編集者:はな
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目次
#1 入学式の朝のクラス分けのネタバレが意外とショックだった件
桜は散り始め、別れと出会いを繰り返す春。
私はそこまで思い出のなかった大森東小学校を卒業し、大森第二中に入学した。
4月8日、朝。
私、|香取萌恵《かとりもえ》は新品の制服を着て家を出る。編み込みをして一つに結んだセミロングの髪は毛先はくせ毛で外にはねているものの、トップは一筋の乱れもない。
校門をくぐり、新入生名簿が配られる。
「えーっと、、、、」
「萌恵〜!!!!」
そうやって探している間に大森東小のバレーボールチームで一緒だったみずきと、|紗良《さら》と、|遥実《はるみ》と、|心菜《みな》が私の肩を叩く。
「ああ、おはよう」
「おはよ」
「ねえ、萌恵!見た?クラス分け。」
「いや、、、」
「うちらA組だよ!」
まだちゃんと探してもないのにみずきがネタバレしてきた。
まあでも探す手間が省けたってことで出席番号を探そう、、、、。
多分「か」だから8番とかだろう、、、、。
しかし私の名前は8番前後にはなかった。「か」の代わりに8番には「ご」だった。
ってことはもっと前なはずだよね、、、、。
ずっと名簿を遡ると4番に私の名前があった。4番かぁ、、、、。6番より上に行ったことなかったからな、、。
そして1つ前の3番には私の友達の|岡田彩《おかだあや》ちゃんだった。
大森第二中は大抵の生徒が大森東小か大森第二小の出身なだけあってクラスのメンバーにも顔なじみが多い。
階段を四階上がった先が1年生の教室で、A組の教室は一番奥だった。
座席表を見ると私の席は2列目の1番前、いわゆるアリーナ席だ。
教室に入った途端みずきが言った。
「萌恵の後ろの席の人イケメンじゃね?」
名簿によるとその人の名前は|金谷光樹《かなやみつき》。私の後ろの出席番号5番。顔を全く見たことがないからきっと大森第二小の人だろう。
これが私と金谷の最初の出会いだった。
おわり
#2 入学式はいろんな人の同じような内容の話が長すぎて疲れた件
私はリュックを横にかけ座って待っていた。
そしてしばらくすると担任がやってきた。金木先生というらしい。
金木先生に入学式の手順などを説明された後、私たちは廊下へ並び親や上級生の待つ体育館へと向かった。
入場し、席に座る。最前列で校長先生の顔を眺める。そして一人ひとりの名前が呼ばれ、立ち上がり後ろを向く。
4番の実感があまりなくて4番目に自分の名前が呼ばれたときはびっくりしてしまった。
そしてC組の最後が呼ばれるまでひたすら立って待ち続ける。その時、隣の金谷と目があってしまった。
すぐに目をそらす。
そして私は思った。**金谷、身長高くね、、、?** と。
まあ私が146cmと小柄だから感じるのかも知れないが、それにしても高くないか?
多分157cmぐらいはあるだろう、、、、。11cmも見下されてるのか、、、、最悪だ。
そんなことを思ってる間にC組の最後が呼ばれて着席した。
そのあとなんだかんだ続き、誰かの話が沢山続いた後、入学式が終わった。
なんかやけにすっごい長かった気がする。疲れてしまった。
教室に戻ると一息つく暇もなく荷物を持って下へ移動し記念写真を取らされた。
記念写真は名簿順で座らされた。隣の金谷をちらっと見る。
座ってるとそこまでデカく感じないんだけどなぁ、、、、、。私が見てることに気づいたのか金谷は見つめ返してきて慌てて私は目をそらす。
やっと長かった入学式が終わったのだった。
そして翌日。
もう給食が早速ある。生活班体型で食べると言われて班の範囲を言われた。
班のメンバーを紹介しよう
1番 |石田将也《いしだしょうや》。将也は大森東小元6年1組のクラスメイト。明朗な性格できっと中学校ですぐに馴染んで友達をたくさん作るんだろうな、、。
その後ろ、2番 |大沢颯馬《おおさわそうま》。見たことがないから多分大森第二小の人だろうな。金谷とよく話してるしきっと仲いいんだろう。
そして私。4番 香取萌恵。
その後ろが5番 金谷光樹。みずきが言ったときは「そこまでイケメンでもないだろ」と思っていたが、よくよく見れば確かにイケメンかも知れない。
その次が6番 |黒田賢人《くろだまさひと》。大森東小出身だ。頭はいいんだけど、なんかちょっとよくわかんないところがたくさんある。あいつの地雷と笑うツボがわからない。
そこそこ良いメンバーだ、、、、。
おわり
#3 黒田は救世主、またの名を戦犯ということが発覚した件
今日は中学校生活初めての給食。
いただきますを言い、食べ始めた。
が、すっごい静かだった。
きっまず!!!!!!!!!!!!!!!!!
気まずすぎて何も喋れない。なんかみんな無言で黙々と食べてるし喋らんとこ。
沈黙が渦を巻くこの1年A組では放送の音がやけに大きく聞こえた。
そしてこの1班の空気を和ませたのはまさかの黒田だった。
黒田ぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーありがとう!!!!!いつも頼りないくせにほんまはやればできるやん!!!!!黒田は1班の救世主《ヒーロー》となったのだった。
その黒田に将也が乗ってきて1班は楽しい雰囲気になった〜(⌒▽⌒)
で終わる難易度じゃなかったらしい。
大二(大森第二小の略称)の2人、つまり大沢と金谷はいまだに黙々と食べている。
君たちが話し出せば1班はハッピーエンドってことで終われるんだけどなぁ、、、、、。
そんなことを思っていた矢先、黒田は会心の一撃を放った。
その一言で1班は全員笑い転げた。
ずーっと、ずーっと、ずーっと。
私達は黒田の攻撃をまともに受けてしまったのだった。
そんなこんなで1班は抱腹絶倒で初日の給食を終えたのだった。
(ちなみに他の班はそのまま沈黙のまま黙々と食べていたそうです。)
それから黒田はずっと1班の救世主でもあり、ある意味戦犯になったのです。
おわり
#4 入学2日目でB組の女子がものすごく怖いやつだと発覚した件
給食を終えて、今、中学校生活初の休み時間に突入した。
思ったより人見知りで怖がりな私はやっぱりおなじみのグループにいた。
そのメンバーと言うと、3番 岡田彩、8番 |後藤愛凜《ごとうあいり》、12番 |栃尾陽和《とちおひより》、B組20番 |中山友香《なかやまともか》だった。
やっぱなれない中学校生活の中で唯一安心できるものっていうか、心を許せる場所って感じがして好きだ。
まあやっぱ始まったばっかりってこともあって大二と大東(大森東小の略)のメンツで固まりがちだった。でも男子はもうそんなの関係ねえって感じで仲深めててびっくり。
そう、前から思ってたけど、**男子ってコミュ力ばけもんじゃね?**
なんか出会ったと思ったら音速で仲良くなるしさ、なんなのっていう。
友香が言った。
「B組女子まじ怖い」
その一言にみんなで反応する。
「え、がち?」
「お、ガチかー」
「怖えー」
でも大二女子が怖いことはわかりきってたことじゃないか。
小6、2月のときに、大二と大東が交流する機会があって、たまたま大二女子を見かけてしまった。
なんかすっごい前髪ガチ勢の露出多めな服でミニスカ。なんかもう外見から怖え奴らですって言ってるようなもん。でトイレ入った瞬間にすっごい睨まれたし。
「でさ、特に|鶴谷明莉《つるがいあかり》ちゃんと、|添田一花《そえだいっか》ちゃんがガチ怖い。」
だろうな。
だって見た目からしてオラオラ系じゃん。もう無理やって、、、。
小6ぐらいの時からこの5人で仲良くしてたが、友香が1人だけB組に取り残されてしまった。
やばそうなB組女子と絡まなければならない友香を気の毒に思った。
おわり
番外編 イメージ作りの自己紹介がドキドキしすぎてグダグダだった件
入学2日目の給食の前、自己紹介を行っていた。
名前、好きなもの、ことと一言を発表することになった。
1番から始まった。
やっばい。心臓バクバクで心臓飛び出そうなくらい緊張している私は人の自己紹介なんか聞く余裕がなかった。
やっと思考が止んだときにはもう3番の彩が立っていた。
え、やば。次じゃん。えーやばい。何言うか考えてないじゃん。どーしよ。
なんか手汗が爆速で滝のように出てきた。今なら手汗でお風呂入れそう。
「香取さん?どうぞ」
あ、そうじゃん、、、。金木先生に言われて気づいた。
前にたった瞬間、頭が真っ白になった。
元々何も考えてなかったのにさらに真っ白になったら何も考えられないじゃん。
「えっと、、、、香取萌恵です、、、、。好きなもの、、、は、、、」
眼の前のクラスメイトたちが私の思考力を奪っていく。
「〇〇(アニメ名)の〇〇(キャラ名)です。好きなことは絵を書くことです。よろしくお願いします。」
一気に全部公開したらスッキリした。
なーにもそんなに悩むことじゃなかったじゃーんなんて考え始める脳内。
さっきと言っていることが矛盾している気がするな、、、、
おわり
#5 この感情が恋だということに初めて気づいてしまった件
入学から数日経って、私、香取萌恵は周りの席の男子と仲良くなった。
特に金谷と仲良くなったと思う。金谷とは雑談をほぼ毎日する仲になった。
だいたい1学期の折り返し地点のGWが見えてきた。そんなときに黒田は大事件を起こしてしまう。
--- とある日の給食の時間 ---
石田が放った会心の一撃が黒田にクリティカルヒットして、笑いすぎて口の中のものを吹いてしまったのだった。
まあでも黒田が原因なんだけどな。笑ってる途中に牛乳なんて飲むから笑
そんな中でアハハと笑っている金谷の顔をちらっと見る。
なんか胸の中がざわざわした。なんだこれ。
まあ放っておいて休み時間に突入した。
金谷と大沢と石田と黒田と|森本《もりもと》が校庭でサッカーをしていた。
それを4階の教室の窓から眺めていた私はなぜか金谷を追いかけていた。
金谷の卓越したサッカー技術を見ているうちに独り言がつい口から出ていた。
「すげー。かっけー」
何いってんだ私。ほんと今日なんかおかしいわ。
休み時間が終わり準備時間に入ったとき金谷たちが帰ってきた。
必要なはずの教科書を持たずに教室を移動しようとした私を金谷が声をかけてきた。
「教科書必要じゃねーの?」
「あ、そうじゃん。ありがと!」
身長の高い金谷をちらっと見上げる。
汗だくの金谷は薄いプラスチック製の下敷きで風を仰いでいた。
なんだか金谷がオーラを纏って見える。目の錯覚かなと思い瞬きする。
そして私は思い出して慌てて教科書を取りに戻った。
数学の授業の間、さっきから見える【金谷錯覚現象】について考えていた。
錯覚が見えるくらい私は金谷のことを気になっているのだろう。
だってよほどのことだよ?錯覚見えちゃってんだからさ。
自分の目が信じられなくなってきた。だってこの目は金谷を見ただけで自動でキラキラフィルターをかけてしまう機能が勝手についたんだから。
この症状どっかで聞いたことあるんだよな、、、、、、、。
あ、そう!!!恋愛ドラマで見たことあるんだこれ。
え、てことはこれ、**恋**ってこと、、、、!?
おわり
#6 五月病は恋で治るという歴史的大発見をしてしまった件
GWが明けた5月。入学式のシャキッとした気持ちとは一転、やる気の無さで満ち溢れていた。
なんかやることなすこと全てにやる気がない。
ママに対抗する気も失せてベッドにごろんと転がる。
GW中まじで寂しかったなあ、、、、。
私は金谷への錯覚現象が恋だと気づいてからずっと金谷のことを考えていた。
「今、金谷は何やってんのかなぁー」なんて独り言をつぶやきながら家の天井を虚しく見つめる。
明日からGW明け。金谷に会いたいけど、学校に行く気力がない。
そんな間で悶絶している私はそのまま寝落ちしてしまった。
ピピピピッといつも通り元気になるアラームに起こされて私は起きた。
なんかいつもより目覚めがいい気がする。
なんか金谷に会えると思ったら学校に行く気力が出てきて、スッキリと目覚められた。
すげー。
**恋って五月病も治せるんだ。**
うきうきしながらこの歴史的大発見に感嘆していた。
なんか恋って素晴らしいわ。
やる気が出てきていつもより編み込みは丁寧で、毛先は相変わらずはねているものの、一筋の乱れもなかった。
そんな完璧なヘアスタイルに加えていつもより早く家を出た。
木の葉は風に揺れ、ざわざわという音を立てていた。
私は歩道橋の上に辿り着くと空を見上げた。
なんか今日の歩道橋からの景色はいつもよりキラキラして見えた。
私の【金谷キラキラ錯覚フィルター】はいつの間にか空にも使えるようになっていたらしい。
いつもだったら長くて辛いと感じていた4階分の階段がいつにもまして楽に感じられた。
そして教室に行ったら金谷が座っていて、ドアから入ってきた私をちらっと見てから将也との話に戻った。
ああなんて恋は素晴らしいんだろう。
こんなに日常が輝いて楽になるなら、老若男女だれでも恋をするべきだ。
私は初めての初恋に浮かれていたのだった。
おわり
#7 野球部は部員足りなくて草野球どころじゃなかった件
我が大二中の5月のビッグイベントは運動会だ。
学年ごとにいろんな競技をするのだが、実のところ、私は運動がすっごい嫌いだ。
小さい頃から絵を書くことだけしかしてこなくて走るとかそういうことは一切してこなかった。
その甲斐だけあってちゃんと運動ができない。
対して金谷は根っからのスポーツ少年で、サッカーをやっているらしい。本人提供の話だとサッカーのポジションはフォワードらしい。
申し訳ないがサッカーをよく知らない私からしたらあ、そうですかで終わってしまう会話内容の1つだ。
私はようやっと部活に入った。美術部に入部して週1だけ活動して後はフリータイムを満喫している。
金谷はと言うと、大沢と|渡貫《わたぬき》とC組の津田といっしょに今年から新しくできた野球部に入ったらしい。
で、ぶっちゃけ言うと今のところ野球部の部員がその1年生の4人しかいないらしく、草野球さえできないんだとか。
そして私に悲劇が起きた。
なぜか、なぜか**運動音痴な私が、クラスの代表が出る800m走と学級対抗リレーに出場**することになってしまった。
絶対計測ミスが起きたはず。何かの測り間違いだ。絶対そうだ。だって意味がわからないじゃん!!!
**私がそんなに速く走れるわけ無いだろ!!!!!!**
その日だけはすっごいキレた。いくらなんでも許せなかった。
運動をしたくない人をわざわざ運動会で狩り立てるなんて。最低もいいところだ。
金谷は当然足も速く、1000m走と学級対抗リレーに選ばれた。
いよいよ運動会と言ったところで運動会練習が始まり、全員ジャージ登校がOKになった。
金谷のジャージ姿に惚れていたいところだったけど、そこまで簡単ではなかった。
1年生の学年競技はローハイドで、私は1年A組女子の中で一番小さいため、騎手になることが音速で決まった。
ただ上に乗るとなるとかなりハードルが高い。
まず何よりも下の騎馬たちを信用しなければならない。
落とさないと確認したらもう怖くなくなってくる。
まあでも運動音痴の渡しができるほど簡単な競技ではないことは明らかだったしちゃんとうまくいかなかった。
おわり
#8 運動だけは避けようとしていたらちゃんとグサッと言われた件
ついに運動会が来週に迫った。
なんか学年練習とか始まるし最悪な1週間になりそうな予感がした。
運動だけは絶対やりたくないと家で泣いて願ったけどそうはいかないみたいだ。
学年練習サボろうと思って教室にいたら副担任に狩り出されて遅刻扱いでちゃんと皆の前でグサッと言われたし。
あんなの公開処刑だろ!これだから先生はって感じ。**運動音痴の気持ちなんて一生わかんないんだよ、先生には。**
運動会リハーサルの日。思ったより熱くて死にそうだった。
こんなに暑いのに運動させるなんて先生鬼すぎだろ。
だるそうにラジオ体操を終わらせる。
金谷のアナウンスが聞こえる。
なんか声だけでもかっこいいな。
私の金谷錯覚現象は耳にまで達していた。
気だるげにすべての競技を終わらせて学級対抗リレーの番になった。
学級対抗リレーは1回も練習していなかったからようやっと練習できるかと身構えたら、先生のアナウンスが聞こえた。
「えー、**学級対抗リレーは省きまーす**」
あ゙?ふざけてんのか?1回も練習させずぶっつけ本番でやれと仰せでいらっしゃいますか?
そんなの不可能に近いですよ。
もうなんか運動会のやる気なくなってきた。
先生うざいし、まじで学校中のみんなが運動会ガチ勢過ぎる。
私だけその渦から取り残されていた。
リハーサルで生徒のやる気なくしてどうするんだよ。
また五月病が再発した。
もう今度は治らないだろうな。
いくらなんでも人に反感持ってたらもうその気持ちなくすの無理だろ。
しかし全員リレーで金谷の走る姿を見たとき私の心の中にやる気がふつふつと湧いてきた。
その気持ちは私の心の中で沸騰してやかんから湯気を勢いよく吐いていた。
金谷の走る姿を見たいから頑張ろうと思えた
おわり
#9 今まで信じていた奇跡が起こらないとこの年で初めて知った件
運動会当日の空は私に味方しているかのようだった。
雲に包まれたどんよりとした軽いような重いような空だった。
まだ神は私を見捨ててはいなかった。
委員会の仕事で早くこなければいけなかった私は1秒遅刻してしまった。
「ごめーん、金谷。」
「1秒遅刻だぞ?」
「いやたったの1秒だし、1秒も遅刻してないからね?」
「いやもう時計過ぎてるんで、遅刻です。」
金谷は笑いながらいじってくる。
私は赤いハチマキをもう一度結び直す。
入場行進からラジオ体操を気だるく終え、私の最初の競技は800m走だ。
運動音痴にはすごいきつい種目だった。
ゴールを過ぎたらもう力がなかった。
しかも私はその直後の1000m走のアナウンスだった。
息をつく間もなく声を出した。
「プログラム◯番、全学年男子による1000m走です――――」
私はこのアナウンスに運命を感じていた。
私はこのアナウンスで金谷の名前を言うことができるのだ。
この運動会の中での唯一の幸せだった。
「1年A組 |石田将也《いしだしょうや》さん、|金谷光樹《かなやみつき》さん、1年B組 |岩田蒼介《いわたそうすけ》さん、|竹原聖也《たけはらせいや》さん―――――」
もうそう言った後は金谷だけを見つめていた。
金谷が1人に抜かれるだけ、1人を抜くだけで私の心は一喜一憂していた。
結果は金谷は学年で1位。
やっぱずっとスポーツをしてきた人はすごいんだなと当然なことだけど目の当たりにした。
ローハイドと大縄跳びを終えてあとは全員リレーと学級対抗リレーだけだ!
全員リレーのトップバッターを金谷は走った。
そして学級対抗リレーのトップバッターも金谷が走った。
でも結局どちらも2位で中学校生活初の運動会は幕を閉じたのだった。
おわり
#10 後ろに座っている片思いの君から声がする(終)
運動会も終わり、私達は運動会の作文を書かされた。
私は運動も苦手なのに文章を書くのも非常に苦手だ。
文章を書くくらいだったらお絵かき道具すべてを差し出してもいい。
まず、**何を書いたらいいかわからない。**
そっから始まったらもうオワコン同然。
終始チャッピーに頼りながら書き上げた作文はもはや私の作文ではなく、チャッピーの作文だ。
先生やママパパは作文ぐらい自分で書きなさいと言うけど、でもチャッピーを使えるのはうちらの特権なんだから特権を使わないともったいないから使ってるだけ(言い訳)
作文を書く時間、金谷が後ろからこっそり声をかけてくる。
「あのさ、輝くっていう字ってどんなだったっけ?」
私は適当な紙に「輝く」という字を書いて、わざと消しゴムを落として、その紙を金谷に渡した。
「さんきゅ!」
金谷は読み終わった後そう言ってきた。
そういえば最近君は私に何やかや聞いてくるね。英語の綴りだとか理科のプリントの答えとか。
先生に見つかったら終わりだってのにどうして前の私に聞くんだろう。
だって別にとなりの将也だっていいじゃん。
かと言って私も人のことは言えない。
漢字とかわかんなかったとき、よく金谷に聞く。
金谷の輝き、つまり私の【金谷のキラキラ錯覚フィルター】はいつも作動していて、日に日に輝きを増している。
いつでも輝かないときなんてないそのフィルターは私の目を、脳を、体中すべてを錯乱させている。
そんな輝かしい君をいつまでも前の席から眺めてたい。
**私は君が好きだ。** どうしようもなく。どこがとかなぜかとかそういう質問にはまだ答えられないけど、私は君に恋してる。
君はまた聞いてきたね。
**後ろに座っている片思いの君から声がする。**
続くけどおわり
続編は『よく目の合う片思いの君は私を見下ろす』です!