が付くと知らない場所にいた。いつもとは違う道から帰ろうとしたのがいけなかったのかもしれない。現在進行形で黒い何かに追いかけられている。捕まったらいけない、そう思いながら必死に逃げている。走り続けてとうとうつまずいてしまった。ふとポケットに手を突っ込んだ。なぜか例の封筒とペンが入っていた。もう頭の中では恐怖でいっぱいで藁にも縋る思いで名前を書く。署名を書ききった途端便箋が灰になって消えた。次の瞬間、目の前に何かいた。
「契約成立だ。ボクはメルア、|契約者《マスター》君に力を貸そう。契約の証にこれを」
この人形みたいなのが力を貸してくれるらしい。渡されたのは5センチくらいの花のブローチだった。
「君は何者なんだ?」
「ボクはボク、何者でもないさ。ただ人間ではないことは確かかな。こんなところでおしゃべりはほどほどに。さっさと行こうか」
メルアの後ろから黒い何かが襲いかかってきた。
「メルア、後ろ!」
「ボクを倒すには動きが甘いかな」
メルアが指を鳴らすと辺りが炎に包まれ何かは燃えて灰になった。
「これで良いかな? いつの間にここまで来たんだか」
「道に迷ってそっから」
「そう」
メルアについていくと知っている道に出ることができた。気が付くとメルアは消えていた。
家に帰り着くと郵便受けに梱包された荷物が入っていた。先日インターネットで注文した本が届いたのかもしれないと思ったがどうも違う気がする。宛名は自分だったので部屋で早速開けてみた。すると中身は豪華な装飾が目を引く本と鍵だった。知らない言語で書かれているようで内容は全く分からない。スマホで写真を撮って翻訳してみると、上手く翻訳されなかったようでやはり分からなかった。内容を理解することは諦めてとりあえず本棚に置いた。夕飯の時間になったので母さんが呼びに来たようで導は部屋を出た。
「遅かったじゃないか」
部屋に戻ると椅子にメルアが座っていた。もう今日1日疲れすぎて驚く気力もない。
「どうしてここに? てか何の用?」
「ブローチだよブローチ。ブローチがあれば大抵の場所なら移動してこれるんだ。ここに来たのはさっきの対価を支払ってもらうためだよ。契約書にも書いてあったでしょ?」
「確かに書いてあったけれど対価って何?」
「それが何も考えていないんだよね。面白そうだしその棚にある本でももらおうかな?」
指を指した先には先程俺宛に届いた本だった。内容は分からないし、置いておいても不気味なだけなのでいいかと思った。
「別に良いけど、こんなのでいいのか?」
「いーよ別に。対価は支払った、ということでこれからもよろしくね|契約者《マスター》君。それじゃ」
と言って消えた。なんだったんだあいつ。
ブローチは試行錯誤の末ペンダントになった。胸元に着けるより首にかけた方がましだろう。まぁ、普段はポケットにでも突っ込んでおくつもりだけど。
次の日、学校が休みだったので散歩に行った。
「よく来たね。いらっしゃい」
気が付くと喫茶店にいた。喫茶デリータ。あの女の人が言っていた場所だ。等の本人が目の前にいる。ここでは喫茶店のマスターって感じのフォーマルな服装だった。
「無事に契約も果たせたようだね。どうにかなるといいけど。まぁ、いいや。コーヒーはいかが? おすすめはブレンドだよ」
「はぁ、よくわかんないけどブレンドひとつ」
「OK。まぁ、ゆっくりしていきなよ。自己紹介が遅れたね。私は|御伽《オトギ》だよ、よろしく。これはサービスだ」
と言って目の前に出されたのはプリンだった。ひとくち食べると昔ながらのプリンって感じで少し固めのようだった。しばらくしてコーヒーのいい香りが漂ってきた。